エンパイアウォー㉔~冥府への動員令:春日山城の戦い
●――急襲の好機
信州上田城。
多くのオブリビオンを抱えた上杉軍の早期撃破により、上杉軍は撤退を開始。
同時に、上杉軍主力が越後から関ヶ原に向けて移動を開始したと言う情報が手に入った。
主力部隊の動向も気になるが、これは好機でも有る。
部隊を動かした事で手薄になった上杉軍の本拠地、春日山城。
その攻略も不可能では無くなった。
春日山城は上杉軍の本拠地で有る為、後詰を任された屈強な部隊が警備に当たっている。
一筋縄では行かないだろうが、制圧して調査する事が出来れば、その見返りは非常に大きいだろう。
信長軍に関する重要な情報や、特別な力を持つ宝物等が手に入る可能性も十分に有る。
攻略を試みても損はしない筈だ。
●――お城制圧RTA(リアルタイムアタック)
「主力が居ない隙に本拠地制圧しちゃうRTA、はっじまっるよー♪」
いつになく高いテンションで説明を始める巫女、望月・鼎。
ブリーフィングを四倍速で済ませようとしたのは、近くに居た猟兵の突っ込みで未然に防がれた。
「まぁ、最初のコールで大体やる事は分かったと思います。上杉軍の主力が移動してるので、今の内に手薄になった本拠地、春日山城を攻略しちゃおうって寸法です」
いつもの様にホワイトボードを持ってきて説明を始める。
今回は割と精巧な地図が描かれている。
北は日本海、東は春日山神社と関川、西並びに南は人の手が入っていない深い連峰。
春日山の山頂に築かれた難攻不落と名高い山城であり、攻め入るには多大な労力を払う必要が有る。
通常の手段を以って落城させるのは至難であろう。
「とまぁ厄介な場所に有る春日山ですが、こっちには転移が有りますからね。サクサクやっちゃいましょう」
そう言って鼎はホワイトボードに何やらきゅっきゅと描き始めた。
出来上がるのは風鈴。
「」
一ノ瀬崇
ちょっぴり涼しくなってきました。
こんばんは、一ノ瀬崇です。
今回は風鈴が相手ですね。
その辺の小石を投げ付けられただけで割れそうな気もしますけど、風鈴ってどれくらい丈夫なんですかね。
皆さんのプレイングをお待ちしております。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
第1章 集団戦
『彼岸の兜風鈴』
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POW : 風鈴の音が響き渡る
予め【風鈴の音を響かせ続ける 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 風鈴の音が共鳴する
【共鳴振動となる甲高い風鈴の音 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 風鈴の音が死者を呼ぶ
【黄泉の国 】の霊を召喚する。これは【悲鳴】や【武器】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:marou
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
コトト・スターチス
RTAときいてきましたコトトですっ!
ばっちり攻略して情報やアイテムをげっとしましょう!
はじめから奥の手、ねこへんしんでパワーアップしますにゃー!
(黒猫耳尻尾と天使の翼が生える)
多少のダメージは覚悟して、まずは高速で飛翔して敵が多いところにつっこみますっ
聖なる波動をまとわせたメイスの【属性攻撃】で黄泉の国の霊を迎撃しつつ、すれ違いざまに兜風鈴の集団をがつんがつんと叩きますにゃー!
衝撃による【気絶攻撃】をすることで、倒せなくとも攻撃の手を緩められるはずっ
そしてUターンして、今度は弱った敵から確実に狙って敵の数を減らしますにゃー!
「そういえば、制圧は旗のある場所に留まっていればいいのですかにゃー?」
真白・白夜
敵部隊の殲滅…僕がやるより彼がやる方が適任ですね
戦闘開始直前、人格を残忍な人格に交代します
「任せるよ!遠慮はなしだ!」
『おう!全部粉々にしてやらぁ!』
俺の攻撃は、【範囲攻撃】で攻撃範囲を広げたサイキックブラストで【先制攻撃】だ!【二回攻撃】でさらに連発してやる!
