7
許されざる存在

#アックス&ウィザーズ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ


0




 ろうたけたエルフの女性が、ざっくり露出のある白いスカートの裾をつまんで会釈する。彼女の後ろには、コピー用紙の束を持った死霊術の騎士。
「ご機嫌よう皆さん。わたくし、グリモア猟兵のマーラー・ジュウナナサイと申しますわ。今年で17歳ですのよ。本日お集まりいただいたのは、皆さんにアックス&ウィザーズへと向かっていただくためですの」
 エルフの出生地でもあるアックス&ウィザーズ。どんなファンタジックな冒険が待っているのだろうか。
「さて、皆さんには動物の相手をしていただきます。具体的には、森で野生動物の行方を追っていただきますわ」
 ファンタジーとは何だったのか。蝶型のグリモアを指にとめたまま、マーラーはにっこりと微笑む。
「実は、とある森にオブリビオンの魔導師が出現したとの情報がありましたの。それ以降、森の動物達が減っているとのことなんですのよ。これらには関係があると見て間違いありませんわ」
 やっぱりファンタジーだった。動物とて現在を生きる生物。オブリビオンに脅かされるのを、黙って見過ごすわけにはいかない。
 と、マーラーは軽く後ろに流し目を送った。
「配りなさい」
 底冷えのする声で騎士に命じると、騎士は腰も低く丁寧に、猟兵達に紙を配っていく。コピー用紙は、森のおおざっぱな地図のようだ。マーラーは再び、にっこりと微笑んで猟兵達に説明をしていく。
「そちらをご覧くださいまし。北が森の入り口ですわ。森はまず、北側の入り口付近と、南側の深部に分けられますの。深部のさらに南は、山で塞がれておりますわ。深部は三つの区域に分けられます。東の池エリア、中央の花畑エリア、西の岩石エリアですわ。皆さんには、入り口付近から探っていただくことになるかと思います」
 そうそう、とマーラーは付け足す。
「森の入り口付近には、今行けば狩人が入り込んでいるようですわ。話を聞くのもよいですけれど、何かあっては困りますし、帰るのを促してあげてくださいまし。狩人が森を出てくれれば、あとはわたくしが保護いたしますわ」
 そのほかの注意としては、森の奥深くまでを探索するのだから、相応の準備はしていったほうがいいとのことだ。もちろん、オブリビオンとの戦闘の準備も忘れずに。
「オブリビオンの魔導師が何を企んでいるかは、現状分かりません。けれど、どうか阻止して、森に平穏を取り戻してくださいまし」
 マーラーは姿勢を改めると、深く頭を下げるのだった。


あんじゅ
 マスターのあんじゅです! マーラーさんジュウナナサイと行く、二つ目の事件のご案内です。
 今回の依頼は、アックス&ウィザーズのとある森に出現した、オブリビオンの企みを潰していただくというものです。オブリビオンは魔導師です。
 まずはオブリビオンの情報を集めるために、森で探索を行うパートです。入り口付近に動物はほぼおらず(いるにはいます)、一人の狩人が森に入っています。
 何をどうしたいか、具体的に書いていただけると助かります。セリフや心情を入れていただくのも大歓迎です!
 皆様どうぞご一緒に、この事件を解決に導きましょう!
46




第1章 冒険 『生物を弄ぶ悪の魔導師』

POW   :    走り回って動物達が連れ去られた痕跡を探す

SPD   :    連れ去られて行く動物の後を尾行

WIZ   :    魔法などで動物達と意思疎通を図って情報を聞き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘルメス・トリスメギストス
「ふむ。オブリビオンの魔導師ですか。
森を愛するエルフとして。そして同じ魔術師として。
そのオブリビオンを見過ごすことはできませんね」

とはいえ、まずは森の入口付近にいる狩人の方を保護するのが先決。
私はエルフや魔術師である以前に執事なのですから。
森の入口付近で狩人の方を捜索し、森からの帰還を促します。

「御主人様。突然のお声掛け、失礼いたします。
私、執事のヘルメスと申します。以後、お見知りおきを」

この森に邪悪な魔導師が現れたことをお教えし、お帰り願いましょう。

手ぶらでお帰しするのも恐縮ですので
ナイフを投擲して獲った獲物をいくつかお渡ししておきましょう。

「ところで、何か不審なものは見ませんでしたか?」



「ふむ。オブリビオンの魔導師ですか。森を愛するエルフとして。そして同じ魔術師として。そのオブリビオンを見過ごすことはできませんね」
 エルフの軍師執事(ゲームバトラー)、ヘルメス・トリスメギストスが森へと足を踏み入れた。最強魔術師を自称するヘルメスにとって、邪悪な魔導師は度しがたい存在といえる。
 とはいえ、まずは狩人を保護するのが先決だろう。ヘルメスはエルフや魔術師である以前に、執事なのだから。
 森の浅い場所を軽やかに駆け回り、捜索するヘルメス。ついでに投げナイフで手土産を狩るのも忘れない。
 狩人は、さして苦労せずに見つかった。近づいていくヘルメスに、狩人が会釈をする。が。
「御主人様。突然のお声掛け、失礼いたします。私、執事のヘルメスと申します。以後、お見知りおきを」
「はぇ!?」
 唐突な御主人様呼び。唐突な執事宣言。狩人は、森にひそむ者にあらざる声を上げてぽかーんとする。
「御主人様、この森は危険です」
「ご、御主人様じゃねぇし」
「邪悪な魔導師が現れたという情報があります、御主人様」
「聞けや!」
「御主人様に手ぶらでお帰りいただくのも恐縮ですので、どうぞこちらを」
 先ほど狩った鳥を数羽差し出すヘルメス。獲物が見つからずに困っていた狩人も、これには喜色を浮かべる。
「こ、これ、もらってもいいんか?」
「はい、御主人様のためにお捕りいたしました」
「すげぇな兄ちゃん、こんな、なんもおらんくなった森でよく捕れたなぁ」
「恐縮です」
 なんもおらんくなった森。なるほど、動物がいなくなっているのは狩人も感じているところらしい。あと、早々と御主人様呼びには慣れたらしい。
 獲物を渡して狩人が喜んだところへ、ヘルメスは上品な笑みを浮かべて尋ねる。ゲームにはタイミングが大事なのだ。
「ところで、何か不審なものは見ませんでしたか?」
「お?……おお、変なものは見たぞ」
「そうですか。差し支えなければ、詳細をお教えいただけませんか?」
「……うーん……。ありゃあ、ひな鳥だったな」
 言いにくそうに首をひねる狩人。言いにくいというより、表現しにくい、といった様子か。
「ひな鳥、ですか」
「そうだなぁ、悪いやつじゃねぇみたいだったがな。でかいひな鳥だ。もふもふの。スイカくらいあるんでぇ。そいつが飛んでやがるんだよ、ぱたぱたと」
 ジェスチャーを交えて説明する狩人。
「不躾ですが御主人様、悪いやつではない、というのは?」
「おお。そいつと立ち話したんだ。や、はじめは面食らったが、話してみると結構いいやつでな」
「ふむ……」
 そのひな鳥、魔導師と無関係とは思えない。ひな鳥の性格を含め、有益な情報を得たといっていいだろう。
「お教えいただき、ありがとうございます。危険な魔導師の事は、どうか私どもにお任せください」
「おー、そいつは助かる。魔導師なんざ手に負えんからなぁ。ああ、あいつは狩ってやらんでくれよ」
「承知いたしました、御主人様。お気をつけてお帰りくださいませ」
 きっちりとお辞儀をして、狩人に帰るよう促すヘルメス。片メガネの奥では、しかし目が笑っていなかった。その大きなひな鳥というのがオブリビオンであれば……倒さないわけにはいかないのだから。
 狩人が手を振って入り口へと向かい、見えなくなると、ヘルメスは逆に森の奥へと足を向けた。
 進む途中、ほかの猟兵達と合流し、情報を共有して共に奥へと向かう。
 だんだんと森が深まっていく。遠からず深部と言っていた場所に差しかかるだろう。さて、どこから探る?

成功 🔵​🔵​🔴​

二條・心春
動物ってかわいいですよね。一見怖そうな子でも、ちょっとした仕草がかわいかったり。この世界にはどんな動物がいるのでしょう?

えっと、私は森に入って動物たちが攫われた痕跡を探してみます。情報は足で稼ぐべし、ってよく言いますもんね。私は特に東の池エリアの、池の周りを探しましょう。たぶん動物達はここに水を飲みに来るのでしょうから、そこを狙って襲われた可能性が高いんじゃないかな。…私って結構ドジだから、池には落ちないように気をつけないと。
ヘルメスさんの言っていたひな鳥を見つけたら、お話をしてみましょう。私のコミュ力は動物にも効くのでしょうか?

