エンパイアウォー㉔~空き巣to春日山城
●グリモアベースにて
「鬼の居ぬ間に、いや軍神の居ぬ間に、だな」
頭の上に指で角を作っていたプルート・アイスマインドが、急になんかシュッとしたポーズへと変える。それが彼の考える軍神像であるらしい。
どちゃくそどうでもいい情報だった。
「すまん、本題に移ろう。実は信州にて退けた上杉軍に関して情報が掴めた。どうやら奴らは主力を関ヶ原へ向けているらしく、本拠である越後の防備は薄くなっているらしい」
ぺろーん、とエンパイアマップ(?)をひろげたプルートが『越後』ってなってるらへんを指でくるくるする。
「越後の春日山城は堅固な城だが、戦力が手薄になっている今ならきっと落とすことができるはずだ。そうすれば上杉軍に大打撃を与えることができ、運がよければ信長軍に関する情報も入手できるかもしれん」
猟兵たちの目を見て力説するプルート。
なるほど確かに、春日山城の攻略は旨味が大きいように思える。いや間違いなく大きいだろう。
「その顔は……請け負ってくれるということだな。感謝する。ではすぐに春日山城へ送らせてもらうぞ。善は急げ、というやつだ」
無意味に声を潜ませつつ、グリモアでの転移を始めるプルート。
かくして、猟兵たちはこっそりと春日山城攻略に出発するのだった。
●急に皆さん来るもんだから
春日山城は、その名のとおり山城である。
木々で緑に化粧された高い山の上に、上杉の城はある。
平時であればその中には精兵が控えており、たゆまぬ規律でもってわずかな隙すらも見せぬ陣容があっただろう。
しかし、今は全然そんなことはなかった。
「平穏だニャー」
「このまま何事もなくのんびりと過ぎていけばいいニャ」
「気づいたら信長様の天下になってるぐらいがベストだニャー」
「「「ほんとそれニャ」」」
城の周りをてくてく歩いたり、ごろごろ寝転んだりしているのは猫っぽい妖怪『猫又』である。気質もまんま猫っぽい猫又たちは城の防衛任務に就いていても、やはりひたすらに気ままだった。
だって、どうせ戦地とは遠いから。
言ってしまえばお留守番だから。
とにかく上杉軍の猫又たちはそう思っていたのである。
割とやる気満々の猟兵たちが、突如として現れるまでは。
「な、何ニャ!?」
「敵襲ニャー! なんでかわかんないけど敵襲ニャー!?」
「聞いてないニャー! お給金弾んでくれなきゃやってられないニャー!」
突然のお宅訪問を受けて、わやわやとあっちこっち慌てて走り出す猫又たち。
果たして猫又たちは無事に春日山城を守り切れるのだろうか!
たぶん無理だ!
星垣えん
空き巣だ! 空き巣だ!
信州上田城の上杉軍をパパッと撤退させた事で、上杉軍の主力が関ヶ原に向けて移動を開始した事を察知できました。
そう、つまり上杉軍の本拠地である春日山城の攻略チャンスです。
ディフェンスすっかすかのホームをサクッと落としてしまいましょう。
大丈夫。なんか戦ってればたぶん何とかなる。
タスクは単純明快。
猫又たちをぶっ倒すのです……!
心を鬼にして、いやさ軍神にして……!
では、皆さんからの軍神プレイングお待ちしております。
以下、本シナリオに関しての補足!
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このシナリオに成功する事で、春日山城の攻略度が5%づつ進みます。
攻略度が100%になると、春日山城を制圧する事が出来ます。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦
『猫又』
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POW : バリバリ引っ掻くニャ
【両手の鋭い爪による引っ掻き攻撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 猫の本領発揮なのニャ
【両手を地に付ける】事で【四足の型・高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : これが猫又の妖術なのニャ
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:風鈴
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
「ようし、にゃんこ達を追い出してボクがごろごろする番だよ!」
背中の翅で「空中浮遊」して「空中戦」のヒット&アウェイで襲い掛かるよ!
ニャニャーっと鬼火で反撃してきたら「見切り」で回避しながら近づいて【妖精姫のいたずら】で服の中に潜り込んじゃえ♪
へへーん、服の中には鬼火で攻撃できないよね!
