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エンパイアウォー㉖～褌一枚の少年とくんずほぐれつしたい

作者：ライ麦

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「御用だ！　御用だ！」
　まるで時代劇のワンシーンのように、「御用」の提灯と六尺棒を持った大勢の男達が屋敷を取り囲む。役人の合図で踏み込んだ男達は、屋敷の一室でのんびりと茶を飲んでいる老人を発見した。この老人が大悪災『日野富子』が放った悪徳商人オブリビオンであることは調べがついている。だが、屋敷にまで踏み込まれているのにも関わらず、この悪徳商人には動じた様子がない。訝しく思いつつ、役人は悪徳商人に十手を突き付けた。
「将軍様の命である。神妙にお縄につけぃ！」
「やれやれ、そう言われて大人しくお縄になる悪人がどこにいますかね……出番ですよ、剛鬼武童衆の皆」
　片目だけ開いて答えた悪徳商人が片手を振る。すると、「はいよ！」という威勢のいい掛け声と共に、廊下から押し入れから襖から天井裏から、次々に鍛え上げられた肉体を持つ、ふんどし姿の少年達が出てきた。役人は驚愕に目を見開く。
「な……何ぃ！？」
「こんなこともあろうかと、用心棒を雇っていたのですよ……さて、私は一足先にずらかりますから。後はよろしく頼みますよ、剛鬼武童衆の皆」
「承知つかまつりました！」
　剛鬼武童衆が拳で掌をパシンと叩く。
「あ……ま、待て！」
　我にかえった役人や男達が悪徳商人を追おうとする。だが、剛鬼武童衆が肉の壁となってその進路を遮った。

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「ふんどし一枚の少年達とくんずほぐれつしたいって人います？」
　机に両肘を立てて寄りかかり、口の前で両手を組んだ雨月・雨莉（は何もしない・f03581）が呟く。……うん。
　猟兵達から『おまわりさんこっちです』みたいな視線を向けられた雨莉が、慌てて訂正する。
「いや、その、すいません、言葉のあやっす……犯罪じゃなくて、ちゃんとした依頼っす、うん」
　だからそんな目で俺を見ないで欲しいっす、と消え入りそうな声で呟き、雨莉はちゃんとした説明を始めた。
「えっと、皆さんが徳川埋蔵金を素早く探索してくれたおかげで、幕府軍は補給物資を無事に集める事が出来た、んすよね。で、さらに、買い占めを行っていた商人の中に大悪災『日野富子』が放った『悪徳商人オブリビオン』がいることが判明した、と」
　ガリガリと頭を掻きながら資料を読む雨莉。このオブリビオンが逃走する前に資産を没収する事が出来れば、徳川幕府の財源が潤い、補給不足などで不利な状況となる事を防ぐ事が出来るという。そのため、幕府の役人達も討伐と資産の没収に向かっていたのだが。
「でも、悪徳商人オブリビオンの方もただで捕まるつもりはないんで……用心棒のオブリビオン、雇ってたんすよね」
　このままでは、せっかく討伐に向かっていた幕府の役人達が用心棒に返り討ちにされ、悪徳商人も逃げおおせてしまう。
「だから、皆さんにはこの用心棒のオブリビオンを倒して欲しいんす」
　それで、今回戦うべき用心棒のオブリビオンはというと。
「剛鬼武童衆っていう、極限まで鍛え上げた身体を持つ羅刹の少年部隊っすね」
　ここでようやく、雨莉の冒頭の台詞に戻る。剛鬼武童衆は、鍛え上げた肉体美を見せつけるかのようなふんどし姿で、己の身体のみを武器に戦うという。
「うん、だからそういう需要あるかなって……ほら、筋ショタ好きとか……マッチョ好きとか……」
　もじもじと指を突き合わせながら、雨莉が弁解する。あんまりな言い方である。それはお前自身の願望なんじゃないか、そういうの好きなんじゃないかと居合わせた猟兵が呆れた様子で突っ込むと、
「いやぁ、二次元の美少年は好きっすけどマッチョなのはちょっと守備範囲外っすね」
　と存外キッパリと言い切った。
「でも、俺の趣味とは違っても。世の中にはそういう、筋肉好きとか筋ショタ好きの方とか一定数いるんで。その人たちがやる気になってくれるかなって……あ、もちろんそれ以外の人達も参加ウェルカムっすよ」
　じゃぁ最初に誤解されるようなこと言うなよ、という空気が辺りを包む。参加しづらいじゃねぇか。
　という真っ当なツッコミはごもっともだとして。話が脱線したので元に戻そう。
　雨莉が取り繕うみたいに咳払いして続ける。
「えっと……言い忘れてたんすけど、悪徳商人オブリビオン自体には戦闘力ないんで。猟兵が討ち取るか捕縛すると消えるっす」
　悪徳商人オブリビオンは用心棒がいるのをいいことに悠々と逃走しているので、用心棒さえ倒してしまえばすぐに捕縛あるいは討ち取ることができるだろう。
「と、いうわけで。ふんどし一枚の少年達とくんずほぐれつしたい人も、そうじゃない人もよろしく頼むっす」
　最後まで余計なこと言いながら、雨莉は猟兵達を現場に送り出したのだった。

