エンパイアウォー㉒~それは戦いにあらず
――鉄錆の、臭い。
手足は砕けて。
上手く息ができない。
やたらと寒いのに。
この、生暖かいものは。自分の、血か。
生れ落ちた時より、この身は忍。
死の覚悟はできている。
だが、あれは強すぎる。
誰も敵わぬ。みな殺される。
だれか。
だれでもいい。
逃げろ。伝えてくれ。
ここには鬼が居ると。
動け。動け。動け。
既に体は死すとも。魂はまだここにある。
刀を握れ。振りかぶれ。
ほんの一時でも、時をかせ――…………。
●
「魔軍将たちも見つかり始めて、盛り上がってるところ悪いんだけど……」
少し頼まれてくれないかな、と。
羅刹のグリモア猟兵――蛍火・りょう(ゆらぎきえゆく・f18049)は、事件の説明を始めた。
「みんなが『風魔忍法隕石落とし』を素早く阻止してくれたおかげで、風魔忍軍の拠点をいくつか見つける事ができたらしい」
発見した拠点を襲撃して潰して行けば、風魔忍軍の情報力が減少し、織田信長軍の作戦行動にも影響を及ぼす事ができるだろう。
その襲撃は、徳川家の忍びである『服部忍軍』の忍びたちが担ってくれるのだが、1つ問題がある。
「見つけた拠点の中には、どうやら強力なオブリビオン集団が残っている場所もあるみたいだ」
今回、服部忍軍が襲撃しようとしているのは、山奥の古い神社。
その本殿も庭も、戦うのに十分な広さがあるのだが、いかに服部忍軍とて、敵方の風魔忍軍に加えて、オブリビオンまで相手にするとなると非常に分が悪い。
「でも、オブリビオンが居るから行くのを止めろ……と言っても、服部忍軍の人は聞かないだろうね。戦いに赴く以上、死は覚悟の上だ」
けれど、拠点へと向かった後に、彼らに訪れるのは『戦いの中での死』ではない。
「あれは一方的な虐殺だよ。相手が悪すぎた」
古寺の拠点で待ち受けるオブリビオンは、血肉に飢えた黒き殺戮者『禍鬼(まがつみ)』。
一度その殺戮衝動に火が付けば、敵味方の分別すらない忌まわしき鬼だ。
鍛え抜いた忍たちと言えども、このオブリビオン達が相手では、戦いにすらならない。
「だから、このオブリビオン……禍鬼は、みんなが倒してきて」
禍鬼の相手を猟兵たちがこなしてくれれば、服部忍軍は風魔忍軍との戦いに集中できるはずだが、禍鬼の振るう技には広範囲に影響を与えるものが多い。
全く犠牲を出さずに勝つ……と言うのは、難しいかもしれない。
「敵は本殿内に居るから、そこから戦いが始まると思う。でも、外も十分戦える広さがあるし、本殿以外にも色々な建物があるからね。上手く禍鬼をおびき出したり、あるいは服部忍軍に的確な指示を出してあげれば、多少は被害を抑えられるんじゃないかな」
服部忍軍は、猟兵たちの言葉なら、出来る限り応えようとしてくれるだろう。
だが、彼らも戦いの中に生きる者たち。
例え猟兵たちが劣勢になったとしても、「戦いを投げ出して逃げろ」といった指示には従わないので、そこは上手く共闘してきて欲しい。
「それじゃ、準備はいいかな?キミたちの武運を祈っているよ」
音切
音切と申します。
本シナリオのリプレイは、キャラクターさんや登場する『服部忍軍(NPC)』に
負傷・流血・(NPCのみ)死亡の描写をする可能性が高いです。
苦手な方はご注意くださいませ。
成功条件は、オブリビオンの殲滅です。
『服部忍軍』に被害が出ても、失敗にはなりません。
『風魔忍軍』の相手は、『服部忍軍』が務めてくれます。
オブリビオンによる被害が少なければ
『服部忍軍』は、問題なく『風魔忍軍』を倒す事ができますので
『風魔忍軍』への対処は、必要ありません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦
『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』
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POW : 伽日良の鐵
【サソリのようにうねる尻尾(毒属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 欲欲欲
【血肉を求める渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ : 鳴神一閃
【全身から生じる紫色に光る霆(麻痺属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:ヤマモハンペン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
杼糸・絡新婦
忍びに使われとった身としてはなあ、
否定も説得も無理なんやったら
その死を覚悟してまで果たす任務、
せめて成功できるように、
自分のできること限られとってもしましょか・・・難儀なことや。
錬成カミヤドリで鋼糸・絡新婦を召喚。
出来るだけ戦場を分けたいな、
【パフォーマンス】でひきつけ
【フェイント】で敵を外へ出すよう誘導を図る。
服部忍軍には出来るだけ自分から離れて
内部の風魔連中と戦うよう声掛けておく。
・・・後は知らん、そっちはお任せしときます。
【罠使い】で糸を蜘蛛の巣のように張り巡らせ
相手に絡みつくようにして拘束・切断。
また拘束できた【敵を盾にする】ことで
翻弄と防御に使う。
カーニンヒェン・ボーゲン
忍軍の、誰しもが戦う意思を持つ者達です。
戦の最中にあり、下がれと命を下すのは誤りでしょう。
故に、このジジイめが言えるのはこれだけです。
戦う相手を間違えるな。と。
『コレ(禍鬼)』は我々、猟兵の管掌です。