泣いて謝ってもこちょこちょやめてあげないよ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
佐倉・理仁
呑気だなぁ、オイ。俺もそのぐらい気楽に生きたいよ。
◆どっこい現実はそーはいかねぇんだよな。悲しい。
お前らに怨みはないが、居るだけ迷惑なんでな。……いや悪ィ、俺らがあちこち飛び回ってんなか、ゴロゴロしてる連中はちょっと『呪詛』
どっちにせよやる事ぁ変わらねぇ、伸しちまおう。『高速詠唱』【災厄の日】呼び出すモノは水害で命を失った者……そして死者と生者を流して攫う濁流だ。
猫は水嫌いっていうしな。炎も纏めて呑み込んでやらぁな。
水中の死霊がしがみつき、屍肉に食む生物らがまとわりつく。
……さあ、骸の海まで流れて消えな。
ところで城中びたびたにしちゃったけど後でコレ怒られないか、平気?
怒られる前に帰還ヨロシク?
セラフィール・キュベルト
…なにやら緊張感に欠けるお相手ですね。
とはいえオブリビオンである以上、放置するわけにも参りません。
確実に、お還し致しましょう。
攻撃は聖花乱咲・浄魂霞流を主に。
相手が放つ鬼火を相殺しつつ、相手自身にもダメージを与えられればと。
個別の敵に対しては、精霊様(angelus luxis)を介して光の魔術攻撃を行い対処。適宜【範囲攻撃】【マヒ攻撃】も併用し、単独にて複数に包囲される状況は可能な限り回避していきます。
「此処は皆様のあるべき処にはございません。どうか、お還りを」
シエル・マリアージュ
なんとも腑抜けた相手ですが、油断はしません。
空へと羽ばたき見通しのよい上空から攻めていく。
こちらが見通しが良いということは敵も同じ【Garb of Mirage】の光学【迷彩】で【目立たない】ように空に溶け込むようにして太陽を背にしたりして敵に見つからぬように敵を探します。
空から隠れたり待ち伏せしている敵を発見したら、天上の乙女〈再臨〉で召喚した乙女達と先制攻撃を仕掛けます。
「安心なさい。苦しむ間もなく逝かせてあげます」
引っ掻かれるのはごめんなので残像によるフェイントで猫又を惑わせ、愛刀の白花雪の刺突による衝撃波でリーチを保ちながら攻撃を仕掛け、寄ってくる猫又は衝撃波で薙ぎ払います。
ツムギ・オーギュスト
【POW】
(アドリブ・連携歓迎)
お留守番中失礼しまーす!!グリモアベースの方から来ましたツムギちゃんでーす!!
お城についたら【スーパー・ジャスティス】!猫ちゃん目掛けて一直線に飛んでくよ!
おてての爪で引っ掻かれる前に<手をつなぐ>で猫ちゃんの両手をしっかりホールド!
そのままあっちこっちをギュンギュン飛び回るよ!
飛んでる途中、柱とか他の猫ちゃんにぶつけちゃったり全速力で振り回して目を回しちゃうかもしれないけど…その時はゴメンネ!
てことで…にゃんにゃーん!!あーそーぼーー!!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
・持参:魚(複数)
■行動
成程、それでしたら『占領後の情報収集』も視野に入れた方が良さそうですねぇ。
【指定UC】で飛行、逃がさない様監視しつつ『FRS』『FSS』を用いて、猫さん達の手の届かない『上からの射撃([範囲攻撃][一斉発射][2回攻撃])』でお相手致しましょう。
相手が十分に戦意を失いましたら、一部の猫さんを拘束しますねぇ。
『重要な場所』を御存知なら良いですが、おそらく御存知ないでしょうから、『入るなと言われていた場所』を尋ねますぅ。
答えない様であれば、拘束されて手の届かない目の前で、美味しい魚を焼いていただきますねぇ。
きちんとお答えいただけましたら、差し上げますよぉ?
