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エンパイアウォー⑱~毘沙門天の加護は無し

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #上杉謙信

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●軍神来たり
 サムライエンパイアで引き起こされた、第六天魔王織田信長による戦争。件の魔王の配下として蘇りし軍神。
「その難敵へ、ようやく刃が届くところまで来ました」
 集まった猟兵達へそう口火を切るのは、グリモア猟兵オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)。背後のディスプレイには、十本の毘沙門刀を背に漂わせ、同時に二刀を操る白装束の武将――関ヶ原に現れ、魔王に与する軍神・上杉謙信が映し出されていた。

 このオブリビオンはこれまで現れた多くの幹部クラスの難敵が所有する「先制攻撃」の技術を持たないオブリビオンである。
 それだけ聞くと倒すのは容易い相手かと思われるかもしれないが、そんなことは決してない。上杉謙信は、先制攻撃の力と引き換えに自身の周囲に多数の精鋭を従えある陣形を生み出している。それこそ、二つ名たる軍神の采配力と機敏な隊列変更によって制圧力と生存能力、そして自身の蘇生時間をも生み出す『車懸かりの陣』を敷いているのだ。
 仮に謙信を討ったとて、陣を崩さねば再び骸の海より蘇ってしまう。逆に陣をいくら崩しても、謙信を討たねば再び陣を組み、猟兵だけでなく関ヶ原で戦う徳川の兵に多大なる犠牲が生まれるだろう。
 二つは一つ。逆はない。この二つを攻略しなくてはならない難敵。
「しかし、戦況は既に動いております」
 そう。猟兵達の活躍によって、既にかの陣は何度か破られていた――好機は今である。
 作戦の概要によれば、これよりグリモアによって関ヶ原へと転送した猟兵達は、陣を再構成している最中の上杉謙信の元へと突撃してもらう。まだ完成しきっていない『車懸かりの陣』を突破するのには苦労しないはず。ようやく、かの強敵へと目通りが叶うという事だ。
「……敵は先制攻撃を用いません。ですが敵は軍神の名を冠する強敵。更には十本の異なる力を宿す刀に加え、異様な雰囲気を持つ二刀をも操る難敵。一筋縄ではいかないでしょう」
 十人十色ならぬ、十刀十色。属性を宿す攻撃は反発する属性に打ち消されてしまうかもしれない。更にそれを突破したとしても、達人の剣技が出迎える事だろう。もし、付け入る隙があるのだとするならば。

「彼が、武人の気質を持ち続けている――ということでしょうか」
 それに応えるのか、或いは逆手に取るのか。それは猟兵達へと委ねられた。
 時は待たない、グリモアによる転送が始まる……白き龍、毘沙門天の加護を持つもの。今、猟兵達は軍神へと挑む。


佐渡
 ●今回のシナリオに関する注意事項
 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。

 また、このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 佐渡と申します。
 今回のシナリオは、強力な魔軍将、軍神・上杉謙信との直接対決を行うボス戦シナリオとなっております。敵は先制攻撃を行いませんが、それでも実力者であることには変わりありません。油断すれば、辛酸をなめさせられることもあるかと思います。
 ですがこれまで幾度も危機を乗り越えてきた皆様の戦いを、全身全霊で格好良く描写させて頂きたいと思っておりますので、何卒宜しくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レクシア・ノーレッド
リカィちゃん(f16444)と共闘

【POW】

…軍神…神様、ね。負けられないねー、リカィちゃん。
…大丈夫、私達ならなんとかできるよ!

私の体を二つに分ける。一つはリカィちゃんのアーマーにくっついて、「翼」の形にして飛べるようにする。
幸い、自作の機械竜で見たことあるしさ。空中戦のやり方くらいはわかってる。

そして、もう一つは刀の形に変形する。圧縮して、固めて。
そしてUC【解・体・侵・食】を適用させて、色々斬り裂く切れ味抜群の刃の出来上がり!
凍るのが苦手だけど、武器になれば私が動く必要はないからね。

…狙えそうなら、相手の刀を溶かして使えなくしよう。
勿論、どの刀でもいいけど。手数は一つでも減らさないとね。


堕神・リカィ
レクシアと共闘 (f01101)

