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エンパイアウォー⑳~花の御所の厄災華

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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●怒髪天
 第六天魔軍将の一人「大悪災」日野富子が仕掛けた、兵糧・補給物資の買占め作戦。この奇想天外な作戦は、大軍を動かす徳川軍の急所を見事なまでに突いており、彼らは戦わずして敵軍を壊滅させることができる…はずだったのだが…。
「…あ”ァ!?埋蔵金だぁ!?」
 とある屋敷の一室、乱波の意外な報告を受け、秀麗な美貌を般若の如く歪めていたのは、事の張本人である日野富子その人であった。
 聞けば徳川家初代の家康が生前隠したという埋蔵金を掘り当てて、高騰した補給物資や兵糧の購入に充て、悠々進軍中というではないか。
「クソが!ンなこた、どうでもイイんだよ!!!」
 そう、彼女にとって作戦の成否など最早重要ではなかった。気に食わないのは『埋蔵金を使った』という、その事実一点のみ。
「徳川の財の大半は元々アタシが集めた金だ。アタシの金だ!それを着服した挙げ句、アタシに断りもなく使うなんてよォ…、許されるわけねェよなぁ!あ!?」
 怒。怒。怒りのみが彼女を支配する。自分の財を使われて危機を乗り越えられたなど、屈辱の極みと言わずして何と言おう。
 さらに乱波は重要な報告を告げる。猟兵によって『花の御所』に富子がいることが既に察知されており、数名の猟兵が討ち手としてこちらに向かってきているという。
 それを聞いて、富子はただ怒りの形相を一時収め、口元を歪めて嗤い飛ばした。
「…おもしれぇ…。猟兵のカス共、片っ端から精算させてやるよ!」

●決戦は花の御所
「大悪災『日野富子』の居場所が判明しました。」
 集まった猟兵たちに、ネヴィーテ・ノス(霧氷の女皇・f01738)は静かに告げる。
「彼女の所在は、京の『花の御所』。元は足利将軍家の邸宅だった場所で、江戸時代には別の建物に変わっていた場所ですが…、富子が有り余る私財を投入し、豪華絢爛な御所を作って住んでいる模様です。
 補給物資の買い占めについては何とか対抗できましたが、徳川軍の進軍にあたって富子を放置することはできません。速やかに御所へと向かい、彼女の討滅をお願いします。」
 相対するにあたって、気になるのはまず富子の実力だ。少なくとも歴史上、彼女が武勇に秀でたという話は聞いたことが無い。
「確かに…。ですが、彼女の強欲はかの応仁の乱を引き起こして多くの人間を死に追いやり、優れた蓄財の能力で人々から金を巻き上げ、巨万の富を成したと聞きます。強欲は時として恐るべき力を発揮するものです。ましてや第六天魔軍将の一人に数えられている以上、戦闘能力においても他の五将に引けはとらないはず。」
 つまり、本気で戦わないと勝てない相手である、ということだ。
 強敵だが、最低限ここだけは気をつけなければならない点はあるだろうか?
「『花の御所』は富子の縄張りですので、必ず向こうから先制攻撃を行ってきます。まずこの先制攻撃に対する対抗策を考えなければならないでしょう。それもただ防いだり、躱したりするのではなく、ユーベルコードを有効活用するなどして、できるだけ隙を無くして凌ぐことができれば…。大きな反撃のチャンスが生まれるかもしれませんね。」
 ネヴィーテは眼鏡を直しつつ、腕時計に目を遣る。既に宵の刻、討ち入りには絶好の頃合いだろう。
「富子を討ち果たす事ができれば、信長の力を大きく削ぎ落とすことができるでしょう。しかしそれは、皆様方の活躍次第。ご健闘、期待させて頂きます。」
 ネヴィーテは軽く一礼して猟兵たちを送り出す。その目に、彼らの完全なる勝利を確信しながら。


八ツ足皇子
 ども、八ツ足皇子です。埋蔵金勝手に使われて、絶賛ブチ切れ中の富子ちゃんを倒してください。富子ちゃん可愛いなー、もう!

 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 イベントボス戦なので判定ちょい厳しめでいきます、スイマセン。ただしつこく書いてますが、先制攻撃に対する対抗策が無いと100%失敗となり、対抗策が的外れでも失敗の確率が高くなります。それだけイベントボスは強敵なのです。

 それでは、皆様のプレイング、心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●序幕
 夜の帳が降りた京の町を、猟兵たちが駆ける。
 花の御所、又の名を室町第とも呼ばれた、足利将軍家のかつての大邸宅。
 第六天魔将の一人、日野富子が待ち構えるこの屋敷へと猟兵たちは続々と乗り込んでいく。
 ――目標は、彼女の首只一つ。

 左右に幾つもの篝火が揺らめく、板張りの廊下を駆け抜けたその先に広がるは、和趣溢れる枯山水の大庭園。
 庭園の中央に明々と建つ檜舞台、その中央に日野富子は、いた。
「よォ…、遅かったな。時間が勿体ねェからよ、早速おっ始めようぜ、オイ。」
 幾人もの手練れの猟兵を前に、彼女は欠片も動じる様子は無い。
 そして猟兵達も戦う前から理解する、彼女が、日野富子が、自分たちの想像を超える強敵なのだと。
 妙齢の女性にあるまじき豪快な雄叫びと共に、紫炎が彼女の絢爛な十二単を包む。焔の向こうから爛々と煌めく双眸が、相対する猟兵たちを捉えた。
「アタシがバラす相手は皮一枚、髪の毛一本無駄にはしねェ。…感謝しろや、てめェらのカスのような命、残らず銭に変えてやるからよォ!!」
 十二単を紫炎とともにたなびかせ、明確なる殺意を以て躍りかかる富子。
 かくして花の御所の決戦は幕を開ける。果たしてこの戦いの行きつく先や、如何。
無銘・サカガミ
強欲、憤怒、憎悪…成る程、肌でどこにいるかが大体分かるほどだ。多分、俺の【呪詛】のせいかな。