敵が霊を出して攻撃してきても、【念動力 衝撃波】で吹き飛ばしてやるぜ!ああ、サイキックブラストを出しっぱなしで防ぐのもいいか
悲鳴攻撃は、【狂気耐性】で耐えるか
それでも近付いてきやがれば、【オーラ防御】で防ぐぜ!防御を突破されても、【残像】で回避してやるぜ
『残念だったな!』
アドリブ&協力OK
峰谷・恵
「拠点空けるほうが悪いということで遠慮なくやっちゃおうか」
敵が迎撃態勢に入る前に突撃し可能な限り多くの敵を範囲に収めてフルバースト・マキシマムを発動、一掃する。
その後はMCフォート、熱線銃で敵を一つずつ確実に片付けつつ、甲高い風鈴の音を出している敵はアームドフォートの砲撃で破壊。
敵の共鳴振動を受けないよう敵に接近される前に撃破、手が回りきらない場合オーラ防御で防ぐ。霊の攻撃はできる限り回避、かわしきれないものはダークミストシールドで防御。
「どんな堅城でも内部に転移されるのは想定してないし、想定外の事態に対応できそうな将は留守、今のうちに決めないとね」
アララギ・イチイ
召喚系の技を使用するのねぇ
なら、この装置(UC)の実験台に丁度いいわねぇ
【選択UC】使用するわぁ
敵が黄泉の国の霊を召喚したら、その動きを【見切り】、UCを発射して【範囲攻撃】、【ハッキング】で支配権を奪取よぉ
で、支配権を奪った黄泉の国の霊を操り、【捨て身の一撃】で敵に攻撃、相手が再び霊を召喚したら、UCを再度発射して、支配対象を増やしておくわぁ
私も後方からそんな霊達の【援護射撃】するわぁ
【武器改造】で砲身+機関部+動力炉を合体して、大型砲を構築、荷電粒子を【力溜め】でチャージした荷電粒子砲(【スナイパー】で射撃補正)を敵に叩き込むわぁ
近寄られたら【早業】で隠し腕を展開して【カウンター】よぉ
パリジャード・シャチー
●心情
ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!帝釈天の加護はここにある。皆続け―とか言ってみたり―。軍神・毘沙門天の化身の城に突っ込むならこういう事言ってみたくない?一応うちの主人が帝釈天だし。ちゃんと加護は貰えてると思うんだよね。今乗ってる愛羅もあの神の乗騎のアイラーヴァタだしね。
・じゃ、気合い入れて城攻めじゃー
●戦闘
・愛羅に騎乗時ながら戦闘だよ。愛羅と連携してガンバロー
・高速詠唱したUCを使っての範囲攻撃で殲滅だね。
・片っ端からざっくざくと風の刃で斬っていくよ。
・遠くの敵は白蛇弓でスナイピングして叩き落としつつ、愛羅に踏みつぶしてもらうかな。
・幽霊も風の刃でざっくりぽんだよ。
春日山城、その本丸へと繋がる通路。
そこへ架けられた丹塗りの木で組まれた橋の上へと転移した猟兵達を、暗くなり始めた空と涼しい風が出迎える。
周囲を見渡すが敵の姿は無い。
通路は入り組んだ迷路の様になっており、外敵の侵入を阻みつつ銃弾や弓矢を浴びせる工夫が施されている。
しかし、今はその見張りも見えない。
主要な箇所以外は最低限の人員を裂いて対応している様だ。
何にせよ、転移即接敵、と言う事態は避けられそうだ。
「RTAときいてきましたコトトですっ! ばっちり攻略して情報やアイテムをげっとしましょう!」
両手を振り上げ元気良く挨拶をするのはコトト・スターチス。
日焼けした肌に金髪が眩しい、可愛さ溢れる少女だ。
「どうも、真白です。多重人格者ですので、戦闘中はちょっと荒っぽいかもしれません」
物腰柔らかく名乗るのは真白・白夜。
多重人格者である彼は戦闘中に人格が入れ代わるのだが、そちらは少々過激な言動を好むので皆をびっくりさせない様に説明する事にしている。
「ボクは峰谷・恵。拠点空けるほうが悪いということで遠慮なくやっちゃおうか」
携行火器の調子を確かめながら軽く声を掛けるのは峰谷・恵。
多数の武器を手に取る様は実に頼もしく見える。
「敵は召喚系の技を使用するのねぇ。なら、この装置の実験台に丁度いいわねぇ」
やや間延びした口調で話すのはアララギ・イチイ。
手元の謎の機械をカチャカチャと弄り回している。