第1章 集団戦 『剛鬼武童衆』

POW   :    極武技・相撲 【敵の防具を打ち砕くほどの強烈な突っ張り】が命中した対象に対し、高威力高命中の【背骨折りの抱擁と、脳天から落とす投げ技】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。 SPD   :    極武技・空手 【視線】を向けた対象に、【一瞬で間合いを詰め、拳・蹴りの百連打】でダメージを与える。命中率が高い。 WIZ   :    極武技・柔術 【四肢と首を同時に極める関節技】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 イラスト：すねいる 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

「褌一枚の美少年とくんずほぐれつだなんて❤　美味しそうな子ばかりでもう我慢できないっ❤❤」
　ドゥルール・ブラッドティアーズ（狂愛の吸血姫・f10671）は剛鬼武童衆達を前にじゅるりと舌なめずりした。
「お、おう……？」
　何か嫌な予感がする。冷や汗をかいて一歩下がった剛鬼武童衆に、
「あら、怖がらなくていいのよ？　ありのままの私を見せてあげる！」
　とドゥルールは欲望解放（ネイキッド・フリーダム）した。次の瞬間、ドゥルールはアウトな部分だけが月下香の花弁で覆われただけの、一糸纏わぬ女神の姿に！
「へ……変態だー！？」
「そ、そんなあられもない姿……！」
　目を剥いて驚くやら、恥ずかしがって目を覆うやら。三者三葉の反応を見せる剛鬼武童衆達。いや、露出度でいえばそっちもそんなに変わらないのだが。
「裸には裸で対抗よ。さあ、お姉さんと遊びましょ❤」
　構わずウインクしたドゥルールは、欲望解放で得た飛翔能力で軽やかに空を駆け、剛鬼武童衆の壁に突っ込んでいく。
「ひゃぁぁ！？」
「ひ、怯むな！　ご主人様を守るんだ！」
　主人を守るため、果敢に突っ張りを繰り出す剛鬼武童衆達。それは確かに命中したかに見えた。だが、
「残念。今のは残像よ❤」
　音速を超えたドゥルールはその突っ張りを完全に見切り、残像でもって回避していた。そのまま剛鬼武童衆の褌を奪い取る！
「きゃー！？」
　一糸纏わぬ姿になった剛鬼武童衆が両手で局部を隠す。せっかくの突っ張りも当たらなければ意味はない。そんな剛鬼武童衆の背後をとり、抱きしめてドゥルールは囁く。
「あら、女の子との相撲は初めて？　お姉さんが教えてアゲル❤」
　そのまま胸を押し当てて誘惑し、首筋から吸血しつつ、そこから呪詛を注いで脱力させる。
「あっ❤　んぅ……ま、待って……」
「うふ❤　女の子みたいな声出しちゃって可愛い❤」
　脱力した剛鬼武童衆の身体をこちらに向かせ、押し倒して騎乗。そのまま生命力吸収で天国にイかせる！
「ひゃあぁぁぁっ❤　も、もうダメぇ……っ！」
「ふふ❤　みぃ～んな美味しく食べちゃうから❤」
　ぺろりと舌を出すドゥルール。獣欲、剛を制す。
　ここだけ18歳未満は見ちゃだめぇな光景が繰り広げられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ふっ、ふんどし姿の美少年とくんずほぐれつ！？」
　草野・千秋（断罪戦士ダムナーティオー・f01504）は赤くなった。それから、邪念を打ち消すように頭を振る。
「……いや、その手には乗りませんよ！」
　男子好き寄りのバイとはいえ、千秋には既に美少年美少女な彼氏がいる。誘惑には乗らない！　千秋は気合いを入れてユーベルコード『Judgement you only（キミノタメダケノセイギ）』を発動した。
「僕は負けられないんですよ、僕を信じてくれた人の為に！」
　己が認め信じた者、そして信じてくれた者のため。決して挫けない正義の心で自己の防御力を強化する。千秋はキッと前を見据えると、後方からスナイパーとして範囲攻撃を２回連続で浴びせた。
「つっ……！　なかなかやるな、お前！」
「でも、これはどうだっ！」
　千秋の攻撃を受けた剛鬼武童衆達は、彼に視線を向けると一瞬で間合いを詰めた。剛鬼武童衆の鍛え上げられた体と、少年らしい無邪気な瞳が千秋に迫る。千秋は思わず喉を鳴らした。
（「あーでもかわいいですね……かわいいですけど誘惑には……」）
　ブツブツ言いつつ、第六感を駆使して拳・蹴りの百連打を避ける。それでも避けきれない分は武器受け、盾受けで激痛耐性で耐えた。痛みに耐えて笑ってこそヒーローだ。千秋は笑って、前線へと躍り出た。
「今度はこっちの番だ！」
　そう言って、怪力パンチキックをお見舞いする。千秋こと断罪戦士ダムナーティオーは、着実に敵を減らしていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