だが、奇襲をかけてくるならばそうもいくまい。あらかじめ感覚過敏の呪いを発動させる。

…蠅は極小の身故、感覚の処理が速く、結果人の動きが止まっているかのように見えるらしい。
そしてそれは、感覚過敏となった今の俺も同じ。

例え如何に苛烈だろうと、絶え間なき攻撃だろうと、計算されてない感情に任せた攻撃ならば、そこには必ず「隙」が生まれる。感覚過敏で敵の動きを主観的に遅くし、その隙を的確に突けば、恐らく奇襲にも対応できるだろう。

耐えた後は真っ向から切り伏せるのみ。呪いの力で俺に勝てると思うなよ。



 選り取り見取りの猟兵のうち、先ず富子が襲い掛かったのは、身長140センチにも満たない小柄な少年であった。
「行くぜェ、クソガキ!バラッバラにぶっバラしてやるよォ!」
 富子の十爪が妖しく輝き、みるみるうちにその長さが、硬度が増していく。それはあたかも爪の一本一本が一振りの名刀であるかの如く。
 だが、迎え撃つ少年…名を無銘・サカガミ(「神」に抗うもの・f02636)と呼ぶ猟兵は、この恐ろしき相手を前に臆する様子も無い。
(…強欲、強欲、憤怒、憎悪…成る程、肌でどこにいるかが大体分かるほどだ。)
 多分自分の【呪詛】のせいかな?と彼は思う。
 時折呪詛が刻まれた我が身を疎ましく思うこともあるが、殊戦闘においては意外な程役立ったりするものだ。
 とはいえ、既に自分へと肉迫しつつある敵を前に、あれこれ考える暇はない。
 サカガミは半ば反射的に固有のユーベルコード、『八百万の呪い・感覚過敏』を展開する。
「…ぐっ…!」
 全身が軋む、騒音が止まない、血の匂いが消えない。身体を苛む呪詛に端正な顔が歪む。
 常人ならばとっくに発狂する神格の呪詛を受けてなお平静を保ち得るは、元より幾重の呪いが刻まれている彼の体質ならでは。
(…蠅は極小の身故、感覚の処理が速く、結果人の動きが止まっているかのように見えるらしい。…そしてそれは、感覚過敏となった今の俺も同じ…!)
 過剰すぎるほどの感覚処理が齎すもの、それは敵が鈍足に見える、見えてしまう恐るべき処理能力。
(…?アタシの爪が当たらねェ…つうか、コイツ、どういう動きしてやがんだよ…!)
 果たして、富子が繰り出す爪は尽く空を切る。もっともサカガミにとっては、十分見切れるスピードに落とした攻撃を着実に躱しているだけなのだが。
(鈍足化してなおこのスピードとは、恐れ入る。だが、例え如何に苛烈だろうと、絶え間なき攻撃だろうと、計算されてない感情に任せた攻撃ならば、そこには必ず「隙」が生まれるはず…。)
 富子のイライラが頂点に達し、自棄になって叩きつけたような一撃を繰り出した瞬間。
「――そこっ!」
爪が地面に突き刺さって生まれた隙を見逃さず、富子の左肩から一気に袈裟斬りに斬り伏せた。
「がッ…、て、てんめェーーーー!」
 手応えは、あった。だが致命には遠く、富子は気合と共に激しく吠えたける。
 深入りは禁物とばかりに飛び退るサカガミ。彼とて呪詛を自ら受けている以上、決して無理することはできない。
「…まずは、一撃…。」
 身体を蝕む呪いに耐えつつ、彼は大きく息を吐いて刀を構え直した。
 緒戦の戦果としては十分。あとは他の猟兵の活躍に期待するとしよう。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
いきり立つなよ。顔に皺が増えちまうぜ?
ちょっとくすねただけだ。あんだけあるんだからちょっとぐらい良いだろ?

視線ってのは厄介だな。見ただけで焼き尽くす…か。
まず逃げの一手だ。【挑発】しつつ、【第六感】と【残像】による視線の誤射で逃げ回るぜ。邸宅は派手に燃えるだろうが、ま、こんな家燃えちまった方が良いだろ?距離が十分近付いたら【見切り】で剣の表面を掲げる。銀色に光る刀身部分に朧気ながら自分の姿が見えるはずだ。これで、視線の反射を狙う。
自身が燃えて怯めば、俺のUCで焼き尽くすぜ。【属性攻撃】と【範囲攻撃】【二回攻撃】で火達磨だ。
アンタみたいな性悪なら良心の呵責が無くて有り難い。感謝するぜ?オバサン♪



●流れを変えるは黒銀の焔
(ヤッべぇな…、このおばさんマジで強ェわ…。)
 日野富子と剣戟を交えながら、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は密かに感心する。
 緒戦に痛手を与えたとて、日野富子の優勢は依然変わりないように見えた。
 檜舞台で数名の猟兵を相手に大立ち回りを続ける彼女は、あらゆる面で猟兵たちを圧倒している。
(このまま普通に戦ってもジリ貧かね…、それなら)
 俺が流れを変えてやるしかねぇだろ、そう決断するや否や、カイムはいつものノリで富子へと呼びかける。
「ヘイ、そういきり立つなよ。顔に皺が増えちまうぜ?」

「……………あ"?」

 ゆらりとカイムに視線を投げる富子。気のせいか周囲の気温が2~3度上がった気がする。
(怖ッ!!!)
 しかし賽を降ったのは自分だ、今更止めるわけにはいかない。
「埋蔵金のことならちょっとくすねただけだ。あんだけあるんだから、ちょっとぐらい良いだろ?」
 言葉が終わるや否や、富子を取り巻く炎が最高潮に燃え上がる。怒髪天、今の彼女にはこの言葉こそふさわしい。