もし同じ場所を探す方がいれば、協力してくれるとありがたいです。


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定

ジズは、エルフのひとり
自然を穢す、オブリビオンの魔導師は敵
愛すべき連れ去られる動物に罪はないのです
追走、追跡。ジズは敢行です

連れ去られる、といえば穏やかではないですが
すなわちその行く末を【見切り】判定し、正確に判断をするのです
情報、凶報。その精査こそ、課題解決の肝要
自然に耳を傾け、【祈り】判定が必要とあれば
あわせて痕跡集めに努めます

あくまで救出を目指すのではなく、
情報収集を第一に
ジズは、いえ、ジズだけでなく
個人とは脆いもの。頼るべき仲間に頼るべき
無論、勿論。ジズは、魔導師の素性くらいは、得られるなら得たいものですが



普通の私服の少女と、キワどい露出の(外見年齢的に)少女が並んで森の奥へと向かう。
「動物ってかわいいですよね」
 私服のスカートをひるがえして、二條・心春が、共に池エリアに向かうジズルズィーク・ジグルリズリィに話しかけた。
「一見怖そうな子でも、ちょっとした仕草がかわいかったり」
「ジズは、エルフのひとり。自然や動物は愛すべき存在」
 心春は、この世界にはどんな動物がいるのでしょう?と胸を躍らせる。反対にジズルズィークは、自然を穢す、オブリビオンの魔導師への敵意を滲ませていた。
 しばらく並んで歩くと、池エリアに着いた。
 今は動物の姿がない。たまたまいないのか、それとも、何も来ないくらいに数が減りすぎてしまったのだろうか。
「たぶん動物達はここに水を飲みに来るのでしょうから、そこを狙って襲われた可能性が高いんじゃないかな、って思います」
 ジズルズィークも頷く。今は動物がいなくとも、何らかの痕跡なら見つけることもできるだろう。
「情報、凶報。その精査こそ、課題解決の肝要」
 動物がさらわれるというのは凶報だ。だからこそ、そこを精査するべきなのだ。二人は、動物たちがさらわれた痕跡を、手分けして探す事にした。
 池の周りをぐるりと歩いていた心春。綺麗な水だというのに、どの動物も来ていないのが不思議だ。魔導師に全部連れ去られちゃったのかな……と森に目をやる。
「きゃっ」
 心春は足を滑らせた、草で池のふちが曖昧だったらしい。思わず目を閉じる。
 ……水に落ちていない。腕を絡めとられ、引っ張られている。目を開けると、ジズルズィークが拷問具の鎖を伸ばしてくれていた。
「あ、ありがとうございます、ジズルズィークさん」
「ジズ、でいいです」
「じゃ、じゃあジズさんっ、ありがとうございます。……って、あれ?あれって……」
 引っ張り上げられながら、心春が水うち際に不自然なものを見つけた。
「何か、見つけた?」
 ジズルズィークが、そして遅れて心春も確かめに行く。
 そこにあったのは、短く引きずられたような跡だ。引きずられて消えかけているが、網目のようなものも認められる。水を飲みに来た動物の足跡はあるが、それ以外の足跡はない。
「引きずった跡が……えっと、短い……?」
「犯行、飛行。飛んで運んだ可能性があります」
「なるほど。網をこうっ、使って捕らえて、飛んで運んだんですね」
「引きずった方向、連れて行ったのは西です」
 ジズルズィークは見切りの能力で、正確に方向を判断する。
 そのとき、二人はハッと顔を見合わせた。動物の気配だ。少女達はどちらともなく駆け出し、小さな体を木に隠した。
 どうやら、鹿が水を飲みに来たらしい。この森で初めて出会った大型の動物だ。
「鹿さんのあと、付けてみますか?」
「追走、追跡。ジズは敢行です」
 二人は頷く。まず大事なのは情報収集だ。それに、追いかける途中で何かあったとしたら、あの鹿を助ける事もできるだろう。
 鹿が森に戻っていくようだ。二人はこっそりとあとを付け始めた。尾行開始だ。
 途中、猟兵を見かけると、音を立てないように合図を送って合流しつつ、鹿を追う。
 しばらく歩いた。そろそろ花畑エリアに入る前ほどだろうか。
 ……木の陰に、何かいる。
 木に隠れるように、いや、隠れられていないのだが。ひな鳥っぽい丸っこいもふもふが、パタパタと浮いている。ちっちゃい足に網を持って。
「わ」
 心春が思わず上げた声を聞いて、鹿がぴくっと耳を動かして逃げる。心春は今さら口を手でふさいだ。ひな鳥っぽいのは、急に鹿が走り出した事に目をぱちくりさせる。
「??? 今、わって誰か言ったのです?ピチュチュ?」
 ひな鳥っぽいのが、猟兵達のほうへパタパタと近づいてくる。今や猟兵は数人いる。探されて、見つけ出されない人数ではない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

仁上・獅郎
言語を解するひな鳥……ファンタジー、いえ、メルヘン?
しかし理性的に会話できるのであれば重畳です。
持ち前の[コミュ力][礼儀作法]で以て情報を引き出しましょうか。
ひな鳥を僕が[おびき寄せ]ていれば他の方のアシストにもなるでしょう。

驚かせて失礼。
僕は仁上獅郎、医師です。こちらの森に薬の材料探しに来ております。
もしも何か邪魔したようでしたら、大変申し訳ありません。
……ところで、立派な体躯の貴方の素性をお聞きしても?
ええ、さぞ凄いお方とお見受けしましたので。

ある程度情報を聞き出した後、上手く[言いくるめ]て穏便に追い返します。
無理なら話を聞き続け、追い返せれば影の追跡者に後を追わせてみましょうか。



近づいてくるひな鳥っぽいのを前に、仁上・獅郎は考える。
(言語を解するひな鳥……ファンタジー、いえ、メルヘン?しかし理性的に会話できるのであれば重畳です。なんとか会話で情報を引き出しましょうか。ひな鳥を僕が引き付けていれば、他の方のアシストにもなるでしょう)
 そこまで考えたところで、がさがさっと、ひな鳥っぽいのが声のした場所を覗き込む。猟兵と目が合った。途端、ひな鳥っぽいのは声にならない声を上げて後ずさり、網も落として木の幹にべったり貼りついた。
「ピチューーッ!た、助けてほしいのです!暴力反対なのですぅ……!」
「おおっと、驚かせるつもりはなかったんですよ!」
 慌てて立ち上がり、手を上げて武器を持っていないアピールをする獅郎。
「ピチュ……ボク、殺されますです……?」
「殺されませんですって」
 優しい困り笑いを浮かべて、獅郎は網を拾ってやる。
「はい、落としましたよ。驚かせて失礼。僕は仁上・獅郎、医師です。こちらの森に、薬の原料探しに来ております」
「お医者さんです?あ、ありがとうです」
 ぺこりと頭を下げて、網を受け取るひな鳥っぽいの。見れば見るほどもふもふである。そしてでかい。
「もしも何か邪魔したようでしたら、大変申し訳ありません」
「あ、あー……そうです。鹿が逃げてしまったのです……」
 ひな鳥っぽいのは空中でがっくりする。しっぽもだるんと垂れた。そう、尾羽ではない、しっぽだ。ベージュのひな鳥に、黒い猫のようなかぎしっぽが生えている。
 ――キメラ!獅郎はひな鳥の正体に即座に思い当たった。キメラであれば、オブリビオンに相違ない。
 獅郎は合点がいった。
(なるほど、先ほどの怯えようは、見た瞬間にこちらが猟兵だと分かったからですね。もう少し探ってみましょうか。とはいえ、答えに大方の見当はついていますが……)
「ところで、立派な体躯の貴方の素性をお聞きしても?」
「すじょーってなんです?」
「ええと……せっかく知り合ったので、自己紹介をしましょう」
「いいですね!自己紹介してもらったですもんね!ピチュチュ!」
「ええ、さぞ凄いお方とお見受けしましたので」
「えーそうですか~?えへへー、ボクはシッパイサクっていうです」
「失敗作……?」
 照れながら話すシッパイサクは、シッパイサクという意味が分かっていない様子だ。獅郎と話せるのが楽しくて仕方がないのか、にこにこしている。
「ご主人に言われて、森の動物を集めているです」
「ご主人というのは?」
「えっ。ご主人はご主人です」
「そ、そうですか」
 おそらくご主人というのが、予知に出た魔導師なのだろう。
 ピースがほぼ揃った。魔導師は森の動物をさらい、邪悪な術によってキメラを作っているのだと考えられる。命を弄ぶ行為に、医師の獅郎はふつふつと怒りを覚えた。
 だが、決して顔には出さない。
「引き留めてしまってすみません。そろそろ暗くなりますし、お帰りになりますか?」
「……帰れないです……。ボクは動物を捕まえるです。お医者さんは、お薬見つからなくても、暗くなる前に帰るですよー」
 パタパタと飛んでいくシッパイサク。しばらくは帰らない、いや、帰れないらしい。魔導師に命令されているのだろうか。
 獅郎はとりあえず、【影の追跡者(シャドウチェイサー)】を召喚してシッパイサクを追わせた。
 さて、どうしたものか。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
あたしは【クライミング】があるから西の岩石エリアの方を探索しようかねえ。
木が少ないなら空飛ぶひな鳥を見つけるのも楽だろうし。
【野生の勘】とユーベルコードの鋭敏感覚で動物やひな鳥を探すとしようか。
首尾よく見つけたら【迷彩】で岩場に溶け込むように体の色を変えて隠れながら追いかけていけば、首謀者の尻尾くらいは掴めるかねえ。
ひな鳥は何も知らなそうだし、どこかで魔術師本人が捕まえた動物を回収しに来るだろうからね。



