エンパイアウォー⑦~祈恋怨歌
●軍神『上杉謙信』
「幕府軍との決戦より前に、居所を暴かれるとはな。
予知は躱せたと思っていたが、流石は信玄を阻んだ者達だ」
男は見据える。――戦場を、戦況を、熾烈な戦いを越えてくるであろう猟兵たちを。
「彼らは、私が食い止めるのが最良だろう」
導き出した最適解は、自らの出陣。
「私の名は上杉謙信。
私の得手は『人軍一体』。車懸かりの陣にて、お相手致そう」
十二本の毘沙門刀を纏い、高らかに鬨の声をあげる。
「ゆけ! 怨霊女武者ども!
我が常勝不敗の陣となりて、生ある者――猟兵どもを喰らい尽くせ!」
「応!!!!」
武将というには甲高い声、されど身のこなしに一片の隙もなく。
あるものは弓を構え、あるものは薙刀を構え、女性兵たちが円陣を敷く。上杉謙信を中心に不落の壁を築きあげ、怨嗟の壁が生ある者の行く手を阻む。
――戦乱の世、かつて護れなかった世のために。今こそ。
●グリモアベース
「猟兵さん、集まるっす! 軍神『上杉謙信』の居場所が解ったっす!」
今日も変わらず威勢の良い声がグリモアベースに響く。集まった猟兵たちに香神乃・饗は説明を始める。
「今までの交戦、お疲れさまっす。お陰で幕府軍は関ヶ原に集結したっす」
幕府軍はここからさらに山陽道、山陰道、南海道の3手に別れて進軍するのだが、
「黙って通してくれるわけないっす。
軍神『上杉謙信』が関ヶ原で陣を敷いて待ち構えているっす」
饗は、陣形を図示した紙を広げ、指さしながら説明を続ける。
「その陣形は、『軍神車懸かりの陣』っていう大層な名前の陣っす」
上杉謙信を中心に円陣を組んで突入してくる。まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させる陣形だ。
「相手どるのに一番最適な者を送り込んで、負傷したら壁の内側に入れて回復する。攻防一体、カッタイ陣形っす」
超防御型攻撃陣形といっても過言ではない、大層なのは名前だけではないのだ。
「この壁が邪魔っすよね、だから壁から倒していくっす! 今から壁の討伐戦にご案内するっす!」
上杉謙信を取り囲むのは『怨霊女武者』だ。薙刀術、弓矢、または落武者を召喚して攻撃してくる。数は片手でかぞえられる程だが、個々の戦力は大幅に強化されている。
「過去の合戦で非業の死を遂げた女性達が、平和な時代を生きられなかった妬みをぶつけてくるっす。でも、猟兵さんたちなら惑わされないっすよね」
ここまでの戦いを乗り越えたみんなの力を信頼してると、真摯な眼差しを送る饗。
「壁をぶち破るには、めっちゃんこ『強烈な1発』をぶち込んで欲しいっす!
1発で仕留め損ねたら陣の内側に庇われて回復されるっす。つまり半端な一撃は無駄打ちになっちゃうんっす」
大ダメージを与え一気に倒す必要がある、『一撃必殺の工夫や、一撃で倒せなかった場合の連携』が作戦の肝になるだろう。
戦場は野原、戦闘の隔たりになるものは特に無い。車懸かりの陣の前に転送を行う。
「謙信の想い人と言われた人たちって碌な亡くなり方をしてないんっす。
本人にその気が無くとも呼んで、いや、呼びあってしまったのかもしれないっす。
そうだとしても、添い遂げさせる理由は無いっす。猟兵さん、しっかり頼んだっす!」
ぱんと掌を打ち鳴らせば、紅梅の花が咲き乱れる。導く先は関ヶ原、天下分け目の合戦場が再び戦局の鍵を握るのか――。
ごは
このシナリオは藤野キワミMS「エンパイアウォー⑱~龍吼怨歌(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=12798)と同じ戦場です。
片方のシナリオのみの参戦でも問題ありません。
敵味方入り乱れての戦場です。「怨霊女武者」の軍勢を掻い潜って軍神『上杉謙信』を打ち倒してください。
このシナリオでは「怨霊女武者」を倒す場面を扱います。
一撃必殺! 強烈な一撃を叩き込んでください。
藤野キワミMS側のプレイングは確認できません。シナリオ間の連携はできかねます。ご了承ください。
このシナリオは1章のみになります。真の姿には戻れません。ユーベルコードの効果に含まれていても使えませんのでご注意ください。
【8月12日(月)午前8時31分以降にプレイングを受付】します。1度ほどプレイング再送をお願いしてしまうかもしれません。執筆具合はMSページにてお知らせいたします。
皆さんの熱いプレイングをお待ちしております!
