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朽ちた墓標に花はなく

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●語らぬ村
 滅びは呆気なかった。
 ヴァンパイアが蘇り、人々は息を潜めるように細々と暮らしていた。語り継がれてきた恐ろしい伝説が、現実のものとなり百年余り。誰もが逃げ場のない恐怖と、今日も続いた日常への安堵を心の天秤に乗せ、絶妙なバランスを保ち続けた。
 村はずれにある畑での作業を終え帰ってきた少年――レグルスもまたその一人だ。泥に汚れた手で汗を拭いながら、夕陽に紅く染められた空を見上げる。じきに夜の帳が降りるだろう。胸のざわめきを感じながらも、レグルスは家路を急いだ。どうかこの不安を家族と共にいることで少しでも紛らわせるように、と。
 ――それが最後の記憶。
 夜を待たずして、村は沈黙した。誰も知らない黄昏の悲劇。

●グリモアベースにて
「依頼は村の調査だ」
 集まった猟兵を前に、口を開いた花棺 真尋が簡潔に告げる。あまりに簡潔すぎて要領を得ない猟兵たちは頭に疑問符を浮かべた。珍しく顔を顰めて人間らしい表情を見せた真尋は、頭を掻きながらようやく詳細を話し始める。
「ダークセイヴァーの世界で、滅びた村を見た。その理由を探ってくれ。……先に言っておくと、この村の滅びを回避することは不可能だ。既に間に合わん」
 どう足掻こうと事が起きる前には転移することが出来ない。だと言うのならば、一体何を調査しに行くというのか。
「村の名を、レオニズという。ダークセイヴァーの世界においては比較的平和な村だった。オブリビオンの支配や侵攻の気配はなく、村人は伝聞だけでその恐怖に怯えていた」
 明日は我が身。その思考が伝染し常に不安を抱えていたのだろう。理不尽に奪われていくだけだったことを思えば、わからなくもないけれど。それでも彼らは明日を描いて生きていた。眠りについた後、当たり前のように目を覚ますと思っていたのだ。
 ――明日は。
 ――明日になったら。
 ――明日こそは。
 闇と絶望が色濃い世界で、その心のなんと輝かしいことか。そんな風には生きられない人ばかりなのに。
 しかし、灯火は掻き消された。
「ほんの半刻ほど。レオニズが滅びるまでに要した時間だ」
 後ろに流した前髪を撫で付けながら、真尋は視線を落とした。
「予知した情報が断片的すぎて、レオニズに何があったのか分からない。ただ鮮烈な赤を見た」
 本来であれば情報を精査すべきなのはわかっている。だが精査するほどの情報量を真尋は持ちえなかった。
 焼き付いたのは視界を埋め尽くす赤色。それが夕暮れの陽の色だったのか、それとも別のものだったのか。
 そしてもう一つ。消えない声があった。
 鮮やかな赤色と共に『死にたくない』と訴える少年の声が響いたのだ。真尋が猟兵たちへ調査を依頼した理由はここにある。
「おそらく俺が見たのは、予知と言うよりもそいつの記憶に近いんだろうな。死にたくない、だなんて思うくらいだ。時間を考えても何かしらの襲撃があったと考えていいだろう。滅びの原因を突き止めれば、オブリビオンに繋がる可能性がある」
 このまま放置してしまえば可能性を手放すと同時に、悲劇を誰も知らぬままレオニズはその名を消すこととなる。生きた証も、死にゆく苦しみも、知る者がいなければなかったも同然。それではあまり無惨だ。
「レオニズに生存者は居ない。だが、もしも遺体が残っていたのなら弔ってやってくれ」
 予知で見た少年――レグルスの姿を思い起こしながら、真尋はそれ以上語ることなく瞼を伏せた。


滑武示侍郎
 今作はダークセイヴァ―の世界よりお送りします。
 猟兵が訪れなければこのままひっそりと消えていくだけだった村へ、確かに人々が生きた証を残して欲しいと思います。
 オープニングにもある通り村に何者かの襲撃があったと仮定し、調査をお願いします。既に滅びた村ですが、用心はしてください。
 戦闘以外の描写が多くなりますので、そちらに文字数を使っていただければと思います。
 それではプレイングをお待ちしております。※アドリブが多くなりますので、大丈夫という方はプレイング文頭に★を書いておいて下さい。
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第1章 冒険 『過去に沈む場所』

POW   :    閉ざされた扉を破り家屋などの内部を調べる、未知の脅威に備える

SPD   :    村全体を見回って観察する、物理的な痕跡やその原因を調べる

WIZ   :    魔法の痕跡を調べる、地理や気象、その他の着眼点から調査する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リインルイン・ミュール


滅びは突然に、というのはありがちですし、それ自体には特に感じるものはないですケドー
誰の記憶にも残らないのは、きっと悲しい事ですから
まずは調査を頑張りまショウ

武器の準備はしつつ、まずは村のパッと見の印象を確認。滅びたと言っても色々ですからネ
家は壊れてます? 焼けてます? 死体はある、ない?
そういうのから調査デス

とりあえず、死体があるならその位置関係を確認
囲まれて中央で虐殺とかだと難しいですが、そうでなければどの方向から敵が、或いは攻撃が飛んで来たのかは判るハズ
家屋の被害状況も加味しつつ、その方向を調べてみますヨ
無いならそれはそれで、何処かに持っていかれたなら血痕なり足跡なりが残っていそうデス


アーノルド・ステイサム


【POW】

やるせねえな
この世界じゃ珍しくもないことなんだろうが…

赤は血液とか…
死因に成りうるとしたら爆炎とかかね
まあ、今は目の前の仕事だ

壊滅した原因がはっきりしていない以上、油断は禁物だ
単独行動はせず、他の猟兵と連携して行動する
瓦礫をどかしての調査とか、
あとは戦いやすいよう邪魔なものを取っ払ったりかね
…赤というのがどうも気になる
村に通常なさそうな異物を見つけたら、速やかに仲間に共有する

炎が原因と推定して火事らしき痕跡もないか確認
違っていたとしても、可能性を潰せるならそれで良し

遺体が見つかれば、ひとまず状態を整えておく。
埋葬してゆっくり弔うのは戦いの後だ。
――すまんな、また後で必ず来る。


ウォルター・ハイデルベーレ
★【POW】

驚異に備えつつ、扉を破り家屋の内部を調べる。
調査に当たって【世界知識】や【戦闘知識】が役に立てばよいのでありますが…

また、何か鍵となりそうなものを発見した場合は、他の猟兵と情報共有させてほしいでありますな。

遺体を見つけたら、調べた後、丁重に弔わせてもらうであります。

(アドリブ大歓迎です。よろしくお願いします)


ルフトフェール・ルミナ

ほんの短い時間で、村一つが滅んだと……。
真尋さんが視た様子では、村の人には抗う手段も時間もなかったんだろうな。
運命に「否」と告げ、抗う手を上げることすらできないまま、人が死んでゆくなど、僕には許せない。己が運命の主は己のみであるはずだよ。

僕は魔法の痕跡を調べてみたいと思う。
亡くなられた方は、どのように亡くなったのか。
死因は炎とか氷などの魔法か、或いは別の力によるものか。
無造作な殺戮か、狩りのように一人一人狙われたのか。
ただ殺すために殺されたのか。身体の一部を得るためか。
調べるのは下手人を探すためだけじゃない。彼らの死に様、その無念を胸に刻むためでもあるんだ。
その後、皆を丁重に葬るね。


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム

村が丸ごと、半刻で――全く、尋常ではない事態だな。
救うことができないならば、せめて弔いと仇討ちを。……それが、せめてもの手向けになればいい。

とまれ、まずは調査である。
襲撃であったと仮定して……予知にあった少年、村に帰るまでは襲撃者に遭わなかったのだろうか。だとしたら、襲撃者の来た方角は、ある程度まで絞れるな。
魔術的な痕跡があるかどうかはともかく、探ってみるくらいならば私にもできるだろう。
「一面の鮮烈な赤」というのも念頭に置いて、情報を掴みたい。【追跡】で何かしらの痕跡が追えればいいが。

調査中、遺体が見つかれば弔いをしておこう。
……ま、作法など知らんから、簡素なものになってしまうだろうがな。


忠海・雷火


未来を理不尽に奪われ、誰にも顧みられない
私自身はもうどうでも良いけれど、他者に起こるそれは違う
……だから、せめて仇は討ちましょう

半刻程での滅亡となれば、普通の手段では難しい筈
一先ずは魔法の痕跡を探るわ
・家屋や(あれば)死体に魔力の残滓がないか
・村に何か魔法陣的なものが仕掛けられていた痕跡がないか
・家屋に被害が無いなら呪術やガス状の魔法の可能性
・被害があるならどの部分に集中しているか、其処に魔力の残滓があるか

概ね以上の点を中心に調査
全体魔法の類だった場合は判断が難しいでしょうから、その場合は村の周辺に似た魔力の残滓が無いかを調べる

調査中は警戒を怠らず、襲撃されれば刀とユーベルコードを使用し戦う


赭嶺・澪
【POW】閉ざされた扉を破り家屋などの内部を調べる、未知の脅威に備える
…良く見てきた光景ね。
思うところはあるけど、今は仕事を優先しましょ。

私は屋内を調査してまだ残っているかもしれない敵を警戒・排除しつつ、この村でなにが起こったのかの調査を行うわ。
屋内の荒れ具合や遺体の状態から、魔獣なのか吸血鬼なのか、はたまた別な存在なのかを調査。
調べた情報は他の猟兵達にも情報を伝えましょう。
その際、他の猟兵から情報もらえるなら貰いましょう。

遺体は運び出して一カ所に集めて纏めて埋葬しましょう。
その方が寂しくないでしょうし。


白鳶・イトセ

*行動以外は参考程度に、お気に召すままあたしを動かして
*うまく添えそなヒトいれば、絡みも歓迎だよ!

寒い、な
寒いよ、この村は

最低限、襲撃に警戒はしつつ
とりあえず、相手の正体とか、その在処を探りたいね
入り込めそな家屋や建物を捜して中に
犠牲者があれば祷を。調査済の印も兼ねて、なにか供えてあげたいな
ご遺体に失礼して、傷痕を検められれば一番だケド
そうでなければ、地図か、村の外のモノか、
敵の来方行方が判りそな情報、探したいな

世界は、いろんな結末にあふれてる
そのすべてが幸福なモノじゃなかったとしても、
ただそうあるコトを願うコト、それを謗る権利は誰にもないよ
それを――毀す権利だって、誰にもなかったはずなんだ


空廼・柩

【SPD】
思わず舌を打つ
滅びた村の捜索ほど、救える命がないほど虚しい事はない
とはいえ件の赤色も気になる要素だ
もしこれが吸血鬼に関係する何かだったりしたら…
この村だけで終るとは到底思えない
…少し、本腰入れて調べる必要がありそうだね

先ずは村を見て回ろうか
勿論、何があるか分からないし警戒は怠らない
もし何らかの魔物が襲ったならば、それらしい痕跡も残っている筈
爪痕や血痕、何でも良い
『戦闘知識』でどんな場合に付く跡かも分かれば記憶に叩き込む
…後は村人の死体も確認して回らないと
『医術』の知識があれば死因らしき物は分かるだろうか
調べる前に両手を合わせ…ごめんなさい、後で必ず弔います
少しだけ、力を貸して下さい


ニコラス・エスクード

この世界ではありふれた話だ。
幾度と見た光景でもある。
この身を授かる前にも、後にもだ。
慣れる事などありはしない。
慣れる事などあってはならない。

この光景が生み出されなくなることが、
俺の使命で、俺の生まれた理由だ。
必ずや、この墓標の村に報いの花を。

【SPD】
【掃除】技能を活かし何かの痕跡を細やかに探ってみるか。
村人達が逃げ出す間もなくともなれば、
強襲してきた何かの足跡があるやもしれぬ。
建物へ侵入したのであれば扉を破った痕跡もありそうだ。

