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エンパイアウォー⑦~白虎旋風陣〜

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●西を護る者

 関ヶ原の戦い。
 少なくともそう言えば、UDCアースの人間ならば例え歴史に明るくなかろうとも聞いた事ぐらいはあるはずだ。かつてこの地で亡き豊臣秀吉の後釜を争い、徳川家康は毛利輝元と壮絶な戦を繰り広げた。
 しかし今回、サムライエンパイアの関ヶ原に置いて徳川家の前に立ちはだかったのは軍神・上杉謙信。
 その上杉軍の最前線では竜巻が吹き荒れていた。
 荒れた草地を二股の尾を持つ虎が駆ける。旋風を纏い、風を受けた足元の草が端から刈り取られ巻き上げられる。
 回る、廻る、周る。
 およそ獣とは思えぬ統率された動きで円を描き、ぐるぐると虎達は竜巻の周囲を周り続ける。
 その虎には―――首がなかった。

●白虎旋風陣

「関ヶ原と言ったら……コレよね! ウチは徳川側だから東軍になるのかしら!」
 グリモアベースで猟兵達の前に出てきたミア・ウィスタリアは武者兜を被り軍配を持っていた。なんか何時ぞやもそんな格好をしていた気がする。
 まぁそれは置いといて、と横に置くジェスチャーをした彼女はホログラムウインドウに現在の戦況を映し出す。
「お陰様で此処までの進軍は結構順調ね。でも、此処から先はちょっと難所が続くわ。関ヶ原で待ち受けてるのは軍神『上杉謙信』。コイツを倒さないと先には進めない……んだけど」
 そこでミアがウインドウに映し出したのは簡略化された陣形図の様な絵だ。
 渦を巻く様に兵が配置されており中央に大将が配置されている。
 【軍神車懸かりの陣】と題名が付けてあった。
「まぁーそこは流石上杉謙信って感じでさ。めっちゃくちゃ堅い布陣を敷いてるワケよ。図を見てもらうと解るんだけど、この円陣がぐるぐるぐるぐる回って最前線の敵がどんどん入れ替わるワケ。はいっ、そうなるとどーなるでしょーかっ?」
 一拍置いて猟兵達を見渡したミアはため息を付くと、言った。
「敵が疲れないって事よ。正直皆が普通に戦えばまず負けない相手だとは思うけど、この陣形のお蔭で耐久力がアホみたいに上がってるわ。半端なダメージだと仕留めるのに苦労するかもね。もっとこう超必殺技みたいなのをブチ込むとか、こっちも複数人の連携で回復する隙を与えないとか……」

 天球儀が激しく回転を始めた。ミアは片手に持った軍配で猟兵達を指し示す。
「ま、その辺は何か良い感じにやってちょうだい。では各方、出陣で御座る!」


龍眼智
上杉謙信女性説は割と信じている。
龍眼智です。

さて、戦争も中盤戦ですね。
今回はパンチングマシーン形式!頑張って参りましょう!

●標的
堕ちた白虎×6

オープニングでミアも言っていましたが、今回の敵には『防御力アップ&自動回復(特大)』のバフが掛かっています。生半可なダメージは直ぐに回復してしまいますので何とかして大ダメージを与えるか、手数で押し切る工夫をしてみて下さい。

また、このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
====================
 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
====================

それでは、ご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『堕ちた白虎』

POW   :    旋風
自身の身長の2倍の【3つの竜巻】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    飄風
【触れるものを切り裂く暴風を纏った突進】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    凱風
自身に【相手の動きを読む風の鎧】をまとい、高速移動と【かまいたちによる遠距離斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 転移陣を抜けた猟兵達の眼に飛び込んできたのは、聳え立つ白い巨塔であった。
 曇天の空が其処だけ崩れ落ちてきたかのような逆円錐。
 それは直径一〇〇mはあろうかと言う巨大な竜巻であり、天然の城壁として猟兵達を阻んでいる。
 その麓を守るのは六匹の首無し虎。
 猟兵達はお互いに頷き合うと、それぞれの手段で攻略を開始した
緋月・透乃
へー、こんな陣形使うとは、噂通り上杉謙信はできる奴なんだねー。こりゃ直接戦うのが楽しみだね!
それにしても虎が回る……UDCアースにはバターになるお話があったような。じゅるり……

陣形のおかげで敵が強くなっているのなら、その陣形から引っこ抜いてしまえばいいんじゃないかな!
そのために近づきたいけれど、竜巻が邪魔だねぇ。
気合いで軌道を読んで突っ込み、吹き飛ばされそうになったら地面に戦斧を突き刺して耐えるよ。
接近できたら一体に狙いを定めて【ひょいっと】掴んで引っこ抜く!
そして、持ち上げたまま陣から離れて、死ぬまで地面に叩きつけるよ!