戦いの神、か。残念ね。争うしかできない者は、アタシの前では無意味。相手が"白"なら、こちらは二人の"黒"

「ゲームの神の力を思い知りなさい。行こう、レクシア。協力プレイで速攻クリアするんだから!」

UCで赤のゲイムアーマーを纏う

右手に大剣、左手にレクシアの『刀』、背のブースターに『翼』を装備

「大好きな友達の力と、最強の神の力! 叩き込んであげるわ、必殺を!」

底上げされた戦闘力で突撃。連続で斬りつけ、反撃に備えて【オーラ防御】

全力で攻めて隙を見て大技

「これで終わりよ! ダブル・ブラック・ストライク!!」

『翼』を両方の刃に纏わせ、特大の斬撃を放つ!

※アドリブ歓迎



●一柱の白、二人の黒
 関ヶ原に降り立った白き軍神・上杉謙信。白き藪が生い茂る戦場に立つその軍神の背後より、二つの影が現れる。
 ゆっくりと、そちらへ振り返った謙信。立ちはだかるのは、二人の少女。
 白の大地と青の空、そこに一滴落ちたインクの沁みの如き漆黒の肌。首に巻かれた赤いマフラーも含め、この場の色とは対極。それは、全てを呑み込み我が物とする、何物にも染まらぬ彼女の在り方を示す者ものか。レクシア・ノーレッド(『黒喰』・f01101)、猟兵である。
 もう一人もまた、同じく異質さを有する。黒髪、日に焼けた褐色の肌。二色の瞳と近代の制服を自己流に変えたもの。一見すれば派手でではあるがそれ以上の異質さは存在しない。――その外見だけで言うならば。
 彼女の纏う空気はまさしく神性のそれ。称号ではなく真正の神として、堕神・リカィ(レベル0・f16444)は現れた。
「不意を討たぬとはな、猟兵」
 感情の揺らぎを見せぬまま、謙信はそう一言口にした。しかし、次の瞬間にはその背後に浮く十本の毘沙門刀の切っ先が彼女たちへと向く。
「負けられないねー、リカィちゃん。大丈夫、私達ならなんとかできるよ!
「そうね――行こう、レクシア。協力プレイで速攻クリアするんだから!」
 明確に向けられたそれは、通常のオブリビオンとは比べ物にならないほどの威圧感だ、しかし彼女たちは強気に笑いあい……拳を打ち合わせた。
 その瞬間、黒く流動するレクシアの身体は二つに分かたれ、一方はリカィの身体へ、もう一方はその腕へと絡みつく。一見すれば味方に襲い掛かっているように映るかもしれない、しかしそれは違う。友を纏うたその左腕を天へと掲げ、リカィは叫んだ。
『粉塵満ちる荒野、駆け抜ける鉄の戦騎。赤き血潮巡る強きゲイム、スタート!』
 無から現る紅の光。空間を切り裂く様にして現る装飾のついた戦車。それが突如分解し、鎧となってリカィの全身へと装着されてゆく。
 同時に飛散するエフェクトの光を喰らうレクシアの半身は、鎧を伝い更なる強化を施しながらその背中に本来存在しない「翼」を生み出す。
 右の手には燃える灼熱の大剣。左の手にはレクシアの力を濃縮し、結集させた長刀。頑強な戦車の意匠を持つ鎧には、相反する生物的な翼が宿る。
「争うしかできない者は、アタシ達の前では無意味。行くわよ軍神、遊戯(ゲーム)の神の力を神の力を思い知りなさい!」
 彼女の勇ましい言葉に呼応するように、黒色の翼は羽搏き刀は鋭く輝いた。