強烈な1発! どかんとぶっ放してください!!
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軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
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第1章 集団戦
『怨霊女武者』
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POW : 局流薙刀術
【薙刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 局流早射ち
レベル分の1秒で【矢】を発射できる。
WIZ : 落武者呼び
【鎧武者】の霊を召喚する。これは【槍】や【弓】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:游月
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
※受付期間外に頂いたプレイングは全てお返しします。申し訳ありません。
(誤)全てお返し (正)全て受付せずお返し
吉備・狐珀
平和な時代を生きることが叶わなかったことは同情しますが…。
だからといって平和を乱して良いわけではありません。
負の連鎖を生まないためにも、ここで断ちます。
UC【青蓮蛍雪】使用。
作れる狐火全てを合体させ【属性攻撃】で更に氷結の効果を増幅させてぶつける。狐火には【毒】と【マヒ攻撃】も忍ばせ追加攻撃を。
倒し損ねた者がいても地面を凍らせて動きを封じて隊の入れ替えを防ぎます。
動けずいるところに人形の【破魔】の効果がある炎を【一斉発射】して追い討ちをかけます。
私の氷は私の任意で消すことができる。炎で溶けると思ったら大間違いです。
「平和な時代を生きることが叶わなかったことは同情しますが……。
だからといって平和を乱して良いわけではありません」
吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)は静かにたたずむ。眼前には非業の死を遂げた女怨霊と鎧武者たち。平和な時代を生きられなかった妬みを炎のように立ち昇らせ身にまとう。捨て置けば生者の命を奪い、新たな女怨霊を生む危険な存在だ。
「負の連鎖を生まないためにも、ここで断ちます」
凛と決意を固め、愛用のなぎなたを構える。
「何が平和よ、同情するなら命を置いていって。行きなさい、猟兵を討つのです」
声を合図に女怨霊を取り囲む鎧武者たちが向かいくる。
「言の葉のもとに」
鎧武者が刀で袈裟に斬りかかるのを、薙刀をくるりと回し石突で受け棒で押えて捕らえ、素早く薙刀を回し刃で袈裟に斬り返す。背後に迫る刃の気配に薙刀を頭上で回しけん制する。
「――魂等出で候」
ぼぅっと炎がともる。青い狐火だ、琥珀の周りにふわりと2つ浮かぶ。
狐火は喚んだものの、囲まれたままでは厳しい。刃で周囲をなぎ払うように一閃、倒されるもの、飛びのくもの、潜り抜けて斬りかかるもの、――1体に絞る、迫る刃を薙刀を正面で立てて受け止める。
追い討ちに再び胴に斬りかかってくるところを後方に跳び避けつつ、喚んだばかりの狐火をけしかけ焼き滅ぼす。
「手も足も出ないじゃない、猟兵とはその程度のものなの」
嘲笑うような女怨霊の声。そういわれても仕方が無い、鎧武者たちに行く手を阻まれ、近づくことすら出来ないのだから。
鎧武者の足元を薙刀の刃で薙ぎ、繰り出される刀を棒で受け流しながら、冷静に聞いていた。なぜなら、
「成しました。――青蓮蛍雪、凍てつく狐炎」