池エリアと花畑エリアの間で、猟兵達がシッパイサクと話していた一方。
 ヘルメスから情報を聞いたあと、キマイラのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストードは、一人岩石エリアを目指していた。
(あたしはクライミングできるから岩にも登れるし、木が少ないなら空飛ぶひな鳥を見つけるのも楽だろうからねえ)
 しばらくして、ペトニアロトゥシカは岩石エリアに着いた。大きな岩がごろごろしている森という印象だ。ペトニアロトゥシカの思った通り、これまでの道よりかは木がまばらである。だが、これまでの道と同じく、動物の気配が感じられない。
 ペトニアロトゥシカはのんびりと伸びをすると、ふっと短く息をついた。
「少しばかり、真面目にやろうか!」
 そう言うと、意識を急激に集中させる。ESP、すなわち超感覚的知覚を発揮して五感を強化し、体内時間を加速させていく。ペトニアロトゥシカのユーベルコード【鋭敏感覚(シャープ・センス)】である。
 一瞬、ちらと遠くに聞こえただけの鳴き声を、引き伸ばされた音として知覚する。
「あっちだねえ」
 ペトニアロトゥシカはカメレオンスキンで肌の色を変えながら、音のしたほうへと走り出す。
 ほどなく、木の陰になった灰色の岩で休む、灰色のネズミを見つけた。貴重な動物とのご対面だ。ほかに羽ばたきや鳥の声は聞こえなかったため、ここで動物を見張るのがいいだろうとペトニアロトゥシカは考えた。ペトニアロトゥシカは身をひそめ、カメレオンスキンの色を安定させていく。やがて、肌の色は周囲に綺麗になじんだ。
 待つことしばし。
 パタパタと羽の音が近づいてきた。ペトニアロトゥシカだから聞き取れているのだ。おそらく、例のひな鳥が近づいて来ている。
 突然、岩の向こう側からバサッと網が投げかけられ、ネズミが捕らえられた。暴れるネズミは網に絡まっていく。そして岩の向こうから、スイカ大のひな鳥っぽいのが、ぬっと姿を現す。シッパイサクだ。
 シッパイサクは足で網を持つと、パタパタと森の奥へと飛んで行く。
 シッパイサクの後を、ペトニアロトゥシカはクライミングを駆使して、岩を物ともせずに追跡する。
 だが、肌の色を変えても、音は隠せなかったようだ。クライミングの音を捉えてシッパイサクが振り向く。
「誰かいるですか?ピチュチュ?」
 誰もいない。ようにシッパイサクには見えた。
「……ゆっ、幽霊さんですか?早く帰るです……!」
 ペトニアロトゥシカが迷彩で周囲に紛れ、さらに日が傾く中、鳥目のシッパイサクでは彼女を見つけられなかったのだ。
 追う途中、後ろから来た猟兵達と合流する。シッパイサクに追跡のユーベルコードをかけていたらしい。
 何人もの猟兵に追われる中、シッパイサクは南へと向かい、山の岩肌がむき出しになっているところで止まった。岩にサササッと翼で五芒星を描くと、岩の中央が透明になり、シッパイサクは奥へと入っていく。そしてすぐ、空の網を持って出てきた。
 あの岩の中が魔導師の拠点なのだろう。シッパイサクが森へ出かけていくと、猟兵達は手に手に武器を構えた。
「あたしが星を描くよ。一番に見つかっても、迷彩が効いてるからねえ」
 ペトニアロトゥシカは愛用の「蛮族の戦斧」を手に持ち、ほかの猟兵に先んじて岩の前へと躍り出た。猟兵達の準備が十分な事を確認し、素早く五芒星を描く。
 岩が透けて奥の工房が見えた。猟兵達は一斉に工房へなだれ込む。
 しかし、戦闘音が響くことはなかった。少し遅れて工房に入ったペトニアロトゥシカも、すぐに理由を理解した。
「あれ、誰もいないねえ」
 そう、工房には誰もいない。机や作業台、本の詰まった書架が部屋のふちにあり、部屋の中央には複雑で大きな魔法陣が描かれている。
 誰もいない、というのは語弊があったか。部屋のふちに置かれた大小の檻に、動物達が捕らえられている。先ほどのネズミもいるようだ。だが、キメラらしい姿は見受けられない。
 さて、今のうちに工房を調べたものか。それとも、話のできるシッパイサクを追って情報を引き出すべきか?

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヤクモ・カンナビ
人工物ばかりのスペースシップ生まれのわらわにとっては、漸く多少は落ち着ける場所に辿り着いたの
然し、マーラーどのの頼みを放り出して休んでおる暇はあるまいて
いずれ魔術師は帰って参るであろうが、その前に僅かでも調べを進めておかねばの

気にすべきは矢張り魔法陣じゃろうて
入る事なく分析を致すとしようかの
幸いにも資料は書架に十分じゃ、電脳ゴーグルにも解析ソフトウェアを走らせながら、機能解析を致すぞえ
機能があれば目的が判り、それと部屋の中のものを見比べれば、魔術師がどこで何をしておるかも判るであろうよ

案外、わらわのハッキング技術も解析の役に立つやもしれぬの…こういった代物は回路の様なものと小耳に挟んでおる故の



人工物ばかりのスペースシップで生まれたスペースノイド、ヤクモ・カンナビにとって、自然に囲まれたここは不慣れな場所だ。だが不思議と、多少は落ち着ける場所にも思えた。
 ヤクモは小さく首を振る。今は休んでいる時ではない。旅団を同じくするマーラーの頼みを、放り出す訳にはいかないのだから。ヤクモは魔法陣に向けて歩みを進めた。
「いずれ魔術師は帰って参るであろうが、その前に僅かでも調べを進めておかねばの」
 電脳ゴーグルをはめ、解析ソフトウェアを立ち上げる。魔法陣に描かれた文字らしきものに、カーソルがさっそく反応した。
(気にすべきは矢張り魔法陣じゃろうて)
 この部屋にあって、最も危険であり、最も冒涜的なもの。ヤクモは魔法陣に入らないよう位置取りを気をつけながら、近くにいた猟兵に話しかける。
「のう。わらわが解析を致す故、書架の資料を此方で捲っては貰えぬかの?三冊程であれば、同時に観ることも可能であろうよ」
 なら私も、僕も、と三人の猟兵が書架へと走っていった。
「さて……」
 ヤクモは魔法陣を視界内に収め、解析を開始する。さすがに取っ掛かりのない状態では、解析も迷走しているようだ。
 猟兵達が本をいくつか抱えて戻ってきた。
「おお、わらわに観えるよう、書を捲って賜れ」
 猟兵がパラパラと捲るページをキャプチャし、解析にかけていく。図表は大きな手掛かりだ。そして本と魔法陣に同じ単語を見つけては、漏らさず結び付けていく。
 不完全ながら構文解析の段階を経て、意味解析に入る。ヤクモは身に付けているハッキング知識を用いて、処理に割り込み、ヒューマンライクな判断で有り得ない処理をスキップする。解析ソフトウェアにすべて任せておく事もできるが、ヤクモにはソフトウェアの挙動が手に取るように判っていた。
 スペースシップの技術の粋を集めて作られた、デザインド・チルドレン。それがヤクモ・カンナビであった。電脳空間の1レイヤーの把握程度、ヤクモには造作もない事だ。
 魔法陣に、確率を伴って意味が付加されていく。解析率3割。これは……
「対象の分解処理と統合処理との間に、入力待ちがあるのう。要素の組み換えは魔導師による手動のようじゃ。魔導師がおらねば、キメラを作ることは能わぬじゃろうて」
 解析率3割2分。……これ以上は頭打ちだろう。
 だが、より大切な情報を拾ったのは、解析ソフトウェアなどではなく、現実に生きるヤクモ自身であった。
 ズボンの膝をついて本を捲っていた猟兵が立った時、床に膝が置かれていた場所と、その周囲とに微妙な色の差を認めた。
「! ……埃……!」
 そう。誤差を切り落としていたソフトウェアでは気づけなかった、かすかな情報。魔法陣に、埃がごくごく薄っすらと積もっている。ヤクモは困惑した。
「何故じゃ。此の侭魔法陣を走らせれば、動物と埃のキメラが出来てしまうぞえ」
 否。
 ヤクモは即座に別解を導く。
「魔法陣を暫く動かしておらぬのか!」
 ヤクモの言葉に、周囲の猟兵達からどよめきが上がった。
 だがその解にも否定要素がある事を、ヤクモは同時に理解していた。シッパイサクだ。シッパイサクはなぜ現在進行形で、動物を集めているのか?キメラを作っていないのであれば、動物を集める必要はないはずだ。
 姿の見えない魔導師。動物を集めているシッパイサク。そして、しばらく使われていない魔法陣。シッパイサクの行動だけが矛盾している……?
「ピチュチュ、お医者さんたちです?」
 一斉に振り返る猟兵達。入り口の岩が透け、パタパタ飛びながら小首を傾げているシッパイサクが、そこにいた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『遺跡探索』

POW   :    モンスターを力でねじ伏せる.罠を破壊する.攻撃から仲間を庇う等

SPD   :    モンスターを速度で翻弄.罠を解除する.隙をついて味方を援護する等

WIZ   :    モンスターを魔法で攻撃.罠、宝を探知する.傷ついた仲間の回復等

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ご主人に会いに来たです?」
 空の網を持って、シッパイサクが工房にパタパタ入ってきた。外が暗くなり、鳥目では動物を追えなくなったためだ。
「ピチュチュ、ご主人はまた奥にいるですね」
 猟兵達の視線を気に留めず、シッパイサクは書架のほうへと移動する。周囲の猟兵が道を開けた。
 シッパイサクは書架の前で、すぅっと息を吸った。
「マゴケラヒ!ピチュチュ」
 呪文を唱えると書架がふわりと浮く。書架の後ろには、レンガ造りの道が口を開けていた。道といっても、パッと見るだけで7~8本は分かれ道がある。迷宮だ。見た目の古さから推測して、もともとここにあった遺跡を、そのまま使ったのだろう。
「ご主人に会うなら案内するですよー。あ、でも危ないですよ?」
 シッパイサクはこてりと小首を傾げる。猟兵達がご主人に会いに来たと、早とちりしているようだ。とはいえ、実際その通りなのだが。
 猟兵達も、シッパイサクに言われる前から気づいていた。遺跡から、隠しきれない殺気が漂ってきている事に。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
(成功作が完成したか、魔導師が工房を別に移した可能性もあるけど、それだとシッパイサクの命令が更新されてないのは不自然。何かあって命令をできなくなった?オブリビオンが?猟兵か同じオブリビオンにしかそんな干渉できない筈。魔導師に何があった?)

