エンパイアウォー⑳~絢爛たる魔の棲み処
●妄執と憎悪の女
「金、金、アタシの金……!」
絢爛豪華に改装された屋敷に籠り、その身にどす暗く禍々しい陽炎を纏う女は、捻じれきった怨念を口走る。
「徳川を殺して、猟兵を殺して、もちろん信長の野郎も、ぶっ殺す!!!」
風とも念とも知れぬ力に鮮やかな花弁が煌びやかな庭園を舞い散り、女の怨念をどぎつく彩っていった。
●グリモアベース:ゲネ
「魔軍将の一人、大悪災『日野富子』の居場所が判明した! すなわち……決戦だ!」
ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)が展開したホロモニターには、本来の姿からはかけ離れた様相の『花の御所』が映し出された。
「京都、『花の御所』。歴史に知られる足利将軍家の邸宅だった場所だな」
江戸時代には別の建物に代わっていたはずなのだが、どうやら富子が有り余る私財を投じて豪華絢爛な御所を築いたらしい。
「日野富子と言えば、室町幕府八代将軍足利義政の正室にして、九代将軍足利義尚の母。足利将軍家の邸宅をわざわざ使うってのは、そんな過去の栄華への、矜持というか妄執みたいなものなんだろうな」
屋敷の各所に目を惹く、漆塗り、螺鈿細工、金張り。欄間は細緻な装飾が施され、襖にはダイナミックな山水画が描かれ、天井は精密きわまる組み木細工で埋め尽くされ、庭には艶やかな花々が咲き誇り、大きな池には美しい錦鯉が優雅に泳ぐ。贅の限りを尽くした金満屋敷である。
すなわち猟兵は、このど派手に新築された御所に乗り込み、絢爛豪華な敷地の中で大乱闘を繰り広げることになる。
「仮にも信長配下の魔軍将を名乗りながら、当の信長にまで殺意を向ける……まるで怨念の塊だな。早急に撃退しなければ危険きわまりない」
モニターに映し出された日野富子の凶悪な人相を示しつつ、ゲネは新たに展開した数多の画面に転送術式を書き出し始めた。
「敵はシンプルに強敵だ。気合い入れてユーベルコードの準備を頼む。いざゆかん、戦乱のサムライエンパイアへ……!」
そらばる
エンパイアウォー、魔軍将決戦。
絢爛豪華な花の御所で、大悪災『日野富子』と対決します……!
●概要
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●特殊ルール
大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
かなり難易度の高い戦いとなりますので、心してご参加ください。
執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にお使いください。
それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
第1章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
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POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
※人格名【昨夜】で戦闘参加
怨念の塊となれば私と志乃が
出ない訳には行きません
……たとえ厳しい戦いでも、参ります
※【祈り、破魔、呪詛耐性】を全ての攻撃、防御に付与※
【オーラ防御】は常時展開
【第六感】で敵攻撃を【見切り】【念動力】で可能であれば水を巻き上げ火矢にぶつけます
さらに聖なる【歌唱の衝撃波でなぎ払い】
火矢であっても怨念なら効くはずっ……
可能な限りの【早業】でUC発動
これ以上の狼藉は許されませんよ日野富子!!
自身の存在そのものでその怨念、邪な感情、【なぎ払い】ます
さらに光の鎖を【念動力、ロープワーク】でぶん回し
敵攻撃を【武器受けからのカウンターなぎ払い】
そのまま縛り上げます
●邪を祓う者
京都、新築された『花の御所』。
贅を尽くした邸宅の、花嵐舞う庭園に、鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)は足を踏み入れた。
「怨念の塊となれば私と志乃が出ない訳には行きません」
……いいや、その容姿は黒髪橙目の志乃ではない。
白髪赤目の人格、『昨夜』だ。
「……たとえ厳しい戦いでも、参ります」
昨夜は庭園に姿を現した屋敷の主をまっすぐに見据えた。
大悪災『日野富子』は澱んだオーラを渦巻かせながら、不気味に輝くまなこで昨夜を睨み据えた。
「アタシの屋敷に土足で入り込みやがって……」
苛立ちに顔を歪める富子の周囲に、ぼう……と人魂めいた炎が無数に浮かび上がる。
それは火矢の怨霊。かつて応仁の乱にて、敵を射殺す意志と念を籠めて飛び交った、火矢そのもの。
「――誰か、アイツをぶっ殺せよ!」
富子の号が、火矢を一斉に疾らせた――!
