エンパイアウォー㉓~横手盆地屍人掃討戦
●掃討戦
「弓、鉄砲隊構え」
出羽秋田藩に横手盆地と呼ばれる広大な平地がある。山の多い藩内有数の盆地として新田開発が奨励されている地域だ。その田畑もまた山間部から急襲してきた水晶屍人に踏み荒らされ、恐るべき屍者の軍勢は、支城である横手城をも陥落せしめるかに見えた。
だが、猟兵達が指揮官のオブリビオンを撃破したことにより、遂に形勢は逆転。
統制を失った水晶屍人は盆地の北へと押し返され、各個撃破され始めていた。
「放て――!!」
水田の畦道に並んだ弓矢・鉄砲隊が、広大な田畑のあちこちに群がる水晶屍人に、雨あられと矢玉を見舞う。
「皆、油断するんじゃねぇぞ。噛まれたら化け物になっちまうからな」
藩内有数の豪傑、妹尾五郎兵衛兼忠と名乗る者が、兵を率いて遠巻きに射撃を加えているのだ。
「しっかし数が多いもんだな。なんだありゃあ、まだ数百はいるんじゃねぇか」
手をかざして目を細める妹尾兼忠。
こちらが有利であるとは言え、もし拙い掃討戦をやって味方が噛まれでもしたら屍人化は免れない。
いま勝利を決定付ける大いなる一手が必要とされていた。
●グリモアベースにて
「現在、奥羽各地で水晶屍人の掃討戦が展開されています」
化野・那由他が状況を伝える。
水晶屍人は噛んだ人間を同じ屍人と化させることで軍勢を増やし、奥羽各藩に大挙襲来してきたのだが――猟兵達が各地で指揮官を討ったことにより、その勢力がにわかに崩れ始めているのだ。
「これにより各藩が盛り返し、秋田藩内の横手盆地でも、大規模な掃討戦が展開されています。ですが、やはり簡単には行かないようで」
何しろ水晶屍人に噛まれてしまえば、その人間も同じ屍人と化してしまうのだ。従って、兵達は銃や弓矢を以て遠くから慎重に数を減らすしかない。一歩間違えれば、大惨事にもなりかねない状況だ。
まだまだ予断は許されない。
戦況を決定づける何かが必要だ。
「そこで、今から皆さんに横手盆地に赴いて頂きたいのです。水晶屍人といえど、猟兵である皆さんの敵ではありません」
戦場となる秋田藩・横手盆地には田畑が広がっており、現在、そこに数百体ほどの水晶屍人が残っている。
これを殲滅するのが今回の目的だ。
達成できれば、秋田藩の武士達も援軍として幕府軍に加わることになる。
「猟兵の皆さんが華々しく戦うことで、皆の士気も上がるはず。派手にやっちゃってください!」
相馬燈
※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
今回は水晶屍人の掃討戦(集団戦)を扱います。
水晶屍人の群れを派手に蹴散らしてしまいましょう!
●戦場と目的
久保田藩(秋田藩)内の横手盆地と呼ばれる山に囲まれた平野です。平野には水田などの田畑が広がっており、水晶屍人の残党が数百体ほど散らばっています。これを痛快に無双するのが本シナリオとなります。
成功すれば、武士達は援軍として幕府軍に加わることとなります。
また、猟兵達の華々しい活躍を見れば士気も上がるに違いありません。
以上です。
皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 冒険
『水晶屍人掃討戦』
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POW : 多数の水晶屍人の群れに飛び込み、体力の続く限り暴れまくる
SPD : 群れから逃げ出そうとする水晶屍人を発見し、逃がさないように掃討する
WIZ : 策略を駆使して、多くの水晶屍人を逃がさずに殲滅できる状況を作り出す
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴェル・ラルフ
稲、お米、おいしいおにぎり。
食べ物を無下にするなんて、お仕置きしなくちゃね。
SPD
多くの敵を派手に蹴散らす
士気を高めるためにも、少し派手にいこうかな。
髪が赤いから目立ちそうだけど、ヒトの中から素早く飛び出していこう。
まずは如意棒・残紅で敵の攻撃を[見切り]、群がってくる奴らをちょっと派手に[吹き飛ばし]つつ、[早業]で次々[なぎ払い]
[ジャンプ]で上からスイカ割りみたいに殴ったり、ちょっと派手に動こう。