服部忍軍は、『風魔忍軍』との戦いに集中できるよう布陣しなさい。
要はコレの相手はせずに場所を変えなさい。という事なのですけれどね。
UCでアザゼルを呼び、忍軍を追う魔鬼を優先して狙わせます。
破魔と鼓舞、援護射撃で精度が増せば上々。
このジジイを倒さねば、他の血肉は得られぬとの認識を持っていただきましょうか。
退路はないでしょうが、致し方無し。接近戦は刀を手に行います。
さて、どこまで時間が稼げますかな…。
朱葉・コノエ
…禍鬼。確かに強い相手です。下手をすればあっけなくその命は刈り取られるでしょう
…それでももし貴方達が勝ちたいのなら。私にこの刀で奴を斬る時間をください
服部忍軍の方々には風魔忍軍を相手してもらいたいですが、私が禍鬼を引き付けますので、なるだけ敵とは距離を取って戦ってください
禍鬼の攻撃は【見切り】で最小限に躱しつつ、広い場所へ誘導します。
多少のダメージは覚悟の上で、攻撃のタイミングを伺います
集中を研ぎ澄ませてその時が来たら、【紅颪流・迅旋】で一気に体を斬り飛ばしていきましょう
…犠牲失くして戦は終わらない
ここで死んでいった者の無念くらいは…私の剣でも晴らせたでしょうか
※アドリブ、他猟兵の絡み歓迎
山の奥。
さくさくと、木の葉を踏む音が静かに響く。
崩れかけた石の階段を上って鳥居をくぐれば、目指す本殿は目の前。
その扉は、大きく開かれて。
蝋燭の橙色の中をちらちらと、人影が過ぎゆく。
既に、戦端は開かれているのか。
逸る心のままに、猟兵たちは本殿の中へを飛び込んでいく。
「散開しろ!」
中で待ち受けていたのは、圧倒的な殺意を纏う鬼の群れ。
そして2種類の、装いの異なる忍たち。
鋭い声を上げたのは、隊長の役割を持つものだろうか。
その声に応じて、忍びたちが部屋の中に散れば、猟兵たちの視界も開けて……。
唸り声をあげ、進み出る鬼の金棒は、既に赤く濡れている。
その足元に転がっている忍たちは、既に、人の形をしていなかった。
その身に、痺れるような禍鬼たちの殺意を感じながら、朱葉・コノエ(茜空に舞う・f15520)が飛び出す。
ふわりと黒い羽を散らせて、忍へ迫る禍鬼の元へと一直線に。
その手に構えるのは、凩の名を持つ刀。
だがその刃はまだ、隠したまま。鞘を以って、禍鬼の顔面を殴り飛ばせば。
さしもの禍鬼も痛みを覚えたか、たたらを踏む。
(……禍鬼。確かに強い相手です)
既に、2名の服部忍軍の命が失われている。
猟兵たちの到着が、遅かった訳ではない。
他の服部忍軍たちがほとんど怪我を負ってはいない点から見ても、恐らく戦いは始まったばかりのはずだ。
ならば、あの地に伏した者達は……1撃の元に、その命を刈り取られてしまったのだろう。
あまりにも、あっけなさ過ぎる。
それは、ここからの戦いも同じ事。
禍鬼の攻撃が服部忍軍を襲えば、塵を払うかのように、彼らの命は失われていく。
だが、それでも……。
「私に、この刀で奴を斬る時間をください」
その背に、忍たちを庇うように降り立ったコノエが、背中越しに声を掛ければ。
あなた方は……と、忍たちが顔を見合わせる。
「コレ(禍鬼)は我々、猟兵の管掌です」
忍たちの問いに答える、落ち着いた男性の声。
後方より、控えし異形が放つ風矢の中を、カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)はゆったりと、杖を鳴らして進み出る。
その表情は穏やかなようでいて、その実、眼光は鋭く禍鬼を捉えていた。
突如介入してきた新たな勢力――猟兵たち――を前に、戦場に動揺と困惑が広がる。
だが、カーニンヒェンの発した『猟兵』という言葉と、藍色の髪を持つ侍が身に着けていた天下自在符に、服部の者達はすぐに気付いてくれたようだ。
「猟兵の方々……!」
目を見開き驚く服部の者達の反応に、あるいは、天下自在符を盾に「下がれ」と命じれば、言う事を聞いてくれるだろうかと。そんな考えが頭を過るが。
それは誤りだ、と。
カーニンヒェンはすぐさま、その考えを振り払う。
猟兵たち、忍たち、そして進軍を続ける徳川軍の者たち。
立場は違えど、誰しもが戦う意思を持ち、各々の戦場に立っている。
ならばその意思を折って「下がれ」など。口にしていい筈がない。
自分に言える事は、ただ1つ。
「戦う相手を間違えてはなりません。出来る限り場所を変え、風魔忍軍との戦いに集中できるよう布陣しなさい」
禍鬼は私が引き付けますので、と。
カーニンヒェンの言葉に、更に緑髪の猟兵の言葉が後押しとなって。
幾人かの忍が、本堂の外へと駆けだしていく。
だが、本堂の中には、禍鬼たちを盾にする形で控える、風魔忍軍の姿。
風魔の者達が多く居る以上、服部忍軍も、その大半がこの場に残らざるを得ないというのが実状だ。
「そうそう、自分らからは出来るだけ離れといてな」
カーニンヒェンの言葉に、あまり戦場に似つかわしくないゆったりとした声が続く。
口元には、穏やかな笑み。人形のような漆黒の髪に一房だけ混じる黄色は、何故か見る者に危機感を抱かせる、そんな色味で。
杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)が杼より解き放つ鮮やかな糸は、風もない屋内にふわりと舞う。
禍鬼たちの間を縫って、舞わせたそれを素早く手繰れば。
鋼の糸は、鋭い刃となって禍鬼たちを傷付ける。
(もう少し深く切れると思ったんやけどねぇ)
想像以上に、禍鬼たちの体は頑丈に出来ているらしい。
だが、パフォーマンスとしては十分だろう。
禍鬼たちの意識が、自分たち猟兵に向けばそれでいいのだから。
「おたくらの相手は、風魔の連中。そっちはお任せしときます」
任せると、そう、口では言っても。