……鮮烈な赤か。
血か、火の色が浮かぶところではあるが、
死体に何か特徴的な痕がないかも探っておくか。
その亡骸の、報復を誓いながら。


雪生・霜逝
★【POW】使用。
かつて亡骸を運んだこともあったように思います。護衛機が護るものは、生者のみに非ず。求められるなら、死せる骨肉をも、抱えてゆくのでございます。

薄闇に紛れ、【目立たない】よう【迷彩】で身を隠し【忍び足】。
敵を警戒しつつ、3m近い巨躯の視点から【情報収集】を試みましょう。

もしも亡くなった方を見つけられたなら。
明日への希望に敬意を表し、手の甲へ鉄の牙を立て、冷たい血を【吸血】いたします。
「ご無礼をお許しください……血に刻まれた情報は、わたくしがお護りいたしますので」
【祈り】の弔花の代わりに、雪華に似た銀の弾丸を、強張った手に握らせる――わたくしにできることは、その程度にございます。


オルハ・オランシュ


村の入り口で黙祷
ごめんなさい、お邪魔します
少し煩くなってしまうかもしれないけど……見て回らせてもらいますね

村を一回りしてみよう
持参したメモに村の地図と、
どこにどんな痕跡が残っていたのかを書き込みながら進むよ
焼けた跡、斬られた跡、何かがぶつかった跡
どんな痕跡かで、滅びに使われた手段を推測

この畑……大事にされてきたんだろうな
村の人が確かにここで生きてきた証が残ってる

遺体を見付けたら、黙祷を捧げて
何がこの人の命を奪ってしまったのかを調べさせてもらおう
ごめんなさい、時間はかけないから……
損傷の酷い部位は布で覆い隠してから手厚く埋葬できたらいいな
こういう一人じゃ大変な作業は誰かと手伝えたら尚いいよね


イア・エエングラ

眠りは小さな、死だけれど
朝陽とともに、蘇るものね
この村は暮れた後に、明けることもなかったのね

お人形を抱えてそろり無人の村を行くよ
弔い代わりの黒い裾を翻して
人の気配がないかしらと、祈るけれども屹度お仲間くらいねぇ

焦げ跡、壊れた家屋、抉れた地面があるなら
そうっと手を触れて魔法の痕を探しましょうな
自然災害ならきっとずっと広域になるかしら
死んだ子のお相手はお得意だもの
聞かせておくれね辿らせてね
どれくらいの規模でどれくらいの間隔で散らばっているのか
一際酷く、荒れた場所
夜を齎した中心の場所を
くすぶる火はあるかしら、魔法の残滓はまだいるかしら

――弔いには白い花を
その夜がどうか、騒がしく妨げられないように


隠月・ヨル
★【SPD】
赤…紅…夕陽なのか炎なのか血なのか…なんなのかしら?
ま、そこら辺を確認するのが今回のお仕事ね。

【リザレクト・オブリビオン】で喚びだして、周囲を警戒かつ警護させながら観察と調査をするわ。
亡くなられている顔が残っていれば表情や遺体の倒れ方や向き、分布等をノートか手帳に書き記してまとめましょう。
もちろん死因の確認もよ。
なんとなくでも原因発生の方角がつかめたらそちらに向かうわ。
他に向かっているヒトがいたら逆方向ね。
引き続き【リザレクト・オブリビオン】で呼んだ二人をそのまま引き連れて。
「既に間に合わない」と言ってたから事象が起きてからは間もないはず。何か遺っていると良いのだけれど。



ダークセイヴァ―の世界に降り立った猟兵たちを迎えたのは、静謐に佇む朽ちゆく村だった。村の象徴だろうか。獅子を模した像の傍にレオニズという名が記されていた。掠れて見えにくくなっているその名は、間違いなく彼らが転移をする前に聞いたものだ。時刻は奇しくも滅びが訪れた日と同じ夕刻。夕陽が空を赤く染めていた。
 吹き付ける風の中に、微かに死臭が漂っている。猟兵たちはそれぞれ去来する想いを胸に、村を調査すべく三部隊に分かれ行動を始めた。

●閉ざされた扉
「やるせねぇな。この世界じゃ珍しくもないことなんだろうが……」
 他の部隊を先行し一足先に村へ足を踏み入れたアーノルド・ステイサムは、生としての機能を停止した村を見渡して小さな呟きを零した。汎用人型歩兵として作られた大柄の機械男は、人間の倍近くある巨躯で器用に他の者と歩幅を合わせる。壊滅した原因がはっきりしていない以上油断は禁物だ。単独行動は避け、他の猟兵との連携を考えていた。
 その隣に同じくウォーマシンの雪生 霜逝が並んでいた。こちらは雪中行軍護衛樹として設計された量産機の一つだが、経年劣化で記憶が部分欠損している。けれども。
「かつて亡骸を運んだこともあったように思います」
 焼き切れた記憶の中に朧げな記録を垣間見た。護衛機が護るものは、生者のみに非ず。
(求められるなら、死せる骨肉をも、抱えてゆくのでございます)
「寒い、な。寒いよ、この村は」
 人の温もりを失った地に感じたのは、先のない行き止まりの閉塞感。まるで彼岸のような薄ら寒さを纏っていて、白鳶 イトセは視線を落としゆるりと首を振った。此処の結末はとても恐ろしい。きっと、彼らの正しいオシマイはこんなものじゃなかったはずだ。
「全てが終わった後というのは、なかなかにきついものがありますな」
 それまで沈黙を保ってきたウォルター・ハイデルベーレは仲間たちの言葉にそう零した。誰もが間に合わなかったという事実を、事前に言われていたけれど実感し始めているところだった。力を持てど必要な時にその場にいなければ意味のない現実が、猟兵へ重く圧し掛かってくる。
「……よく見てきた光景ね。思うところはあるけど、今は仕事を優先しましょ」
 一行は倒壊した家屋が多く集まる地域を発見したところで足を止めた。赭嶺 澪の冷静な一言に同意を示す。戦場で育ち多くを学んできた澪は、幼いながらも一行の中でひどく大人びて映った。
「わたくしはこの周辺を調べてみます。周囲の警戒もしますが、皆様どうかお気をつけて」
 霜逝が夕暮れの薄闇に紛れ、迷彩で身を隠しながら部隊から離れる。彼が言うように周辺は任せることにし、猟兵たちは警戒をしつつ家屋の捜索にあたった。
「赤……血液、とか。死因と成りうるとしたら爆発とかかね」
 瓦礫を避けながらアーノルドが一人ぶつぶつと言葉を重ねる。どうにも転移前に真尋の言った『鮮烈な赤』というのが気になっていた。ひとまず炎が原因と推定して、火事らしき痕跡もないか確認していたが、どうにも家屋の崩れ具合から炎である可能性は低いのが見て取れる。あったとしても食事の支度で使っていた火の始末ができずに、多少燃えた程度のもので村を壊滅させるほどのものではない。
(可能性は一つ潰れたってことでいいか)
 推測は外れてしまったが、原因を特定していくには成果を得たと言っていいだろう。
 家屋の前に転がっていた瓦礫をみんなで避け、ようやく戸口の前に辿り着いた。しかし開けようと思った扉は周囲の倒壊の影響もあってか、立て付けが悪くなっており開けることが出来ない。
「……失礼」
 開かないのならば、蹴破ってしまえばいい。ウォルターが短く声をかけ、次の瞬間扉を蹴り飛ばした。衝撃で舞った埃に咳き込みながら、中を覗き猟兵たちは小さく息を呑んだ。
 室内には折り重なるようにして息絶えた年老いた男女が二人。その表情は安らかとは程遠く、恐怖に目を見開いたまま絶命していた。イトセは二人に歩み寄り、彼らの瞼をそっと閉じてやると両手を合わせて黙す。それに倣い、他の面々も犠牲者となった二人に黙祷を捧げた。
「村の荒れ具合や、家屋の損害から魔獣の線も疑っていたけれど、どうやら違ったみたいね」
 遺体へ近寄り何かしらの情報がないか調べていた澪が、仲間を振り返るそう言った。屋内の捜索をしていた面々も集合し、澪へ視線を注ぐ。男女の死因は明らかだった。心臓を抉り取られている。それも正確に。しかし澪が見つけたのはそれだけではない。
「ここ」
指し示したのは首元。縦に並んだ二つの傷跡に誰もがすぐさま結論へ至った。
「ヴァンパイア……」
 イトセのこぼした声に澪が頷く。ダークセイヴァーの世界はヴァンパイアの支配する世界。可能性は大いにあった。
「この村を滅ぼした元凶はヴァンパイアか」
 また戯れの一種なのだろうか。アーノルドは元凶の存在に不快感を抱いた。
「遺体は運び出そう。このままだとこの家もいつ崩れるかわからない」
「丁重に弔わせてもらうであります」
 アーノルドとウォルターがそれぞれ一人ずつ抱え上げる。屋内にそれ以上の情報がないと判断し彼らは一先ず家を出た。
「他の家も調べ終わったら、みんな一緒に埋葬しましょう。その方が寂しくないでしょうし」
「うん。それがいいと思う」
 澪の提案にイトセも賛同する。そして屋内にあった布を勝手ながら拝借し、並べて寝かせられた男女の胸元を隠すように被せてやった。

 一方、3m近い巨躯を大いに利用し高い視点から情報収集を試みた霜逝も、瓦礫の合間に苦悶の表情を浮かべた初老の男性を見つけた。おそらく逃亡を図るも、あえなくその命を奪われたのだろう。屋内組同様、その男もまた心臓を抉り取られていた。
「御無礼をお許しください……血に刻まれた情報は。わたくしがお護りいたしますので」
 助けを求めて伸ばしたであろう手を取り、その手の甲へ鉄の牙を立てる。祈りの弔花の代わりに、雪花に似た銀の弾丸をもはや血の巡らぬ手に握らせた。
「あなた方が抱いた明日への希望に敬意を表します」
 亡骸を抱き、霜逝は仲間との合流を選択した。