「仁により結びつく力、か」
 生前、仁義を重んじた謙信。今は既にオブリビオンとなった身であれ、彼女たちの姿に思うところはあったのだろう、両の手に握る白黒の剣を構え、名乗る。
「――魔軍将が一人、『軍神』上杉謙信。堕ちたる我に、毘沙門天の加護は不要なり!」
 空気が揺らぐ。同時にリカィの眼前へと二つの刃が迫る。後方への回避、翼による飛行、そして大剣による薙ぎ払いによって事なきを得た――しかし攻撃は続く。
 怒涛の連続攻撃。水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇。十種の力に加え謙信の手にある二振りによる猛攻。重厚な鎧と大剣による防御、レクシアの翼による回避によって致命傷は免れているものの、リカィは防戦一方となる。時折左手の長刀による反撃を行うも、それらは容易く十本の毘沙門刀によって弾かれてしまう。
 明らかな手数の不足。敗北は必至――かと、思われた。
「な、」
 『そのこと』を察知できたのは、してしまったのは『軍神』の慧眼ゆえか。
 自身の扱う毘沙門刀、その内の樹の力を司る一本が、どす黒い「何か」に侵されていることに。
「そこ――だッ!」
 反撃の機を逃さない。それは戦いでも、ゲームでも同じこと。
 突き出された漆黒の刃が白き軍神の鼻先を掠める。そこから感じられるのは、貪欲なる飢餓。遍く全てを侵し喰らう力。レクシアがリカィの為に用い、そして託した力。己の存在を最も色濃く現すもの、『侵食者』としての力。
 僅かな反撃の中でもその能力は牙を剥き、確かに敵とその得物を蝕む。毒や薬といった力を持つ刀には効果が薄かったが、逆に水や樹といった力には、彼女の能力はまさに効果覿面であった。
 敵が離れたその一瞬を見計らい、リカィは翼で空へと飛び立つ。傷は多く、疲労も決して軽くない。それでも彼女の表情は実に楽しげだ。
 遊戯の神。争うのではなく競う為に戦う。それは彼女の根幹にあるもの。だからこそ、強敵との戦いが、そして友との共闘が、彼女を焼き焦がさないわけがない。
「大好きな友達の力と、最強の神の力! 叩き込んであげるわ、必殺を!」
 声高に言い、急降下を開始するリカィ。同時に、レクシアの翼が徐々に縮み、鎧を這って両手の刀と大剣へと移る。二振りの巨剣へと姿を変えたその武器を手に、軍神へと墜ちていく。
「――来い、猟兵!」
 その意気やよし、とばかりに謙信もまた十二本の毘沙門刀の力を結集し構えをとる。防ぐでも避けるでもなく、同じく全力を以て受け止めんがために。

「「うぉおおおおおおおおおお!! ダブル・ブラック・ストライクゥッ!!」

 白と黒が――交錯した。
 。一陣の風が吹き、先に膝をついたのは――リカィだった。戦車を模す鎧の胸部が大きく罅割れ、次の瞬間砕け散る。手にしたレクシアも体力を使い切り地面へと垂れ落ちた。
 敗北か? ……否、否である。
 背にした毘沙門刀が地面へと転がり、謙信は地面へと倒れた。再び骸の海から蘇るだろうが、しかし大きな傷を与えたのだ。
 グリモアによって帰還した二人は、互いの健闘を称え、ぼろぼろの身体ではあったが、再び拳をぶつけるのだった。
 友情と絆。正面からぶつかり合い、そして得た勝利。確かに与えた一太刀――次に軍神に挑むのは、誰か。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上泉・祢々
12本ですか……選り取り見取りなのはいいですがいくつか触れなさそうな物も
その辺りはしっかり見極めませんと

まずは浮かぶ刀の動きを見切りその隙間に身体を滑り込ませましょう
浮かぶ刀は回避に専念
本命は両手の白と黒
こちらは比較的受けても問題なさそうなので手刀と足刀で弾きます

そこで動きを盗み、太刀筋を見切り
次の一手に備えます

相手の動きを把握した所で振るわれる右の刀を両の掌で受け止め白羽取り
そのまま捻りを加えて奪い取り、刀身を掌で挟み込んだまま返す刀で首元目掛けて柄で突きを放ちます
〆は怯んだ所に飛び膝蹴りを叩きこみましょう