「おい、サンピン野郎コラ…!今何つったんだコラぁ、…ちょっと、くすねた、だぁ?…ほざきゃあがったな、この盗人野郎がァーー!!」

(やべぇ!)
 不意に押し寄せる殺気に対し、反射的にその場を離れるカイム。瞬間、先程まで彼が立っていた場所を紫の業火が焼き尽くした。
「殺す、ブッ殺す!アタシの金に手を出すヤツは、誰であろうと殺す!まずはテメェからだサンピン!!」
(おう…挑発に乗ってくれたはいいが、これはちょいと効きすぎか。)
 視線から放たれる爆炎を第六感や残像で躱し続けるが、これが想像以上に苛烈極まる。
 気づけば辺りは一面炎の海。これ以上の回避は自分の戦闘行動にも大きな支障が出そうだ。
「いつまでも逃げ切れると思ってんじゃねぇぞ、テメェー!」
「…だな。そろそろ反撃に移らせてもらうわ。」
 逃げながらも少しずつ詰めたおかげで、距離も十分。カイムは固有の魔具Marchociasを抜き放ち、富子の視線に剣の刀身部分を重ねる。
 まるで御鏡のような刀身に己の姿が映し出され、富子は思わず視線を自分の手で遮る。
「!…野郎ッ…!」
 ほんの一瞬の隙ではあったが、カイムにとっては十分すぎるほどの時間であった。
「女性を焼くのはあまり趣味じゃないんだが、アンタみたいな性悪なら良心の呵責が無くて有り難い。感謝するぜ?オバサン♪」
 魔剣から放たれる黒銀の焔が富子を穿ち、悲鳴を上げるまもなく黒銀の業火が彼女の身体を包んで焼き尽くす。
「さーて、これで倒れてくれたら手間省けて助かるんだが…そう、うまくはいかねぇか。」
 黒銀の炎をかき分けるように、紫紺の炎を纏った富子が憎悪の表情を浮かべながらゆっくりと歩いてくる。
「…やってくれるじゃねぇかよ、サンピン野郎…!」
 かなりのダメージを与えたはずだが、今なお健在な富子を見て、カイムは思わず肩をすくめた。
「タフだねぇー、流石は第六天魔軍将ってヤツか。」
 致命打を与えることはできなかったが、流れを変えるには十分だった。とりあえずそれで良しとしておこう。
 彼は一人納得し、Marchociasの切っ先を向けてニヤリと笑う。
「燃え足りねぇってんなら、おかわりもあるぜ。アンタの気の済むまで、付き合ってやるよ。」
 勝敗の天秤が、また一つ傾きつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

塩崎・曲人
準備
いっぱいサムライエンパイアの通貨を持っていく

「半分以上博打だなこりゃ。相手の金への執着心に乞うご期待ってか」
ダメなら逃げよ

相手の動きがクソ速いわけだが
その動きで無駄な時間を過ごさせればいいわけだ
例えば―ぶち撒けられた金を拾うとか。拾うべきか悩むとか
「負債を清算させてぇんだろ?お支払いに来たぜ?」
敵がUCを発動して攻撃を仕掛けてきたら
金の詰まった袋を思い切り投げつけてやるぜ
銭を無視できない程度の執着が有れば、1秒か、数秒か、動きは止まる

「1瞬で9撃繰り出せるユーベルコードはそれだけで台無しだぜ!」

こっちは投げた直後から自分のUCの発動準備に入る
相手が正気に返る迄の僅かな時間が勝負だ

【即興可】



●博打
 檜舞台で日野富子と相対しつつ、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は腰にぶら下げた布袋の中身の感触を確かめる。
 何かでぎゅうぎゅうに敷き詰められた布袋は、指で軽く叩いても音は出なかったものの、感触だけで曲人は安心したららしく、安堵の息をついた。

「…半分以上、博打だなこりゃ。相手の金への執着心に乞うご期待…ってか。」

 布袋の中身は即ち、大量のサムライエンパイアの通貨。彼が心で描く作戦の中身はこうだ。

(相手の動きがクソ速いわけだが、その動きで無駄な時間を過ごさせればいいわけだ。例えば―ぶち撒けられた金を拾うとか。拾うべきか悩むとか。その躊躇を逃さず、ぶっ叩く!)

 とはいえ、ギャンブルには特異点レベルで負けている曲人だ。正直作戦内容に不安が無いわけではないが、
「…ダメなら、逃ーげよ。」
 誠に軽いノリな男であった。

 不意に実践の時は訪れる。富子の双眸が曲人の姿を捉え、彼を討つべき敵として見定めた。
「てめェも死ぬか、チンピラァー!」
「うっせぇよ、ババァ!負債を清算させてぇんだろ?お支払いに来てやったぜ?」
 富子が十爪を刀のごとく伸ばして飛びかかろうとした刹那、カウンター気味に腰の布袋を彼女に向かって投げつける。
 布袋は難なく切り裂かれ、パンパンに詰まっていた通貨が小気味良いを立てて一気に床へとぶち撒けられた。
「…あ"?………銭…?」
 意外な中身に意表を突かれたのか、富子は一瞬その動きを止める。
(ッしゃあ!銭への執着があれば隙ができると思ったぜ!)
 あとは時間との勝負だ。銭を投げつけた瞬間から彼のユーベルコード『喧嘩殺法』は発動している。地面に落ちていた手ごろな木材を拾い、反射的に跳びかかって富子の頭部を打ち据える、所要時間は一秒弱。
 彼の計算では確実に富子の頭蓋をカチ割っている…はずであった。

(…んげッ…!?)
 ――届いていない。何時の間にか爪を収めた右手で、地面にばら撒かれた通貨を見ながら、富子はしっかりと木材を握りしめている。

「……オイ、チンピラ。…今さっきよォ、確かにお支払いに来たって言ったよなァ…?」
 ドスの効いた低い声色と共に、富子はギョロリと曲人を見据えた。その視線には過剰なまでの殺意が篭っている。