梅ヶ枝・喜介
ははぁ!こりゃあ見事な陣形だ!
流石はその名を轟かせた関東管領!

へへっ!だがよ!おれはこの戦陣の穴ァ見つけちまったもんね!

あの竜巻はすっげぇ強そうだけどよ!どうにも虎の動きに連動してる!
で、あの陣形は常に同じ動きを繰り返して頑丈さを保ってる!

ならば竜巻の動きを読み!その間を潜り抜けて近寄ることァ容易い!

ま!あれだけの風の中を行くんだ!多少の傷は仕方ねぇ!
だがおれァ男だ!傷口にゃあ戦が終わった後で唾でもつけとけばいい!

もし虎どもが陣を崩すってんならそれも良しだ!
上杉の目論みは潰えるからナ!

んじゃ、行くぜぇええ!!

雄叫びを上げて気合いを入れ!
木刀を大上段に構えて飛び出す!

まずは一頭!討ち取ってやる!



「ははぁ!こりゃあ見事な陣形だ! 流石はその名を轟かせた関東管領!」
 荒れ狂う竜巻を前に、全く臆せず快哉を叫ぶのは梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)。強風に煽られる三度笠を手で抑えつつも、その目は猛禽の如く油断なく渦の中心を見つめている。
「へー、こんな陣形使うとは、噂通り上杉謙信はできる奴なんだねー。こりゃ直接戦うのが楽しみだね!」
 その隣で呼応する様に愛用の重戦斧を担いだのは緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)。此方も未だ見ぬ大将首を求めて戦意を滾らせる。
(それにしても虎が回る……UDCアースにはバターになるお話があったような……じゅるり)
 最も、フードファイターである彼女にとっては目の前の虎もご馳走に見える様である。残念ながらここにパンケーキは無い。悪しからず。
 さて、と気を取り直した透乃は改めてしっかりと竜巻を見た。虎達は荒れ狂う旋風の中をぐるぐると回っており、簡単には辿り着けそうにない。
「取り敢えず虎を陣形から引っこ抜きたいけど……やっぱり竜巻が邪魔だねぇ」
 そこに喜介が反応した。
「へへっ!だがよ!おれはこの戦陣の穴ァ見つけちまったもんね!」
 彼は手にした木刀で虎を指し示す。
「あの竜巻はすっげぇ強そうだけどよ! どうにも虎の動きに連動してる! で、あの陣形は常に同じ動きを繰り返して頑丈さを保ってる! ならば竜巻の動きを読み! その間を潜り抜けて近寄ることァ容易い!」
 なるほど確かに彼の言う通り、上空は未だしも地表近くは虎の駆ける向きと風向きが一致している。虎の動きを予想すれば自ずと竜巻の軌道も解ると言う訳だ。
 だが風向きが分かったとして、あの暴風の中で如何にして虎に近付くのか。

 【気合いでどうにかする!!】のである。

 身も蓋も無いと言えばその通りだが、透乃は目を輝かせた。
「小細工はするだけ無駄って事だね! うん! 私もそんな気がしてたよー!」
「ハハッ! 気が合うな姉ちゃん! ま! あれだけの風の中を行くんだ! 多少の傷は仕方ねぇ! だがおれァ男だ! 傷口にゃあ戦が終わった後で唾でもつけとけばいい!」
 喜介は改めてしっかりと木刀を握り締めると慎重にタイミングを見計らう。
「んじゃ、行くぜぇええ!!」
 合図とともに、二人は荒れ狂う風の中へと飛び込んだ。