いい太刀筋でしたよ? とても参考になりました
これはそのお礼です



●毘沙門十二刀 対 無刀剣術『百華流』
 傷を癒し、骸の海より再び現れた謙信の前に再び猟兵が立ち塞がる。結った黒髪を風に靡かせ、可憐ながら少々肌を多く見せる和装を纏う少女、上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)。しかしながら、腕を足を、そして目を見ればわかるはず――彼女は間違いなく武辺者だ。それもただ武芸を修めた者ではない、自ら道を切り拓く、求道者でもある。
「――『百華流』、上泉・祢々。……いざ」
 名乗り、そして構える。相対する軍神が帯びる毘沙門刀、多種多様の力を帯びずとも、鎧も武具もなく戦えばただでは済まない刃の威圧感。それを彼女は、全くものともしない。既に、祢々は刀を抜いていた。
 その手が、その足が、その五体が全て彼女にとっての得物。鍛錬によって磨き抜かれた、二本とない大業物。
「……『軍神』、上杉謙信。来い、猟兵」
 応じるように、謙信もまた構えを取る。十本の毘沙門刀が渦を巻く様に彼の周りを飛び、同時に両手の剣を彼女へ向けた。

 直後二人の間に流れるのは、静寂。互いに睨み合うばかりであるようだが、その実両者は僅かな動きさえ見過ごさぬようにして観察と予測を繰り返す。刃を打ち合わす前から、既に攻防は始まっていたのだ。
 ――果たしてどれほど時間が経っただろう。始まりは唐突、前触れは一切なかった。
 三本の毘沙門刀が祢々に向け放たれる。同時に、彼女はその僅かな合間を見切り、一瞬で謙信へと距離を詰める。狙いは、異能の力を持つ十本ではなく謙信の手にした白と黒の太刀。懐へと潜り込む祢々へ、容赦なく迫る二刀。
 とはいえ、それが彼女の肉体を切り裂くことはなかった。研ぎ澄まされた集中から放つ手刀足刀が、降りかかる刀の腹を蹴り、弾いたのである。
「ほう」
 その技の冴えには驚嘆を示す謙信。武芸に通じた『軍神』であれど、この歳でここまで技を磨いた者が存在しようとは、と。
 けれどそれで終わりではない。その一合で祢々は既に上杉謙信の――『軍神』の剣を見抜いた。才ある見慣れど不運の元に生まれ、されど決して歪まぬその魂。己を高めるのと同時に、他者から貪欲に力を見、学び、盗んできた。
 迫る追撃の剣、それを彼女は……その両手で、受け止める。
 真剣白刃取り。その存在をフィクションとさえ言われるその技。超人的な技能と見切りの目を以てしても成功させることは難しいその技……なれど、相手の技を見取りそして理解することで、低い確率は実現可能な域まで押し上げられる。
「いい太刀筋でしたよ? とても参考になりました」
 これはその礼だ、と。彼女は身を捻る。右手の白き毘沙門刀を奪い取り、そのうえで繰り出される必殺の膝蹴り。首元へと炸裂するその技は、確かに一撃で命を刈り取る技となるだろう。既にそこは刀のものではなく、殴り蹴りの徒手空拳の間合いであった。

 勝負あり――かと、思われた。
 確かに、祢々は軍神の放つ連続攻撃の中で繰り出される一刀を受け止めた。確かに彼女は、『軍神』の剣技の底を見た。しかし、彼女の繰り出した蹴り技は額ではなく、籠手を纏うた左腕で受け止められている。
 ――白刃取りをしたその刀を、奪い取る事はできなかったのだ。
「成程、凄まじい。同じ齢の時の私より、お前の方が強いのは間違いないだろう」
 謙信は一切の嫌味なく、ただ手合わせした相手へ称賛を送る。――だが、同時にそれは相手への手向けでもあった。
「しかし、今。この時においては……私に軍配が上がったということだ」
 彼女に交わされた三本、それを除く七本。宙に舞う刀は一つ残らず彼女へ殺到し、そして切り裂いた。
 ……技を見抜けど、力を見誤った、それが、彼女の敗因だった。

 しかし、この敗北は一層彼女を強くするだろう。グリモアによって祢々が転送されたそのすぐあと……謙信は、左の手に持っていた黒の太刀を取り落とす。
 確かに謙信は絶体絶命の技を防いで見せた。けれど、それが強力な一撃であったことは事実。決して、彼女はただ敗れただけではなかったのだ。
 牙は折れず、覚悟と闘志は、確かに神へと傷をつけた――次に軍神に挑むのは、誰か。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ハヤト・ノーフィアライツ
アドリブ連携歓迎。

