エンパイアウォー㉓~安らかなる場へ送り帰すために
●奥羽諸藩・とある村近くの平野にて
「きりがないな……」
迫り来る『水晶屍人』に矢を射かけつつ、武士の一人がぼやく。
「仕方あるまい。遠くから攻めねば、我々も『あれ』の仲間入りをしかねんのだ」
別の武士が火縄銃で肩から生える水晶を破壊しながら、悔しそうに歯噛みする。
この村に攻め入ろうとしていた『水晶屍人』を指揮していた姫は、先日猟兵の手で討ち取られた。
その後、烏合の衆と化した『水晶屍人』を駆除すべく掃討戦を行っていたのだが、如何せん『水晶屍人』に噛まれたら即彼らの仲間入りをしてしまう。効率が悪いのは承知で、遠距離から射かけるしかないのだ。
その後も矢と火縄銃での射撃を繰り返し、ようやく1体の『水晶屍人』を地に還す。
だが。
「いつまで続ければいいのか……」
目の前にまだ蠢く数百体の『水晶屍人』を前に、武士たちは海よりも深いため息をついた。
●『水晶屍人』に安らかな眠りを
「先日は『水晶屍人』を指揮するオブリビオンを討ち取ってくれて、ありがとう」
皆の前に立ちながら頭を下げるグリモア猟兵館野・敬輔の顔は、明らかに憔悴していた。
「現地では奥羽武士らによる掃討戦が行われているのだけど……これが遠距離から攻撃するしかないからか、なかなか進まないんだ」
武士らが『水晶屍人』に噛まれて仲間入りしたら大惨事になってしまうため、これはやむを得ない。
「知っている人もいるけど、猟兵は『水晶屍人』に噛まれても彼らの仲間入りをすることはない。奥羽武士らよりも素早く、効率的に『水晶屍人』を掃討できるんだ」
緋と蒼の瞳の奥に苦悩を秘めながら、敬輔は意識的に淡々と説明を続ける。
「多くの『水晶屍人』を僕らの手で掃討できれば、奥羽武士の負担も軽減でき、幕府軍への協力を要請できるだろう」
つまり、魔空安土城に送り込める兵力が増える、ということだ。
「もちろん、他にも人手が必要な場所はたくさんあるから無理にとは言わないけど、誰か手伝ってあげてくれないかな。場所は以前と同じだから」
頭を下げる敬輔に猟兵らの何人かが頷くと、敬輔は「ありがとう」と力ない声で礼を述べた。
「以前も言ったのだけど、『水晶屍人』と化した人を助ける術は……おそらくない」
――そして、助ける術を探している時間もない。
「悔しいし辛いけど……せめてこれ以上負の連鎖を繰り返させない為にも、頼んだ」
頭を下げながら力ない声で頼む敬輔に肯定の意を返しながら、猟兵たちは彼の開いた転送ゲートを潜った。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
早く水晶屍人たちを指揮するオブリビオンを討ち取ったことで、掃討戦となりました。
奥羽武士の力を幕府軍に加えるべく、皆様のお力をお貸し下さいませ。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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詳細はオープニングの通り。
戦場は開けた広い平野となりますので、遮蔽物はないものとします。
ちなみに行先は拙作「エンパイアウォー②~冥府魔道への道を断て」と同じ村の近くとなりますが、こちらは未読でも問題ありません。
水晶屍人は猟兵の敵ではありませんので、如何に格好よく、大量の水晶屍人をなぎ倒していくかにプレイングの重点を置いていただければと思います。
また、ある程度の字数を戦闘に割いて下されば、プレイングに心情面を記して下さっても構いません。こちらも出来得る限りで拾わせていただきます。
余程まずい作戦でない限りは全て採用致しますので、まだ戦争シナリオに参加したことがない方にもお気軽にご参加いただけると幸いです。
なお、参加者多数となった場合、「戦争シナリオへの参加回数が少ない方」を優先して採用致しますので、この点ご承知おきくださいませ。
●このシナリオクリア時のボーナス
このシナリオに成功する事で、1000名の奥羽武士が幕府軍に合流して戦力が増加します。
全体では㉓の成功シナリオ数×1000名が幕府軍に合流する、ということになります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『水晶屍人掃討戦』