ある程度なぎ払ったら、僕も息があがってきちゃうから、隙ができる前に【残照回転脚】
──灰と化せ
田畑はヒトが生きて戦うためにも必要なもの。ここは焼かないように気を付けるよ。
★アドリブ・連携歓迎
泉・星流
「ここは僕(達)に任せてもらおうか」
奥羽兵の中から歩み出てきて…
水晶屍人の群れを前にして
「新世界で手に入れた力(指定UC)…試させてもらうよ…」
「…まずはシンプルに…」
創造した箒に『火属性』を加えて
「行けっ」
炎の槍と化した箒を水晶屍人の群れに放ち、貫いては焼き払っていく
「次は…」
『風属性』の箒で水晶屍人の周りを旋回させて竜巻を生み出し、そこに『火属性』の箒を突っ込ませて
「フレイムトルネードブルーム…」
ある程度倒したところで奥羽兵のところへ戻ってくる
(倒し切っていないのに戻ってきた事を問い詰められたら)
「みんなに無駄足踏ませる訳にもいかないでしょう」
まだ自分のような者はいる…という事を印象づける
シエル・マリアージュ
「私が飛んだら、援護射撃をお願いします。共に戦いましょう」
武士の皆さんと連携しながら、彼らにも敵を倒してもらい士気向上につなげたらと思います。
「シエル・マリアージュ、参ります」
敵の群れに突撃、一見無謀なようで戦闘知識で敵を動きを見切りながら完全に囲まれないように立ち回り、白花雪の刃から衝撃波を放ちながら蒼焔の殲剣を発動する2回攻撃で数で勝る敵を切り崩す。
もし敵が武士達に向かったら蒼焔の殲剣で追撃、蒼焔の殲剣なら武士達を傷つけることはないので。
敵が弱ってきたところでジャンプからの空中浮遊で空へ舞い上がり、武士達の援護射撃と連携して空から蒼焔の殲剣の2回攻撃で炎剣の雨を降らせる。
畦道に布陣した侍衆の内から、突如としてどよめきが起こった。
後方から走り来た青年が頭上を跳躍し、最前線へと飛び出して行ったのである。
「これ以上、暴れさせるわけにはいかないよ。田畑のためにもね」
赤茶の髪を靡かせながら颯爽と駆けるのは、深緋の如意棒を手にしたヴェル・ラルフ。その俊足で一直線の田圃道を走り抜けると、敵集団めがけて再び地を蹴り高く跳んだ。
水田に蝟集する水晶屍人の上空で得物の残紅を振り上げる。屍人が夏の陽を浴びて輝く如意棒の金箍と、ヴェルの影を見上げた時にはもう手遅れだ。
「少し派手にいこうかな……と!」
加減なしの打ち下ろしが屍人の脳天を西瓜のように見事にかち割り、着地した刹那に円を描いて鋭く一閃。群がる周囲の亡者どもが骨を砕かれ崩折れる。
(「稲、お米、おいしいおにぎり。食べ物を無下にするなんて、お仕置きしなくちゃね」)
折しも時は八月初旬。
瑞々しい稲穂は民の命の結晶だ。
深緋の如意棒――残紅を振るうヴェルの手に力がこもる。
斜めに打ち込み、足を払い、背後から迫る亡者にも強かな一撃を振り落とす。
円を描き、棒の両端を自在に用いる棒術は、集団戦でも遺憾なくその力を発揮する。
舞うが如くに戦うヴェル。群がる屍人など鎧袖一触にさえ値しない。
そのさなか、他の猟兵達も動き出していた。
「私が飛んだら、援護射撃をお願いします。共に戦いましょう」
鉄砲衆に声かけたのは、白の小袖に青袴の少女だ。
息を呑むほどに美しい碧眼の少女を前に、秋田武士は見惚れながらも頷いた。
「シエル・マリアージュ、参ります」
穢れなき羽根をはためかせた少女――シエルが矢のように翔ぶ。
青の花が散りばめられた見事な白髪を風に乗せて、低空を飛ぶシエル。
「やはり統制は取れていませんね。隙だらけです」
不気味に呻き、両手を伸ばして襲い来る水晶屍人は、しかし、ただそれだけだ。
シエルが手をかけたのは柄から鍔、そして鞘に至るまでが雪白の愛刀――名を白花雪。鞘走らせてすれ違いざまに振るった一閃、白雪の如き魔力を舞い散らせ、屍人が斬られながら吹き飛んだ。群れの間を縫って迅雷の軌跡を描くシエル。
「聞いたなお前ら、全力で援護しろ! 火縄隊、構え!」
豪傑、妹尾兼忠は、呵々大笑して部下に下知した。
「し、しかし御味方に当たっては……」
「馬鹿野郎! 援軍に来たのがどれ程の強者か見えねぇのか!」
「そう、敵の殲滅は僕達に任せてもらおうかな」
声の主は少女と見紛う程の眉目秀麗な少年――泉・星流だった。