ルエルエ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
またにゃんこなのです。
よくよくにゃんこには縁があるのです。
前のにゃんこさんにも好評だった芋煮をプレゼントするのです。
きっとよろこんでくれるのです。
どうやら今回のにゃんこさんは鬼火を出すようなのです。
私は芋煮を出して鬼火で温めてもらっていい感じにしてもらうとするのです。ゴー。【芋煮ミサイル】ゴーなのです。
これで芋煮が温めなおされてより美味しくなるはずなのです。
そしてそのまま猫さん達に【芋煮ミサイル】シュー!なのです。
前の猫さん達は立派な具材になったのです。あなた達は……冗談なのです。
さすがに私もそこまで非道ではないのです。それはそれとしてぶっかけさせてもらうのですが。
●水に落とす簡単なお仕事です
「呑気だなぁ、オイ。俺もそのぐらい気楽に生きたいよ」
まるで火事場にいるかのような騒動を見せる猫又たちを見て、佐倉・理仁(死霊使い・f14517)が胸に抱いたのは羨望だった。
できることなら、理仁ものんびり1日を過ごしたいものである。
しかし今は有事。
そして猫又たちは(見目とかスタンスはどうあれ)エンパイアを害する敵だ。理仁としても怨みはないが――。
「……いやでも俺らが忙しいなかゴロゴロしてる連中はちょっと」
1秒で考えを改めた理仁が小さな声で何事かを詠唱した。
そして経つこと3秒。
ずごごご……と唸りをあげて、八方から恐ろしい濁流が押し寄せてくる。
「ンニャーー!?」
「な、何ニャー!?」
「に、逃げるニャばばぶぶぶ……」
迫りくる濁水から散り散りに逃げ回る猫又たち。1人、また1人と呑まれてゆくが、それでも何人かは木に登ったり城壁に飛びついたりして難を逃れる。
が、猫又に安息の時間はない。
『オマエモ来イ……』
『我ラト一緒ニィ……』
「ニャー!? 何ニャのニャー!?」
「あっちいけニャー!?」
濁流の中から、道連れを求めて腕を伸ばす死霊たちが現れる。恐怖に駆られた猫又たちは鬼火をポンポン放つが、しかし荒れ狂う水の前では消されてゆくばかりである。
「……諦めな。そんな火じゃどうにもならないぜ?」
「猫を水責めなんて残虐すぎる奴ニャー!」
「おまえの血は何色ニャー!」
理仁に全力でブーイングをぶつける猫又たち。必死に木の枝や壁の石をつかむその姿には『落水してニャるものか』という覚悟が感じられる。
しかし世界は猫又たちに非情だった。
「お留守番中失礼しまーす!! グリモアベースの方から来ましたツムギちゃんでーす!!」
上空に転移して現れたツムギ・オーギュスト(dance légèrement・f19463)が、ビシッと敬礼をかましながら楽しそうに降下してくる。
そのままであれば理仁の生んだ濁流にドボンだ。しかしツムギはその身を眩い黄金のオーラで包み、それとともに獲得した飛翔能力で鋭角な方向転換を決めた。
目指すは――もちろん猫又!
「な、何でこっち飛んでくるニャー!? あっちいけニャー!」
「おっと! 痛いのはパスだよ!」
相手をひっかくべく繰り出した猫又の手をがっちりキャッチするツムギ。
「ニャニャ!? は、放すニャ!!」
「それーーー!!」
「ニャ、ニャニャニャ!?」
猫又の抵抗むなしく、ツムギは満開の花を思わせる笑顔で飛翔した。手を掴まれている猫又は宙ぶらりんで空中に投げ出され、右に左にとツムギの気分で大きく揺りだされる。
その結果。
「ぶ、ぶつかるニャー!?」
「わわ、こっちくるニャー!?」
「ご、ごめんなのニャー!?」
高所に避難していた猫又たちにガッスガスぶつかり、死霊ひしめく奈落の水流へと突き落としまくっていた。着水したそばから無数の手につかまれて沈んでゆくさまは控えめに言っても地獄。
が、その上を飛び回るツムギは曇りひとつない笑顔である。
「にゃんにゃーん!! あーそーぼーー!!」
「こ、こっちくんニャーー!?」
「……何かやっぱり呑気だなぁ、オイ」
怯える猫又に突っこんでくツムギを見上げながら、理仁は落ちた猫又たちがあげる水音を聞くのであった。
●おそろしいこうげきだ
「にゃんこ達を追い出してボクがごろごろする番だよ!」
春日山城に転移してくるなり、開口一番、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)のどうでもいい決意が炸裂した。
小さな体で猫又たちの頭上を舞うおてんば姫が、獣奏器『風鳴りのレイピア』を振るう。
「くらえー!」
「やめるニャ! ちくちく痛いのニャ!?」
「このっ……!」
「離脱ー!」
「ああっ、逃げるニャー!」
上から容赦なくレイピアを突きまくるティエルに猫又が手を伸ばすが、その手は妖精が逃げ去った空間を掴むばかり。
猫又たちが頭上を舞う妖精を捕まえるべく、ニャーニャーと賑やかに空に手を伸ばす。
セラフィール・キュベルト(癒し願う聖女・f00816)とルエルエ・ルエラ(愛と正義と芋煮の魔法少女・f02197)はそれを見てしばらく、無言だった。
「……なにやら緊張感に欠けるお相手ですね」
にゃんにゃん跳んでる奴らを見て脱力を覚えるセラフィール。
「またにゃんこなのです。よくよくにゃんこには縁があるのです」
猫耳デバイスをピコピコさせるルエルエ。猫耳デバイスは装着者の感情に反応して動く性質を持っている。おそらく先日戦ったにゃんこたちのことを思い出しているのだろう。芋煮をぶっかけてあげた彼らはすごく幸せそうだった。(※ルエルエ談)
「今回も芋煮をプレゼントするのです。きっとよろこんでくれるのです」
「そ、そうなのでしょうか……」
「そうなのです」
わずかばかり見せたセラフィールの疑念をぶった切るルエルエ。
ちくしょう……芋煮狂いめが!