心の中では、難儀なことだと。絡新婦には、そんな思いもある。
仲間が血の海に伏して、禍鬼との実力差ははっきり認識しているだろうに。
仲間も自身の命も、失うことになるだろうと知って。
それでも、誰一人として、逃げ出す事はない彼らには、恐らく、否定も説得も通用しない。
忍に使われていたモノとして、彼らの在り様は良く知っているけども。
人の姿と共に得た心で、それに納得出来るかは、また別の話。
それでも今はただ、彼らが任務成功という手柄と共に帰還できるように。
自分に出来る事をするだけだ。
――鬼が、吼える。
部屋に満ちていく血臭に、血肉を求める衝動が呼び起こされたか。
禍鬼たちの筋肉が盛り上がり、体が膨らんでいく。
「禍鬼たちを広い場所へ!」
その禍鬼たちの体を足場に、戦場を飛び回りながらコノエが叫ぶ。
本殿は、戦うのに十分な広さがあるとは言っても、身を隠せるような障害物はない。そして、この禍鬼たちの数と大きさ。
このまま戦えば、本殿に残った服部忍軍に逃げ場はなく。全滅するのは目に見えている。
――1体でも多く、外へ。
悲鳴と血しぶきが上がる戦場を、少しでも分断せんと、絡新婦の糸が戦場に張り巡らされて。
魔の者が放つ風の矢と、あえて禍鬼たちの視界を奪うように飛び回るコノエが、その注意を引く。
この場を戦場にしないために、その手に携えた刀は、未だ鞘に納めたまま。
だが、体を膨らませ勢いを増した禍鬼の攻撃は、コノエの身軽さを上回る。
腹を抉るような、衝撃。
息が詰まり、血臭が鼻をつく。
そのまま金棒を振りぬかれて、軽い体は容易く吹き飛んだ。
本堂の扉を潜って、肩から落ち。そのまま転がった地面に残るのは、赤い痕跡。
転がる勢いを利用して、何とか体は起こしたものの。
肺を刺すような痛みに、上手く息が出来ない。
空気を得られず、揺れる視界に見えるのは、コノエを追って飛び出して来る、3体の禍鬼。
――これでいい。
吹き飛ばされても、決して手を放す事が無かった、刀に手をかけて。
あえて、ゆっくりと息を吐く。
この苦しみも。痛みも。
命を失った者たちのそれに比べれば、堪える事ができよう。
『斬る』
ただこの一念の元、踏み出した足は力強く地を捕らえて。
振り抜いた一閃は、風となって飛ぶ。
――飛びなさい、鴉の刃。
この戦が終わる時、犠牲となった者たちへ、『勝利』を手向けとするために。
その無念を晴らせるように。
鴉の刃が、禍鬼たちを斬り刻む――。
●
コノエと、そして他の仲間たちの活躍によって。
かなりの禍鬼が、外に出ていったように思う。
屋内で戦い続けている者たちも、可能な限り禍鬼と忍たちを分断するよう動いてくれてはいるが……本殿内に漂う血の臭いが、段々濃くなってきている。
何より、忍たちを守ろうとすればするほどに、猟兵たちの攻撃の手は薄くなる。
せめてあと数体、外へと引っ張り出して、攻めに転じたい所だが。
(やれやれ、この老体には堪えます)
額より流れ落ちる血に、カーニンヒェンは、普段は穏やかな笑みを浮かべている顔を少し顰めて。目に入らぬように、拭う。
距離を開ければ、禍鬼たちの注意は、服部の忍へと向かうだろう。
ゆえに、刀を手に、カーニンヒェンは禍鬼へと迫る。
この身を倒さねば、他の血肉は得られぬのだと、そう知らしめるために。
だが、この老兎がいかな名刀といえども。あの金棒をまともに受けては、折れるのは必至。
攻撃を受け止められない以上、避け続けるしか手はないが、それにも限界がある。
禍鬼が体を膨らませる程に、かわし切れない攻撃が増えて来ていると。
体のあちこちに、徐々に増えていく傷の痛みが告げていた。
そろそろ頃合いでしょうか。
魔導書を手に、告げるのは悲しき霊の名。
呼び出された異界の存在は、3対の翼を広げて風を織り成す。
膨らみ過ぎた禍鬼の巨躯ならば、狙う必要もなく。
「血肉を得る機会は、もはや無いと知りなさい」
このジジイを倒せない時点でね、と。
極限まで束ねた一矢は、禍鬼の体を穿った――。
●
分断の為に、展開し続けいた鋼糸を手繰って。絡新婦はその糸で、禍鬼たちの腕を絡め捕る。
「ほら、鬼さんこっちや」
腕を斬りつけるのと同時、絡新婦が微笑みかければ。
怒りのままに、向かい来る禍鬼たち。
ただ真っ直ぐに、向かい来る動きならば、絡め捕るのは容易い事。
我先に絡新婦へ飛び掛からんとした禍鬼の手足に、鋼糸を絡めて。
ぐいと引き寄せれば、禍鬼の体はくるりと反転する。
後続の禍鬼が振りかぶった金棒は、そのまま先頭の禍鬼の体へと――。
だが、ここで1つの誤算。
仲間が盾にされているというのに、禍鬼の金棒は速さを落さずに。
一切の加減なく、振りぬかれた。
絡めた鋼糸をそのままに、殴られた禍鬼の体が吹き飛んで。
急激に引っ張られた絡新婦の肩から、ごきっと嫌な音がした。
肩が外れたか、指が上手く動かない。
仮初の体とは言え、痛みは確かにあるというに。
だらりと動かぬ手をぶら下げた絡新婦に、本殿から飛び出して来た禍鬼が、迫る。
「仲間でもお構いなしいうんは、感心せんね」
腕は全く動かないが、絡新婦の顔には、いつもの笑顔。
だって、ここはもう屋外。
限られた空間では展開しきれなかったが、ここならば――。
46もの蜘蛛の糸が、月明かりに煌めく。
絡新婦自身が、指先一つ動かせずとも、中空に浮かぶ『彼自身』は、禍鬼たちの体を捕らえて。
両の腕を、足を。その尾を。そして最後は……。
「追いかけっこは、もう終いや」
その首を、斬り落とす――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
月舘・夜彦
【華禱】
天下自在符を見えるように服に付け、服部忍軍に味方と分かるようにする
