エンパイアウォー⑦~神さまのいうことには
●飛んで火に入る
舞台は関ヶ原。剣戟の音が響く戦火の渦中。
関ヶ原の戦いといえば、知らないものはいないほど有名な話だろう。
それは起点であり、そしてまた転機でもある。かつての歴史においては、この戦いが時代の分岐点になったともいえるような大きな戦いだ。
そんな近いようで遠い、昔の話。けれど何の因果か──こうして関ヶ原はいま再び、時を越えて戦火に包まれていた。
車懸かりの陣。
数々の戦場を制圧しながら進む猟兵たち幕府軍の前に立ち塞がったのは、そう名付けられたひとつの陣形を展開した軍勢だった。
軍神の類まれなる統率力を以てこそ可能とされたその超防御型攻撃陣形は、一計を講じた軍神──上杉謙信を中心にして、オブリビオンが円陣を組むように展開している。その数は決して多くはないのだろうけれど、端から端までが上杉軍の精鋭部隊であるという懸念は大きい。
その中の、ほんの一部。きゅるん、とつぶらな瞳と目が合った気がした。
黒目がちな目元に、鮮やかな赤いくちばし。そしてもちもち、もふもふとした柔らかな白い羽毛。
「ぴぴっ!」
「ぴっぴぴぴー!」
──ぶんちょうさま。
侮ることなかれ。何を隠そう彼らもまた、上杉謙信率いる精鋭部隊なのである。
●火中の栗
「これは確かに、もふもふだね……」
実に由々しき事態である。
真剣な表情で過去の資料から精密に描かれたオブリビオンの姿かたちを見つめるのは、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)だ。
猟兵が来たことに気付くと、クリスは左右に揺れる尾を伏せて気を取り直すようにシルクハットの鍔を摘みあげる。やぁ、親愛なる君。
「君も、上杉軍の話は聞いているかな?」
幕府軍を蹂躙すべく関ヶ原に陣形を展開させた上杉軍──軍神、上杉謙信。彼もまた、オブリビオン・フォーミュラである『織田信長』に付き従う『魔軍将』のひとりだ。
彼に他の魔軍将のような特殊な能力がないことは、既に分かっていた。しかし同時に、その代わりとなる布陣が既に敷かれていることも確認されている。
その布陣こそが、車懸かりの陣だ。
自身の周囲に配置した上杉軍が、全軍で風車の如く回転しながら最前線の兵士を目まぐるしく交代させるという巧みな采配と隊列変更で、自身の蘇生時間を稼ぐための陣形だとクリスも聞いている。
「上杉謙信、その本丸を叩くためにまずは最前線の精鋭部隊を倒さなくてはならないんだ。このぶんちょうさまたちも、その一部だよ」
おそろしく、丸く愛くるしい姿のぶんちょうさま。
しかし精鋭部隊というだけあってか、最前線に立つ彼らは最高のコンディションで猟兵へ襲いかかってくるだろう。
「注意すべきは彼らの防御力の高さと、回復力かな」
きっと並大抵のダメージでは、耐えきったうえで回復してしまうだろう。
そのため、猟兵は高い防御を撃ち抜くような全力の攻撃で撃破していくか、または回復しきるより先に鋭い連携攻撃で彼らを撃破していく必要がある。
「少数だけれど、精鋭というからには油断できない。上杉謙信を倒すためにも、君には確実にこの部隊を叩いてほしいんだ」
猟兵の瞳を覗くように見上げたクリスは、そうしてそっと微笑む。
厄介なオブリビオンではあることは分かっている。それでも、これから戦場へと向かう猟兵を見る瞳に心配の色はなかった。
「──君なら大丈夫さ。さぁ、いってらっしゃい」
ただ、信じているのだと。
確かな信頼を込めて、グリモアが瞬く光の向こうへ消えていく背中をクリスは見送った。
atten
お目に留めていただきありがとうございます。
attenと申します。特殊シナリオになりますため、以下ご留意ください。
▼ご案内
ふわふわもふもふですが、とてもかたいです。
攻撃を通すためにはひと工夫がいるようです。どう対策を取るかなど思うままにお書きください。
よろしくお願いします。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦
『ぶんちょうさま』
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POW : 文鳥三種目白押し
【白文鳥】【桜文鳥】【シナモン文鳥】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : 文鳥の海
【沢山の文鳥】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 魅惑の視線
【つぶらな瞳】を向けた対象に、【嘴】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:橡こりす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ソラスティベル・グラスラン
偉大なる軍神が得意とした堅牢なる陣形、車懸かりの陣!
