エンパイアウォー⑳~慾に溺れるとはそういう事
●金銀咲く御所にて
此処は京都、花の御所。
壁に金箔を散らし、庭には四季折々の花が咲き乱れ、エンパイアのあらゆる財を閉じ込めたかのような、豪華絢爛な(本来の“花の御所”など、見る影もない――)其の邸内で、日野富子は怒りに震えていた。
「クソが、どいつもコイツもクソ野郎共がッ!! アタシの金を根こそぎ持っていきやがって! アタシの金! 畜生!! 徳川の野郎!!」
豪華な着物に皺を寄せ、艶やかな黒い髪は怒りに揺れて、紫炎に身を包む日野富子は、其の美貌を怒りに歪ませて罵声を吐き続けている。
其の様は余りにもこの御所には似合わない。怒りのままに、すべらかな陶磁器で作られた花瓶を手で引き倒し、粉々に踏み砕く。
「クソッ、クソッ……! 猟兵さえいなければ、徳川が動きさえしなければ、アタシの金は奪われずに済んだッ!! 信長から隠し通す自信はあったのに! ブッ殺してやる! 全員だ、徳川も猟兵も信長もだ!! 待っていやがれ……今に見てろ……! 全員ブッ殺せばアタシの金は返って来るんだ!!」
●グリモアベースにて
「……というのが、今回見えた予知……というか、敵の性質……かな」
女の人って怖いね、とちょっとしょんぼりしながら、メッティ・アンティカ(くろねこダンス・f09008)は猟兵への説明に一区切りつける。
「でも彼女は動く訳じゃなくて、あくまで花の御所で待ち受けるって感じみたい。わざわざ出向くのはこっちが下みたいで嫌だとか、あくまで“会いに来させる”偉い身分でいたいとか、そういう気持ちなのかなあ? だから、花の御所の傍に君たちを飛ばすよ。でも……」
メッティは説明を続ける。
相手は強敵。これまでの幹部級の御多分に漏れず、先制攻撃を仕掛けてくるだろう。その攻撃をいかに捌いてこちらの攻撃を相手に通すかが肝要だ。小細工がない分、其れだけ強い。ただの守銭奴と侮ると痛い目を見るだろう、と。
「というか、まずあの気迫が怖いんだよね……にらみ合いで負けないでね! じゃあ、準備して!」
key
こんにちは、keyです。
富子さんのファンになったので、シナリオをどうぞ。
●目的
「日野富子を倒せ」
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●エネミー
「日野富子x1」
大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
●立地
京都にある花の御所です。
平安時代を掌握していた彼女は其処にいるのが当然だと疑わず、御所の中で待ち受けています。
金銀財宝で彩られた悪趣味にも思える風貌は、元の御所が思い出せないほどの改造ぶりです。
●
アドリブが多くなる傾向にあります。
NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
では、健闘を祈ります。
第1章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
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POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
花の御所。
罵声を誰にともなく吐き出していた富子だったが、ふと、その言葉を止めた。にいやり、と口端を持ち上げ、高貴とは程遠いねっとりとした笑みを浮かべる。
「きやがった」
きやがった、きやがった、ノコノコと!
まずはお前からだ、八つ裂きにして花の肥やしにしてやる。金目のものは貰ってやる。――尤も? お前らのような貧乏人共の持ち物なんて、このアタシの小指の先程度の財産にしかならないだろうけどなぁ!!
須野元・参三
あ~、醜いな~、醜い。
そんなに欲しければこの気品高き上流階級の出の私が金を恵んであげようじゃないか……
貴様の命と引き替えでね!!
とう!っと吹雪のように目の間を金を舞わせる『パフォーマンス』敵の目線を少しでも散らして『時間稼ぎ』『おびき寄せ』が出来ればよい
フフーフ、頭脳高い気品がキラリと輝く作戦だ!!
その隙に裁きの鉄槌『気品力の裁き(ノーブルジャッジメント)』を叩きこむ。
しかも『2回攻撃』『クイックドロウ』『高速詠唱』で連打だ
決まったな!まさに『だまし討ち』が決まったな!
敵からの攻撃は悲鳴と罵詈雑言しつつ『第六感』と『見切り』で必死の回避だ
気品は攻撃受けるの嫌だからな!!
(アドリブはお好み歓迎)
「ああ~、醜いな~、醜い」
「なんだと?」
須野元・参三(気品の聖者・f04540)は富子をみるや否や、黄金色の前髪を跳ね上げながら言った。
「金が欲しいのか? 余りにも浅ましくないか? まあ、そんなに欲しければ、この気品高き上流階級の出の私が恵んであげようじゃないか。……貴様の命と引き換えでね!」
ぶわっ!
