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エンパイアウォー⑱~森羅万象、車懸かりの刀陣~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #上杉謙信

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 ―――ああ、げに恐ろしきは越後の龍の車懸かりなり。
 車懸かりの陣、それはつまり上杉謙信を中心に、オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入、まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させるまるで台風が如き陣形。
 本来であれば途中で崩れるであろう超防御型攻撃陣形はしかし、名将上杉 輝虎、号して謙信がそのずば抜けた統率力をもって実現していた。
 そう、軍神、上杉謙信。彼の代名詞ともいえるこの陣形、これそのものが他の魔軍将の持ちうる先制攻撃の代わりの権能としてこの場にあった。
 即ち、『上杉謙信』あっての『軍神車懸かりの陣』。『軍神車懸かりの陣』あっての『上杉謙信』。
 彼は車懸かりの陣でもって、己の再生時間を稼いでしまう。つまりは、謙信本人と車懸かりの陣、双方の撃破が必要という事だった。
 そして今、君たちは仲間の猟兵の死力によって、台風の目、車懸かりの陣の中央。上杉謙信の元に来ている。
 周囲からの横やりは気にせずともいいだろう。上杉謙信を守ろうと不用意に別の動きを取れば、車懸かりの陣の崩壊を意味するからだ。何より……、
「ほう、来たここまで。猟兵達よ」
 周囲に浮かぶは十の刀。それぞれが「水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇」の属を顕す。それ即ち森羅万象。
「私の得手は『人軍一体』。それは確かに車懸かりの陣の運用を意味するが……」
 ゆらゆらと漂うだけだった十の刀がまるで車の如く、上杉謙信の周囲を回転し始めて、そして手に持つ真なる黒、真なる白の刃が構えられる。
「それはなにも、人だけに非ず。さぁ、猟兵達よ。刃を以て、車懸かりの陣をここにお見せしよう」
 そう言って上杉謙信は独り、然して小さな軍勢として君たちに相対する。
 周囲からの横やりは気にせずともいいだろう。周囲の敵兵が君たちの横やりに動く事はない。上杉謙信を守ろうと不用意に別の動きを取れば、車懸かりの陣の崩壊を意味するからだ。それに何より……、
「さぁ!毘沙門天の加護ぞある!!!!」
 上杉謙信の配下達が、猟兵に、凡百の徒に、我らの軍神が敗れるなどと、欠片も思っていないからだ。


みども
 どうも。みどもです。とりあえずシナリオ出し。本格的な執筆は土曜からになる予定。どんどん書いていく予定なのでよろしくお願いします。
 さて、今回の軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
 そういう事になってるので、私が出したのはこちら上杉謙信本人との決戦ですが、車懸かりの陣のシナリオの方にも振るってご参加くださいませ。
 戦闘開始時段階での消耗はOPの通り他の猟兵が道を開いてくれてるので特に気にしないでいいです。また、上杉謙信はUCにて先制攻撃を取ってくることはありませんので、先んじて降りかかる相手の攻撃への対処をプレイングに記載しないと絶対失敗するといった事はございません。ご安心ください。
 とはいえ上杉謙信は手ごわい相手。頑張って戦って頑張って倒しましょう。
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第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神羅・アマミ
武田に並ぶ名将と呼ばれた上杉!
妾が武勲を立てるにあたり、これほど相応しい相手もおるまい!

しかし一番槍としてやるべきことは、攻め入る切欠を僅かでも作ること。
さすればせめて刀の一本にヒビの一つも入れてやれるよう動く他あるまい。

コード『結髪』の発動により、高機動力でもってして「光」のフォトンブラストで狙うは、相対する属性である「闇」の刀じゃろうな。
相手が迎撃体制を取ってくることは容易に想像できるが、太陽の爆発にも匹敵する光子の奔流は爆炎にして爆熱!
属性が一つとは限らんものじゃろう!?
双方の手から限界までチャージしたブラストが狙う本命とは「水」と「樹」。
陣を掻き乱せばそれだけ後続のサポートとなろう!


真白・白夜
軍神…そんなとんでもない相手に僕達は勝てるのか…?いや、勝たないと!
アドリブ&協力OK

戦闘開始直後、サイキックブラストで【だまし討ち 先制攻撃】を仕掛けます!
「先手必勝!」

敵の動きが鈍った瞬間を利用して、ハンドガン・改の【スナイパー 誘導弾 クイックドロウ】で攻撃
「反撃の隙は与えない!」

敵が攻撃してきたら、残忍な人格が表に出、【念動力 氷結耐性 電撃耐性 火炎耐性 オーラ防御】で凌ぎます
『おい!お前一人で遊んでんじゃねぇ!俺にも遊ばせろ!』

俺に交代したら、拷問具で拘束、【鎧無視攻撃 串刺し 傷口をえぐる 毒使い】で、ダメージと毒を与えてやる!
『俺と遊ぼうぜぇ!軍神さんよぉ!』


月夜・玲
へえ、なるほど
軍勢との連携、確かにタフで厄介だね
でもここまで突破してこれたからには、私だって腕には自信があるもの
痛いの一撃お見舞いしちゃうよ?
さあ、勝負といこうか軍神!

●戦闘
【I.S.T.起動】を発動
《RE》IncarnationとBlue Birdの二振りを抜剣して、それ以外の装備をパージして身軽になって攻撃を開始しよう
素早さを活かして二刀流による『2回攻撃』で謙信へと何度も連撃を加えてあげる
神速の一撃、軍神に届けてあげるよ!

毘沙門刀は放射された軌道をよく見て、直撃しそうな攻撃は剣で『武器受け』してガード
浅そうであれば、『オーラ防御』で発生させたオーラの盾で軌道を逸らして対応

●アドリブ等歓迎


蒼焔・赫煌
軍神、軍神か!
すごいね、すごいとも!
でもさぁ……可愛いボクだって正義の味方!
負けないさ!

目には目を!
数には数を!
相手の動きが速いならとにかく矢をばら撒くよ!
しかも可愛いボクのヌエは降り注ぐ稲妻のサービス付き!
とにかくボクは攻撃を撃って、一回でも多く攻撃を当てるのを狙うよ!
そうすれば少しでも他に戦ってる皆の役に立つ!
ボク自身のダメージは【覚悟】の上、【捨て身の一撃】ならぬ捨て身の連撃の構えさ!
さあさあ、腕の一本や二本じゃあ可愛いボクは止まらないぜ!




それに神様だなんて、そんな名前の奴は嫌いだ
だって何もしてくれなかったんだから


【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】



「武田に並ぶ名将と呼ばれた上杉!妾が武勲を立てるにあたり、これほど相応しい相手もおるまい!」
 一番槍としてまずは軍神の前に立った神羅・アマミ。その襲い来る車懸かりの陣を前に、して勇ましい声を上げ、笑みを浮かべながらも、一つ。その頬から汗が流れる事を止める事は出来なかった。
(強欲ババァの相手したかと思ったら次は軍神とはの・・・)
 軍神上杉、その勇名は戦国の世で隆盛を誇り、そして没落した武家の出身であるアマミにすら、いや、そうだからこそよくよく知っていた。
 かつて歴史に消えたその名が今再び眼前にある。
(勝てるじゃろうか……)
 いいや、勝つのだ。眼前に迫る刃の軍勢を前に、かぶりを振り、一つ高らかに宣言する。
「いやさ、一番槍としてやるべきことは、皆が攻め入る切欠を僅かでも作ること!……」
 言うや否や、アマミの周囲をソードビットが舞う。
「刃を浮かべて操る業が、専売特許と思うでないぞ・・・!《とくと見やれ、ガラクタより組み上げし妾の華麗なる剣舞!せめて一思いに骸の海の藻屑へと還してやろうぞ!》」
 その数合計51本。対する相手が浮かべる刃は僅か、10本。数はこちらが圧倒的に勝っており、
「《死ねーッッ!!!》」
 だからこそアマミは、必殺の意思を以て剣群を謙信の陣に激突させた。
(嘘じゃろ!?)
 そして数合の打ち合い、その結果は、拮抗だった。しかし、51本と10本。数で圧倒的に開きがある中で拮抗し、己の傷をつかせない上杉の車懸かりの陣はなるほど、超防御型攻撃陣形の看板に偽りはなかった。
 それどころか互いに傷がつかずとも、僅か、僅かずつであるが上杉謙信が前進している。そうして前進した結果、軍神の持つ白黒二刀の間合いにこちらが捕えられれば、すぐさま二刀にて切り伏せられるだろう。
(どうする・・・確かにこのまま拮抗した状況を作っておけば、味方が加勢に来るじゃろう)
 とはいえ長引けば、
(場合によっては妾が斬り捨てられる……と)
 ならば、
(よし、捨て身じゃな。せめて刃に一つ、罅でも入れてやろう)
 決断と覚悟は速かった。
「<第肆歩"目録">や」
 言うが否や、手に持つ反重力ユニットの主機を装備した和傘に、装着された円筒状の装置が五分割され、そしてソードビットが力を失ってゆき、地に落ちてゆく。
「好機!!!」
 叫ぶや否や、これから始まるであろう攻撃の属性を見て取った軍神が、すかさず闇属性を持つ刃を放射してくる。
「ハッ!肉を斬らせて骨を断つ……じゃよ?」
 迫り来る刃を眼前に、しかし避けようともせずその体に、両手足首と髪とに五分割された円筒状の装置が装着され、両手足には鉄靴と籠手が展開される。
 そうすればすかさず迫り来る刃を避けようと回避行動に移り
(とりあえず後は避けながらこいつをオーバークロックさせればよいな。まぁ、幾らか太刀は入るじゃろうが。死ななきゃ安い安い)
 そうして闇属性の刀を避ける。当然の事として追尾してくるそれはしかし想定済み。故に次撃に気を付けようと回避を試みながら反重力装置をオーバークロックする準備をしようとすれば、背後から襲い掛かる刃の群れ。
「しまっ!?」
 闇属性の刀を避けるのに意識を向けさせられていた。だからこそだろう。とても避ける余裕などなく、
「危ない!!!!」
 声が響き、刃に電撃が襲い掛かる。アマミを助けたのは、当然の事ととして第三者だった。襲い掛かる電撃によって制御を失った刃の陣とアマミの間に黒い影が割り込み、涼やかな音と共に刃が叩き落されてゆく。
「新手か・・・」
 一端仕切り直しというように刃を己の傍らに引き戻した上杉とアマミの間には、白髪の少年と、黒に一房青い色を流す少女が立っていた。
 真白・白夜と、月夜・玲だ。
「忝いのぅ・・・助かったのじゃ」
「大丈夫ならいいわ」
 体の各部に4振りの刃を、<I.S.T.>を装備した玲が涼し気にそう答えれば、
「良かったです。けれど、ありがとうございます。僕達も、参戦出来た」
 と心配そうに言うのが真白だった。
「うむ・・・では忝いついでに二人共、妾が彼奴の刀を多少なりともどうにかしよう。しかし、それには少し時間が必要じゃった。お主ら、その時間を稼いでくれないかの?」
 言葉に、玲と白夜が双方向き合って頷き、
「前衛は、私が」
「後衛は、任せてください」
「なら僕は、牽制だね!!!!!」
 二人の言葉に、快活な声が重なる。
 声は、アマミと玲、白夜の後方からだった、そのまま軍神の頭上に暗雲が立ち込め、
「《神鳴く夜は畏ろしい/ヌエ》」
 言葉と共に雷鳴を伴った矢が降り注ぐ。
「ムッ!?」
 攻撃自体は不意を衝いたものだった。故に軍神は焦ったような声をあげながらしかし、純水の嵐を生み出して危なげなく対応する。雷は純水で絶縁し、矢は嵐そのもので巻き上げて無効化する。
「なるほどなるほど……軍神、軍神か!すごいね、すごいとも!」
 手に黒塗りの大弓、<雷夜啼鳥ヌエ>を持ちながら深く頷くのは蒼焔・赫煌だ。まさか全く、こちらの攻撃を全て無効化してしまうとは。
「けれど皆で力を合わせればどうにかなる!特に可愛いボクが刀をある程度ひきつけるから」
 頑張ってね?笑顔と共に赫煌が小首を傾げたのが合図となった。
「言われずとも!」
 まずは玲が上杉へと向かってゆき、
「ありがとう!」
 白夜がそれに追随する。
「どういたしまして!」
 ブンブンと手を振り、改めて赫煌は弓を番える。眼前には軍神、そう。神だ。神が、居る。
(そんな名前は、嫌いだ)
 視線に力がこもる。それと同時、思い出すのは、『肉』の感触、『血』の味。
(そんな、何もしてくれない存在なんて)
 想いは言葉となって、呪を成す。
「《一気に狙い撃っちゃうんだからっ!》」
 再びの暗雲。そして雷鳴を纏った矢が降り注ぐ。そして今度は上杉を狙わずに、周囲の刀たちへと降り注いでゆく其れは、確実に玲と白夜へ向かう刀を減らしていた。
「ありがたいわね・・・!」
 道中、玲と白夜に迫り来た刃は四刀。他は全て、赫煌の雷矢が抑えていた。射出されるそれは鋭く、しかしそれくらいの数なら、此処まで軍勢を抜けて来た玲の武器で以て敵の武器を受け止める技術と、オーラ盾による受け流しの技術があれば可能だった。
「さぁ、さあ、勝負といこうか軍神!」
 <《RE》Incarnation>と<Blue Bird>の二振りを振りかぶる。息もつかせぬ連撃はしかし、
「火よ」
 白と黒の二刀に阻まれ、それどころか傍らにある四刀、即ち「火・樹・水・闇」の内、火の力で以て起こされた嵐に身を焼かれようとする。
「させない!」
 しかしそれを許す白夜ではなかった。
 早打ちの技術は相手の機先を制し、そのうえで着実に敵を狙う技術と誘導弾が、確実に相手の隙を打ち抜く。
「目障りな・・・!」
 もとより自然現象に刀の属性を混ぜ合わせる技は制御が難しく暴走しやすい。例え銃弾のような針の一刺し程度の物でさえ、受ければ制御を失い暴走する可能性がある。玲の連撃を受け止めながら、そのようなリスクを甘受する事は出来なかった。
 代わりに火と闇。その二つを差し向けて白夜への牽制とする。
 そうすれば今の所、眼前の玲を相手にすればよい。
「ふむ、お主、強いな」
 白と黒の剛剣が頭上から襲い掛かる。まともに受ければ押しつぶされるばかりだ。 だから白の刀を半身になりながら避けて、手に持つ二刀で以て黒の刀を受けて、弾き返す。
「どういたしまし・・・て!!!」
 そのまま玲の刃が襲い掛かれば、上杉の振り下ろした白刃の柄から、その手が離され、勢いのまま刃がさらに振られて丁度刀を逆手に持つ状態に。そのまま再度力強く柄を握り直し、柄で玲の刃を受け止める。そして横振りに黒刃が振りかぶられ、玲がそれを避ける為に大きくバックステップを踏めばそれに追撃するように水と樹の刀が襲い掛かってくる。どうにかそれを弾いて、隙を見せないように軍神を見やれば、
「ほう・・・よく避ける」
 未だ傷の無い美丈夫が見下すように大地に立っていた。
「煩いわね」
 そういう玲の胴体は浅く斬られている。避ける際、両方から襲い掛かる二刀に気を取られ、僅かに黒刀を避けるタイミングを逸した。そのせいだ。
(仲間がいなければ負けていたわね・・・これは)
 味方によってその戦力を引きつけられている状態でこれだ。先ほどから僅かずつ、玲の体には傷が増えていた。
(やっぱりもっと体を軽くしないと……)
 とはいえ、それはアマミの策が結実してからだ。切り札を切るタイミングを逸してはならない。
 そして上杉本人と対峙していない白夜の方には少なからず余裕があるのだろう。刀を避けながら、白夜から電撃が上杉へと向かって放たれる。
(今・・・!)
 容易く防がれるそれに僅かなりとも意識を向けたその瞬間、再び玲が距離を詰めた。
 刻一刻と変わりゆく戦場、その中で一つ、佇む者が居た。神羅・アマミだ。瞳を閉じ、そしてその体の各部、鉄靴と籠手に頭部のデバイスから燐光が散る。
「……よし」
 成った。今やその身が持ちうる反重力装置、それがオーバークロック状態となったのだ。余剰エネルギーが光として溢れる。
 そしてその光がアマミの体をも蝕み、力を与える。まるで体そのものが力になったかのよう。視界が赤く染まる。鼓動が早まり笑みが深まる。
 だから、
「は。はは……はははは。玲女史―――!!!!避けろー!!!!!!」
 自然と歓喜の声が上がり、そして叫びながら超高速で軍神へと突貫する。
「死ねーッッ!!!」
 喜びは、光となって軍神へと直撃した。