●地図を辿って
 村の入り口でオルハ・オランシュが黙祷を捧げる。
「ごめんなさい。お邪魔します。少し煩くなってしまうかもしれないけど……見て回らせてもらいますね」
 死者の村へ声をかけ、オルハは持参したメモを片手に村の探索を始める。
「……チッ」
 不意に聞こえた小さな舌打ち。空廼 柩だ。思わずと言った形で舌を打った柩は、自身へ視線が集まったことに気付き眉を顰めた。野暮ったい眼鏡の奥の瞳がバツの悪さを孕んだ。
「……悪い」
「いいえ。気持ちはわかるよ」
 短い謝罪にオルハは眉尻を下げて首を振った。その場にいた者は皆、柩が仲間に対して舌打ちをしたわけではないことに気付いている。彼は村の惨状に気が付けば無意識に舌を打っていた。滅びた村の捜索ほど、救える命がないほど、虚しいことはない。根がお人好しの性格なのだ。希望のない地を歩く足取りは少しずつ重さを増した。
 そんな中、変わらぬ足取りで確かに歩みを進めるのはニコラス・エスクードだ。黒鉄の鎧を鳴らしながら赤き眼は前を向く。
「この世界ではありふれた話だ。幾度と見た光景でもある。この身を授かる前にも、後にもだ」
 しかれども。
「慣れることなどありはしない。慣れることなどあってはならない」
 だからこそ歩みを止めない。ニコラスにとってはこの光景が生み出されなくなることこそ、使命であり生まれた理由である。いつかの未来の為に立ち止まることはないのだ。
 迷いなく進む背に、柩は小さく深呼吸をして顔を上げた。もしこの村の事件が吸血鬼に関係する何かだったりしたら、此処だけで終わるとは到底思えない。本腰を入れて調べる必要があるだろう。
「《リザレクト・オブリビオン》」
 隠月 ヨルが死霊騎士と死霊蛇竜を召喚する。
「周囲の警戒はこちらに任せましょう。調査に集中できるわ」
 ありがたい申し出だった。村を一回りするのだから、常に細やかな部分まで気を配りたかった他の面々は、ヨルの言葉に甘えることにした。
「赤…紅…夕陽なのか、炎なのか、血なのか…何なのかしら?」
 村を回りながら調査を始めたところで、ヨルが疑問を浮かべた。それは転移する前から誰もが気にかけている部分だ。真尋が視たのは『鮮烈な赤』。それは今まさに沈みゆく夕陽を指していても不思議ではなかった。
「鮮烈な赤か。……こちらも血か、火の色が浮かぶところでがあるが」
 考えていることはだいたい同じようだ。
「でも見た感じだと、火は違うみたいだね。焼けた跡があまり見当たらない」
「ああ。滅びたとは一言で言っても、人が完全にいなくなった状態の方みたいだね」
 村の地図と痕跡をメモに書きこんでいたオルハの言葉を継いで、柩がほぼ確定的な推論を話した。建物は比較的形を残している。狙いは完全に住人だけだったのだろう。
 不意に、ニコラスが三人を呼び止めた。
「村人達が逃げ出す間もなくともなれば、襲撃してきた何かの足跡があるやもと思ったのだが」
 そう言って指し示したのは村の入り口から東の方角にあたる畑であった。土の上に残った足跡は、畑など構うことなく東の方角へと進んでいた。
あ、とオルハが声を上げた。すぐさま手元のメモを見返して確信を得る。
「この畑、予知の少年――レグルスが襲撃の少し前まで作業をしていた畑だよ」
 事前に真尋に確認をしていたから方角、場所共に地図と照らし合わせてみても間違いはない。ここで告げられた情報から一つの推測が成りなった。
「手入れがなくなっちゃったから荒れてきてるけど、大事にされてきたんだなってことがわかるよ。村の人が確かにここに生きてきた証が残ってる」
「そうまでして大切にしてきた畑を、こんな無造作にあるく奴はいないよね」
「……襲撃があったのは、レグルスが畑仕事を終えた後」
 オルハの言葉を、柩、ヨルと継いでいく。彼らの中で答えは出揃っていた。
「この足跡は襲撃者のものと考えていいな」
 結論を告げたニコラスに否と唱える者はいない。元凶へ辿り着くための大きな痕跡が見つかった。そしてもう一つ、柩があることに気付く。
「レグルスは襲撃の頃には帰路に着いていたんだよね。ここがレグルスのいた畑だとするなら、帰るのは西の方角。……赤にいくつ意味があるかはわからないけど、一つは夕陽でいいんじゃない?」
 柩が指差す先は沈む間際、一層赤く染まった太陽だった。彼らのいる場所から、夕陽が沈む山まで視界を遮るものが少ないこともあり、その輝きがよく見えた。
「確かにこれは、目に焼き付くな」
 鎧兜の下からでもよく見える『赤』にニコラスは柩の推測に同意を示した。
「もう一個いいかな?」
 こちらもメモを片手に色々と考えていたヨルが声をかけてくる。三人は沈黙をもって先を促した。
「周辺の木とか、瓦礫とか見てて気づいたんだけど、全部西の方角に向かって倒れているのよ。損傷がある建物も、衝撃が私たちのいる方から与えられているわ」
 ヨルの言う通り、損害状況には一定の法則性があった。まるで嵐が過ぎ去っていったような。そうとわかれば導き出された答えは。
「元凶は西へ向かった……!」
「西の方には確か別のチームが行ってる」
「急ぐか」
 オルハが村の調査を始める前のことを思い出す。すぐに情報を伝えるべきと判断したニコラスは、踵を返し別働隊との合流を急いだ。

●滅びの痕跡
(滅びは突然に、というのはありがちですし、それ自体に特に感じるものはないですケドー)
「誰の記憶にも残らないのは、きっと悲しい事ですから、まずは調査を頑張りまショウ」
 リインルイン・ミュールは村の西側、住居が多く集まる場所まで調査の足を進めた。こんな世界ではいつもどこかでオブリビオンによる、理不尽が降り注いでいる。その一つ一つに心を痛めては居られない。もちろんこれはリインルインの考え方であるが。過去の記憶が殆どなく、記憶と一緒に執着心も薄れてしまったのかもしれない。
「ほんの短い時間で……。真尋さんが視た様子では村の人は抗う手段も時間もなかったんだろうな。運命に『否』と告げ、抗う手を上げることすらできないまま、人が死んでゆくなど僕には許せない。己が運命の主は己のみであるはずだよ」
 奪われていった命にルフトフェール・ルミナが悲しみを寄せた。何もできなかった自身が口惜しいけれど、それ以上にこんな出来事が当たり前に起きる世界に憤りを感じる。
 それは隣を歩く忠海 雷火も同様であった。
「未来を理不尽に奪われ、誰にも顧みられないなんて。私自身はもうどうでもいいけれど、他者に起こるそれは違う」
 感情を表に出すことの少ない彼女も、その瞳は雄弁だ。悲劇を知っていた。あんな苦しみを背負う人が、あんな絶望を知る人がこれ以上増えないことを願っている。
「救うことが出来ないならば、弔いと仇討ちを。……それがせめてもの手向けになればいい」
雷火が口に使用とした言葉は、ニルズヘッグ・ニヴルヘイムがその声に乗せた。皆、考えていることは同じだ。
半刻で滅びたレオニズを、尋常ではない事態だと認識していた。とてつもない力が動いているような。
「眠りは小さな死だけれど、朝陽とともに甦るものね。……この村は暮れた後に、明けることもなかったのね」
 人形を抱えそろりと歩くイア・エエングラは沈みゆく夕陽を見つめ目を細める。弔い代わりの黒い裾を翻して、居ないと言われた生存者の気配を探していた。祈りは届かず、感じるのは死の影。
「やっぱり、居るのはお仲間くらいねぇ」
 わかってはいてもどこかで期待してしまっていた。落胆の色を見せたイアは、調査へと心を切り替える。
「予知にあった少年、村はずれから戻ってくるまでは襲撃者に遭わなかったのだろうか?だとしたら襲撃者の来た方角はある程度まで絞れるかな」
 時を同じくした頃、まさに同じような考えから別働隊がその情報を掴んでいた。地図のないニルズヘッグにはおおよその方角しかわからないが、なんとなくあたりをつけて痕跡を探す。何かしらの情報は得たいところだった。
 これまでに魔力の残滓を辿り見つけた遺体はどれも年老いた人間ばかり。遺体の傷跡からこちらも元凶がヴァンパイアであるところまでは掴んだ。しかし若者をほとんど見かけていないのが気がかりだ。
「なんだか妙な感じだね。狩りのような感じもするけれど、それにしては猟奇的な部分もあるし」
 ルフトフェールはそれまでの調査の所見を口にした。まるで気ままに遊んでいるかのようだ、と考えたところで気分が悪くなりそれ以上考えることはやめた。遊び感覚で殺されるなどたまったものではない。
「あ…」
 不意に声を上げたのは雷火だった。声に反応し雷火の視線を追った猟兵たちは、その先に少年の亡骸を見つける。駆け寄ってみれば、全身を裂傷が走っていた。それまでとは違う傷跡だ。少年の顔には涙の跡が残っていた。抱き起こしたニルズヘッグの手に力が入る。どれほどの苦痛であったのか想像もしたくない。痛みと恐怖にもがきながら息絶えたのだろう。
「……この子が、レグルスだったんだね」
 思いがけない言葉に、ルフトフェールへ視線が集まる。彼は少年の右腕に残った革のバングルを手に取った。そこには確かに『レグルス』の名が刻まれていた。
「そうか、この子が……」
 見つけてやれて良かったという思いと、救えなかった現実を見せつけられてニルズヘッグは言葉を呑んだ。他の猟兵たちも皆同じように口を閉ざす。
 どうか安らかに眠れるように、とその頭を撫でて魔法の残滓がないか探ろうとしたイアが大きく目を見開いた。レグルスに魔法の残滓は確かに残っていた。それはその先を辿れるほどにはっきりと。しかし問題は辿った先だ。今まで感じたこともないような強大な力を感じた。
「どうしたの?」
 イアの異変を感じ取った雷火が声をかける。イアは緊張した面持ちで立ち上がった。
「こっちへ。着いてきて」
 レグルスを一度地面に降ろし、イアに先導される形で建物の角を曲がった猟兵たちは、次の瞬間瞠目し絶句した。
 視界に広がるのは地面を黒く染めた液体の跡と、そのさきに折り重なって積まれた若い男女の死体。黒い跡が変色した血なのだと理解するまでにそう時間はかからなかった。
『一面の鮮烈な赤』は夕陽ともう一つ。この夥しい量の血の海だった。
若者は逃げたのではない。追い込まれ惨殺されたのだ。中には皮をすべて剥がされた者もいた。おそらく体型からして少女だったのだろう。
「なんて、ことを……」
 イアのその一言がやっとだった。
 背後から複数の足音が聞こえてくる。村を回ると言った東にいた部隊が、もう一部隊と合流してやってきたのだ。そして誰もが目の前の惨状に言葉を失った。
 怒りを宿したのは誰だったか。無念を思い涙したのは誰だったか。無力を嘆いたのは誰だったか。猟兵たちは、何もできなかった。
「この村を襲った奴は西へ向かった」
「西の方角にはもう一つ村があるの」
 オルハとヨルの言葉に、猟兵たちの目に光が戻る。それは苛烈に煌いていた。レオニズの村の仇討ち。そしてもう二度とこの村と同じような悲劇が起きないように、するべきことは決まっていた。
「埋葬してゆっくり弔うのは戦いの後だ」
 アーノルドに誰も異を唱えなかった。最優先は隣の村を護ること。すぐに弔ってやれない申し訳なさを抱えながらも、彼らは静かに背を向けた。
 戻ってくる、と心に誓って。
――必ずや、この墓標の村に報いの花を。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『素敵なドレス』

POW   :    街を歩き回って情報収集、不審な建物を調べる

SPD   :    住民に聞き込み調査、犯人の痕跡を探す

WIZ   :    被害者の関連性を探す、次の事件を予測

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アーノルド・ステイサム
想定以上の事態だったな
お陰様で演算回路が動作不良だよ
「怒り」ってヤツだ、くそったれ。

何より優先すべきは
西の村に可能な限り早く到着すること。
そして事態の説明と避難の依頼だ。
疲れ知らず(機械)のデカい身体でとにかく足を使う。
また、事態の説明に使えそうな遺品があれば、レオニズから持参しておく。
すまない、借りる。

