エンパイアウォー⑦~軍神手毬唄
●グリモアベース
「サムライエンパイアの大戦、今度は『軍神』上杉謙信を発見したよ!関ヶ原で戦だ!」
グリモア猟兵カバンシ・サフィリーンは集まった猟兵を前に一枚の図を映し出す。
「上杉軍精鋭部隊……オブビリオンの群れを自分の周囲に配置、それぞれのポテンシャルが最高にかつ回復が素早く行えるよう指揮している。軍神車懸かりの陣恐るべしって感じ」
軍神車懸かりの陣。
オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入、まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させるという「超防御型攻撃陣形」が展開されている図の一点。
カバンシは手元のレーザーポインターでカバンシが外縁部を差す。
「上杉謙信、そして上杉軍を完全に倒すためまず皆をここに転送するよ!」
転送ゲートの先ではオブビリオン『蒐集者の手毬』が上杉軍車懸かりの陣の一つとして陣取っているとカバンシは説明する。
「激強高火力で回復させないよう隙を与えない攻撃、猟兵の皆で連続して攻撃をして確実に1体を狙うってのがいいかもしれない」
高い防御力で並大抵の攻撃には耐えきれる、そしてすぐに回復できるよう強化されたオブビリオン。
中途半端な攻撃、一撃で撃破できなかった場合は即座に回復し元の木阿弥となる可能性が高い。
「防御力と自動回復の効果に打ち勝つためには、高火力や連携攻撃で潰すってのが相性良さそうだね!」
軍神車懸かりの陣で強化されたオブビリオンへの最適解を考えながらカバンシは転送ゲートを開く。
「上杉謙信は軍神車懸かりの陣を自分の復活への時間稼ぎに利用している。そんな軍神の策には真正面からストレートかましちゃって!」
●関ヶ原の手毬唄。
どこまでも草が広がる関ヶ原。
そして、それは草をぽんぽんと押しつぶす。
手毬は六つ。
硅孔雀
サムライエンパイア大戦、上杉謙信率いる上杉軍との決戦です。
硅孔雀です。
軍神恐るべし。強化されたオブビリオンとの戦です。
●構成
集団戦:蒐集者の手毬×6体。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●特記事項
軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
●戦場情報
関ヶ原の野原。見晴らしは良く地面は安定しています。
敵オブビリオンは最高のコンディション、『防御力アップ&自動回復(特大)』のバフが付いた状態です。
オープニングにありました通り、一撃で撃破できなかった場合は元の木阿弥になる可能性大です。
それではプレイングお待ちしています。
第1章 集団戦
『蒐集者の手毬』
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POW : あなたと共に在るために
【自身がよく知る死者】の霊を召喚する。これは【生前掛けてくれた優しい言葉】や【死後自分に言うであろう厳しい言葉】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 理想郷にはまだ遠い
【自身と同じ能力を持つ手毬】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : いつか来る未来のために
小さな【手毬】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【全ての望みを再現した理想郷】で、いつでも外に出られる。
イラスト:にこなす
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
テオ・イェラキ
オリオ(f00428)と参加
敵は固く、再生能力すら備えているようだな
であれば……再生出来ないほどの速度で打ち砕くのみ
妻の初撃に続くようにして、敵へと突撃する
選んだ舞は『風纏う激情の舞』
敵が破壊されるまで、蹴って蹴って蹴りまくるのみ
くらぇぇええええい!ブレイクぅ!
小さな蹴鞠には、互いに声かけをしながら触れぬように気を付けよう
またどのような霊が召喚されようとも、関係無いな
俺も妻も、生まれよりも両親よりも、互いを選んだ身
過去の亡霊に何と言われようとも、何ら心を乱すことは無い
互いを選んだことに、何ら悔いなど無いのだから
オリオ・イェラキ
テオ【f00426】と
あの陣を崩せば良いのね
ならば強固なる防御を打破る、夫婦の猛攻を仕掛けますわ
先ずはわたくしの星を鞠に降らせますの
頭上に、その周囲に。そう、テオの攻撃から逃げないように
煌めく流星達に翻弄される間に雄々しき鷹が獲物を捕らえますわ
わたくしの星夜を飛ぶ高の一撃、極上でしょう?