こいつは随分得物を積んだな。
ま、兎に角やってみるかね。

【戦闘知識】を駆使して敵味方の動きの予測を立てこっちも突っ込む。
奴がなるべく多数の方向に気を配る必要が出るよう、散開しとこう。
他の味方に気を取られている場合は【早業、グラップル、2回攻撃、怪力、鎧無視攻撃】等を駆使して
武器か拳で強襲。
こちらに関心が向いている場合は、【戦闘知識】による先読みと【早業】、指定UCを
駆使し逃げと撹乱に徹する。
【カウンター】出来そうならUC【ファルコン・ネット】で投網をぶつけ、
やっこさんを【怪力】で振り回して味方の居る方に【投擲】しようとしてみよう。

軍神さんよ。もう今はあんたの時代じゃないんだぜ。


遠呂智・景明
アドリブ・連携歓迎

戦の作法だ、名を名乗らせてもらうぜ。
大蛇切景明。
てめぇを斬る刀の銘だ。覚えておけよ。

先手が肝心だ。
風林火陰山雷番外 雷・火。
狙うのはテメェの刀だ。
500を越える斬撃、捌いて見せろよ。

斬撃を放つのに合わせて敵の方へ飛び込む。
全ての刀を封じられれば上等だがそうは上手くいかねぇだろ。

ここからは小手先抜きの斬りあいよ。
●見切りで敵の刀の動きを見切りつつ、●早業で抜いた二刀による●2回攻撃。
敵からの攻撃は●武器受けでいなしつつ、もう片方の刀で●カウンター。
多少の傷は許容範囲。
戦場でいちいち騒いでられるか。

敵が隙を見せた。その首、貰い受ける。
己の本体で首にきりかかる。



●雄は一人にあらず
 再び、猟兵が現れる。謙信は、三度現れた者達へと視線を向けた。
 今訪れた二人は、正に対照的と言っていいだろう。一人はこのサムライエンパイアらしい和装を着こなし、武器として刀を帯びる青年。しかしもう一人は洋服に身を包み、それでいながら手にする武器の一つ一つはSFじみた超科学の産物だ。
 まず先に、前に出るのは和装の青年。白の紋付羽織、抜き放つは大蛇斬りの曰くを持つ名刀。そしてそれは、彼自身でもある。
「戦の作法だ――大蛇切景明。てめぇを斬る刀の銘だ。覚えておけよ」
 名乗りを上げるは、遠呂智・景明(いつか明けの景色を望むために・f00220)。かつて零落した神を斬った刀は、堕ちた『軍神』を斬らんと殺気を漲らせる。
 さて、そんな覚悟と意欲に燃える景明とは裏腹に、首に手をあてがいながら相手の剣を観察するのは、洋装を纏う伊達男、ハヤト・ノーフィアライツ(Knight Falcon・f02564)。
(こいつは随分得物を積んだなぁ――ま、兎に角やってみるかね)
 勝負に拘るつもりは彼にはなかった、しかし偶然にも共に挑むことになった相手に水を差すつもりはない。考慮することが多くなったことに苦笑しつつ、彼も又臨戦態勢へと移る。
「ただ集っただけで勝てるほど、私は甘くはないぞ」
 両者のその呼吸のずれ、それを見抜いていた謙信は助言するようにそんな言葉を放つ。しかし、だからといって手を抜くようなことはない。僅かに足を開き、刀を握り直すその一つの動作で、場に満ちる空気が一気に重みを増した。

 それが、始まりの合図。
『風林火陰山雷番外――最大火力だ、安全圏なんぞ存在しねぇぞ!』
 放たれるは奥義。敵を切り刻む五百の剣閃。燃え盛る火のように早く、そして轟き荒ぶる雷のように苛烈。まともに喰らえば膾斬り……なれど、相手は軍神。毘沙門の加護を得る十本の刀が舞えば、呼応するかのように負けず五百度切り返す。
 斬り飛ばされ千々になり、舞う白き草。千の閃きの後に、その場は輪の形に切り揃えられた陣のようになる。だというのに、そこから景明の姿は消えていた。既に隠れる場所はない、だというのに何故。
 謙信の視線が動けば、そこに答えがある。剣閃に隠れ、左へと身を翻した景明。状態を低くし視界から外れ、狙うは一撃必殺だ。
 一方、ここまで味方の攻撃に水を差すまいと息を殺していたハヤトも、好機を悟り謙信へと飛び掛かる。方向は真逆、敵の思考を分散させるため敵と味方の動きを観察していた彼は、徒手のまま素早く背後へと回りその拳を叩き込まんとする。
 完全なる挟撃――それでも、軍神のかんばせに揺らぎはなかった。
「無駄だ」
 冷たく言い放つや舞い上がる旋毛風。漂う毘沙門の刀が謙信の周りを守るよう取り囲み、築くは即興の車懸かり。寄らば斬る、寄らざるとも斬る。前方と後方を薙ぎ払う円形の斬撃。やはり、即興の連携では『軍神』には届かないのか。