「くっそー……こうなったら鬼火で燃やしてやるニャ!」
「みんなまとめて火事にしてやるのニャー!」
ティエルの捕獲に難儀していた猫又たちが作戦を変え、周囲に大量の鬼火を灯す。炎は宙を奔り、地を滑り、猟兵たちへと襲い掛かってくる。
「燃えちまえなのニャ!」
「火ですか……しかし思い通りにはさせません」
純白のウィンプルをふわりとなびかせ、ひた走る鬼火の前に立つセラフィール。
「純潔の証たる白花、貴き母の徴たる聖花。秘めたる光解き放ち、以て万物を清め癒し給え!」
凛として詠唱したセラフィールの首元で、メダリオンが弾ける。風に乗るように流れゆくその欠片は百合の花弁へと姿を変え、正面に飛んでくる無数の鬼火と相殺してみせた。
「ニャニャニャ!? そんな馬鹿ニャ!?」
「猫又の妖術が阻まれるニャんて!!」
「のんびり過ごしておられたようですが、放置するわけにも参りません。お還り下さい」
「「ニャニャー!?」」
両手を合わせたセラフィールの祈りに応じた精霊『angelus luxis』が、光の魔術で猫又たちを吹っ飛ばす。
ごろごろと後ろに転がる体を、地に爪をひっかけて何とか止める猫又たち。
「くっ、強いニャ!」
「いったいどうすればいいのニャ……?」
「にゃんこさんにゃんこさん。こっちに私もいるのです」
「ニャーびっくりするニャー!?」
いつの間にかすぐ隣に近づいていたルエルエに、猫又たちがびくんと肩が跳ねるほど驚く。
振り返ればエルフっ娘がジト目なのだ。無理もなかった。
「おのれ不意打ちする気だったニャ!?」
「燃やして返り討ちにしてやるニャ!」
すぐさま迎撃の鬼火がルエルエめがけて飛んできた。
しかしその炎も、当たらない。ルエルエの杖が放った百を超えるミサイル――ほかほかと湯気を立てる芋煮の鍋が、その厚い鍋肌で鬼火を防いでしまったのだ。
「にゃ、ニャニャンと!?」
「鬼火が通用しないニャ!?」
「それだけではないのです。これで芋煮が温められ…………さらに美味しくなったのです」
「いやどうでもいいニャ!?」
「そんな台詞で溜めるなんてどうかしてるニャ!?」
「ゴー。芋煮ミサイル、ゴーなのです」
「「ニャニャー―!?」」
熱々の芋煮をぶちまけられ、旨味たっぷりの汁を頭からかぶる猫又たち。その香りと美味に顔はとろんと蕩けるが、裏腹に肉体はしょわーっと消滅してゆく。
「あいつら美味しそうな匂いで死んでいったニャ……!」
「そんなこと言ってる場合じゃないニャ! こっちにも来てるのニャ!」
芋煮の匂いにつられてよそ見してた猫又が、仲間の焦った声に振り返る。
小さな妖精が、レイピアを構えて再び上空から降下してきていた。
「いっくよー!」
「またおまえかニャ!」
「今度は炎で落としてやるのニャ!」
ティエルを香ばしい炙り焼きフェアリーにするべく、猫又たちの鬼火が空へ撃ちあがる。
弾幕と呼んでいい大量の炎弾が殺到する――が、何物をも焼きはしなかった。ティエルは炎の弾幕を掻い潜り、1体の猫又の衣服の中に潜りこんでいた。
「ニャニャ!?」
「へへーん、服の中には鬼火で攻撃できないよね!」
もぞもぞと服の中を這い回るティエル。
こそばゆい感覚に猫又の体が震える。
「ちょ、やめ……!」
「泣いて謝ってもこちょこちょやめてあげないよ☆」
「やや、やめてくれニャー!?」
服の上から自分の全身をまさぐる猫又だが、ティエルを捉えることはできない。
猫又たちは戦慄した。
「な、なんて悪戯を仕掛けるんニャ……!」
「恐ろしい攻撃ニャ……!」
「……今のうちに、皆様をお還し致しましょうか」
「そうするのです」
猫又たちの無防備な背中へ、セラフィールの光魔術とルエルエの芋煮が飛んでいった。
●戦いにおいて上にいるということは!