巨大な狐火が女怨霊の頭上に浮かびあがる。琥珀は喚んだ炎を合体させていた。自身に敵をひきよせ注意を逸らしている間に、狐火を合体させ最大火力の狐火を作り上げていたのだ。
「なっ、なによこれ! いつの間に!」
狐火に漸く気付き慌てふためく女怨霊。有無を言わさず頭上に墜ち、女怨霊を呑み燃え上がる、かのように見えたが、この炎は氷結の効果を増幅し、毒とマヒ攻撃を加えたものだ。青い炎に包まれた女怨霊の全身は見る間に音を立て凍り付いていく。青蓮蛍雪の威力は空気が凍らせるほど。冷えた戦場を一層冷やし、空気中の水蒸気を凍てつかせ細氷が戦場にキラキラと舞う。
「こんな、私の体が! 凍っていく!! 一旦撤退よ、立て直すわ! 時間を稼ぎなさい!」
鎧武者を盾に後方に退こうとする女怨霊、だが、
「逃がしません」
薙刀を一閃。一陣の風が戦場を吹き抜ける。
「―――っ、これは!」
目を見開く女怨霊。地表一面が氷に閉ざされている、無論、鎧武者も同じく足を凍りつかされ動きを封じられている。狐珀の冷気が地面を凍らせたのだ。これでは動けない、隊の入れ替えもできない。
この女怨霊が謙信の想い人なら、私と同じかもしれない。
私も兄と離れたくない一心で繋ぎとめた。でも――、
「ここに、戦場に、あり続けるべきではありません。
あなたの愛したものは、ここにはありませんから」
炎の雨が降り注ぐ。狐珀が連れている人形、狐面をつけた狩衣姿の男が炎を放ったのだ。破魔の力が込められた炎が追い打ちをかける。赤く燃える炎は琥珀の炎と対のよう。女怨霊はその身を焼かれ苦悶の声をあげる。
「愛したもの? 何の話? うつけ者め、氷漬けにしたところに炎なんて、これで動……」
「私の氷が炎で溶けると思ったら大間違いです」
女怨霊の言葉を遮る。放つ冷気を一層、冷ややかにして。ああ、私とは違うのですか。
狐珀の氷は狐珀にしか解くことができない。たとえ炎で焼かれても解けることはない。逃がすことなき氷の檻が女怨霊を捕らえ、その身を炎が焼き焦がす。
「私の氷は溶けません、さぁ砕けなさい」
「いやあああ! 謙信さまあぁぁっ!!」
謙信は動かない、女怨霊が叫ぼうと、焼かれようと、取り乱すことはない。炎が、大事な人を、焼いているのに。あの時と同じ炎、私とは……いえ、比べるべきではない、呑まれてはいけない。頭を振る、振り払う。炎に焼かれ消えていくさまを、目を逸らさず見つめながら。
――女怨霊1体撃破。
大成功
🔵🔵🔵
宇冠・龍
由(f01211)と参加
さて、軍神までの道のりも容易くはないですね
これほどの数を統べる将、油断なく進軍しましょう
とはいえ私は点としての火力に秀でた猟兵ではありませんから、強烈な一発は頼れる娘に任せます
ここはサムライエンパイア。ならそれに倣い【談天雕竜】で百の亡霊を武器の銃と共に召喚
「三段撃ち」を用いて迎え撃ちます
私は後方に下がって指揮。破魔と光属性を込めた弾で牽制
面による迎撃で敵を引きつけ、味方が存分に攻撃しやすい隙を作りましょう
万が一の保険として
仕損じた武者がいれば、破魔と炎属性を込めた弾丸に切り替え追い打ち
回復される前に燃やす尽くしてしまいましょう
宇冠・由
お母様(f00173)と参加
【七草仏ノ座】で30Mの燃える鬼に変身
この姿は時間経過で無尽蔵に火力が増していきます
避けられやすいという弱点も、結界や壁相手なら問題ありません
お母様が敵部隊を引きつけ釘付けにしてくださる間、十二分に火力を蓄えいざ進軍
10階建て相当の姿です。私の姿は隠しようがありません。私たちの作戦も筒抜けでしょう
しかし一度火が付いたら止まりもしません
全身地獄の炎のブレイズキャリバーですから、傷はすぐさま回復し意味をなしません
移動中も増していく火力、到着したら火炎剣を思いきり振りかぶります
全力を込めた一撃、地獄の業火で関ヶ原を上書きしましょう