「グルルルル……ッ!」
 たちまち二人の全身を強烈な衝撃が襲う!
 迎撃圏内に立ち入った事で、虎達が微妙に軌道を変え風向きを変化させたのである。
「うわっと!」
 両足が地面から離れる事こそ無かったものの、地面に戦斧を突き刺して耐える透乃。片手には同じく吹き飛ばされそうになった喜介の襟を掴んでいる。
 虎までの距離は後数メートルだが、その数メートルが果てしなく遠い。
「通り抜けた時がチャンスだな!」
 喜介が叫ぶ。
 先程の理論に照らし合わせるならば虎の走る向き=風向きである。
 ならば虎が走り抜けて直ぐの空間は追い風になる筈!
「よーし、じゃあ後は……私が送ってあげる!」
 透乃は目の前を虎が横切るのを見計らい、渦の中に喜介を放り込んだ!
 背中に爆風の如き衝撃を叩きつけられ、虎の背後目掛けて吹き飛ぶ喜介!
 最早上も下も解らぬ中、それでも彼は木刀を大上段へ構えた。
 達人とは千の技を体得した者に非ず。
 十の技に万の修練を積み上げた者こそが達人と呼ぶに相応しい。
 真っ直ぐ振り下ろす事しか己には出来ぬ。
 しかし! その一太刀に込めた血と汗と涙は本物だ!
「よっっしゃあ! まずは一頭! 討ち取ってやる!」
 喜介の振り下ろした渾身の一撃が見事虎の背を捉え、地にめり込ませた!
「やったか!?」
 やっ―――てはいない!
 敵も伊達に強化されていないと言うことだろうか。虎は即座に立ち上がると再び渦に乗って走り出そうとした。足を引き摺っている所を見るに効いていない訳では無いようだがあと一歩足りない!
 しかし―――その【あと一歩】は直ぐ後ろから朱い突風となってやってきた。
「オッケー、後は任せて! ひょいっと」
 透乃である。先程喜介を投げ込んだ後自らも渦に飛び込んでいた彼女は、瞬く間に喜介を追い抜くと、虎の折れていない後ろ脚を掴み更に加速!
 大気の壁を突き破り竜巻の反対側へと突き抜けた!
「陣形のおかげで敵が強くなっているのなら、その陣形から引っこ抜いてしまえばいいんだよね! これであんたも只の虎! 今度は耐えられるかなー!」
 着地と同時に繰り出されるのは大上段からのパワーボム!
 轟音と共に再び地に伏した虎は、今度こそ、起き上がっては来なかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)

力が必要?それならわたし、大得意だよ!
どーんと任せて!

【深緑、底知れぬ恐怖を育め】を発動
誰よりも高く、何よりも巨大な『怪物』に変身して戦場に向かうよ(存在感、恐怖を与える)

首がない…それでも動くなんて、不思議な虎さんだね
でも獣には違いないはずで。それならわたし、負けられないなあ

竜巻には竜巻で、雷光伴う嵐を両腕に纏わせて思いっきり叩きつける!(怪力、属性攻撃、衝撃波、範囲攻撃)

わたしの持てる全力を!耐えて見せてね、首無し虎さん。そうじゃないと、つまらないもの



「力が必要?それならわたし、大得意だよ! どーんと任せて!」
 そんな声は、突如天から降ってきた。
 無邪気で、鈴を転がす様な、ともすればあどけなさすら感じる可愛らしい声。
 しかし、その声と同時に現れた物は余りにも常軌を逸していた。
 それは勿論、虎達にとって、だ。
 
 草原を―――森が這いずって来る。

 否、よく見ればそれは苔生した布が風にはためいているだけなのだが、問題は幅ではない。高さだ。
 竜巻によって戦場の空は曇天に覆われているが、驚くなかれ。この布は雲を突き抜けて尚、その終わりが見て取れない。布の向こうで女性的な曲線を描く柱の様な者が悠然と動いている所を見るに……もしやこれはドレスの裾なのだろうか?
 次の瞬間、それを肯定するかの様な事態が起こった。
 布の向こうの柱が中程で折れ、雲に隠れていたその上が、ゆっくり降りてくる。
 巨大な質量に絶叫する大気の壁。稲妻を連れ、雲を裂き現れたのは赤と碧の紋様が走る巨大な手。そして、黄金の瞳を持つ女性の顔であった。
 その頭部から角の様に伸びるのは、天を覆わんばかりに枝葉を伸ばす大樹の枝。