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POW : 多数の水晶屍人の群れに飛び込み、体力の続く限り暴れまくる
SPD : 群れから逃げ出そうとする水晶屍人を発見し、逃がさないように掃討する
WIZ : 策略を駆使して、多くの水晶屍人を逃がさずに殲滅できる状況を作り出す
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●奥羽諸藩・とある村近くの平野
「おお! お主たちは!!」
現れた猟兵の姿を見て、奥羽武士の顔が安堵に満ちる。
「猟兵どの、お力を貸していただけないだろうか!」
「我々では近づくこともできぬ故……時間がかかるのだ。助力願えぬだろうか?」
猟兵らが頷くと、武士らはほっと胸をなで下ろしていた。
猟兵等の目の前に蠢くは、数百体の水晶屍人。
指揮官を失い統率が乱れている今こそ、掃討のチャンス。
猟兵達よ、水晶屍人を屠り、あるべきところにあるべきものを返してあげてくれ。
――そして、彼らに安息を。
二天堂・たま
奥羽の前線で苦戦していると聞いて来てみれば、『水晶屍人』が相手だったか。
普通の人間が噛まれれば奴らの仲間入りだからな…攻めあぐねるのも仕方ないか。
しかし数を増やすだけが能の相手なら猟兵の敵ではない。
ワタシはUC:ピヨの波動でとにかく多くの敵を巻き込んで倒していこう。
ド派手に爆風や雷鳴を呼ぶようなものではないが、攻撃範囲はかなり広いから便利だ。
あの『水晶屍人』の中には奥羽や徳川の兵だった者もいるのだろう。
彼らを元の人間に戻してやる術は無いが…せめて武人として戦場で供養せねばな。
●戦場に手向ける鳴き声で、安らかに眠れ
ヒヨコに騎乗しながら現れたケットシーの二天堂・たま(神速の料理人・f14723)は、未だ多数蠢く水晶屍人を見上げていた。
「奥羽の前線で苦戦していると聞いて来てみれば、『水晶屍人』が相手だったか」
これまで数々の戦場を渡り歩いて来たたまだが、奥羽の危機は他の戦場と比べても異質と言えた。
(「普通の人間が噛まれれば奴らの仲間入りだからな……攻めあぐねるのも仕方ないか」)
もっとも、数を増やすだけが能の相手なら猟兵の敵ではない。たまは奥羽武士に代わり、前に出た。
水晶屍人に近づいたたまは、ヒヨコに騎乗したまま、大きく息を吸う。
そして、第一声を発した。
「ぴよーっ!!」
ヒヨコの鳴き声に似た声。それはあまりにもこの場にそぐわない声だ。
奥羽武士らが場違いだと非難の声をあげようとしたその時、水晶屍人達が揃って奇妙な行動をとり始めた。
「「「「ぴよーっ!!」」」」
水晶屍人は明確に意味が通るような音を発しない。しかし、たまの波動【常識を塗りつぶすピヨの波動(ハウリングボイス)】はその常識を塗り替え、思わず叫び返したくなるように仕向けるもの。
多数の水晶屍人が揃ってひよこの鳴き声を叫ぶという光景に奥羽武士らも驚くが、たまの波動の本質は高威力攻撃にこそある。爆風や雷鳴は呼ばなくとも、波動そのものは確実に水晶屍人の身体を蝕み、壊していくのだ。事実、叫び返した水晶屍人達が片っ端から崩れ落ち、地に還って往った。
波動で地に還る水晶屍人を眺めながら、たまは思う。
(「……水晶屍人の中には、奥羽や徳川の兵だった者もいるのだろう」)
具足を突き破るように水晶を生やす水晶屍人もちらほら確認できる。武士らにも少なくない犠牲が出ているのかもしれない。
(「ならば、せめて武人として戦場で供養せねばな」)
たまは目を伏せつつ、波動で次々と水晶屍人達を土に還し続けた。
――それこそが今、自分にできる供養だと信じて。
大成功
🔵🔵🔵
アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可
【POW】判定
前に誰かが言ってた気がする
この仕事をやってて一番きついのは「全部は救えないこと」…だってな
こんな事を企む奴はマジで許せねぇが…今はここをどうにかしねぇとな
ライドランに【騎乗】して水晶屍人の群れの中に全力で突っ込んでいくぜ。バイクで突っ込んで【吹き飛ばし】たり、すれ違いざまに【怪力】で鷲掴みにして力任せにぶっ飛ばしたりしながら蹴散らしてやる!