「さて、軍神までの道のりも容易くはないですね
これほどの数を統べる将、油断なく進軍しましょう」
宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は娘に向けて語りかける。
「はい、幾ら敵が多くともお母様を守り抜いてみせます」
隣で頷くのは宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)、龍の娘だ。二人は手を繋ぎ女怨霊と鎧武者たちが待ち構える戦場に踏み込んだ。
「あら、今度は子連れなのかしら?随分と変わった子ね。でも、いいわねあなた、子供を授かることができて……」
龍は何も答えない、由も何も話さない。ただ眼前の敵を見据えるだけ。
子供を授かる。龍の子供はもう居ないのだ。喚び戻しても叶わなかった。哀しい過去を乗り越えてきた。
「羨ましい、妬ましい……ああ、ああっ! 奪ってしまいたい、お行きなさい武者ども! 奪い尽くしていらっしゃい!!」
そんな龍の心を露知らず、女武者は喚き散らし鎧武者をけしかけてきた。
「悪鬼百鬼と数えれば、七転八倒列を成す」
黒い竜玉を掲げ悪霊を喚ぶ龍。その数、百にも及ぶ。銃を携え3列に並ぶ。
「構え、撃ちなさい!」
一斉に火花を噴く。後方に控えた龍の号令にあわせ、銃弾が撃ちこまれる。
銃弾の雨に撃たればらばらと倒れる鎧武者。悪霊たちはすぐさま配置を入れ替え、続けざまに鉄砲を撃つ。鎧武者軍に切れ目なく降り注ぐ銃弾、まるで滝のように降り注ぐ。
「なんなのそれ?信長様の真似かしら?小癪な、いきなさい鎧武者!」
突撃を繰り返し、みる間に数を減らしていく鎧武者。まるで恨み嘆きをぶつけるだけのような無謀な前進を。
「過去を喚き泣くことしかできないかたに、負けるわけがありません」
面による迎撃で敵を引きつけ、味方が存分に攻撃しやすい隙を作る。龍の作戦は効果てき面だった。だが、龍の表情は硬い、悲憤慷慨している。こんな戦いは早くなくさなければ。話せば話すほど、戦えば戦うほど……。
「あなたの過去は変えられません、でも、未来は変えられます。――終わらせましょう。さぁ由、行きなさい」
「手加減は致しませんよ」
――火柱がたつ。
否、火柱という生優しいものではない。炎を纏った鬼が姿を現したのだ。高さにして30m、山のように大きい鬼が、唐突に出現したのだ。
「なっ、なにそれ! 私聞いて無いわ、こんな妖怪が居るなんて! この鬼、信長軍じゃないの?」
見上げるばかりの巨大な鬼にうろたえる女怨霊。そう、巨大な存在といえば妖怪だ。同じように扱われても仕方がない。
「失礼ですね。妖怪ではありません、猟兵です」
由だ。この姿は由が変身したものだ。自身の地獄炎を一層燃え上がらせコオニの姿に変身したのだ。
この姿は隠しようがない、溢れ出す力も隠せない。由が突破を狙うというのも明らかだ。だが、龍のお膳立てのお陰で、鎧武者たちは由の相手をする暇がない。突撃するなら今だ。
「何をしてるの?こいつを止めて!撃てーーー!!!!」
女怨霊の声が戦場に響く。命令を受け、由に銃口が向けられる。来る――おかしい、いつまで経っても着弾の衝撃はこない。
「たまには、護らせてください」
今度は龍だ。龍の悪霊たちが放った破魔と炎を纏う弾が、由に迫る銃弾を全て打ち落としたのだ。この悪霊を喚んでいる間は龍自身は攻められない、だが指揮官として提示する指示はとても的確だった。
「お母様、大丈夫です。私の体は――」
「いいから、行きなさい。今日は私が護ります、今日くらいは母親らしいことをさせてください」
由の全身は地獄の炎で包まれている。斬られようと、刺されようと、撃たれようと、その身に纏う炎が埋めてくれる。鉛弾のひとつやふたつ、由にとっては気にするものではないのだが、母の言葉に小さく頷く由。炎のに包まれ表情は解らない、それでもきっとその心は、ひと時の間母に包まれ満たされていたのだろう。