「まあ、やることは大して変わらないか。」

あまり広くはなさそうだし、斧よりは格闘メインで行こうかね。
【暗視】もあるから暗くても問題ないし、味方を【かばう】ように前に出て、出てきたモンスターは【怪力】【グラップル】で掴んでユーベルコード【崩天地顎】で倒しながら進もう。余裕があれば、【投擲】で掴んだ相手を投げ飛ばして罠を遠くで発動させられないか試してみようか。



キマイラのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストードは、この状況を前に考える。
(成功作が完成したか、魔導師が工房を別に移した可能性もあるけど、それだとシッパイサクの命令が更新されてないのは不自然。何かあって命令をできなくなった?オブリビオンが?猟兵か同じオブリビオンにしかそんな干渉できない筈。魔導師に何があった?)
 普段は間延びした話し方をするが、考え事となるとハキハキと思考を進めていく。そうして至った結論も、またハキハキとしたものだった。
「まあ、やることは大して変わらないか」
 そう呟いた時、入り口から見えている横道から、動物達がぬっと顔を出した。いや、動物ではない。キメラだ。手前の道から出てきたのは、鹿の頭が二つあり、尻尾が蛇のキメラ。後ろの道から飛んで来たのは、猪に翼の生えたキメラだ。
 ペトニアロトゥシカは、猟兵達を庇うように前へ進み出る。壁が淡く光っているようで、暗視能力を持っているペトニアロトゥシカにとっては昼間も同然だ。
(あまり広くはなさそうだし、斧よりは格闘メインで行こうかね)
 斧をしまい、両手を空けるペトニアロトゥシカ。
 殺気を放つ鹿のキメラが、四本の角を向けてペトニアロトゥシカに突撃してくる。だが、角をペトニアロトゥシカがガシッと掴んで止めた。そして100kgはあろうかという鹿のキメラを怪力で掴み上げる。まさにバーバリアン!
「思いっきり、叩きつける!」
 キメラを超高速で地面に叩きつけた。ペトニアロトゥシカの【崩天地顎(コラプション・バスター)】だ。鹿のキメラはグエッと呻いて、受肉を解かれていく。
 だがすぐさま、一直線に飛んで体当たりをしてくる猪のキメラ。ペトニアロトゥシカは、空中からの突進をもガシッと掴む。勢いのある攻撃に押され、足が地を擦るが、すぐにぴたりと止まった。空中からの攻撃を受け切ったのだ。
「力業であたしに勝とうなんて百億万年早い、ってねえ」
 こうなればもうペトニアロトゥシカの独壇場だ。怪力で猪のキメラを掴み上げ、勢いよく投げ飛ばす。今度はわざと遠くに投げ飛ばしてみた。何か罠にでも引っかかってくれればいいが。
 猪のキメラは彗星のごとく飛んで行き、奥の壁に当たると、なんと壁がクルリと90度回転した。壁の向こうに落ちたキメラはバウンドし、受肉を解かれていく。
「ピチュチュ、よ、よくそこが抜け道って分かったですね……」
 工房の中から見ていたシッパイサクが、あまりにパワフルな戦いっぷりに圧倒されながら言う。
 それにしても、7~8本もの横道がフェイクとは、随分な迷宮になっているらしい。だがここはまだ遺跡の入り口なのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

塩崎・曲人
これさー、魔導師君もうとっくに死んでない?
いやオブリビオンだから死人なのは当たり前なんだけどさ
現状活動してる証拠があるのがシッパイサクだけとなると……うん
まぁどの道、魔導師がどうなってるのかは直接確認しないといけないんだが

「身軽さは自信があるんでね。サクッとこの遺跡を抜けるとしようかね」
【ダッシュ】を織り交ぜ速度に緩急をつけ遺跡を走り抜けるぜ
現れるモンスターは【咎力封じ】で縛り上げて転がしておこう
【咎力封じ】は罠の仕掛けに撃ち込んで罠を無力化するのにも使えるな
「この程度の障害じゃぁ、オレを止めるには不足だぜ魔導師さんよぉ!」



「これさー、魔導師君もうとっくに死んでない?いやオブリビオンだから死人なのは当たり前なんだけどさ」
 人間の塩崎・曲人が、抜け道の回転扉を蹴っ飛ばす。扉はくるくると軽く回った。
 後ろの工房で、シッパイサクが小首を傾げている。シッパイサクは先ほど、ご主人はまた奥にいると言ったはずなのだが……曲人の言う魔導師と、ご主人とは別なのだろうか。
 そんなシッパイサクの思いと、曲人の思いがすれ違う。
(現状活動している証拠があるのが、シッパイサクだけとなると……うん。まぁどの道、魔導師がどうなってるのかは直接確認しないといけないんだが)
 曲人は回転扉を足で止めた。
「身軽さは自信があるんでね。サクッとこの遺跡を抜けるとしようかね」
 扉をくぐると、また出てくるわ出てくるわ。扉の先にある6本の横道から、キメラが何体も姿を現した。それから正面奥の道の上には、ギロチンが剥き出しに設置されている。
「罠があっちゃ正解の道だって言ってるようなもんだぜ。魔導師君ってば頭悪いのかな~?」
 キメラ達が殺気を放つが、曲人は余裕の表情で駆け出した。キメラ達も曲人に向かって走り来る。だが曲人は緩急をつけた走りでキメラを翻弄し、着実に走り抜けていった。
「後ろだ……とか言ってみたいのオレだけ?」
 ニヤっと笑って、翻弄したキメラにユーベルコード【咎力封じ】を放つ。手枷、猿轡、拘束ロープが飛び、キメラを縛り上げた。
「おっと、このまま首チョンパは御免こうむるぜ」
 ギロチンに向けて【咎力封じ】の拘束ロープを飛ばすと、ギロチンはガッチリ固められた。もう落ちてくる事はないだろう。
「この程度の障害じゃぁ、オレを止めるには不足だぜ魔導師さんよぉ!」
 あとは直線コース。真っすぐ走ると、奥には行き止まり……いや、この行き止まりの壁は『岩』だ。
「なるほどね」
 曲人はササッと五芒星を描く。岩が透けた。岩をくぐるとそこには――
 月。
 暗い影絵のような木々を、まあるい月が上から照らしていた。やや寒い風が枯れ葉をカサカサと運ぶ。
 ここは奥の部屋ではない。外だ。案内もなく進んだ結果、遺跡の外に出てしまったらしい。
 先ほどのギロチンは、遺跡の中からは丸見えだったが、外から侵入する者には見えない位置にあった。外部からの侵入者用の罠だったのか。
 その一方。シッパイサクは、先ほど「ご主人に会うなら案内するですよー」とは言ったものの、誰からも反応がないので、工房で寝支度を始めていたのであった。

失敗 🔴​🔴​🔴​

仁上・獅郎
派手に戦える方は見ていて気持ちが良いですねえ。
僕は後方で治療に勤しんでおきます。
浅い傷はドクターズバッグの器具と[医術]で処置し、深い傷は「生まれながらの光」で回復を。
全て「光」で回復するよりは疲労は溜まりにくいでしょう。

前線ではなく後方にモンスターが来たら、僕も対処に出ますかね。
複数体いるなら動きを[見切り]、鋼糸で拘束した[敵を盾にする]事で同士討ちを誘発。
残った敵単体は[医術]知識と鋼糸で首をくいっと締め上げて[暗殺]……もとい気絶に追い込みましょう。

しかしまあ、気になる事が多いですね。
名探偵なら推理するかもですが、僕は職業的にワトソン役ですかね。
やーれやれ、何が待っているのやら。



 先行した猟兵が道に苦戦する一方、回転扉の奥では、猟兵とキメラとの団体戦が繰り広げられていた。今までの戦闘音に招かれたのか、キメラ達が大量に押し寄せたのだ。
 ある者は魔法でキメラを燃やし、ある者は槍で突き上げる。だがキメラ達もやられるばかりではない。野生から強化されたオブリビオンの力で反撃し、部屋は激戦の様相を呈していた。
「派手に戦える方は見ていて気持ちが良いですねえ」
 人間の医師、仁上・獅郎が呟く。口調こそのんびりしているが、体と頭はフル稼働していた。略式のトリアージをし、優先順位の高い順に……とできれば理想なのだが。激戦の中の治療は、妥協と計算がなければ成り立たないのだ。
 怪我人を背負って走り、場所を移動しながら、ユーベルコード【生まれながらの光】で緊急性の高い傷を癒す。先ほどまでいた場所にツララが突き刺さる。ユーベルコードの副作用で疲労が溜まるが、手を止めている暇はない。治した猟兵はまた戦場へ戻り、獅郎は今度は蛇に噛まれた患者の治療に移る。先ほど止血と毒の吸出しを指示しておいたから次は――
「口をゆすいでください。血清は時間が経っても有効ですから、どなたかにゆっくり急いで医療施設に連れていってもらってください。大丈夫ですよ」
 水を渡し、傷口の消毒をしながら落ち着かせるように言う。次は、
「死ねあああああ!!」
 他の猟兵に止められなかったキメラが三体襲って来た。蛇毒の患者を緊張させて、心拍数を上げるような事態は避けなければ。すなわち、キメラに速やかな『処置』を。
「あとがつかえていますからね、さっさと片付けますよ」
 先に真っ直ぐ突進してくるキメラの動きは、容易に見切った。足を狙って銅糸を飛ばし、拘束すればキメラは派手にすっ転ぶ。そこへ二体目のキメラが突撃し、同士討ちになって受肉を解かれていく。
 三体目のキメラは、でかい。熊をベースにしたキメラだ。真正面から戦えば苦戦は必至。だが、いくら大きかろうと必ず急所があるもの。そこさえ突ければ……
 と、先ほど【生まれながらの光】で癒した猟兵が、熊のキメラに後ろから斬りつけた。有難いヘルプだ!熊のキメラが後ろを向いたと同時に、獅郎はキメラの首に銅糸をかけ、締め上げる。少しして、熊のキメラは大きな音を立てて卒倒した。
 獅郎はヘルプをくれた猟兵に微笑んで会釈すると、早速次の患者の治療へと走る。
 それからしばらく。獅郎の奮闘もあり、キメラ達との戦闘は猟兵の勝利に終わった。讃え合い、喜び合う猟兵達。
 獅郎もようやく、ゆっくりドクターズバッグをしまいながら思う。
(しかしまあ、気になる事が多いですね。名探偵なら推理するかもですが、僕は職業的にワトソン役ですかね。やーれやれ、何が待っているのやら)