「武器は己が躰の強靭と敏捷、そして丸腰で戦う勇気！　SUMO好きだもの、裸一貫で戦うのって憧れちゃう……！」
　ニコリネ・ユーリカ（花売り娘・f02123）はうっとりと手を組んだ。廻し姿ってステキね、とニコニコしていたら「いや、これ褌……」と突っ込まれた。
「えっそれ廻しじゃなくて褌？　そっかぁ」
　きょとんとしつつ、まぁいいかとニコリネは構える。
「女の私でも相撲が取れるなんてラッキー！　胸を借りてぶつかり稽古をお願いします！」
「よしきた！」
　元より身体一つで戦うことを良しとする剛鬼武童衆である。相手の方もきらきらした瞳で応じた。がっぷり四つに組み合って……はっけよーいのこった！
「んァアー！　強い！」
　さすが鍛え上げられた肉体を誇る剛鬼武童衆である。固い。ニコリネが必死で踏ん張っても押し出すことは叶わなかった。逆に押し出されてしまい、ニコリネはたたらを踏む。
「さすがね……！　もう一回お願いします！」
　ハァハァと荒い息を吐きつつ、ニコリネは人差し指を立てた。
「おう！　いいぞ！」
　剛鬼武童衆が再び構える。
「あ、今度は生身じゃなくて、花の移動販売車『Floral Fallal』で勝負ね！」
「え？」
　呆気にとられる剛鬼武童衆の前で、ニコリネはFloral Fallalに乗り込み、V型6気筒ツインターボエンジンの出力全開！　巧みなハンドリングで慣性をコントロールしつつ、フルチューンで強化した車体をぶつけて押し出す。自走車輌定常円旋回（マッシヴ・ヒップアタック）！
「進入角度をコントロールしながらヒール＆トゥー、アクセルでリヤを流して、ハンドルでフロントを流すの。ドリフトの基本操作よ！」
　などと解説しつつ。自動車による超高速スピンで次々に剛鬼武童衆達をなぎ払う！
「卑怯だぁあああ！？」
　抗議の声を上げつつ、花びらのように散っていく剛鬼武童衆達。ニコリネの一撃が、大分彼らの数を減らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「Wow！　Japanese Wrestling……SUMOUデスネ！」
　レイチェル・ノースロップ（ニンジャネーム「スワローテイル」・f16433）は瞳を輝かせて手を組む。
「そ・れ・な・ら、お姉さん一肌脱いじゃうわよ？　WAKE UP！」
　バチンとウインクしたが早いか、彼女は早業な早着替えでニンジャ風の赤い水着に大変身！
「さぁ、いきマスよ！　っと、その前に……腹ごしらえで『スシを補給する』ネ」
　そう言って、突然SUSHIを広げて食べ始めたレイチェルに剛鬼武童衆達も呆然。あんぐりと口を開けて見ている彼らに、