勿論わたくしはただ見ているだけではありませんわ
それでも倒れぬのならと、流星が地に咲かせた夜薔薇を突き進みこの大剣にて間髪入れずの一撃を差し上げますの
見えぬ手毬も巻き込む流星と蛮族の蹴り、夜空の斬撃なる連続攻撃に耐え切れるかしら
一応小さな鞠には気をつけるよう夫婦で声かけを
元より反撃の間を与えず仕留めるつもりですわ
●めおと舞闘
関ヶ原、上杉謙信の展開する軍神車懸かりの陣。
その一角を形成するオブビリオン『蒐集者の手毬』は跳ね、草を、岩を押しつぶす。
「敵は固く、再生能力すら備えているようだな」
「であれば、わたくし達夫婦の力を見せましょう」
テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)とオリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)、二人の猟兵を前に意志を持っているかのようにオブビリオンは襲い掛かる。
「おお、何とも勇ましい敵だ」
テオがニヤリと笑い、攻撃の構えをとる。
「そうですわね……ですがわたくし達の狩りから逃げられないように」
オリオが神経を集中させ、ユーベルコード:星降る雨と宵花溜り(スターリーパドル)を発動させた。
青空が広がる関ヶ原、向かってくる蒐集者の手毬の真上からそれは降り注ぐ。
青空を切り裂いたのは夜空から零れ落ちる流星群。
流星の煌めき、轟音が響く中オブビリオン同士の連携が崩れ、分断に成功する・
(頭上、周囲。テオの攻撃から逃げないように)
衝突の衝撃で地面に星屑瞬く黒薔薇の幻影が描かれる舞台の上でオリオは見上げる。
空高く、飛び立つ、地面を蹴り上げた雄々しき鷹。
「わたくしの星夜を飛ぶ鷹の一撃、極上でしょう?」
物言わぬオブビリオンの代わりにオリオに答えるのはテオ。
「ああ最高だ!くらぇぇええええい!ブレイクぅ!」
絶え間なく降り注ぐ流星群の衝撃に咄嗟に動けなくなったオブビリオン。
それに加わる衝撃は超高速での連続攻撃、逆立ちからの連続回転蹴り。
テオのユーベルコード:風纏う激情の舞(ブレイクダンス)が重なる様にオブビリオンへと撃ち込まれる。
「再生できない程の速度で打ち砕く!蹴って蹴って蹴りまくる!」
テオの足を掠めるように小さな蹴鞠が飛ぶ。それから感じる殺気、そして向かう方向はオリオが立つ地。
「オリオ!」
「大丈夫ですわ!」
(わたくしはただ見ているだけではありませんわ)
流星が地に咲かせた夜薔薇の上でオリオは既に大剣を抜いていた。
すぅっと剣が空を撫で──オブビリオンと蹴鞠を同時に貫く。
ピシピシ、と音を立てて手毬が割れ始める。過去の海へと還っていくかの様に黒い残滓が降り注ぐ。
「このまま押し切りましょう……!」
「ああ、狩りはこれからだ……っと」
オブビリオンの最後のあがきか、浮かび上がってくる影。
それは二人を道連れにしようと過去の優しさと偽りの怨嗟を含んだ声がうっすらと聞こえる。
が、テオは影を蹴りの風で吹き飛ばす。
「俺も妻も、生まれよりも両親よりも、互いを選んだ身」
影がかき消え、オブビリオンへの流星と蛮族の蹴りは止まず。
「過去の亡霊に何と言われようとも、何ら心を乱すことは無い」
テオ、雄々しき鷹が地面へと叩きつけるように蹴りを加える。
「──夜空の斬撃、これで終わりですわ」
鷹の傍で微笑むオリオの斬撃が、二体目のオブビリオンを過去の海へと還した。
反撃を与えず続けられた攻撃、そして隙を与えない連携によりまずオブビリオンが2体消えた。
「狩りは終りましたわね……あら」
テオは塵のようなオブビリオンの残骸、それがオリオの黒髪に付きそうになるのをそっと払う。
(互いを選んだことに、何ら悔いなど無いのだから)
テオが自分の漆黒の髪にそっと触れた事に微笑みを零すオリオ。
「ありがとうございます」
「いや、怪我も、何もなくてなによりだ」
「それはわたくしからも言わせてください。テオに何事もなくてよかったですわ」
関ヶ原の青空の下、夫婦は互いに戦場を見やる。
二人の何よりも強い絆の前に、軍神車懸かりの陣が綻び始めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
数宮・多喜
◎
なるほどな、仔細承知したよ。
この陣、難攻不落にも程があるって訳だ。
……だけどな。
だからこそ、アタシがここに立つ意味があるんだろうよ。
奴らがとにかく守りを固めるってんなら好都合、
アタシも存分にサイキックを練り上げる。
周囲に電撃の『属性攻撃』を『オーラ防御』の様に放ち、
準備が終わるまではこちらに毬の一つも触れさせないよ。
一かけ、二かけて、三かけて。
仕掛けて後掛けぬ命賭け。
紡ぐ聖句も朗々と、
込める思念は最上級に。
友達(ダチ)の霊が呼びかけてきても、
揺るごう筈も無いだろう?