「巫山戯んじゃねぇぞ…!こォんなはした金でよォ、…足りるわきゃぁああねぇぇだろぉぉおおお!!!!」
 富子の怒ゲージはMAXへと達した。

 …失敗の要因をあえて挙げるとするなら、単純に『お金が足りなかった』ということになるだろうか。
 確かに富子は金への執着が強かったが、巨万の富を築いた後では多少の金銭には動じない精神力を持っていた。
 仮定の話になるが、『地面に落ちた通貨と同じ数の千両箱をばら撒いた』なら、多少は彼女の動揺を誘うことができたかもしれない。

(やべぇ…虎の尾踏んじまったってヤツか!)
 博打の負けを確信し、野生の勘で離れようとするが時すでに遅し。視線による爆炎をもろに受けて、彼の身体は大きく吹き飛ばされた。

「…っ痛ってて、クソ、アテが外れちまったか。イケると思ったんだけどなぁ。」
 床に手をつきながら、懸命に立ち上がる曲人。ダメージはそこそこ重いが、まだ戦える。
 何より他の猟兵が戦ってる中、自分だけが逃げるわけにはいかない。
「しゃあねぇ、もうちょい頑張るとすっか…!」
 手近な木材を拾って、曲人は再び強敵へと立ち向かう。それが彼なりの正義の証と信じて。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ローゼマリー・ランケ
アドリブ・遊び可
お金デスカ、私も好きデスヨ。友達を養うのに必要デスシ。
現地の高額貨幣一枚と、一見で見破れない位の偽造貨幣を詰めたバッグを用意。
最初は逃げて、物陰から貨幣を投げて【コミュ力】と【言いくるめ】で、アナタの側で勉強させてクダサーイとか尊敬シテマース的な事を言って、手土産のバッグを開けて見セマス。
乗って来てバッグを覗き込んだら【怪力】【グラップル】【盗み攻撃】で後ろからカーフ・ブランディング式にUCを使用、ついでにスリを敢行。乗らぬなら、偽造貨幣をバラ撒いて、それを陰にして接近して攻撃。
攻撃後は【盗み】で日野富子やその周囲の金目の物を引っ掴んで、窓ないし壁を突き破り高笑いと共に離脱する



●無茶すぎる作戦
「いや…、普通にやめた方がいいと思うのですが。」
「大丈夫!イケるイケる!」
 ローゼマリー・ランケ(ヴァイスティーガー&シュバルツシュランゲ・f01147)は多重人格者だ。
 主人格をロミィ、副人格をベルと呼ぶ。
 天真爛漫なロミィを、知的冷静なベルが援けるという間柄であるが、今宵もまたロミィの提案にベルは頭を悩ませているようであった。
 なにせ今回の相手は、敵側の大幹部たる日野富子。ロミィの作戦はかなり分が悪いと言えよう。
(…いざとなれば、いつも通り私が出ればいいでしょう。)
 ベルは諦めてロミィの作戦に乗る。そう、彼女の尻拭いは、今に始まったことではないのだから。

 視線による爆炎を遮蔽物などを使って回避しつつ、ロミィはコミュ力を活かしながら富子へと語りかける。
「Ya、Ya、富子サン富子サン。落ち着いてくだサイ。貴方と戦うつもりはありまセーン!」
「…あぁ?この毛唐野郎、戦うつもりが無いならなんでこんな場所にいんだ?あ?」
「私もアナタを同じお金好きデスヨ、友達を養うのに必要デスシ。ぜひアナタの側で勉強したいと思ってここにキマシタ!」
 そして物陰から、持参したバッグの中身を見せる。
 中にはサムライ・エンパイアの高額貨幣一枚と、一目で見破れない位の偽造貨幣がぎっしりと敷き詰められている。
 成程、意地汚い強欲にまみれた者であるなら心が揺れそうな額だ。

 日野富子も例外では無かったか、バッグの中身を見てにんまりと笑みを浮かべる。
「…そうかよ、じゃあ教えてやるからノートにメモっとけや。手軽に銭を稼ぐ一番の方法はな、」
 その言葉が終わった瞬間――ランケが持参していたバッグが紫炎を上げて爆発四散し、燃えきれなかった大量の偽造貨幣が宙を舞った。
「相手をぶっ殺して奪うってこった!!!」
「――まぁ、そうなるとは思っていましたけどね。」
 ベルはロミィから素早く人格を切り替え、迫り来る富子を迎え撃つべく構える。

 ロミィの筋書きでは鞄の中身を覗き込んで油断している所を、背後からユーベルコードで仕留める予定だったのだが。
 憤怒に支配され、完全な戦闘態勢に入っている富子を相手に交渉などできるはずも無かった。
 仮に戦闘態勢に入ってなかったとしても、スーパー大富豪の彼女相手に買収などまず不可能だろう。
 そこまで解っててなお作戦を実行させた理由とは。
(彼女に甘すぎるだけなのでしょうか、私は。)

 富子の猛攻を何とか防ぎ、支えているベルであったが、流石に分の悪すぎる勝負であった。
 スピード、パワー、タフネス、全てにおいて富子が上なのだ。
「オラオラオラオラ、その筋肉は飾りかよ毛唐野郎。守りばっかじゃアタシにゃ勝てねぇぞォ!」
「…ッ、随分無茶を言う方ですね…。」
 隙を突こうにもその隙がどこにも存在しない理不尽さ、改めて敵の強大さを認識せざるを得ない。
 やがて富子の大爪がベルのガードを突き破り…
「…ッ!!」
 凄まじい打撃音が響く。ベルのボディは檜舞台の外に留まらず、庭の大池にまで吹き飛ばされ、落下と同時に大きな水しぶきを上げた。

(まだ戦えなくもありませんが…、少々ダメージが大きいですね。…しばらくここで体力を回復しましょう。)
 池にぷかりと浮かびつつ、ベルはロミィへの小言の内容をゆっくりと考えるのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