異世界の学園服を纏って悠然と侍の一団から歩み出た彼は、真っ直ぐに伸びる畦道を歩きながらその掌に力を込める。
「新世界で手に入れた力……試させてもらうよ……」
空中に迸った魔力が山なりに展開。
「想像より魔力を得て形を成せ……僕の変幻自在の箒達……」
歩む星流の声に応えて急速に形を成したのは、百八十本にも及ぶ魔法の箒だ。
「オオォオ……ォォォォォォォ……」
畦道を行く星流を左右から挟撃しようとする水晶屍人。
「……まずはシンプルに……」
対する星流は手を握り込む動作と共に、箒に属性を纏わせた。
赤熱する長箒――即ち、炎。
穂先から溢れ出た魔力が火の粉となって舞い始める。
「行けっ」
声に応じて、魔力で編み上げられた箒が屍人の群れに降り注ぐ。
左右の畑は踏み荒らされて見る影もなく、そこが屍人の墓場となった。
群れる屍人が箒の柄に貫かれ、火柱となって燃え上がる。
一撃必中、星流の狙いは外れない。
「死人はよく燃えるね……」
的確な攻撃が、最前線で戦う猟兵達への援護となり、後方の侍達をも勇気づける。
援護射撃が始まり、弓や銃弾が水晶死人を撃ち倒し始めた。
「そんな力じゃ僕は殺せないよ」
噛み付いてくる屍人の歯を深緋の如意棒で受け止めながらヴェルが言う。
腹を蹴り飛ばした刹那、弧を描く一撃が屍人の側頭部を打ち砕く。振り向きもせずに如意棒を滑らせ、後ろの屍人を強かに突いた。
駆け抜け、硬い畦道に棒の尖端を突き刺したヴェルが棒高跳びの要領で跳躍、打ち下ろしが目前の亡者の集団を纏めて吹き飛ばした。群がる水晶屍人を視線で刺して、
「数だけは多いね――!」
そこへ矢が降り注ぎ、周囲の屍人がバタバタ倒れる。
「着実に討ち取って参りましょう」
水晶屍人の群れに飛び込んだシエルが白花雪の刃を走らせるたび、目に見えぬ力が敵を斬り、木の葉のように舞い上がらせる。魔力の白雪が舞い散る絶景の中、青袴を翻して剣舞するシエルの姿を、武者達は決して忘れはしないだろう。
四方の屍人が包囲を狭める中、シエルは高らかに空へと舞い上がった。
「聖櫃より来たれ蒼焔の剣」
頭上に展開した幾振りもの剣――蒼い焔を帯びた霊剣が急速回転。
「煉獄の焔で悪しきものを滅せよ」
呼応して降り注いだ実体のない剣が屍人どもを串刺しにして諸共に霧散した。
「稲穂を傷つけることもなく、か。流石だね」
「これ以上の被害は出させません。人にも、土地にも」
如意棒を構えたヴェルに、淡々と、しかし決意を込めて応えるシエル。
二人の猟兵が水晶屍人を引きつけながら、休閑地らしい土だけの広い畑に跳んだ。敵の群れがそこへ大挙して押し寄せる。呻き、よろめきながら早足で歩むその列にも、秋田武士の矢と弾丸が容赦なく降り注ぐ。
「ここならやれそうだ」
休む間もなく立ち回ったゆえ、さしものヴェルも呼吸は荒い。
けれどその琥珀色の瞳は、あらわになった土の上で、鋭く敵を見据えていた。
(「田畑はヒトが生きて戦うためにも必要なもの。焼くわけにはいかないからね」)
目前まで迫る屍人の軍勢めがけヴェルは果敢に一歩を踏み出す。
軸足に力を。
振るわれんとする脚が纏うのは昏く燃え盛る地獄の炎。
「──灰と化せ」
渾身の蹴撃に、帯びた業火が波と化し、呻く屍人の群れを一瞬のうちに荼毘に付す。
「……次は……」
機を見計らうと、星流は虚空に手をかざし、箒に再び属性を付与した。
屍人の周囲を箒が一斉に取り囲み、風属性を纏ったそれらが旋風を巻き起こす。
風は急激にその勢力を増し――見る間に竜巻と化した。
それに炎を纏わせれば、轟々と唸りを上げる火炎旋風と化して水晶屍人を包み込む。
「フレイムトルネードブルーム……」
炎の竜巻が荒れ狂い、屍人が瞬時に炭化し塵と化した。
「さてと、このくらいかな……」
星流は畦道を戻ってくると涼しい顔をして言ってのける。
「ですが、まだ……」
傍にいた弓兵が尚も残存する水晶屍人の群れを見て不安げに言う。
と、星流は武者達の後方に目を向けて、
「みんなに無駄足踏ませる訳にもいかないでしょう」
この戦場に駆けつける猟兵は、彼等だけではない。
意を察した秋田武士達が気勢を上げた。
大成功
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エスペラ・アルベール
オッケー! それじゃ思いっきり派手にやっちゃおうっ!