何せ今から放つのは、
準(アンタ)を『送った』あの檻だ。
『覚悟』を込めた【黄泉送る檻】、
防げるもんなら防いでみな!
アマニータ・ビロサ
ユーベルコードと毒使い、呪殺弾、呪詛で創造した胞子と菌糸を戦場にばら蒔き、鎧無視攻撃で敵に苗床寄生(ハッキング、盗み攻撃)を試みる。
寄生さえ成功してしまえば、たとえ仕留め損ねたとしても保菌者(キャリア)となりて陣の中に感染拡大してくれることでしょう。寄生キノコの何がやべぇって時期がくるまでは普段通りの行動を取らせることよな。
まぁ、ここで仕留めておくにこしたことはないので、寄生後は生命力吸収で養分にしつつ、キノコ毒を精製してコンディションを低下させバフの相殺を試みます。こうして弱体化させれば高火力型の猟兵さんがきっと仕留めてくれることでしょう。
ルパート・ブラックスミス
【POW】
現れる死者は『生前の自分の知人と思しき幾多の人影。記憶喪失の為、顔は青色で塗り潰されている』
言葉は『国も己も喪っておきながら、このような異世界を彷徨う亡霊騎士たる自分への否定』
嘗めるな。
その程度で揺れる【覚悟】で猟兵をしているのではない。
敵を【グラップル】で捕獲しUC【炎抱きて白熱せし鋼肢】で攻撃。
防御も回復も関係ない、一撃で足りないなら何撃でも何十撃でも叩き込むだけだ。
一つ潰したら次へ、それも潰したらまた次へ。
手毬が尽きるまで延々と繰り返す。
自分のたちの世界の為に今を戦う幕府軍の兵たちに、ここで惑い膝をつく時間はない。
さぁ、貴様らの遊び相手は自分が務めよう。
【共闘・アドリブ歓迎】
カーバンクル・スカルン
常にぐるぐる回り続けて前線にいる奴は交代。新しく出てくる兵士は後方で回復と援護を受けて元気いっぱい。傷ついた兵士は斃れる前にすぐに後ろに引っ込んで回復……ねぇ。
じゃあ後ろに引っ込む前に潰しにかかりますか。
カタリナの車輪を最前列の奴をターゲットに指定して突撃。
私が指を指し続けている限り車輪はそいつを轢き続けるから、吸い込もうとしても一瞬で脱出して、別の奴が間に入ろうとしても一緒に吹っ飛ばされ、無理に後ろに下がろうとしても仲間を巻き込んで潰されるだけ!
さぁ、回復要員の元にたどり着く前に命を残せるかな?
●手毬唄を止める手。
関ヶ原で舞う手毬、オブビリオン『蒐集者の手毬』の数は残り4つ。
猟兵達の先手で深くついた傷があっという間に戻る。
「常にぐるぐる回り続けて前線にいる奴は交代。新しく出てくる兵士は後方で回復と援護を受けて元気いっぱい」
カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの咎人殺し・f12355)が赤い瞳でその光景を眺める。
「傷ついた兵士は斃れる前にすぐに後ろに引っ込んで回復……ねぇ。じゃあ後ろに引っ込む前に潰しにかかりますか」
針があちこちについた巨大な車輪『カタリナの車輪』を構え、敵陣へと歩み寄る。
「刺々して怖そうですね。そして痛そうです」
アマニータ・ビロサ(殺戮☆天使・f21109)がカーバンクルと車輪を見上げた。
「ああ、このまま突っ込ませれば私のユーベルコードで逃げだせないよ」
ふむ、とアマニータは考え込む。
「全体攻撃を考えるのであれば、ここは私も協力します……寄生の恐ろしさを見せてあげます」
「寄生?」
「はい、寄生キノコのやべえ所で弱体化作戦です」
にっこりと笑うアマニータを前に、そうかとカーバンクルは返した。
(……キノコ?)