一気呵成に駆け、火炎剣を大きく振りかぶり、
「地獄の業火で関ヶ原を上書きしましょう」
――ッズズズズズズズシンンンンンン。
思い切り地に突き立てた。地響きが鳴り響き、地が揺れる。
「これくらい、受け止めてくれるわ! ――っ、ああああああああっ!!!」
女怨霊も只者ではない。携えた薙刀でその刃を受けたのだが、由の炎はその刃を真っ二つに叩き折り、体を引き裂き悲鳴も残さず焼き尽くす。
由の炎は一瞬で勝敗を決するほど熱く燃え盛った。鬼の姿は時間が経過するほど火力を増すのだ、龍が稼いでくれた時間により、その火力は充分、地獄の炎は女怨霊を焼いてなお満ち溢れるほど。蒸気が周囲に立ち込める。
消えゆく姿に龍は言葉を手向けた。
「――娘を、産めると良いですね。今度こそ平和な世で可愛い娘をその手に」
――女怨霊1体撃破。
大成功
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ヘザー・デストリュクシオン
平和な時代をねたむ?戦いがないのが平和なんでしょ?今まさに戦争してるのにねたむとか言われてもわけわかんないの。
変なこと考えずにわたしと壊しあおう?その方がずっと楽しいの!
首元のリボンを解いて速さを上げてジャンプやダッシュ、スライディングで素早く立ち回って矢が当たらないようにするの。
じゃまな落武者は先に壊す。わたしは強い人と壊しあいたいの!
薙刀で攻撃してきたらカウンターで反撃するの。
向こうの方が間合いは広いけど攻撃に当たりながら踏み込めば、こっちの爪も届くの。
マヒ攻撃と捨て身の一撃で全体重を乗せて懐に踏み込んで壊すの。
壊せなくても、マヒで動きが鈍ってる所を追撃しつつ他の猟兵に大声で応援を頼むの。
「平和な時代をねたむ? 戦いがないのが平和なんでしょ? 今まさに戦争してるのにねたむとか言われてもわけわかんないの。
変なこと考えずにわたしと壊しあおう? その方がずっと楽しいの!」
にこり。ヘザー・デストリュクシオン(白猫兎の破壊者・f16748)は、うきうき心を躍らせて愛らしい笑みを浮かべる。この戦場に『求める者』がいるのか。兎耳をピンと立て耳を澄ませ、見渡す。あのお姉ちゃんは、良いかも知れない。
鎧武者たちは他の猟兵がひきつけてくれている、今だ。女怨霊に向け駆ける。その姿はまさに脱兎のごとく――本来逃げ出す時の言葉だが、これ以上、適切に当てはまる言葉はない。
女怨霊と目線が交わる。
「わたしは強い人と壊しあいたいの!」
「猟兵の中にも『そういうのが』居るのかの。良いじゃろう、私が御相手仕ろうぞ。さぁ、いざ参ろう!」
女怨霊は和弓を射る一通りの所作を一呼吸で終え、弓を引き絞る。――離つ! 離つ! 離つ! 離つ! 離つ! 矢が降る、まるで雨あられのように。1秒にも満たない間に次々と矢が放たれ続ける。
「お姉ちゃん待っててね、すぐそこまで行ってあげるの」
鋭く伸ばした猫の爪で斬り、弾き、払い、受ける。腕を、腿を、腹を、頬を、矢が切り裂くけど構わない、そこに『獲物』がいるのよ。全ての矢は打ち落とせない、でも死に至る傷は本能的に解る、致命傷になりそうなものだけ打ち落とし、照準を合わせられないよう右に左に。兎の脚力を生かして、跳ねて、駆けて、跳んで、滑り込んで。
「(ああ、この矢は避けても首に――丁度良いのよ、リボンを外すのも、もどかしいわ。切り裂いて、私の首輪)」
首を逸らす、掠める矢に射抜かれ青いリボンが吹き飛ばされる。猫目を細めるヘザー、笑んでいるのだ。縛るものが一つ消えた、喜びに震えながら駆ける。赤い筋を残しながらも、一層軽くなった身は、更なる加速を許す。――さぁ、届いた!
「捕らえたの! 来たよ、お姉ちゃん!」
猫爪が弓を薙ぐ。猫目がギラリと光る、獲物を捕らえた肉食獣のように。
「フフ、なかなかやりおるの、じゃが――、」
真っ二つに折れる弓、だがその爪は女怨霊に届く前に止められていた。
薙刀だ。女怨霊は弓を捨て武器を持ち替えたのだ。柄部に食いとめられる、刃の気配に飛びのけば、ヘザーの居た場所を薙刀の刃が切り裂く。
くるりと空中で後転し着地するヘザー。猫兎の衣装の胸が薄く斬り裂かれる、避けたはずだが避け切れていなかったようだ。
「強いね、お姉ちゃん」
「どうじゃ猟兵、まだやるかの」
再び女怨霊の薙刀が迫る。ヘザーの右肩口に向け刃が振り下ろされる。今度は喰らわない、すかさず右拳で払いのける。
払いのけられるのも計算の上、その勢いを利用して加速する薙刀。ヘザーの首に石突が突き入れられる。両の拳を交差して受け止める。ああ、心地良いの。様子見はこれくらいにしよ。
「今度はわたしの番よ」
挑発するように笑むヘザー。
「面白い、見切ったとでも言うのかのう」
女怨霊は石突を引き、再び薙刀を回して刃で上段から斬りかかる。その刃を拳で叩いて逸らし、身を翻しながら踏み込んで裏拳を見舞う。火花が散る、その拳は石突で受けとめられた。再び翻された薙刀の刃がヘザーの胴を薙ぐ。爪を引っ込め身を沈めやり過ごせば頭を掠めるよう刃が通り抜ける、その瞬間を狙いすまし女怨霊の顎下から拳を打ち上げる。
女怨霊は身を逸らし突き上げられた拳を避けながらヘザーの浮いた足元を薙ぐ。身を後ろに倒して刃を避けるヘザー、そのままの勢いで後方宙返りで飛び退き、一度間合いを計る。
――ほぼ互角か。否、女怨霊の方が上手か。
互いの力を認めあい、じり、じりと好機を伺うよう、にじり寄る。次で決まる、睨み合う二人。
ひょうと一陣の風が吹雪の欠片を運んできた。その時、2人は同時に駆けた。
「もっと私を壊して! さあ!」
「望みどおり叶えてしんぜよう、存分に受けるが良いのじゃ」
突き出される薙刀、薙刀のほうが間合いは広い、先に届く。捕らえた、女怨霊の口に笑みが浮かぶ。だが、ヘザーは止まらない、その身が裂けても止まらない、胴に刃が刺さろうとも止まらない、身体が千切れようとも止まらない。この一瞬こそ待ち望んでいた時。強い相手に壊される、ああ、気持ちいい。今度は私の番。全身全霊を篭め懐に踏み込み、――壊す!!! 女怨霊の胴を貫き爪が生える。
「――お見事じゃ、りょ…へ……」
女怨霊が倒れる。膝をつき崩れ落ち消えゆく。
ごふり、ヘザーの口から血が溢れる。その一撃は刃が胴に刺さるのを代償に得た機会、捨て身の一撃だった。本能的に体を捻り僅かに致命傷を避けたとはいえタダでは済まない。女怨霊が消えると同時に体から刃が抜けた、鮮血が吹き出て流れ落ち猫兎の衣装を赤く染める。急激な出血により朦朧とする意識、ふらつく足元、多々良を踏む。だが、まだ覚めぬ戦いの興奮に酔いしれる。
「ねえ、次は? もっと、もっと私は戦いたいの」
白兎は紅に濡れて歪んだ笑みを浮かべる。
――女怨霊1体撃破。是を以て『車懸かりの陣』攻略完了也。
大成功
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