来る者が「敵」なのだから
服部は倫太郎殿が確認したヒトの多い方へ誘導
その間も禍鬼を確認したのなら優先して狙う
ダッシュにて接近、先制攻撃・早業より斬り込む
2回攻撃で手数を増やしてなぎ払う
この瞬間、狙いは此方へと向かい反撃が来るだろう
――抜刀術『八重辻』、全て斬り返す
例え狙いを此方にしても全ては不可
禍鬼が服部の忍へと向かうのは抑えられない
それでも動けるのなら庇おう
激痛には耐えられる
この身は仮初、欠けようとも戦い続けられる
――彼等は
彼等を他人には思えない
同じ戦う者だから
誰かの為に戦う者だから
だからこそ、生きていて欲しいと思う
篝・倫太郎
【華禱】
Lorelei起動させて熱探知と集音機能で
最低限「禍鬼」と「ヒト」の区別をつける
流石に風魔と服部までは見分けらんねぇな
場所を判別したら夜彦と情報共有
禍鬼が多い場所でそのまま対処しちまおうぜ
俺らが戦場に想定した場所に居る服部の連中には
「ヒト」の反応が多かった箇所を情報提供し
そっちの対処を依頼
この場に風魔も多く居るなら戦いつつ移動するよう指示
服部の連中が移動するまでは
見切りや残像で回避とオーラ防御で防ぐのを優先
敵の攻撃圏外に服部が出たら反撃と行こうぜ
拘束術使用
射程内の総ての敵に攻撃
俺自身も華焔刀でなぎ払いの範囲攻撃
刃先返して2回攻撃
攻撃は全て衝撃波をのせてく
可能な限り夜彦のフォローも行う
駆け付け、飛び込んだ本殿では、既に床に伏している忍の姿。
床に広がる赤色と、人の形からかけ離れてしまった姿が、彼らに既に息が無いことを告げていた。
決して、猟兵たちの到着が遅かった訳ではない。
ただ彼らの命は、戦端が開かれて、瞬き1つの間に刈り取られてしまったのだ。
戦う事さえ、許されないままに。
猟兵たちの介入に周囲が騒めく中、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が身に着けた『天下自在符』を目にして、服部方の忍が声を上げる。
「猟兵の方々……!」
既に失われてしまった命にばかり、意識を奪われている場合ではない。戦いは始まったばかり。
無事な忍たちの命を、1つでも多く守るために。銀の刃を手に、夜彦は禍鬼へと駆ける。
忍へと迫らんとした禍鬼に、袈裟斬りの一撃。
だが、刀を握る手には、反発を感じるような手応え。
頑丈過ぎる体に、思ったほど、刃が通らない。
ならば、と。
体を回転させたもう1撃を、寸分違わず同じ軌道で斬りこめば。
流石の禍鬼も、咆哮を上げた。
「外にもまだ、服部の者が居る様子」
唖然としている忍を、背中に庇う位置に構えて。
夜彦が篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)へと視線を向ければ。
「鳥居の横の小せぇ小屋みたいなのと、授与処のあたりだ。たぶん10人ぐらい」
このままだと、袋のネズミになる、と。
この本殿に来るまでに、装備した電脳ゴーグル――Lorelei [ RKS ]――が示した反応を、倫太郎が告げて。
「承知。お任せを」
服部の忍が7人。素早く外へと飛び出していく。
その判断の速さには、頼もしさを感じるが。
そんな彼らでも、このオブリビオンには歯が立たないのだという。
「あんたらも、出来るだけ戦いつつ移動してくれ」
この場に残った服部の忍にも、倫太郎は声を掛けるが。
敵方の風魔の忍も、馬鹿では無さそうだ。
オブリビオンである禍鬼を前面に、風魔の忍たちは後ろから支援する布陣に、倫太郎は舌を打つ。
あの布陣を前に、戦いつつ移動してくれ……とは。
我ながら無茶な要求だと。
「出来る限り、やってみます。ですが、我らの事は気になさらず」
応じる忍たちも、分かっているのだろう。
何故、そのような要求をされているのかも、その要求に応える事の難しさも。
幾人かの猟兵が、禍鬼を外へと誘いだしている今、必要なのは時間。
障壁となっている禍鬼たちを散らして、突破口を作る事が出来れば――。
放った不可視の鎖が、床を、壁を跳ねるようにして、禍鬼へと迫る。
出来るだけ多くをと意思を込めて放った鎖は、しかし禍鬼の体を捕らえきる前に、咆哮と共に振り払われた。
一応、ダメージは与えられた筈だが……禍つ鬼の名にふさわしい、その力と頑丈さが、複数体を纏めて捕らえる事を、困難にしている。
鎖を振り払う、その隙を突いて。夜彦が踏み込んだ。
逆袈裟の一撃は、やはり……丈夫過ぎる体を浅く斬りつけるに留まるが。
振るった刃は流れるように、宵色の鞘へと収まって。
体を沈めたその姿勢は、抜刀術のそれ。
金棒を振り上げる禍鬼を援護せんと、風魔の忍が手裏剣を放つ。
だが服部の忍が、すかさず迎え撃つ手裏剣で弾き飛ばせば。
緑の眼光が、禍鬼を射抜いて。
鞘を走らせ切り上げた剣戦は、今度はしかと禍鬼を両断した。
猟兵たちの奮戦と、仲間の操る絡繰り人形の応援で。服部の忍たちも、勢いを増していた。
だが、あまり血肉を得られない事に、痺れを切らせた禍鬼の尾がうねる。
尾そのものが意思を持っているかのように、激しく動いて。叩きつけられた先に居たのは――風魔の忍。
「あいつ、仲間を……!?」
動揺する忍の声に、夜彦の背筋に冷たいものが下りた。
敵味方の分別ない、あの、攻撃は――。
剣を構えた。
全員は、守れない。
それでも1人でも多くを、この背に守らんと。
身構えた夜彦の、目の前が陰る。
しかしそれは、禍鬼の尾ではなく……。
「猟兵さま!」
目を見開く夜彦の前。夜彦を押し退けながら身を投げた忍に、禍鬼の尾が落ちた。
嫌な音が響く。
「てめぇ!!」
感情に任せ振るわれた倫太郎の薙刀から、衝撃波が放たれて。
禍鬼を押し返すけれど。