すでに東の村は滅ぼされた。
このままでは此処も同じ事態に陥る可能性が高い。
…道中は遭遇しなかったが、敵は東から来るはずだ。

逆側に避難していてくれ。
あんたたちは俺らが守る。
…そしてレオニズの仇は、俺たちがとってみせる。

真摯に説得する。
必要であれば巨体を強調して戦う力があるようにも見せる。



 黄昏を過ぎた宵の口、レオニズより西方の村――ケウェウスを目指し猟兵たちは一本道を駆け抜ける。一刻も早くケフェウスへ着くこと。それが最優先事項だった。
 戦闘を走るアーノルドはレオニズの惨劇を思い出し、苦虫を噛み潰した気分になる。想定以上の事態だった。あんなものを見て、正常でいられる方がどうかしている。おかげさまで演算回路が動作不良を起こした。この状態の心当たりは大いにある。それはシンプルな「怒り」だ。
「くそったれ……」
 思わず吐き捨てたアーノルドは、疲れ知らずのデカい身体を駆使しケフェウスへ最初に辿り着く。他の猟兵たちとはそこまでは距離が開いていないはずだ。すぐに到着するだろう。しかし待っていられるほど余裕はない。アーノルドは今回のケフェウスの村人へ今回の事態の説明と避難の依頼をするべく動き出す。
 ほのかな明かりが灯り始めたケフェウスは、パッと見た感じで襲撃を受けたようには感じ取れなかった。村人はいつも通りの生活をしているように見受けられる。強いて言うのならば、宵の口であるがあまり人通りはなく、居たとしても家路を急いでいるようだった。
 その内の一人をアーノルドは呼び止める。
「わっ、びっくりした。でかいなあんた。……なにか用か?」
 呼び止められた気の良さそうな青年は、アルフィルクと名乗った。アーノルドの巨躯に驚きを示したものの、敵意がないと判断したアルフィルクはそれでもどこか警戒した様子で問いかける。
「ここから東に行ったところへレオニズという村があるのは知っているか?」
「ああ。知ってるさ。行ったことはないけどな。昔は交流があったらしい」
 ヴァンパイアが甦る前は、すぐ近くの村だからそれなりの交流があった。お互いの村に嫁ぐだなんてことも少なくなかったらしい。全ては伝聞だからどこまで本当かは定かでないけれど、とアルフィルクは話す。
「落ち着いて聞いてほしい。そのレオニズが、ヴァンパイアの手によって滅びた」
 アーノルドの言葉にアルフィルクは目を瞠り息を呑んだ。
「……ちょっと、待ってくれ。あんた、なに、言って…」
 動揺を隠しきれない青年は、自身の声が震えているのもわからないほどの衝撃を受けていた。
「これが証拠だ。このままでは此処も同じ事態に陥る可能性が高い」
 アーノルドはおもむろに布きれを取り出す。それは変色した血がこびりついた、レオニズの村人のものだ。この村で事情を説明する際にあった方がいいと判断し、借りてきていた。
 しかしそれが逆効果だった。
「ひっ…!」
 ダークセイヴァーにおいて、死は隣り合わせの恐怖だ。いつだって誰もが怯えながら過ごしている。一見、陽気で気の良い青年なアルフィルクとてそれは例外ではなかった。
「お、俺はまだ死にたくない!」
 避難を誘導する前に動転アルフィルクは、踵を返し走り去ってしまった。その様子を遠巻きに見ていた住民もアーノルドを避けるように、早足でその場を去っていく。この村もまた、心の天秤をギリギリで保っていたのだ。
 滅びを前に冷静でいられる者はいなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
……何たるやり口、何たる非道。その腐った性根に、必ずや報いてくれる!
予知に会った少年も、折角見つけてやれたのに、弔う時間もないのは惜しい。
だが二度も蛮行を働かせるわけにはいかん。隣村を守ることに注力するとしよう。

奴が既に潜伏していないとも限らない。私は村の中を見て回ろう。
村の中でも外れにある辺りなり、空き家になっている場所なりを中心にするか。多少なりとも、不信な痕跡が見つかればいいのだが。
それから、追い詰めるのに都合のいいような広い場所は、先に当たりを付けた方が良いかもしれないな。

業腹ではあるが、ここでもう一方の村が襲われては本末転倒。
今は冷静に行動するのが、一番の手向けになろう。



 何たるやり口、何たる非道。レオニズで見た情景がニルズヘッグの怒りを増幅させる。
「その腐った性根に、必ずや報いてくれる!」
 救えないとわかっていても、訪れる死が少しでも安らかであることを願わずにはいられなかった。けれど実際目にしたレオニズの滅びは悲痛に満ちていた。あんなものは悪夢と言わずして何と言うのか。行き場のない感情に歯噛みする。
 せっかく見つけてやれた予知であった少年も、弔う時間もなく置いてきてしまった。後ろ髪を引かれる思いであったが、二度も蛮行を働かせるわけにはいかない。ニルズヘッグはケフェウスを守ることに注力することを決める。
「業腹ではあるが、ここでこの村が襲われては本末転倒だからな」
 努めて冷静さを保とうとニルズヘッグは深く呼吸をして周囲を見渡した。建物に損害は見当たらない。レオニズを破壊して回った敵も、ケフェウスでは一転して姿を顰めているようだった。二つの村はかなり距離が近い。既に潜伏していても不思議ではなかった。
(ひとまず村の中を見て回ろう)
 冷静になった頭で、ニルズヘッグは歩き出す。あたりをつけたのは村のはずれと、空き家のあるあたりだ。潜伏するとなると人が多い場所にはいないと考えたためである。
「多少なりとも、不審な痕跡が見つかればいいのだが」
 ケフェウスの村はずれを歩く内に、ニルズヘッグが辿り着いたのは廃墟と化した小さな教会だった。絶望多き世界では縋る神さえも牙を剥いてきたと聞く。祈るものがいなくなったそこは、ただの廃墟となっていた。教会の周辺は多少の木々があるだけで、周りに建物が少なくひらけた場所だった。ここならば人が集まってくる心配も、巻き込む心配もなさそうだ。戦闘にはもってこいの条件がそろっている。
 ふと、ニルズヘッグは視界の端に不自然な黒い染みを捉えた。地面を染める黒いそれに近づき、膝を折って指先で触れる。
 金色の瞳がスッと細められた。何か液体を零したような染みは既に乾いていたが、これが何なのか戦場に立ってきたものならばすぐにわかる。――血だ。それも明らかに致死量をゆうに超えるほどの。
「やはりどこかに潜んでいるか」
 追ってきた敵が村にいるのは間違いないようだ。死体が見当たらないのは気になるが、この所業はオブリビオンのものといいだろう。
 立ち上がったニルズヘッグは情報を共有すべく、仲間と合流するため身を翻した。

成功 🔵​🔵​🔴​

オルハ・オランシュ
【POW】

こっちの村はまだ無事みたいだね
でも、どれほど時間が残っているのかわからないよ
些細な情報でもいいから何か得られないかな
【情報収集】しよう
さっきの惨状を繰り返しちゃいけない……!

シンプルに考えるのなら元凶は東から来るんだよね
まずさっきと同じように地図を書きながら村を一周、
それから私は東を重点的に調べてみるよ

人の出入りが感じられない建物があったら
許可を取ってから調査するね
多少暗い場所でも【暗視】でなんとかなるよ
火種になるような何か……それとも、村人以外が残した痕跡
気になるものはないかな
【野生の勘】で怪しく思ったところはしっかり確認しよう
何かを発見したら仲間に報告
情報は共有しておかないとね



 ケフェウスには生きた時間が流れていた。今もまだ小さな物語がたくさん紡がれている。レオニズでは感じられなかったその感覚に、オルハは安堵の溜め息を吐いた。
「こっちの村はまだ無事みたいだね」
 レオニズで見た光景が焼き付いて消えない。恐ろしいほどの静寂で迎えたかの村に比べると、生活している人の温かさがあるケフェウスはとても平和に見えた。
 あの惨状を繰り返してはいけない。オルハはどんな些細なことでもいいから、何か得るために精一杯の情報収集に尽力することを決心した。時間は残されていない。彼女が見たケフェウスの平穏さは既に仮初めのものと化しているのだ。
「シンプルに考えるなら元凶は東から来るんだよね……」
 メモを片手にレオニズで行ったことと同じような方法で調査を始める。簡単に地図を書きながら歩いた。簡易的なものが完成したところでオルハは村の東側を重点的に調べることにした。
 ケフェウスは住宅地が村の中心に集まっており、その周囲に様々な用途の建物が配置されている。住宅が点在していたレオニズとは構造が異なっていた。人が中心部に集まる造りは先の事件のこともあり、少なからず不安を覚える。
 陽の落ちた村に明かりが灯った。しかし中心部から離れたオルハの元までは明かりは届かない。暗視を備えていたため影響はなかったが、この時間、村はずれの建物に村人は近づかないようだ。人の気配はなかった。静かな建物の群れにこれといったものは見つからない。
「村人以外の残した痕跡とか、そういうのがあれば……あっ」
 注意深く調査をしていくオルハは、一部の建物に不自然な損傷を見つけた。人の力では到底難しいその損傷は、よく観察するとごく最近のものだとわかる。
「野生の勘って言うのかな。気になるなら調べるべきだよね」
 一際損傷が多い建物に狙いをつけ、屋内でのさらなる調査許可を得るため村人へ会いに中心部へ向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リインルイン・ミュール
こっちの村はまだ無事みたいで良かったデス

ワタシは村の人に聞き込みデス
村となれば住民は大体顔見知りでしょうカラ、見ない顔が来たらすぐ判ると思うんですよネ
なのでそういうヒトを見かけなかったかを訊いて周りマス

村の中でそういう話が無くとも、村外れの方で見なかったか、怪しい物音等だけでも聞かなかったかも訊きまショウ
情報を出し渋られるようなら、近くの村で襲撃があった事、その犯人と思しきものの後を追っていると伝えマス
この村の為デス、本当に些細な事でも良いので教えて下サイ

何か聞き出せたら、その情報のあった場所へ向かい、犯人の痕跡がないか調べマス
足跡があれば辿っていけるので一番良いんですけど、どうでしょうネ



 リインルインは村人への聞き込み調査をすべく、人通りの少なくなった住宅街の通りで家路を急ぐ人たちに声をかけた。
「あの、すみまセン」
「あら…珍しいお客さんね。なにか御用かしら?」
 リインルインのかけた声に応えたのは、バスケットを抱えた年若い女性だった。ハーフアップに纏めた髪を翻し振り返る。人柄の良さが滲み出る物腰柔らかな声音の女性はアルデラミンと名乗った。
「ちょっと聞きたいんですケド、最近見慣れないものを見たとか、怪しい物音聞いたとかありませんでしたカ?」
 なるべく警戒心を与えないように問いかけたリインルインへ、アルデラミンは一瞬の動揺を見せた。視線を泳がせた彼女はみるみる不安げな表情を浮かべる。
「何かあったんですネ」
「……実は、最近行方不明者が続出していて」
 問いというよりも確信の言葉に、アルデラミンは恐る恐る話した。行方不明者とは穏やかじゃない。聞けばそれは若い女性に限られているという。毎日のように一人ずつ消えていく女たちは、誰も戻ってこなかった。
 リインルインはすぐにそれがオブリビオンの仕業だと考えた。レオニズを襲った元凶が向かったと推測されるケフェウス。事件が起きた期間と状況を考えればなんら不思議ではない。
「彼女たちはみんな真夜中の内にいなくなってしまったの。夜は危険だから外に出ないようにしているのによ」
「行方不明になった女性たちに共通点とかはないんですカ?」
 共通点、と聞かれたアルデラミンはすぐに首を横へ振った。彼女もとうにそれは考えたのだ。しかし若いということを踏まえた上でも年齢はまちまちだし、全員に交友関係があったわけでもない。
「わたし、とても恐ろしいの。いなくなった子はわたしとほとんど同年代で、いつ自分の番が回ってくるのかと思うと……」
 それまでひた隠してきた恐怖が溢れ出したように、アルデラミンは目に涙を溜めて弱音を吐露した。突然理不尽に命を奪われることが、この世界において珍しいことじゃないとはいえ、そこで生きている住民からしてみれば死を受け入れられているというわけではないのだ。
「ありがとうございマス。引き留めてすみません。もう暗くなっているので気をつけて下サイ」
 気の利いた言葉はうまく出てこなかった。リインルインに出来たのは、涙を拭った彼女が無理に作った笑みを見送ることだけ。
 元凶に近付く情報は得られた。彼女の不安は取り除けないが、リインルインは今己がなすべきことをなそうと考えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

空廼・柩

【WIZ】

…はは、この世界はある意味分かり易くて助かるよ
此処まで早く見つけ出して、殺したいと思う奴なんて早々ないさ
因果応報、一片の慈悲なく潰してやらないと――ね

老若男女問わず殺されているけれど…
特に惨たらしい仕打ちを受けていたのは若者達
追い込んで殺す…俺達を家畜か何かと勘違いしている訳?
もし次の村へ向かったならば、元凶は既に村の何処かに居るのかな
後、気になったのは黄昏の空
レグルスが最期に見たであろう夕陽の色
確定じゃないけれど、もしかすると犯行は日が沈みきる前
…夕方頃に行われるのではと推察出来ないかな?
また動き出す前に何とか奴の痕跡を掴まないと
…怪しい人物とか分れば【影纏い】で追跡出来るかな?