「死ねーッッ!!!」
 その叫びを聞いた時、首裏のチリチリとした感覚にしたがい、玲は何も考えずに飛び退った。瞬間、光が飛び込んでくる。
「むぅ…‥!」
 初めて軍神が耐えるような声を上げる。光を纏ったアマミの一撃を、どうにか、といった風情で二刀が受け止めている。これが《結髪/ケッパツ》。毎秒寿命を縮める代わりに高速移動を可能とするアマミのUC。
 そしてそのまま、力を込めて拳を振り切り、軍神上杉を、この戦い初めて後退させた。そしてそのままの勢いで再びアマミが突貫する。一番の脅威は彼奴と見て、上杉も白夜に対応していた火と闇の属性の刀を呼び戻す。
 そして徐にアマミの放つ光と相対する闇の属性の刀を放射。それに対して体より溢れるフォトンブラストの力と爆熱を以てアマミも相対する。
「ハハハハ!闇ごときでこの力を止められるとでも!?」
 鼻血を垂らし、血走った眼でアマミが叫ぶ。
「愚か」
 だからそこに、放射されるフォトンブラストの光を迂回するように、水と樹の属性の刀が襲い掛かった。
「愚かはそっちじゃ!!」
 そしてそれこそがアマミの狙い。体から放出されるそれではない、両手に限界まで圧縮されたフォトンブラストの爆熱が、それぞれの刀を襲った。
「な!?」
 そしてその結果として、
「刀に罅・・・!」
 折るには至らず、しかし確かな瑕疵が宿る。
(おいおいおいおいおい!お前一人で遊んでんじゃねぇ!俺にも遊ばせろ!)
(あ、ちょっと!)
 その疵を見た瞬間、白夜の体の主導権が、『僕』から『俺』に代わる。
「ハァッハー!!!俺と遊ぼうぜ軍神さんよぉ!刀は武士の魂なんだってなぁ!?じゃあそいつを殺してやるよ!!!」
 言うが否や、罅の入った水の刀へと突貫する。もはやすべて力を使いきって膝をついたアマミなど知らぬとでもいうように。火が襲い掛かる。知らねぇ。んなもん耐えればいいだけじゃねぇか。
 闇が襲い掛かる。うるせぇ。『俺』を誰だと思っていやがる。多重人格のサイキッカー様だぞ。んなもんオーラで防御してやる。
 そうして今までのどこか引いたような戦い方から一変、一気に距離を詰めて、
「うごけぇ・・・うごけよ俺の血でぇ!!!」
 起動した拷問具が、「水の刀」に食らいついた。硝子に、金属に罅の入るような音がする。
 そしてその傍ら、
「……!」
 玲もまた同様に動いていた。すかさずこちらは「樹」の刀へと向かってゆく。こちらには直接上杉が対処しようと、白と黒の刃が迫る。だから、
「I.S.T、パージ!」
<アクティブ>
 瞬間、手に持った二刀以外の全てのI.S.Tがパージされ、動きが一気に加速する。 敢えて今までI.S.Tを装備したまま戦っていたのこの為だ。そして一気に加速した玲の動きととらえられる、黒と白のニ刀が空しく空を切り、
「取った……!」
 玲の刃が振りかぶられる。
「殺したぁ!!!!!!」
 拷問具の咢に力が籠められる。
「水の刀」と「樹の刀」、二刀が折られるのは、同時だった。この戦いにおける、軍神上杉謙信へと明確な戦績。
「おらぁ!」
「まずは二つ……!」
 確かに明確な戦績だった。しかし、だからだろう、僅かに油断した。
 そして将は、将たるものは、兵が例えどれ程死すとも心を動かされる事などあってはならず、だから己の十刀の内、二刀が折れようとも、上杉謙信に動揺など一切なかった。
「お主ら!危ない!!!」
 力の入らぬ膝にどうにか力を入れてアマミが駆け寄ろうとするのと、襲い掛かる白黒二つの剛剣を玲と白夜がそれぞれどうにか受け止めるのは、同時だった。
「あっ……!」
「ぐぉっ……!」
 二人共踏ん張りきれずに大きく吹き飛ばされる。そしてそれに巻き込まれてアマミも同様に。三者とも受け身も取れずに大きく吹き飛ばされる中、
「好機・・・!」
 そのまま追撃に移ろうとする軍神の足を止めたのは、
「させないよ!!!」
 赫煌の雷矢だった。
 今度は再び上杉と八に減った刀全てにめがけて雷の矢が降り注ぐ。先ほどと同じように対処はされども、刀が減った事で、嵐の勢いが減じた。即ち、
「さっすが皆だね!!!」
 僅かなりとも、嵐を抜けた矢が降り注ぎ、軍神へと傷を作る。それそのものは浅くとも、その矢に込められた雷の力は確かに、軍神の刀を握る力を弱くしていた。
「ガシャドクロ!」
 叫びと共に、骨鎧が展開して3人を受け止める。見ればそれぞれに消耗が激しく、一端引くべきだろう。見れば、謙信も窮鼠猫を噛む事を警戒して追撃してこない。ならば
「ここは引くべきだね……頼んだよ、皆」
 後に続く仲間たちの気配を感じながら、赫煌は3人を連れて一端離脱した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

神元・眞白
【SPD/割と自由に】
綺麗な人。機会があればこの世界の事、色々聞きたかったのだけれど。
立場が違えばあるいは。今はやる事をお互いにしないと。そんな訳で。

見た目は剣士。でも周りの武器があの感じだし、魔法剣士ってところ?
相対してみてあとは出方を見てみよう静か、動か。
飛威、出方が分かるまでお相手を。無理せず引くときは引いて。

動く刃、速い動き。それならこっちは迎え撃とう。
飛威と連携を取りながら「待ち」になるのは目立たない様に演技。
マカブルで受けて私は倒れたふりを。変装用の血糊も用意しないと。
飛威は時間差で射出を。綺麗な攻撃だし私もいつか、真似してみよう


夷洞・みさき
骸の海の住人が神の加護を、ね。
まぁ、カミサマなんてどこにでもいるものか。

配下の信頼…信仰かな、は厚い様だし、そこを崩せばその綺麗な形も崩れるんじゃないかな。

狙い:敵ユーベルコードの暴走による、配下や敵自身も天変地異に巻き込む。

行動:使用する天変地異の属性を観察
死、冷気、水気、海に近い属性、自然現象が発動した際に自UCを上被せ、制御をより難化させ暴走させる。

この海水はちょっと特殊だからね。

うまく暴走による混乱が為せれば強化した身体能力で【恐怖】を周囲の兵卒に撒きつつ主敵を狙う。
禊潰しきれない場合は他の戦闘者と相性の悪い刀に対して破壊を狙う。

送った潮が返ってきたのかもね。仇だけど。

アレンジ絡み歓迎


リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
森羅万象、ですか……奇遇ですね。
私もすごく似た技を使うんです。

貴方が振るうのが刀なら、私が振るうのは……積み重ねた知識です。

・戦闘前
先制攻撃無し、堂々とした方のようですし
少し……言葉を交わしたいです

・戦闘
グリモワール・ロゴストームを使用
発動条件は……十分満たしているでしょう。

本棚から無数の蔵書を全て展開し
種類だけなら相手と互角以上であろう、属性魔法の嵐を一斉に叩きこみます
相手の天変地異と真っ向勝負!