伏した忍の腰から下は、もう……。
床に広がっていく赤色に、夜彦は奥歯を噛んだ。
この身の激痛ならば、どんな痛みでも耐えてみせよう。
例え手足が欠けようとも、この仮初の体ならば戦い続けられるのだから。
だが、彼は。この負傷は。
取り返しがつかぬというのに。
伏した忍は、夜彦の表情をどう見たのだろうか。
血に汚れた口元で、笑みを作って。
「我らを……気に、なさるな。この鬼は……貴方方しか……」
声は掠れて。血の気が引いた唇は、震えている。
「鬼を――……」
最後は音にもならずに。
忍は、その動きを止めた。
この戦い。勝利の鍵を握っているのは、他ならぬ猟兵たちであると。
この場の誰もが、理解しているからこそ。
その猟兵が、自分たちのために血を流すなど、あってはならないのだと。
そういう事なのだろう。
目指したものは同じ、勝利の二文字であったはず。
だが、そこに思い描く光景が、あまりにも違っていた。
簪であったこの身に心を得て、それなりの月日が経つ。
けれど今、この胸に渦巻く感情は。
とても言葉に出来そうにない。
誰かの為に戦う忍たちを、人を守る側に立つ者たちを、他人とは思えなかった。
彼らにとっては、夜彦もまた守るべき対象なのだと気付けば、猶の事。
この戦いを、生き残って欲しいと。
刀を鞘へと納めて、抜刀の構えを取る。
守り切れなかった者の想いは、この刃にて請け合おう。
彼らが、自分さえも守ろうとするのならば。
そのような暇さえない程に、速く。全ての攻撃を斬り返してみせよう。
それが、あの者の願いなのだから。
声にはならなかったが、この耳には確かに届いていた。
『鬼を、討ってくだされ』と。
夜彦の纏う空気が変わったのを感じながら、倫太郎もまた攻勢へ転ずる。
禍鬼の放つ無差別の攻撃に晒されながらも、頑なに居残る風魔が居る以上、服部の者達も、もう外に逃れる者は居ないだろう。
これ以上の犠牲を出さないために出来る事は、一刻も早く、この戦いを終らせる事。
放った拘束術に、薙刀の衝撃波を乗せて。
禍鬼を押し返せば、後方に控える風魔の忍たちが、焦りを見せる。
……忍たちの戦いにまで手を出す気はないが、勝手に巻き込まれる分については、倫太郎の知ったことではない。
もはや手裏剣だけでなく、忍者刀まで投擲してくる風魔忍軍に、夜彦の集中を乱させはしないと。
服部の者たちと共に、それらを打ち払えば。衝撃波の余波が、風魔忍軍を撫でて。
風魔の支援が途切れた間。
金棒を振り下ろさんとした禍鬼は、誰の血肉を得る暇もなく。
銀の一閃に、倒れ伏した――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
杜鬼・カイト
【兄妹】
※アドリブ歓迎
兄さまの敵はオレの敵
安心してください
それが兄さまの願いなら、オレが全部壊してあげますからね
人命よりなにより兄さま優先
兄さまの邪魔をする敵を狙って攻撃
息を殺し、音を立てず【暗殺】するように刀で斬りつける
「兄さまの邪魔をするなら……壊れちゃえ」
笑みを浮かべつつ攻撃(目は笑ってない)
【永遠の愛を誓え】を使い、アイビーの蔦で禍鬼の行動を制限
蔦を思い切り引っ張って、捕らえた禍鬼を引寄せ斬りつける
斬りつけたら敵を蹴って離し、距離をとる
いやぁ、兄さま危なかったですねぇ(満面の笑み)
「オレがいてよかったでしょう?むしろオレがいないと、でしょう?」
戦闘中でもいつもの調子
杜鬼・クロウ
【兄妹】
アドリブ◎
これ以上無駄な血ィ流させたくねェ
ましてや俺の宿敵が関わってるとなれば
…一度しか言わねェ
手ェ貸せカイト
服部軍へ往かせねェよう俺が壁を作る
出来うる限り俺達へ引き付けろ
弟と切り離せない歪な絆と縁
語る背中は信頼の証
連係取る
服部軍に禍鬼から極力離れるよう指示
【錬成カミヤドリ】で47枚の鏡召喚
鏡で服部軍と禍鬼を分断し障壁にする
人命優先
味方へ危害及ぶ時、鏡で防御(武器受け・カウンター
軍が手薄な方へ誘導
ち、間に合えッ…!
…調子に乗ンな
礼は言わねェ
頭に血上るも弟のお陰で冷静に
竜巻の如き魔風の素を玄夜叉に宿し敵の尾を斬り落とし胴を突く(属性攻撃・2回攻撃・部位破壊
建物内なら壁を蹴り半回転し斬撃
――………一度しか言わねェ。
山を走る。
さくさくと木の葉を踏みしめる音の中、未だ耳に残る、出発の時の言葉。
――手ェ貸せカイト。
そう言った。言ってくれた言葉が。
繰り返し、繰り返し。この耳に蘇る。
あぁ、紡ぐ唇が。奏でる一音が。
余韻さえ、愛おしい。
あぁ、いけない。
これから、敵を片付けないといけないのに。
兄さまと、一緒なのに。
つい、口元が緩んでしまう。
走る足は軽く。その手に刃を携えて。
杜鬼・カイト(アイビーの蔦・f12063)は、山奥の神社。その本殿へと真っ直ぐ駆ける。
「安心してください。兄さま」
本殿の入り口、ちらちらと見える人影に、妖刀の柄へ手をかけて。
「オレが全部壊してあげますからね」
返事も待たずに速度を上げて、本殿へ。
入口は1つ。ゆえに、真正面からの特攻。
だが、速く。そして音もなく振るわれた一閃に、反応すらできず首を斬りつけられた禍鬼が、たたらを踏む。
何事かと周囲が騒めくが、そのような騒音、カイトには関係ない。
その辺に転がる有象無象が、自分を何と思おうと、どうだっていい事。
今はただ、兄さまの願いの為に。
「兄さまの邪魔をするなら……壊れちゃえ」
敵。敵。敵。
兄さまの敵が、こんなにたくさん。
兄さまの敵は、オレの敵。
こんな連中、兄さまの目に映る価値もない。
全部、全部、片付けないと。
他の誰でもない。オレが。
兄さまが、手を貸せと言ってくれた、このオレが。
うっすらと、整った口元に笑みが浮かぶ。