 ケフェウスの村を右目以外に色彩を持たぬ男が歩く。口元に歪な笑みを浮かべて。
「…はは、この世界はある意味分かり易くて助かるよ。ここまで早く見つけ出して、殺したいと思う奴なんて早々ないさ」
 歪んだ笑みは胸の奥で煮えたぎる感情を抱いたままでは、笑おうとしてもうまくいかなかったからだった。冷静になればなるほどに殺意は溢れてくる。
 あんな理不尽を、殺戮を、地獄を、どうして受け入れられようか。他人に心揺らがぬ者であったのなら、もっと楽だったのかもしれない。けれど柩には無理だ。放っておけない。見なかったことにはできない。レオニズで聞こえるはずのない悲鳴が聞こえてしまったのだから。
 心が動いてしまった。もう捨て置けない。
「因果応報、一片の慈悲なく潰してやらないと――ね」
 湧き上がる感情は大きな深呼吸と共に、相対する瞬間まで閉じ込めておく。まだ感情で動くべきでない。未だ敵がヴァンパイアであるとしか判明していないのだ。このままでは徒に時間を浪費し、被害が広がりかねない。
 歩きながら柩は先ほど合流した仲間たちからの情報を整理する。同時にレオニズで得た情報を思い起こした。
 レオニズの村人は幼子から老人までいた。殺されたのはそのすべて。
「老若男女問わず殺されているけれど……」
 気になるのはその殺され方だ。年老いた村人は心臓を抜かれほぼ即死に近い。対して若者たちは特に惨たらしい仕打ちを受け殺されていた。
「追い込んで殺す…俺達を家畜か何かと勘違いしている訳?」
 ギリッと奥歯を噛む。鎮めたはずの殺意が膨らんできそうだった。玩具のように弄ばれるために命があるわけではない。
 仲間の情報通りであるのなら、既に元凶はこの村のどこかに居る。レオニズを半刻で滅ぼしておいて、ケフェウスには数日も潜んでいる理由はわからないが。
 それともうひとつ。黄昏の空がどうにも引っかかっていた。レグルスが見たであろう夕陽の色。あれほど鮮明且つ、予知にもあったのなら何か意味を持っているのではないか。
「犯行は日が沈みきる前と推察していたけれど、さっきの話を聞く限りだと夜も……いや…」
 ブツブツと呟きながら頭を整理していた柩は、やがてもうひとつの推論を出す。
「ヴァンパイアが活動的になるのは日のない宵闇の時間。……黄昏時はむしろイレギュラーか」
 そうだとすれば、今完全に陽は沈みきった。いつ動き出してもおかしくはない。早く奴の痕跡を掴まなければ。
 不意に視界の端できょろきょろとあたりを見回す青年を捉えた。村人は既に家へ籠っているはずだ。挙動不審な男に狙いをつけ、柩は視線を外さず手を前に出す。
「――じゃ、宜しく頼むよ。《影纏い》」
 掌の上に影を纏った蝙蝠が現れる。柩の命じるまま、蝙蝠は男の跡を追った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウォルター・ハイデルベーレ
★POW
真の姿にはならない。まだ、その時ではないのであります。

話を聞いて覚悟はしていたけれど、随分と凄惨な現場でありましたな。……こんな事、何回も起こさせてたまるか。

自分は街中での【情報収集】と、不審な建物を調べさせてもらうであります。そして何か発見でき次第、仲間と情報共有を。

……敵が既に街中へ潜んでる可能性もある。要心していこう。



「話を聞いて覚悟はしたけれど、随分と凄惨な現場でありましたな……」
 ケフェウスに到着し一息ついたところで、ウォルターは小さく呟いた。
 未だ元凶に辿り着けない以上忘れるつもりはないが、忘れようとしたところで焼きついた光景は簡単に消えはしないだろう。悲痛に喘いだであろう若者の中には、娘と同じような年頃の子もいた。幼子を抱いて息絶えた女性は、妻とそう変わらない歳の顔立ちをしていた。思わず懐に忍ばせている花守りを、服の上から押さえてしまうもの無理はない。
 救えないのだとわかっていても、何故間に合わなかったのかと考えてしまう。レオニズの無念を、この心を晴らすためにも元凶は必ず討たねばならない。
「……こんな事、何回も起こさせてたまるか」
 あんな悲劇はたくさんだ。一度だっていらない。
 真の姿は来るべき時まで秘め、ウォルターは調査を始めた。

 いくつかの情報を携え、村の中心で仲間たちと情報共有をしたがウォルターが得た情報と仲間が得た情報には共通項が多々あった。
 損傷した建物は意外と多く見つかっている。しかしその中にも損傷具合には差があった。明らかに人の力ではない損傷はそう多くなく、同じものを見つけていたようだ。それでもわかったことはある。建物についた傷はどれも細い刃で斬り付けられたようである、という共通点だ。それだけならば村人でも可能ではないかと思うけれど、注目すべき点は一部その刃のようなものが建物を貫通した跡が複数あった。細さと、建物の強度を考えた時にこれは人では到底無理だという結論に至る。
 毎夜消えていく女性の件はその情報以上に詳しいものがなかった。
 仲間と別れ、再び村を歩き情報収集していたウォルターは、村はずれの廃屋で血痕の様なものを見つけた。付近に争ったような形跡はあまり見当たらない。徒人とオブリビオンでは力の差は歴然だ。抵抗など無意味なのだから、ある意味形跡はなくて正解か。
 しゃがみこんで血痕に触れ調べていたウォルターは、ふと顔を上げる。見上げた先に教会の屋根についた十字架が見えた。先ほどの情報共有の際に廃教会の近くで血痕を見つけたと聞いている。此処はその付近で間違いなさそうだ。
「ならば、これもまた被害者のものか…」
 廃教会の近くと、村の東側の損傷した建物。この二つが敵の現れる場所と推測はできた。しかしそれ以上の情報が得られない。推測を裏付けるようなものは見つかれど、あと一歩元凶の元へ踏み込むことができない状況だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

杉崎・まなみ(サポート)
まなみは正当派後衛職のヒロインタイプです
聖職者教育を受講中の学生ですが、特に依頼に縛りは無く、どのような依頼でも受けられます
但し人並みに気持ち悪いモノ、怖いものとかは苦手で遭遇した際は多少なりとも嫌がる仕草が欲しいです
甘いモノ、可愛いモノが好きで少し天然な所があります
初対面の人でもあまり物怖じせず、状況を理解して連携を取る動きが出来ます
シリアス2~3:ギャグ7~8割くらいのノリが好みです
ただシリアスもやれますよー

UCは攻撃魔法と回復魔法どちらも使えます
特に『大地の奇跡』は、戦闘区域の状況や地形を踏まえた自然現象を利用する攻撃になります

その他、細かい部分はMS様にお任せします



 夜闇は一層とその暗さを増していく。ケウェウスの村は不気味なほどに静まり返っていた。灯りすらもない村は
 張り詰めた静寂の中、杉崎 まなみは件の教会の前にいた。共有された情報から神官を志したものとして、教会が気になってしまったのだ。
 情報の通り決して少なくはない血痕は、すぐに見つけることが出来た。あたりを見渡してもそれ以上の手がかりがあるようには見受けられない。
 それでも彼女には、第六感とも言える虫の知らせがあった。誘われる視線は古びて廃れた教会。建物としての形は廃教会といえど、ほとんどが保たれた状態で中の様子を伺い知ることはできない。
 脆くなった扉を慎重に開く。
 僅かに軋む音がしたけれど、問題なく開くことが出来た。ホッと安堵の息を吐き教会内を見渡す。灯りは手元を照らすランタンのみで、月も雲に隠れているため全体を細かく把握することは難しいが一般的な礼拝堂のようだ。
 鼻孔を微かな香りが刺激する。
「これは…薔薇?」
 人が近寄らないような教会に薔薇の香りがするのは不思議だが、すぐ近くで被害者は出ている。その被害者が薔薇を持ってこの教会に来ていた、という推測もできるだろう。手掛かりとするには情報が少ない。
 足元に気を付けながら、まなみは祭壇へと歩を進めた。廃墟で灯り一つはなかなかのホラー体験である。不気味な恐ろしさを感じながらも、これ以上の犠牲者を出さないために勇気を振り絞る。
 祭壇に近づくにつれ、その手前に人影のようなものが複数見えてきた。ぼんやりとしたそれに恐怖心が煽られる。より慎重に近づくと、どうやら人の形をした置物らしいとわかった。微動だにしないそれは、生命の気配を感じない。
 祭壇の真上のステンドグラスは砕け、大きな穴が開いていた。
 この不気味なものは一体何なのか。手を伸ばせば触れられるくらいの距離で、よく調べようとランタンを近づけた刹那、雲に隠れていた月が姿を現した。
 明るくなる視界と、ランタンに照らされた置物らしきもの。それらを映した少女の瞳は大きく見開かれた。
「…っ!?」
 咄嗟に空いている手で口元を押さえ、悲鳴を呑み込む。震える手はなんとかランタンを握り絞めて落とさなかった。力を込めていないと叫び出してしまいそうだ。鼓動の音がひどくうるさい。
 彼女は血の気の引いた蒼白な顔で、信じられない光景を目にしていた。
 人の形をした置物、マネキンのようだと思っていたそれはそんな生易しいものではない。基がマネキンであることは確かだが、それらが纏っているモノが問題だ。
 ランタンだけでは明るさが足りずわからなかったかもしれない。マネキンを覆うのは剥がされた本物の人皮だ。複数あるどれもが女性のものであった。おそらくは年若い者たち。
 毎夜、消える女たちの謎。この村へ向かったとされる元凶。
「なんて、惨いことを……」
 まなみの中で導き出された推察は、もはや間違いないだろう。勢いよく踵を返した彼女は、事態を知らせるべく教会の外で合図を送った。


 少女の去った祭壇にひとつの影が降り立つ。バサリと、羽音が鳴った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●それは相容れぬもの
 報せを受け教会に集った猟兵たち。彼らが目にしたのは大量の人皮を被ったマネキンと、それに囲まれるように立つヴァンパイアの姿だった。
 月明かりに照らされた礼拝堂でオブリビオンが笑う。
「素敵なドレスのコレクションケースへようこそ。……が、招かれざる客人だ。貴様らにはこの素晴らしさは理解できまい。幸い、私は今忙しい。疾く去ねば見逃してやらぬこともない」
 猟兵たちの存在など些事であるとでも言わんばかりの物言いだ。その言葉は彼らの逆鱗に触れるとも知らずに。
 護れぬ命があった。救えぬ無念があった。拭えぬ恐怖があった。
 出来ることは唯一つ。全ての元凶であるこのヴァンパイアを倒すこと。
「退かぬか。……では、死ね」
 薔薇の香りが広がる。紅蓮の翼が大きく開いた。
 猟兵たちも武器を抜く。かの墓標へ手向ける報いの花と、明日を恐れる必要のない安寧を手に入れるために。
空廼・柩
吸血鬼ってこんな奴しか居ない訳?
…あ、別に何も言わなくて良いよ
あんたの嗜好なんて興味ないから

眼鏡を外し、白衣の裏から注射器を取り出して
持ち前の目立たなさを活用
可能な限り敵の隙をついて死角へ回り込む
蝙蝠が居たら隠れるのだって精一杯だから
発見し難い影だとしても視力で影を注視
時には第六感にも頼って不自然な影があれば撃退を試みる
【青き侵蝕】で毒を与えつつ弱らせていこう