打ち勝てないようなら最後の賭け
展開中の蔵書を一冊掴み
履いている「わぁぷパンプス」で相手の真後ろへワープ(視界が悪ければ眼鏡の透視機能仕様)と同時に
魔導書から最後の一冊分の一撃を至近距離で発射します



「そう、綺麗。綺麗な、人」
 僅か、体のそこかしこから血を流す白衣の美丈夫の前に、次に立ちふさがったのはこれもまた、白い少女。深窓の令嬢、神元・眞白だ。
 できれば、聞きたかった。オブリビオンは歪んでいようともまさしく過去より呼び出された存在だ。即ちそれはこの世界の事をまたよく知っているという事で、眞白には今もまだ、メモを取り出して書き連ねたい欲望があった。
 けれどそれは今、やるべきことではない。かぶりを一つ振って、金色の符を放り投げる。空を舞ったそれが裾が長いフード付きローブを羽織った人物を描き出し、空中に留まったその肖像がひときわ輝き、召喚門として展開すれば即ち―――
「飛威」
 眞白の言葉と共にそこには黒髪のメイドが存在した。主の言葉に応じるように、敵に見事なカーテシー。
「では、人形師。神元・眞白。どうぞよろしくお願いします」
 まず向かってゆくのは飛威だ。手に持つ双刃を一方は順手、一方は逆手に。姿勢は低く。
(まずは静か、動か。出方を見る―――)
「飛威、無理せず引いてね」
 戦闘用人形に頷く余裕はない。刀の2本が折れたとて、未だなお敵の刃軍は未だなお健在。そら、毘沙門刀が襲い掛かる。
「我が軍勢を前にしてただ一人とは愚か・・・疾く、滅べ」
 未だなお健在の火の属性の刃が迫る。そしてそれを囲い込むように残りの六刀も。 それと同時、本人もまた高速で接近し、例え八刀、避けられようと、残りの二太刀で人形を必ず断ち割る必殺の布陣。
 けれどそれは、
「や、それはないんじゃないかな」
 横合いから軍勢を崩したのは車輪だ。大きな車輪。<七咎潰しの大車輪>。6つの魂を宿したそれを、七人目、夷洞・みさきが振るう。そうして乱したのは襲い掛かるウチの四刀。然して軍神上杉は即座に目標を変更。無事な四刀を、みさきへと差し向けた。
 確かに飛威への包囲網は緩んだが、今度は思いっきり車輪を振りかぶって態勢の崩れたみさきへと、刃が迫る。
 そしてそれは、
「させませんよぉ!!!」
《 術式広域展開……マジカル・マギアル・・・・・・リバリアル!》
「魔導障壁、発動っ!」
 呪詞(ことば)と共に、迫り来る四刃とみさきの間に展開した魔導障壁が展開し、刃の勢いをそのまま跳ね返す。
「助かったよ」
 軽い言葉と共に、みさきと、そして飛威の両者は眞白と、そして新たに表れた女性、マギア=ウィゼルーク・リネット・博子の立つ場所まで一端下がる。
「新手か……」
 出方をうかがっているのだろう。八刀を傍らに浮かび上がらせ、謙信がこちらをなんの感情も浮かんでいない目で見据えていた。
「ヒッ……」
 知らず、博子の声が喉奥から出てくる。 
 白の美丈夫。まるでこちらをなんとも思っていないかのような瞳と、何より、その両の手に持つ刃が、かつてを思い起こさせる。白と、黒。
 裏を取ったと思ったら衛星砲にて打ち抜いてきた恐ろしい白き騎士。こちらを駆けだしといっそ慈悲すら感じられる一撃で打ち倒した呪詛を纏いし黒き騎士。
 知らず、両手を胸の前で握りしめる。あれから少し経って、自分は、前に進めただろうか?不安が胸を打つ。いや、大丈夫。先んじて、日野富子だって皆と倒せた。だから大丈夫だ。それに今は・・・
「森羅万象、ですか……奇遇ですね」
 言葉を交わしたかった。依然として、相手はこちらの言動に何かを感じいった様子はない。だからこれは自己満足だ。相手の出方をうかがう態勢に合わせて、こちらの言葉をあえて待ってくれる味方達にも少し申し訳なく思う。けれどこれは、
「私も、すごく似た技を使うんです」
「貴方が振るうのが刀なら」
 ひらり。手に持つ魔導書を、<魔導科学万有論総説 上巻>を開く。
「私が振るうのは……積み重ねた知識です!」
 言葉と共に振るうは超常の力。空間に無数の本棚が展開。
「『天と地の間に満ちる万象とは、言葉と意味にて解かれるもの。即ち、論理として書に、書き記されるべきものなり』」
 ひとりでにその書庫から数々の本が抜き出され、頁が乱舞してゆく。
「『そして今この場、我が書庫にはその半分。さぁ、書よ。開け万象の一頁。然して己の正しさを証明せよ』」
 乱舞したページが、それぞれバラバラに、好き勝手に属性魔法を巻き起こして行く。それは万象の半分。されど種々の雑多な属性魔法は、それだけで相手への対処困難な攻撃と化す。
「『来たれ、論理の嵐!』」
 それが最後の号令だった。それを聞き、嵐は敵へと向かってゆく。
「《グリモワール・ロゴストーム》…!!!!!」
 それが戦闘再開の合図となった。
 嵐を先頭に、みさきと、飛威、そして今度は眞白もまた敵へ向かって疾駆する。
 幸い、属性魔法の嵐は、氷の津波、炎の嵐などの毘沙門刀が引き起こす超常の現象に対抗できていた。つまり軍神上杉謙信への道は開かれており、
「……どうする?」
 疾駆する道すがら、みさきが目的語の無い問いかけを眞白にする。
「割りましょう」
「その心は?」
「まず倒せるか分からない。仮に倒せたとしても、毘沙門刀が残っていたら倒したことにならない、なんて話になったら意味がない」
「なるほど分かった。まだまだ味方も居る。それでいこう……」
 みさきが荒れ狂う超常現象に目をやり
「僕は氷。君は?」
「その場でてきとう・・・んっ」
 徐に並走する黒髪メイドから『適当すぎます』とチョップを喰らいながらも、眞白は言葉を続ける。
「・・・とりあえず敵の太刀をUCで受け止めるから、どういう攻撃をしてくるか次第ね」
「分かったよ。なら僕からいこう。流石に3本も折られたら何がしかアクションがあるだろう。そこを、頼んだ」
「ええ」
 コクリ。白い少女はやはりどこか、感情の無い表情で頷いた。
 そうして話している内についに接敵。歓迎の言葉は無く、ただ白と黒。二振りの剛剣が襲い掛かる。
 何も言わずそれぞれが左右に分かれ受け止め、戦闘が開始された。
「それにしても、骸の海の住人が神の加護を、ね!」
 黒の剣を弾き返しながら面白いじゃないか、とみさきは嗤う。いやさ、カミサマなんてどこにでもいるもんだ。
 数合、ミサキと眞白はそれぞれ左右に分かれ、謙信と打ち合っていた。お互い以前から面識があるわけでない。だからこれはつまり、お互いの腕をそれぞれが見合う為の時間。
「任せるよ!」
「ええ」
「どうぞ、ご随意に。みさき様」
 これなら二人に任せられる、と一端みさきは、白黒二人からめいめいに声を受けながら上杉謙信から離れる。
「さて……いこうか」
 そして周囲を見渡し、目当ての物を見つけたその眼は、妖しく光っていた。
「『彼方より響け、此方へと至れ』」
 それは津波だ。氷の津波。博子の属性魔法と拮抗するそれを見据える。
(出来れば、水であればよかったけれど……)
 言っても栓の無い事。呪(ことば)と共に、磯臭い匂いがみさきの足元より立ち上がる。そしてそれは水気を持ち、知らず。知れず、氷の津波に、そしてその中央に位置する氷属性の毘沙門刀を抱き込むように広がってゆく。
「『光差さぬ水底に揺蕩う幽かな呪いよ』」
 ちら、と上杉謙信に相対する眞白と飛威を見やる。流石に二人。拮抗していた。しかしそれが見かけだけなのを知っている。剛剣はそう何度も受け切れるものではない。遠からず、限界が来るだろう。けれど大丈夫。それまでに
「『我は祭祀と成りて、その咎を禊落とそう』」
 そう、それまでに、呪詛の水気は、氷の嵐を捕えたのだから。
「《浸食領海・潮騒は鳴り響く/シンショクリョウカイ・ワタツミ》」
 言葉と共に、一瞬で氷属性の毘沙門刀が制御していた筈の氷の津波が暴走する。唸りを上げ、氷の津波が暴れ狂うのだ。
「ああああ!!!!!これは、これは負けますよ!!!!」
 数多くの属性魔法を放ち、汗だくになりながらどうにか拮抗していた博子が焦ったような声を上げる。
「いや、大丈夫さ」
 半分制御は乗っ取ったと、みさきは笑みを浮かべる。
 そして氷の津波の中、暴走したそのただなかで、過剰に氷を生み出し、そしてどうにか制御を取り返そうとより力をひねり出そうとした氷の毘沙門刀は、そのキャパシティーを越え、あっけなく
「さようなら」
 折れた。そうしたなら制御は完全にみさきのものとなり、氷の津波はそのまま瀑布となって、周囲で戦っていた兵を襲う。
「ムッ!?」
 毘沙門刀どころか周囲で戦う兵達にも被害が及んだ。その事実は流石に上杉謙信の、この戦い初の動揺を誘った。
 ならばその隙を逃す眞白ではなく、
「飛威」
 二人のコンビネーションが襲い掛かる。
 まずは飛威の二連撃。思わず仰け反り、胴が開く。
 そこに懐に入り、叩き込まれようとするは、眞白の、符術。
「ヌン!」
 しかし、それに対抗するは軍神上杉の無意識の動き。達人の無意識程恐ろしいものは、ない。無意識のまま、仰け反った半身の先の手に持つ刀を離し、筋肉の動きで無理やり体を撓める。いつの間にか、『光』の速さで手に収まった毘沙門と刀を振るえば、
「あっ・・・」
 血が、舞う。倒れ伏したのは、眞白だった。
「眞白君!?」
 まさかの大きな負傷。みさきは焦って駆けだした。
 それを尻目に、容赦なく追撃の手を止めず、謙信がトドメに光の毘沙門刀を振るう。
「容赦はしないのですね・・・!」
 本来であればもっと時間差を置いて攻撃したかったがしかし、猶予はない。故に再び振るわれるそれに放たれるのは、《オペラツィオン・マカブル》。毘沙門刀の備えるものと全く同質の閃光が光の毘沙門刀を横から打ち抜き、罅を入れて軌道を変える。
「間に合った……!」
 その隙にミサキが眞白を抱えて回収。飛威と共にある程度謙信から離れた位置に。
「大丈夫かい!?」
 声を掛ければ、
「安心なさい。血糊よ」
「……びっくりさせてくれるね」
 ごめんなさいね、そう言って眞白が抱き留められた状態から立とうとすれば
「あら?」
 コフ、再び吐血。ふと下を見れば想定より浅いとはいえ、確かにそこには斬られた跡があった。
「ああ・・・これは、なんて。綺麗な」
「眞白君!?」
「マスター!?」
 想定外の事態に、飛威とみさき、2人して驚く。その隙を見逃す上杉謙信ではなく、高速接近し、罅が入りながらも光の毘沙門刀を振りかぶる。
 想定外の事態に気を取られ、飛威とみさき、2人して反応が遅れる。もはや。上杉謙信の刃を阻むものはない。
 ……そう、ただ一人。彼女を除いては。近接戦闘の素人であるが故に。その害意もまた鋭く洗礼されていなかったが故に、『取るに足らぬもの』とこの戦いの中で見逃された一瞬の害意が、
「ちょいああ!!!!」
 <わぁぷパンプス>で真後ろに転移した博子が魔導書を両手に掴み叩き込んだ一撃が、丁度後ろに振りかぶった光の毘沙門刀を捕え、割った。
「きさ・・・!?」
「・・・!!!」
 詠唱省略。《忘却祈願・我は我等なり/ボウキャクキガン・シチニンミサキ》によって生み出された6つの霊が謙信の動揺に穴を開け、そのタイミングで今度こそミサキは眞白と博子を抱え、飛威と共に大きく距離を取った。
「もう・・・むりぃ・・・」
 先ほどの一撃で体力を使い果たしたのだろう。肩で息をする博子に、傷を負った眞白。みさき自身もまた、相手が引き起こした自然現象を暴走させたことで、結構な消耗を得ていた。しかしその結果、
「光と氷、二本、か。上々だね」
「そうね」
 同意するのは相も変わらず口の端から血を流す眞白だ。
「ともあれ、僕達は撤退しようか」
「そうね」
 大丈夫。まだまだ味方は居る。これ以上の追撃を受けぬよう、警戒しながら3人は撤退していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る

『人軍一体』将に刃届こうと陣乱れず
それだけの信を得ているわけですね
どれだけ強くとも臆するわけにはいきません
その首頂戴致します

[ステラ+ケイオス]剣槍形態:伸縮自在、変則二刀流も
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
<念動:オーラ>纏い行動補助と耐性強化

遠距離では刀の車懸かりが有利
手に持つ二刀こそ恐ろしいですが、接近戦挑みます
<早業:高速詠唱>《縛鎖》
召喚し続ける鎖で刀を弾き逸らし防ぐ、一刀でも縛れれば行幸。
込めた<破魔の呪>で刀が宿す属性の力自体の弱化狙う。
それでも届かなければ、十の刀受ける覚悟
鎖を二刀の対処に回し、せめて渾身の一撃を…


リューイン・ランサード
とても強そう、僕なんかで何とかなるのかな<汗>。
でも先に進まないといけないので頑張ります!

謙信さんの持っている刀は全て異なっていて全て強そうですが、どれも金属製の刀には変わりありません。
ビームシールドに【磁力の属性攻撃】を付与して超強力な磁石と化し、翼を広げて【空中戦、シールドバッシュ】で空を飛んで攻撃。

謙信さんは十二刀で攻撃するでしょうが、それらは全て超強力な磁力を発するビームシールドに吸い寄せて、ビームで破壊します。

身体に当たりそうな攻撃は【盾受け、第六感、見切り】でビームシールドで受け、それを潜り抜けた攻撃は【オーラ防御】で受けます。

そして謙信さんに接敵して、UC:震龍波を打ち込みます!