「どーもどーも、パリジャードです。サメでお困りなら呼んでね?」
にこやかな笑みを浮かべているのはパリジャード・シャチー。
今日はいつものトレードマークであるシャチぐるみは着ていない。
「それじゃフォーメーションと言うか戦法でも決めよっか。範囲攻撃や複数対象への攻撃が出来る人ー」
自己紹介も終わった所でパリジャードが声を掛ける。
はい、はい、と手を挙げるのは彼女を含めて四人。
一人手を挙げずにどや顔で胸を張っているのはコトトである。
「じゃあコトトちゃんを突撃隊長に任命しよう」
「まかされよー!」
びしっと敬礼をしてみせるコトト。
テンションマックスで実に可愛らしい反応である。
「うちは突撃しつつコトトちゃんの支援に回るから、主な死者対応は皆に任せちゃって大丈夫かな?」
「えぇ、解りました」
「おっけーぃ」
「わかったわぁ」
頷きを返す皆へ、にかっと笑い掛ける。
「じゃ、気合い入れて城攻めじゃー」
おー、と右手を振り上げて気合を入れた時、コトトの耳が何かを拾った。
それは幽かに響いてくる戦いの音色。
『りーん、ちりりーん』
「風鈴の音です!」
その声で瞬時に戦闘態勢を取る猟兵達。
初めは一つだった風鈴の音が、徐々に重なり合い一つの大きな旋律へと変わっていく。
俄に周囲の空気がざわめき出し、通路の向こうから死者の群れが姿を現した。
「任せるよ!遠慮はなしだ!」
『おう!全部粉々にしてやらぁ!』
白夜が人格を交代させる。
普段は彼と呼んでいる人格は身体を支配下に置くと、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
「よし、先ずは俺が突っ込む! 動きを止めるからデカイの一発頼むぜ!」
「任されたよ!」
一人駆け出していく白夜の背中を見送りながら、恵は武装を展開していく。
アームドフォート、ブラスター、ルーンソード、マシンキャノン仕様のアームドフォート。
多種多様な得物を自在に操りながらその照準を定めていく。
大方の敵を射程内に収めたのと同時、敵中へと駆け込んだ白夜がユーベルコード【サイキックブラスト】を放つ。
「じっくり味わいやがれぇっ!」
両手を広げ独楽の様にくるりくるりとその場でスピンする。
掌から放たれた高圧電流は死者の群れを飲み込み、身体の自由を奪って倒れ込ませる。
倒れ込む勢いを利用して襲い掛かろうとしていた着流し姿の死者の頭を踏み付け、高く跳び上がる。
「いいぜ!」
「おっけぃ! 発射ァ!!」
そこへ恵がユーベルコード【フルバースト・マキシマム】を撃ち込む。
文字通りの全武装一斉発射。
先ずアームドフォートの砲門から放たれた榴弾が死者の群れの中央に着弾、周囲を吹き飛ばす。
吹き飛んだ中でまだ動ける者は左右に展開したブラスターと『MCフォート』が撃ち貫き、自分達の側へと飛んできた者はルーンソード『遅すぎた収穫期』が斬り捨てる。
一撃では無いかもしれないが、一連の攻撃で死者の群れはその身を崩れさせながら黄泉の国へと還っていった。
砲撃で多少抉れた地面へすたっと着地を決める白夜の周りに、動くものは何も無い。
「存外大した事ぁねぇな?」
「あら、油断は禁物よぉ? だって、ほら」
イチイは白夜の更に向こうを指で示す。
皆が顔を向けると、曲がり角の奥からぞろぞろと死者の群れが出て来た。
「おかわり来ちゃってるものぉ」
「……ま、幾ら雁首揃えても雑魚じゃぁなあ?」
「幾らでもフッ飛ばしちゃうよ!」
あくまで余裕の表情を崩さない白夜。
恵も先程の手応えから単体の戦闘力は気にするまでも無いと判断している。
「んー、囲まれると厄介だけど梃子摺る程強いって訳では無さそうだね? じゃあ」
「突撃にゃー♪」
「にゃー?」
パリジャードが隣から聴こえて来る猫な語尾に首を傾げながら向き直ると、ユ-ベルコード【ねこへんしん】で黒い猫耳に猫尻尾と白い天使の羽根を生やしたコトトが居た。
「にゃんで猫?」
「聖天使猫モードですにゃー!」
良く解らないがパワーアップしているらしい。
それならとパリジャードはユーベルコード【純白なる女神の騎獣】で真っ白な巨象『愛羅』を呼び出し、その背中に跨る。