 おお―――畏れよ、畏れよ。
 これこそは夜と闇に覆われた仄暗い森に伝わる御伽噺。
 『高き森の怪物』アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)である。

 縮尺がおかしい事になっているが、今彼女はしゃがんだ状態で竜巻の麓で円陣を回す虎達を眺めている。
 大きさの対比は既に計算するのも馬鹿馬鹿しい程だ。象と蟻なんてレベルではない。しかし、それでも彼女を外敵と認め、虎達は竜巻に力を注ぐ。
 興味深そうに虎を眺めていたアウルは、その様子に破顔する。
「首がない…それでも動くなんて、不思議な虎さんだね。
 でも獣には違いないはずで。それならわたし、負けられないなあ」
 何故なら自分は森そのものであるが故に。たかだか獣数匹に遅れを取るわけにはいかない。
 草原に風が吹き始めた。しかし、これは虎達の起こす風ではない。
 アウルの両腕に、旋風が巻き付く様に発生しているのである。
 曇天を雷が駆け抜け、両腕に落ちた。
 そして完成したのは、雷光を纏った一対の竜巻である。
「わたしの持てる全力を!耐えて見せてね、首無し虎さん」
 ―――そうじゃないと、つまらないもの。
 最後の呟きは聞こえたかどうか。アウルはその場で立ち上がると、竜巻を纏った両腕に全体重を載せ、虎達の竜巻に叩き付けた!

 耐えられる―――訳がなかった。
 
 薪でも割るかの様に前半分をごっそり持っていかれた竜巻が急速に勢力を弱め、地面には消し炭と化した2匹の虎の姿があった。
「なんだぁ……つぶれちゃった」
 草原に、アウルの残念そうな声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
完璧に近ければ近いほど、妨害ひとつで全体が崩壊するものだ
楔を打ち込でやろう。それも沢山だ
【軍隊個人】起動、全銃火器複製開始
各45挺、全合計225挺による迎撃戦を始める
円運動の回転方向に対して真正面から相対し、まず突っ込んでくる敵にアームドフォートの一斉射を叩き込み、あとは【二回攻撃】と【スナイパー】技能で敵の太ももや心臓、肺のあたり、脚の中で一番狙いやすいところを狙って他の銃砲を放つ。【鎧砕き】の技能も組み合わせて防御ごと粉砕するとも
前を走るモノが立ち止まれば、停止か追突か。どちらにしろ陣形は大きく乱れる

さあ、戦争をしよう
私の弾丸を乗り越えられるかどうか、その身で試してみるがいい


※アドリブ歓迎



 完璧に近ければ近いほど、妨害ひとつで全体が崩壊するもの。
 レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)の読み通り、猟兵達の間引き作戦によって虎はその数を半分まで減らしていた。
 しかし、まだ半分。
 殲滅の為には更なる楔を打ち込んでやらねば。
 今彼女が陣取っているのは竜巻の外周部だ。渦の方向からして、丁度斜め前を虎が通り過ぎる事になる。
 眼鏡の弦をクッと押し上げたレナの視界では、一匹の虎が彼女に狙いを定め走り出した所であった。どうやら此処に来てようやく、彼らも打って出る気になったと言う事だろうか。
「よし、掛かったな…」
 言うと同時、彼女の背後から現れたのは無数の銃器である。リボルバー拳銃に始まり、機関銃、マスケット銃、ガトリングガンから攻城砲まで諸々合わせて、その数なんと225挺!
「さあ、戦争をしよう。私の弾丸を乗り越えられるかどうか、その身で試してみるがいい。総員構え―――斉射開始!」
 文字通りたった一人の【軍隊】と化した彼女の攻城砲が火を噴き、虎の全身を爆炎が踊った。
「グガァァァッ!!」
 しかし、爆炎の中から躍り出て来た虎は多少の焦げ目こそ付いているものの目立ったダメージは見受けられない。
 彼我の距離―――残り5m。
(流石に硬いな……だがこれならどうだ)
 それを皮切りに他の銃も一斉に火を噴いた!リボルバーのドラムが回り、機関銃から空の薬莢が雨あられと地面に落ちる。
 太もも、心臓
 彼我の距離―――残り4m。
 肺、首中央
 彼我の距離―――残り3m。
 脚第一関節、爪、
 彼我の距離―――残り2m。
 虎が脚を踏み外した。
 彼我の距離―――残り1m。
 レナは傍らに浮いていたリボルバーを一挺手に取ると撃鉄を起こした。
 飛び掛かってきた虎の首の中央に銃口を押し当て一気に全弾を撃ち尽くす!
 虎は空中で数秒間奇妙なダンスを踊らされると、そのまま墜落する様に地面に転がったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