「夥しい怨念……これほどまでに……!」
昨夜は見開いた瞳で火矢の軌道を見切り、念動力を発動した。その瞬間、池から巻き上がった水が自在に宙を疾り、火矢を次々撃ち落していく!
第二波、第三波と続く火矢の波状攻撃。昨夜は池の水を干上がらせる勢いで水を操るが、夥しい火矢の全ては防げない。水の護りを抜けてくる火矢が、目前へと迫る――!
その時、場違いなほどに澄んだ歌声が空気を打った。
(「火矢であっても怨念なら効くはずっ……」)
聖なる歌唱が衝撃波となり、その破魔の力で火矢の怨霊たちを空中に押しとどめる。歌唱の波動をすり抜けた幾本かが皮膚の表面をかすめて過ぎるも、祈りと破魔、呪詛への耐性を付与したオーラに護られた肉体に、怨念の侵食を及ぼすには至らない。
「ぐぬ……っ」
富子が悔し気に歯噛みし、次なる手を繰り出す――よりも速く、
「これ以上の狼藉は許されませんよ日野富子!!」
昨夜の姿が瞬時にして輝く神霊体へと変じ、電光石火で富子へと突撃した! 己の存在そのもので邪な感情を薙ぎ払う!
「がはっ!? ……くそがッ、調子こいてんじゃねぇぞ!!」
富子は地面に叩きつけらつつも、即座に態勢を立て直し妖しく輝く長い爪で襲いかかってきた!
が、その爪は、光の鎖に阻まれる。自在に動く鎖が爪を弾き、即座にその身体を縛り上げた!
「浄化を受けなさい」
「……!」
静けさを湛える昨夜の眼差しに、富子はギリリと奥歯を食いしばった。
成功
🔵🔵🔴
リダン・ムグルエギ
ナミルちゃん(f00003)と共に行くわ
金持ちだけど…この人クレーマーっぽいわね
家宅侵入時にお宝を拝借しましょ
改造防具扱いで身に着け盾にしつつ挑発するために
ナミルちゃんにも施すわ
キラキラファッションショーね
「おっと、その爪でコレ切り裂いていいの?
挑発の目的は怒りによる攻撃単調化と催眠術の発動容易化を図る為
逃げ足を活かし全力で回避を試みるわ
コード定義、日野富子
あなたは【金に対する妄執と他者への憎悪】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する…
共感者は居ない、されど自身をその憎悪が強化し、強化が次の憎悪の呼び水となる…
そういう存在じゃない?
その妄執の爪、己に突き立てなさいな
憎悪バブル崩壊の時は今よ
ナミル・タグイール
リダンf03694と同行
金ぴかぴんにゃ!素敵空間にゃ!
入ったらこっそりお宝さがしにゃ!何処見てもきらきら!テンションあがるにゃ
金ぴかなものいっぱい盗んで装備にゃ。これで殴れまいデスにゃ
金ぴか盾にしてやばそうな攻撃は野生の勘で回避
避けながらUC発動、身につけた宝箱から【呪詛】纏った装飾を引っ張り出してプレゼントにゃ!(貸すだけにゃ
つけ爪とか鎖とかで爪を飾り付けちゃうにゃ
呪いの輝きを放つ金ぴかは身に付けずにはいられないはず
付けたら呪いで金欲も憎悪も爆あげにゃ!
あとはリダンにお任せ!リダンと金ぴかを守るように動く
金ぴか好きとして相手に共感できるかもにゃ
そしたらバフかかったまま斧でザクーでトドメにゃ!
●金欲と憎悪の暴走
「金ぴかぴんにゃ! 素敵空間にゃ!」
ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は足を踏み入れた屋敷の豪華さに目を輝かせてはしゃいでいる。
「しーっ。ナミルちゃん、今はまだ隠密ミッション中よ」
リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が人差し指を立てて注意すると、ナミルははっと両手で口を覆い、こくこくと頷き返した。しかしテンションは常時上がりっぱなしである。
「お宝さがしにゃ~何処見てもきらきらにゃ~……!」
大喜びで金品を物色していくナミル。金の櫛、金の扇子、玉の首飾り、珊瑚の髪飾り、金糸銀糸を織りこまれた打掛……さて、これらをどうするのかというと。
「……使えるわね。キラキラファッションショーよ、ナミルちゃん」
リダンは金銀財宝の宝飾品を両手いっぱいに抱えて、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
この狼藉に、御所の主がいつまでも気づかぬ道理もない。
散らかりまくった室内を目撃した富子は驚愕に息を詰め、次に……
「……てめぇら……!」
当然、激昂した。
ジャギン! 妖しく輝く両手の爪を鋭く伸ばし、富子は二人の盗賊へと襲い掛かる――!