攻略は困難極まるでしょう…ですがやらねばなりません
退けば代償はこの世界の民が受けるのですから
―――【勇気】を信じ、進みましょうッ!!【鼓舞】
竜の翼で飛び、空高くから奇襲を
他の味方とは別方向から、同じ場所に攻撃を集中
【ダッシュ】し一気にぶんちょうさまの群れへ
迫る文鳥三種をオーラ防御で触れる前に弾き、【見切り】で紙一重に回避
スピードを落とさずただただ前へ、雷の如く!
固い防御を正面から貫く【鎧砕き・怪力・範囲攻撃】の大斧を!
…その見た目は確かに脅威
このような場でなければ愛でたでしょう、ですが!
守るべきものを忘れなければ、わたしは戦えます―――ッ!!
フィオリーナ・フォルトナータ
なるほど、それでは彼らの堅牢なる守りを打ち砕きましょう
わたくしはただ、全力で戦い続けるのみ、です
状況が許すのであれば他の猟兵の皆様と協力して戦います
まずはトリニティ・エンハンスにて攻撃力を重視しての強化を行い
戦場を疾く駆けながら渾身の力を籠めて剣を振るいましょう
ぶんちょうさまも、彼らが放つ文鳥も大層愛らしくはありますが
オブリビオンであるのならば等しく骸の海へ還すべきもの
剣を向けることに、躊躇いはありません
攻撃力を下げられる前に、斬り捨てましょう
愛らしい姿に躊躇うなどして攻撃を向けられない方がおられるならば庇いに
力を溜めつつ好機を見出したならば一気に肉薄し
聖煌ノ剣でぶんちょうさまの守りを砕きます
●急がば回れ
青く透き通る空を、一陣の風が吹き抜けていく。
夏と言うにはあまりにも澄み渡った空気が、白い草原を揺らしていた。
その清らかな景色はまるで人びとの理想郷のように美しい。
けれど、けれども。そこは決して、理想郷などではなかった。
響き渡るは剣戟の音、銃撃の音、そして軍勢を率いる法螺の音。
ここは今まさに──戦火の渦中。
鎬を削りあわんとした両軍が相見える、関ヶ原である。
故に。開けた地を迂回することなく、凄まじい勢いで押し寄せてくる軍勢がそこにはあった。その先頭に位置する部隊こそが、上杉軍が仕掛ける車懸かりの陣を形成するための要となる精鋭たちだ。
「偉大なる軍神が得意とした堅牢なる陣形、車懸かりの陣......!」
迫り来る軍勢の勢いにも臆することなく、静かな瞳で前を見据えていたソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は小さく息を呑む。
この陣形、そしてこの部隊の攻略は困難を極めるだろう。一目見た瞬間には、ソラスティベルは決して容易くはない現状を理解していた。
けれどそれでも、やらねばならない時はある。猟兵が彼らを倒さなければ、上杉謙信に手は届かないのだ。そして何よりここで自分たちが退いてしまえば、その代償はこの世界の民が受けることになるのだから。
「──勇気を信じ、進みましょうッ!」
晴れやかな声とともに竜の翼を広げ、空高くソラスティベルは舞い上がる。
その風を受けてそよぐ桃色の髪を撫で付けながら、フィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)もまたゆるりと微笑んだ。
「......なるほど。それでは私も、彼らの堅牢なる守りを打ち砕きましょう」
例えどれほど堅牢に見える壁であっても、信じる勇気に進めない道などないのだから。
ならばあとはただ、その心を強く持ち──全力で戦い続けるのみだろう。