メーロエルピーダを使って、未来のボクと共に突撃するよっ!
武士の人達を鼓舞するような歌を二人で歌いながら戦えば、フォニックブレイドも絶好調!
互いの死角をカバーしながら斬り裂きつつ、空に飛び上がって(空中戦)派手に炎と氷の魔法をばら撒くよっ(全力魔法、属性攻撃)
一体でも残したらそこからまた増えかねないし、見逃さないように注意してー、さあ行け未来のボク! 無敵の力を見せてやれーっ!「過去のボクってこんな性格だったかなぁ……」
元々はこの屍人達も犠牲者に過ぎなかったんだよね……安倍晴明、絶対に許さないっ!
メルノ・ネッケル
ここで上手くやれれば味方が増える、かつうちらの働きが士気にも繋がる。重要な役割や……燃えてきたで。
見とってくれよ、武士の兄ちゃんおっちゃん達!
それじゃあ、派手に行くとしよか……ここは『フォックスファイア』の出番!
放った四十二の狐火を輪の如く並べる。これでそこそこの半径の火の輪が出来るな。
後はこいつを屍人共の集団へ向け、上から叩き付けるよう落とす!
落とした火の輪は炎の壁に、これぞ火炎包囲網ってな!
とはいえ一つ一つの火力は弱い、何時までもは持たへん。そのまま畳み掛けるで!
抜き放つは「R&B」と「アサルトリボルバー」!
無理に近づいて噛まれたくはないでな、二丁の掃射で葬り去ったる……往生せえやっ!!
「シッ……何か聞こえるぞ」
「これは……唄、か」
弓に矢を番え、火縄に弾を込めていた武者達が口々に声をあげる。出所を探ろうと見まわした彼等が、突き崩される水晶屍人の集団を見た。
青いジャケットに黒いタンクトップ、そして赤いスカート――異世界の服をはためかせたエスペラ・アルベールが、元気いっぱいの歌声を響かせながら剣を振るっているのだ。
歌は連なり二重唱(デュエット)となり。
鼓舞された武者達が腕を振る。
歌声を重ねて屍者集団の右翼から挟撃するのは、エスペラを大人にしたような美貌の魔道士だ。
圧倒的な魔力と剣技で屍者を屠りゆく彼女こそ、エスペラが歩むべき道への信念と想像力で編み上げた希望の象徴。絶対無敵の『未来の自分』。
「逃げるくらいの本能はあるみたいだね。一気に全滅させよう」
「オッケー! 思いっきり派手にやっちゃおうっ!」
V字に突入して合流した二人が、背中合わせになって歌を唄い、刃を振るう。明るく勇敢な歌に二人のフォニックブレイドが共鳴、魔力を増幅させて、
「今だよ。準備は出来た? 過去の私」
「うんっ、行っくよー!」
頷き合い、二人が同時に飛び上がる。
エスペラが炎を、未来の自分が氷を。
全力で吹き荒れさせた魔力が周囲の屍者を燃え上がらせ、そして一挙に凍りつかせた。
「さあ、うちも派手に行くとしよか!」
戦場に鬨の声が響き渡る。
士気を盛り返した秋田武者の喊声だ。
「見ろ、また援軍だ!」
「勝てる……これなら勝てるぞ……!」
畦道に散会していた武者達が、転移直後に駆け出したメルノ・ネッケルを見て武器を振り上げ、声援を送る。
「見とってくれよ、武士の兄ちゃんおっちゃん達!」
ここで上手く立ち回れれば味方を増やせる。それも、水晶屍人の軍勢を相手に持ち堪えて見せた、勇敢なる秋田武者を。
「うちらの働きが勝ちに繋がる。重要な役割や……燃えてきたで!」
休閑地の畑を駆けたメルノが横一文字に盛り上げられた畦道の上に跳び乗った。