「おっと、その爪でコレ切り裂いていいの?」
くるりと富子を振り返ったリダンは、これ見よがしに己の服装を見せびらかした。富子が爪を突き出した前傾姿勢のまま、ピタリと静止する。
リダンを飾り立てているのは、富子の所有物である金銀財宝装飾品の数々。
「金ぴか装備にゃ。これで殴れまいデスにゃ!」
同じく振り返ったナミルもまた金ぴかぴんに飾り立てられている。金糸銀糸の打掛はじめ、さぞお高かろう絹織物もデザインに組み込んで、美と機能性を兼ね備えたアレンジは、ファッションブランドのデザイナーを務めるリダンの本領発揮である。
富子は目を見開いたままに、呆然と呟く。
「アタシの………………アタシのぉぉぉぉぉッ!!!!!」
「にゃっ!? 襲い掛かってきたにゃ!?」
凄まじい速度で疾る爪を、リダンは野生の勘で回避しながら懐をまさぐった。
「金ぴか惜しくないのかにゃ!?」
「んなもん、金があればいくらでも買いなおせるッ! だが……このアタシに大損こかせた落とし前だけはキッッッッッチリつけてもらうからなァッ!!」
「金持ちなのは確かだけど……この人クレーマーっぽいわね」
リダンはなんとも言えない溜息をつきつつも、爪の猛攻からは逃げ足を活かして全力で回避していく。
「にゅぅ……しかたないにゃ。先に言っておくけど貸すだけにゃよ!」
ナミルは怒りに単調になりがちな富子の爪を右に左に躱しながら、懐からじゃらりと音を立てて黄金の何かを閃かせた!
抉るようにナミルの右耳をよぎった富子の爪は、いつのまにやらずっしりと装飾品に彩られていた。黄金のつけ爪、黄金の鎖、黄金のリング、などなど。
それらは全て、呪詛を帯びている。身に着けずにはいられない誘惑の呪いを。
「ぬぐ……ぁぁぁああぁぁぁぁぁあああ! カネ、カネ、カネェェェエェェェ!!」
呪いの力で富子の金欲と憎悪がさらに爆発する!
「上手くはまってくれたみたいね。――コード定義、日野富子」
リダンはその機を捉え、ユーベルコードを解放した。
「あなたは【金に対する妄執と他者への憎悪】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する……」
囁く言葉は、強制力を持つ催眠術。敵の怒りを煽る挑発は、この術の発動を容易にするための作戦だったのだ。
「共感者は居ない、されど自身をその憎悪が強化し、強化が次の憎悪の呼び水となる……そういう存在じゃない?」
「ああ……ああ、そうだ! アタシにとって金が全て! アタシの金を、アタシを認めない全てが憎い……!」
妖しく光る富子の瞳が、より一層力を増して輝き始める……
ついでに斧を持つナミルの手元も軽く輝き始めた。
「ナミルも金ぴか大好きにゃ! ちょこっとだけ共感しちゃったにゃ!」
「そう、ならタイミングを合わせましょう」
「にゃ!」
ナミルが素早い身のこなしで富子へと肉薄し、斧を振り上げたその瞬間、リダンは富子に命じた。
「その妄執の爪、己に突き立てなさいな」
酷薄な呼びかけに、富子の爪が高々と振り上げられる。
「――憎悪バブル崩壊の時は今よ」
「あ……あっ……ああぁッ!!」
抗いがたい催眠の力に突き動かされるまま、富子は強化された爪を己の胸へと突き立て――
と同時、棒立ちの富子へとナミルの斧が振り下ろされる――!