攻撃は拷問具で受け、カウンターに持ち込む
痛みは激痛耐性で倒れるまで耐えてやるさ
ただ死角には特に注意しないと
…ったく、後何回刺せば死ぬんだか

終ったらマネキン全て燃やしてしまおう
残してても良い事なんてないからね
…辛かったろう、そろそろお休みよ



 夜闇はその深さを増し、静けさの中で空気が重く澱む。狂気に彩られた祭壇の周りを《影纏い》の蝙蝠が旋回して入口まで飛んでいった。主の元へ戻った蝙蝠は、掌の上でそっと闇に解ける。何も残らない手を降ろし、蝙蝠の主――柩はようやく辿り着いた元凶を見つめた。
「吸血鬼ってこんな奴しか居ない訳?……あ、別に何も言わなくて良いよ」
 嘆息まじりに呟いた言葉に、ヴァンパイアが片眉を上げる。その口が開く前に柩は発言を制した。
「あんたの嗜好なんて興味ないから」
 くだらない遊戯のように繰り返される殺戮はもうたくさんだ。鬼ごっこは此処で終わらせる。
 ゆっくりと眼鏡を外した柩は持ち前の目立たなさを活かし闇に紛れた。彼の持つ色彩は右目の碧のみ。その彩も彼が本気で自らの気配を断つならば輝きを隠した。
 可能な限り存在を消しながら、この教会へ訪れる前を思い返す。数分前、柩はとある人物を追っていた。寝静まった村の中を不審に歩いていた男だ。《影纏い》の蝙蝠に辿らせていたその男は、怯えながらも何かを探しているようだった。少しばかり様子を見ていたが、突如立ち止まった男を柩は問い詰めた。
 男の名はアルフィルク。仲間が声をかけた村の住人である。彼曰く、怯えて家に帰りついたがいくら待てども妻が帰ってこないので探している、とのことだった。行方不明になっているのは妻と同じくらいの年代の女性ばかり。先刻聞いた隣の村の話もあり、彼は家を飛び出したのだ。
 しかし、嫌な予感ほどよく当たると言う。立ち尽くすアルフィルクの足元にあったのは、妻が大事に使っていたというバスケット。震える手で頭を抱えた彼に声をかけようとしたところで、柩は仲間の合図を目にした。このまま置いていくわけにはいくまいと、アルフィルクを何とか説得して家に帰し、現在に至る。
 彼の妻を連れて帰るとは言えなかった。彼女の無事を確信できなかったから。そしてその予想は正しかっただろう。ヴァンパイアの手は赤く濡れていた。そのすぐ横には真新しい人皮を纏ったマネキンがある。おそらくは行方知れずとなった女性だろう。
 ――嗚呼、なんて……なんて醜い。
 こんな欲と独りよがりの快楽にまみれたものを、どうして素晴らしいと形容できようか。こんなものが芸術ならば、理解などできなくていい。そのすべてを否定する。
「……!」
 いつの間にか接近していた柩の姿を、ヴァンパイアはようやく捉える。ヴァンパイアが《影の蝙蝠》を召喚するのと、柩が白衣を翻すのは同時だった。蝙蝠は召喚した者と五感を共有する。視界を塞いだその僅かな時間が隙となった。
 死角へ周りこんだ柩は白衣の裏から注射器を取り出す。中に入っているのは青く発光する不思議な薬液。ゆらりと闇の中淡く浮かび上がるそれは鬼火のようだ。
「ちょっとちくっとするだけだよ。――《青き侵蝕(あおきしんしょく)》」
 二百を超える注射器が柩の周囲に浮かび、ヴァンパイアへと襲いかかる。発光する薬液は毒だ。大量の注射器は全てヴァンパイアへ向かったが、その内の多くは届くことなく不自然に止められていた。それでも数本は届いている。敵が巡る毒に顔を歪めた。
「とんだ小細工を……」
 しかしボトリという音と共に落ちたのが蝙蝠だと理解した瞬間に、鋭い何かが頬を掠り脇腹を抉る。
「ぐぅ……っ!」
 柩は急いで距離を取る。蝙蝠に気を付けるつもりではいたが、攻撃の瞬間に隙が出来たのはこちらも同様だった。注視する時間がないまま攻撃を受けてしまった。
 迫る追撃は『餞』という名の棺の形をした拷問具で防御する。影とはいえ捉えにくいだけで完璧に隠れられるわけではないのだ。同じ手を二度も喰らうつもりはない。
 抉られた脇腹から血が流れる。それでも自然と口角が上がった。笑みが示すのは決して喜楽ではない。溢れんばかりの殺意だ。生憎、痛みには耐性がある。
「倒れるまで耐えてやる。……あんたは一片の慈悲なく潰す」

成功 🔵​🔵​🔴​

ウォルター・ハイデルベーレ
【POW】

理解できん。

……だが、お前もありふれた生活の、家に灯る明かりの暖かさや美しさを、理解することはできないのでありましょうな。

小細工も攻撃も、斧で受けて叩き斬ってやる。
どれだけ傷付こうが、膝なんぞついてたまるか。

【トリニティ・エンハンス】によって、斧に炎をまとい、攻撃力を強化し、ぶった斬る!

飛び火したらマネキンの『彼女たち』も燃えてしまうが、それが奴へのフェイントになったなら、それは『彼女たち』の仕返しかもしれないな。

終わったら、花を手向けさせてもらうであります。

(アドリブ、改変歓迎)



 柩から受けた毒によりたたらを踏んだヴァンパイアへ、横薙ぎの巨大斧が襲い掛かる。身を引くことで攻撃を躱したヴァンパイアは、巨大斧『歴戦斧』を構えるウォルターを睨めつけた。
 刃が身の丈の半分ほどある斧を苦も無く手にしている長身の男は、幾多もの戦場を渡り歩いてきた歴戦の猛者だ。かつてほどの戦いに明け暮れる日々ではないにしろ、今もなお世界を渡り、武勇を上げている彼の実力は衰えていない。
 そして数多の戦いを見てきたからこそ、ウォルターはこの世界を、この戦いの異常さを痛感していた。敵の目的は己の欲求を満たすこと。一方的な命の搾取だ。
「理解できん」
 はっきりと告げたそれは最初に放たれたヴァンパイアの言葉への返答である。『戦うしか能がない』と称する男であっても、シーグリーンの眼に映る惨状が芸術と呼べるようなものでないことは自信を持って言い切れた。
「……だが、お前もありふれた生活の、家に灯る明かりの温かさや美しさを、理解することはできないのでありましょうな」
 脳裏に浮かぶのは最愛の妻と娘に囲まれ過ごす、何にも代えがたい幸福の日常。どれほど素晴らしいものなのか、ウォルターが並ぶコレクションを理解できないように、ヴァンパイアもまた知ることはないのだろう。相容れることはない。故に、憐れだと感じた。
「その眼、気に入らないな」
 憐憫の視線を向けられたヴァンパイアは不快感を顕わに吐き捨てた。鋭い牙で指を噛み、滴り落ちる血で誓約書を書きあげる。
 同時にウォルターがユーベルコードを発動した。《トリニティ・エンハンス》によって炎を纏った斧から放たれる熱風が頬を撫でる。
 沈黙は一瞬。動き出したのは同時だった。走り込んだウォルターへ誓約書が放たれる。振り上げた斧が誓約書を真っ二つに斬ると、切り口から燃え上がり瞬きの間に灰へ変わった。手首を返して振り下ろした刃は、寸でのところで躱される。しかし勢いを殺さず、そのまま身体を回転させ、横薙ぎに斧を払った。斧の纏った炎が火の粉となり、周囲へ飛び散り周囲を燃やす。予想よりも速い追撃と火の粉による礼拝堂の損傷にヴァンパイアが小さく舌を打った。召喚していた蝙蝠を呼び寄せ盾とすることで、ウォルターの攻撃はぎりぎり防がれる。裂けた蝙蝠の壁の隙間から飛び出した誓約書がウォルターに命中した。
「――『私のコレクションケースを傷つけることを禁ずる』」
 宣告されたのは誓約書のルール。コレクションケースが示すのはこの礼拝堂のことだ。ヴァンパイアの声を認識した瞬間、ウォルターの全身に細かい裂傷が走り赤い霧が吹き出した。
「ぐぁ……!」
 激痛に顔を歪めながらも、数歩後退しただけで彼は膝をつくことなく耐えた。それは意地だった。どれだけ傷付こうとも、オブリビオンには屈しないという意思表示である。
 退くことなく、ウォルターは再び斧を振るった。ヴァンパイアへあと少し刃は届かなかい。振るう度に火の粉は飛び、ウォルターの身体に裂傷が増える。それでも彼は止まらなかった。
 不意に、吹き込んだ風が火の粉をマネキンへと運ぶ。燃え上がったマネキンを目にし、ヴァンパイアの動きが鈍った。その隙をウォルターは逃さない。これはきっとマネキンに纏わされた『彼女たち』の、最期の仕返しなのだろう。
「お前は所詮、過去。止まってしまった時間しか愛せない。それが現在と未来の輝きに勝ることは、ない!!」
 大きく踏み込んだウォルターが振り下ろした巨大斧は、回避が間に合わないヴァンパイアの左翼を叩き斬った。
「ぎゃああああ!!」
 礼拝堂に悲鳴が響き渡る。少女たちの願いと、男の意地がヴァンパイアを地に縫い付けた瞬間だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルティア・クレンセルト

【狐火】

……悪趣味ね
自分のエゴのために人の未来を奪い欲望を満たすなんて
あなた、私の逆鱗に触れたわよ?

味方の支援を信じて私はただ最大火力をねじ込むだけ
犠牲になった人たちの恨みつらみをこの一撃に込めて
それがせめてもの弔いとなればいいのだけれど

クルーエルオーダーは【激痛耐性】で誤魔化して最短距離で間合いを詰め、【出力制限解除】の代償による爆発で弾ける装甲を目くらましにして【貫徹】の一撃を与える
火の魔力を込めた杭で穿ち、杭の触れた場所から敵を延焼させる
貫いてもなお、私の怒りは燃え続ける
命尽きる最期まで苦しむといいわ


鳳来・蒼真

【狐火】で連携
まなみさんのお手伝いだね!
十六夜さんが前に出るし。後方から、前衛全体を視界に捉えるように位置どるよ。
【フォックスファイア】で狐火を複数召喚
槍の龍神様と一緒に、舞うように【誘導弾】のように操りながら、十六夜さんに近い蝙蝠を優先して【範囲攻撃】で【援護射撃】するよ!
いくら発見し辛くても、攻撃しようと十六夜さんを追ってる蝙蝠なら分かるだろうしね。
十六夜さんの動きとまなみさんの援護を信頼して、蝙蝠の攻撃や誤射を恐れない。3人とも僕よりベテランだしね!
蝙蝠を排除したら、ヴァンパイアへ狐火に【破魔】の力を込めて攻撃だよ。
魔を払う狐の舞…なんてカッコよくはないけど、倒したい気持ちは本物だよ!


杉崎・まなみ

【狐火】で連携

教会内に外で嗅いだ薔薇の匂いと気配を感じ、再度教会へ赴く
合図を送ったお陰で来てくれた、頼もしい仲間達と共にね

教会へ赴くとヴァンパイアの姿に激しい嫌悪感を覚え「あなたが…やったのね」と穏やかながら憎しみを込めた感情で言う
更にマネキンに目線だけ向け「ドレスって…人の…人を何だと思っているの…!」

猟兵にならなければ、私自身もあの姿に…なんて恐怖を感じつつ
杖をギュっと握りしめ戦闘態勢に入る

私は今回、回復役を主として動く
相手のサモンシャドウバットが発動した時に【生まれながらの光】を放ち、蝙蝠の居場所を特定させ、攻撃役に伝える

傷ついた仲間にも【生まれながらの光】で回復させる


月代・十六夜
【狐火】で連携。
杉崎嬢の手伝いで来ましたよっと。
え、相手の趣味とかやってること?
被害者はご愁傷さま。相手に関しては興味は別に。
【ジグザグフィールド】を適当も放ち足場形成。
ワイヤーを【韋駄天足】の【ジャンプ】で飛び回って相手へ型無の居合【フェイント】を行って注意をひき【時間稼ぎ】。
戦装束には防刃効果もあるから致命傷さえ避ければある程度は持つだろ。杉崎嬢の回復もあるしな。
蝙蝠に関しては【光の属性結晶】で牽制して動きを【見切っ】て避けながら味方の対処を待つ。
向こうの準備が整うのを見計らって、一気に距離を詰めて相手の注意をこちらに向けて居合抜き!…いや刀身なんて無いんだけど、俺を見てて良いのかい?