黒金・菖蒲
※アドリブ大歓迎

人の身をして神と呼ばれた人物か。
成程、流石の陣形だ。
止めるのは容易ではない。
なれば、止めるには核を断つしかあるまいよ。
さあ、相見えようか。

そちらが十二の刀ならば、こちらも応えよう。
――十重に二十重に、釼舞
総じて三十五の刀で相手をしよう。

私もそれなりに速さに覚えはあるが、それでも適うまい。
故に、第六感を働かせ、刹那程の動きも逃さず見切り、先を読み、残像で翻弄し、阿摩羅程の隙も逃さず、カウンターで切りかかろう。

それでも押し切れないのなら、搦め手と行こう。
それは剣戟の最中に唐突に。
得物の振りに関係なく、私の視界の内ならば両断する。
防御も回避も許さぬ一閃――

――涯無



「『ステラ』、『ケイオス』ユニゾン」
 《レディ》《私をご所望かしら?》
 現れるは武装を創生する星の如き核、星剣『ステラ』、そしてそれを喰らい、混ざり合うのはドラゴン、『ケイオス』だ。二者は混ざり、絡み合い、やがて優美な装飾を持つ槍剣となり、そして分かたれた。両端に刃を持った槍剣は二つに分かれ、変則二刀流。
 そしてそれを両手に持ち、疾駆するは月宮・ユイ。六に減った浮遊する刃が迫る。
「なるほど、まさに『人軍一体』。将に刃届こうと陣乱れず。それだけの信を得ているわけですね」
 そして今、眼前に迫る刃すら、その数を減らそうとも威容は変わらず。ならば、
「どれだけ強くとも臆するわけにはいきません」
「マキナ」
〈イエス。マスター〉
 電子音声が応え、電脳空間の情報が検索される。
〈共鳴・保管庫接続正常、能力強化。対象情報取得……エラー。『ウロボロス』による情報解析率60%。行動予測、不能〉
「変数に第六感による行動予測を代入。アクションマップの形成」
〈アクティブ。全知覚強化による第六感による行動予測強化の上アクションマップを形成。オーラによる防御を加味したうえでの六刀による攻勢防御率、60%〉
〈毒刀によるダメージを含め、全快状態状態を100とし、対象に接敵するまでに60%ほどコンディションが減少します。実行しますか?〉
 分かっていた事だ。敵は未だなお強い。けれど、そんな分かりきった事、どうしたというのだ。だから、
「アクションマップ。レディ……その御首、頂戴致します」
 一切臆さず、スピードも落とさずに襲い掛かる刀へと突貫してゆく。
「いやどうしてそこで止まらないんですか!!!ああもう!!!!!〈シールド!!!〉」
「『十重に二十重に』」
 少年は焦ったように、男は静かに。
 駆け抜けるユイの前を行くように、シールドが舞う。磁力を帯びたそれは確実に刃の軌道を逸らし、そこに刃体三尺三寸、柄七寸足らず。京反り大切先で波紋は濤乱刃地蔵帽子の漆黒の刃を持つ日本刀、その数計三十五本、それが殺到してユイへと向かうのを防いだ。
 リューイン・ランサードと黒金・菖蒲だ。
「うひぃぃ・・・とても強そう。僕なんかで何とかなるのかな」
 とリューインが額に汗を浮かべる横、トレンチコートの偉丈夫は黙して語らず。一歩踏み出した。
「人の身をして神と呼ばれた人物か」
 既にユイは上杉謙信の元へ『弾着』し、戦いを繰り広げている。その後を追うという事はつまり、今もなお襲い掛からんとする六つの刃を相手にせねばならぬという事で。
「成程、流石の陣形だ」
 数が減ろうとも、だからこそそれに適した陣形はある。特に、だ。毒。毒の刀。これが残っているのがいけない。傷が付けばその端から体力は減ってゆく。軍神と戦ううえで、その体力消耗は致命的な隙となるだろう。
 今までは刀自体の数が多く、だからこそ毘沙門刀天変地異も、水や光といったもっと破壊力にたる刀を中心として力を顕していた。こちらも刀に対しては『とりあえず折る』というおおざっぱな対応になっていた。
 しかし、数が減ったからこそ露わになる脅威もある。
 そして今、毘沙門刀は、風を火を、土をまき散らしながら、その中心に毒の嵐を巻き起こしていた。触れれば冒され、倒れ伏す毒。遅効性故に今の今まで猛威を振るわなかったそれが、今明確な脅威となっている。
「減ったなら減ったなりに、か。恐ろしいものだ……なれば、止めるには核を断つしかあるまいよ」 
 見据える。今の今まで、上杉謙信本人へのダメージらしいダメージは、矢傷のみだ。そろそろ、相手にも手傷があっていい頃だろう。
 巌のような体が静かに、歩みゆく。滑るような動きは確かに滑らかだがしかし、特段早いという訳でない。
 だからこそ種々の属性を孕んだ嵐に対するには、
「……」
 35本の刃、殺がお相手仕る。
 嵐の進路を第六感で見切り、残像を以て翻弄し、一歩一歩進んでゆく。直撃せずとも嵐である。火に巻かれもする、闇にも襲われる、されど気にせず、ただ、毒にだけは一切掛からず、進んでゆく。
「てぇ!待ってくださいよ!」
 巌のようなその背中に、どことなく己の傷を顧みずに成すべきを成せと自分に言った男の言葉を思い出しながら、リューインもまた駆ける。
 そして翼を広げ、空に駆ければ
「あっ!うわっ!!ちょ・・・いたっ!!!痛い!!!土!!!土が・・・!」
 嵐ならばどうにかなる。しかし土の刀を中心とした嵐から周囲にやたらめったら飛び出した土塊は、確実に羽を、体をいたぶって来た。
「ああもう!なら!」 
 フローティング・ビームシールドに付与された《磁力の属性》を強制的に引き上げる。現在残る毘沙門刀の属性は『土・火・薬・風・毒・闇』。この中で一番磁力と親しい属性を帯びていたからであろう。嵐の中から、土の刀が飛び出してくる。
「『世界に遍在するマナよ、全てを破砕する波と化し、僕の拳に宿れ・・・!』」
 刀はあくまで嵐の制御と属性付与を担っていたのだ。嵐の中心から引き抜かれれば、再びそれを巻き起こすのには時間がかかる。そうはさせじと、シールドに引き寄せられる刀に向かって、超振動を纏った拳を振り下ろせば、
「《震龍波/シンリュウハ》!!!!」
 容易く刀は、割れた。
「黒金さん!」
「心得た」
 嵐の圧が一つ減り、男の歩みはさらに進む。見れば、白と黒の斬撃に相対する少女の連撃圏まで、あと少しといったところだった。
<体力低下。撤退を推奨>
「出来ないわ……ね!」
 刃を振るう。剛の剣が返される。押し負け、どうにか逸らし、しかし衝撃が体を打ち据える。
 月宮・ユイは既に体のあちらこちらに傷を負っていた。特別、ユイが弱いわけではない。他の者であろうとこうなっていただろう。ただ、ユイが上杉謙信と接敵した中で、最も長い時間接敵していたからこそこうなっただけの事。
 例え車懸かりの陣が無かろうと、骸の海より出でた魔性の男は、その二刀で容易く猟兵の一人や二人、打ち倒すだけの力を持っていた。
当初は拮抗していた打ち合いも、一合一合刃が重なりあう毎に、剛剣を受け止める手が痺れ、例え避けようとも風圧で付けられる僅かな傷が、徐々にこちらの体力を削ってゆく。
(どうにか、どうにか)
 状況を打開するにも、自分だけでは難しい。だから、その『あと一人』を待つ。
 そしてそれは、来た。
「さあ、相見えようか」 
 刀の嵐を抜け、その手に本来の『己』を握る黒金が、あと数歩、といった所でいきなりその歩みを加速する。
 まさしく縮地、と言っていい程の速さはしかし
(やはり、対応するか)
 手に持つ黒き刀をユイへと向けて牽制とし、その手に持つ白き刀をこちらの迎撃に回す。分かりきっていた話だ。こちらの速さを以てしてなお、あちらの方がなお早いと。故に取る戦法はカウンター。迎撃として振るわれる刃を眼前に、第六感を働かせ、見切り、振るわれる刃を前にその射程の僅か、鼻先を掠るくらいにまで近寄った所で急制動。
 その刃が通過した瞬間、さらに間合いを踏み込み斬りかかる。
「・・・ヌッ!?」
 上杉謙信とて消耗している。当初その身周りを浮遊していた毘沙門刀の数は、十。己の身を守ってなお、攻めに転じる事も出来る数だった。しかし今やその数は半数まで減り、ましてやリューインと黒金への攻めとして毘沙門刀を使っていたとなれば、
「ひとつ」
 その身に浅く、刃の傷がつくのも道理だった。
 多く上杉謙信の体が飛び退る。この戦いにおいて、軍神上杉謙信、初めての大きな後退だった。
 互いに口数が多いわけでもない。黒金とユイは間髪入れずに無言のまま上杉へと向かってゆく。浅くとも、矢傷以上の確実なダメージが入ったのは今、この瞬間だ。好きを逃さない。前を、前だけを見る。お互いに、その意識があった。
「危ない!」
 だから前を向く二人へと警告の声を放ったのは、未だに黒金の35本と共に刀を中心として引き起こされる超常の嵐に対処していたリューインだった。
「……マキナ!!!!!!」
<術式解凍強制執行。共鳴・保管庫接続正常。能力強化。概念制御、情報収集、縛鎖強化更新最適化を停止。形而下における詠唱を破棄。永久の縛りを……>
 迫り来たのは毒の刀だ。不意打ちで迫り来る一方を確実に戦闘不能にせしめんとするそれを、生み出された 《概念兵装『縛鎖』/シーリング・バインド》が受け止める。
 しかしあくまでとっさに生み出されたそれに、強く縛る力はなく、刀を絡め、受け止めたその瞬間から砕け散り始める。
 それでも無理やり射出されたその勢いを絡めとり、いなし、砕け散りながらも後方から投擲されたそれを前方へと、『黒金の視界の先』へと放り投げる。その力は、聞いていた。だから、
「黒金さん!!!!!」
「―――しかり。『何処へも』」
 それは具象。刀というヤドリガミが至る境地の一つ。刃とは即ち、斬るものである。断つものである。
 そしてそれは、刃を使う者の意思あってのものである。本来刃に意思はなく、使う者の意思が刃に伝わり、刃が使う者によって斬る対象に触れ、物は、斬れる。
 ならばもし、刃が、刃そのものに意思があり、刃そのものが『私はそれを既に斬っている。その感触を知っている』と強く念じたならば。
 『刃が斬れたと心の底より思ったものは既に斬れている筈である』。それは夢想。 子供の絵空事。しかし斬撃の意思が、その夢想を押し通す。然して世界は軋みを上げ、浮世に、純粋な斬撃の概念を絞り出す。
 それ即ち、
「―――そう、《涯、無/ハテ、ナシ》」
 瞬時、視界に収まったユイの鎖、毒の毘沙門刀、軍神上杉謙信その全てが、破断した。
「……ふっん!なるほど?」
 鎖が消え、毘沙門刀が綺麗に真っ二つになり、そしてそれでも、軍神上杉は立っていた。その身体に負った袈裟懸けの傷から血を流しながら。他二つに比べて浅い。
 それだけ軍神という概念が強かったという事なのだろう。
 迫り来る二人を見やり、徐に残る全ての毘沙門刀を引き戻す。後方より迫り来る脅威に、さしものユイと黒金、双方ともに足を止めざるを得なかった。
 そして超常の嵐をどうにか凌いだ二人が前方を見れば、既に軍神上杉はその場に居なかった。
 この戦いで初めて、逃げたのだ。逃げを打った、のだ。あの軍神上杉が。それは確かな戦果ともいえる者で、ひと先ず二人は、空より来るもう一人の仲間を見やりながら、安堵の溜息をついた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルーナ・ユーディコット
白寂・魅蓮(f00605)さんと

魅蓮さん、あなたもこっちに来たんだ
力を貸して欲しい
私が先陣を切るから、あなたがキメて
私ごとやっても構わないから
あいつを倒せるくらい派手なのを
魅せてよ

対謙信、私は速さに速さで対抗する
私は魅蓮さんが技を発動するまでの時間を稼ぐよ
時間稼ぎといっても、様子を窺って時間を稼げる相手じゃない
差し違える覚悟はする

孤狼【彗星】を発動して敵の刀を衝撃波で捌くのを意識しつつ挑む
私に当たるだけならともかく、この刀を後ろに飛ばされるのだけは防がないと……たとえこの体で受け止めてでも

未来へ生きたいと願い戦う仲間の道は、未来を使ってでも戦うと決めた私の覚悟で繋げてみせる


白寂・魅蓮
ルーナ・ユーディコット(f01373)と

今回は君も同じ舞台で戦う事になるなんてね、ルーナ。
一人じゃ太刀打ちできそうにない相手だし、共闘して倒そう。
…私ごと、か。これはとびっきりのやつで決めていかないとな。

対謙信戦、ルーナが時間を稼いでいるうちに相手の刀の動き、攻撃の隙を【見切り】で注視しよう。
仕留められる一撃を与える…そこに集中しないと。

ルーナが攻撃のチャンス与えてくれたと同時に【早業】【2回攻撃】を混じえた【幽玄の舞「泡沫語リ」】を蹴りと一緒に放つ。

女の子が未来の命を削ってまで与えてくれたチャンスだ。狼二人による軍神討ちの大舞台、とくとご覧あれ!