成功 🔵​🔵​🔴​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
(連れて行ってもシッパイサクにとって嫌なものを見せる可能性が高いし、最悪の場合これが罠で魔導師とシッパイサクを同時に相手する事もあり得るから、連れて行って良いか迷う所だけど、案内なしじゃ埒が明かないか。)

「案内なしだと大変そうだし、道案内をしてもらえるかい?」

どれだけシッパイサクが戦えるか分からないから、一応お医者さんも居る事だし近づかれたら怪我も覚悟で【かばう】つもりだけど、可能な限り【暗視】【聞き耳】【野生の勘】と【鋭敏感覚】で敵を早めに察知して、【先制攻撃】で石を【投擲】【スナイパー】で投げて敵を近寄らせない様立ち回ろう。

道すがら、シッパイサクに魔導師がどんな奴かを聞いてみようかな。


二條・心春
(失敗作って…生き物は道具ではありません。失敗も成功もあるわけないのに…!)

シッパイサクさんに道案内をしてもらいましょうか。
「私がシッパイサクさんのお仕事を邪魔しちゃいましたから、ご主人さんに謝りたいと思いまして。案内してもらえますか?」
うーん、シッパイサクさんは襲われないかもしれませんが、危なくないように私達の後ろにいてもらいましょう。
「召喚:蛇竜」でワームさんを呼び出して、基本的に戦闘はお任せして、私は罠とか仕掛けを、第六感を働かせて探してみます。シッパイサクさんはある程度把握してるんでしょうか?

同じように先に進む方がいれば、お邪魔でなければ協力させてもらえると嬉しいです。



 戦闘を終えたキマイラのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストードは、冷静に様々な可能性を考慮していた。これまで一人で生き抜いてきた経験のなせる業だ。
(シッパイサクを連れて行っても、シッパイサクにとって嫌なものを見せる可能性が高いし、最悪の場合これが罠で魔導師とシッパイサクを同時に相手する事もあり得るから、連れて行って良いか迷う所だけど、案内なしじゃ埒が明かないか)
 ペトニアロトゥシカは工房へ戻ろうとする。
 同じく工房へと足を向けた人間の二條・心春は、魔導師に文句を言ってやりたくてぷんぷんしていた。
(失敗作って…生き物は道具ではありません。失敗も成功もあるわけないのに…!)
 同時に向かった二人は、はたと目が合う。
「シッパイサクに道を聞いてみるのかい?」
「はい。そうしようと思います」
 キマイラのバーバリアンであるペトニアロトゥシカの、攻撃的な格好にも驚かず、ごく普通に接する心春。ペトニアロトゥシカはにかりと笑った。
「一緒に行こうか。あたしはペトでいーよ」
「はいっ、ペトさん。私は心春です」
 二人は、女子同士の柔らかい微笑みを交わし合う。心春のもたらした、春のような温かさだ。
 工房へ戻ると、シッパイサクが割とブサイクな顔でうとうとしていた。遺跡のほうがうるさくて、よく眠れないでいるらしい。シッパイサクは二人を見ると、パチリと目を開けた。ちゃんと目を開けていると可愛らしいのだが。
 ペトニアロトゥシカがからっと笑って、シッパイサクに話しかける。
「案内なしだと大変そうだし、道案内をしてもらえるかい?」
 対する心春は、ちょっと申し訳なさそうに言う。
「私がシッパイサクさんのお仕事を邪魔しちゃいましたから、ご主人さんに謝りたいと思いまして。案内してもらえますか?」
「あ、やっぱり案内するですか?お仕事の邪魔ですか??いいですよー案内するです!」
 心春が鹿を逃がした事を知らないシッパイサクは、快諾してパタパタと飛び立つ。ついでに大きなあくびを一つ。
「ふあぁ、こっちですー」
 ペトニアロトゥシカが見つけた回転扉を通り、大乱闘のあった部屋へ。道すがら、ペトニアロトゥシカが話しかける。
「ねえシッパイサクさあ。ご主人ってどんな奴なんだい?」
「あっ、私も聞きたいですっ」
「ご主人ですか?うーん、人間のオスで、ちょっと年寄りです。黒い布をかぶってるですよー」
「こういうのかい?」
 そう言うとペトニアロトゥシカが、自分の着ている短い黒いローブをひょいと摘まむ。
「ピチュチュ、そうですそうです。それの長いのです」
「長いローブ……魔導師!って感じですね」
「そーだね。分かりやすいのはいいね」
「あ、ここを曲がるです」
 回転扉の部屋の、右側二つ目の通路にパタパタ入っていくシッパイサク。今度は隠し通路ではなく、普通に見えている通路を通るらしい。通路は途中から下り階段になっている。
「シッパイサクさん。ご主人さんって、怖い方ですか……?」
 心春がおずおずと尋ねる。
「そうですねー。お母さんよりずっと怖いです。ぐえははははーって笑って、天才だーって言ってるときはいいですけど、すぐ怒って魔法でビビビってするです。痛いです」
「あたしが言うのもなんだけどさあ、頭悪そうだね?」
「そ、そう、うーん……えへへ」
 心春は困り笑いでごまかした。確かに魔導師は頭が悪そうだが、聞き捨てならない事も言っていた。怒りに任せてシッパイサク達を虐待していたのか。
「あ、ここを叩くです」
 階段の途中で、シッパイサクは天井にぺしっと体当たりする。すると、ごごご……と重苦しい音を立てて、ゆっくりと上り階段が降りてきた。階段の天井に隠し通路があるとは。これはさすがに、シッパイサクがいなければ気づけなかっただろう。
「10分くらいしたら戻っちゃうですから、急いで上がるですよー」
「はーいよ」
「はいっ」
 猟兵達は駆け足で隠し階段を上がっていく。
 上の階には、部屋と言っても差し支えないくらい、広い通路があった。奥には立派な扉があり、左右にはいくつかの道がある。どうやら魔導師の目前に来たらしい。慎重にいかなければ。
 その時、ペトニアロトゥシカの【鋭敏感覚(シャープ・センス)】が真っ先に遠くの変化を捉えた。荒い呼吸音、強まる殺気。ペトニアロトゥシカの勘が告げる。
「……来るよ。さっきよりも強いのが」
「えっ。し、シッパイサクさん、危ないから下がっていてください!」
「ピチュチュ!は、はいです!」
「お出迎えの準備をしなきゃねえ」
 ペトニアロトゥシカは大きめの瓦礫をいくつも拾い始める。
「わたしも準備を……!」
 心春は胸の前で手を組み、祈る。光が心春を包み、神聖な空気が周囲に広がる。
『力を貸して?私と一緒に戦ってほしいの』
 心春の声に呼応するように鳴き声が聞こえ、蛇のような体と翼を持つ竜の霊が召喚された。心春のユーベルコード【召喚:蛇竜(サモニング・ワーム)】だ。
「ワームさん、ペトさんと一緒に戦ってください!あ、できるだけ静かに……」
「んーじゃあ、あたしが打ち損じた奴を任せようかなあ。そーら来た!」
 足音で敵の位置を把握していたペトニアロトゥシカが、先手を打って瓦礫を高速で投げつける。スナイパー技能に習熟しているペトニアロトゥシカの投擲は、顔を出したキメラ達に見事に刺さる。何体かのキメラは、その場で受肉を解かれていった。
 なおも現れて向かってくるキメラに、心春のワームが翼をはためかせて飛び掛かる。二体、三体と蛇のような体で締め上げ、確実に受肉を解いていくのだった。
 そのとき、心春の第六感がぴんと働いた。
「シッパイサクさん。あの奥の扉って……ご主人さんのいる奥の部屋ですか?」
 目を見開いていたシッパイサクが、心春の声で我にかえる。
「ピチュッ?あ、違うですよー。ご主人はもっと奥です」
 やっぱりだ。
「皆さん!あの奥の扉、フェイクです!魔導師はもっと奥らしいので、派手にやっても大丈夫です!」
 おう!と応える猟兵達の声。キメラ達との大乱闘が再び始まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
念のため、あとから来る人達のために目印を付けておきましょう

今はキメラを作成していないのなら、もしかして動物を捕獲している理由は「キメラの材料」ではなく「食料」ではないでしょうか?
「もしかして捕らえた動物はご主人のご飯ですか?(違うならば何に使うのですか?)」と、シッパイサクさんに聞いてみます
(奥にいるのは魔導師がキメラ化したのではと予測)