そして一気に空中を滑空していくソラスティベルに続き、フィオリーナもまた確かな未来を切り開くためにひと振りの剣を握り締める。それは『Sincerely』と名付けられた、金色を編み上げた束が特徴的なルーンソードだった。渾身の力を籠められた剣はフィオリーナの意思と太陽の光を受けて眩く煌めき、駆け抜ける白い草原に一閃を描こうと振り上げられる。
しかし、フィオリーナの剣が、ソラスティベルの大斧がぶんちょうさまに迫るよりも早く。戦場には高らかな声が響いた。
「ぴっぴぴー!」
言葉にするなら、「者ども掛かれー!」といったようなものだろうか。号令地味た鳴き声が響けば、最前線に立つぶんちょうさまから瞬く間に3種の文鳥が放たれる。それぞれ白文鳥、桜文鳥、シナモン文鳥と異なる特徴を持つ文鳥たちが一斉に放たれれば、各々に真っ直ぐと空を翔け──まず先に狙われたのは、ぶんちょうさまたちへと空から差し迫っていたソラスティベルだった。
「......っと、!」
空を自由に駆け回る文鳥たちは、思うよりも素早い。その体の小ささからか、小回りもある程度効くのだろう。けれど、ソラスティベルはその素早さも承知のうえだった。
あらかじめ予想していたのと、予想していなかったのでは動きにも差が出る。敵の初撃を予想していたソラスティベルであるからこそ──弾丸のような文鳥にも、怯むことはなかった。
突撃するような勢いで飛んできた文鳥を弾いたのは、ソラスティベルが自らのオーラを編み上げて作り出した障壁のようなものだ。壁となり盾となったオーラに弾かれ軌道が変わる瞬間を見逃さずに避けたソラスティベルは、そのままスピードを落とすことなく雷の如く一直線にぶんちょうさまを目掛けて下降していく。そして。
「──今こそ応えて、蒼雷の竜よ!!」
それは、確かな勇気の証明。
来たる戦禍の最前線にて放たれる、蒼き雷を纏う竜の咆哮。
上空から振り下ろされる大斧の切っ先がぶんちょうさま羽を落とし、体制を崩したところに更なる一閃が煌く。
「──この光で、あなたの罪を断ちましょう」
聖なる光を帯びた剣が好機を見逃すことなく切り裂けばぶんちょうさまを一気に肉薄し、空に舞う白い羽根の中で互いの青い目が交差する。ただ一瞬、僅かな間。小さく笑みを浮かべたふたりは、けれど言葉は交わさず身を翻し、そして入れ替わった次なるぶんちょうさまを倒すために再びその手を振るっていく。
例えどれだけ敵が可愛らしくとも、オブリビオンであるのならば等しく骸の海に還すべきもの。なればこそ少しでも早く、少しでも多く、堅牢なる壁を打ち砕くために。
「守るべきものを忘れなければ、わたしは戦えます──ッ!!」
「すべてを海に還すまで、わたくしはただ──全力で戦い続けましょう」
揺るがない勇気は、堅牢なる陣形を崩す一手と相成った。
しかし関ヶ原の戦いはいまだ、始まったばかりである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アレンジ連携OK
彼の軍神の車懸かりの陣を目の当たりにできるのは嬉しいが、相手にするとめんどくさいの一言に尽きるな。
先制攻撃が無いのはいいのか悪いのか…。
でもやるしかないよな。
UC菊花を。右手に胡・左手に黒鵺の二刀流で繰り出す。
自己強化なんて持ってない今の俺に出来るのは、二刀でUC二つ分叩き込むぐらいしかできないからな。
これで防御力を突破できればいいんだが。
相手の攻撃は【第六感】【見切り】で基本回避。
回避しきれないものは黒鵺で【武器受け】して逆に【カウンター】を叩き込む。
喰らったら【気合い】と【激痛耐性】でこらえる。
「彼の軍神の車懸かりの陣を目の当たりにできるのは嬉しいが、相手にするとめんどくさいの一言に尽きるな」
物憂げな表情で溜め息をひとつ。そう零したのは黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)だ。
話に聞くのと、こうして実際に前にするのではまた訳も違ってくるのだろう。しかしそれでも、やるしかないと言うのもまた事実。気を取り直すように右手に『胡』、左手に『黒鵺』を握り締めた瑞樹は姿勢を低く構えて一気に駆け出していく。
上杉謙信によって展開されている車懸かりの陣とは、超防御型攻撃陣形とも呼ばれ、その作戦の肝は圧倒的な防御力と回復力、そして目まぐるしく入れ替わることで長期戦をも可能とした持久力だ。その堅牢な壁を打ち砕くためには、その防御力を超えるほどの攻撃力が求められる。
しかし、瑞樹には自身を強化できるような手立てはなかった。他でもない自分のことだ。いまの自分に出来る手段が限られているということは、瑞樹自身もよく分かっていた。であればこそ、瑞樹はふた振りの刀を手に白い草原を駆け抜けていく。
「何も、一撃にすべてを込めれば良いという訳でもないだろう?」
一手に倒せないのであれば、更に多く叩き込めばいい。
ぶんちょうさまから放たれた沢山の文鳥が波のように押し寄せても、瑞樹は『黒鴉』でその波を受け止め、その勢いを返すように刀を振り抜く。
「はっ!」
太陽の光を受けて、静かな湖畔のような青色の瞳が強く煌めく。その間にも。瑞樹は文鳥から受ける痛みにも、身体を蝕む痛みにも立ち止まることなく、手によく馴染む二刀によってぶんちょうさまを何度も斬りつけていく。瞬く間に何度も、何度も。
その連撃が、功を成したのだろう。回復するよりも二刀による斬撃によるダメージが上回ったとき、ついに文鳥の波が止まる。
「──これで最後だッ!」
後方になど、下がらせはしない。目まぐるしく入れ替わろうとしたその背中へと瑞樹は最後の一撃を叩き込み、その連撃に終止符を打つのだった。
成功
🔵🔵🔴
ティル・レーヴェ
見目の愛くるしさに反し強者のようじゃな
この壁を越えずして勝利は無い
この地を守る為押し通らせて頂くのじゃ
狙う個体は他者の動きも見て集中砲火
初手や入替の気配を感じるまでは媒介である『朝告げの囀』を通して魔力を歌に乗せ(WIZ値)【2回攻撃】や【全力魔法】等も駆使
自己回復に【生命力吸収】も乗せられれば御の字か
陣の入替えが行われんとすればUCの守護獣による追跡攻撃にて追撃
弱った個体から逃さず撃破を意識
回復した彼等が再々に戦列に加われば何れ押され仲間が傷付くは必至
妾は皆が傷付き倒れる姿は見とうない──
哀しき未来を呼ぶものへと追いすがり白き御身の一角にて貫いてたもれ
此処での戦が民の平穏に繋がるを願って──
メルノ・ネッケル
いくら丸っこくて可愛かろうが容赦は無しや。
相手は精鋭部隊……舐めて掛かればやられる!
まずは守勢に回ろか、リボルバーをしまい「R&B」と「ステンレストンファー」で戦う!
奴らの嘴は命中率が高い。且つスピードに優れ空を飛ぶ。
空の優位が既にあるなら、小細工無しに速さ重視で来るか……?
【戦闘知識】で当たりを付けつつ軌道を【見切り】、トンファーで【武器受け】。その嘴、凌ぎきる!
さて、今度はこっちの番や!
『フォックスファイア』……出よ、四十四の狐火!十一ずつ纏め、四の炎へ!
防御と回復に優れようと、羽毛に付いた狐の炎は中々消せへんで?
こいつで手近な四匹、火達磨になってもらおか……おまけの熱線も付けとくで!
