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エンパイアウォー㉕～日輪の霊玉を奪い返せ！

作者：夢幻

●日輪の霊玉
「皆の者、富士の噴火阻止ご苦労であった！」
　グリモア猟兵の天御鏡・百々（その身に映すは真実と未来・f01640）は猟兵たちへとねぎらいの言葉をかけると、今回の任務の説明に入った。
「コルテスの陰謀を素早く阻止したおかげで、貴奴の配下の動きが判明したのだ」
　霊峰富士の噴火作戦と同時に、別の企みも進行していたと言う。
「どうやら、オブリビオン達は霊峰富士に眠る太陽の力を盗み出して持ち帰ろうとしているようなのだ」
　オブリビオン達は富士の火口近くに設けた儀式場で太陽の力を『霊玉』に変え、それを持って逃走しようとしている。
「霊玉を持ち去られれば、その力はコルテスの更なる悪事のために使われることとなるであろう」
　よって、富士山の火口付近より、霊玉を持って撤退するオブリビオンを撃破し、霊玉を取り戻すことが今回の目標となる。

「霊玉を持って逃げているのは、天狗の少女のオブリビオンだ」
　子供を攫うことを得意とする天狗の少女だが、その能力を逃走のために使われるとなかなかに厄介だ。
「天狗の少女は、ユーベルコードである隠れ蓑の能力で透明化して山中を逃げている様子だ。そして透明化を見破られると、今度は飛翔して速度で猟兵たちを振り切ろうとしてくる。そこまで阻止すると、羽団扇で自然現象を操り、力尽くで猟兵の突破を試みようとしてくるようだな」
　透明化、飛翔、戦闘、一人で全てを対処する必要はない。複数の猟兵がそれぞれの得意分野を生かして対応すれば、必ず敵の撤退は阻止できるであろう。
「霊玉は奪い返してしばらくすると、火口のマグマに変化してしまうとのことだ。取り返した後は、迅速に富士の火口に戻してくれ」
　そう言うと、百々は猟兵たちを富士へと転移させ始めるのであった。

第1章 ボス戦 『天狗の人攫い』

POW   :    天狗の羽団扇 「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。 SPD   :    天翔る妖怪変化 全身を【妖気】で覆い、自身の【神通力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。 WIZ   :    天狗の隠れ蓑 自身と自身の装備、【捕まえている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。 イラスト：某君 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「さて、この私と追いかけっことは。腕、いや脚がなりますわね！！」

　富士山の火口付近にあるオブリビオンの儀式場に辿り着いたヴィヴィアン・ランナーウェイ（走れ悪役令嬢・f19488）は、霊玉の奪還に気合い十分と言った様子だ。

「とはいえ、空を飛ばれたら単純に敵の方が早いでしょうし。隠れられたら目も当てられませんわね。……ですが私、かくれんぼは得意ですのよ？」

　ヴィヴィアンが選択した作戦、それは……

「（わたくしの勘が示すは最短距離の逃走……ならば……）こっちの方にいそうですわね」

　ヴィヴィアンは儀式場から反対方向の山の斜面へ向けて走って行った。あえて別方向へ向かうことで、敵の油断を使う作戦だ。

「あはははは。猟兵って馬鹿だなあ。障害物の多い森までは急いで向かうってのに」

　富士山の八合目付近、隠れ蓑による透明化を使いつつ逃走していた天狗の少女は、ヴィヴィアンの狙い通りに油断している様子だ。


　ヴィヴィアンに続いて、儀式場からオブリビオンを追跡するのはアウル・トールフォレスト（高き森の怪物・f16860）だ。

「……つまり鬼ごっこね！　任せて！　わたし、そういうのは得意だよ！」

　快活に話す彼女は、瞳を青く輝かせると、その姿を狼に似た獣化形態に変身させる。そして獣故に強化された嗅覚や、野生の勘を頼りに追跡を開始する。

　そうして痕跡を辿りつつ山を駆け下りていったアウルだが、富士の7合目付近で物音に気づく。カサカサと擦れるようなそれは、天狗の羽と隠れ蓑が擦れる音だ。そしてよくみれば、生えている草が踏みしめられる様子も発見することが出来た。

「アオオオォォン！！（見つけたよ！）」
「うわっ！？」

　天狗の少女を見つけたアウルは、仲間の猟兵に知らせるために一声遠吠えをあげる。そして、天狗の少女の居場所へ突っ込み、爪による一撃を喰らわせた。油断していた天狗の少女は、アウルの一撃をまともに受けて、透明化が解除された。

「そんな！　隠れ蓑で見えないはずなのにもう見つかったの！？」

　驚き慌てる天狗の少女に、アウルは更なる追撃を仕掛けていく。そうしてしばらく戦闘が続いたところで、もう一人の猟兵が追いついた。

「おーっほっほっほ！　こんなところにいましたのね！！　私が、来ましたわよ！！」

　天狗の少女の背後から、高笑いを上げて現れたのはヴィヴィアンだ。勘のみに頼った彼女は油断させるために距離を取ったことで敵を見失ってしまったが、アウルの遠吠えを聞いてここに急行したのだ。