だが、カイトが刃を振るう前に響く、もう1人の声。
「服部軍へ往かせねェよう俺が壁を作る。出来うる限り俺達へ引き付けろ」
声色は冷静に、しかし、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の心は焼け付く程に燃えている。
この、目の前の鬼たち。
その姿を、力を、よく知っている。
あの記憶は、今も鮮明に焼き付いたまま。
あの時と、決して同じにはしない。
これ以上、無駄な血を流させはしないのだと。
呼び出した48枚の鏡は、忍と鬼を隔てる壁となる。
念のため、服部の忍たちにも極力離れるよう指示は出したが、敵方の布陣に思わず舌を打つ。
オブリビオンである禍鬼を前面に、風魔の忍たちが後ろから支援する敵の布陣が、服部の忍がクロウの指示に従う事を困難にしていた。
それでも、打てる手は全て打つ。
その為に、妹にも――カイトにも声を掛けたのだ。
体を膨らませ、忍へと迫る禍鬼へ、間に合えと。
黒き剣を振るえば、高い金属音が響いて。
しかし、この手応えは。
あの時よりも遥かに軽く、過剰に込めていた力が禍鬼を押し返す。
「ありがとうございます、猟兵さま。しかし、我らの事は気になさるな」
背中に、守った忍からの言葉を受けて。
何故か奇妙に、心が騒めく。
あの時と、同じ敵。
だが、この背に守らんとする人々は。あの時とは違う。
彼らもまた、戦いの中に生きる者たち。
例え禍鬼には敵わぬと分かっていても、己が役割を果たすため、決して引く事はないだろう。
いっそ、邪魔だから失せろと言ってしまえれば、楽だろうか。
だが、そのような言葉、紡げる筈がない。
力及ばずとも、出来る事を必死で成そうとする彼らの姿は。
あの頃の、自分を見ているようで――。
「兄さま……!」
いつの間にか、体勢を立て直していた禍鬼が、クロウへと迫る。
それを押しとどめたのは、緑の葉を備えた蔦。
視界を奪う程に、容赦なく絡みつく蔦に、禍鬼は動きを止めて。
カイトが手を引けば、ぐらりと禍鬼の体が傾いた。
その体が、地に着く前に。
切り上げた刃が、禍鬼の首を断つ。
「いやぁ、兄さま危なかったですねぇ」
落ちた禍鬼の首を、小石のように蹴り転がして振り返れば。
あぁ。
兄さまの美しい瞳が。オレを見てくれている。
いつだって。こうやって。
兄さまを守れるのは、オレだけなのだから。
対の双眸で、うっとりとクロウを見つめて。
「オレがいてよかったでしょう? むしろオレがいないと、でしょう?」
「……調子に乗ンな。礼は言わねェ」
……カイトの笑みは、別の意味で心が波立つけれど。
それでも、いつも通りの妹の姿は、クロウを『今』へと引き戻す。
同じ敵でも、あの時とは違う。
過去との差異を探すよりも、今やるべき事がある。
雷光の迸る禍鬼へ、クロウは駆けた。
振るう大剣は魔風の力を得て、雷光諸共に禍鬼の尾を斬り落とす。
だが、怒りの咆哮と共に、禍鬼は体を膨らませて。
振るう金棒が、クロウを捕らえた。
辛うじて、剣で受けたが。
手が痺れ、息が詰まるほどの、衝撃。
床から足が離れて。
しかし壁に激突する直前に、逆に壁を蹴った。
あの時より、過去より、来るものならば。
その宿業を刻み込み、過去へと還すのみ。
黒き刃は迷いなく、冴えて。
禍鬼の胴を、差し穿つ――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クラウン・アンダーウッド
アドリブ歓迎
露払いはボクらにお任せを♪さぁ、張り切っていこうか!
応援特化型人形による人形楽団の【楽器演奏】による【パフォーマンス】で味方を【鼓舞】。
からくり人形と共に【空中浮遊】【空中戦】による空中機動で相手を翻弄しつつ攻撃を行う。戦場の【情報収集】をもって敵の動きの掌握を図りつつ、危険な事象は【第六感】で察知し【武器受け】【オーラ防御】【拠点防御】で防ぐか回避する。【怪力】でうねる尻尾の動きを制限させ、大量の投げナイフを敵に突き立て相手をハリネズミのようにしよう♪
敵を可能な限り味方に近づけさせない。時には味方を【かばう】。
負傷者はカバン型移動工房に収容。UCで一人でも多く味方を癒し助ける。
――露払いはボクらにお任せを♪さぁ、張り切っていこうか!
そんなクラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)の掛け声とともに始まった音楽は、本殿内へと響き渡る。
戦場に似つかわしくない明るい音楽が流れ始めて、どれ程の時間がたっただろうか。
他の猟兵たちも、可能な限り服部の忍を鬼から遠ざけるよう頑張ってくれてはいるが。本殿に漂う血臭は、徐々に濃くなっている。
あぁ、これはいけないね♪と。
クラウンは、足を怪我して動けない服部の忍の元へ。
「猟兵さま、我らには構わず……」
気遣いを口にする忍に、大丈夫♪と応じながら、床に置いたカバンを開いて。
「さ、この中で休んでいるといいよ!」
「……は?」
クラウンの突飛な言葉に、あまり感情を動かさぬよう訓練を受けている筈の忍も、思わず素で聞き返す。
「大丈夫、中は広いからね♪」
問答無用とばかりに、抱きかかえた忍を開いたカバンの上に降ろせば、不可思議な力で、忍の体はカバンの中へと吸い込まれていく。
……猟兵さまぁぁぁ!?とか、叫び声が聞こえた気もしたが。
気にせずに、パタンとカバンを閉じて。
これで1人。
カバンの中は、本来クラウンが人形の保管や整備を行うための工房。だが、傷ついた人を収容するのにも、十分な広さがある。
中には癒しの炎も灯してあるから、この戦いが終わるまでには、忍の傷も癒えている事だろう。
だが戦場にはまだ倒れ伏し、動けなくなっている忍が多くいる。