白石・明日香
事前に閃光弾と煙幕弾を用意。
これまでの戦闘知識をフルに生かして見切る。
富子の攻撃は視界に入った相手に有効なのでその視界に入らないように立ち回ることこそ有効な対策。
相手に睨まれたらまずいのであらかじめ迷彩しながら邂逅一番で閃光弾と煙幕弾を使って少しでも目くらまし。相手の気がそれている僅かなスキを生かして残像を展開して攪乱、もし富子の視界に入ったら檜舞台なのを生かして板を畳返しの要領で板を踏みつけて視界を遮る。背後あるいは側面に回り込んで2回攻撃でたたき切る!一撃入れたら即離脱、守銭奴の視界に入らないようにする。他の方とのアドリブ、絡み、連携は大歓迎です。



「…問題無い、いける。イメージ通りに動ければ…必ず、な。」
 己の力を信じろ、と最後に自己暗示をかけて白石・明日香(十字卿の末裔・f00254)はゆっくりと目を開ける。ゴールドとスカイブルーのオッドアイがキラリと反射し、己の討つべき相手を見定めた。

 戦闘開始から数刻、猟兵たちの活躍で消耗してきたとはいえ、日野富子は未だ健在であった。憤怒の形相で猟兵を圧倒する姿は、まさに悪鬼羅刹と言うにふさわしい。
(正面から挑むのは自殺行為、かといってオレのユーベルコードに特殊な能力は無い。…ならば、オレなりの奇道を以て敵に打ち克つのみ。)
 これまでの戦闘知識をフルに生かして彼我の戦力差を分析し、瞬時に攻略法を編み出すことこそ、戦闘における彼女の常法。シュミレーションも済んだ、あとは実戦で微調整するとしよう。
「――行くぞッ!」
 言葉少なに言い放ち、明日香は妖刀クルーニスクを片手に、猛然と富子へ向かって駆ける。

 当然、富子は明日香の接近を察知した。事前に迷彩をかけてはいたものの、富子の殺界とも言えるこの檜舞台ではあまり意味を成さないようだ。
「ボケがぁ!ンなもんで隠れたつもりかよ、小娘ェ!」
 富子の両眼が妖しく光る、まさしく視線による爆破の予兆だ。それに合わせるように、明日香は隠し持っていた閃光弾と煙幕弾を地面に打ち付ける。
 眩い閃光と濛々たる煙幕が辺り一面を包み込んだ。
「…ちッ、煙幕だァ…?野郎、古典的な手ェ使いやがる…!」
 爆発させる目標を見失い、富子はイライラを吐き捨てるように呟く。
 古典的、単純、であるが故の強さもある。道具も使い方によっては、時としてユーベルコードを凌ぐことすらあろう。

(まだ、…遠いか。)
 煙幕が立ち込める中、明日香は自分の位置が悟られないよう、残像で撹乱しながら状況を再確認する。
 かなり距離を詰めたはずだが、彼女のユーベルコード『剣刃一閃』を撃つには、ほぼお互いの呼吸がわかる程の距離まで接近しなければならない。だが今の富子はおそらく警戒心MAXモード。迂闊に近づけばその視界に入っただけで簡単に燃やされてしまうだろう。
 あと一手。あと一手何かが要る。しかも割と早急に。煙幕が晴れてからでは何もかもが無意味になる。
(時間がない、オレが求める一手は動いてから考えればいい。)
 果たして。晴れつつある煙幕の中、残りの距離を詰めるべく、明日香は富子へと肉迫する。

 富子の目には煙幕の中、自分へと迫りくるぼんやりとした影が映ったことだろう。それほどの距離にまで彼女は近づいている。
「そこかァ、小娘ェ!!」
 皮肉にもこの富子の雄叫びが、明日香が打つ『一手』の絶好の合図となってしまった。
 明日香が板張りの床の継ぎ目を勢いよく踏み抜く。するとまるで畳返しのようにメリメリと床板がめくれ上がり、一瞬富子の視界を塞ぐ。
「…ンだとォ…!?」
 予想外の障害に、富子は思わず狼狽する。これこそが明日香が待ち望んだ一瞬。
「―貰ったッ!」
 射程も十分。富子の側面に回り込んで一閃、返す刀で二閃、妖刀クルーニスクが紅い軌跡を描きながら富子の肉体を切り裂く。
 檜舞台に、痛みを堪える富子の叫びが響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

雷田・龍子
アドリブ・連携歓迎
【POW】
「相手の得意とする場所に乗り込む必要はないんですよ」
人派ドラゴニアンの龍子は『花の御所』の外、相手の視線外である上空から狙いを定める。

「猟兵の皆さんは避けてくださいね。……これが私の全力だ!」
ユーベルコード「雷龍拳(ドラゴンストライク)」を発動。ドラゴネットの【援護射撃】を受けつつ上空から凡そのポイントへ向けて建物諸共、日野富子の撃破を試みる。



●雷龍に抗するは
 月が朧気に輝く夜空の中天に、一つの影がぽつりと浮かんでいた。厳しい尻尾や角、羽に象どられる影はさながら竜人か夜魔のごとく。やがて雲間から覗かせる月光が、真紅の髪を備えた妙齢のドラゴニアンの姿をくっきりと映し出した。