激しい水音と夥しい赤が、絢爛豪華な室内を穢した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイシャ・ソルラフィス
尚くん(f01298)と参戦します
…な、なんだか…
口調だけ聞くと、暴走族のレディースの、ヘッドみたいな人だね…
お金、ね…
幸福も愛も、全てお金で買えると思っているみたいだけど…
愛がない、愛を知らないっていうのは、哀しいことだよ
出会って早々残念ですが、生まれ変わって愛を学んできてくださいね
まず敵の先制攻撃の回避
尚くんが「おこづかいシールド」を使ってくれるみたいだから、その中に入って〈見切り〉技能で避けます
次に《愛はすべてに打ち勝つ》で強化
そして『属性攻撃』+『全力魔法』で遠距離支援攻撃を開始
尚くんを全力でサポートするよ!
尚くん、トドメはお願いね!
どうか次は、愛のある家庭に生まれ変わってね…
日野・尚人
あーちゃん(f06524)と参戦!
日野富子・・・
確か親父が「うちのご先祖さんは名家なんだぞ」って・・・関係ない、よな?
そんなに金が好きなら受け取れよ!
けど派手に燃やすと消し炭だからこっち見る時は気をつけろよな!
大好きな金を辺りにぶちまければ少しは攻撃を躊躇って・・・くれるかなぁ?
まあダメでも視線を<見切り>、<ダッシュ>で躱す。
あーちゃんへの攻撃は<武器受け>と<火炎耐性>で出来るだけ防いでやる!
あーちゃん!ほ、ほら、アレ(愛はすべてに打ち勝つ)行くぞ!
強化したら<ダッシュ>で接近!
両手の武器で<2回攻撃><フェイント><零距離射撃>の猛ラッシュだ!
へへ♪この「絆」ってやつは金じゃ買えないぜ♪
●愛は金に勝つ!
「……クソが……ッ! あああああムカツク! ムカツクッ!! どいつもコイツも死ねよッ、アタシ以外みんな死ねッッッ!」
「……な、なんだか……」
消耗激しく毒づく富子の様子を、アイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)はこわごわと窺った。
「口調だけ聞くと、暴走族のレディースの、ヘッドみたいな人だね……」
これが仮にも歴史上の偉人かと、より複雑な気分なのは日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)だ。
「日野富子……確か親父が「うちのご先祖さんは名家なんだぞ」って……関係ない、よな?」
遠巻きに様子を窺ってくる二人を、富子は剣呑な眼差しでギッ!と射抜いた。
「……んっだテメェら……またアタシの宝を盗みに来たのかよッ!?」
「いや、あの……」
「渡さねぇ……金……金ェ……全部、全部全部全部アタシのもんだッ!」
吼え猛る富子の瞳が、昂る憎悪により強烈に輝き始める……
「そんなに金が好きなら受け取れよ!」
尚人が懐から取り出した札束が封を解かれ、紙幣が辺りを激しく乱舞した!
視界を遮られ、富子は軽くひるんだ。
「……っ」
「けど派手に燃やすと消し炭だからこっち見る時は気をつけろよな!」
しかし富子の反応は薄い。瞳が再び力強く輝く。
「……馬鹿にしてんのかテメェ。どこの田舎の藩札か知らねぇが、こんな紙切れごときにアタシが気を使うと思ってんのか!」
「あーやっぱそうなっちゃうか。全部集めれば山吹色の菓子ぐらいの価値はあると思うんだけどな!?」
十分に予期できた反応に、尚人は慌てず騒がず憎悪の視線からダッシュで逃げる。ぢゅん――。全力で逃げ出した場所を高熱が通過し、紫色の爆発が上がった!
……そう、サムライエンパイアは江戸時代と同等の文明レベル。貨幣の主流は金・銀・銭であり、紙幣は藩札といったローカルなものに限られる。発行元の信用が通じてこその紙幣。現在の富子に、それが通じる道理もない。
が、紙幣による「おこづかいシールド」は物理的に富子の視界をある程度制限することには成功した。紙幣舞い散る中をさらにアイシャと尚人の二人にひっかきまわされ、富子はなかなか狙いを絞り切れない。
「お金、ね……」
熱線をギリギリで躱しながら、アイシャは呟いた。
「幸福も愛も、全てお金で買えると思っているみたいだけど……愛がない、愛を知らないっていうのは、哀しいことだよ」
「るせぇッ! 説教なんざお呼びじゃねぇんだよッ!!」
ギラリと輝く瞳がアイシャを捉え、憎悪の熱線を照射した。直撃コースだ、避けきれない――!
「うおぉぉぉおぉぉッ!!」
気合い一閃! 尚人が全力で駆け込み我が身を熱線の進路にねじ込み、紫怨の爆発を刀身で受け止めた!
「尚くん!?」
「っ……大丈夫!」
炎に刻み付けられた抉るような痛みを、尚人は耐え抜き、アイシャを振り返り手を差し伸べた。
「あーちゃん! ほ、ほら、アレ行くぞ!」
少し頬の赤い尚人に、アイシャは笑顔で応える。
「うん♪ ボクと尚くんとなら、誰にも負けないんだから!」
二人の手が重なり合った瞬間、互いの魔力が互いの全身を包み込む――
「「愛はすべてに打ち勝つ!!」」
互いへの愛の力で強化された二人は、同時に散開した。尚人は富子へと疾駆し、アイシャは強力な魔力を練り上げる。
「出会って早々残念ですが、生まれ変わって愛を学んできてくださいね」
アイシャは鋭く研ぎ澄ませた氷塊を、富子めがけて豪速で投げつけた! 尚人を狙う熱線が氷塊と激突し、瞬く間に大量の水蒸気を巻き起こす……!
「くそっ見えねぇ……っ」
富子が忌々しげに目を細めた――その時。
「尚くん、トドメはお願いね!」
「ああ!」
アイシャの声援に応え、水蒸気の中で尚人の声が上がった。
富子は反射的に視線を転じ……それが最大の隙となった。
――斬撃は、完全に意識の外にあった真横から。
「何!?」
富子の腕を横薙ぎに斬り裂いた尚人は、すでにもう片方の手に構えたハンドガンを富子に向けている。
「へへ♪ この「絆」ってやつは金じゃ買えないぜ♪」
至近距離で引かれる引き金。
蒸気の向こう側で、猛然と連射される銃声。くぐもった女の悲鳴。
「どうか次は、愛のある家庭に生まれ変わってね……」
捻じれ、歪みきった哀れな女へと、アイシャは祈るように呟いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
使うUCは凱旋を選択
日野富子と戦う味方の元に精霊と共に現れる
敵のUCには敵の攻撃に合わせて精霊に命じ、範囲内の敵味方を万歳状態にする
光る爪を見て【学習力】による第六感に似た嫌な予感から咄嗟に判断した
範囲内の敵味方とも「バンザイ」した状態になるが、この状態なら富子も爪による攻撃できないだろう
「邪魔をするなと言われても、その光る爪があまりにも怪しくてね」
爪の輝きが失われたらバンザイ状態を解除させ【ダッシュ】と【残像】を使用して攻撃し、富子からのヘイトを集める
私を見ている分、周りが見えなくなっているはずだ
それに他の猟兵もじっくり観察できているだろう
「囮役は…しっかりやりますよ」
パフィン・ネクロニア
毎回思うんじゃけど絶対先制攻撃ってずるくない?
対策が必要なのは爪での攻撃じゃな。
つーか攻撃回数9倍って殺意高過ぎじゃろ。
じゃが爪が輝く間って事は輝かなければただの爪って事じゃろ。
ダッシュと残像を駆使して逃げながら、ひよこファイブに盗み攻撃で近くにあるお高そうな調度品を派手に盗ませて相手の注意をひきつけ
その隙に、こんな事もあろうかと用意しておいた闇属性を付与したこの秘密兵器をぶつければ一時的に爪が輝くのを阻止できるはずじゃ。きっと
そうしてなんやかんやでうまい事攻撃を凌げたら剣刃一閃を叩き込んで反撃を喰らわんうちにいただいた戦利品と一緒に撤収。
うむ、完璧じゃな。こんな感じで行こう。
●バンザイと秘密兵器の妙
「毎回思うんじゃけど絶対先制攻撃ってずるくない?」
パフィン・ネクロニア(ダンジョン商人・f08423)の苦言は至極真っ当なものだったが、
「……ァア!? うるせぇぞそこの!!」
満身創痍の富子は端的に凄みをきかせつつ爪を輝かせた。肩を激しく上下し、もはや言葉で殴り合うのもしんどそうなありさまだ。
(「対策が必要なのはあの爪じゃな。つーか攻撃回数9倍って殺意高過ぎじゃろ」)
胸中でぼやきを続行しつつ、パフィンは飛ぶように迫る富子に背を向け逃げ出した。富子に追いつかれそうになった瞬間、さらにダッシュ! 凶悪な爪攻撃の連撃は残像を掻いて大きく空振りした。
「……の野郎ッ!」
意地になった富子の猛追がパフィンに迫る――が、その背後で、聞き捨てならない大きな物音。
「アタシの壺っ!?」
耳聡く振り向いた富子と目が合ったのは、お高そうなツボを担いでコソコソ移動している、カラフルなひよこ戦隊たち。
「――――アタシのぉぉぉぉぉぉおおぉぉ!!」
瞬間的に憎悪を沸騰させ、富子はひよこファイブへと飛び掛かる――!
その瞬間、精霊を伴った人影が突如として戦場に現れた。
「あれはまずいな……やってくれ」
仁科・恭介(観察する人・f14065)に命じられた精霊が、バ!と両手を挙げた。
「!?」
「!?」
「「「「「!?」」」」」
富子が、パフィンが、ひよこファイブたちが、一斉にバンザイをした。精霊の力による強制バンザイである。
ひよこファイブが勢いよくバンザイをしたせいで、ツボがゴロリと床に転がり、中にめいっぱい詰め込まれていたお宝が少しだけ零れた。一種異様な沈黙が落ちる。
富子はバンザイをしたまま全身をわななかせたのち、
「……何しやがんだッ邪魔すんなテメェェェェッ!!」
怒髪天をついて恭介を怒鳴り飛ばした。
自身もしっかりバンザイしながら、恭介は淡々と返す。
「邪魔をするなと言われても、その光る爪があまりにも怪しくてね」
光る爪を一目見た瞬間、閃いた嫌な予感に従って、咄嗟の判断で精霊の力を発動したのである。一定距離内の人物は敵味方関係なくバンザイしてしまうが、少なくともこの状態ならば富子の爪は役に立つまい。
「同感じゃ。どうやらお互い狙いは同じだったようじゃ、の!」
パフィンもバンザイしたままニヤリと笑うと、手首のスナップを利かせて空中に『何か』を投げだした。ゆるやかな弧を描いた『何か』はバンザイ状態の富子の両手に命中! 途端、黒々とした闇色の霞が輝く爪に纏いつき、妖しい光をかき消していく!
「なん……っ!?」
「こんな事もあろうかと闇属性を付与しておいた秘密兵器じゃ!」
効果は一時的なものだろう。が、猟兵にとっては十分な隙だ。
恭介は即座に精霊にバンザイを解除させ、富子の懐へと疾駆した!
「囮役は……しっかりやりますよ」
サムライブレイドが疾る。同じくバンザイから解放された富子は素早く身を翻し鋭い剣閃を躱していくが、爪を封じられて咄嗟に近接の反撃ができず、さりとて間近に迫った者に熱線や火矢を使用するわけにもいかず、苛立ちを募らせていく……
「クソ、クソ、クソが……ッ」
相次ぐ連戦にもはや思考力も鈍ったか。目の前の敵にかかりきりになる富子の体捌きは、傍から観察すればあまりにも明快だった。
「――必殺!」
「っ!?」
意識の外から響いた掛け声に振り返った富子の胸部を、パフィンの斬撃が一閃し、袈裟懸けに斬り捨てた!
「が、ハ……ッ」
鮮血を散らしのけ反る富子の背を、恭介の刀が追撃する――
「ぁ、あ、あ…………――あぁぁぁぁああぁぁぁあぁあぁぁぁッ!!」
耳をつんざく絶叫が、屋敷中に轟き渡る。
「うむ、完璧じゃな。わし一人でも完璧だった作戦がより完璧なものになった、礼を言うぞ!」
パフィンはちゃっかり戦利品のツボとひよこファイブたちを回収し、恭介への感謝の言葉を残しながら颯爽と撤収していった。
「……役目は果たせたようだな」
恭介は去っていくパフィンの背を見送ったのち、視線を下方へ転じた。
富子は床に這いつくばり、どす暗い陽炎の中にその姿を失い始めている。
「金……アタシの、カ……ネぇぇぇぇ…………っ」
己が金欲と憎悪に身を焼かれるようにして、大悪災『日野富子』は消滅した。
大成功
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