私は素早いキメラの相手をしましょうか
戦闘時は「錬成カミヤドリ」で、数体を「フェイント」や拘束に使い、残りの錬成体で攻撃します
力はありませんが錬成体の数と「二回攻撃」の手数で補います



 ヤドリガミの桜雨・カイは、遺跡内で曲がる箇所や、もうすぐ閉じる隠し階段に目印を付け、後から来る猟兵にも分かるようにしていた。
「これでいいでしょう。おっと…」
 階段が重い音を立てて、元に戻っていく。
「このような絡繰りもあるのですね。世界は広いものです」
 ヤドリガミになって間もないカイにとっては、触れる物触れる物が新鮮であった。一方で、このような遺跡の仕掛けも、遺跡の主のためにあるのだと思うと親近感も湧く。
 同じ意味で、シッパイサクもカイのように、主のための存在だ。シッパイサクの主を倒しに来たという事に、若干の心苦しさを覚えながらも、カイは一人の猟兵としてシッパイサクに尋ねる。
「シッパイサクさん。もしかして、捕らえた動物はご主人のご飯ですか?」
「ピチュ?あー、そうかもしれないですね。それにしては多いと思うですけど」
 カイは、ふむ……と考える。奥にいるのは、魔導師がキメラ化したモノではないかと予測したのだが、この口ぶりではそういう訳でもなさそうだ。
「今はキメラを作っていないんですよね」
「作ってないですねー」
「何か、キメラと食料以外で使うのですか?」
「うーーん。骨を捨ててくるように言われるですから……ケッサクが食べてるですかね?」
「傑作…ですか?」
「ケッサクが奥にいるって聞くですよー。よく知らないですけど」
 なるほど。つまり、傑作であるキメラに餌を与えるために、シッパイサクに動物を捕るよう命じているという事か。
 だが、まだ不自然な点がある。傑作というほどのキメラができたのなら、人里を襲いに行ってもおかしくないはずだ。そうしていない、あるいはそうできない理由があるのか?
「ピチュ!?」
 シッパイサクのビビる声、素早いキメラが何体もカイに向かってきた。
「話は後にしましょう。心配は要りませんよ、シッパイサクさん」
 カイの操る『カイ』――人形遣いであるカイの人形こそがカイの本体――が18体に増える。ユーベルコード【錬成カミヤドリ】の成せる業だ。17体は複製だが、それらがカイの念力によって散開した。
 まず一番に向かってきたキメラに対し、複製した人形が長い髪を回して怯ませる。ほかのキメラにも、人形達が次々とフェイントや組みつきを仕掛けていく。
 勢いさえ削げば、素早さに特化したキメラなど丸裸も同然。待機させていた人形がそれぞれのキメラに向かって飛び出すと、キメラ1体あたり人形3体が囲んで叩く、叩く、叩く!一発一発は軽いが、数の暴力の前にキメラ達は反撃できず、やがて、順に受肉を解かれていった。
 カイが一度に6体のキメラを倒し、一気にキメラの総数が減った。残ったキメラも、ほかの猟兵達がほどなく倒し切るだろう。カイは複製した人形を一旦消した。
「シッパイサクさん」
「……ぴ、ピチュ!」
 シッパイサクはビクッと体を震わせる。カイの戦いに圧倒されていたようだ。
「大丈夫ですか?シッパイサクさん」
 カイの後ろで、最後のキメラが受肉を解かれていった。
「だ、だいじょぶです。案内、するです」
 頷いて、飛び立つシッパイサク。どこか頼りなげに、パタパタと左奥の横道に入っていく。カイは複雑な心境でシッパイサクの後に続いた。
 その後、シッパイサクに案内され、道を二回曲がった。カイは曲がり角に印を付けながら追う。そして――
「ピチュチュ、この部屋です」
 なんの飾り気もない扉の前に着いた。だが、誰もシッパイサクの言葉を疑う者はいなかった。
 強い、何者かの気配がする。本能が訴えてくるのだ。
「あのぉ……ボク、ここで待ってるです」
 シッパイサクはもごもごと何か言いたげだったが、きっとそれは言ってはいけない事だと、同じ作られた存在であるカイは察した。
「…はい、それがいいと思います」
 カイは、いつもより少しだけ強い口調で、話を切ってやった。
 そして猟兵達は、シッパイサクに背を向け、武器を構えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ハーピー』

POW   :    エキドナブラッド
【伝説に語られる『魔獣の母』の血】に覚醒して【怒りと食欲をあらわにした怪物の形相】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ハーピーシャウト
【金切り声と羽ばたきに乗せて衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ハーピーズソング
【ハーピーの歌声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 号令で最奥の部屋へ突入する猟兵達。
 突入と共に空間がひらけ、色とりどりの花が満開にさいたような、素晴らしい色彩の歌声が耳に飛び込んできた。
 古い遺跡の中にあって、不釣り合いに豪奢に造られた玉座に、強い存在感を放つ女性が座っている。いや、ただの女性ではない。女性と鳥のキメラ、ハーピーだ。ハーピーは美しく歌い、歌の節と節との間に肉を引きちぎっては食らっている。
 そのハーピーに肉を差し出す者がいた。黒いローブを来た初老の男……シッパイサクの証言から「ご主人」、魔導師に違いない。魔導師は玉座にすり寄って鼻の下を伸ばし、ハートが飛んでいるかのような熱視線をハーピーに向けている。あまりにも夢中で、猟兵達に気づいた様子すらない。
 ハーピーがバサリと翼を広げ、飛び上がる。
「あらあら~♪食事のほうからやって来たのよ~♪」
 はじける笑顔と、弾む豊満な胸。
「さあ可愛いあたしの子、あたしの為に肉を狩って頂戴~♪♪」
 その途端、魔導師がギンッと殺気に満ちた顔を猟兵に向けた。杖を取り、ハーピーを守るように前へと出る。
 なおも高らかに歌うハーピー。鋭いかぎ爪と歓喜に見開かれた眼は、間違いなく捕食者のそれであった。
ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定

己れが欲望のために自然の調和を乱すその所業、見過ごすわけにはいかないです

とはいえ、ご機嫌な歌声に煌びやかな玉座。見て取れるのはいびつな関係性?
必然、必定。ジズが、まず倒すべき相手を見定めるのです

魔導師に「ケッサクを止める方法や弱点」を素直に答えるよう〈賢者の影〉で問うのです
主導権が主人にあれば作品のハーピーは命令一つで止められるはず、仮に主導権が逆転してハーピーにあるならこの後の戦闘は言いなりの魔導師を捨て置いてターゲットを集中させられるのです

うまくユーベルコードが機能しなかったなら【覚悟】を決めて、今の関係性についてハーピーに挑発気味に問い詰めるのです



「己れが欲望のために自然の調和を乱すその所業、見過ごすわけにはいかないです」
 エルフのジズルズィーク・ジグルリズリィが前に出た。
 邪悪な魔導師を咎めに来た……はずなのだが、実際はどうだ。ハーピーのご機嫌な歌声に煌びやかな玉座。いびつな関係性が見て取れる。
「必然、必定。ジズが、まず倒すべき相手を見定めるのです。『ケッサクを止める方法や弱点を答えるです』!」
 ジズルズィークは問いと共に、自分の影を魔導師へと伸ばして放つ。ユーベルコード【賢者の影】だ。
 主導権が魔導師にあるのであれば、作品であるハーピーは命令一つで止められるはずだ。だが仮に、主導権が逆転してハーピーにあるのであれば、この後の戦闘は言いなりの魔導師を捨て置いてターゲットを集中させられる。
 魔導師は【賢者の影】だと気づき避けようとするも、初老の身では避けきれず、影に捕らえられた。
「答えるとでも思うたか、この愚か者が!ッ、ガハッ……!」
 魔導師が体を折る。質問に対して答えなかったため、内部からダメージを受けたようだ。
「愚行、愚策。愚か者はどっちなのです」
 魔導師にダメージを与えはしたものの、肝心の情報は何一つ掴めていない。魔導師は知を極めただけあって用心深いようだ。であれば、問う先を変えるしかない。
 なおも強い存在感を放ちながら、歌い舞うハーピー。ジズルズィークは覚悟を決めて口を開く。
「こんな愚か者を手下にして、女王気取りですか?」
「あらあら~♪女王だなんて~、あたしはこの子のお母さんなのよ~♪」
「お母さんですか。子供を盾にする母親など、母親失格です」
「いやだわ~♪可愛い子があたしを守ってくれるのよ~、ああ、なんて美しい話~♪」
「傑作様あああ!その通りです!儂が守って差し上げますううう!貴様ッ、傑作様に何という口を利くのだ!!」
 魔導師が怒りに任せて魔法弾を放つ。ジズルズィークはタンッと退いて避けたが、着弾して瓦礫を散らした魔法弾は、地面をやすやすと抉っていた。これは……【ハーピーズソング】で力が強化されているのか。
 ジズルズィークの挑発的な問いかけによって、敵の関係性が見えてきた。だが、どうやら言いなりの魔導師を無視する訳にもいかないようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
(ケッサクにお母さんに魔導師で3、ここに居るのは2、数が合わない。魔導師が居るのは明白だから、あれはどちらかか『両方』か。どうにも後味の悪い戦いになりそう。)

「一応念のために聞くけどさあ。人と同じように程々に獣を狩って、慎ましく生きる気は無いんだよね?」

戦うなら【ダッシュ】【見切り】でハーピーシャウトの範囲から逃れつつ、【怪力】【投擲】【スナイパー】【飛天放弾】で瓦礫を投げて攻撃するよ。
空いてる片手で【2回攻撃】で魔導師の方にも投げよう。
当たらなくても、他の猟兵の【援護射撃】になればいいし。
余裕があれば、魔導師本人も掴んで投げつけてやろうかな。