「やれやれ…、相手の得意とする場所へわざわざ乗り込む必要は無いでしょうに…。」
 金縁の丸眼鏡をかけ直しつつ、彼女は軽くため息をつく。もちろんこのドラゴニアン、雷田・龍子(人派ドラゴニアンの剣豪・f14251)も猟兵だ。
 高高度の上空から花の御所と思しき場所を見下ろすと、探す必要の無いほどに紅々と燃えているポイントがある。恐らくは多数の猟兵が目標である日野富子と死闘を繰り広げているのだろうが、誠に非効率に過ぎる。
「かの御所が敵を有利にしているのなら、御所ごと壊してしまえばいいのです。我々猟兵には、それが可能なのですから。」
 敵の視線外からの攻撃なら、先制攻撃も無意味だ。最強最高の一撃を叩き込むため、ゆっくりと力を溜めることもできる。
「ドラゴネットは援護射撃よろしく、着弾前には吹き飛ばされないよう離脱を。」
 傍らにいる小型のドラゴンが小さく鳴いてそれに応える。そのやり取りの間にも、彼女が右腕には夥しい量の雷が蓄積されていく。―そして充填は完了する。全身を迸る電撃は、まるで彼女が一個の雷であるかの如く。
「猟兵の皆さんは避けて下さいね。……これが私の全力だ!」
 この距離から避難を勧める言葉が届いているか甚だ疑問だが、とかく賽は振られた。ユーベルコード「雷龍拳(ドラゴンストライク)」発動、途轍もないエネルギーの塊が箒星のように夜空を切り裂きながら、今猟兵たちが戦っている花の御所へと降り注ごうとしていた。

「………マジかよ…。」
 花の御所に迫る脅威を目の当たりにして、さすがの日野富子も唖然たる思いである。確かにその方法なら先制はできそうもないが、…発想ちょっとおかしくねぇか?あのエネルギー量と質量が合わされば、屋敷はもちろん、此処にいる猟兵たちも残らず吹き飛んでしまうのではなかろうか。
「クソが、どいつもこいつも変人の集まりかよ、猟兵ってのは!」
 もちろん奴らを吹き飛ばしてくれるのは全然構わないが、アタシの屋敷を、庭を、破壊されるわけにはいかない。
(ザケンじゃねぇぞ、改築に一体どれだけかかったと思ってやがる!…アタシの財を脅かすやつは許さねェ、それが例え魔王信長であったとしても!)
 怒る。憤る。憤怒のエネルギーが紫炎となってみるみる富子を燃え上がらせていく。既に雷龍ははっきり目視できる位置まで迫ってきている。着弾まであと3秒もかからないだろう。
「このアタシをォォォォ、ナメんじゃねぇぇぇぇぇl!!!」
 雷龍の鼻先に、日野富子全力の視線による爆破が炸裂。超エネルギー同士の衝突は、夜空を一瞬ではあったが真昼のように、明るく、白く染め上げた。

「…くっ…!多少の攻撃なら跳ね返せると思いましたが…、まだあのような力が…。」
 衝撃に大きく吹き飛ばされながら、龍子は事の失敗を悔いる。誤算は屋敷ごと狙うという方針が、日野富子の超全力を引き出してしまったことだろうか。
「まぁ…いいでしょう、あの様子なら決着もそろそろ近いはず。」
 富子は思った以上に満身創痍であった。その上全力を出したとあっては、猟兵たちの攻勢に長く耐えることはできまい。これ以上、自分の役目はなさそうに思えた。
「おっと、…援護をしていた筈のドラゴネットはどこまで飛んでいったのでしょう?」
 困ったものですとぼやきつつ、信子は竜翼をはばたかせ、お供の小竜を探すべく夜空を翔けるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

鎧坂・灯理
お断りだよ銭ゲバ女。
私の全ては私だけのものだ。
貴様如きに細胞の一つもくれてやるものか。

先制攻撃されるのであれば、それを前提としたUCを使うまで
その爪が輝き、UCが発動したのを確認すると同時にこちらも発動
脳の強化は【念動力】の出力に直結する

爆発的に強化された【念動力】とスピードと反応速度で対応
『思念の鎧』を強化し、ダメージを軽減
『腕時計』で遠隔操作した『白虎』を背中から突撃させて隙を作り
【念動力】で爪を剥ぐ
折るよりは力が少なくて済むだろう
これら全てを同時に行う

並行思考を使用して、念動力行使と同時に
『朱雀』をマグナム銃に変形させて打ち込む
出来れば目を【狙撃】したい
攻撃後、機を見て撤退する


グレース・マクローリン
金は全部アタシのもんだッ!
金箔の一片まで余さず奪ってやるから安心して死ね!

【POW】
正面からやり合うのは愚策…
だからまずは【破壊工作】として御所の床と天井を手製IEDで吹き飛ばすね。
爆発で崩れた御所の【地形の利用】をして直接視線の先に立って焼かれないよう【迷彩】【目立たない】で瓦礫に隠れつつ【火炎耐性】を備えた上で【見切り】と【野生の勘】【逃げ足】で炎と爆発から逃げようかな。

瓦礫の陰から【武器改造】で消音機を付けた自動拳銃ヴォルフファングの【スナイパー】【暗殺】【目潰し】で富チャンの目を狙ってUCを発動、【2回攻撃】で心臓も撃ち抜いて最後は【盗み攻撃】で身に着けてる金目の物をかっぱぐ!完璧!


雷田・龍子
アドリブ・連携歓迎
【真の姿】
【WIZ】
ドラゴネットを回収した龍子は真の姿を解放し、反撃に向かう。

「果たして私の雷撃より先に怨霊はここまで届くのかな」
上空1.7kmから日野富子を狙い、ユーベルコードで撃破しようと試みる。

「弩螺魂砲!」
【ドラゴネット】が変身した銃槍(ガンランス)【ドラゴンヘッド】から、レベルの二乗mまで届く、レベル×1本の雷が日野富子へ降り注ぐ。

「私をナメるなよ!」



●超常舞踏
(…そろそろ幕引きだな。)
 鎧坂・灯理(不退転・f14037)は眼鏡の奥から戦況をそう分析する。
 未だにかの銭ゲバ…、もとい日野富子は奮戦を続けているが、度重なる消耗で動きに精彩を感じられない。次、あるいはその次の猟兵による特攻で、彼女の命を摘み取ることができそうだ。
(…とはいえ、手負いの獅子程手強いものはいない。――全力で、かつ確実に潰させて貰う。)
 己の武器が万全であることを確かめ、灯理は憤怒の大悪災めがけて疾駆する。

