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エンパイアウォー㉕~御霊よ、富士へと還れ

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●太陰の姫
 富士の火口を背に、女は楚々と山を下りていく。
 その手に携えた玉は、自ら強い光を放つ。
 玉を懐に仕舞い込み、女は深い溜息をひとつ。

 ――因果なものね、わたくしがこの地を踏むだなんて。

●太陽の力
「皆の活躍もあって、徳川軍は順調に歩を進めているようだな」
 グリモア猟兵の火神・五劫(f14941)の厳めしい表情が、僅かながらに和らいでいる。
 頼もしい仲間たちを前に、羅刹の男は言葉を続ける。
「虐殺渡来人『コルテス』の目論み――霊峰・富士の噴火も、迅速に阻止することができた。その甲斐あって、奴が配下に行わせていたもう一つの目論みについて察知することができたんだ」

 男、曰く。
 コルテス配下のオブリビオンは、富士の火口近くにも儀式場を設けていたという。
 そこで行われていたのは、富士に眠る太陽の力を『霊玉』へと変換する儀式。
 儀式は既に終了。配下は霊玉を回収した後、下山中であるとのこと。
「オブリビオンを討伐して霊玉を奪い返し、富士の火口に戻してしまえば、コルテスの悪事を妨げることができるだろう。この戦い、お前たちに任せていいか?」

 五劫の予知したコルテス配下は、流るる黒髪に天女に似た衣、数々の宝物を携えた女性だという。
 その姿は、まるで。
「御伽噺のかぐや姫そのものだ。目立つ容姿ゆえ、山中で遭遇すれば一目で分かるだろうな。そして、霊玉を奪還した後の取り扱いだが」
 霊玉はそのまま放置すると、一定時間後に火口のマグマへと変化してしまう。
 ゆえに、火口まで運んで行って投げ入れてしまわなくてはならない。
「どうしても間に合わんようなら、富士五湖あたりにでも沈めてしまえ。ちょっとした水中爆発くらいにはなるやもしれんが……なに、そのまま放置してしまうよりはマシだ」
 万が一にも山中に放置したり、人里に持ち込んだら、大災害を引き起こしてしまうだろう。
「敵の討伐に霊玉の対処、頼んだぞ。事を成して……そして、無事に帰って来いよ」


藤影有
 お世話になっております。藤影有です。
 コルテスの思惑を妨げるべく、猟兵の皆様の力をお貸しいただけますと幸いです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 このシナリオに成功する事で、コルテスの次の作戦を阻止するのに必要なシナリオ数が減少します。

 ●プレイングについて
 富士の山中での戦闘シーンより開始します。
 戦闘後、奪還した霊玉の取り扱いについてもお忘れなく。

 それでは、皆様のプレイング楽しみにお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『三姫』かぐや姫』

POW   :    【ダブルUC】龍の首の球+燕の子安貝
【龍の首の球を媒体に、炎を吐き攻撃する七体】【の巨大な龍を召喚する。また、燕の子安貝の】【自軍強化能力(召喚した龍も対象)の効果】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【ダブルUC】不死の薬+蓬莱の玉の枝
【不死の薬を飲む事で自身に常時回復効果を付】【与する。また、蓬莱の玉の枝を翳す事で発生】【した、七色の魔力球から高命中のレーザー】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    【ダブルUC】仏の御石の鉢+火鼠の裘
【仏の御石の鉢を媒体に、上空に月の使者達】の霊を召喚する。これは【レーザーの弾幕で敵を攻撃する。また、かぐ】や【姫は火鼠の裘を纏う事で、高威力の火炎弾】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:桐ノ瀬

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●在るべき場所へと
 岩に覆われた道なき道より、黒髪の女が下りてくる。
 身体を僅かに大地より浮かせて進んでくるその様は、纏った衣も相まってまるで天女のようにも見える。

『あらあら、皆様お揃いで。わたくしに何か御用?』

 樹林地帯との境界にて待ち構えていた猟兵に対し、女が浮かべるは艶やかな笑みと。 月色の瞳に宿した、ぎらぎらとした明確な敵意。
デナイル・ヒステリカル
太陽の力を回収……?
コルテスの目論みに必要なのでしょうか。

なんにせよ、こうして発見することが出来た以上は見逃せません。

たとえ相手が人々の間で親しまれる童話の主人公だとしても、僕のやるべき事に変わりはない。
猟兵はオブリビオンを排除します。

敵から放たれる攻撃を見切り、或いは雷のフィールドを形成して対抗し、何とか粘りましょう。

上空から撃ち下ろされる弾幕に加えて敵オブリビオンによる強力な射撃攻撃は厄介です。

しかしそれは、更なる上空への警戒が薄いということ。

UC:ノイジーレイニーを遥か上空へセット

僕は空へ浮かぶ月の使者たちのさらに上にUCによる攻撃を構築し、彼らごと敵オブリビオンを刺し貫こうと試みます。


火土金水・明
「霊玉を素直に信長軍に渡す訳にはいきませんね。」
【WIZ】で攻撃です。攻撃は【フェイント】を掛けつつ【先制攻撃】で【高速詠唱】した【破魔】の【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『『三姫』かぐや姫』と召喚された霊達を巻き込めるようにして纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
奪還した霊玉に関しては、(やや強引的ですが【空中戦】の技能を使用して)移動用の魔法の箒で空中を移動して、富士の火口に投げ込みます。
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


シュデラ・テノーフォン
御機嫌ようかぐやのお姫様
俺ね君の物語も好きなんだ
でも狩らなきゃね

それで?随分賑やかな攻撃をするんだね
月の使者達は白雪鏡に映し足止めしようか
それでもレーザー来るなら指輪の盾で防いで
彼等倒せるなら動けぬ間に狙撃しようか
お姫様の方は火炎弾か
指輪の盾を複数展開で防いでも良いけど、
クィックドロウで氷の精霊弾を撃ち相殺しようかな
君が持ってる宝は綺麗ですごいとは思うけれど
俺の硝子達も負けていないよ

激戦の隙を狙ってお姫様にも白雪鏡を当てようか
君は骸の海へ、ううん素敵な物語に還りな
マスケット銃で確実に撃ち倒すよ

後は霊玉返却か
ショートカットしよう、霊玉持って翼広げ一気に火口へと飛んでいく
そのまま火口へ投げ捨てるよ


黒白・鈴凛
かぐや姫、確か絶世の美女だったアルナ
くふふ、会うのが楽しみアル

やぁ、お嬢さん
話通りの見目麗しい姿、お前が取っていった物
それは持っていかれるとちょっと困るアル
返してくれれば見逃してやっても良いネ

…なんて、分かってるアルヨ
お前にも引けない理由があるのだろう?
それなら、力ずくで返してもらうネ

野生の勘で竜の攻撃を回避、火炎耐性で炎を軽減するアルヨ
七匹の竜ともなれば喰いがいがありそうネ
耐えて耐えて黒喰イ鬼ノ顎で喰らい生命力を奪いつつ怪力の乗った鎧無視攻撃で戦う

玉は足の早い他の猟兵にでも任せるアル
最悪件の泉にぶん投げるヨロシ




「御機嫌よう、かぐやのお姫様」
 シュデラ・テノーフォン(f13408)が一礼すれば、女の笑みがより深くなる。
『あら、わたくしをご存じなのね』
「うん、俺ね、君の物語が好きなんだ」
 女――オブリビオンはあっさりと、自身がかぐや姫であると肯定する。
 かつてのサムライエンパイアに実在した存在が元になっているのか、はたまた伝承の具現であるのかまでは定かでないが。
「くふふ、話通りの見目麗しい姿アル」
 黒白・鈴凛(f01262)の目の前に立つ女は、かの御伽噺に綴られたあらゆる要素を有している。
 それは整った容姿のみに限ったことでなく。
 女の周りに浮かぶ道具の数々もまた、物語の中で彼女が出した難題に通じる品々であろう。
「たとえ相手が人々の間で親しまれる童話の主人公だとしても、僕の……僕達のやるべき事に変わりはない」
 小首を傾げるかぐや姫に、デナイル・ヒステリカル(f03357)は言葉を続ける。
 猟兵はオブリビオンを排除するものだ、と。
「ええ、霊玉を素直に信長軍に渡す訳にはいきませんから」
 火土金水・明(f01561)が進み出れば、女は意味ありげに頷いて懐から何かを取り出して見せた。
『そう、そこまで分かっているのね。おそらくは、わたくしを遣わした者についても』
 自ら眩い光を放つ霊玉を、掌の上で軽く転がして。
『ならば話は早いわ。では……皆様、左様なら』
 別れの一言が、開戦の合図。
 浮かぶ道具のひとつ――仏の御石の鉢から、妖しげな力が溢れ出で。
『月の使者の前に、屈しなさい』
 呼応するように上空から現れた人影が、猟兵たちへと弾幕を放つ!

 青、赤、白、黒、黄。
 五色の弾幕が戦場に降る。
 散開した猟兵たちは、各々の力を持ってこれを迎え撃つ。
「プログラム、起動。雷フィールド展開!」
 デナイルは防御を固めながら、敵群の観察に集中する。
 戦況を分析し、確実な反撃の糸口を掴むために。
「これは使者をどうにかしないとかな。鏡よ鏡。……なんてね」
 シュデラが飄々と言霊を紡げば、月の使者どもがぴたりと止まる。
 使者の背後には、硝子細工の魔性の鏡。
 少しでも姿を映されてしまえば、もうそこからは動けない。
「俺の宝物も美しいでしょう、お姫様?」
 危険な光を浮かべた瞳で敵を見据え、シュデラが放つは氷の精霊弾。
 それは月の使者を、姫を地に落とさんと――。
『……少々、猟兵を見くびりすぎたかしら』
 使者が氷弾に穿たれ掻き消える中、かぐや姫は一枚の衣を身に纏う。
 衣――火鼠の裘からぶわりと炎が出でて、猟兵たちへと降り注ぐ。
「我、求めるは、冷たき力――霊玉を渡していただきますよ!」
 広がる炎を防いだのは、明が操る氷の魔術。
 仲間を守るように広げた氷の矢群の後ろから、やや遅らせてもう一波を放ち。
 使者の全てが掻き消えたところに、鈴凛が飛び込んでいく。
「その玉、持っていかれるとちょっと困るアル。返してくれれば見逃してやっても良いネ」
 鏡の化身への姫の返答は、殺意の篭った炎を以てして。
「なんて、分かってるアルヨ。それなら」
 じりじりと焼け焦げた鈴凛の身体が、黒き闘気で覆われていく。
「力ずくで返してもらうネ」
 闘気によって形作られた鬼の如き腕が、姫を炎ごとぐしゃりと掴んだ。
『……っ!』
 みしみしと骨が軋む音、それでも敵は表情を歪める程度に留まっている。
 華奢ながらオブリビオンゆえの頑丈さを見せるかぐや姫だが、そこに更なる攻撃を加えられたらどうだろう?
「ノイジーレイニー、発動。対象を穿て!」
 デナイルの命令に従って、電子の精霊たちが架空属性の槍を放つ。
 精霊の座標は上空――月の使者が降臨したところより、遥か遥か高く。
 己の位置よりも高い場所への警戒は薄いのではないか。
 敵の視点から導き出したデナイルの読みは見事に的中し、結果、姫は天よりの雷に撃たれることとなったのだった。

 霊玉は未だかぐや姫の手中に在る。
 しかし、静かに光り輝くそれに、大きな変化は見られない。
 このまま押し切ることができれば、火口まで運ぶ余裕も十分にありそうだが――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

プロメテ・アールステット
『視力』で敵を見つけたならば、すぐさま敵へ斬りかかる

――挨拶が後になってすまないな、御伽噺の姫
我が名はプロメテ
無礼を許してくれ
こちらは僅かな間も惜しい

【武火装々】を発動
『殺気』で敵を牽制、『戦闘知識』『地形の利用』で立ち回る
敵の攻撃は『武器受け』と『怪力』で受け『なぎ払い』
痛みは『激痛耐性』で堪え
炎の『属性攻撃』で『鎧砕き』を狙う

世界を、あの人の故郷を壊させはしない
この命が、炎が、この世界を守る盾となるならば…全力を尽くそう
それが今の、私の願いだ


霊玉を回収出来たら『火炎耐性』を活用
最高速度で飛んで火口へ持って行く
もし間に合わなければ…止むを得ない
富士五湖へ運ぼう

※アドリブ・他の方との共闘歓迎


ヴィサラ・ヴァイン
不死の薬…定命の者が手を出さない方がいいと思うけど…オブリビオンに言っても仕方ないか
何にせよ、私達は貴女を終わらせに来ました
「かぐや姫は月にお帰り」
それが、竹取物語の結末でしょ?
…まあ不死の薬を使ってる相手に何を言ってるんだって一蹴されそうだけど…心結さん(f04636)と一緒にその心の隙を突くよ
心結さんがかぐや姫と戦ってる隙に[目立たない]ように【神送り】で[暗殺]を仕掛ける…不死性を侵し、自然ならざる治癒を妨げ、免疫を破壊するこのユーベルコードで不死の薬を無効化するよ
[毒使い]で毒性を高めた上で、ね
トドメは心結さん、任せたよ?
あ、霊玉は《魔眼『コラリオ』》で石にして時間を稼いで火口に運ぶね


音海・心結
ヴィサラ(f00702)と参加なのです
アレンジ可

かぐや姫って、あのかぐや姫なのですか?
実物を見るのはもちろん初めてなのですが

かぐや姫を【誘惑】して、みゆの相手をしてもらうのです
UC『咎人封じ』と【スナイパー】で動きを封じて
武器『Engraved cherry』でパワーアップしましょうか
その後は【ダッシュ】で距離を詰めて、殴るのですよ

――大人しく月でイチャイチャしてた方がよかったのではないですか?
ぁ、お相手がいませんでしたねぇ

相手が攻撃してくるようなら、
【第六感】と今までの【戦闘知識】を駆使して、
致命傷には至らないように頑張るのです

さ、戦いが終わった後は霊玉の処理なのです
任せたのですよ


リュカ・エンキアンサス
かぐや姫…
昔聞いた御伽噺に、そういうのあったな
求婚を断る話だよね
あの手の女のひとって少し苦手だけど
まあ、殺すなら関係ないか

今回は急ぐみたいだね
この手の山道ぐらいならいけるかな
旅行鞄を外したバイクに乗ったまま、
他の猟兵と連携できそうなら連携して主に銃で攻撃
無理でも距離を離して撃ち込んでいく
なるべく地形の利用や騎乗を駆使して、走りやすい道を選んで
レーザーや火炎弾を回避しながら攻撃を叩き込むよ
基本は使者を減らしたり援護射撃を優先して
姫は無理せずやれるときにやる

すべてが終わって霊玉を運べる人がいないようなら
(いるならその人に任せる
そのまま受け取ってバイクで走るよ
なるべく火口を目指すけど
無理そうなら湖へ




 自身が押されている事実が、信じられぬとでもいうように。
 驚愕の表情を浮かべたかぐや姫を、猟兵たちの追撃が襲う。
 内に秘めた激情を表に現すこともなく、プロメテ・アールステット(f12927)が冷徹に振り下ろした刃は、燕の子安貝の盾によって阻まれる。
「――挨拶が後になってすまないな、御伽噺の姫」
 月の姫君と人形の少女、二人の瞳は何処か似た色を帯びている。
「我が名はプロメテ。無礼を許してくれ、こちらは僅かな間も惜しい」
『……無礼を承知と言うならば』
 憎悪混じりの姫の言葉に反応を示すは、龍の首の球だ。
『幽世で詫びなさい』
 七色に光る珠を媒介に、躍り出るは七体の巨龍。
 プロメテに迫る牙を制したのは、リュカ・エンキアンサス(f02586)の銃撃であった。
 ぱらぱらと撃ち込まれる弾丸に足を止められた龍は、ぶわりと炎を吹き出して猟兵たちを威嚇する。
「数が多いし、まずはあいつらから……」
「いや、龍は私に任せてくれ。あの程度の炎相手なら、私に分がある」
 加勢に入ろうとしたリュカを制し、プロメテは意識を集中する。
「我が内に潜む炎よ この命を種とし燃え上がり 反逆の狼煙を上げろ」
 己の今の願いはひとつ。
「この世界を、あの人の故郷を壊させはしない」
 黄金の炎を纏い巨龍どもの首を落とさんと飛んで行く仲間を、リュカは静かに見送りながら御伽噺の内容を反芻する。
「求婚を断る話だったよね。あの手の女のひとって少し苦手だけど」
 殺すなら関係ないだろうと、少年は思考を切り替える。
 目標はかぐや姫の撃破、及び霊玉の確保。
 唸りを上げる愛車・アルビレオとともに、いざオブリビオンの下へ。