トドメのUCは【サウザンド・フラッシュエッジ】で行くぜ。ざっと二千を超える剣刃をぶっ放して、水晶屍人を残らずぶった切ってやる!
●全てを救えぬ無念
(「……前に誰かが言っていた気がする」)
水晶屍人を前に目を伏せるアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)の脳裏によぎるのは、以前耳にした誰かの言葉。
――この仕事をやってて一番きついのは、「全部は救えないこと」。
その言葉を口にしたのは誰なのか、今ははっきりと思い出せない。だが、今回の一件では……確かに水晶屍人と化した人間を「救う」ことはできないのだ。
「こんなことを企む奴はマジで許せねぇが……今はここをどうにかしねぇとな」
アーサーは大型バイク・ライドランに跨り、エンジンをふかすと全速力で水晶屍人の群れの中に突っ込んで行く。
――この行為が水晶屍人と化した人への魂を「救う」ことになると信じて。
通り道で蠢く水晶屍人を、アーサーは避けずにバイクの前輪に引っかけ、吹き飛ばしていく。
あるいはすれ違いざまに膂力にものを言わせて直接鷲掴みにした後、力任せにぶっ飛ばし、蹴散らして行く。
やがて、エンジンの爆音に反応した水晶屍人らが、アーサーの周辺に群がり始める。
アーサーを仲間に引き入れるために噛みつこうとする輩もいるが、アーサーはその場でバイクの前輪をロックした後180度Uターンさせ、後輪で噛もうとした水晶屍人を轢き、地に還した。
仲間の屍体を乗り越え集まる水晶屍人らを見て、バイクを止めるアーサー。
【Select…SLASH ACTION!】
アーサーはバイクに跨ったままアナザーフォームに変身し、ざっと二千……いや二千五百を超える光の刃を周囲に生み出した。
「水晶屍人全部まとめて……残らずぶった切るぜ!!」
アーサーは光刃を一斉に解き放ち、周囲の水晶屍人を徹底的に塵と化すまでぶった切った。
――ヴアァァァァァァァァァァ!!