「というわけで純白の天使の力、お魅せしましょう」
青空、風の吹き抜ける下一瞬空気が重たくなる。じっとりと湿ったそれが戦場に吹く。
アマニータのユーベルコード:殺戮☆天使(デストロイヤーエンジェル)、更に毒、呪いを込め創造された胞子と菌糸が静かにオブビリオンを包み込む。
「……確かに純白だね」
「苗床の完成です!寄生さえ成功してしまえば、たとえ仕留め損ねたとしても保菌者──キャリアとなりて陣の中に感染拡大してくれることでしょう」
うっすらと白く覆われたオブビリオン。毬は弾むが、段々と動きは鈍くなっていく。
「回復要員、その暇さえ与えない攻撃をオブビリオン全体に仕掛けようとした私とは相性が良かった、ってことね」
カーバンクルがカタリナの車輪を担ぎ直す。
「寄生キノコの何がやべぇって時期がくるまでは普段通りの行動を取らせることよな……というわけで、弱体化を狙っていました」
刺々しいカタリナの車輪を眺めなら、アマニータはオブビリオンに寄生したキノコの様子を伺う。
「寄生したキノコは栄養分としてオブビリオンの動きを鈍らせ、そして」
オブビリオンの跳躍がより一層鈍くなる。表面を覆っている胞子の膜が毬を破り、そこから黒い瘴気が漏れ出す。
「あ!回復効果も低下しています……これは高火力で叩きこめばチャンスですね!」
アマニータの行動は軍神車懸かりの陣でオブビリオンに与えられた力を相殺し、更に打ち消している。
「よし、じゃああたしが後に引っ込む暇も与えないで叩きこんで、いや、巻き込んで引くってね!」
カーバンクルが最前列で白い膜を纏ったオブビリオンを指さす。
「車輪が発車します、ご注意ください!出発しんこー!」
ユーベルコード:出発しんこー!が発動した。担いだカタリナの車輪が勢いよく指先で示したオブビリオンへと飛び──回転する。
ざりざり、がりがり、オブビリオン1体にめり込みながらも回転は止まらない。
意志を持っているかの如く、残りのオブビリオンが集まる。中から出てきた小さな手毬が車輪を飲み込もうとするが。
「無駄だよ。私が指を指し続けている限り車輪はそいつを轢き続けるから」
カーバンクルの言葉の通り、オブビリオンが群れればそのまま仲間を巻き込み、回転は止まらない。
アマニータの力によって弱体化され、回復が間に合わないオブビリオン達、毬の丸が段々といびつな形になって行く。
このままカタリナの車輪が回り続ければ、オブビリオン軍はそのまま一網打尽にされただろう。
4体のオブビリオン、蒐集者の手毬達は崩れた体をお互い結合するかのように集まる。
「おっと、でもまだ回転は止めないよ。さぁ、回復要員の元にたどり着く前に命を残せるかな?」
カタリナの車輪が、4体の結合部分を轢き、裂き、黒い瘴気が辺りを包み込む。
「──なるほどな、仔細承知したよ。この陣、難攻不落にも程があるって訳だ」
「戦場で過去を歌う物、そろそろ終わりの時間だ」
その時、二人の猟兵が動いた。
●籠の中の送り歌
黒い瘴気が戦場を包み込みながら、その光は蒼白く。
「……だけどな。だからこそ、アタシがここに立つ意味があるんだろうよ」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が黒い瘴気、オブビリオンがその中で生み出したそれを前に静かに口を開く。
ぽんぽん、といびつな形で撥ねながらオブビリオンから生み出されるモノ。
『──』
それは口を動かし、何かを数宮に訴えている。
青空を侵食する黒の中、数宮は直感する。
「回復できるまで、これで防御を固めるってことかい」
『──』
まるで暗闇の向こうから手を差し伸べるように、それは言葉を武器にする。
(好都合、アタシも存分にサイキックを練り上げる)
数宮の手から放たれた電撃が毬、毬の生み出した瘴気を包み込む。
『──』
「悪いね、友達──ダチの霊が呼びかけてきても、揺るごう筈も無いんだよ」
一かけ、二かけて、三かけて。
仕掛けて後掛けぬ命賭け。
紡ぐ聖句も朗々と、込める思念は最上級に。
アンタ
「なんせ今から放つのは、準 を『送った』あの檻だ」
暗闇の中、口を動かし続ける『ダチ』を前に、口から紡がれる聖句は数宮の周りの空気を凛と、そして聖なる空気を纏わせる。