「おいおい、勝った気になるのは早いぜ?」
 降り注ぐ声は天上から。勝敗は決したと思っていた謙信、目を見開き見上げれば、同時に彼を包み込む投網。細くしなやかな特殊合金を用い生み出されたその網を握り、地面へと着地する男。全身に軽くない傷を負いながらも片手で網を、もう片方で中折れ帽を押さえ……ハヤト・ノーフィアライツはにやりと笑った。
 携える剣も絡めとられた軍神は僅かに残った毘沙門刀を彼へ差し向けようとするが、それより先に動くのは彼。
 ここまで戦闘で感じた確かな敵の実力と、仲間の力。そこにおける最適解を既に彼は見出していた。サイボーグ化によって得た怪力を使い、網と、その中にとらわれた軍神を彼は強引に持ち上げる。宙へと浮かせた白装束を、そのまま地面へ叩き付けるかのように放り出す。
「軍神さんよ。もう今はあんたの時代じゃないんだぜ――なあ、そこの兄さん」
 名も知らぬ相手、けれどハヤトは勝負の行方を彼へと託した。
 円陣の刃に身を切り裂かれなおその柄から手を離すことなく、虎視眈々と自身の刃を通す一瞬を狙っていた、剣豪へと。
「――その首、貰い受ける」
 ぎらりと輝く紅の眼。抜き放つは己自身、技の名などなく、ただそれは磨き上げられた純粋な武の力。耐え難き猛攻を耐え凌ぎ、自らの傷をもものともせず、狙うはただそのそっ首。
「成程、それが猟兵ということか」
 謙信は、最期の瞬間そう言葉を遺す。
 世界を繋ぐ使命と覚悟、それを持つならば言葉など不要。戦場で巡り合った縁であれ、確かに信頼によって結びつく戦い。まさしく――仁と義による戦いであると。
 交錯し、地面へと転がるその頭。同時に謙信の身体は骸の海へ、猟兵達はグリモアによって、関ヶ原よりその姿を消す。
 ……まるで何事もなかったかのような静寂が、白き平原へ満ちるだろう。しかし、切り裂かれた草藪とその場を染める鮮やかな赤が、尋常ならざる戦いと――猟兵達のもぎ取った勝利を確かに示していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリス・レヴェリー
【廻る三針】により真鍮飾りのドレスに身を包み、謙信の元へ

天変地異は恐ろしいけど、使い勝手も悪いものだって身を持って知ってるわ。近づかれて自分は対象外なんて事は難しい

UCで強化された【刻む三針】の内、秒針の細剣を右手に、分剣と時剣を傍らに

襲い来る天変地異は同じく強化された【刻命の懐中時計】の全十二枚の結界を全て使う覚悟で行きましょう
樹に炎を。炎に水を。来る属性とは反属性の結界で一瞬でも食い止め駆けるわ

十の事象に十。最後の二刀に二を。それでも止まらないなら、飛翔する分剣と時剣で二刀を逸らす

進み続けて、秒針の切っ先にあなたを捉えたならば……例えわたしの腕を断とうとも、この針は雷と共に翔び貴方を穿つわ



●観客なき剣舞
 『軍神』上杉謙信は、数度の復活を終え既に自身の力が残りわずかなものになってきていると気づいていた。
 これまでの猟兵との連戦、度重なる敗北と重度のダメージ。間断なく襲い来る事によって陣の構築もままならず、十分な回復の時間もない。
 これが最後の戦いになる。そんな彼の前に立ち塞がったのは――小柄な、少女だった。
「ごきげんよう」
 真鍮の飾りを纏うた瀟洒なドレス。華奢な体はおよそ戦いに向くとは思えない。しかし、彼女の澄んだ空色の瞳は、真っすぐに謙信へと注がれた。確かな闘志を以て、アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)はこの戦場へと立ったのだ。
「……言葉は要るまい」
 既に何度も刃を交え、謙信は理解している。彼らの中にある気高い心を。だからこそ、『軍神』として剣を構えそれに応じる。無言のまま、少女も時計の秒針を模す刺剣を握り締める。最後の勝負、最後の剣舞が、今始まろうとしていた。