 灯理の接近に対し、富子は刀の如き十爪を伸ばして迎え撃つ。
「次はテメェか、メガネ野郎…!来やがれ、三枚におろして肉屋に並べてやるからよぉ!」
「お断りだよ銭ゲバ女。私の全ては私だけのものだ。貴様如きに細胞の一つもくれてやるものか。」
 
 あの爪は脅威だ。一突き一薙ぎで9回も切り刻むかの爪の間合いに入った途端、並の身体なら一瞬で膾切りにされてしまうだろう。だが、タネは既に割れている。それなら、あとは対応するユーベルコードを選べば解決する。
『逆境は私を強くする。いつだってそうだ、乗り越えてきた!』
 詠唱と共に展開されるは、彼女固有のユーベルコード『背水の陣(コンナトコロデシンデタマルカ)』。相手に先んじて行動させることで、危機を感知した優秀な脳が全力活動モードで動き出し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。チート級故に寿命を削るデメリットはあるが、それに見合う敵なら対価ぐらい気持ちよく払ってやろうとも。

(ちょこまかとよく動く…だが、捉えきれないスピードじゃあねぇなぁ…!!)
 富子のスピード、反応速度とて常人のそれとは比較にならない。凄まじいまでの動体視力は、高速で動く猟兵の姿を十分すぎる程に補足している。
「このマヌケが、速いだけでアタシを殺せるもんかよ!ブッた斬れな!!!」
 灯理の移動位置に合わせて爪をひと突き、次の瞬間猟兵の身体が五体に分解され宙を舞う…というのが富子の予想絵図だったのだが。
「…!?」
 爪が猟兵の身体を通らない。否、正確には猟兵の身体が何かに覆われているのか、爪を弾いている。
(速いだけじゃない、コイツは…!)
 軽く狼狽する富子に対して、灯理は静かに言葉を紡ぐ。
「代償は十分払ってるんだ。これぐらいのことはできるさ。」
 脳の強化は灯理の念動力の出力に直結する。有り余る念動力をフル活用し、思念の鎧で爪を防ぎ、腕時計の遠隔操作で単車『白虎』を背中から突撃させ、その隙を突いて富子の爪を念動力で剥ごうとする。
 上記全てを多重奏のように処理・実行できることこそ、彼女のユーベルコードの真骨頂。必死に抑えていた十爪は念動力によってその全てがべりべりと剥がれ落ち、床板へ次々と突き刺さっていく。
「てめェ…!このペテン、超能力者の類か…!!」
「いささか形容が古いな。サイキッカーと言え。」
 灯理の腕輪『朱雀』がマグナム銃へと変形し、両手に収まると同時にその引き金を一発、二発と引く。狙いは即ち、富子の両眼。
「……クッソがぁッ!!」
 富子は後方へ大きく飛び退り、自らに迫る危機を回避した。外れたマグナムの弾丸が唸りを上げながら夜空へと消えていく。
「…潮時か。」
 灯理も深追いはせず、後方へと下がって距離を取る。念動力を爆発的に上げることによる脳と身体への負担は極めて大きいものだ。これ以上の継続は到底対価に見合うまい。
(さて…他のメンバーのお手並み拝見と行こうか。)
 敵の脅威はまだ残っているが、あとはよろしくやってくれるだろう。なにせ彼らも私と同じ、猟兵の一員なのだから。

●雷龍再び
 一方。先の大爆発で遠くに吹き飛んでいった小型のドラゴン、ドラゴネットを回収し、雷田・龍子(人派ドラゴニアンの剣豪・f14251)は再び戦場へ舞い戻らんと、夜空を駆けていた。
 先程までとは大きく異なるのは、その容姿。真紅の髪は白銀へ染まり、竜翼はさらに厳しく姿を変え、衣装は己の豊満なボディをより強調するためか、表面積の極めて少ない赤鎧を身に着けている。
 これぞ龍子の真の姿、高い戦闘能力を有するドラゴニアンの力を可能な限り前面に押し出した戦闘形態。
「やっぱり、やられっぱなしは性に合わないな。…次は真の姿で相手をさせてもらおう。」
 大人げないとも言われそうだが、これが龍子の性なのだから仕方ない。
彼女にとって最大の心配事は、富子が別の猟兵によって討たれていないか、ということだ。なにせい、自分が挑んだ時には既に相当消耗していたのだ。余力はまだあったろうが、手練れの猟兵が対手なら万が一…ということもあり得る。
「真の姿まで見せたのだ。…このままでは収まりがつかんぞ。」
 今はただ、…あくまで自分のためだが、富子がそう簡単に倒れないことを祈るばかりであった。