 残るは二匹。
 最早これまでと思ったか、虎達は遂に、戦場に絶対の城壁として君臨していた白亜の塔を放棄した。
 宛ら風を受けなくなった風車がゆっくりと止まるように、白く染まっていた風の渦が徐々に透明度を増し、やがて背景に溶けるように消え去った。
 これは彼らの降伏の意思表示なのか。
 ―――否である。
「GOAAAAAAAAAAA―――!!」
 防御重視の迎撃体勢から完全なる白兵戦への移行であった。
 旋風の城壁と言う圧倒的な地の利を捨ててでも、せめて目の前の驚異だけは何としても撃滅すると言う殺意が伝わってくる。
 虎達は咆哮と共に、自らの周囲に三つの竜巻を作り出した。大きさと言う点では先程の巨大竜巻と比べるべくもないが、竜巻が虎の回りで円陣を組み、それぞれに車懸りの陣を形成している。
 そして彼らは一斉に、しかしそれぞれ違う標的に向かって襲いかかった!
 相対するのは何れも見目麗しい女武者。
 戦況はいよいよ、佳境を迎える事になる。
虎熊・月霞
これが軍神の計略なんだねぇ……流石というか、中々に厄介だねぇ。でも、陣形そのものに意味があるならー、一角を崩せば結構苦しくなるんじゃないかなぁ?じゃー少し頑張るかなー。

【POW】
厄介な回復能力に加えて竜巻を生み出す力もあるっと……うーん、面倒臭いね!まぁ無理に策を練るよりは真正面から行こうかなぁ。
という訳で竜巻ごと真っ二つに斬り捨てちゃおー。その首おいて……首が無い!えぇ~じゃあ魚みたく開いちゃう?虎のひらきってねぇ。
……おいしくはなさそうだなぁ。でも手間をかければ食べられなくも、無いかな?



(これが軍神の計略なんだねぇ……流石というか、中々に厄介だねぇ)
 風に煽られ、藤の羽織がふわりと揺れる。
 荒れ狂う旋風の中を柳の様に最小限の動きで立ち回るのは虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)。小さく分かれた分小回りが利く様になった竜巻の波状攻撃に晒される彼女は、一見防戦一方の様に見えるが、そのぼんやりとした瞳からは微塵の焦りも感じられない。
(うーん……中途半端に切っても回復しちゃうんだろうし、竜巻を切ってもまた産み出されそうだなぁ)
 月霞は状況に全くそぐわないのんびりした表情でんむ、と頷くと手にした野太刀【童子切・鬼血】を抜き放った。刃渡り四尺にも渡る長大な刀身をバジッと電流が走り抜ける。
「うーん、面倒臭いね! 竜巻ごと真っ二つに斬り捨てちゃおー」
 言うや月霞は目の前に迫った竜巻の一つに大上段から打ち掛かる!
 叩き潰されるように掻き消えた竜巻を踏み越え猛然と虎に迫る月霞!
「奔れ飛電、断ち斬れ紫電――雷切流の原点を魅せてあげるよぉ。その首おいて……首がない!?」
 紫電を纏う雷刃の一太刀は確かに虎の首を切り落とす筈であった。
 そう、虎に―――首があれば。
 必殺の一撃が空を切った瞬間を好機と見たか、虎が両足の爪を振り上げ月霞に伸し掛かろうとしてくる。
「ッ!」
 しかし、その身に流れる羅刹の血がそうさせたのか、月霞は咄嗟に刀を引き戻し虎の胸辺りに野太刀を突き立てていた!
「伊吹雷切流―――壱ノ太刀」
 再び刀身に宿る紫電。月霞は野太刀を握りしめたまま虎の下をスライディングで通過! 中央から真っ二つに両断された虎が、背後で左右に泣き別れした。
「虎のひらき一丁上がりー……おいしくはなさそうだなぁ。あ、いや、でも手間をかければ食べられなくも、無いかな?」
 文字通りアジの開きならぬ虎の開きと化した死骸を野太刀で突っ付きながら、今度は調理法に頭を悩ます月霞であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御劔・姫子
車懸かりの陣って、軍記の中だけの話や思ってたけど、うちの目で見ることになるやなんて…
敵の備えは万全やけど、この世界を守るため…御劔家第三十二代当主・御劔姫子、参りますえっ!