「おのれ…! おのれ……! よくも私のコレクションを!!」
 翼を折られ激昂したヴァンパイアが、血走った目で猟兵へ喚きたてる。その姿を認めたまなみは、湧き上がる激情に顔を歪めた。
「あなたが……やったのね」
 努めて冷静に発した声音には、抑えきれない怒りと嫌悪が滲む。間近で目にしたヴァンパイアの所業は、到底許せるものではなかった。
「こんなものがドレスって……人を何だと思っているの…!」
 無差別に命を狩られるだけでなく、未来を奪われた後もこんな風に弄ばれる。猟兵として戦う力を持たなければ、まなみとて同じような目にあっていてもおかしくはなかった。そう思うと言い表しようのない恐怖が彼女を襲う。きっと殺された少女たちはもっと恐ろしかったに違いない。
「この世界に住まうヒトなど、ただの家畜だ。それをどうしようが私の勝手だろう」
 くだらない、とでも言うかのように吐き捨てたヴァンパイアの一言に、まなみは全身が熱くなるのを感じた。胸の前で杖を握る両手に力が入る。叫び出したいような衝動が彼女の肩を震わせた。
 そんな少女の肩をとん、と誰かが軽く叩く。息を呑んで振り向いた傍らにいたのは、まなみの呼びかけに応え集った仲間の一人、月代 十六夜だ。彼女の視線を受けた十六夜は小さく頷いてみせると、勢いよく床を蹴る。鳶色の髪が視界の端を流れていった。
「十六夜さん!」
 迷いなく進んでいく背中を追おうとしたまなみを制したのは、月白の銀髪を揺らした鳳来 蒼真だ。あどけなさの残る妖狐の少年は、瑠璃色の目を細め柔らかな笑みを浮かべた。
「十六夜さんなら大丈夫。僕らは信じて為すべことを為そう。…ねえ、メルティアさん」
 髪と同じ銀の三尾をゆらりと揺らし、蒼真は並び立つミレナリィドールの少女――メルティア・クレンセルトへ声をかける。名を呼ばれたメルティアは蒼真とまなみを一瞥し、瞬きひとつで前方へ視線を戻した。
「ええ。……この戦いの要はあなた。頼んだわよ、まなみ」
 一見澄ました横顔だが、クリストローゼの瞳は怒りに燃えヴァンパイアを映していた。自らのエゴのため、人の未来を奪い欲望を満たす悪趣味さは、メルティアが忌み嫌うもの。ましてそれが人をモノとして扱う行為であるのだから、彼女の地雷を大いに踏み抜いていた。
 延焼していくマネキンたちに、コレクションとしてただ鑑賞されるだけだった過去が重なる。命を奪われないだけマシだったのかもしれない。けれども、生きていたって地獄は存在する。失った日々は戻らないように、失った命も戻らない。残っているのはただ奪われた事実だけ。
 メルティアは、金属杭ではなく圧縮した魔力を打ち出す杭打機『ノワール式兵装・弐型【貫徹】』を構え、抑揚のない声音でまなみの名を呼んだ。どこか冷たく聞こえる声音だが、言葉に含まれた信頼はまなみに届く。
「…はい!」
 強い意志を宿し、まなみははっきりと答えた。もうそこに怯えていた少女の面影はない。二人の様子を見ていた蒼真も、正面へと向き直り狐火を召喚する。青白い炎に照らされた尻尾がひとつ増えて揺れていた。

 信徒席を飛び石のように渡り、ヴァンパイアの左側面を取った十六夜から放たれたワイヤーは間一髪で回避される。それすらも想定内だった十六夜は、再びワイヤーを放つと同時に間合いを詰めた。正面から狙ったワイヤーはやはり躱される。けれども彼は回避されることを厭わず、幾度もワイヤーを放ちながら礼拝堂内を縦横無尽に駆け巡った。
「ちょこまかと小賢しい!」
 苛立ったヴァンパイアが自身の周囲に召喚した豪奢な刀剣を、十六夜へ向け放つ。後方に飛び刀剣を躱した十六夜は一回転して、空中に降り立った。まるで浮いているように見えるそれは、彼がワイヤーで作り上げた《ジグザグフィールド》である。むやみやたらと放たれていたワイヤーは、全てこの戦場を作り上げるための布石だ。
「被害者にはご愁傷様としか言えないし、お前に関しては特に興味もないが……杉崎嬢の頼みだ。俺の役割は果たさせてもらうぞ」
 ワイヤーを足場に十六夜が空中から飛び出した。腰に差した『型無』に手をかけ、ヴァンパイアに迫る。《韋駄天足》でワイヤーを蹴りだしたそのスピードは先ほどよりも遥かに速い。居合いの構えのまま突っ込んでくる十六夜を、ヴァンパイアは後ろに飛び退り避けた。床に激突した衝撃から立ち昇った煙が両者の視界を塞ぐ。見えぬ相手に構うことなくヴァンパイアは無数の刀剣を放った。切っ先が床に突き刺さるよりも速く、十六夜がいくつかの刀剣を弾き煙の中から飛び上がる。
 近くのワイヤーに乗りヴァンパイアを見下ろす十六夜の身体には、防ぎきれなかった攻撃による傷跡が走っていた。幸い、竜の素材を用いて作られた戦装束を身につけていたおかげで、防刃効果もあってその傷はどれも浅い。頬に流れる血を拭い、十六夜は小さく息を吐いた。
「なるほど。この数の多さは厄介だ」
 呟いた瞬間、背後から微かな羽音が聞こえた。常人であれば気づかないような音を捉えたと同時に左肩に衝撃を受ける。蝙蝠の攻撃だ。刀剣に注意がいき過ぎて、気づくのが遅れてしまった。
「…っ!」
「十六夜さん!」
 鈍い痛みに上げそうになった声を噛み殺し、ワイヤーを移動したところでまなみが十六夜を呼ぶ。視界に柔らかな光が現れたと思うと、左肩の痛みが消えていた。すぐにまなみの《生まれながらの光》だと理解がいく。どうやら時間稼ぎの仕事は全う出来たようだ。
 まなみの光に照らされ姿を現した蝙蝠は、寸瞬の間に青白い狐火に包まれて灰となった。それは蒼真の放った《フォックスファイア》である。追撃の刀剣を打ち払い、十六夜は属性結晶へ光を灯した。無数に現れる蝙蝠も闇に紛れ見つけにくいからこそ脅威であるが、光に照らされて姿を捉えられてしまえば所詮はただの蝙蝠だ。
 華やかな装飾で飾られた狐巫女の戦装束を翻し、蒼真が龍と戦場を舞う。故郷の村に奉納されていた槍――『龍神宝槍』は、紛うことなき龍神の御神体。その槍を手に龍神と同調した蒼真の容姿は、少年から青年へと大人びたものに変化し、三尾だった尾は四尾に増えていた。右目が瑠璃色から鮮やかな翡翠色に染まる。どこか人ならざる神秘と妖艶さを醸し出す蒼真の舞は、神々しく美しかった。
 蒼真の舞のひとつひとつの動作が狐火を誘導弾のように操り、十六夜の周囲を旋回していた。光の属性結晶で牽制され動きを見切られた蝙蝠が、十六夜に満足な傷を与えることなく旋回する狐火に焼かれる。いくら発見し難いとはいえ、標的が定められているのならその軌道は捉えやすい。
 蒼真の援護を受けながら、十六夜は再び『型無』を手にワイヤーを蹴る。ヴァンパイアの間合いに滑り込んでは決定打を撃てず、敵の攻撃を回避する一進一退の攻防が続いた。刀剣は可能な限り弾き、防ぎきれなかった傷はまなみがすぐに回復をしている。
 不意に、十六夜が不自然に身を屈ませた。その直後に頭の上を狐火が踊り蝙蝠を焼く。十六夜が動かなければ彼に直撃していただろう。一連の流れを見ていたヴァンパイアは蒼真に向けてニヤリと笑みを浮かべた。
「貴様、味方をも巻き込む攻撃を平然と撃つとは。猟兵と言えども所詮、他者を利用しなければ生きてゆけぬ弱者に過ぎないようだな」
 明らかな挑発だった。けれども、蒼真はヴァンパイアの言葉に口角を上げる。
「違うよ。僕の攻撃は十六夜さんには当たらない。僕は十六夜さんを信じているし、いざという時はまなみさんだっている。そしてまなみさんにはメルティアさんがついている。だから何も心配なんてしてないよ。……それに、三人とも僕よりベテランだしね」
 心配なんてする方が失礼だ、と清々しいほどの笑顔ではっきり答えた蒼真に歯噛みする。不発に終わった挑発はヴァンパイアへ苛立ちを募らせただけだった。
「ならばその絆が仇となることを思い知るがいい!」
 十六夜のみを狙っていた刀剣が、標的を四人それぞれへ定め四散する。十六夜と蒼真は各々の武器で、メルティアはまなみの前に立ちはだかり魔力を打ち込むことで事なきを得た。
 ――かに思えた。
 まなみを除いた三人に、刀剣の影へ隠れ放たれていた血の誓約書が命中する。ヴァンパイアが愉悦の表情を浮かべ、ルールを宣告した。
「――『この場においての共闘を禁ずる』」
 誓約書の効力に従い身体が裂け、血飛沫が上がる。押し殺した呻き声が聞こえてきた。真っ赤に染まっていく視界に、杖を強く握り唇を噛みしめる。
「ははははははは! さあ、どうする? もう誰にも頼れな…っ!?」
 高笑いするヴァンパイアの言葉が不自然に途切れる。最後まで聞くことなく十六夜は高速落下で攻撃を仕掛けてきた。彼の周囲には先ほどと変わらず狐火が漂ってい蝙蝠を落とす。
 共闘を禁じられたにも関わらず、その戦い方は何も変化していなかった。辛うじて回避したヴァンパイアの目が見開かれる。
 クルーエルオーダーが発動していないわけではない。彼らの身体は絶えず傷が増えている。しかし、その傷がついたそばから急速に治癒されていた。その光景を認めたヴァンパイアは息を呑み、まなみを凝視する。
 メルティアの背後にいたまなみは、正面からその視線を受け止めた。肩は大きく上下し、額に滲む脂汗が疲労の濃さを物語っているが、それは同時に仲間に施した治癒の証でもある。
「蒼真が言っただろう? いざという時は杉崎嬢がいるって。お前のミスはその誓約書を杉崎嬢に当てられなかったことだ!」
「おのれ…!」
 ヴァンパイアを翻弄するように十六夜は『型無』に手をかけ、何度もワイヤーを蹴る。しかしそのどれもが抜刀する前に距離を取られ、攻撃に繋がることはなかった。それでも彼の顔に焦りの色が浮かぶことも悔しがることもない。むしろ抜刀する気すらないように感じられる。
 そこでようやくヴァンパイアは一つの仮説に導き出した。
「貴様、その刀を抜く気はないな」
 十六夜の口角が上がる。その通りであった。けれども浮かべた笑みは、決して言い当てられたことに対する苦し紛れのものではない。今さら気づかれようとも関係ないのだ。
「だったとしたら?」
 月代 十六夜という人物をその外見からキマイラだと見抜けるものはほぼいないだろう。彼の肉体は人間と変わらぬ造りをしているように見える。事実、彼自身も猟兵になるまで己の出自を知らずにいた。何と融合して生まれてきたのかも不明だったが、唯一わかるのは常人よりも特化した五感を有すること。例えば鳥のように彼方を見渡す視覚や僅かな音すらも拾う蝙蝠のような聴覚といったものだ。キマイラと言えど、彼は岩を持ち上げる怪力や鋭く切り裂く爪を持たなかった。中途半端な攻撃で自らをも危険に晒すくらいなら、そこには意味などありはしない。故に己のスキルを活かした援護や裏方といった戦い方を身につけた。
 この戦場においての彼の役割は時間稼ぎの他にもう一つ。背後に控える仲間たちのために決定的な隙を作ること。たった今、蒼真の狐火が召喚されていた最後の蝙蝠を消滅させた。これで全ての準備は整ったのだ。
 唐突にメルティアがまなみの元を離れ、駆けだした。
「遅い……ッ!!」
 十六夜がヴァンパイアの間合いを取る。攻撃はないと油断した敵の前で、居合抜きをしてみせた――が、ヴァンパイアに傷がつくことはなかった。『型無』に刀身はない。十六夜曰く、柄と鞘のみの実物大サムライブレイド型アクセサリーである。
 それでもフェイントには十分だった。ヴァンパイアがたたらを踏む。
「油断したな。……ほら、俺を見てて良いのかい?」
 青白い光が強さを増す。ハッと視線を上げた時にはもう遅い。蒼真の《フォックスファイア》が彼の元へ戻り大きな狐火へと変化していた。そこに込められたのは、龍神の神気を借りて宿した破魔の力。巫子として育てられた少年の本領発揮である。
「魔を祓う狐の舞…なんてカッコよくはないけど」
 力強く踏み出された一歩。身を翻して眼前の敵へと振りかざした手が、狐火を放つ。繰り出される攻撃はすべて舞の中で完結していた。彼自身は謙遜するけれど、見事なものだと仲間たちは思う。
「オブリビオンを倒したい気持ちは本物だよ!」
 矢のように飛んできた狐火は、ヴァンパイアの右翼を貫いた。同時に十六夜は距離を取る。
「ぐあああ!」
「メルティアさんっ!!」
 呻き声を上げるヴァンパイアと被りながら、蒼真がメルティアを呼んだ。呼応するようにメルティアが走り込んでくる。
 クルエールオーダーにより絶えず増える傷はまなみが回復してくれていた。しかし傷はつく前には治癒できない。だから刻まれる痛みは誤魔化しながら走った。
 この瞬間を待っていたのだ。仲間が作ってくれた絶好の機会。逃すわけにはいかない。ただ信じて最大火力をねじ込むだけだ。犠牲になった人たちの恨みやつらみを、この一撃に集約する。
「頭が悪いくらいでちょうどいいわ!」
 最短距離を詰めた間合いで、メルティアは出力制限を解除した。代償として『ノワール式兵装・弐型【貫徹】』の装甲が爆発し弾け飛ぶ。それはヴァンパイアの視界を遮る目くらましとなった。
 装甲を失い身軽になった武器はアンリミテッドモードに変化し殺傷力を増す。銃口のような射出部が左肩に狙いを定めた。
「――《出力制限解除(アンリミテッドバースト)》」
 火の魔力を込めた杭がヴァンパイアを穿ち吹き飛ばした。壁に激突した衝撃で轟音と共に粉塵が巻き上がる。
「あなたは私の逆鱗に触れたわ。この怒り、ただでは鎮まらない。命尽きる最期まで苦しむといいわ」
 貫いた杭が触れた部分から、彼女の怒りに応えるように延焼していく。醜悪な趣味が重ねた罪の分だけ苦痛は続くだろう。
 それが奪われた命への、せめてもの弔いになればいい。