水晶屍人達が悉く光に呑まれ、断末魔の声を挙げながら光刃で光塵と化し、次々と消滅する。
その光景を、アーサーは最後のひとりが消滅するまで、じっと見届けていた。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「これは大量の『水晶屍人』達ですね。掃討戦でもあまり時間をかけている場合ではないですね。」
【WIZ】で攻撃です。攻撃は【フェイント】を掛けつつ【先制攻撃】で【高速詠唱】した【破魔】の【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『水晶屍人』達を巻き込めるようにして纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「いずれ、『水晶屍人』を作り出した人物をぶん殴らないと気が済みませんね。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
●地獄の氷で天への道を
「これは大量の水晶屍人達ですね」
未だ数多く蠢く水晶屍人を目に、火土金水・明(人間のウィザード・f01561)はため息をつく。
「掃討戦でもあまり時間をかけている場合ではないですね」
猟兵は噛まれても平気とは言え、時間をかければ奥羽武士らが、そして村人らが噛まれる危険性が高まる。明の指摘は的を得ているのだ。
奥羽武士らに代わって水晶屍人の前に立った明に、水晶屍人らが緩慢な動きで迫る。
「この方達は、望んで水晶屍人になったわけではないのでしょうね」
明は七色の杖をかざし、素早く呪文を詠唱し始める。
「せめて、あまり苦しませずに終わらせたいものですが」
明の詠唱の邪魔をせんと殴りかかる水晶屍人を、時には残像を囮に躱し、時には七色のオーラを集中させて拳を受け止めながら、フェイントを織り交ぜつつ詠唱を続ける。
そして完成する魔術――【コキュートス・ブリザード】。
「我、求めるは、冷たき力。」
明の魔力の結晶とも言える230本の氷の矢が虚空に浮かぶと、明は七色の杖を一振りして水晶屍人達を巻き込むように一斉に降らせる。魔を砕く魔力を込められた氷の矢に貫かれた水晶屍人らは、次々と地獄の氷に囚われ全身を凍りつかせた後、砕け散った。
目の前の光景からわずかに目を逸らすも、まだ水晶屍人は数を残している。明は再び全力の【コキュートス・ブリザード】を早口で詠唱し、再び魔砕く氷の矢を生み出して一斉射。今度は肩の水晶を直接砕き、その活動を止めて地に還した。
「これで少しでも浮かばれると良いのですが」
2度にわたる全力の魔術の行使で膨大な魔力を消耗した明は、肩で息をしながら平野を見つめる。あとは他の猟兵に任せるのが賢明か。
「いずれ、水晶屍人を作り出した人物をぶん殴らないと気が済みませんね」
――明が望むその機会は、さほど遠くないうちに訪れるかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
紫谷・康行
眠りは安らかな方がいい
起こってしまったことを変えることはできなくても
今を、これからを
変えることはできる
彼らがこれから誰も傷つけないように
これ以上仲間を増やさないように
今、力になれる者達を
一人でも多く戦場へ送ることができるように
【無言語り】を使い
これから水晶屍人が起こすかもしれない被害と、奥羽武士が必要な労力をなかったことにしようか
螺旋を描くように歩き屍人達を引きつけてから
静かに虚無を与える言葉を紡ぐ
「眠らざる冷たい氷のごとき屍よ
その止まらぬ歩みを
終わらぬ悲しみを
今、虚無によって消し去ろう
無を与え、負の命を
無に帰そう
安らかな眠りを
穏やかな最後を
与える
さあ、眠るがいい」
目を閉じ
杖で一突き地面を打つ
●未来の為に、過去よ眠れ
眠りは安らかな方がいい。
紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)は目の前に蠢く水晶屍人を見て、そう思う。
(「起こってしまったことを変えることはできなくても、今を、これからを変えることはできる」)
――過去はもう、変えられない、覆せない。
――しかし、今起こることを変えれば、未来も変えられる。
(「彼らがこれから誰も傷つけないように」)
――これ以上の悲劇を、防ぐために。