呻く水晶屍人が、前方の土ばかりの畑から不気味に速い足取りで襲い来る。
「数を相手にするなら――これの出番やな」
瞑目。念じながら狐耳をはたりと跳ねさせるメルノ。
転瞬。渦を巻いて周囲に怪火が燃え上がった。
実に四十ニにも及ぶ狐火が、メルノを中心に輪を描いて燃え盛り、屍者達が本能的な怖れを感じて後ずさる。
「恐怖はあるんやね。一思いに仕舞いにしよか」
目を開けたメルノが片手を上げると、狐火が円を描いたまま空へと舞い上がった。手を振り落とす動きと共に炎の輪が屍人の群れを包囲する。
「逃しはせんで。これぞ火炎包囲網ってな!」
「妖術……いや、大したもんだ。各々、この機を逃すな!」
武者を率いる妹尾兼忠、侍衆に下知して、矢玉を雨と降り注がせる。
「何時までもは保たへん。このまま畳み掛けるで!」
「ボクたちも行こう!」
周囲の水晶屍人をあらかた片付けたエスペラと未来の彼女が、メルノの元へとひた走る。
「無理に近づいて噛まれたくはないでな。ここはこれで……!」
畦道を蹴って駆け出しながらメルノが抜き放ったのは、熱線銃『R&B(レッドアンドブラック)』と愛用のアサルトリボルバー。
黒のボディに赤のラインが入った熱線銃(ブラスター)が屍者の胴を穿ち、リボルバーが脚や頭部を吹き飛ばす。
「全員このまま葬り去ったる……往生せえやっ!!」
「凄い! これなら取り逃す心配もないね!」
仮に一体の屍人でも逃そうものなら、そこから新たなる軍勢が作られかねない――それが水晶屍人の恐ろしさだ。
炎の壁の外周を走り、尚も両手の銃を連射するメルノ。
その戦法に感心しながら、エスペラがフォニックブレイドを手に駆ける。それより速く疾駆するのは、成長を遂げた未来の自分だ。
「さあ行け未来のボク! 無敵の力を見せてやれーっ!」
「過去のボクってこんな性格だったかなぁ……」
けしかける過去の自分に若干苦笑いしながら、未来のエスペラが高らかに跳んだ。澄み渡る声を響かせながら、増幅した魔力を帯びた刀身を打ち振るう。声は過去の自分と重なって葬送の調べとなり、火炎竜の吐息を思わせる炎波で屍人の群れを包み込んだ。
「これで終わりだよ……!」
エスペラもまた跳び上がり、空中で未来の自分と歌声を合わせて共鳴する刀身を振り下ろした。膨大な魔力が放たれ、ブリザードさながらの凍気が敵集団を包み込む。
「仕舞いや!」
瞬時に凍りついた屍人をメルノが銃で撃ち砕き、止めを刺す。
砕け散り、塵と化して消えていく水晶屍人。
数百もの屍人の軍勢はかくして全滅を遂げたのだった
「元々はあの屍人達も犠牲者に過ぎなかったんだよね……安倍晴明、絶対に許さないっ」
「ああ、悲惨なもんや。こんなこと許せるわけあらへん」
故郷を踏みにじる暴虐は必ず止めなければならない――メルノもまた銃のグリップを強く握り、決意を新たにする。
「いや助かった。俺達だけではどうなっていたか」
と、戦いを終えた猟兵達を前に、秋田武者を率いる妹尾兼忠が深々と一礼した。どこか飄々とした男だったが、色を正して、
「貴公らは命の大恩人。この妹尾兼忠、藩の精兵を率いて必ずや戦場に馳せ参じ、信長の軍勢を打ち破ってお目にかける」
武者達があらん限りの大声で勝鬨を轟かせた。
大成功
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