「力を貸して欲しい、魅蓮さん」
 少女の言葉は端的で、そしてだからこそそこに込められた想いは、万感だった。
 『軍神上杉謙信が傷を負って後退した』、それは難攻不落のようであった軍神上杉もまた、確実に倒せる敵であるという事を示しており、事実もはや彼に従う毘沙門刀は、4本。
 逃げ去る謙信をまず見つけたのは、ルーナ・ユーディコットと白寂・魅蓮のペアだった。
「回は君も同じ舞台で戦う事になるなんてね、ルーナ」
 同じ旅館、花の涯で顔を合わせている仲だった。まさか戦場で顔を合わせるとは。初めての事だったがしかし、確かに一人で太刀打ちできるような相手ではない。魅蓮に否は、なかった。
「私が先陣を切るから、あなたがキメて」
 並走していた二人、ルーナの方がより深く、前傾姿勢を取る。
「私ごとやっても構わないから」
 その体を青い炎のような魔力が包み込む。
「あいつを倒せるくらい派手なのを」
 ―――魅せてよ。
 それが、少女が少年に願う事だった。
 瞬間、爆発的にスピードを増したルーナが、逃げて落ち着いた所で傷を癒そうとする軍神に、彗星が追いすがる。
「『命燃やす孤狼の疾駆』……」
 軍神の傍らには『薬』の毘沙門刀。あくまで直接戦闘をする気はなく、それを使って治癒するための時間稼ぎがしたいらしい。
 飛び出すのはそれ以外の三つの刀。そして、その中には『闇』が含まれていた。
 吹き荒れる。闇が。光差さぬそれが、上杉謙信と、そしてルーナ・ユーディコットを覆い隠して行く。もはや不可視。
 きっと闇の主として上杉謙信はこの闇の中ですら総てを見通せるのだろう。だが、
「人狼を、舐めるな……!」
 その血の臭いは覚えている。だからこそルーナは、
「『宵闇を切り裂く彗星と知れ』!!!!!」
 《孤狼【彗星】/コメット》―――その青い輝きは、宵闇を切り裂いて、鮮やかに瞬く。
 『何か』へと突貫してゆく彗星が、敵の場所を教えてくれる。時々、その流星の軌跡が不意に曲がり、跳ね、地面に伏せ、そしてまた飽きもせず、そして怪我すら気にもせず、再び『何か』へと突貫してゆく。
 それは彗星の意思だ。意地だ。未来へ生きたいと願い戦う仲間の道は、未来を使ってでも戦うと決めた、彗星の、少女の、覚悟。
 そんな少女の意思を見て、少年は、男は、
「無様を見せる訳にはいかない」
 滾らぬはずもない。
 故に、これより舞うは夢物語。少年が一つ、所作をスッと取っただけで、この場は今、血生臭い戦場から、優美な舞台へと姿を変える。
 舞が、花びらが、踊る。
 ただ所作のみでこの場に舞台を幻視させる程のそれは、まさしく神への供物、神楽。そしてこの神楽もまた、ただ一つ、究極の神楽へと至る道筋なれど、今はただ少女の、彗星の示す軍神への道筋として舞が進むごとに闇へと静々と、進んでゆく。
 そして闇に入れば、そこは完全な暗闇だ。けれど恐れる事はない。なにせ彗星が、その命を削りながら瞬いてくれるから。
 こちらが闇に入ってから、彗星の動きがさらに激しくなる。軍神上杉だけでなく、その毘沙門刀にも攻撃を加えているのだ。総ては、自分に対して攻撃が行かない為に。
「だから、それに報いないと」
 その言葉と共に、舞より一層激しさを増す。
「『―――どうか心行くまで、溺れて、融けていただきます』」
 言葉と共に、黒き蓮の花弁が、闇に溶けるように現れる。そして、その瞬間を見計らう。
「―――見切った」
 それは、彗星の攻撃によって、最も四つの毘沙門刀が近寄る瞬間。即ち最大効率で攻撃が出来る瞬間。
「狼二人による軍神討ちの大舞台、とくとご覧あれ!」
 魅蓮の言葉と共に、演目《幽玄の舞「泡沫語リ」/ユウゲンノマイ・ウタカタガタリ》は結ばれ、黒き蓮の花弁が、毘沙門刀と上杉謙信に、一斉に襲い掛かった。
 肉を斬り裂く音、金属が引っ掛かれる深いな音と、
「そこだぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」
 彗星が、ルーナ・ユーディコットが一つ、刀をたたき割る音が重なった。
 闇が、晴れる。その瞬間、魅蓮が近寄っていた上杉謙信に蹴りが、炸裂する前に炎が舞った。毘沙門刀のそれだ。
「危ない!!!」
 間一髪、ルーナがタックルして、その炎の圏内から魅蓮を逃す。
 もはや言葉なく、その隙に上杉謙信は離脱していった。
「クソッ取り逃がした」
 悔しそうなルーナに対して、少し申し訳なさそうに魅蓮が声を掛ける。
「けれど、ありがとう」
「……ごめんなさい!そういうつもりはなくて……!」 
 そこかしこ、傷を負った姿に、先ほどまでの勇猛さと、今の普段より少しテンションの高い姿のギャップに、少し笑みが浮かぶ。
「けれど、役目は果たしたさ」
 蓮の花弁は、着実に上杉謙信本人と、そして毘沙門刀に傷をつけていた。その証拠に、刀より放たれた炎は、確かな威力はあったが、先ほどよりも弱いものとなっていた。加えて、闇の刀は既に折られた。残るは3本。決着は、近い。
 
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天御鏡・百々
『軍神車懸かりの陣』とは凄まじき統率力よ
しかし、陣には仲間の猟兵が対応してくれておる
しからば、我らは全力を持って軍神を討つとしよう

先手を取ってこないならば……こういう手はどうだ?
『上杉謙信』を我が本体たる神鏡に映し
『鏡の中より出づる者』で『上杉謙信の鏡像』を呼び出そう

貴殿は確かに強い
しかし、それが仇となることもあるのだ

鏡像では勝てぬとしても、ある程度は拮抗することは出来よう
正面から鏡像の謙信を挑みかからせ
我は側面に回って挟撃してくれよう
真朱神楽で、敵の刀の合間を縫って刃を届かせよう(鎧無視攻撃5)
我が刃は一つでも、込められ想いは負けはせぬ!

●アドリブ連携歓迎
●本体の鏡へのダメージ描写NG


シズル・ゴッズフォート
―――ケンシン・ウエスギ
資料では義を重んじる将と聞きましたが、骸の海に堕ちれば彼ほどの人物でも和を乱す戦に加わるのですか……

……であらば、「仕方のない事」です
無辜の民の敵は倒さねばならぬ故に
(微笑みの中に、無意識に凄惨な気配を滲ませて


強者の圧に身の裡に潜む獣が呼び起こされたのか、戦闘開始前に龍と虎の因子を活性化
騎士刀と楯を手に、常とは違い攻撃と位置取りに専心。防御は二の次

怪力のままに刃を振るい、楯はバッシュ用の鈍器扱い
無敵城塞はギリギリまで隠し、此処ぞという時に

戦の術理こそ確かに残るものの、謙信という強敵に呼び起こされた修羅の性のままに戦う姿は最早獣と言って差し支えなく……


非在・究子
こ、今度は、ぐ、軍神の、登場、か。ゆ、有名どころ、だよな?
つ、使って、くるのは、12本の、刀を使った、1人、車懸かり、か。こ、攻防一体の、大技、だな。
……ぐ、ぐひひっ。な、なかなか、楽しそうな、アクションゲーだ、な。ここは、正統派に、ゆ、UCで、TASさんの、力を、借りて、華麗に、ヒット&ウェイを見せて、やる。
……か、刀と、本人の連携が、厄介そう、だから、TASさんに、攻撃と回避を、任せつつ、毘沙門刀に、【ハッキング】を、仕掛ける、ぞ。
し、支配権を、奪うことは、出来ない、だろうけど、連動を、妨害出来れば、無敵の陣形に、隙を突かれる、はずだ。一瞬、あれば、攻撃を、ねじ込むには、十分な、隙だ。



「―――ケンシン・ウエスギ」
 ユラリ、傷付いた軍神、上杉謙信の眼前、進路を阻むように立つ3つの影。そのうち、まず口を開いたのは、もっとの背の高い蒼き騎士、シズル・ゴッズフォートだった。
 シズルは悲しかった。とてもとても、悲しかった。とてもとてもとても、悲しかったのだ。本当に。
 何せ眼前、疵のついた『薬』の刀でどうにか自分の身と、そこかしこ刀身に疵のついたまだ無事な3本、折れて力をほぼ失おうとする7本、それを回復させようとしながら移動する軍神、上杉謙信は、義を重んじる将と聞きいていた。
「それが、骸の海に堕ちれば彼ほどの人物でも和を乱す戦に加わるというのですか!!!」
 悲痛に訴えかける姿はまるで悲劇のヒロインというようで。
「そ、そんなにおどっ驚く、ことか・・・?」
 非在・究子は少し一緒に来たことを後悔した。そりゃ上杉謙信といえば有名どころの軍神だ。とはいえそんな真に迫った悲しみ方をしないでも……
 そう思ってる内に隣の騎士はさらにヒートアップし、
「……で、あらば。『仕方のない事』です」
 そう、『仕方のない』事なのだ。『騎士』として、和を乱す存在は『排除』せねばなるまい。
「ムム……?これは、何やら邪なる気配?」
 知らず、大きく笑みを浮かべたシズルに、どことなく違和感を感じたのは天御鏡・百々だ。清廉なる神鏡のヤドリガミは、その獣性を見逃すことはなかった。しかし、それよりも早く、
「『仕方がない』故に、今ここで!!!潰させて頂きます!!!」
 俯いたシズルの頬が上がる。強者の圧に身の裡に潜む獣が呼び起こされたのだろう。活性化した龍と虎の因子が身体能力を跳ね上げ、
「いざ!!」
 防御など一切考えない動きで、シズル・ゴッズフォートという城塞が、射出された。刃をやり過ごし、炎をかいくぐり、風の中を突き進む。先ほどまでなら刃の属性が混ざった嵐を進む事など出来なかっただろう。しかし今、その刃に疵を負い、力を減じた今なら、それが可能だった。
 そして、今まさに白と黒の二刀と相対するその姿には防御だの、相手を引き付けるだのと言った考えはまるでなく、ただただ、打ち倒す為の動き。
「おっおい!!さくっ、さくせっ、作戦は!?」
「シズル殿!?」
 シズルが足止めし、究子が浮遊する毘沙門刀の動きを制御して、百々の鏡にて打ち倒す、その作戦が前提から崩れた。
「あっ・・・クソッ……クソッ!これだから現実は、くそげー、なんだ」
 とはいえ、仲間たちの働きもあったからだろう。既に毘沙門刀はその多くが折れている。ならば攻めの姿勢で行くこと自体は間違っていないのだ。
 それに、【ハッキング】する刀の本数が当初より少ないのなら、やりようがある。
 前髪に隠された瞳が胡乱な輝きを帯び、鋭さを増しながら、究子は百々に声を掛ける。
「もっ百々、百々ちゃん。やるぞ。い、いける。ぐひひひっ……ダクソが、SAKIROになっただけ、だ」
「…‥‥究子殿がそう言うなら付き合おう。では、我は手筈通り?」
「あっああ。す、隙をみて、頼む。刀っ刀、はどうにかするから」
 何度かグリモア猟兵として究子を送り出した身だ。その言葉を信じようと、百々もまた、駆けだした。