「な、何か上から来るニャ!?」
「ニャニャ!?」
空を指差した1体につられて、猫又たちが一斉に顔を上げる。
上空を影が飛んでいた。
白っぽいオーラに陽を透かせて飛ぶその女は――夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だ。
「それではいきますねぇ」
間延びした声とは対照的に、るこるの周囲には速やかに武装が展開される。8台の浮遊砲台が直下に砲口を下ろし、4枚のビームシールドに付属した砲門が地上を狙う。
「一斉発射ですぅ」
るこるの両腕の制御器から信号を受けた砲台が、地面めがけて射撃を開始した。八条もの閃光が地表を抉り、めくれ上がる土や岩が波打って猫又たちを呑みこむ。難を逃れた猫又たちにも、ビームシールドから追撃の射撃がもれなくついてきた。
絨毯爆撃。
そう形容するしかない、圧倒的対地砲撃であった。
「ニャニャニャニャアー!?」
「た、大変ニャ! でもここなら射撃から隠れられ……ニャーー!!」
「どうしたニャ……ギニャー!?」
物陰に潜み、るこるの火力を免れていた猫又が、突如としてぱたりと地に伏した。爆撃の巻き添えなどをくらった様子もなく、隣にいた仲間は狼狽するしかなかったが、間を置かずしてその仲間も気を失って顔から倒れこむ。
その姿を、『聖銃剣ガーランド』を構えたシエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)は上空から見下ろしていた。
「なんとも腑抜けた相手ですが、油断はしません」
視線を切り、次なる標的を探して旋回するシエル。身を覆うケープコート『Garb of Mirage』の迷彩機構によって、その純白の見目は太陽の光に溶けこんでいる。そうして空をステルス飛行し、シエルは隠れ潜む猫又を次々と倒してゆく。
しかし長く身を隠していられるわけもない。
「だ、誰か別に敵がいるニャ!」
「爆撃女の仲間が隠れてるみたいニャ!」
仲間が数を減らしている中で、猫又たちもシエルの存在に思い至る。
「気取られましたか。ならば」
地上の様子から察知されたことを悟ったシエルの動きは早かった。空を飛びまわることをやめ、燕のような高速機動で地表へと降下したのだ。
聖櫃より放たれた、美しき乙女たちを従えて。
「こちらから仕掛けるとしましょうか」
「急に現れたニャ!?」
「落ち着くニャ! 引っ掻いて応戦……ニャー!?」
「安心なさい。苦しむ間もなく逝かせてあげます」
愛刀『白花雪』で猫又を刺突の衝撃で突き飛ばしたシエルが、涼やかに言い放つ。呼応して動いた乙女の英霊たちも猫又を薙ぎ払い、敵軍は瞬く間に瓦解した。
そしてそうなれば壊滅も時間の問題。
数分もすれば春日山城を守る猫又たちはいなくなり――気づけばるこるが捕獲した数体を残すのみとなっていた。
「さぁて、猫さんたちにお尋ねしますねぇ」
捕縛した猫又たちを並べ、その前を左右に往復するるこる。
「例えばですけど、皆さんが『入るな』と言われていた場所なんかはありませんかぁ? そこに有益な情報があると思うのですけどぉ」
「な、何もないニャ……!」
「こちとら城下の守備ぐらいしか任されてないのニャ! 末端はいつだってないがしろにされるのニャ!」
「オブリビオンの世界も世知辛いのですねぇ」
半ば組織への不平が混じった猫又たちの答えに、一抹の憐憫を覚えないこともないるこる。
しかし今、優先すべきは情報の獲得。
であればるこるは、冷静で冷徹な諜報員にだってなることができる。
「ほぉら、きちんとお答えいただけましたら、差し上げますよぉ?」
「さ、さささ魚ニャ!」
「くっ、魚の塩焼きで釣ろうとするなんて……なんて奴ニャー!」
身動きとれない猫又たちの眼前に七輪を置き、脂の乗った魚たちを焼き始めるるこる。鼻腔をくすぐる香りに猫又たちは垂涎し、ぐぅぐぅと腹を鳴らし、にゃーにゃーと喚きだす。
ちなみにそれで有力情報を得られたかというと、やはり末端にゃんこから聞き出せるものはたかが知れていたようである。
大成功
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