 先手を取ったのは、謙信。火と水にて雷雲、そこに風を合わせ起こすは嵐。小規模でこそあれ、呼び出したものでさえ制御し難い強大なる天変地異。されど、アリスは構わず剣を手に果敢に駈け出した。
 胸に提げた懐中時計、その文字盤に埋め込まれた神秘の雫を代価に、彼女を覆う十二の壁。暴風が彼女を引き裂くべく狂い、轟雷が彼女を打ち砕かんと迫っても、彼女の祈りに応えた時の魔術は、それを身を挺し防ぐだろう。
 嵐を抜けた彼女を迎えるは、更なる脅威。土塊の礫、樹枝の槍、雹氷の弾。続けざまに襲い来る攻勢を、彼女を守る壁は必死に抑え込む。多様の属性を、逆の力で打ち返す……それこそ、彼女の狙い。だが、謙信もただでは終わらない。
 逆属性に更に逆属性をぶつける。氷に火を、ならばその火に水を、それならこちらは水に土、ならば土に樹をと、互いの有利を取り合う。
 けれど、アリスは決してその競い合いに拘泥しない。壁は身を護るものでしかない、勝利の為の刃は、既に届くところまできた。
 最後の一枚が破られた瞬間、彼女はするりと守りの陣からその身を躍り出させる。そこは、相手の懐。軍神の手にする二刀の間合い。
 当然迎撃の為に薙がれる刀。相手の背丈は己より高い、そして目視さえ難しい速度で迫る剣閃、それを真正面から見つめる恐怖はいかばかりか。けれどアリスは竦まない。傍に控えた二つの剣が、彼女を切り裂こうとする凶刃を僅かに、ほんのわずかに逸らし――刺剣の先が、その心臓へ狙いを定める。
 強敵に対し一切淀みなく猛進する勇気、或いは狂気。それに、謙信は敬意を禁じ得なかった。
「見事なり……だが」
 既にアリスを護っていた壁は砕かれ、毘沙門刀が傍へ戻る方が僅かに早い。突き出された細腕は横合いから現れた毘沙門刀によって、無残に、砕かれた。
 そう、砕けたのだ。さながら磁器の如く冴えた音と共に、彼女の腕は粉々に砕け散る。瑠璃を落としたように、茶碗を叩き付けたように。
「……例えわたしの腕を断とうとも、この針は雷と共に翔び貴方を穿つわ」
 失われた腕、痛覚までもないわけではない。けれど、彼女は間違いなくそう語る。勝ち名乗りを上げるは勝者の義務。勝敗は、決した。
 鈍い輝き、優美な形状、秒針より転じた刺剣が、間違いなく軍神の身を貫いた。過去の英雄を討ったのは、未来へと進み続ける時計の針。
 龍は、『軍神』は、何も語る事はなく静かに目を伏せ消え失せる。膝をつき、決して少なくない代償を払いながらも。アリスは過去の英雄に、終止符(ピリオド)を打った。そして――敵の力によって生まれた雲は千々に消え、そして霞む事さえない蒼天が、関ヶ原に戻る事だろう。

 魔将軍の一角であったオブリビオンへ深手を与えたという報せはすぐさまエンパイアで戦う徳川軍へと知れ渡り、この勝利は大きく彼らを勇気づけ、奮起させることだろう。神の加護なくとも、この世界の人々が、彼らの勝利を祝福する。
 戦いはいよいよ佳境へと突入する、その中で、かの敵に勝利したことは必ず無駄にはならないはずだ。
 戦いは続く。次なる戦場へ、猟兵達は歩を進めた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月19日


挿絵イラスト