どれほど堅牢な壁においても、必ず綻びはある。
完璧な作戦に見えた超防御型攻撃陣形、車懸かりの陣に致命的と言えるほどの欠陥はないが──あえて言うならば、少しでも一端が崩れてしまえば最後、そこから立ち直すことは難しいだろう。
何せ少数しかいない精鋭の配置を目まぐるしく交代させ続けることで保たせているのだから、防御力や回復力といった目に見えた恩恵はあれど人力までは増やせない。ぶんちょうさまの真っ白な羽だって真っ黒に染ってしまうような体制である。
しかし、だからこそ。二羽のぶんちょうさまが断たれた今、残り一羽であるぶんちょうさまには後がない。交代による体力の回復に期待できない以上、残るはその強靭な防御力のみだった。
「ぴっぴー!」
自分ひとりになっても、最後まで戦おうと高らかな鳴き声が響く。その心意気や良しと大きく頷いて見せたのは、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)だ。
「うむ。見目の愛くるしさに反し、強者のようじゃな」
けれどこの壁を越えずして勝利はないというのもまた事実。白き鈴蘭を風に揺らしながら、ティルは紫の双眸をそうっと細めて、『朝告げの囀』に触れる。小さな雛鳥でもその囀りが希望となると信じて強く握り締められたそれは、彼女の魔力を声に乗せるためのシンフォニックデバイスだ。
「いくら丸っこくて可愛かろうが容赦は無しや!」
戦う意思は、信じる心は堅牢な壁さえも打ち砕く。ティルの隣に立つメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)もまた、確かな戦意とともにリボルバーはしまい、『R&B』と『ステンレストンファー』に手を掛ける。それは普段愛用する対UDC用に製造されたリボルバーとは異なるも、どちらもメルノの手にはよく馴染む武器だ。
相手は精鋭部隊。例え残り一羽のオブリビオンであっても、舐めてかかれば此方がやられるとメルノは肌身に感じていた。ならばまずは守勢に回ろうと、ふたりは視線を交わす。
「ぴぴっ! ぴー!」
はたして、メルノの想定は正しかった。
ぶんちょうさまの素早さはふたりを上回り、そのつぶらな瞳と目が合ってしまえば最後、嘴による一撃も避け難い。だが──メルノは、それを知っていた。
「そう来ると思っとったで!」
戦闘では一瞬の決断が状況を左右する。避けられないと理解していたメルノはその軌道を読み避けるのではなく、受け切ることに徹した。一撃を凌ぐことに注力したのは、おそらく間違いではない。しかし見た目以上にその攻撃は重く、ステンレストンファーに追突した嘴が鈍い音を立て、メルノは腕にまで伝わる衝撃に僅かに眉を顰める。
「......っ凌いだで! 次はこっちの番や!」
武器で受けた腕が、痺れるようだ。じわじわと体に染み込むような痛みを誤魔化すように猛々しくも宣言したメルノはそして、狐火を召喚する。腕が使えなくとも、戦う手立てはまだあるとその目は強い意思を灯していた。
「出よ、四十四の狐火! 十一ずつ纏め、四の炎へ!」
どれほど防御に優れていても、羽毛に付いた狐の炎までは消せやしない。その先に待つのは火達磨のごとき焼き鳥だ。既に回復力を失っているぶんちょうさまには正に、効果抜群の一手になるだろう。
けれど、後がないのはぶんちょうさまだけではなかった。痺れるような腕の痛みが知らせるのは、二度もあの嘴を受け止めることは出来ないだろうという現実である。
それは、隣立つティルにもよく分かってしまった。それ故に。
「......妾は皆が傷付き倒れる姿は見とうない」
──哀しき未来を呼ぶものへと追いすがり白き御身の一角にて貫いてたもれ。
痛いほど握りしめた手のひらが、仲間が傷付けられてしまう恐怖が呼び出したもの。それは翼を持つ一角獣たちだった。ティルの心の叫びに呼応するように現れた一角獣の群れは、その身を溶け込ませるような白い草原を駆け抜けていく。
そうして。
「失いたくないの。傷付けないで──!」
「さて、火達磨になってもらおか!」
ふたりが呼び出した一角獣の嘶きが、四十四の狐火がぶんちょうさまを呑み込み、やがて跡形もなく奪い去っていく。
どれほど堅牢な壁も崩れるときは早く、戦いの幕引きは呆気ない。あとに残るのは少しばかりの焼け跡と戦いを終えた草原を包む静寂、そしてひらりと舞い落ちた白い羽根だけだった。
大成功
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