 龍をけしかけ終えた姫には、既に別の猟兵が食らいついていた。
「かぐや姫って、本当にあのかぐや姫なのですか? 実物を見るのはもちろん初めてなのですが」
 蓬莱の玉の枝より発生するレーザーを躱しながら、音海・心結(f04636)は敵へと声を掛け続け、隙を生み出さんと試みる。
『まだ疑っているというの? これを見ても?』
 一方の姫は、少しばかり落ち着きを取り戻したらしい。
 余裕ある笑みを浮かべたかと思うと、何かを口に含み――負っていた傷を、みるみるうちに塞いでいく。
「まさか、それは……」
『不死の薬。わたくしを知っているならば、覚えがあるはず』
 それは、かぐや姫が月へと帰る際に、育ての親たる老夫婦と帝に残したとされる霊薬。
 姫との離別を嘆いた帝は家臣に命じ、最も高き山にて薬を燃やしてしまったという。
『地上の人々を悲しませてしまったことには、ほんの少し心が痛むわね』
 力を取り戻した姫の攻撃は、心結の操る咎力封じの手練手管を阻む。
 どうにか攻撃の勢いを削ぐのがやっとというところか。
 しかし、心結はその状態から、既に勝機を見出していた。
「大人しく月でイチャイチャしてた方がよかったのではないですか?」
 ゆえに、投げつけるは煽るような言葉。
 姫の顔色がさっと青く――すかさず、赤く。
「ぁ、お相手がいませんでしたねぇ」
 からかい交じりとも思える心結の口調に、姫の何かがぷつりと切れて。
『減らず口を――!!』
 大きく振り上げられた玉の枝から、レーザーが放たれることは、ない。
『……!? どう、して』
「かぐや姫は月にお帰り。それが、竹取物語の結末でしょ?」
 蛇に噛み付かれて流れ出た姫の血が、心結の腕へとぽたりと落ちた。
 それは、ヴィサラ・ヴァイン(f00702)の髪を構成する生きた蛇。
 心結が生み出そうとしていた隙とは、ヴィサラが姫に気づかれずに忍び寄るためのものであった。
 より確実に、神々さえも死に至る毒を流し込むために。
「不死の薬なんて、定命の者が手を出さない方がいいと思うけど……オブリビオンに言っても仕方ないか」
 傷の治癒を止めたならば、後は強烈な一撃を叩き込むのみ。
「心結さん、任せたよ?」
「えへへ、任されたのです!」
 桜色の光に包まれた、心結の拳が唸りを上げる。
 顎を撃たれて吹き飛ばされ、無防備になった姫の懐からあたたかな光が漏れ出していて。
 その一点を掠めるように、狙いすました銃弾がひとつ。
 零れ落ちた霊玉が、ころころと転がり落ちていく。

「確保完了っと」
 転がってきた霊玉を拾い上げ、リュカはアルビレオを走らせる。
 姫の危機を察してか、再び現れ出でた月の使者に追い付かれるわけにはいかないから。
 火山口まで続く道は、ごつごつとした岩で覆われている。
 それを最も早く乗り越えられる者は、果たして誰か。
 少年の答えは既に出ている。
 その相手に向け、高く腕を掲げて。
「お姉さん、頼んだよ!」
 投げられた霊玉を、空中にて受け取ったのはプロメテだ。
 飛行能力を持つ猟兵のうち、ユーベルコードの力も込みで最も速度を出せる者。
 巨龍との戦いでのダメージを考慮しても、担い手は彼女において他にない。
 頷いて火口へ飛び立った少女を背に、リュカは月の使者と相対する。
「行かせないよ。今を生きている人の願いが」
 放たれた弾丸の重みは、数多の敵を、悲劇を、乗り越えるための。
「とっても強いものだって、教えてあげるよ」

『…………』
 霊玉――太陽の力を奪い返されたかぐや姫は、ただ呆然とするばかり。
 容姿の美しさはそのままだが、何処か光が失せているような。
 ぴたりと止まってしまった活動は、ヴィサラの魔眼の力によるものだけではないのかもしれない。
 太陽の光を受けぬ月は、自ら輝くことはできないから。
 魔眼を維持するヴィサラを残し、心結は後ろに下がっていく。
 天を仰ぐかぐや姫は、何を想っているのだろう。
(「おやすみなさい、です」)
 地を強く蹴り、ヴィサラの横を抜けて。
 その手で、姫を月へ――否、骸の海へと。

 かぐや姫の身体が跡形もなく掻き消え、還っていったとほぼ同時。
 火口から天に向けて眩い光が昇っていく。

 富士山火口、遥か上空。
 少女人形はひとり、空高くを見つめている。
 太陽の輝きは、果たして月まで届いただろうか。

 *****

 コルテス配下の一人は討たれ、太陽の力は富士山へと還った。
 猟兵たちの活躍はサムライエンパイアを巡る戦への貢献として実を結ぶだろう。
 聳える霊峰が、その行く末を静かに見守っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日
宿敵 『『三姫』かぐや姫』 を撃破!


挿絵イラスト