「なるほど、手ごわい、な」
 まるで獣の如し。獣なれば狩ればよい。容易いものだ。なれどその膂力、その殺意、侮りがたし。白黒二刀を振るいその攻撃をいなしながら、軍神上杉はシズル・ゴッドフォートをそう評した。
 剛刀二刀をいなし、しびれる手に無理やり力を込めながら、刃を振るい、盾で押しやり、狙うはただ一つ。上杉謙信の命のみといった風情。
「ああ!ああ悲しい!貴方程の方が!!!こうも獣のように堕ちようとは!」
 嘆くシズルの言葉はしかし、多分に喜色を含んでおり、
「これではどちらが獣か分からぬ、というもの」
「それはわたしに対する侮辱ですよ!」
 より一層力が強まった。歓喜の顔。まさに謙信の命しか見えていないといった風に血に酔うそれはしかし、
「この謙信ばかり見ていては、命を亡くすぞ?」
 瞬間、そのシズルの背後より『薬』と『火』と『風』の毘沙門刀が迫り、打ち出される。
 が、
「ム?」
「なっ?」
 不思議な事が、二つ起った。
 まず一つ、十全に上杉謙信の威を受けて動くはずの毘沙門刀の、動きが鈍い。
 そして二つ目、シズル・ゴッズフォートの体が本人の意図しない形で動いた。
 結果として、鈍い動きの毘沙門刀はシズルを刺し貫く事叶わず、そして刃が迫り来る前に、大きくバックステップする事でシズルは毘沙門刀の脅威を逃れる事が出来た。
「ぐっ、ぐひ・・・ぐひひひひ、。どうにか、出来たな」
 額に汗を浮かべながら笑うのは究子。【クラッキング】によって、毘沙門刀の制御とシズルの動きを制御したのだ。
 3本に1人だけとはいえ、かなりの労力を使った。これがもし上杉謙信が万全の状態であれば、僅かながらでも毘沙門刀の制御を奪うのは困難だっただろう。知らず、息をついた。
「邪魔しないで……もらますか?」
「ひぃ!?」
 そしてそれが面白くないのはシズルだ。今の今まで愉しんで、いや。和を乱すオブリビオンに堕ちたかつての名将を倒すことに必死だったのだ。それに水を差されたのだ。知らず、声も固いものとなる。
「シズル殿!仲間内で相争う場合ではありませんぞ!」
 そしてそれを止めるのは百々だ。毅然とした態度にシズルも息を一つ、吐く。確かに、周りが見えて無さ過ぎた。背後から迫る刃にすら気付かぬ失態。なるほど、もしそのままであれば倒れ伏していたであろうことは明白だった。
「……失礼しました、助かった。究子殿。さっきのは?」
「ひっ・・・ぐひひ、クラッキング、現実を、リアルをくらっ、クラッキングしたんだぞ」
「……はて」
 騎士にはよくわからなかった。
「動きの補助と心得ました。些か今のわたしは、前しか見えない。改めて、頼めますか?」
「あ、ああ。いいぞ、じゃあ。いくからな?」
 後方、究子が再び【クラッキング】の構えを取り、そして今度はシズルに並ぶように百々が薙刀を構える。
「当初とは予定が少し狂ったが、手筈通りに、いくぞシズル殿!」
「心得た!」
 再び、上杉謙信へと相対する。
 戦いは、拮抗していた。いや、僅か、猟兵側が一見押していた。相手は当初よりも大きく消耗し、頼みの綱の毘沙門刀すら既に数を大きく減らしている。
 対して猟兵側は、【クラッキング】によって究子の介入を受ける事で、間接的にそのUC、《T.A.S.》の影響を受けて攻防一体の動きをより洗礼させたシズルに、その間隙を縫うように流麗で、かつ鋭い薙刀の冴えを見せる百々。
 そして厄介だった毘沙門刀の動きを制御する究子と、お互いが補いある理想的なメンバーとなっていた。
 だが、
 だがそれでも、
((一撃が、きつい……!))
「き・・・きいてなっ、きいてないっぞ!!!!縦シューティングゲーはきいて、ない!」
 白と黒の二刀の剛剣はあまりに重く、なるほど確かに毘沙門刀による車懸かりの陣は軍神上杉謙信の代名詞だが、今この場にいるオブリビオン、『上杉謙信』の本体もまた、恐ろしい力を持つと感じさせる。
 避けて、攻め、着実にダメージを与えながらしかし、直撃を貰えば戦闘不能になるのはこちらだと、まるで安心が出来ない苛烈な攻め。
 そして毘沙門刀は執拗に究子を狙う。火の嵐を風の力で爆炎の嵐に変えて究子を襲う。先んじて仲間の猟兵達が刀に傷を付けているため、その効果範囲が狭まっていなければ、【クラッキング】でその動きを鈍らせてなければ、例え《T.A.S.さん》の力があろうとも避けれれなかったそれを、どうにか避ける。
 しかしその狭まった範囲も、僅か、ながら広がってきている。息を切らせながらちらと見れば、爆炎の中心、『薬・風・火』、その3本が光っている。癒しているのだ、『薬』の刀が、疵を。己のものと、他のものを。
(急ぐっきゃ、ない……!)
 縦シューティングゲームよろしく間一髪で嵐を避けながら、目指すは謙信の元。
 見ればもはや戦いは白熱し、白い影が黒と白の嵐のような剣閃を操り、蒼い影がそれに対抗するように暴れ回る。唯一流麗に舞う百々だけが視認できるが、それこそ柔よく剛を制するという事なのだろう。嵐の中にただなかにあって、葉のように舞うが故の動き。
(どうにか、間に合った……!)
 本当はもっと早くこの状況にするつもりだったのだ。本来なら、前衛二人に律儀に毘沙門刀が向かっていれば。そこは流石の上杉謙信。確かにこの策の要は、自分だった。
「ふたっ二人共!!!!!」
 もはや言葉はいらない。
 すぐさま百々が離脱する。そこは丁度、『上杉謙信の全身を鏡に収める事の出来る位置』。
 それを見届けて、究子は、全身全霊を込めて、全力で【クラッキング】に集中する。
「あああああああ!!!!!!!!」
「貴様!?」
 体のそこかしこに傷を負い、なれど未だ健在なる上杉謙信が、心の底から焦った。 奪われたのだ。制御が、毘沙門刀の3つが。それは僅かな時間であったであろう。
 しかし、その僅かな間だけでも、襲う。爆炎が、上杉謙信を、そして、シズル・ゴッズフォートを。
「今、だ!ボム!!」
「爆弾とは!?」
 それは弾幕シューティングゲームにおける一定時間無敵になるアイテムの俗称であったが、そんなことは知らず、シズルが焦りの声を上げながら【クラッキング】経由で《無敵城塞》を発動させる。
 そのまま炎に巻かれる上杉謙信とシズル。
 どうにか制御を取り戻し、謙信はまずは毘沙門刀を傍らに引き寄せる。体のそこかしこから煙を漂わせながら、次の攻撃に備える為だ。その判断はただしかった。しかし、
「我?」
 眼前に立つ、その存在には驚愕を隠せなかった。
「然り。これなるは鏡の世界の住人よ。現世へと来たりて我が力となりしもの」
 百々のUC、《鏡の中より出づる者/カガミノナカヨリイヅルモノ》だ。
「いざや!!!」
 言葉と共に、刃が飛ぶ。鏡像の上杉謙信が襲い掛かる。《毘沙門刀連斬》だ。
「ぐううううううう!!!!!」
「おわぁぁぁああ!?」
 十二の連撃が本物の上杉謙信を襲い掛かる。またもやシズルを巻き添えにして。《無敵城塞》は未だ解除していないとはいえ、肝が冷える。
 そして実際鏡像に相対する上杉謙信は、十全たる十二の刃を、不完全たる三本の刃で防いだことによる当然の結果として、火の毘沙門刀と薬の毘沙門刀を折られながら、傷を負い、遠く吹き飛ばされて行った。
「・・・くぅ」
 いくら神鏡のヤドリガミとはいえ強力なオブリビオンを写したからだろう。消耗が非常に激しく、鏡像が消えるや否や、天御鏡は膝をついた。
「ひ・・・ひひっ、ステージ。くりあ・・・」
 常時クラッキングを行使し続けた究子は言うまでもない。
「まったく二人共、だらしがない」
 というシズルもまた、防御を考えない無茶な攻撃を行っていたが故に、消耗していた。同じように、座り込む。
 威容を誇った車懸かりの陣、その数ももはや1本。趨勢は、決しようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鳴宮・匡
◆ヌル(f05378)と


重視するのは反応速度強化
ひいてはそれによる防御力、もとい回避率の上昇
一撃ごとが致命的なら「当たらない」のが最大の防御だ
こちらへ向いた攻撃は【見切り】、剣は銃撃で軌道をそらして立ち回る
庇われるのは「嫌い」なんだ
だからそういう場面は、なるべく作りたくない

……勿論、ヌルが傷つくのだって見過ごすつもりはない
相手の攻撃直前に腕や足を狙って牽制したり
ヌルの攻撃を受け止めようとしたところを横合いから狙うなど
互いに負傷の嵩まぬよう立ち回るよ

ヌルの策が成った瞬間に合わせ攻勢に転じる
長くは撃たせて貰えないだろうが
その短時間でも的確に急所に狙撃を叩き込めるよう注力
可能な限りダメージを重ねる


ヌル・リリファ
匡さん(f01612)と
アドリブ歓迎です

匡さんのほうに攻撃がいかないように、刀はできるだけ【盾受け】で軌道をそらして【かばう】。
でも無理はしないよ。

あえて挑発とかもして、「わたしをさきにつぶそう」っておもってもらう。

【視力】で12本の刀がわたしを攻撃しようとする瞬間をみのがさずにUC起動。
わたしと幻影のたちいちをいれかえて離脱。幻影は毘沙門刀がささった瞬間、閃光をともなう爆発で視界をうばいつつダメージをあたえる。
いくら相手がつよくても、大量の魔力をくわせたそれを完璧にふせぐのはむずかしいはず。
……湖面のつきのかがやきに、めをうばわれたみたいだね?