参三から風が舞った。そしてはらはらと落ちてくる金。金。金。富子は一瞬きょとんとして、……その後、怒りに身を震わせた。
「クソが!! アタシがこの程度の金に踊らされると思ってんのか!? ああ!? 誰かアイツをブッ殺せよ!! こいつからは何もはぎ取らない、みじめに死んで行け!!」
「わ、……よ、予想以上に怒らせてしまった……!? 気品は攻撃を受けるのは嫌なんだぞ!!」
「知るかよ! 気品よりアタシの金の方が百万倍大事だっつーの!!」
富子の背後に幻影の弓兵が現れ、弓を引く。参三に降り注ぐのはかの応仁の乱で飛び交った火矢。これでは攻撃も何もない。辛うじてカンと見切りで火矢をかわしながら、参三は戦場を離脱する。
苦戦
🔵🔴🔴
ハロ・シエラ
これはまた相当な気迫。
金銀眩いこの場所以上に気圧されてしまいますが……【勇気】をもって対峙します。
攻撃は早く強力ですが、爪なら動きを【見切り】、【早業】で【武器受け】する事も出来るでしょう。
見えないですが足にも爪があるなら【第六感】で捌きたいですね。
可能なら指を【部位破壊】し【武器落とし】を仕掛けたい。
打ち合いの中、敵の怒りに任せた攻撃に【カウンター】でユーベルコードを食らわせます。
服は脱ぐ僅かにでも隙のある攻撃を誘う為なら武器を弾かれても構いません。
それを【フェイント】にして素手で一撃入れて見せます。必要がないほどボロボロになって、十分加速できるでしょう。
「これはまた、相当な気迫」
意識して表情を殺し、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は富子と対峙する。富子は爪先をいじりながらハロを見据えた。
「お前猟兵だろ? 猟兵だよなぁ? このアタシにノコノコ殺されに来たんだもんなあ!」
「金銀の眩さよりも気おされてしまいます……って、聞いていませんね」
「ブッ殺してやる! 串刺しになってヒイヒイ言ってろ!!」
この花の御所に味方はいない。寿命など、オブリビオンには無用の長物だとでもいうのか……富子は躊躇いなく美しい爪をきらりと伸ばし、ハロを串刺しにせんとした。
「っ、爪は固い……直線状の攻撃なら……!」
思ったよりも速い。けれど、直線の攻撃ならかろうじて見切れる。かわすことは出来なくても、武器で受ける事は出来る!
愛用のレイピアで爪を受け、鍔迫り合う二人。
「なんで抵抗するんだよ!! アタシは富子! 日野富子だぞ!! アァ!?」
「そんな事……ッ、今を生きる私には関係ありません……!!」
僅かにハロが位置をずれて、レイピアをきしませていた爪をはじく。畳の上を藍色の爪がすうっと走っていった。ぞわり、と鳥肌が立つ。そう、爪は手だけではなく足にもついているもの……!
「さっさと! 死んで! 金を置いてけよ! ああ全くムカツク! アタシの集めた金! 金! 金を返せ!!」
足の爪は雅ではないと思ったのか、見切られたからなのか、他の理由があったのかは定かではない。富子はそれ以降は足の爪を使わず手の爪だけでハロの体をじわじわと刻んでいく。撃ち合う中でハロは状況を分析する。指を落とすのは難しい。でも、懐に入って一撃を加える事なら……!
ばっ、と上着を脱ぎ棄てた。服は衝撃を伝えてしまう、邪魔だ。
「さっさとさあ!! 死ねって!!」
富子が怒りに任せて手を振り上げた。キイン、と高い音がしてレイピアが飛ぶ。ハロは前を見据えていた。富子は其の表情が怯えに代わるのを期待して顔をゆがめた。
しかし、実際は。
「うぐっ!? ……か、は……」
うめき声をあげたのは富子の方。ハロは武器の行方を見もしないまま、隙だらけの富子の懐に飛び込んで掌底の一撃を加えたのだ。
「……貴方の気迫には気おされましたが、……それだけです。恐ろしいとは思わない」
成功
🔵🔵🔴
多々良・円
【WIZ】
凄まじい怨念……まるで鬼じゃな。
この凶鬼はここで止めねばなるまい。
……わしにはわからぬが、この者にとっては、金が何よりも大切だったのじゃな……。
【念動力】や白群の神風による【吹き飛ばし】で、周りの調度品などを空中に飛ばして矛先の分散、火矢をある程度防ぐことを狙うのじゃ。
矢であるというのならば、白群の神風で強風そのものを起こし、軌道を変えたり【吹き飛ばし】てしまうのも手じゃな。
それでも防ぎきれんじゃろうが……【視力】で何とか回避するしかあるまい。
反撃は精霊風。何かしようとすると様々な風が吹いて邪魔をするようになるる。
動きが止まったところに、月白の雷光を【念動力】で飛ばして貫く狙いじゃ。
「まるで鬼じゃな」