「上でふんぞり返ってちゃ、こっちには届かないよ。」



(ケッサクにお母さんに魔導師で3、ここに居るのは2、数が合わない。魔導師が居るのは明白だから、あれはどちらかか『両方』か)
 キマイラのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストードは、瓦礫を手でもてあそびながら考える。
(……どうにも後味の悪い戦いになりそう)
 嫌な予感というものは、往々にして当たるもの。小さくため息をつくと、ペトニアロトゥシカはハーピーに届くように大きめの声で話す。
「一応念のために聞くけどさあ。人と同じように程々に獣を狩って、慎ましく生きる気は無いんだよね?」
「ちかごろ食べ物が少ないの~、そろそろ人間の住処に行くのよ~♪人間いっぱい、おなかいっぱい~♪」
「これはダメだね」
 まあ分かってたけど。ペトニアロトゥシカは心を決めて、瓦礫をぐっと握った。
 ハーピーが、ペトニアロトゥシカを舐めまわすように見て、うっとりと歌う。
「あなたは~食べ応えがありそうなのよ~♪あたしが~カットしてあげるのよ~♪♪」
 一瞬、ハーピーは翼をすぼめた。【ハーピーシャウト】が来る、ペトニアロトゥシカはすでに走り出していた。
「お断りだよ」
「♪ーーーーーーーーー!!」
 翼を振り上げた衝撃波と金切り声が瞬時に飛び、レンガが次々とめくれあがる。走るペトニアロトゥシカを高速で追う衝撃波。ペトニアロトゥシカを飲まんとしたその時、衝撃波は風に変じた。
 金切り声でキンキンと耳は痛むが、ペトニアロトゥシカに外傷はない。間一髪、【ハーピーシャウト】の範囲外まで逃げ切った。
「ふう。上でふんぞり返ってちゃ、こっちには届かないよ。今度はこっちの番だねえ」
 ペトニアロトゥシカは瓦礫を両手に持ち、右腕を振りかぶる。と、体中切り裂かれた魔導師を目の端に捉えた。
「……儂は……?」
 魔導師が茫然としている。ペトニアロトゥシカはほぼ反射的に対象を切り替え、魔導師へと瓦礫を投げつけた。
「よっと!」
「あぶないのよ~わたしの子~♪」
 翼の衝撃波で瓦礫を撃ち落とすハーピー、歌にまどろむ魔導師、今だ!
「こっちが真打ち、【飛天放弾(マイティ・キャスト)】!」
 ペトニアロトゥシカはガッと一歩踏み出し、怪力の限り左手の瓦礫をハーピーにぶん投げる。
 攻撃を放ったばかりのハーピーは回避もできず、瓦礫がめり込みながら飛ばされていった。
「ハッ。傑作様あああ!儂の傑作様に何という事を!!」
 魔導師は再び怒りに任せて、杖に魔力を集中させ始める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仁上・獅郎
あー……もしかして、主従が逆転したわけですか?
となると最終的には両方倒さねばなりませんが、まずは脅威となるハーピー……「傑作」さんの方をどうにかしないと。

魔導師には拳銃で牽制し、攻撃を妨害します。
魔法弾などが撃たれれば、[見切り]と[第六感]にて回避を。
ハーピーの方は……歌も羽ばたきも厄介ですね。であれば。

魔導書を開き、[高速詠唱]で【白熱縛鎖】を使用。
歪めた空間から灼ける鎖を射出し、ハーピーを拘束しましょう。
焼かれながら、美しい声で歌えるでしょうか。
縛り上げられて、綺麗な翼を振るえるでしょうか。
実に合理的な妨害方法……だとは思いますが。
少々残酷でしょうかね?まあ、気にしないでおきましょう。


ヤクモ・カンナビ
先の魔法陣の分析の際、わらわは魔導師の術式を掴んでおる
恐らくは、癖のような場所も見つかるじゃろうて
ならば、魔導師が今使うておる術そのものを見た訳にはあらねども、その癖を手がかりにユーベル・コードハックを仕掛ければ、無力化も決して不可能ではあるまいの

即ち、ナノマシンブレインを経由して、サイキック製プログラムを魔術構造に作用させて参るのが、わらわの此度の仕事じゃの
激情に駆られた状態であれば、人は周到なセキュリティ対策を忘れ、手っ取り早い構造設計に頼りがちなものじゃ
好ましからざる『癖』が露出した部分を突いて術に干渉し、強制停止させて参るぞえ
攻撃さえ止めれば、残りは皆々様が上手くやってくれるじゃろうて



「あー……もしかして、主従が逆転したわけですか?」
 人間の医師、仁上・獅郎は少し呆れて頬を掻く。
 初老の魔導師がハーピーに入れあげ、周囲に怒鳴り散らしている様子は、何にせよ気分のいいものではない。最終的には両方倒さなければならないのだろうが。
 獅郎が腕を振ると、袖から小型の拳銃が顔を出し、魔導師へと数発火を噴いた。魔導師は溜めていた魔力を獅郎へと向け、魔法弾を放つ。交差する銃弾と魔法弾。溜めていただけあり、銃弾は空中で焼失し、過剰に放たれた魔法弾が獅郎に迫る。それを分析している目があるとも知らずに。
 獅郎は、攻撃が自分に向く事は予想済みだった。直線的な魔法弾の軌道を読み、身体の動くままに回避をする。
 次の瞬間、美しい圧倒的な歌声が襲った。魔導師が雄たけびを上げ、目に見えて力を上げる。魔導師の後方でハーピーが歌い舞っている。瓦礫の直撃を受けても、まだ元気なほどに防御力が高いらしい。
 先に脅威であるハーピーをどうにかしなければならない。歌ももちろんそうだが、衝撃波も、また飛ばされれば厄介だ。
「であれば……!」
 獅郎は魔導書を開き、高速で呪文を紡ぐ。
『時空の外神よ。その憤激を、深淵よりの光と鋼鉄の束縛と化し、我に貸し与え給え』
 魔導師が次のアクションを取るよりも速く、歪んだ空間から灼けた鎖が射出された。思わぬ場所からの不意打ちに、ハーピーは驚き、がんじがらめにされる。獅郎のユーベルコード、【白熱縛鎖(アフォーゴモン)】だ。
「ギィイャアアアアアアアアアアアア!!」
 ハーピーが金切り声を上げる。灼けた鎖が絶え間ない激痛を与えるのが、このユーベルコードの真価だ。
 鎖の放つ白い光に照らされながら、獅郎は小さく笑う。
「焼かれながら、美しい声で歌えるでしょうか。縛り上げられて、綺麗な翼を振るえるでしょうか」
 魔導師は慌てて、ハーピーの拘束を解こうと杖を振るう……が、魔力が集まらない。
「時間を稼いでもろうたの。もはや魔導師の奴めは無力じゃ」
「カンナビさん」
 そこには、スペースノイドのヤクモ・カンナビが、ひょうひょうと構えていた。
「いかなユーベルコードと雖も、然るべき場所さえ抑えてしまえばわらわの勝ちじゃ。仁上どのの戦いは、魔導師めのよい分析材料であったわ」
 魔法の使えない魔導師は、素手でハーピーの鎖と格闘を始めた。哀れな絵づらだ。
「何をしたんです、カンナビさん……?」
 あれだけ危険であった魔導師が、今や無力。獅郎が呆気に取られて尋ねる。
 ヤクモは、魔導師のユーベルコードに対して、サイキックによる無効化プログラムをぶつけていた。ヤクモのユーベルコード、【ユーベル・コードハック】だ。ヤクモは敵の無力化を軽々とこなしたようでいて、その実、裏には緻密な観察と分析、計算と構築があった。
 工房で魔法陣を分析する際、ヤクモは魔導師の術式の癖を掴んでいた。さらに獅郎との戦いを観察する事で、実際に使う術の癖も把握した。
 癖とは、時に長所となり短所となる。術式の癖がセキュリティホールを生むのだ。特に、激情に駆られた状態であれば、人は周到なセキュリティ対策を忘れ、手っ取り早い構造設計に頼りがちになるというもの。そして、実際に魔導師もそうであった。
 ヤクモはナノマシンブレインを経由し、サイキック製プログラムを魔術構造に作用させる事で、魔導師から魔法を奪い去ったのだった。
「魔導師めの、好ましからざる『癖』が露出した部分を突いて術に干渉し、強制停止させただけじゃ」
 焼けた手で鎖を千切る魔導師を見て、獅郎は思わず声のトーンを落とす。
「……カンナビさん、結構えぐいことしますね」
「いやいや、仁上どのには勝てぬよ。ハーピーを斯様に拘束して燃やすなど」
「いやぁ、実に合理的な妨害方法……だとは思いますが。少々残酷でしょうかね?」
 まあ、気にしないでおきましょう、とばかりに、獅郎は軽くハンズアップ。ヤクモもそれを見て、小さく笑うのだった。
「攻撃さえ止めれば、残りは皆々様が上手くやってくれるじゃろうて」
 だがハーピーは翼を振るい、鎖を半ば払う。半ば拘束されたままのハーピーが、怪物の形相を猟兵に向けた。力ない魔導師はたじろいで下がる。ハーピーの足の大きなかぎ爪が、一歩、二歩、歩むごとに瓦礫を砕き、みるみるハーピーの力が上がっていく。敵はまだ、奥の手を残している。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

二條・心春
魔導士さんには色々と言いたいことがありますが、これはだめそうですね…。

強化されたハーピーの攻撃を耐えるのは厳しいかもですが、飛び回られては攻撃も当てづらいですよね。まずは敵の攻撃を「第六感」とか「オーラ防御」で耐えましょう。
敵はとても強い…けど、私は負けるわけにはいきません。この力が私の唯一の取り柄だから…!