すきはつくった。
だから、まかせたよ。匡さん。



「減ってるね、たくさん」
 茫洋と少女は、ヌル・リリファは傍らに立つ男へとそう語りかけた。沢山あると思っていたのだ。刀が。それが減っている。きっとこれまでの猟兵達の働きなのだろう。それ以上の感想を抱かず、己の性能を証明せんとする少女は、武器を構えた。
「ああ、そうだな」
 その言葉に男は、鳴宮・匡は人知れず、安堵の溜息をつく。出来る事なら、傍らの少女には傷付いて欲しくない。相手の操る刃が減っているのなら、傷付く可能性も減るだろうといったところ。それを成した猟兵達への感謝と共に、UCを準備する。
 軍神・上杉謙信が吹き飛ばされた先で待っていた二人は、それぞれ違う感情を持ち、武器を構える。そうして傷を負った白き美丈夫、軍神 上杉謙信へと、走り寄った。
「わたしをねらって・・・ね!」
 静かな少女が、常ならぬ声を上げる。其れと共に振るわれるは<ルーンソード>。 己の性能を証明せんと振るわれるそれは、速く、鋭く。まるで己こそが脅威であると誇示するかのように。
「笑止!女の細腕でぇ!」
 それに対し、軍神が、上杉謙信が白黒二刀の刃で迎え撃つ。まさしく剛剣。何の因果か、今回の戦いにおいて、刃を交わした敵手に少女が多かった。勿論皆、それぞれが手練れ。軍神の剛剣に一歩も引かず打ち合ってはいたがしかし、手は痺れ、確かに消耗していったのだ。
 今回もそうなるであろうと振るった刃はしかし、確かに力強さで受け止められていた。
「なに?」
 連戦に次ぐ連戦。謙信自体に消耗が見られたのも確かだろう。しかしそれでもなお、腕に返るのは固い感触。
「つよいよ、わたしは」
 だってそのように作られたから。意思の薄い少女の透徹とした瞳が、敵を見据える。
「忘れてもらっちゃ困る!」
 そしてそのように作られた少女を、そのようなままで留めさせない男もまた、この場にいた。
 鳴宮・匡の<BHG-738C"Stranger">が火を噴く。これが初戦であればそのまま上杉謙信もまた、気にもせず受けただろう。しかし消耗した今、それを無視するわけにはいかず、浮遊する風の毘沙門刀が盾となり受け止める。意識がそちらに逸れた。
「えい」
 言葉と共に剣が振られる。今度は謙信が受け止める側だった。白の刃でそれを受けて、黒き刃が振られる。
「ぐっ!」
 それを懐に飛び込んだ匡の戦闘ナイフ、<Schwarzer Teufel>が受け止める。刃渡り7.5インチの諸刃のそれで太刀を受け切るのは酷な話。ましてやそれがオブリビオンの怪物的な膂力を以てして振るわれる剛剣ともなれば。思わずうめき声が口から飛び出すも、
「だからなんだ。【見切って】いる……!」
 強化された反応速度の中で、視界がゆっくりと流れてゆく。力の流れは完全に把握した。だからこそ受け流しは完全に決まり、
「ッ!」
 謙信の声にならぬ焦った声。今、ヌルと匡の手によってその胴が完全いがら空きになった。
「み、て!」
 言葉と共に、白き刃を受け流したヌルの刃が、謙信の顔を狙う。言葉にルーンソードへと視線が向きながらも、軍神その卓越した直感によて直ちに最適な手段を見出す。
 即ち、黒の剣を受け流した直後、体勢が崩れ気味の匡へと、風の毘沙門刀が迫る。
「だめ!」
 想定した通りだ。ルーンソードは謙信の眼前を掠め、一瞬だけヌルの姿を隠す。そして少女は、風の毘沙門刀を迎撃した。無理な体勢だったからだろう。先ほどのように正面からは受け止めず、軌道を逸らしての対処。
 庇われた形の匡は、何かを背に隠すようにして一端そのまま後退する。
「…?」
 僅かな違和。軍神の勘に触る何か。しかしそれを遮るように、匡がヌルに声を掛けた。
「すまない!」
「いい。これが、わたしの役目だから」
 そのまま、前衛と後衛に分かれた戦闘が開始される。しかしそれは、猟兵側に不利な戦いとなっていた。
 匡が後衛より<BHG-738C"Stranger">で援護し、ヌルが前衛で剣を振るう。それに対して謙信は白黒の二刀でもって前衛の少女を相手し、風の毘沙門刀を叩きつけようとすれば、
「させ…!ない!」
 振り絞った声。病的なまでに少女は毘沙門刀が匡を襲う事を恐れていた。無理にルーンソードで以て毘沙門刀を叩き落す。例えそれによって、己の身が傷付こうとも。 数合の打ち合いの後、少女の体のそこかしこには既に傷があった。
「ヌル…!」
 焦った匡の声。撃ち放たれる銃弾を刀で受け流しながら、軍神 上杉謙信は思案する。
(どちらだ……)
 何やら仕掛けているのはもはや明確だった。なれど、その仕掛けが、分からない。
 どこで、何時で。
 刃と銃弾が、思案を遮るかのように襲ってくる。そしてそれがむしろ、雷光のように答えを導き出した。
(先ほど、剣が目先を掠った時、か)
 己の今生の終わりを前に、軍神の勘は冴えわたる。ならば何を成したのか。
(替え玉)
 それがかつての生でもあった事。ならば今この瞬間、敵の策がどのように結ぶかはさておき、術中に嵌っているのならば離脱する他ない。
 なれど今眼前には少女がいる。恐らく替え玉の少女が。そしてそれは、己を逃しはしないだろう。
 ならば、まずはこの少女を排する事こそ肝要。罠はその際警戒すればよい。
 軍神の勘は死の淵を前に冴えわたっていた。そして死の淵にある焦りがそれを鈍らせた。
 幾度目かの鞘当て。またもや同じように匡へと向かわんとする毘沙門刀を防ごうと大きく体を動かしたヌルの胸に、
「あ・・・え?」
 いきなり風の毘沙門刀が反転。ヌルの胸に突き刺さる。そのまま動揺を逃さず謙信が接近して、両の刀を振らんとすれば、
「……湖面のつきのかがやきに、めをうばわれたみたいだね?」
 少女の声が、匡の背後から聞こえて来た。
「しまっ!?」
 瞬間、爆発。UC、《虚水鏡/ウツロミカガミ》によって今持ちうるヌルのリソースのほぼすべてをつぎ込まれて作られた幻影は、十全にその役割を果たした。
「ぬぅうううううう!!!!!!」
 明確なダメージ。何かを耐えるように体の筋肉を隆起させながら、軍神上杉謙信は粉々に折れた風の毘沙門刀を前に、仁王立ちしていた。明確な隙。
「すきはつくった。だから、まかせたよ。匡さん」
「言われずとも!!!」
 傷付いて欲しくない少女にそう願われたのだ。例え己が卑怯で臆病な男であるとて、それに応えぬ道理はない。
「《水鏡の雫/リフレックス》」
 目が血走る。視界が赤く染まる。世界が狭く、短くなる。短い世界で、傷を負った軍神が小さく動く。それをかいくぐる己の動きも小さく、けれど確かに一歩僅か、相手よりもその刃が速く届き、切り裂き、避け、切り裂き、切り裂き、撃ち抜く。
 時間にして僅かな時間。けれど狭く、短くなった世界においては十分な時間、傭兵は存分にその性能を証明した。
 気付けば世界が広く、長くなる。瞬間、襲い掛かるは白黒二刀。反射的に受け止めて、しかし吹き飛ばされる。
 倒れる無様はしない。空中で受け身を取り、着地。そのままほぼすべてのリソースを使い切ったヌルを庇うように謙信を見据える。
 そこかしこに傷を負い血を流す軍神は、確かに致命の傷を受けていた。
 しかし修羅は、死の淵にこそ宿る。
 もはや美しいとは言えぬ相貌は血走り、死を前にして、己の陣を敷いていた十の毘沙門刀を失ったとて、その圧は増すばかり。
(いけるか・・・?)
 いいや、やるのだ。決意をもとに匡が刃を構えれば、ふと、懐の小型端末が震えた。
 瞬間、ヌルと匡、軍神を分け隔てるように砂埃と、爆炎が舞う。その中に見える影三つ。
 ―――そう、端役と灰色と少年は、遅れてやってくる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──来たか、軍神
車懸かりの陣…実際に見るのは初だが…
大した陣形だ。軍神と呼ばれるだけはある

だが、俺から言わせれば三流が考えた脚本さ
俺が書きなおして、教えてやるよ
アンタらはこの戦争に、絶対に勝てねえってことをな

来るぞ──天変地異が!
【ハッキング】で全サイバネ出力限界突破、【ドーピング】でコンバット・ドラッグ摂取
強化された身体能力と反射神経で天変地異から逃げ回る
だが一発…一発だけ受けなきゃならない
ここでくたばって堪るか…あらゆる手段で体に鞭を打ち、意識を飛ばさない

写しとったぜ、謙信
俺のさっきの言葉、覚えてるか?
「俺が書き直して」やるよ、この力
お前より強く、制御も容易な──
雷の、雨だ
受け取れ、軍神!


兎乃・零時
アドリブ連携大歓迎

確か軍神…だっけ?凄そう…ひぇ、何あの刀!?属性多くねぇか!?
なんで!?(怖い…!!)

…だ、だが
てめぇに加護があろうと関係ない!
エンパイアには大事な友人たちもいるんだ!
みすみす負けるかよ…っ!!

◆紙兎パル
【属性攻撃】で攻撃
防御
【誘導弾】でそらし
【拠点防御・オーラ防御】で防ぐ

【学習力】で相手の動きを学んでもらう

◆兎乃
攻撃
【全力魔法】っぽく光属性の魔力をビームっぽくどばー!

回避は【逃げ足】

隙見て【覚悟】を決め【ダッシュ】
迫る攻撃は【誘導弾・援護射撃】でパルに対処を頼む!
傷を負っても【気合】で耐える…!

近づいたところで【捨て身の一撃・零距離射撃・全力魔法】!
そう!
全力〈UC〉だ!!


壥・灰色
越後の龍、軍神、上杉謙信と見受ける
――おれは、ナナシノ・ハイイロ

真っ向、お相手仕る
壊鍵、起動

肘から魔力の閃が噴き出、瞬間的に『過剰装填』状態に
壥・灰色は魔力を『衝撃』に精錬する魔術回路、『壊鍵』を保有する『魔剣』の六番器

四肢に装填した『衝撃』を魔術回路によって加速、集束、増幅して連発するのは、不可視の衝撃弾『侵徹撃杭』
秒間二十三発で繰り出す拳のラッシュに載せ、まさに衝撃の嵐を繰り出す
謙信も己が毘沙門刀により災厄を撒き散らすだろうが、おれはそれに正面から挑む
おまえが嵐を吹かせるならば、おれは雨中を貫く槍となる
おまえが炎を放つのならば、おれは炎を掻き消す風となる

――力比べだ
派手に遊ぼうじゃないか



「間に合った、みたいだな」
 土埃が舞う中、血濡れの毘沙門天を前に息をつくのは端役、ヴィクティム・ウィンターミュートだ。
 『アサルト』チームメイトからのコールを受け取った彼は、この場に間に合った。 そして、上杉・謙信を見据える。<網膜置換型演算能力補助デバイス『ヒラドリウス』>が外部情報を入力し、<超認識拡張電脳電算機『ウィンターミュート』>が演算した結果が<電脳接続型拡張プロセッシングゴーグル『ICE Breaker』>に出力される。
 もはや敵には十の毘沙門刀はなく、しかも瀕死だ。しかし、だが、だろう。それでもなお圧は増す。
 ましてや、
「おいおいおいおい……あれは」
 上杉・謙信、その手に持つ黒の刀から不穏なオーラが立ち上る。その黒き色、電算機が導き出した正確な名称は……
「アンヘル・ブラック……」
 思い出す。僅か一瞬なりとも覗いた深淵を。そしてその手に持つ呪剣の恐ろしさを。
 疵を、開く。そして敵は『オブリビオン』ならやることは一つ。冬寂は今も昔も変わらず。
「いいぜ、やってやる。所詮再生怪人なんざ三流が考えた脚本さ。俺が、書き直してやるよ」
 それが端役たる己の役目。口角を上げ、静かに己の内へとコンバット・ドラックを撃ち込んだ。
「へ・・・へへん。さっすが俺様だな!」
 傍らには杖をひっつかみ、どうにか立つ兎乃・零時が。良く見れば、マントのそこかしこに埃やら汚れが目立つ。無理やり紙兎パルに引っ張られて、今この場にいるといった風情。
眼前には軍神・上杉謙信。風前にあってこそ、灯はなお一層輝く。それを証明するかのような圧に少年は一歩後ずさる。
(属性多いって聞いてたのが少なくなってるのにどういう事だよ……!)
 怖い。恐怖が心を支配しようとする。けれどそれでも、杖を強く握り、
「てめぇに加護があろうと関係ない!エンパイアには大事な友人たちもいるんだ!
みすみす負けるかよ…っ!!」
 そういう事だ。少年には引けない理由がある。後ずさった足を一歩、前へ進めた。
 そして、最後。この場に現れた一人。灰色の髪の少年。
 心臓の魔力炉心が強く鼓動を打ち、魔力が満ちてゆく。
 壊鍵、起動。
―――魔力、変換
 少年の、その銘(な)は、壥・灰色。
 かつてUDCアースにおいて隠棲していた魔術組織が作り上げた人造人間。
 その『機能』として、魔力を『衝撃』に精錬する魔術回路『壊鍵』を保有する、造反個体、『六番器』。
―――衝撃、装填
 生み出された魔力が、魔術回路を伝い衝撃へと変換された四肢へと満ちる。蒼雷を纏うかのように輝く両腕を以て、ファイティングポーズを取れば、
 それが、戦いの合図となった。
 瞬時、上杉・謙信が黒き刀を放り投げる。
「事ここに至ればいたしかたなし。逆巻け嵐!!!さぁ黒き力よ、その威を示せ!!!!」
 そう言うが否や、放り投げた刀が謙信の頭上へ。そして軍神を台風の目として、黒き邪気を含んだ嵐が暴れ回る。
「「!!!!」」
 端役と灰色はすぐさま反応。今まで自分たちの居た場所から飛び退り、嵐の有効範囲から離脱した。
 一瞬後、嵐が総てを削り取る。まるで何もかもを破壊するかのように。
「……どうする?」
 今までの嵐はまるで制御されているかのようにきれいな円形の範囲で吹き荒れていた。しかし黒刀の『属性』が混ざった嵐はまるで違う。猛るようにその威を方々へとまき散らしている。
 それを素早く避けながらヴィクティムは灰色へと問いかけた。
「少なくともこの黒刀の属性が何かわからない事には・・・どう?」
「……戦った事がある。黒騎士だ。覚えてるか?」
「これでもグリモア猟兵だからね。ああ、そうか。確かその能力は……」
 灰色の言葉を待たず、側方、嵐の本体へとヴィクティムがドローンを一体、発射した。
 嵐に巻かれれば瞬時、バラバラになる。しかしそれは風圧に押しつぶされるようにではなく、まるで『見えない何かに切り裂かれたかのよう』。
「なるほど、『過去に受けた傷を刻む』、という訳だ」
「そういう事だ。となると大体もう一方、白い刀の能力も予測がつく。即ち……」
「「未来予知」」
 発言は、同時だった。
「何とかなるだろうか?」
「何とか出来るだろ。少なくとも黒刀の能力は言わずもがな。白刀の能力だって強力だ。使えるなら使ってるはず。でもどうやら使った形跡がない。なら何か、欠点や条件がある筈」
「何れにせよ当たって砕けろ、というわけか」
 容易い。壊鍵は笑みを浮かべた。つまるところ最終的に殴る事に変わりはない。ならば拳を届けるまで。
「まずはこの奴が作り出した嵐(きゃくほん)をどう抜けるか、だな」
「過剰装填なら―――」
 灰色がそう提案しようとしたところ、
「……なんだなんだ俺様を無視してさっきから!!!!!」
 灰色の右手側から声がした。零時だ。
「あ」 
 先ほど襲い掛かる嵐から離脱する際に無意識の内マントをひっつかんでいたのだ。
「小難しい話をしてるんじゃない!!俺様にもわかるように……どひゃぁ!?」
 パッと手を離す。こけた。そこに襲い掛かる嵐は紙兎パルが防ぎ、どうにか立ち上がって必死に走ってヴィクティムと灰色に併走する。
「だからっていきなり離すなよぉ!!!!」
「ははは・・・ごめんね?」
「コント会場かここは!?」
 ヴィクティムのツッコミが入った。
「で、どうする?実際この嵐を抜けるのには……」
「ああ、それについては大丈夫。きみ、魔力砲撃、いける?」
「む・・・むむ?あ、ああ。いけるぞ勿論!何せ俺様、大魔導士様だからな!」
 そう言って胸を張る未完の大魔導士を灰色は見やる。その体の中に満ち満ちた莫大な魔力を見て、
「なら大魔導士様、一つ。頼まれてくれるかい?」
「ああ、勿論だ」
 こうして嵐を抜け出す算段はついた。
 