一撃で仕留めなあかんから、まずは隙を見つけなあかんなぁ…
竜巻の動きを【学習力】をつかって【見切り】、【残像、ダッシュ】で避けながら【力溜め】…うちの中での一番の大技に賭けるっ!

竜巻の動きは虎と連動してるみたいやなぁ…
それやったら動きの大きい攻撃を【おびき寄せ】、隙を見つけて【早業】と【カウンター】で…太刀による渾身の【なぎ払い】、これが【終乃太刀・都牟刈】やっ!

御劔の技で、この竜巻も斬ってみせるっ!

(※アドリブ等歓迎)



「ふふ、とうとう……あんさんだけになってしもたなぁ」
 残る虎は後一匹、それを待ち受けるのはその身で桜を体現したかの様な黒髪の女性。
 御劔・姫子(はんなり剣客乙女・f06748)は風に揺れる花簪を手で抑え、此方に向かってジグザグの軌道を描き突進してくる虎を見据えた。
 激しく交錯する三つの竜巻に囲まれたその姿はまるで極小の太陽系を思わせる。
(車懸かりの陣って、軍記の中だけの話や思ってたけど、うちの目で見ることになるやなんて…)
 しかし、それでも負けるわけにはいかない。自らの故郷たる世界の危機なのだ。
「この世界を守るため…御劔家第三十二代当主・御劔姫子、参りますえっ!」
 言うと同時、姫子は愛刀『巌太刀』を抜き放つと飛び掛かってきた虎の爪を打ち払った。

(一撃で仕留めなあかんから、まずは隙を見つけなあかんなぁ…)
 轟々と音を立て、風の刃が全方位から襲いかかる。姫子はそのことごとくを紙一重で避けながらも虎の動きの観察を怠らなかった。
 思えば彼らがまだ巨大竜巻の中に居た頃、風の向きには規則性があった。
 ならば―――一見出鱈目な軌道に見えるこれにも、もしや同じ理屈が通用するのではないか?
(………思ったとおりやわ)
 ビンゴである。三つの竜巻はそれぞれスピードが違うが、虎の進行方向によって回転の向きが変わっている。
 即ち、右に行けば時計回りに。左に行けば反時計回りだ。
 胸元を掠める旋風の一撃を仰け反って躱した姫子は、わざと大振りの一撃で虎を牽制すると、徐に身体を捻り、太刀を担いだ。
 
 ―――虎の動きが止まった。
 草原を挟んで相対する一人と一匹。
 その間を、戦いの余波を受けて切り飛ばされた雑草が風にのって通り過ぎる。
「GAAAAAAAAAAA!!!!」
 天に向かって顔のない獣が吼える。
 次の瞬間、虎の周りを回っていた竜巻が一斉に虎から離れていくと、三方から取り囲むように姫子に向かってきた!そしてその合間を掛け猛然と迫る虎!
 正に三位一体ならぬ四位一体の攻撃!
 そして―――その時、姫子の身体のバネに溜まった力も臨界点を迎えた。
「御劔の技で、この竜巻も斬ってみせるっ! これがうちの…御劔の全て…っ!」
 渾身の力で振り抜かれる三六〇度の水平斬りはしかし、タイミングを見誤ったのか虎にも、竜巻にも当たっていない。
 
 しかし姫子は構わずに残心を取る。
「これが【終乃太刀・都牟刈】や」

 彼女の言葉と、周囲に迫っていた虎と竜巻が水平に断ち割られたのはほぼ同時。
 そう、彼女が斬ったのは虎でも、竜巻でもない。
 虎のいる【次元空間そのもの】を斬ったのである。

「g……oa……」
 血糊を盛大にぶち撒け虎の死骸が草原に転がる。
 見上げた空には―――夏の青空が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト