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夜鳴き虫は花に酔う

#UDCアース

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#UDCアース


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 日本の片隅。 その小さな村は、山間部にひっそりと存在していた。
 ただただ時代に取り残され、寂れゆくのを待つ寒村。
 夜の帳が降りれば、深い闇だけが支配する農道。 古びた街灯が、微かな異音を発しながら明滅する。
 その夜闇を照らすには、あまりにも儚い明りに誘われた季節外れの蟲が、カツリ……カツリ……と街灯を叩く音が小さく響く。
 それは1匹、また1匹と群れを成し、贄を求めて動き出す。

 ――捧げよ冒涜。
 我ら邪神が眷属よ。

 ――孕めよ狂気。
 神秘が失われて久しきこの時代、全ては神を生まんが為に。
 今宵もまた、誰かが消えていく。

 ●
「夢見最悪ー……」
 グリモアベースの一角。広い会議室の中、ぐっでーんとだらしなくパイプ椅子に腰を下ろした少女が一人。
 彼女は椅子から立ち上がり、気持ちを切り替えるようにパンッ、と手を叩くと説明を始めた。
「はい、UDCアースで邪神が召喚されたよ。 いや、もっと正しく言うとこれから召喚され……ん、いや、もう召喚されてる?」
 あれ、どっちだ? と、しきりに首を傾げる少女、ミーナ・ペンドルトンはオブリビオンによる被害が起こる未来を予知し得るグリモア猟兵だった。
 長身で大人びた外見をしているが、これでもまだ小学生である。
 彼女は印刷された資料を配布し、部屋の隅からホワイトボードを持ってくると、黒マーカーを手に状況を整理し始めた。
 今回の依頼はUDCアース。 地球と呼ばれる惑星を中心とした世界、日本の片田舎にある寒村が現場だという。
「出現地域はある程度しぼれたんだけど……残念ながら儀式場がどこかは分かんないんだよね。 そこでみんなの出番ってわけだよ。 村にカチコミかけて情報攫ってきて、ついでに邪神を倒してほしいんだ」
 無茶を言う。
「あ、あと邪神は二体いるから」
 無茶苦茶なことを言う。
 二枚の写真をマグネットでホワイトボードに留め、一枚目をマーカーのお尻でとんとんと叩く。
「一体……一柱? どっちでもいっか。 こっちは既に召喚されてるみたいだね。 憑依型邪神の第零の蟻、眷属召喚するから要注意!」
 次に二枚目の写真をとんとん。 ブレブレでいまいち要領を得ないが、赤い花のようにも見える写真だった。
「で、二体目。 これから召喚されるやつで、詳細は不明。 分かってるのは炎を使うことと、こっちも眷属召喚するっぽいこと」
 詳しくは配布した資料をみて、と彼女は締めくくる。

「それじゃあみんな、気を付けていってらっしゃい」
 そう言い、ミーナは猟兵達を送り出すのだった。


神坂あずり
 こんにちは、神坂(こうさか)あずりです。

 2作目はUDCアースで邪神退治です。
 シナリオ構成は調査・集団戦・ボス戦となります。
 今回は特に光源などは必要ありません。

 お楽しみいただければ幸いです。
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第1章 冒険 『噂の真実を突き止めろ!』

POW   :    スタミナ・腕力を使って調査(物理的手段を使う、聞き込みを行う相手を脅すなど)

SPD   :    スピード・技術を駆使して調査(速やかに情報を集める、聞き込み相手を買収するなど)

WIZ   :    知性や精神面に訴える手段で調査(情報の分析、聞き込み相手を懐柔するなど)

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

花宵・稀星
邪神召喚の儀式、ですか。由々しき事態ですね、それは。
儀式と言うからには、何かしら媒体となるものが必要なのですかね?
儀式に携わる者もそれなりに複数必要だったりはしないですか?

もし、儀式を行うために特別な媒体が必要なら、それを入手するための動きがあるはずです。あくまで例えばですが、生物の死骸が必要なら、周囲に生物を狩った跡が残っているだとか……。

また、儀式に複数の者が携わる必要があるなら、不自然な人の流れがあったりするかもしれないです。
特に、舞台がさびれた山村ともなれば、普段は訪れる人も少ないはずです。
もし集団の移動があれば、目立つのではないかと思うのです。


聖護院・カプラ
【WIZ】
邪神が同時に二体、それも眷属持ちですか。
調査する際に情報を精査しても二体とそれぞれの眷属の情報が入り混じってしまいそうで、厄介ですね。

最寄りの市の役所や図書館に風土記や年代ごとの地図がないか確認してから村へ向かいましょう。
該当の村特有の風習から今回の事件が起きたなら、それを知っていないと対処は難しいですからね。

村へ着いたなら聞き込みを始めようと思います。
憑依型邪神がいるという事は、既に村人が操られている可能性があります。
普通にお話をして情報を確かめたかったのですが…
邪神にも効果があるであろうユーベルコード『説得』を用いて情報収集します。


エコリアチ・ヤエ
俺の出身世界であり出身国だ。儀式場所の特定に少なからず役に立てるだろう。
[wiz]日本の片田舎ならその地域で大きな土地や家を持つ地主や農家など、とにかく古そうな家系の人間を見つけ話しかける。
内容はこうだ。この地域に誰も手入れをしていない祠や神社などがないか、俺はシャーマンで不吉な予兆を感じ祓いに来た、と。田舎の人間は信心深いだろうし、俺の見た目的にもシャーマンだと信じてくれるんじゃなかろうか。死霊術師なんだから嘘も言ってない。
情報が万が一集まらないとしたら近くの森や山の奥に続く舗装もされてないような道がないかを探してみるとしようか。人手が足りなきゃオルタナティブ・ダブルを使用し手分けしよう。



寂れた村に、一機のウォーマシンと一体のミレナリィドールと一人の褐色マッチョが降り立った。
 その内の一機、聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)が滑るように一体と一人の前に進み出る。
「私の調べてきた追加情報を、皆さんにお伝えしましょう」
 彼は事前に最寄りの市役所や図書館に赴き、様々な情報を収集してきていた。
 彼の話によると、この付近ではかつて蟲を神として崇める土着の信仰があったらしい。
 蝗害に端を発する信仰だったようだが、かなり昔に廃れ、現在では進行するものもいなくなっているようだった。
「だったら俺はその信仰の方から探りを入れてみるか」
 そう口にしたのは日本出身を称するエコリアチ・ヤエ(多重人格者の戦場傭兵・f00287)だ。
 褐色の肌に全身タトゥーのその男は、両親が外国人のためかはたまた服装のせいか、控えめに言ってもネイティブアメリカンの呪い師か何かのようにしか見えないが生まれも育ちも日本なのだ。
「だったら私は儀式に必要な触媒の方を探ってみるです」
 続けて口を開いたのはミレナリィドールの少女、花宵・稀星(置き去り人形・f07013)だった。
 こちらはこちらで、寒村にはあまりに似つかわしくない煽情的な服装だ。
 三者三様、全員がこの場にはそぐわない外見ではあるが、どんな外見であれ違和感を抱かせない猟兵には関係のないことであった。
「情報収集というのは、僅かな痕跡を探り、過去を明るく照らすこと。 これから行く先を見据える、いい行いです。 各々、情報収集とまいりましょう」


 森の中を、散策するように稀星は歩みを進める。
 どうやらこの森は木々があまり密集しておらず、奥に行かなければ鬱蒼とはしていないようだった。
 そのため、村の付近では明るく見通しがいい。 散策にはもってこいだが、生贄を襲ったりするには向いていなさそうである。
 奥に分け入っていくと徐々に一切の手入れのされていない自然の風景。
 周囲の痕跡を見るに、どうやらこの付近に生息する動物は、おそらく鹿やイノシシが精々で熊などはいないようだ。
 「あれ……?」
 そこでふと稀星は違和感を感じる。
 注意深くあたりを観察すると視界の隅、草藪の中に光を反射するものを見つける。
 なんだろうか? と彼女を手を伸ばし拾い上げた。
 どうやらそれは服についている反射テープ……ずるり、と何かが一緒についてきた。
 嗚呼、これはとても見覚えのあるものだ。
 ――人間の腕だ。


 一方その頃、信仰方面から探りを入れていたエコリアチは拘束されていた。
 当初はこの辺り一帯の地主や、古い農家などをあたっていたがすげなく追い払われてしまったのだ。
 閉鎖的な田舎などテレビでなければこんなものである。
 どうしたものかと立ち往生していたところを、一人の老齢の男性が声をかけてきたのはそんな時だった。
 それから小一時間、エコリアチは一歩も動けずにいた。
 老齢の男性が語るには、彼は婿養子で妻に先立たれてからはずっとはみだしも扱いで話し相手に困っていたらしい。
 まあ、彼の身の上話は置いておこう。 いくつか有益な話を聞くこともできた。
「最近外から新しい人が来てぇの、わしにゃよぉわがらんけんども、若い衆がなんじゃ騒いどる」
 曰く、一人の若い男が村に来てから若者たちが活発になりだしたそうだ。
 だが何か不穏なものを感じ取ったのか、村を出て行った若者もいるらしい。
「そりゃあいい話を聞けた、ありがとな爺さん」
 エコリチアは立ち上がり、仲間と合流すべく足を踏み出し。
「まあ、待ちんせぇお若いの」

 ……。
 エコリアチの戦いはまだ続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スバル・ペンドリーノ
WIZで判定

情報の集まる所……まずは村役場。あと、主婦の井戸端会議、あとは生活必需品を売っているお店……人の集まりそうなところを中心に、聞き込みをして回るわ
内容は、「昨夜、変な大きな蟻を見たんだけど、この辺りでは普通なの? 虫、苦手だから怖いわ、どの辺によく出るのかしら」で行きましょう
ネットで知り合った友達の家がこの村にあって、昨日から遊びに来てる……って設定で

直接聞ければ良しとして
話を聞いて妙な反応、特にどこかに向かおうとする人に当たったら、ユーベルコードを
何処に向かうか確かめるわね

……予知通りなら、やっぱりもう、犠牲者が出てるのかしら
出来ることなら助けたいわね……その辺りの噂にも注意するわ



公民館の一角に姦しい話し声が響く。 井戸端会議――文字通り側に井戸がある――を開いている主婦達の声だ。
 その中になぜか一人の年頃の少女――この寂れた村にはあまり似つかわしくない華やかな装いだ――が自然に溶け込んでいた。
 彼女の名はスバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)、猟兵の一人だ。
 主婦達は、日頃の鬱憤が溜まっているのかひたすらに愚痴を言い合っているようだった。
 そんな中でも彼女は、持ち前の器量のよさで上手に話題をさばき、主婦達の口を軽くすることに成功していた。
「昨夜、変な大きな蟻を見たんだけど、この辺りでは普通なの? 虫、苦手だから怖いわ、どの辺によく出るのかしら?」
 変な大きな蟻? と主婦達は怪訝そうに首を傾げたが、その中の一人が手を打つと口を開く。
「そう言えば、蝉川さんちの奥さんが、旦那が猟師小屋で大きな虫みたいなのを見たって騒いでて煩いって言ってたわね」
 ――その時、ふと視線を感じた。
 スバルは会話を続けながら、さりげなく周囲に視線を配ると……いた。
 それは羽虫だった。
 手の平ほどの大きさを持つ大きな羽虫が、屋根の上からこちらを値踏みするかのように見下ろしていた。 こちらの視線に気付いたのか、はたまた興味を失ったのかは分からないが、羽虫はふらりと森の方へと飛んでいく。
 それに釣られるように、スバルの影からふわりと一匹の蝙蝠が飛び出すと、羽虫の後を追っていくのだった。

 スバルの戦いもまた、まだまだ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪華・グレイシア
【WIZ】

調査の基本は足! とこの前見たドラマでも言っていました!
【情報収集】を使いながら、聞きこみをして、色んなお話を聞いていきますよぉ!

えへへ、こんにちわっ
ちょっとここの村についての噂を聞いて、調べて回ってるんですけどぉ
お話聞かせてもらってもいいですかっ

可愛い女の子みたいな笑顔で話しかけられて悪い気になる人は居ませんっ
人懐っこい笑顔でにこにこしながら、お話して邪神についての手がかりを探しますよぉ!


富波・壱子
WIZ
もう召喚されてる邪神とこれから召喚されそうな邪神かぁ。
片方だけでも大変なのにもし両方揃ったりしたらもっと大変なことになっちゃうよね。急いで解決しなきゃ!

といってもほとんどまだ何も分かってないんだよね。
まずはとにかく目についた人に話しかけて、最近何か変わったことがないかどうか聞いてみるよ。何も知らなかったら笑顔でお礼を言ってからお別れして、また別の人に聞き込みするね。
何か知っていそうな様子ならもっと詳しく聞かせてくれないか頼んでみよう。
武器とかで脅すこともできるけど、悪いことしてない人にはあんまりやりたくないなぁ。
ちょっと恥ずかしいけど精一杯可愛くおねだりしたら話してもらえないかな?ダメ?



ぽつぽつと点在する人の間を渡り歩き、愛想よく積極的に話しかける少女がいた。
 いや、正しくは少女のように見える人物か。
 雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)は話を終えると、人懐っこい笑顔で別れを告げると、次に話を聞く相手を探して歩きだした。
 「なかなか難しいですねぇ……」
 この村の住人と話した所感を思い出しながら、グレイシアはぼやきを漏らす。
 どうやら傾向としては、老齢の人や格式やしきたりに拘る古い家の人ほど口が堅いようだった。
 変化を嫌っているのか、よそ者を排斥したがっているようにも思える。
 ――それとも、なにか知られては不味いものでもあるのか。

「グレイシアさーん」
 と、そこへ名前を呼びながら駆け寄ってきたのは富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)だ。
「あ、壱子さん。 そちらはどうでしたか?」
 合流した二人は互いの進捗を報告しあい、今後の方針をどうしようかと思案し始めたその時だ。
「あのー……」
 二人の背後から若い男性が声をかけてきたようだ。
 揃って顔を向けると、そこには二人分の視線に気圧されたように一歩下がる気弱そうな青年がいた。
「私達に何かご用なのかな?」
 代表して壱子が笑顔で問いかけると、ちらちらと視線を彷徨わせていた青年はぎこちなく口を開いた。
 青年が言うには、二人がこの村の噂や最近の変わったことを聞いて回っていると聞いて、もしやと思って声をかけたそうだ。
「あんたら、蟲を探してるんだろ?」
 この村では現在、若者の間でだけ密やかに流行っている噂があるのだそうだ。
 忘れられた信仰に息づく蟲神が復活した、と。
 言い出したのは村の外から来た若者だったそうだ。
 最初は誰もがバカにしていた。 だけど気付くと、一人、また一人と信じて敬い始めたのだという。
「俺なら、そいつらの集会場に案内できるけど」
 青年の視線がまたちら、と彷徨う。
 壱子はその視線の意味に気付いていた。
 ――あ、また胸見てる、と。
 それが目的なのか? と考えるが同時に、事前情報や仲間達が調べた情報とも一致するキーワードが複数含まれていることから、何かを知っていることは間違いなさそうだ。
 彼女はちらりとグレイシアへと視線を送る。 その意味に気付いたのかこくりと頷きが返された。
 情報確度は高い。 だが色んな意味での身の安全は確保しておきたい。 なら、現状での最良の選択は……。
「じゃあ……お願いします」
 青年は嬉しそうに笑みを浮かべて頷き、こっちだ、とさっそく移動を始め。
「他の友達も呼ぶね!」
「えっ!?」

 青年の唖然とした声が空しく響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
邪神一柱は既に顕現、追ってもう一柱か…支払われた犠牲は少なくなさそう、だね

目立たない様に変装も事前に行い、耳尻尾は隠蔽
寂れた寒村であるならば、儀式場は自ずと限られそうだね

SPDを用いて調査

暫くは人目に着かないよう遮蔽物を使ったり、屋根上等も使いながら人の行き来を観察しつつ聞き耳も立てる、よ

人の出入りが多かったり、警戒しながら入る場所があれば人の気配がなさそうな場所からピッキングして潜入
儀式場の出入り口や証拠品を探索するよ
必要なら机や金庫も鍵開け

侵入が困難な様なら、出入りしている中でも弾かれていそうだったり、お金に困っていそうな人を買収出来ないか施行

大丈夫、キミに悪いようにはしないから話して?



猟兵達の中でただ一人、人に接触することなく、観察することで情報を集めていたヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は、仲間に先行して森の奥深くへと足を踏み入れていた。
 身を隠し、周囲に気を配りながら、かさりかさりと下草を踏みしめる。
 周囲に人の気配はないが、いたるところに人の痕跡が見て取れた。
 仲間達の情報を纏めるとこの辺りにあるはず……見つけた。
 彼の前に現れたのは一軒の小屋。 聞くところによると避難所を兼ねた無人の狩猟小屋の類だという。
 ヴォルフガングは扉に手をかけた。 はたして扉は、ぎぃ……と軋んだ音を立てながらも、何の抵抗もなく開く。

 そこにはランタンなどの照明器具と多少の燃料や粗末な毛布と木箱があった。
 他には大したものは見当たらないが……いや、木箱に隠れているのを見つけた。 地下室への扉だ。
 こちらもまた鍵などもなく、何の抵抗もなくあっさり開いた。
 地下から吹きあがってきた冷たい風が頬を撫でる。
「風、か。 どこかに繋がってるのかな?」
 それも音の響き具合から、かなりの距離のある空間のような気配がする。
 これ以上、一人で先行するのは危険だろうと考えたヴォルフガングは、一度仲間の元へと報告に戻るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『マガツアリス』

POW   :    古き神々の意志
【邪神「第零の蟻」】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD   :    呪われし鉤爪
【異様に膨れた両腕の鉤爪】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    軍隊蟻の行進
いま戦っている対象に有効な【悍ましき妖虫】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


かつん、かつん、と複数の足音が地下通路に響き渡る。
 先頭を行くのは、背後を気にしてびくびくと怯えながら歩く青年。
 その後ろを、周囲を警戒しながら猟兵達が続く。

 あの後、合流した猟兵達はお互いの知り得た情報を交換し、青年に案内をお願いした。
 青年に連れられ辿り着いた場所は、先の調査の通り森の奥にある狩猟小屋の地下であった。
 地下に作られたこの広く長い空間は、どうやらかつては防空壕として用いられたようだった。
 長い年月を経たためか、木の根が顔を出しているところもある。
 やがて長い通路の先に光が見え……視界が開けた。

 そこにあったものは天然の地下空洞だ。
 天井に空いた裂け目から、木洩れ日のように日差しが降り注ぎ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
 そしてそれと相反するように地面に描かれた禍々しい雰囲気を醸す儀式魔法陣があった。
 警戒しながらも魔法陣へと進む猟兵達の頭上に、ふっと影が差す。
 天井に視線を向け、それを目にした瞬間、猟兵達を案内してきた青年は悲鳴を上げ逃げるように駆け出した。
 ――どちゃり。
 その瞬間、天井から何かが落ちる。
 緩慢な動きで顔を上げたそれは、甲殻を身に纏ったような外見の少女であった。
 いや、違う。 これはそんな生易しいものではない。
 ――これは邪神だ。
 直観的にそう感じた。
花宵・稀星
うえ、蟲ですか。蟲ですか。おおごとの意味で大事なので二度言ったです。
あまり見ていて気分のいいものではないので、早々に除虫するです。

敵は蟲の大軍を呼び出してくるですね。
まずはこの軍勢をなんとかしなければならないです。
ここは<エレメンタル・ファンタジア>で地を這う炎属性の津波を引き起こして、敵の呼び出した更新する蟲たちを焼き払うです。
制御が難しいユーベルコードですが、ここは<ルビー>の宝石の力も借りて、炎の属性攻撃への適応性を高めたうえで行使に臨むです。

勿論、前方に仲間がいる状態で用いては巻き込む心配があるですので、仲間が敵に突撃して乱戦になる前に用いるか、私が前に出て用いるか、配慮はするですよ。


聖護院・カプラ
【WIZ】
蟲を神として崇める土着の……飛蝗に関する信仰。
これがその、召喚が成されていた邪神に違いありません。

ですが道中、上手くいきすぎましたね。
もう1体の邪神についてまだ何も分かっていない。
このまま戦闘を進めるのは危険ですが、そうも言っていられないでしょう。

『存在感』から発する『円相光』が『軍隊蟻の行進』に対して効きが悪いなら、ユーベルコードを中止してウォーマシンの贅力で妖虫を引き倒します。

この邪神自体が別の邪神の贄として呼ばれた可能性だけ考慮して、
戦闘中にできれば足元の儀式魔法陣を崩しておきます。


エコリアチ・ヤエ
正直ひどい目に遭わされた。いったい何時間拘束されたと……いや、べつに老人の相手すること自体嫌いじゃねーが……。

しかしかつての防空壕か。もしかしたらガスが溜まってる可能性もあるし火の属性だけは使わない方が無難だな。
装備しているファイブエレメンツソードの火以外の属性や、木の杖で呪詛を用いて戦うか。
敵の数が多いようならユーベルコードも使用する。
魔法陣付近もだが今まで進んできた道、つまり背後だな。背後にも敵が迫ってないか確認を怠らない。特にユーベルコードを使用している時に攻撃を受けたら避けられねぇ可能性もあるからな。もし周辺に身を隠せそうな位置、あるいはこちらが有利になりそうな障害物などあれば利用する



蟲を神として崇める土着の信仰。 これがその、召喚が成されていた邪神に違いない、とカプラは思考する。
 もう一体の邪神に関してはまだ何も分かっておらず、このまま戦闘を進めるのは危険が伴う。 だが、そうも言っていられない。 なぜならば――。

 甲殻を纏う少女の姿をした邪神――もっと正確に言うならば、邪神「第零の蟻」に憑依された少女――、マガツアリスが天へ向け両手を広げる。
 ざわり、と空気が揺らぐ。
 がさりがさりと小さな音が無数に集まり、暗がりから蟲が一匹、また一匹と這い出す。
 それは瞬く間に群れとなり、洞窟内を埋め尽くすように湧き出してくる。
「うぇ……蟲ですか。 蟲ですか」
 嫌そうに、凄く嫌そうに稀星はそう口にした。 彼女にとっては2度言うほどにはおおごとだったのだ。
 その隣では周囲をつぶさに観察し、一応地下だからガスが溜まってる可能性を考慮して火の属性は使わない方が無難か、とエコリアチが独りごちた。
 まあ、しょせんは独り言である。 誰も聞いていやしない。 特に隣に立つ少女は、蟲のことで頭が一杯でまったく聞いていなかった。
「害虫は、早々に除虫するです! 地を呑む焔よ、我が意に従い焼き払え!」
 稀星は炎の属性を行使する時に好んで使う<ルビー>を取り出すとユーベルコードを発動させる。
――エレメンタル・ファンタジア。
「ちょ、まっ」
 嘘だろ!? と驚愕の表情を浮かべ、隣に立つ少女を止めようとするも時既に遅し。
 地を這う「炎属性」の『津波』が、蟲の群れを焼き焦がしながら押し流していく。
 ある蟲は炎の津波を押し留めようと堤防となり、またある蟲はマガツアリスを護る防壁となり焼き払われる。
 確かにその攻撃は蟲と言う生き物にとっては、とても効果的な攻撃だ。
 しかしそれは同時に、周囲の酸素を急激に燃焼させ、洞窟内の空気を消費させていた。
 人間にとっても致命的な攻撃である。
 これは流石に不味いと察したのか、稀星は慌ててユーベルコードを停止させる。
 ――高く、低い唸り声が洞窟のあちらこちらから響く。
 それは、洞窟そのものが酸素を求めるかのように、天井に空いた亀裂から、長い通路から猛烈な勢いで空気が流れ込む音だ。
 強かな風が吹き荒れる。

「花宵さん、あまり無茶をしてはいけませんよ。 ですが、途中で自らの過ちに気付き、手を止めた行いはいいものでしょう」
 そう語るカプラの光背が輝きを増し、まばゆい光が放たれる。
 ――円相光。
 辛くも炎の難から逃れた蟲にも光は降り注ぎ、まるで菩薩の如きその光に打たれた蟲達は動きを止めた。
「ヤエさん、今のうちに蟲と魔法陣をお願いできますか?」
「ああ、任せとけ」
 硬直した蟲達に機を逃さずエコリアチがユーベルコードを発動させる。
 その導きにより現れたるは一騎の騎士と一体の蛇竜。 共に死霊の類である。
 飛び出した蛇竜はその巨体をうねらせながら、数多の蟲を轢き潰していく。
 超重量からくる攻撃は、蟲はもとより床に敷設された儀式魔法陣をも蹂躙していく。
 質量攻撃から助かった蟲さえも無事ではない。 なぜならば蛇竜の後を追い、サーベル・チャージを行う騎士により、撥ねられ、刎ねられていく。
 その攻撃が終わる頃には、蟲の群れはその数を大きく減らし、僅かに残るばかりとなっていた。

 まだ戦いは始まったばかりだ。
 次はこちらの番だ、とでもいうようにマガツアリスは行動を開始した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スバル・ペンドリーノ
……悪趣味ね。もっとも、趣味の良い邪神なんていないのでしょうけど。

私に直接来るなら、爪に赤いオーラを纏って応戦をするけど……
とはいえ……あまり直接、触りたくはないわね。鉤爪に注意して、なるべく距離を取って……
おいで、可愛い夜の子供たち。地を這う蟲に、夜闇の本当の主が誰なのか、教えてあげるといいわ。
この薄暗い空間で、この子たちを全て捉えきれるかしら?

……にしても。
憑依型の邪神……ということは、ねえ、貴女、人間なの?
一応、言ってあげる。まだ正気ならとっとと手を切りなさい、命を落とす前に。
邪神の力になんて、触れるものじゃないわ。
……今更、遅いかも知れないけれど。


富波・壱子
オブリビオンの姿を確認後、すぐさま首のチョーカーを撫でるように触れて人格を戦闘用の冷徹なものに変更。
まずはここまで案内してきた青年の安全確保に動きます。
彼の安全が確認でき次第戻りますので、それまでこの場はお任せします。

ユーベルコードを発動し、逃げる青年に瞬間移動で追いつき洞窟の出口まで青年を護衛します。
周囲を警戒するだけでなく、オブリビオンに操られている可能性も考え青年への警戒も解きません。怪しい動きをするようならすぐさま手に持った刀で気絶攻撃します。
無事出口まで辿り着き青年の安全を確認したら再度ユーベルコードを発動し瞬間移動で前線へと合流し他の方の援護に回ります。



――時を僅かに遡る。

 それは戦闘を開始した直後のことであった。
 邪神の姿を視界に収めた壱子は、すぐさま首のチョーカーを撫でるように触れ、人格を戦闘用のものへと切り替える。
「少し、この場はお任せします」
 普段とは違う、冷たい声音でそばにいたスバルにそう告げると、逃げ出した青年を追いかけていった。
 肩をすくめたスバルは、爪にオーラを纏わせ応戦を……とそこまで動いたところで考え直す。
 アレをあまり直接触りたくない、と。
「おいで、可愛い夜の子供たち」
 スバルの影から、影絵の蝙蝠が生まれ、ちかちかと瞬くように彼女の周囲を舞う。
 ここは天然の地下洞窟。 ならばここは彼らのテリトリーだ。
「行きなさい。 夜闇の本当の主が誰なのか、教えてあげるといいわ」
 吹き荒れる熱風の中、数多の蝙蝠が飛翔する。

 ●
 壱子が青年に追いつくのは一瞬のことであった。 大した距離ではなかったこともあるが、何より彼女のユーベルコードの力が大きかった。
 対象に意識を向け、ユーベルコードを発動させる。 彼女はそれだけで、瞬時に移動することができるのだ。
「待ちなさい。」
 すぐ近くから突然にかけられた声に青年は絶叫し、振り向きもせずに逃げ出そうとする……だが逃げることはかなわなかった。
 洞窟内を明るく照らす紅蓮、直後に前後から吹き荒れた風に煽られ、青年は転がされる。
「なんなんだよ、俺が何したってんだよ」
 泣き言を漏らす青年に冷たい声が降りかかる。
 「洞窟の出口まで護衛するわ」
 かけられた声にビクッと身をすくませながら視線を向け……壱子だと気付くと「なんだあんたか」と安堵の息を漏らした。
 青年は壱子の指示に素直に従い、出口へと歩いていく。
 ……だが、世の中そんなに甘くはない。

 ――マガツアリスが、昆虫の如き無機質な瞳で青年を見ている。

 護衛するということは、護るべき対象であると公言しているようなものである。 それはつまり猟兵にとってのウィークポイントとなりえる。
 ならば、狙わない道理などあろうはずもない。
 古き神々の意志に導かれ、マガツアリスが高く跳躍。 天井を蹴り、異様に膨れた両腕の鉤爪を振り上げ、青年へと襲い掛かる!
「逃げなさい」
 咄嗟に青年を突き飛ばした壱子は、マガツアリスの鉤爪をかろうじて刀で受け止める。
 しかし勢いの乗った攻撃は重く鋭く、彼女の姿勢を崩すには十分過ぎた。
 マガツアリスの振り上げた呪われし鉤爪が振り下ろされ――金属が擦れるような音が響く。
「ふぅ、あまりやりたくはなかったのだけれど……仕方ないわね」
 瞳を紅く濡らしたスバルはぼやくように呟くと、赤いオーラを纏った爪で鉤爪を払い退けた。
 体勢を立て直した壱子とスバルは視線を交わす。
「わざわざ本体が前に出てきてくれたのだから、一気に畳みかけるわよ」
 スバルは両の手に赤き爪を。 壱子は刀を手に、そしてマガツアリスは呪われし鉤爪を構え、交錯する。
 そして戦いは、拍子抜けするほどあっさりと終わりを告げる。
 元よりこの憑依型邪神「第零の蟻」は、集団戦を得意としており、近接戦は不得手であった。 群れがそばにいない状態での戦闘能力などたかが知れていた。
 マガツアリスの首が刀によって刎ねられると共に、依り代を失った邪神「第零の蟻」が憑依状態を解除され、弾き飛ばされ転がる。

 それは手の平程度の蟻であった。
 こんなものが邪神の本体だというのだ。
 それは、よろりよろりと歩み……やがては力を失ったように動きを止めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


一体目の邪神の討伐は成功した。
 では、2体目の邪神とは一体どこに……?

 その時、破壊されたはずの儀式魔法陣の付近に淡い光が灯る。
 壊れた魔法陣が再起動する? そんな予期せぬ事態に、ざわりと空気が揺れる。
 各々武器を構え警戒する猟兵達。

 固唾を飲む彼らの耳に、ぱきっ、ぱきりと甲殻を喰い破り、咀嚼する音が流れ込んでくる。
 その音の出どころは魔法陣……などではなく背後。 洞窟の入り口だ。
 振り向いたその視線の先には一人の青年。
 先ほどまで怯えていたはずの案内役の青年が、邪神「第零の蟻」を貪る姿があった。
 青年はひとしきり食事を終えると、先刻の態度はどこへやら、悠然と笑いかけながら口を開く。
「いやいや、追いかけてきた時は、計画がバレていたのかとヒヤヒヤしたもんだ。 でも、あんたらが来てくれて助かったよ、猟兵」
 そう、彼は確かに「猟兵」と口にした。 このUDCアースにおいては、民間人が知らないはずのその名を。
 自らの計画が上手く行ったことがよほど嬉しいのか、彼は饒舌だった。
 邪神復活に協力的ではなかった若者達を生贄に、邪神を降ろしたまではよかった。
 だが、憑依した邪神の力を依り代から分離する手段がなくて困っていたのだと。
 このままでは計画がご破算だ、そう思っていたところに猟兵が現れた。
 渡りに船とここまで案内してきたというわけだ。
「ん、俺の目的はなんだって? そんなの考えれば簡単に分かることだろ? 邪神を崇める者なら誰もが思うだろ、自分が邪神になってみたいと! だから俺……ア゜」

――ぱじゅっ、と青年の頭が弾け咲いた。

 過ぎたる力は身を亡ぼす。
 人の身で邪神を受け入れようなどと、土台無理な話だ。
 青年だったモノは意味の通じない言葉で喚きたてる。
 きっとそれは、人には理解できない言語なのであろう。

 こうして、第二の邪神は降臨した。
富波・壱子
彼から目を離したのは迂闊でした。申し訳ありません。
青年が邪神に変わったこと自体には特にショックを受けたりせず、自身の失態についてのみ味方へ手短に謝罪します。

事前情報によると炎を扱うのでしたか。接近戦は避けたほうがよさそうですね。謝罪中に武器を刀から二丁拳銃へと持ち替えておきます。

つい先程まで人間だったとしても引き金を引くのに躊躇いはありません。殺します。
戦闘が始まったら邪神とはある程度距離を保ちつつ、味方が攻撃を加えやすいようユーベルコードによる予知を用いた援護射撃によって邪神の動きを阻害していきます。
相手が眷属を召喚した場合はそちらを優先的に対処。皆さんの邪魔はさせません。


ミーユイ・ロッソカステル
……全く。面倒事なら、こんな所に呼ぶのではなく。「家」でさっさと声をかけなさいな
おかげで、来るのが遅れてしまったでしょう。
……そう、後方に控えるグリモア猟兵、ミーナに声をかけて

【wiz判定】
……これは、自分への挑戦。
果たして。ヒトであることをやめたモノに……意思の疎通・価値観の共有すら怪しいものに「歌」を理解させることができるのか。
……その、あるのかも怪しい「心」を奪うことができるのか。
……そんな思いとともに、【侵食する狂気の炎】を前にして【誘惑の口づけ 第7番】を歌う。

……聞き惚れたまま、自らの炎で命を燃やし尽くすまで立ってなさい。
過ぎた力に溺れた者の末路としては、相応しいでしょう?


花宵・稀星
とと、先刻は少し頭に血がのぼって無茶をしてしまったです。
今度は逆に、敵が炎を操ってくるですか。
先ほどと同様のことが、今度は敵によって引き起こされるとやっかいです。

ここは装備した宝石<アクアマリン>の力を借りた水属性攻撃<水精>で、敵の<侵食する狂気の炎>を消火しにかかるです。

人の身で邪神を降ろそうなどと過ぎた野望なのです。
冷や水で面を洗って出直してくるといいです。
もっとも、出直すもなにも、あなたはここで終わりを迎えるのですが。


エコリアチ・ヤエ
俺たちが来たことが運の尽きだと思い知らせてやろうじゃねぇか。って、もう聞こえてねーか。
これからは本格的な戦闘だ。胸の飾りに触れ、戦闘のための人格へと入れ替える。
「他者を贄としたおぬしだが、次は我の餌食となるがいい」
戦闘は死霊どもを召喚し、それをメインとして戦う。死霊の蛇竜は攻撃に、騎士は我の守りに使う。他にもファイブエレメンツソードで傷口をえぐったり呪詛でも対抗しよう。
もし洞窟より外に追い出して戦闘できるならそうしよう。火属性を使う輩もそれで遠慮なく戦えるだろう。
自分の力量もわからぬ愚かな人間に慈悲など必要ない。徹底的に潰してやろう。


ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】

人の死などという、重い、重い対価で呼び出したモノを喰らうなんて無謀にも程があるね…同情の余地はないけど

相手は間違いなく強いだろう、オレは「咎力封じ」での弱体化と隙を作って次に繋げることを狙おう

隙が出来るまでは拷問具…鞭で削っていく
相手が某かの攻撃やアクションを繰り出した直後など、僅かな間隙も逃さないよ
自分も積極的に打って出て、より隙が出来る好機を作ろう

少しばかりおいたが過ぎたようだ、拘束して矯正してあげよう

…生け贄なんて大嫌いなんだ、昔を思い出すから
殺められた人の苦痛を想わずにはいられないから

邪神のオマエも、邪心に憑かれた宿主のオマエも、酬いを受ける時だ
雨に打たれた花の様に散ると良い


雪華・グレイシア
やれやれ、怪しいとは思っていたけれど……ここまでとはね。
なんにせよ、その結果は自業自得。
同情はしないよ、ボクはボクの目的を果たすとしよう。

本当はキミの持っているその教典とやらが目当てだったのだけれど
調べるまでもなく、ボクの探しているものとは違いそうだ。

【逃げ足】【ダッシュ】で炎を避けながら、隙をみてユーベルコードを発動。
奪う対象は教典を持った手。
首尾よく奪えたら、そのまま放り捨ててしまおう。
熱いし、ずっと持っていたいものでもないからね。

直接トドメを刺したりなんだりはボクは得意じゃないし……後は他の猟兵の皆に任せるよ。
お膳立てしてあげれば、後は楽勝だろう?


聖護院・カプラ
【WIZ】
魔法陣を破壊するだけでは、矢張り甘かった……!
憑依型という情報を精査して村人に詳しく聞き込みをすべきでしたか。
青年もああなってしまっては助ける事は叶いでしょう。
愚かと指差し笑いはしません。心の闇に邪神に巣食われたのでしょうから。
私にできる事は、せめて”彼”の死後の安らぎを願うだけです。

『経法』の浄化が思うようにいきませんね。

『侵食する狂気の炎』はユーベルコードを軽減する効果を持つようですが、
依り代の寿命を食い潰す諸刃の剣でしょう。
ヒトの寿命を使い切り、邪神がヒトの形を保てなくなった時に改めて『経法』で浄化してみせましょう。


スバル・ペンドリーノ
邪神を崇める者なら誰もが……か。
ま、そうかもしれないわね。あんなものを崇める時点で、愚かなのは決まっているようなものだもの。まして、利用しようだなんて……ね。

爪の先に赤いオーラを纏って攻撃するわ。
本当はこっちにだって触りたくないし、変わらず蝙蝠をけしかけたいのは山々だけど……

「畏れなさい。この身は吸血鬼と星の悪魔の血を引く、正統なる闇の血統。刈り取ってあげるわ、偽りの邪神」
「……この手応えを記憶に留めて。哀れむくらいは、してあげる」

※真の姿
瞳は赤く染まり、夜色のケープを身にまとい、わずかに浮く。吸血鬼のイメージ強め
※アレンジ歓迎




 邪神は未だ理解不能な言語を呟き続けていた。
 まだ肉体に馴染めていないのか、身体の動きを確かめるようにぎくしゃくと動かす。
 その姿から注意をそらさずに、猟兵達もまた戦いに備えながら言葉を交わす。
「戦闘中とはいえ、彼から目を離したのは迂闊でした、申し訳ありません」
 自分の失態を壱子は言葉にする。
 彼女は謝罪しながらも事前情報を思い起こし、炎を使う相手だから近接戦闘は避けるべきだと判断して、武器を二挺拳銃へと持ち替える。
「それは私も同じこと。 魔法陣を破壊するだけでは、やはり甘かった。 憑依型という情報を精査すべきでした」
 壱子とは対照的に、聖護院・カプラが悔いを滲ませながら答えた。
「自業自得だと思うけれどね。 怪しい気はすていたけれど……まさか自ら邪神になるとはね」
「同情の余地はない。 人の死などという重い、重い対価で呼び出したモノを喰らうなんて無謀にもほどがあるね」
 やれやれ、と肩をすくめたグレイシアの言葉を次いだのはヴォルフガングだった。
 彼の言葉は、思うところがあるのか、重い響きを伴っていた。
 なんにせよ、目的は変わらない。 それぞれの目的を果たそう。 グレイシアがそう締めくくった。


 そんな彼らの後方でも会話をする者達がいた。
 その中の一人、一足遅れて合流したミーユイ・ロッソカステル(微睡みのプリエステス・f00401)はため息を零した。
「……全く。 こんな面倒ごとなら、『家』でさっさと声をかけなさいな」
 今しがた状況を聞き終えた彼女は、この場に来ることが叶わないグリモア猟兵であるミーナへの不満を口にする。
 当人が目の前にいたら、表情筋がゆるゆるな顔で緩い感じに謝っていたことであろう。
「あら、真打は遅れて登場するって言うじゃないの。 これから本領発揮すればいいのではなくて?」
 ミーユイに笑いかけながらそう答えたのはスバルだ。 連戦の状態でも余力があるのはいいことだと彼女は語る。
「それに、誰にでも失敗はあるですし。 私もさっき無茶をしてしまったです」
「ほんと、気を付けてくれよ」
 あっけらかんと告げる花宵に、思わずエコリアチが突っ込みを入れた。
 先刻は少し頭に血が上ってしまっただけです、と言葉を返す彼女を適当にあしらう。
 できれば外に誘導したいが、この地下通路の長さじゃ後ろから攻撃されかねえーなとぼやきながらエコリアチは胸の飾りに触れる。
「では、そろそろ戦闘を始めるぞ」
 戦闘用に人格を入れ替えた彼は、戦いの始まりを告げるのだった。

 真っ先に動いたのは、エコリアチの呼び出した死霊蛇竜と死霊騎士だ。
 敵の強さが分からなければ、対処が難しい。 ひとまずは威力偵察というわけである。
 だが、そう考えるのは邪神も同じでった。
 ――慈悲深き邪神の御使い。
 邪神の周りの地面が蠢き始める。
 それはすぐに形を成し、鉱物を纏った昆虫型の眷属となり、蛇竜と騎士と衝突する。
 数では有利だが、能力ではあちらが上。
 一進一退の攻防が始まった。

 その戦いをのんびりと眺めている暇などない。
「眷属共は我に任せておけ。 おぬしらは邪神を頼む」
 エコリアチの言葉に真っ先に動いたのは壱子だ。
 つい先程まで人間だった相手だとしても彼女は躊躇いはしない。 彼女の放つ弾丸が邪神の頭部に当たり火花が散る。
 ……少し銃口を下げ、引き金を絞る。 狙い過たず銃弾は胴体にめり込む。 これならば問題ない。
「標的の動きを封じます。 続けて攻撃を」
 その言葉を待たずして、ヴォルフガングの鞭が唸る。 音を置き去りにして飛来する鞭の先端が邪神を打ち据え、肌を抉り取る。 その威力はいつもより高い。
 ――魔物 第2番。
 ミーユイの唇から零れだす旋律。 それは邪悪な魔物を討滅せんとする軍歌。
 涼やかなその歌声は、するりと心に滑り込み、猟兵達に力を与えているのだ。
 歌声に押されるように、軽やかなステップで舞い込んだスバルの赤いオーラを纏った爪が邪神のふくらはぎをすれ違いざまに引き裂く。
 反撃しようと邪神が動く。 だが邪神の行動の先の先を読む壱子の射撃が、その行動を奪っていく。
「続けていくです! 天駆けるいかづちの精よ、我が意に従い敵を討て!」
 稀星の放った雷光を纏う鳥形の精霊が殺到する……だが。
「ゲガァアアアアア!!」
 邪神の咆哮と共に、その身を炎が舐める。
 ――侵食する狂気の炎。
 その炎は邪神の身体を焼くことなく、全身を覆い尽し襲い来る雷鳥を焼き殺す。
 いつまでも好き勝手はやらせないとでもいうように、邪神の持つ教典から無数の火球が放たれる。
「それなら、これはどうです。 時の流れにうつろう水の精よ、全てを飲み込む急流となれ!」
 稀星の呼び声に応え、半人半漁の精霊ウンディーネが現れ、無数の水流となり火球を迎え撃つ。
 火球と水流は、互いに互いを喰い合うように打ち消し合い、それは膨大な水蒸気となり周囲を白く染め上げていく。

 すべてを覆い隠す霧のさなか、微かな歌声が地下洞窟に反響し響き渡る。
 ――誘惑の口づけ 第7番
 これは自分への挑戦。 果たして、ヒトであることをやめたモノに、意思の疎通・価値観の共有すら怪しいモノに「歌」を理解させることができるのか。 その、あるのかも怪しい「心」を奪うことができるのか。
 ミーユイの紡ぐ歌は果たして……。
 動きを止めた邪神に、音よりもなお速い鞭が飛来する。
 だがその攻撃に、未だ炎を纏う邪神はあまり堪えた様子がない。
 だが問題ない。 この程度の攻撃では効かないくらいに強いのは分かり切っていたことだ。
 ――咎人封じ。
 ヴォルフガングが放った鞭は、咎人である邪神を絡め捕り、動きを止めていたその身体を更に強固に封じる。
「おいたが過ぎたようだ、邪神のオマエも、邪心に憑かれた宿主のオマエも、報いを受ける時だ」
 邪神に影が差す。
 攻撃を軽減するならばどうすればいいか? 答えはいつだって至ってシンプルだ。
 軽減できないほどの大火力。 もしくは身動きを取れないようにするかだ。
 邪神の頭上から、カプラの拳が振り下ろされた。
 ウォーマシンの圧倒的な贅力で繰り出されたは拳は、霧を吹き散らし、地面を陥没させてなお邪神の身体をバウンドさせる。
 身動きを封じられ、中空に打ち上げられた邪神に、影の如く素早く駆けたグレイシアは邪神の持つ教典に手を伸ばす。
「それは邪魔だね。 だから……ただ、奪われろ」
 瞬間、邪神の手からグレイシアの手の中に炎を宿す教典が移っていた。
 強盗に流儀などありはしない。 ただ盗むという結果だけがあるのだ。
 表紙をちらりとみただけで、興味を失ったように放り捨てる。
「中を見るまでもなく、これはボクが探しているものとは違いそうだ」
 地面に落ちた教典が、自らの炎に焼かれ灰と化していく。 それと呼応するように、眷属や邪神の身体もまた燃え盛る業火に溶かされるように形を失い崩れていく。
 炎によって自らの命を燃やし尽くしたのであろう。
 例え邪神であろうとその肉体は、元はといえばただの人間なのだ。 いずれは朽ちるものである。
 だが、戦いはまだ終わりではない。
 終わらせてはならない。
 これでは顕現した意味がないではないか。
 まだ一つの災厄も撒いていない、蒔けてもいない。
 で、あるならば……。


 邪神が燃え尽きたその場所には、焼きつくように影が残っていた。
 いや、それは果たして影か?
 恐らくそれは、影には違いないのだろう。 だが同時に、それは影ではなかった。
 邪神が最期に残した残り香。 この世に降臨したという痕跡。
 ――異形なる影が降臨する。

 異形なる影――人のようなフォルムでありながらも、昆虫の如く六つの足を持つ異形だ――は、人ならざる動きで立ち上がり、跳ねるように猟兵達に襲いかかる!
 しかしてその攻撃は、割って入った死霊騎士のサーベルによって受け止められる。
 一瞬の交錯。 だが、この時既に満身創痍であった騎士は容易くその護りを破られ、顎の餌食となり消え去る。
「我の戦っていた眷属が急に炎上して消えたかと思えば、妙なことになっているな」
 先ほどまで召喚された眷属を押し止めていたエコリアチが、ファイブエレメンツソードを従えながら異形なる影と対峙する。
「ご苦労様です、エコリアチさん。 どうやらあの影は、邪神と同等の力はありそうね」
 しかし所詮は影。 邪神の残滓でしかない。 いずれは放っておいても消滅するほどの存在であろう。
 だが放っておけば何をしでかすかも分からない存在である。
 かさり、かさりと暗がりから、蟲の湧き出す音が聞こえてくる。 ――どちらにせよ、全力でもって速攻で潰すのが最良なのは変わらない。

「他力本願、承りました」
 始まりの合図は、光であった。 それはカプラの放つ、他力によって邪見を祓う浄化の光だ。
 眼前の異形なる影のみならず、暗がりから湧き出した蟲さえもその身を焼かれ痛み苛む。
「私にできる事は、せめて”彼”の死後の安らぎを願うだけです」
 この機をのがさず、エコリアチの従えるファイブエレメンツソードが意を得て切っ先を影へと向けて弾け飛ぶ。
 そのすぐ後を追うように、グレイシアが飛び出していく。
「ラストダンスの時間だ。 最期まで踊れ」
 グレイシアの投げた予告状と、エコリアチのファイブエレメンツソードが相次いで異形なる影の身を傷付け、その体積を削いでいく。
「お膳立てはしたよ。 さぁ、勝利を奪い取ろうか?」
 それはまるでパーティでレディをエスコートするかのように、はたまた何かの一幕のように、彼は道を譲る。
 その道を行くのは、夜色のケープを纏い、瞳を赤く染め上げた少女だ。
「ええ、エンドロールを刻みましょうか。 刈り取ってあげるわ、偽りの邪神」
 血が沸き立つような感覚。 自然と笑みが浮かぶ口元に、ちらりと犬歯が覗く。
 予告状のルールに縛られた異形なる影は、最期まで舞台の上で踊り続ける。
 歩みを進めるは吸血鬼と星の悪魔の娘。 正統なる闇の血統たる少女に、邪神の残した影が襲い掛かる。

 ――交錯は一瞬。

 鮮血の如き爪牙によって縦横無尽に引き裂かれた影が、真っ黒な塵となり霧散していく。
 それは人ならざる力。 猟兵を猟兵たらしめる真なる力の結果だ。
「……この手応えを記憶に留めて。 哀れむくらいは、してあげる」
 夜色のケープが光の粒子となり、星屑のように瞬き中空に溶け消えた。


 こうして二体の邪神が召喚された事件は、誰に知られることもなく静かに幕を降ろした。
 邪神を呼び出すための贄となったものは、家出や失踪としてひっそりと処理されるのであろう。
 これがUDCアースという世界の日常だった。
 でも例えそんな世界だったとしても、猟兵達の活躍を知り、その行動に感謝する人はいるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月06日


挿絵イラスト