 嵐の中心、台風の目、そこに佇むは血濡れの軍神、上杉・謙信。 
 もはや付き従う十の刀は折れ、傍らにあるは二刀のみ。そしてその1本もまた、今は頭上にある。
 黒き刀。禍々しきもの。はて、自分は生前、斯様な刀を持っていただろうか。分からぬ。分からぬものを戦略に組み込む軍神ではない。だからこそ最後まで使わずにおいた二刀。
 そのうちの一刀を《毘沙門刀天変地異》にて使えば、なるほど確かに触れれば『過去に受けた傷を刻む』嵐は強力であろう。だがそうであるが故に制御は軍神の手を容易く離れた。
 もはやせめて、自分が傷付かずに己の周囲を空白地帯にしておくしか、軍神にすらなすすべはなかった。
(とはいえ、己が生きている事そのものに意味があり。己あっての『車懸かりの陣』、『車懸かりの陣』あってこその己』)
 そう、だからこそ死風の中心にて佇めば、おのずと被害は広がろう。
 
 そして、それを許さない者たちも、またいた。

「ギャ――――!!!!!死!!!!死ぬ!!!!死ぬぅ―――――!!!!!」
 情けない叫び声と共に、嵐の外から一条の閃光が嵐の中心、凪の場に走る。
 それは謙信を狙ったものではない事は明白だ。明らかに見当違いの咆哮に抜けていったそれはしかし、見やれば、
「嵐に、穴が・・・!」
 強大な魔力砲撃は、確かに死風の領域に穴を開けていた。
「おらぁ!!死にたくなけりゃ全力でやれ!!!こっちも全力で走ってるんだ!!!ああ!!!くそ!!!!《Warp Program『Shag』/コケオドシデジュウブンサ》!!!!!」
 そしてその穴を走り抜けるのは、零時を前方に向くように抱えた灰色とヴィクティム・ウィンターミュートだ。
 零時の莫大な魔力に厭かせて叩き込まれた魔力砲撃が、毘沙門刀天変地異の嵐に、穴を開ける。
 とはいえそれは一時的なもの。通り抜けるには十分ではない。だからこそ零時は通り抜ける今もな穴を維持しようとお砲撃を続けているし、ヴィクティムは後方から全力でドローンを召喚し、穴が塞がりきらないように無茶を通してる。
「そろそろだ……!」
 灰色が声を上げる。光が見えた。しかし、
「させぬ……!」 
 軍神の声、制御できなくとも、力を送り込んでより暴威を増すことは出来る。穴が、狭まる。
「くそっ……!あとで追いつく!」
「っ!待っている!!!」
 背中からの衝撃。蹴りだされたのだ。狭まる出口。それを前に、どうにか灰色は、そして零時は、凪の空間に転がり出た。
「た……助かったぁ~~~」
 零時がへたり込み、肩で息をする。幾ら膨大な魔力を持つとはいえ、何度も魔力砲撃を放てばへたり込む。
 そしてだからこそ、彼は万全な状態でこの場にある。
「越後の龍、軍神、上杉謙信と見受ける」
「いかにも。我が軍神、上杉謙信なり」
 体の暖気は既に十分。衝撃は放たれん時を今か今かと待ちわびている。
「――おれは、ナナシノ・ハイイロ」
 刃が、構えられる。白きそれ。立ち上るオーラが謙信を包み込み、血走った眼をさらに紅く染めた。
「真っ向、お相手仕る」
 どちらが先に仕掛けただろうか。疾風(はや)さが、その答えを余人に隠した。
 爆音が鳴り響く。四肢に衝撃を装填した灰色のスピードは、もはや神速と言ってよいスピードだった。
 対して上杉謙信の動きもまた、常軌を逸していた。オブリビオンだからこそなしえる超常。盛り上がった筋肉に比してもなお異常な膂力、柔軟性。男は、人の形を保ちながらの異形であった。
 魔と異形が鍔ぜり合う。蒼き衝撃が打ち抜かんとし、白刃が取って斬り返す。
 はたから見れば互角。しかし―――
(未来予知、どうやら働いているらしいね)
 僅か、灰色に汗が浮かび、そこかしこに傷が増えてゆく。
 それに対して謙信は優位に立ったかのような笑み。 
 先ほどから灰色の攻撃は悉く対応され、対して謙信の攻撃は僅かばかり灰色に傷を作ってゆく。
 未だ致命傷を受けていないのは、灰色の一撃一撃が必殺であり、その受けに白刃を使う必要があったからだ。仮にその両手に刃があれば、既に斬り伏せられている。
(どうしたのもか)
 切り札は、ある。しかしそれを切るにはまだ早い。必殺の切り札が空を切ってしまえばなすすべもない。
 それに、端役の言葉もある。灰色は信じ、僅かに後退する戦いを、綱渡りを繰り広げていった。

(す……すげぇ)
 蒼と白刃の攻防を前にして、兎乃・零時はただただ圧倒されるばかりであった。 魔力砲撃で嵐に穴を開け、そして今肩で息をしている中、眼前に見えるそれはまさに少年の目指すもの。目指す戦い、『カッコイイ』戦いが其処にあった。
(けど……)
 もはや自分は使い果たした。誰かが心に語り掛ける。もう十分じゃないかと。役割は果たしたと。
 知らず、地面の土を握る。そして思い出す。その手が、土でなく誰かの手を取った事を。そしてその時、自分はどう言われたか、を。
(そうだ、ヒーロー、だ) 
 その言葉が心を廻す、炉心を廻す。魔力を充溢させる。だから少年は、駆けだした。
「だぁ~~~~はっはっはっはっ!!!!隙ありぃ!!!!」
 そして、その言葉を、上杉謙信は驚愕と共に聞き及んだ。魔力の全てを使い果たしてへたり込んでいた敵。もはや戦術上意味なし。後でいかようにも料理すればよいと思い込んでいた敵の言葉と共に、謙信と灰色の側面、至近距離から魔力砲撃が放たれたのだ。
「がああああああああ!!!!!!!!!」
 《全力全開・最大出力魔力砲/イッパツカギリ・ギャクテンノイッテ》が降り注ぐ。苦悶の声。先だって気配を感じていた灰色は避け、しかし謙信はまともにそれを受けた。
「きさ・・・きさまぁ!!!!!」
 傷付いた体からさらに血を噴き上げながら、謙信は怒りの声を上げる。それに対して、完全に魔力を使い切った事で今度こそ完全にへたり込んだ足を震わせながら、それでも零時は宣言する。
「どんなもんだ!!ざまぁ見やがれ!!!!」
「疾く、死ぬがいい!!!」
 そう言って零時へと一歩進み出そうとする謙信の服の裾を、しかし掴んで止める者が居た。
「あ?」
 完全に虚を突かれ、謙信が間抜けな声を出す。そして僅か体を静電気が駆け抜けるような感覚。ふと下を見れば、
「ああ、畜生。良かったぜ。お前、『注意を払った誰か一人の未来しか見れない』んだな?」
 血に濡れたヴィクティム・ウィンターミュートが笑みを浮かべて掴んでいた。確かに嵐に巻き込まれ、体中の傷を開かれた。だが、だがしかし、端役は、Arseneは、意思と電脳の力で体を動かす術など心得ている。
「もう一つ朗報だ。その体、スキャンさせてもらった。ちゃんとあるな?脳みそが。だったら、こっちのもんだ」
 もはや言葉なし。白の刃が足元へ振るわれんとする。しかし、
「残念、こっちが速い」
―――それは、科学の、電脳の力。何時か、誰にでも扱えるものとして生み出された技術は、それに適応したものによってまるで魔の術のように選ばれた技術を編み出した。
≪『確かに出来の良い力だが…俺ならもっと上手く扱える。手本を見せてやるよ』》
 それはニューロンの交感が口を介さず意思を浮かび上げる。
≪<Update Patch『Rise』/バージョンアップハオテノモノ>・・・レディ》
 体中に受けた傷の術理を、<ウィンターミュート>が解析し、システムが唸りを上げて汲み上げる。
≪パッチ最適化完了……UC、セット≫
「ああ、魅せてやるよ。これがテメェを凌駕する、Fakeの粋だ!」
≪……《Instant Code『Fake:Angel』/ゼンブオマエノセイダロウガ》…起動≫
「かぺっ!?」
 瞬間、刃を握る謙信の腕から力が失せ、手を離れた刃がそのまま地面に突き刺さる。どうにかローリングでそれを避け、膝をつく白目をむいた謙信の様を見て、端役は自分の策が上手くいったことを悟った。

―――もし、上杉謙信に、『過去の傷を開く』UCを打ち込んで、そしてその傷の指定を任意に出来たとしたら。
 
 上杉謙信は、脳溢血にて、死亡したとされる。

「ぎっ……!」
 とはいえ、相手はオブリビオン、意識がホワイトアウトすれどもしかし、一瞬で意識を取り戻す。そしてその一瞬で、十分だった。

―――衝撃、過剰装填

「ぐおおおおおお!!!!!??????」
 
 侵徹撃杭が、駆け抜ける。少年が開き、端役が穿った道を、駆け抜ける。
 端役の目の前で、どうにか白刀を掴みながらも軍神が吹き飛ばされて行った。そしてそれを追いかけるように灰色の魔剣が駆け抜ける。
「後は、頼んだ」
「言われずとも!」
 力強い返答に、知らず端役は笑みを浮かべた。
「がっ!」
 一撃。
「ぎっ!」
 ニ撃
「ごぉ!?」
 三撃
「ぐぅぅぅぅぅうううううう!?」
 吹き飛ばされる謙信へ、中空でラッシュが続く。その数計二十一発。その総てをもろに喰らい、何とか謙信は地面に着地した。吹き飛ばされる勢いをどうにか和らげようと、地面に白刀を突き立て、
「しまッ!?」
 それが悪手だと気付く。未来視が眼前に二十三発目が迫る事を伝えるも、脳溢血から回復しきらない体は上手く動かず、
「がはぁ!!!」
 ついに吹き飛ばされ、もはや上杉謙信は無手となった。
「終わりだ」
 魔剣は静かに宣言する。
「否!!!まだまだぁ!黒き刀よ!!!」
 どうにか制御できないまでも凪ぎの空間を作り出ていたのを完全に放棄する。そうすれば、嵐の中央にも黒き死風が吹き荒れ出した。遠からず、今猟兵とオブリビオン達が立つこの場所も、死の嵐に巻かれるだろう。
「我が死すとも、貴様らも死ねぇ!」
 そしてそうするために、無手であろうと抵抗するつもりなのだ、この軍神は。脳溢血のダメージから完全に立ち直り、拳を握る。
「いいね、我慢比べか。無抵抗の奴をどうにかするより、そっちの方がこちらもやる気が出る」
 炉心が回り、衝撃が四肢に再び過剰充填される。
「……全弾、持っていけ」

―――さぁ、派手に遊ぼうじゃないか。

《壊鍵『鏖殺式』/ギガース・ザ・カラミティ》
 
 そうして魔剣と軍神は激突した。
 

 殴打の音、衝撃が打ち抜く音。それが無数に響き、響き渡り、風が舞う。風が舞い、散り、そして何時しかそれはそよ風になった。

 そしてそよ風の中、

「勝っ……た」
 空を見上げつつ、灰色は座り込む。そこかしこに傷を作りながら。

 そしてそれこそが、この場にて十二の刀と一人の軍神、それを二十にも連なる猟兵達が、打ち破った瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月13日


挿絵イラスト