チャンスがきたら私の媒介道具(タブレット端末)を使って、UDC(タコ型)を具現化して、タコ足で拘束してもらいましょう。
私は一人ではありません。信じられる仲間や、この子達がいますから。…あなた達はどうなんですか?
あとは槍を使って【ドラゴニック・エンド】を当てましょう。



(魔導師さんには色々と言いたいことがありますが、これはだめそうですね……)
 怒りのやりどころがないまま、人間の二條・心春は戦況を見定めていた。その様子がか弱そうに映ったのか、ハーピーが捕食者の目で心春を捉えた。
(食べ……られる……!?)
 怖い事は数あれど、心春にとって初めて味わう恐怖だった。
 ハーピーは心春に向かってダッシュし、絡んだ鎖が盛大に音を立てる。食欲をあらわにした怪物の形相で、足のかぎ爪を大きく振るった。
 心春は勘に頼って身体を動かすも、心春にかぎ爪が迫る。だが――
「ぐくぅぅッ!」
 ずざざざっと地を擦って後退するハーピー。心春の周囲には、心春を助けんと何人もの猟兵達が武器を振るっていた。
「皆さん!」
 猟兵達はハーピーを警戒しながら、心春に親指を立ててみせる。敵はとても強い、だが、皆がいる。それに、術に使われた動物達のためにも、決して負けるわけにはいかないのだ。
(この力が私の唯一の取り柄だから……!)
「ああ~♪ああ~♪おなかがすいたのよ~♪♪」
 ぐるりと怪物の顔を周囲に向けるハーピー。ふと、足元で腰を抜かしている魔導師を見つけた。
「うふ♪うふふ、うふふふふふ~♪」
「は、嫌ッ、嫌だあああ!誰か助けっ、助けて、助けてくれえええええ!!」
 ゴキッ。バキン。グチッ、ガリッガリガリ。
 魔法の力を失った魔導師の、あまりにも凄惨な最後に、心春が何か言ってやりたかった気持ちも吹き飛んでしまった。いや、この状況を見つめている場合ではない。チャンスだ!
 心春はタブレット端末を素早く操作し、媒介としての力を解放する。その場にタコ型のUDCが現れた。
「拘束してください!」
 魔導師を食べていたハーピーに、タコ型のUDCが組み付く。心春はドラゴンランスを構えた。
「キャアァ~!?」
「私は一人ではありません。信じられる仲間や、この子達がいますから。……あなたはどうなんですか?」
「あたしには~、この可愛い子が~……可愛い子?どこ?どこなの?」
「……あなたが食べているそれが!あなたの可愛い子ですよ!」
 心春は悲鳴のように叫びながら、「我が子」をきょろきょろ探すハーピーに向かって助走し、槍を鋭く投げた。多くの命を飲み込んできたハーピーの腹に、槍が突き立つ。
「キャアアーーーーーーーー!!」
 UDCは役目を終えてフッと消えた。
「これでお終いにしましょう……【ドラゴニック・エンド】!」
 心春の声に応じ、巨大なドラゴンが召喚される。
 ドラゴンは槍を目印にして、高速で体当たりを仕掛けた。ハーピーは足の鎖がもつれ、逃げようにもドラゴンの巨体からは逃げきれない。どっ……!鈍い音がした。
 ハーピーを押し潰すようにしていたドラゴンが、だんだんと消えていく。その下で、ハーピーも受肉を解かれて消えていく。心春の槍だけを残して。
 心春はその場に立ちすくみ、頬を濡らしていた。だが、すぐにぐしぐしとぬぐう。
「……すみません、泣いちゃって……。私、やっぱり、本当は……弱くって……」
「弱くなんてないです。皆を助けてくれたのです」
 声のしたほうに心春が振り向くと、部屋のドアを少しだけ開けて、シッパイサクが顔を出していた。
「シッパイサクさんっ」
「ボクらのために泣いてくれて、ありがとうです。アナタは弱くなんてないですよ。優しいのです」
 シッパイサクは、嬉しそうに笑った。心春はまだ気持ちの整理がついていなかったが、少しだけ、つられて微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​


「お医者さんたち。ご主人と……、……お母さんを、こ、殺してくれて、ありがとうです……!」
 シッパイサクは、大きな目に大粒の涙を浮かべた。幼いひな鳥の心が、殺してくれてありがとうなどという言葉に耐え切れなかったのだ。
「ボクだって、この森に……生きていたです。ボクや、ほかの森の仲間が、『いてはいけないモノ』になったんだって、分かってたです……。お医者さんたちは、ボクらを殺しにきたですよね?見たときに、すぐ分かったです……」
 ぼろぼろと涙をこぼしながら、シッパイサクは話す。
「最初はっ、こわくて……殺さないでって、言っちゃったですけど……。お医者さんたちが、ボクらを殺すのが、この森のためだって、やっぱり思ったです」
 鼻水も盛大に垂れている。ずびずびしながら鼻声で話す。
「ボクは……ご主人から、命令を変えてもらえなかったですから……。明日になったら、森の仲間を狩りにいくです。……そんなの、そんなことしたら、ダメ、なのです……でもしなきゃダメなのです……」
 シッパイサクは、丸い体を折り曲げて、死の恐怖に震えながら頭を下げる。
「だから。ボクのことも殺して、『許されない存在』を、ぜんぶ……無くしてくださいです」
ヤクモ・カンナビ
後は任せて…とは思うておったが、気が変わったの
矢張り此処は“美味しい処を戴く”としようかの

「殊勝な事じゃ。其れに免じて、直ちに終わらせてしんぜようぞ」
今度はユーベル・コードハックをシッパイサクに使うてみるぞえ
キメラ合成の術を無効化する事で、シッパイサクを元の素材に戻せるやもしれぬ
無論失敗し、血肉の塊と化すのみやもしれぬし、エレクトロレギオンに刻ませる他のうなるやもしれぬ…成功したとしても、“今のシッパイサク”は残らぬやもしれぬ

グリモア猟兵として、斯様な事は他の猟兵にさせられぬ

「安心せい、過去(オブリビオン)は常に現在の糧じゃ」
半ば船の生体パーツとして育てられたわらわは、感傷など見せて遣らぬぞえ



「後は任せて……とは思うておったが、気が変わったの。矢張り此処は“美味しい処を戴く”としようかの」
 スペースノイドのヤクモ・カンナビが、シッパイサクの前に進み出た。
「殊勝な事じゃ。其れに免じて、直ちに終わらせてしんぜようぞ」
 ヤクモは、魔導師の術を止める際に使った、【ユーベル・コードハック】を発動する。キメラ合成の術を無効化できれば、シッパイサクを元の素材に戻せるかもと考えたのだ。
 現実空間・精神空間・電脳空間が互いに垂直に展開する。魔法陣の解析率は3割2分しかなかったが、その知識を用いてハッキングするに――
 なんとも脆い構造で要素が混じり合い、結合しているではないか。オブリビオンだからこそ、これで生きていけるのだろう。オブリビオンが生きているというのはおかしいかもしれないが。
「むう……」
 結合を解けば、ただの血肉の塊と化すかもしれない。しかし、結合を解かなくても、どのみちシッパイサクは殺さなければならないのだ。
「? ???」
 シッパイサクがヤクモを見上げている。震える体、大きな目に溜めた涙もぷるぷると震えている。
 放っておいても死ぬのであれば、微々たる可能性であっても助かる目に賭けるのがいい。ヤクモはそう判断した。0%と1%では、天地の差があるのだから。それにヤクモもグリモア猟兵の一員だ、こんな事は他の猟兵にはさせられない。自分がやらなければ。
「では……参る」
 ゆっくりと手を開きながら、要素を掌握していき……
 ぐっと握った。
「ギャオオオオオオオ!」
 指をすり抜ける要素達。猫のような声を上げ、ぐにゃりと形を変えるシッパイサク。
「!」
 分離失敗だ。シッパイサクのベージュの体が黒く染まり、「後ろ足」で地を蹴ると「前足」の鋭い爪でヤクモに襲い掛かる。
「エレクトロレギオン!」
 ヤクモの召喚に応じ、小型の機械兵器―レギオン―が2体、左右からシッパイサクに斬りかかった。刻まれた十字はまるで墓標のようであった。地に落ちたそれは、ゆっくりと受肉を解かれて消えていく。ありがとうと言えるだけの精神も、持ち合わせぬままに。
 ヤクモは、ひとつ息をついた。
「……安心せい、過去(オブリビオン)は常に現在の糧じゃ」
 色のない声で告げ、踵を返す。
(半ば船の生体パーツとして育てられた身じゃ、感傷など見せて遣らぬぞえ)
 そう考えるヤクモの、見えない傷が痛む。
 それでも、この傷を、この事件を踏み越えていかなければならない。この事件を生みだした者がオブリビオンであり、そして、オブリビオンに苦しむ未だ見ぬ者達がいるのだから。胸に痛みを抱えながらも、ヤクモの目は、凛と前を向いていた。
 こうして猟兵達は、森から去っていくのだった。
 それを森から見送る者がいた。猟兵達が逃がした鹿や、ほかの動物達だ。彼らは現在を生きる者として、この森で命を繋いでいくのだろう。
 猟兵達の守った、未来へと。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月25日


挿絵イラスト