●終幕にて挑む者
 花の御所では猟兵と日野富子との戦いが、今なお繰り広げられている。
「金は全部アタシのもんだッ!金箔の一片まで余さず奪ってやるから…安心して死ねェ!」
 グレース・マクローリン(副業海賊・f12443)の挑発にも似た罵声が、檜舞台に響き渡る。
「…このボケガキィ…!てめェみたいなのがいるから、安心して死ねねェってんだよ!!」
 一睨みで爆炎を引き起こす日野富子の視線、それが今、グレースへとターゲットを定めた。
(さすがにあれと正面からやり合うのは愚策…、となれば!)
 予め持参したお手製IED(非合法の即席手榴弾)を床に、柱に、天上に投げつける。直後、爆発と同時に床が弾け飛び、柱が倒れ、天井が崩れ落ち、一瞬前とは似ても似つかぬ惨状が舞台上に展開されていた。
「へへっ、どーだ!これだけ遮蔽物があれば、お前の視線爆破なんて役に立たないよな!」
 グレースの勝ち誇った声にも全く動じる様子を見せず、富子は却ってその浅はかを笑い飛ばした。
「このタコが、アタシの力を舐めてやがんのか?この程度の瓦礫なんぞ残らず爆破して、すぐにテメーを炙り出してやるよ!」
 日野富子のユーベルコードは相手を燃やすだけでなく、紫炎の爆発で対称を吹き飛ばすことも可能にしている。その威力はグレースが持参したIEDの軽く数倍。ましてや瓦礫は全てが木材、彼女がその気になればすぐさま一掃することも至難ではないだろう。
(…む、言われてみればそうか。うーん、どうしようかな。)
 瓦礫の一つに隠れながらグレースは思案する。
(遮蔽物が全部取り除かれたら、流石に勝ち目はないか。…なら、それまでに決着を付ける!)
 さて残された時間は果たして何秒か、それを考える時間すら惜しい。白銀フレームの自動拳銃『ヴォルフガング』を構え、グレースは移動を開始する。
「――そこかッ!!」
 すぐ背後の瓦礫が爆炎で弾け飛び、断片が火種となって残りの瓦礫や舞台を燃やしていく。周囲が火炎地獄の様相を呈しつつある中、グレースはありとあらゆるスキルを駆使して回避に徹し続ける。全ては富子がいつか見せるであろう僅かな一瞬に全てを賭けるため。

 だが、その隙を見せない、見つけられない。背面をとっても背に目がついているかのように振り向いて、再び視界に収めてくる。
「いいカンしてるよ、…くそっ!」
 そうしている間にも一つ、また一つと遮蔽物は吹き飛ばされ、気づけばあれだけあった瓦礫も残りわずか。
「…もう隠れても、あまり意味ねーんじゃねぇの?そろそろ仕掛けてこいよ、テメェの銃弾とアタシの炎、どっちの着弾が速いか競ってみるのも悪くねェ。」
 残り少ない瓦礫の陰からそっと富子の様子を伺うグレース。
ここが爆破されるのもあと2秒後か、3秒後か、いずれにせよ富子の言う通り、そろそろ勝負に出なければならない頃合いであった。
(いちかばちか、なんてあまり好きじゃないんだけどな。…やってやるか。)
 意を決して飛び出そうとした刹那、グレースは見た。富子の背後の夜空を明々と照らしながら、夥しい数の雷槍がこちらに向かって降り注いでくる光景を。

●雷龍の帰還
「何とか、間に合ったようだな。」
 真の姿に変身した龍子は、上空から再び戦場である花の御所を捉えていた。日野富子は未だ健在、何が起きたかわからないが檜舞台は紫炎で燃え盛り、さらには猟兵側が押されているようだ。
「ふん、さすがは第六天魔軍将。そうこなくては私としても変身のし甲斐が無い。――ドラゴネット!」
 傍らにいる小型の竜が鳴いて応えると、みるみるうちにその形状を変化させていく。それは兵器だった。双角は伸びて槍状となり、顎の奥には頑強なる砲口を備える黄金色の銃槍(ガンランス)、名を『ドラゴンヘッド』と呼ぶ。
 その銃槍を右手に装着し、照準を檜舞台に合わせてエネルギーチャージ。火矢の怨霊によるカウンターにも警戒したが、距離が離れ、注意が完全に逸れている状態なら然程意味は無さそうに思えた。
「―富子、お前はさっき私を吹き飛ばした時、『舐めるな』と言ったな。確かに、侮られるのは面白くないよな?…だが、それは私とて同じこと。」
 エネルギーチャージMAX。先程にも勝る大量の電流が、兵器と龍子の身体を伝って迸り、夜空をバチバチと焦がしていた。
「過去の亡霊ごときが私を舐めるな!ユーベルコード、『弩螺魂砲(ドラゴンガン)!!!!』」
 竜の顎から一気に撃ち放たれるは40を超える雷撃、その全てがまるで流星群の如く夜空を裂き、主戦場である檜舞台へと降り注いだ。

●憤怒の紫炎消えたりて
「…な、―ンだぁッ!?」
 富子は異常に気づいて振り向いたものの、時既に遅し。雷撃の雨は既に彼女の目前にまで迫っている。
「雷…、クソがッ、またあいつか!!」
 視線の爆炎で数本撃ち落とすも、到底対応できる数ではなく、2桁を超える雷撃が富子を貫き、その身体に電流を通した。
 それでも恐るべき体力と精神力で、何とか踏みとどまるものの、…彼女は知る、死神とはいつも少しだけ遅れてやってくるものなのだと。
「悪いね日野富子、―お前の負けだよ。」
 背後の声に振り向いた瞬間、自動拳銃ヴォルフガングから放たれたグレースのユーベルコード『インシネート・バレット』が富子の片目を、そして続けざまに撃った二発目が心の臓を正確に捉え、貫く。
「がふっ…、がっ…!」
 炎の中、富子の身体が両膝から崩れ落ちる。片目から血の代わりに紫炎を上げながら、しかしどこかスッキリした顔で天を仰いだ。
「…ああ、畜生ッ、これで終いか…。第六天の力ってのも、案外大したことねェもんだ…。」
 憤怒の紫炎が、身体の中から彼女を焼いている。あと数秒ほどで紫炎は彼女の全身を包み、灰すら残さず消してしまうのだろう。
「あ、コラ!何勝手に死んでる!アタシが勝ったんだから、着物とか、装飾品とか、よこせよ!」
 最後は盗み攻撃で金目の物をかっぱぐつもりだったグレースだが、流石に焼け落ちようとする相手から物を剥ぎ取るのは難しいようだ。
 グレースの抗議を聞き、富子はククッと小気味よさそうに嗤った。
「ケッ、アタシに似て強欲な野郎だ。…欲しけりゃ地獄まで取りに来いよ、いつまでも待ってるからよォ…。」


 第六天魔軍将の一画、『大悪災』日野富子、京都・花の御所にて討伐完了せり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月11日


挿絵イラスト