多々良・円(くるくる、くるり・f09214)は富子をみてそう形容する。この凶鬼は必ずや、此処で仕留めねばなるまいと決意を新たにする。
「そんなに金が大事なのか? わしには判らん感覚じゃ」
「そうだよ! 金があれば何でも出来る! 金で出来ない事は今まで何もなかった! 戦だって金を積めば起こせるし、金を積めば生き残れる! 金で出来ない事って逆になんだよ、こっちが聞いてみたいわ!」
「……頭の痛い。守銭奴とはまさしく、お主の事を言うのじゃろうな」
「好きに言えよ! 今のうちに言っておいた方がいいんじゃないか? だってお前、もう死ぬんだもんなあ!」
紫の炎が矢となって、炎を纏い円へと飛来する。金銀に彩られた天井が焦げ、其の威力を伺わせる。
「ふむ。……白群の神風、今こそ唸りを……」
くるくるり。円の傘が回る。くるくるり。大気が渦巻いて、牙をむく蛇のように矢を真っ向から迎え撃つ。
弓矢は風に乗るもの。だからその風に反旗を翻されては――ひとたまりもない。ふつふつり、と火の矢が消えていく様に、富子は信じられないと目を瞠った。
更に円は傘の先で、周りの調度品を空中に飛ばし、火矢にぶつける。其れでも潜り抜けてきた火矢が身にすとんと突き立ち、円は息を詰める。
――この程度、想定内じゃ。傷を負わずに終われる戦などあるものか……!
「生意気な真似しやがって! だったらもう一回……」
「いや……次はわしの番じゃ。 風よ、汝、凶風となりて……!」
突き立った矢は抜くと危険だ。その場に膝をついたまま、円はくるりと傘を回す。再びとぐろを巻いた風の大蛇が、富子に纏わりつく。
「ああ!? 邪魔くせえ! くそッ、離れろよッ! 不敬なんだよ! アタシに気安く触るんじゃねえ!」
「無駄じゃ、其の風は簡単には離れんよ。……そして、これがわしからの……貢物じゃ!」
どっ。
富子の身がびくん、と跳ねた。其の片手が恐る恐る胸元を触ると、ぬとり、と赤黒い血が指先についていた。見れば、雷の薙刀が己の胸元に突き立っているではないか。
何かの間違いだ。金も身分もクソもない猟兵に、此処までアタシがやられるなんて。
「……後続に、任せるとするかのう……」
両者、痛み分け。円は精霊風が富子を押しとどめているうちにと、御所から離脱する。
大成功
🔵🔵🔵
「大悪災……全くもって似合いの名だよ」
「アタシは金を集めてただけだ! 勝手にそう呼ばれて……金を集める事の何が悪い!? 豊かになる事のなにが悪い!? 誰だってそうだろ、豊かになりたい幸せになりたい! 其の為に金を集めるのは必然ってもんだろ!」
富子はブイバル・ブランドー(の中身//自由すぎるアーマー・f05082)に喚き散らす。彼女は金以外の幸せを知らないのか、とブイバルは溜息をつく。あるいは、オブリビオンとして蘇る際、躯の海に置き忘れて来たのか。
「というか……お前、頭が高くないか? 高いよなあ。なあ、アタシの名前は知ってるだろ? 徳川の財だって元はアタシが集めた金だったんだ。……頭が高いよなあ! その憐れむような視線も、気に食わないんだよなあ!!」
富子の瞳が怒りの紫に輝く。ブイバルは咄嗟に周辺の調度品を集め、スクラップの壁を作り出した。
「……あ?」
「お前の弱点は、視認した対象しか爆破出来ない事だ」
ブイバルはスクラップの陰から顔を出し、ライフルを構えて、撃つ。びす、と音がして、富子の肌を弾丸が掠めた。
「つまり、こうやってスクラップの陰から攻撃をすれば、お前の攻撃は俺には……」
「しゃらくせえんだよ!! ペラペラペラペラと!!」
轟音がして、スクラップタワーの上部が爆破された。すぐにブイバルは次のスクラップタワーを作る。幸い、この屋敷には調度品やよくわからない金ぴかのものが多い。スクラップと呼ぶのははばかられるが、利用し甲斐はある。
「話を最後まで聞く気のない奴は嫌われるぞ」
「うるせえよ! 貧乏人の言う事なんて……って、なんだお前」
来たか……ブイバルは頭の痛くなる思いに駆られながら、スクラップタワーの陰から覗く。いつもの謎のおっさんがいた。
「僕はVALZA3の化身・ VALディーニ。実証完了、そのユーベルコードは封じさせて貰ったよ」
「な……!? は!? 何!? なんだよお前!?」
「あー……そのおっさんは、トクガワイエヤスだ。多分な」
「家康だと!? 殺……ああ!? なんで爆発しない!?」
「言っただろ? 実証完了だって。じゃ、僕はこれで」
すたすたと去っていくVALディーニ。二人は其れを半ば呆然と見守っていたが……
「じゃねえ! くそっ、こうなったら……!」
は、と我に返った富子は後退を始める。目指すは花の御所の奥。ユーベルコードが使えるようになるまで、猟兵の目から逃れなければ……!