(「これ以上仲間を増やさないように」)
――屍人が屍人を増やす、悲劇の連鎖を止めるために。
(「今、力になれる者達を、一人でも多く戦場へ送ることができるように」)
――奥羽武士たちが、武士としての本懐を遂げられる場で活躍できるように。
そのために、康行は【無言語り】を使う。
これから水晶屍人が起こすかもしれない被害と、奥羽武士が必要な労力を『なかったことにする』ために、虚無の言霊を呼び出す。
康行は螺旋を描くように静かに歩く。
水晶屍人達に己の存在を誇示し、屍人達を惹きつける。
水晶屍人らを十分惹きつけたところで、康行は静かに虚無に誘う言の葉を紡ぎ始める。
「眠らざる冷たい氷のごとき屍よ
その止まらぬ歩みを
終わらぬ悲しみを
今、虚無によって消し去ろう」
康行に噛みつこうとしていた水晶屍人が、その動きを止める。
「無を与え、負の命を
無に帰そう」
康行に近づいていた水晶屍人達が、その場に立ち止まる。
虚無の言霊は、確実に水晶屍人らを蝕み始めている。
「安らかな眠りを
穏やかな最後を
与える」
水晶屍人らの肩から生える水晶が虚無の言霊に侵され、静かに次々と崩壊する。
――さあ、眠るがいい。
最後に足を止めて目を閉じ、杖で地面を一突き。
水晶屍人らは、静かに虚無の海へと誘われ、次々と消滅した。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
人格名『鈴木・志乃』で参加
く、そ
思ったより疲労、が
参ったな、屍人の相手は私がしたい、のに
……お父さん、力を貸して
UC発動
神の子としての力で、安倍晴明が組んだ術式の一切合切から屍人を解き放つよ
【祈り、破魔の全力魔法】の【衝撃波】で全てを【なぎ払う】
【第六感】で誰一人として残さない、置いていかない
衆生に救いを……とは言えないけれど
少しでも優しく、痛みなく葬りたいな
全ての生命を愛し、幸福にする為に生まれてきた私が
貴方達を骸の海に還すしかないなんて本当、情けない
でも
だけど
貴方達の未練があれば私が聞き届ける
呪詛は私が全部引き受ける
来て
必ず、助けるから
●呪われし宿命を、優しく払う
「く、そ……」
連戦の疲労が嵩み、鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)の意識は霞みつつある。
(「参ったな、屍人の相手は私がしたい、のに……」)
各地の戦場で魔を払う祈祷を繰り返した結果、憑依している女霊の『昨夜』が表に出る回数が増えてきているのは、確か。
しかし、今は『志乃』で見届けたい。その一心で志乃は必死に意識を保ち、眼前の水晶屍人を見据えていた。
「……お父さん、力を貸して」
神の子――ナナシノミコとしての力を引き出し、術式の一切合財から屍人を解き放つための祈りを始める、志乃。
志乃は心に決めていた。この地の水晶屍人は誰一人として残さない、置いていかない、と。
(「衆生に救いを……とは言えないけれど」)
それでも、少しでも優しく、痛みなく葬りたい。それが志乃の願い。
――あるいは『昨夜』の願いでもあるのかもしれない。
(「全ての生命を愛し、幸福にするために生まれてきた私が、貴方達を骸の海に還すしかないなんて……本当、情けない」)
――だからこそ、私は引き受けたい。
志乃は祈りの言葉を小声で呟きながら、水晶屍人の前にあえて身を晒す。
「貴方達の未練があれば私が聞き届ける」
両手を身体の前で組んだまま、志乃は水晶屍人に優しく呼びかける。
「呪詛は私が全部引き受ける」
その呼びかけが届いたのか、水晶屍人がゆらりと志乃に接近する。
「だから、来て」
――貴方達の魂、必ず助けるから。
水晶屍人に取り囲まれる志乃。
それでも志乃は慌てることなく、只々祈り続ける。
志乃の肩に水晶屍人の手が触れようとした、その時。
魔を打ち払う優しい光の衝撃波が、集まった水晶屍人を悉くなぎ払い、全てを骸の海に帰した。
それは、この村での戦いの終わりを意味する、優しい破魔と鎮魂の光でもあった。
――ありがとう。
――あなたは私たちを呪詛から解き放ってくれた。
――もうこれ以上、誰も傷つけずに……済むよ。
力を使い果たし眠りにつく志乃の耳に届いた、複数の感謝の声。
それは果たして、誰の声だったのだろうか。
蠢く水晶屍人は、もう残っていない。
こうして、この村での掃討戦は、優しい祈りと共に終わりを告げた。
大成功
🔵🔵🔵