「……ashes to ashes,dust to dust,past to past……収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
ユーベルコード:黄泉送る檻(サイキネティック・プリズン)、その聖句が生み出すのは光と衝撃。サイキックブラストが織状にオブビリオン達を包み込み、そして電撃で焼き切る。
(『覚悟』を込めたんだ)
「防げるもんなら防いでみな!」
数宮の声と共に、電撃は更に白く、全てを飲み込む檻は暗闇を閉じ込めるかのように包み込む。
ぼろり、ぼろり、と毬が残骸となっては消えていく。
『──ぁ、ぁ』
それはその残骸も声を上げる事すら保てなくなり白い檻の中で消えていく。
しかし、『それ』は所詮オブビリオンが生み出した幻影。
「……だから、もう終わりなんだよ」
2体分のオブビリオンの残骸が、転がり落ちる。
●彷徨い毬の手を奪い。
オブビリオンの瘴気、或いはオブビリオンが攻撃手段として生み出した死者。
毬の中から生み出される、偽りの記憶は風と共にルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の体──黒騎士の鎧の間を吹き抜けた。
それは青い顔を持っていた。否、青く塗りつぶされていた。
それはそれらであった。何人も、何人も、青く塗りつぶされた顔の中、口だけが動く。
『愚かなことだ、戦場はもう終わっただろうルパートよ』
『何故ここを歩く?彷徨う?自らの世界でその命の炎は消えたのに』
『自らだけではなく、国も既に滅びるが定め……』
ルパートの耳に入るのは、怨嗟を含んだ呪い唄。数多の人影、数多の顔無き死者が唄うそれを止めたのは。
『──がっ!あ、ああああ!』
「顔が見えないのは、自分の記憶がないから生み出せないからか」
彷徨う鎧の片手が死者を掴みあげる。
『お、おまえが、この世界をすくえ』
「嘗めるな」
ルパートが言い放つ。
「その程度で揺れる『覚悟』で猟兵をしているのではない」
(恐らくは、こちらの思考を止め、否定するために作られたのだろう)
肉体も記憶も失ってなおルパートの心に残りしそれは、オブビリオンの生んだそれらを凌駕していた。
「我が鉛鋼の輝きは暗く……されど今は眩く!」
死者を掴んだ手が、足が白熱と化す。ルパートのユーベルコード:炎抱きて白熱せし鋼肢(ブライブライトブラスト)が発動し、死者を掴んでいた手が一瞬離れ、そして拳となって叩きつけられる。
暗闇の中に生み出されたのは爆ぜるように噴出す青き劫火。
青、青、青。
青く顔を塗りつぶされたそれを潰すのは、青き劫火。
死者が消えると、そこには燃え尽きたオブビリオンの破片。ああ、そうかと潰れたそれを一瞥し、次の死者へとルパートは歩み寄る。
「自分達の世界の為に今を戦う幕府軍の兵たちに、ここで惑い膝をつく時間はない」
関ヶ原を抜けた先、そして今も尚過去の海から蘇りしオブビリオンを過去の海へと還す。
「ここで永遠に惑わせ、遊ばせるのが目的だったのかも、しれないが」
ボッっと音がし、また一辺の欠片が過去の海に還る。
「さぁ、貴様らの遊び相手は自分が務めよう」
逃げる死者、顔無くも睨みつける死者。全ての存在が消えるまで、潰れるまで、ルパートの四肢は炎で白く染まっている。
そして、風が全てを吹き流すように、オブビリオンは跡形もなく消えていた。
●軍神手毬唄は止みて
「おーい!前線の2人さん大丈夫?」
カーバンクルとアマニータが黒い瘴気に包まれていた数宮とルパートの元に駆け寄る。
「ま、なんとかなったね。向こうの力を弱くしてもらって助かったよ」
「キノコパワーは凄いのですよ!仕留めていただいてありがとうございます」
アマニータの金の髪が関ヶ原に吹く風に揺れる。
上杉軍車懸かりの陣の一つは壊滅することが出来た。しかし、関ヶ原での戦は尚続いている。
「止まるわけには行かない……この国を、守ろうと立ち上がった人達のためにも」
ルパートの視線は戦場、そしてその先にある向こう──『第六天魔王』織田信長の待つその場所を向いていた。
かくして手毬は地面に転がり消え、猟兵達は次の戦場へと向かう。
大成功
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