血しぶきと悲鳴の上がるグランギニョールも、嫌いではないけれど。
クラウンが望むのは、このような形の『それ』ではない。
だから、血臭渦巻くこの場所でも、クラウンは笑みを崩さずに、駆ける。
まだ息のある、重症の者を優先に。1人でも多くをカバンの中へ。
靴の加護を受け、まるで中空にロープでも張られているかのように、ふわりと中空を駆け回れば。
その存在を疎ましく思ったか、禍鬼の視線がクラウンへと向く。
咆哮と共に弾けるのは、紫色の雷光。
咄嗟にその手のカバンをオーラで覆い、背に庇えば。
クラウン自身は、かわし切れずに。
雷光は痛みとなって、クラウンの全身を襲う。
その痛みに、息が詰まるけれど。
それでも強引に、足を動かして。何とか着地すれば。
猟兵さま……!と、心配した服部の忍が駆け寄ってくる。
その忍へ、何とか笑顔を作って。カバンを預ければ。
クラウンが手にするのは、炎を纏うナイフ。
――人には笑顔を。
だから、どんな時でも。
人には笑顔を向けよう。
投げたナイフを牽制に、向かい来る禍鬼の尾を掴めば。
男性にしては小柄な体の何処に、そのような力があるというのか。力任せに、禍鬼の体を引き倒す。
深く突き刺したナイフは、禍鬼の尾を床へと縫い留めて。
クラウンの口元の笑みが、深さを増した。
「ハリネズミのようにしてあげよう♪」
それは、先ほど忍へ向けたものとは、全く性質の違う笑み。
――人には笑顔を。
そして。
血しぶきと悲鳴は、敵に。
次は両手に、その次は足に。
次々と突き立てるナイフは、禍鬼の体に深々と食い込んで。
纏う炎が、禍鬼を炙る。
そして最後の一刺しは、その首へと――。
成功
🔵🔵🔴
山北・樅
どんな戦いでも、殺されないように殺すのが当然だと思ってた。
忍軍の人達は、そうじゃないんだね。
忍軍同士の戦闘の邪魔にならないように、禍鬼を殺す。
初手の【刺天】だけじゃ仕留められないだろうけど、こっちを狙ってくれるなら忍軍から離れるように本殿の外へ誘き寄せる。
うまく寄ってきたら大振りの攻撃の隙に、他の味方に注意が向いたらその隙に、【刺天】で首を狙う。
敵の身体が大きくなったら首の後ろに取り付いて、殺せるまで刺す。
「…死ね、化物」
殺されるのは、敵だけでいい。
私も味方も、殺すために来てるんだから。
アドリブ・連携歓迎
蝋燭の明かりに、濡れた刃は揺らめく水のごとく、橙色に輝いて。
突き出した刃は、禍鬼の体に浅い傷を付けた。
痺れを覚える手に、想像以上の敵の硬さを知りながら。
禍鬼の反撃を喰らわぬように山北・樅(自由隠密・f20414)は、禍鬼の横を走り抜ける。
あまりダメージは与えられなかったが、今は、これでいい。
禍鬼の注意さえ、こちらに向いてくれればそれで。
共に戦場に来た仲間たちもまた、禍鬼を誘い出してくれてはいるが。本殿内には、嗅ぎなれた血の臭いが充満していた。
それは負傷した猟兵のものも、勿論あるのだが。
大半は、風魔と服部の忍たちのもの。
少なくとも服部の忍に関して言えば、全てを猟兵たちに任せて逃げてしまう事もできただろうに。
誰一人、逃げ出す事はなく。今も刃を振るい続けている。
忍は、諜報活動を担う者たちだと言う。
そして、戦いにおいては樅と同じく、暗殺に長けていると。
その基本は、相手が気付く暇もなく、その命を奪う事。
ゆえに、暗殺者であった樅にとって、戦いとは『殺されないように殺す』事に他ならない。
だが、この忍というものは、そうではないらしい。
彼らの戦い方は、言ってみれば『例え殺されてでも殺す』と、言ったところか。
その自分とは違う、『在り方』に、どのような感情を抱けばいいのか。
長い間、偏った価値観の中で感情を抑え込むように育てられた樅には、まだ分からない。
だが、ここは戦場。
今、分かっていなければいけない事は、ただ1つ。
殺すべき相手が、どれかという事だけ。
とにかく、忍軍同士の戦いの邪魔はさせないと。
禍鬼の間をすり抜けながら、通り魔的に斬りつけていく。
振るわれる禍鬼の金棒が、露わな肌を傷付けてゆくけれど。
樅は止まらない。
速さを落さずに、本殿を飛び出せば。
咆哮を上げて、禍鬼が追いかけてくる。
くるり、と。ナイフを持ち替えて。姿勢を低く。
禍鬼の動きに、全神経を集中する。
樅の血肉を求めているのだろうか。
向かってくる禍鬼の体が、徐々に大きくなっていくけれど。
角が生えていようとも、尾が生えていようとも。
基本の姿形が、ヒトのそれならば。急所もまた、同じはず。
禍鬼の振り上げた金棒が、樅に向かって動き出すよりも、速く。
樅の姿は一瞬で、禍鬼の視界から消える。
「…死ね、化物」
背後へと回り込んだ樅の一撃が、禍鬼の後ろ首へと突き刺さる。
その衝撃に、倒れ行く禍鬼の体が地に伏す前に。
2度、3度。
硬すぎる体に、刃を突き立てて。
誰も、お前たちに殺されるために来てはいない。
私も味方も、殺すために来てるんだから。
殺されるのは、お前たちだけだと。
禍鬼が動かなくなるまで、樅の手は止まる事がなかった。
成功
🔵🔵🔴
ネムネ・ロムネ
音海さん(f04636)と
今日は仲間が一緒に戦ってくれるのですよ
心強いです
UCを発動
白の紳士はネムと行動を共に護衛
黒の淑女は本殿で音海さんをサポート
説得
【鼓舞】
服部の皆さん
ここが頑張り所ですね
皆の力が必要です
鬼は音海さんに任せて【存在感】で風魔さんを拝殿辺りまで誘導です
本殿には近付かずにここで敵をお願いするのです
傷付いた人はネムが【救助活動】を行うのですよ
交渉
黒の淑女が霆に打たれても服部さんと鬼を隔離できたらネムの目的は半分達成です
すぐに本殿に戻って鬼を抑えてくれてる音海さんと合流
音海さん無事です?