「おぉー!」
目をキラキラさせて見上げてくるコトトにふふんと得意気に胸を張ってみる。
「ほらほらぁ、遊んでないで行くわよぉ?」
「あ、はぁーい」
「ほいほい、今行くよー」
イチイに呼ばれ、通路を進んでいく二人。
白夜と恵が死者の群れを吹き飛ばして道を開いていたが、曲がり角を進んだ所で動きを止めた。
それを訝しげに眺めつつ追い付くと、その理由が解った。
「うへぇ」
「うわぁ」
「あらぁ」
「うにゃー」
「あらら」
思わずと言った様子で言葉を漏らす一同。
視線の先、曲がり角を越えた所に有ったのは先程よりも広い回廊。
暴れ回るには十分な広さだが、今は遠くに見える本丸へ続く石段の所まで死者が所狭しと埋め尽くしている。
よくあるゾンビ映画のショッピングモールよりも密集度は高そうだ。
「流石にこの数はちょっと気持ち悪いね」
若干引いた様子で口を開く恵。
気持ちは良く解ると女性陣が頷く中、白夜は嫌な事実に気付いてしまった。
「……何かまだ増えてねぇか?」
その言葉に弾かれた様に目を凝らす。
先程から鳴り響いている風鈴の居所は解らないが、通路の奥から確かに死者の群れは湧き出ている様に見える。
つまり最初に音が聴こえた時から死者沸きっ放しセール実施中。
「……早い所制圧した方が良さそうねぇ」
「そういえば、制圧は旗のある場所に留まっていればいいのですかにゃー?」
「いや、旗も制圧範囲も無いから。取り敢えず風鈴全部壊したら制圧……かな?」
思わず突っ込みを入れるも余り制圧条件に対して自信は無さそうな恵。
気を取り直した白夜は拳を掌にぱしっと打ち付ける。
「取り敢えずぶっ飛ばそうぜ。倒し続けてりゃその内勝つだろ」
「あはは、シンプルで良いねー」
パリジャードは笑いながら、ユーベルコード【無双風刃】で此方へ寄って来た死者の首を切り落とした。
ぽろりと首が落ち、そのまま地面へと溶け入る様に消えていく死者達。
本当に脆いんだ、と手応えを確認しつつ右手を突き上げ高らかに宣言する。
「ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ! 帝釈天の加護はここにある。皆続けー!」
「おぉー!」
「お、おぉー!」
掛け声の意味は余り解っていないがノリの良さは一番なコトトが右手を振り上げる。
こうしたノリに付き合いの良い恵も声を上げつつ、眼前の目標へと弾を打ち出していく。
敵が密集しているのも有って、砲撃は非常に効果的だ。
次々と吹き飛ばされ、死者の群れに幾つかの空白地帯が出来上がっていく。
それを見て、イチイはうむと一つ頷いてユーベルコード【追加武装コンテナ・サモンリバース】を発動した。
「さて、試作品だけど上手に機能するかしらぁ?」
そぉれ、っと投げ込まれたのは小さな端末。
爆弾にしてもサイズが心許無いそれは、物理的な攻撃力を持っている訳では無い。
着弾地点から特定の範囲内に存在する『召喚された対象』の支配権を奪い取る事が可能な、一種のハッキング装置である。
普段から使うにはやや汎用性に欠ける、一般的には扱い辛い部類のユーベルコード。
しかし、今回、この戦場に於いては最も効果的なユーベルコードの一つと化す。
「グォォ……」
「ンモォォ……」
「さ、貴方達の相手はあっちよぉ。前線を押し上げなさぁい」
呻き声を上げる使者達が、イチイの指示に従って反転する。
がっちりと肩を組む様に密着しながら壁となってゆっくりと前進する死者達と、此方側へ向かって怨嗟や悲鳴を上げながらゆっくりと迫り来る死者達がぶつかり合う。
激しい乱打戦……ではないが、互いに押し合い一種の膠着状態が生まれた。
「動きが止まったわぁ。今なら狙い放題ねぇ」
続けて、イチイは動く。
持ち込んだ様々な武装類『通称:砲身・機関部・動力炉』を改造技術を駆使して、自身の身長よりも大きな荷電粒子砲を組み上げる。
「それじゃ、強烈なの一発やっちゃうわよぉ」
イチイが引き金を引くと、甲高い掃除機の様な何かを吸い込む音が鳴り、直後光線らしき軌跡と共に爆音と衝撃波が届く。