「うわっ！？　何この光！？　眩しいっ！」

　ヴィヴィアンがその気高さから放つ光は、天狗の少女を困惑させてその動きを一時的に封じ込めた。その隙を逃さず、アリスランス・烈火を、アウルは獣化したその爪を振るって天狗の少女を挟撃する。

「痛ったあ……！　クソッ……風よ巻き起これ！！」

　ヴィヴィアンのランスは浅くではあるが天狗の少女の羽を貫き、アウルの爪は隠れ蓑を破壊した。これでもう透明化はできないし、飛翔にも障害があるだろう。傷を受けた天狗の少女は、羽団扇を取り出して突風を巻き起こして距離を取ると、羽を羽ばたいて空へと逃げ出した。

「後はお任せだね」
「ええ、羽にはダメージも負わせましたし、逃げ切れませんわよ？」

　飛翔されると、二人に有効な攻撃手段はない。透明化は封じることができたことであるし、後は次の猟兵に任せるとしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　富士山の五合目付近では、黒鵺・瑞樹（辰星月影写す・f17491）と薄荷・千夜子（鷹匠・f17474）の二人が逃走するオブリビオンを待ち構えていた。

「今度の敵は天狗の少女ですか」
「天狗なぁ。山伏のなれの果てとも言われるらしいが、本当、今回の敵は種類豊富だよなぁ」

　グリモア猟兵の話によると、太陽の力の込められた霊玉を持って逃走しているのは天狗の少女だという。武将のみならず、妖怪をも配下とする信長の軍勢は恐るべき層の厚さだ。

「山伏信仰は非常になじみ深いが、オブリビオンで有る以上きっちり倒さないとな」
「ええ、例え空を飛ぼうとも、負けていられませんね！」

　必ず倒すと意気込む二人の目に、空に飛び上がる影が目に入った。鳥の様な大きな羽ではあるが、人の形を取ったそれは天狗の少女だ。仲間の猟兵が隠れ蓑による透明化を見破ったため、飛翔により空から逃げるつもりであろう。

「俺たちの出番がきたな……よっと！」

　右手に胡、左手に黒鵺と二振りの刃を抜き放った瑞樹は、足場もないはずの空中を蹴って空を走る。ユーベルコード『空翔』の力だ。

「彗、力を貸して……！」

　ビーストマスターである千夜子は、召喚した彗という名の美しい鷹に騎乗して空へと舞い上がった。

「逃がしませんよ！！」
「な！？　空の上にまで猟兵が！？」

　先行するのは、鷹と共に飛ぶ千夜子だ。彼女は鷹用の特殊な武器である『飛星流克』によって発射した矢でもって、天狗の少女を襲撃する。

「当たると痛いですよ！」

天狗の少女は回避しようとするも、途中で回避の動きが止まって矢が命中した。どうやらこれまでの戦いで羽に傷を受け、十全な飛行が出来ない様子だ。そして、矢に仕込まれた毒は、天狗の少女を蝕んでいく。さらに、追いついてきた瑞樹が天狗の少女へ追撃を仕掛ける。

「霊玉は返して貰うぜ！」
「うわっ、もう一人だって！？」

　存在感を消し、目立たないように近づいていた瑞樹の奇襲攻撃が天狗の少女へと突き刺さった。両手の二刀の連撃は天狗の羽を深く抉り、更に込められたマヒの薬がその動きを鈍くさせる。

「クッソ、馬鹿な猟兵相手、簡単に逃げられると思ってたのに！　風よ！」

　更に羽を傷つけられ、まともな飛行が不可能になった天狗の少女は、羽団扇で巻き起こした烈風を自分に当てて、瑞樹を攻撃すべく突っ込んできた。

「おっと、そんなわかりやすい攻撃じゃあ、当たらないぜ」

　攻撃の軌道を第六感で見切った瑞樹は、軽くステップして攻撃を避けると、カウンターの二連撃を叩き込む。彼の一撃は羽団扇を両断し、もう一撃は天狗の少女の腹を引き裂いた。そして、ダメージが積み重なりゆっくりと落下を始めた天狗の少女に、彗を駆る千夜子が突進していった。

「狩人として獲物を逃すわけにはいきませんね」
「うわ！　やめろっ！　うわあああああ！！」

　彗の体当たりは、天狗の少女を地面に向けて吹き飛ばした。羽団扇も使えなくなった天狗の少女では、最早落下から助かる術は無い。勢いよく地面に激突した天狗の少女は、そのまま息絶えたのであった。

　オブリビオンを倒した二人は、その懐から霊玉を回収し、富士の火口へと返却した。ここに、コルテスの企みの一つは防がれたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月10日 宿敵 『天狗の人攫い』 を撃破！