「ねぇ、Boy達、君たちも食べる？　今日はお姉さん手作りのRollSUSHIよ」
　とレイチェルは差し出した。
「えぇっ！？」
「そんな、敵から食べ物を貰うなんて……」
　驚くやらおっかなびっくり警戒するやら。怖々と見ている彼らに、
「大丈夫、毒なんて入ってないわ。はい、あ～ん♪」
　とレイチェルは笑顔で『あ～ん』する。
「もがっ！？　………お、美味しい……」
「え？」
　口に入れられた剛鬼武童衆が漏らした感想に、他の剛鬼武童衆も驚く。
「そ、そんなに美味しいんだ？」
「毒入ってないっていうのは本当みたいだし……」
　そこは年若い少年達のこと。興味津々で、初めはおずおずと、次第に夢中になってレイチェルのRollSUSHIを口に運ぶ。
「うまっ！　うめぇ！」
　笑顔で頬張る剛鬼武童衆達。ここだけ見ると年相応の少年のようだ。レイチェルも微笑んで、
「君は米粒が口に付いちゃって……ほら、取れたわよ？」
　と世話を焼く。敵同士とは思えない和やかな時間が流れた後、
「さぁ、腹ごしらえも終わったしFIGHTね！」
　とレイチェルは立ち上がった。
「おお！」
「望むところだ！」
　剛鬼武童衆達も生き生きとした瞳で立ち上がる。
「でもSorry……お姉さん、おスシを食べるととっても強くなるのよ？」
「え？」
　剛鬼武童衆が目を瞬かせる。瞬間、レイチェルは凄まじい速さで駈け出した。
「はやっ！？」
　その姿に、『おスシを食べるととっても強くなる』という話がウソでも誇張でもないことを理解した剛鬼武童衆は、慌てて強烈な突っ張りを繰り出す。それを残像で華麗に躱し、
「このっ……！」
　と飛びついて四肢と首を同時に極める関節技を仕掛けてきた相手には、相手の力を利用してカウンター！　逆に関節技をかけ返す。全身の細胞とニンジャ・フォースが活性化したレイチェルはもはや誰にも止められない。破竹の勢いで次々に残った剛鬼武童衆を撃破していく。
「つ、強い……！」
　戦慄する剛鬼武童衆に、
「これに懲りたらもうイタズラしちゃダメよ？」
　とめっ、と額をこつんとするレイチェル。
「りょ、了解……」
「ま、参りました～」
　負けを認め、白旗を上げる剛鬼武童衆。気付けばもう全滅していた。

　その後。屋敷の周囲を捜索したところ、用心棒がいることですっかり油断しきった悪徳商人がのんきに岩に腰かけて茶を飲んでいるのが発見された。当然すぐに捕縛され、資産も没収。幕府の財政も潤うだろう。これで戦争を少しでも有利に進められることを祈りながら、猟兵達はその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月12日