「にゃあい!?」
「おおっと」
ふわふわ浮いていたコトトが煽られ吹き飛ばされそうになるのを、馬上、もとい象上のパリジャードが受け止める。
そのまま視線を前に向けると、通路の奥に居た筈の死者の群れが、その先に有った石段や城壁が、綺麗サッパリ消えて無くなっていた。
ぽっかりと丸く開いた空間の先、徐々に崩れていく山の斜面が遠くに見える。
「わーお」
やりすぎな火力に恵が冷や汗を掻きながら口笛を吹いている。
その横では白夜がマジかこいつと言いたげな顔でイチイへと振り返っている。
皆の視線を感じ、イチイは荷電粒子砲を撫でつつ口を開く。
「さぁ、敵陣に穴が開いたわぁ。一気に行くわよぉ」
「それ使用禁止で」
「いやぁん」
当然誤魔化せなかった。
荷電粒子砲の解体を支持しつつ、パリジャードは愛羅と共に前進する。
「色々と予想外だったけど、敵の圧は減ったし一気に押し込むぞー!」
「お、おう……」
少しばかり動揺が残っている様子の白夜が応える。
さもありなん、死者の群れに突っ込んで行くスタイルの彼はともすればあの攻撃に巻き込まれていた可能性が有る。
勿論イチイは味方を巻き込む様な雑な攻撃はしないし、仮に白夜が前線に居ても巻き込まない位置と角度とタイミングで攻撃するだけの技量を持っている。
しかし、あの威力を見て落ち着けと言うのも、また無理な話である。
多少大人しい動きで死者の群れを撃退していく白夜の背中に、援護する恵は哀愁を感じ取っていた。
「にゃーにゃー」
「ん?」
「ぼくの出番はまだですかにゃ?」
袖を引かれたパリジャードが顔を向けると、目をしいたけにしたコトトが居た。
先程の凄まじい砲撃を見て、自分も全力でぶんぶこしたくなったらしい。
「そうだねー、そろそろ秘密兵器投入と行きたい所……おっ」
イチイが破壊した事で通れる様になった通路を進みショートカットしていると、本丸手前の回廊へと出た。
左右には三つずつ石造りの灯篭が置いてあり、その笠に風鈴が幾つかぶら下がっている。
此方に気付いたのか、風鈴はけたたましく音を出しながら死者を次々に呼び出してくる。
「出番だね。うちが弓で援護するから、コトトちゃんは左側の灯篭を壊しちゃって」
「まっかせるにゃー!」
「おし、なら俺は右だ」
「ボクが援護するね」
「じゃあ私はぁ」
「荷電粒子砲禁止で」
「いやぁん」
イチイには端末の支配権奪取を使って、パリジャードと恵へ向かう死者を抑えて貰う事に。
これで、二人は援護に集中出来る。
「よぉーし、突撃開始にゃー!」
愛用の『メイス+9』を構え真っ直ぐに突っ込んで行くコトト。
早速死者達が寄って来るが、臆する事無く右手のメイスを振り回す。
「うにゃにゃにゃにゃー!」
属性を篭められたメイスの一撃が死者を吹き飛ばす。
燃えたり光ったりとバリエーション豊富なやられっぷりを披露しつつ黄泉へ還る死者達。
そうして開いた穴を突き進みながら、コトトは一歩ずつ前へ出る。
「れっつしゅーてぃーんぐ!」
左右から囲い込もうとする死者には、パリジャードが『白蛇弓・因達羅R』で矢を放つ。
頭に矢を生やして力尽きていく死者だが、直ぐにまた左右から死者がやってくる。
「ええい、本当にゾンビゲームみたいな湧き方をしよる!」
「町の人口と同じ数倒したら実績解放されそう!」
軽口を叩き合いながら攻め上がっていく二人。
その歩みは止まらず、遂に一つ目の灯篭へと辿り着いた。
『りぃぃぃーーーん……!』
身に迫る危険を感じ取ってか、風鈴は一際けたたましく鳴り響いた。
「あっ」
「オォ……?」
今までと違う音色に気付いたコトトは即座に手近な所に居た死者を引き寄せる。
直後、風鈴から放たれた衝撃波がコトトへと襲い掛かった。
「ノォォォ……ッ!?」
しかしその攻撃は直前に引き寄せた死者が全て受け止める。
心なしか哀しげな悲鳴を上げつつ消えて行った死者に感謝をしつつ、コトトはメイスを振り被った。
「てにゃーっ!」
渾身の一撃。
当然風鈴が受け止められる筈も無く、灯篭と共に細かな破片へとなって砕け散った。
同時に周囲から死者が消えていく。