お待たせしたのです
それでは鬼との交渉を始めましょー
【援護射撃】で音海さんを援護しつつ制圧を試みて
音海・心結
ネムネ(04665)と
服部忍軍のみんなもネムネもみゆと一緒に頑張るのですよ
みんなの力がみゆを後押ししてくれるのですっ
鬼の部屋の近くにゆき、UC発動
鬼の一撃に対抗ためにも
鬼をうまく引き寄せるためにも
このUCを選んだのですよ
鬼誘導
【誘惑】で鬼を引きつけ、本殿まで引き付けるのですよ
服部軍の人と鉢合わせしないよう気をつけるのです
鬼さん鬼さん、手のなる方へー♪
もし他に気になるものが出来たら、
わざと攻撃して注意を引きつけましょうねぇ
戦闘
武器『Secret』を鞭状態にして反撃
【スナイパー】で確実に当たるように意識し
鬼の【生命力吸収】をしてみましょうか
重い一撃を食らったら、【カウンター】で跳ね返すのですよ
響く剣戟と、禍鬼たちの咆哮。
鼻につく鉄錆の臭いは、本堂に充満していて。
猟兵たちも、忍たちも、無傷の者は1人としていない。
けれど、ようやく目に見えて、禍鬼の数が減ってきた。
幾人もの猟兵が、本殿の外で戦うようにと、服部の忍へ呼びかけてはいたけれど。
あの敵方の布陣――オブリビオンである禍鬼を前面に、風魔の忍たちが後ろから支援する布陣を前にしては、難しい要求であったが。
禍鬼の数が減った今ならば、それも叶うはず。
「服部の皆さん。ここが頑張り所ですね」
今が好機と、ネムネ・ロムネ(ホワイトワンダラー・f04456)は、服部の忍たちへと呼びかけて。
共に戦場に立つ、頼もしい仲間――音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)と視線をかわし、頷きあう。
「こっちはみゆにお任せですよ」
ふんわりと柔らかな薄茶色の髪を揺らして、心結が禍鬼へと笑って見せれば。
その愛らしい容姿とは裏腹に、仲間たちでさえ鳥肌を立てるほどの殺気が、禍鬼たちを襲う。
禍鬼たちの間を駆け抜けて、手にした短剣―Secret―を振るいながら。
「鬼さん鬼さん、手のなる方へー♪」
心結は自身を囮に、禍鬼たちを翻弄する。
禍鬼が振るう金棒が掠って、血が零れるけれど。
それはやっぱり、痛いけれど。
黒衣のドレスを纏う蒸気機械人形が、心結を狙う禍鬼たちへ銃を放って――ネムネが、共に戦うみんなの力が、心結を後押ししてくれているから。
こんな痛みに負けはしないと、己を鼓舞して。服部の忍を逃がす時間を稼ぐために、長い髪をなびかせて心結は舞う。
「服部忍軍のみんなもネムネも、みゆと一緒に頑張るのですよ」
心結からの声援を背に、ネムネが服部忍軍へと号令を発して。
風魔の忍を追い立てにかかる。
ユーベルコードを発動している今、ネムネ自身は戦う事ができないが、その代わりに前線に立つのは白衣の紳士。
彼と共に、本殿を飛び出せば。
目の前の庭には、他の猟兵たちが誘い出した禍鬼たちが、まだ数体残ってはいたが、その数は本殿内よりずっと少ない。それに、本殿内とは違い屋外ならば、十分に離れて戦ってもらう事ができるだろう。
「こっちなのです!」
白の紳士に、禍鬼たちを警戒させながら、ネムネが拝殿の方へと駆けだせば。
忍たちも次々と、後に続くように飛び出してくる。
「くそっ、邪魔しやがって!」
布陣を崩され、追い立てられて。頭に血が上ったらしい風魔の忍が、ネムネへと迫るが。すかさず割り込み、その刃を防いだのは服部の忍。
「猟兵さま、我らはもう大丈夫です!」
風魔の忍と激しく切り結びながらも、「ここはお任せくだされ」と。
叫ぶ忍に、本殿には近づかないよう念を押して。ネムネは本殿へと取って返す。
きっと1人では、こんな風に忍たちを連れ出す事は出来なかった。
あの混戦の中で、それでも禍鬼たちへ背を向けて、忍たちを先導できたのは、共に戦ってくれる仲間達と、そして心結が居てくれたから。
本殿までは、ほんの数メートルの距離。
けれど、1秒でも早く音海さんの所に戻るのです、と。心は焦る。
本殿の入り口にたどり着いた時、視界に広がった光景に、ネムネの足は考えるより先に動いていた。
――紫の雷光が爆ぜる。
「音海さん無事です?」
1人、禍鬼たちを引き続けた心結。
赤く濡れた床に足を滑らせ、迫る雷光をかわし切れないと。
痛みを覚悟し、思わず目を閉じてしまったけれど。
思っていたような痛みはなく、代わりに降って来たのは、よく知る声。
「お待たせしたのです」
心結の前に立つネムネの衣服には、所々焼け焦げた跡があり。白の紳士と黒の貴婦人も既にいない。
それは、ネムネが自身の体を盾に、庇ってくれたという事。
ありがとうの言葉に、「でも無理はしないで欲しいのです」と付け足して。
心結は、ネムネと並び立つ。
「それでは鬼との交渉を始めましょー」
「反撃なのです!」
ユーベルコードの枷より解き放たれたネムネが、ガトリングガンを構えれば。
呼応するように、心結の短剣が鞭へと姿を変える。
もうここに、忍はいない。
ゆえに、もう攻撃に巻き込んでしまう心配もない。
心結がひとたびSecretを振るえば、甲高く爆ぜるような音と共に、複数体の禍鬼を打ち据えて。
一気に禍鬼たちを追い込んでいく。
禍鬼が咆哮と共に振り上げた金棒を、ネムネがガトリンガンの連射で抑え込んで。心結びがその首目掛けて鞭を振るえば、禍鬼の首が飛んで。
ついに、最後の1体も沈黙したのだった――。
●
「生き残ったのは、17人……ですか」
猟兵たちの援護があってなお、全滅する可能性も低くはなかった厳しい戦いの中で、これだけの人数が生き残れた事は、褒め称えられていい成果と言える。
だがこれは、人の命の話。
単純に、喜ぶ事はできずに。
最初は、30人弱は居たはずなのに、と。猟兵たちに、沈黙が下りる。
けれど、服部の忍たちは静かに、落ち着いた様子であった。
『ありがとうございました、猟兵様方。
皆様に救っていただいた、この命。
皆様と、そして散っていった仲間に恥じぬよう、戦い抜いていく所存。
この戦、必ず勝利で終わらせましょうぞ』
戦はまだ続いている。
失われた命を悼み弔うのは、戦に勝利した後だと。
忍たちに、武運を祈り見送られながら。
猟兵たちは、此度の戦場を後にした――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