 メルティアの攻撃が命中したのを確認したまなみは、崩れるように膝をついた。
「まなみさん!」
 いち早く反応した蒼真が駆け寄る。ずっと複数同時の高速治癒を行っていたのだ。どれほどの消耗をしているか想像もつかない。まなみを案じる蒼真もまた、若干顔色がよろしくない。神と同調して扱う力は、人の次元を超えたものだ。長時間の使用は身体に負担をかけてしまう。
「だい、じょうぶ、です。…少し、力が抜けてしまって」
 息を切らせながらまなみはふらりと立ち上がった。安心させようと笑ったが、力ないそれは逆に蒼真を不安にさせる。クルーエルオーダーの効力はまだ切れていない。今もなお彼女は回復をし続けてくれていた。それはオブリビオンを倒しきれていない証拠だ。
「一筋縄ではいかないか……」
 十六夜の呟きに、全員がヴァンパイアの吹っ飛んだ方を見る。のろのろと煙から現れたヴァンパイアは左半身を燃やしながら、双眸に憎悪の色を浮かべていた。
「…ろす……殺す……貴様らは、生まれてきたことを後悔させてから殺してやる!!」
 強烈な殺気が肌を刺す。猟兵たちは再び臨戦態勢をとった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
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クレア・フォースフェンサー
そろそろ年貢の納め時じゃな。
力もそう残っておるまい。

【能力無効】で他のユーベルコードを無効化しつつ、敵に近付こう。
敵が攻撃を仕掛けてくるなら、その動きを見切り、光剣で弾き、叩き落とそうぞ。

お主に一つ訊きたいことがある。
自慢のコレクションはここにあるだけか?

相分かった。
コレクションと同じ数だけ、おぬしの肌を削ぎ落としてやろう。
死にはせんようにするつもりじゃが、まだこの身体と武器には慣れておらんでな。
多少の失敗は勘弁せよ。

さて、今のはコレクションにされた人達の分じゃ。
おぬしはその数十倍以上の人達を殺めておろう。
よもや、この程度の苦しみで死ねるとは思っておるまい?

――一片残さず刻んでやろう。


富井・亮平
【心情】
生まれてきたことを後悔するのは、貴様の方だッ!
現れ出でた以上、この結末は避けられないッ!
それがオブリビオンの宿命なのだッ!

この先、貴様が何度蘇ろうとッ!
何度でも打ち倒してみせるッ!

いかに深い闇の中に身を隠そうとッ!
闇を打ち払って探し出すッ!

そして例えどれほどの非道を重ねてもッ!
我々の、いや人々の闘志は燃え尽きたりしないッ!
何度でもその魂に刻んでやろうッ!
正義の灯でッ!

【行動】
「いくぞ、みんなッ! イェーガーバズーカ発動だッ!」
仲間達の力と心を一つにして必殺攻撃を繰り出すッ!

敵の技は念力で操作するものッ!
つまり倒してしまえば操ることはできんッ!
一撃で勝負が決まるッ! いざ光よりも速くッ!


鈴木・志乃(サポート)
『皆が幸せになれたらいいなぁ』
オラトリオの聖者
女性

DS生まれCF育ちのパフォーマー
人の幸せが自身の幸せである典型的な『良い人』だが、あくまで全ては自身が楽しむ為と主張する

魅せることが大好きで配信では歌ってみたを多数投稿
劇団に所属しており歌、ダンス、演技なら大体こなす

【戦闘】
メインは光の鎖
サブで魔改造ピコハンを使用
必要に応じて罠を多用する。頭を使う行動が大好き

【根底】
自己を世界の幸福の為の道具と考えており、一切の躊躇なく自己犠牲を払う
必要があれば自身の感情すら『操る』

【奇行】
真面目なノリが嫌になると躊躇なくシリアスブレイクに走る
いきなり豆乳青汁(好物)飲み始めるし惚気始める

公序良俗違反駄目絶対



 怒りか痛みかその両方か、表情を醜悪に歪めてこちらをねめつけてくるヴァンパイアを前に、富井・亮平(イェーガーレッド・f12712)の喉が僅かに震えた。恐れからではない。ヒーローとして悪を許せぬ矜持と怒りのためだ。
「――生まれてきたことを後悔するのは、貴様の方だッ!」
 ざ、と踏み出し、一声吼える。その言葉に頷き、鈴木・志乃(ブラック・f12101)もまた、笑みを消した顔で踵を鳴らした。
「こういうの。楽しくないですね」
 このような非道が許されてなるものか。切り裂くように振り抜いた挨拶代わりの光の鎖を、ヴァンパイアは華美な剣の刃で絡め取った。だがヴァンパイアの胴が空いたその隙に、駆け寄ったクレア・フォースフェンサー(UDC執行者・f09175)が光の剣を振るい抜き、既に血濡れたその肉体を更に抉り取る。
「――ッ、『我に刃を向けることを禁ずる』!」
 放たれた血の誓約書を、けれどクレアは不敵に笑ってその身で受ける。そのまま剣先をヴァンパイアに堂々と向け、彼女は形の良い唇を開いた。じゅう、と焼けるような音とともに誓約書が分解され、塵と化して床に散る。
「効かぬよ」
 その機械の身体の周辺は、いつの間にかうっすらと揺らぐような光に包まれていた。能力無効(アンチ・コード)――ユーベルコードすら虚無へと崩す己の力を見せつけるように立ち塞がるクレアを前に、ヴァンパイアは鋭い歯を軋ませた。
「おのれ。おのれおのれ……!」
 まるでその激情に呼ばれたように、ひとつ、ふたつ、やがて数えるのも嫌になるほどの剣の群れが、ヴァンパイアを囲むように浮かび上がる。皮を剥ぎ、目を抉り、首を刎ねよと飛来する刃の嵐を前に、けれどヒーローは怯まない。むしろそれを迎え撃つよう腰を落として、亮平もまた、己のユーベルコードを解き放たんと力を溜める。
「いくぞッ!」
「援護しますよ」
 亮平が構えたガジェットの向く方へ合わせるように、志乃が魔改造ピコハンを放って投げる。よし、と頷いた亮平が、そうして朗々と叫びを上げた。
「ああ、力と心を一つに! イェーガーバズーカ発動だッ!」
 がしゃりと形を変えたガジェットの口に、ピコハンが勢いよく吸い込まれていく。そして巨大なバズーカへと形を変えたそれを、躊躇なく亮平は撃ち放った。
「いかに深い闇の中に身を隠そうとッ! 闇を打ち払って探し出すッ!」
 轟音が、光が、塗り潰すように空間を満たす。ヴァンパイアの声も、何を言っているのか判然としない。
「そして例えどれほどの非道を重ねてもッ! 我々の、いや人々の闘志は燃え尽きたりしないッ!」
 さらにもう一発、否、何度でも。留まることのないバズーカの連射に、空間全てが打ち揺らされる。吹き飛ばされ、床に転がるヴァンパイアのすぐ脇にまで歩み寄り、クレアは屈みもせずにその姿を見下ろし、問うた。
「お主に一つ訊きたいことがある。自慢のコレクションはここにあるだけか?」
「馬鹿な。コレクションケースを荒らす不届き者どもに、それを教えてやれるとでも?」
「相分かった」
 蒼白い顔で嗤うヴァンパイアへずいと顔を寄せるように屈み込み、その胸倉を引き上げて、彼女は右手の剣をかざした。
「ならばまずは此処にあるコレクションと同じ数だけ、おぬしの肌を削ぎ落としてやろう」
 礼拝堂に、絶叫が響く。けれどこれは、コレクションにされた人達の分だ。それが終われば、次はそれ以外の犠牲者たちの分。よもやこの程度の苦しみで死ねるとは思っておるまいと
囁いたクレアの声音は、低い。何とかその手から逃れようともがくヴァンパイアの耳に、ひとつ歌声が届いた。
「……? ……!」
 血色の瞳が、歪む。歌声の主は志乃だった。祈るように翼を広げて指を組み、彼女が歌うは『生命賛歌』。生きとし生ける者を守るその歌を聞かされたヴァンパイアの、まるで鎖に戒められたかのように身動きも取れず、もはやただ呻くことしか許されない。
 そうして、幾度となく振り下ろされた光の刃が、遂にその心臓を貫いた。がくりと首を後ろに落とし、憎悪を叫ぶような表情で事切れたヴァンパイアの骸が、黒い塵へと崩れていく。
「……終わった」
 独りごちる志乃の声が、静けさを取り戻した礼拝堂の中でやけにこだまして響く。ひとつ頷き、得物を収めて、亮平はなんとはなしに周囲を見回した。
「……例え、こいつが何度蘇ろうとも。何度でも打ち倒してみせねばな」
 人々と己の心に宿る正義の灯で、何度でも。呟く彼を、そしてヴァンパイアを討ち果たした猟兵達を見守るように、割れたステンドグラスの隙間から、煌々と月が輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年04月16日


挿絵イラスト