あの風鈴が召喚した分だろう。
「イイ感じだねー、続けていこっか!」
「ふっふっふ、ボス撃破にゃー!」
直ぐに残った風鈴がちりんちりんと死者を呼び出していくが、その召喚速度が三分の二に減った状態で二人を止められる筈も無い。
鳴り続ける風鈴の音が、少しずつ悲痛なものへと変化していった。
そんな左側の快進撃も然る事ながら、右側を担当する白夜と恵のコンビも中々の活躍を見せていた。
「オラぁっ!」
サイキッカーの白夜は念動力を駆使して衝撃波を放ち、死者の動きを封じながら誘導していた。
固まった所へ、恵が砲撃を行い纏めて吹き飛ばす。
そうして出来た空間へ白夜が乗り込み、死者を押し込みながら誘導する。
この繰り返しが見事にハマり、殲滅スピードはかなり速い。
すると風鈴も作戦を考えたらしく、周囲に死者を湧かせて固める対応をしてきた。
これまでと違い積極的な攻撃は行ってこないが、代わりに防御性能は格段に上がった。
幾ら吹き飛ばしても、直ぐに死者が集まりその穴を塞いでしまう。
集まった死者の所為で風鈴の有る灯篭の場所も定かではない。
「チッ、面倒臭ぇ真似しやがる」
「厄介だね……」
いっそ荷電粒子砲で丸ごとやっちゃうかなー、と考えたのが伝わったのか、恵の下へイチイがにんまりしながら近付く。
「おこまりかしらぁ?」
「おい、アレは無しだぞ」
透かさず声を送ってくる白夜へ、イチイはふふんと胸を張る。
「別に私の武器はアレだけじゃないわよぉ。それにぃ、死者が邪魔なら私が端末投げ入れて退かせばいいじゃなぁい?」
その言葉に、二人はあっと顔を見合わせる。
そう、此度の戦場に於いて、イチイは悪魔的とも言える特攻ユーベルコードを所持しているのだ。
「じゃあ行くわよぉ、そぉれっ」
何処か気の抜ける間延びした声と共にユーベルコードを発動する。
投げ入れられた端末が死者の動きを奪い、その場から立ち去らせる。
残ったのは無防備な灯篭が三つ。
「いくよっ、てぇい!」
即座に恵が砲弾を撃ち込む。
手前二つの灯篭は崩れ落ち、風鈴も粉々に砕けた。
一番奥の一つはギリギリで追加召喚が間に合い、爆風を死者が受け止める。
嘆きながら消えていく死者を見送り次の死者を呼び出す風鈴だったが、不意にその音色が止められる。
「捕まえたぜ、ガラクタさんよぉ」
念動力で動きを封じた白夜が、ニヤリと口の端を吊り上げる。
「せぇい!」
そのまま両手で挟み込む様に押し潰され、風鈴はぱらぱらと灰塵に帰した。
同時に残っていた死者達も消え去る。
見れば、左側の二人も風鈴を壊し切った様だ。
「…………っと」
やる事はやった、とばかりに白夜の人格が入れ代わる。
他の皆も警戒を解きながら集まってくる。
「皆お疲れ様」
「お疲れ様ですっ! まだ暴れ足りない気もしますけど!」
うにゃーっと両手を挙げるコトト。
まだまだ元気一杯の様子だ。
「ボクは暫く死人の相手は良いかな。弾の撃ち過ぎで肩が凝ったよ」
肩をぐるぐると回しながら笑う恵。
銃火器をフルに扱いながらの進撃は少々堪えた様だ。
「私は今回ので十分なデータも取れたしぃ、満足だわぁ」
イチイは白衣のポケットから何やら取り出し、データを入力していく。
色々と型破りな戦い方であったが、今回のMVPは彼女だろう。
「ふー、おつかれーぃ」
愛羅に乗ったパリジャードが一息吐きながらやってくる。
最後の方は愛羅と共に突撃して風鈴を踏み潰していた様だ。
多少梃子摺りはしたが、誰も怪我は無い。
時間稼ぎには向いているかもしれないが、単体では然程脅威ではない相手。
他のオブリビオンと合流される前に叩けたのは行幸と言って良いだろう。
紆余曲折有ったが、見事オブリビオンを討ち取った猟兵達。
そんな彼等が戻って先ずする事とは。
「取り敢えずお風呂と洗濯ですね」
「え、そんな臭う?」
「ええと……かなり」
人格が交代した事で周囲に立ち込める死臭に気付いた白夜。
彼の言葉に、四人は顔を顰めるのであった。
大成功
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