「そう言って逃がすとでも思ったか?」
後ろからライフルの弾が追ってくる。手に足に銃創を負い、あちこちに傷を負いながら、富子は其れでも御所の奥へと逃れて行った。
ブイバル・ブランドー
凄まじい憎悪だな…大悪災とは全く似合いの名だよ
幹部級のオブリビオン…恐らく一撃もらえば黒焦げ、悪ければ絶命だろうな。
相手のUCが視認されることで発動条件が満たされるのであれば、地形を利用して見られない様に立ち回ることが重要になるだろう。
お前の弱点は…視認した対象しか爆破できないことだ。
直視される前にスクラップで遮蔽物もとい囮を創造し、攻撃を防ぐ。花の御所の地形を有効活用しながらこの方法で防ぎつつ、多目的兵装のライフルモードで狙撃することで一矢報いてみせる。
そうしていると何故か謎のおっさんが湧いてきそうな予感がする。そいつも囮として活かしてみよう
「そのおっさんは…トクガワイエヤスだ。多分な」
「大悪災……全くもって似合いの名だよ」
「アタシは金を集めてただけだ! 勝手にそう呼ばれて……金を集める事の何が悪い!? 豊かになる事のなにが悪い!? 誰だってそうだろ、豊かになりたい幸せになりたい! 其の為に金を集めるのは必然ってもんだろ!」
富子はブイバル・ブランドー(の中身//自由すぎるアーマー・f05082)に喚き散らす。彼女は金以外の幸せを知らないのか、とブイバルは溜息をつく。あるいは、オブリビオンとして蘇る際、躯の海に置き忘れて来たのか。
「というか……お前、頭が高くないか? 高いよなあ。なあ、アタシの名前は知ってるだろ? 徳川の財だって元はアタシが集めた金だったんだ。……頭が高いよなあ! その憐れむような視線も、気に食わないんだよなあ!!」
富子の瞳が怒りの紫に輝く。ブイバルは咄嗟に周辺の調度品を集め、スクラップの壁を作り出した。
「……あ?」
「お前の弱点は、視認した対象しか爆破出来ない事だ」
ブイバルはスクラップの陰から顔を出し、ライフルを構えて、撃つ。びす、と音がして、富子の肌を弾丸が掠めた。
「つまり、こうやってスクラップの陰から攻撃をすれば、お前の攻撃は俺には……」
「しゃらくせえんだよ!! ペラペラペラペラと!!」
轟音がして、スクラップタワーの上部が爆破された。すぐにブイバルは次のスクラップタワーを作る。幸い、この屋敷には調度品やよくわからない金ぴかのものが多い。スクラップと呼ぶのははばかられるが、利用し甲斐はある。
「話を最後まで聞く気のない奴は嫌われるぞ」
「うるせえよ! 貧乏人の言う事なんて……って、なんだお前」
来たか……ブイバルは頭の痛くなる思いに駆られながら、スクラップタワーの陰から覗く。いつもの謎のおっさんがいた。
「僕はVALZA3の化身・ VALディーニ。実証完了、そのユーベルコードは封じさせて貰ったよ」
「な……!? は!? 何!? なんだよお前!?」
「あー……そのおっさんは、トクガワイエヤスだ。多分な」
「家康だと!? 殺……ああ!? なんで爆発しない!?」
「言っただろ? 実証完了だって。じゃ、僕はこれで」
すたすたと去っていくVALディーニ。二人は其れを半ば呆然と見守っていたが……
「じゃねえ! くそっ、こうなったら……!」
は、と我に返った富子は後退を始める。目指すは花の御所の奥。ユーベルコードが使えるようになるまで、猟兵の目から逃れなければ……!
「そう言って逃がすとでも思ったか?」
後ろからライフルの弾が追ってくる。手に足に銃創を負い、あちこちに傷を負いながら、富子は其れでも御所の奥へと逃れて行った。
成功
🔵🔵🔴
明智・珠稀
く、ふふ!
欲望に忠実で気性の激しい女性も愛しいです、ふふ…!
是非戦い愛し合いたいものです、ふふ…!
■対策(POW)
「ふふ、怒った顔も美しいですよ…!!」
富子さんの視線を持参した手鏡で写し反射を
彼女自身へUCが当たるよう仕向ける
「ほら、美しいでしょう?」
敵UCの効果が止んだら今度は己が富子さんに視線を合わせ
UC【愛しのご主人様♥️】で
流し目ビームでの爆発攻撃、また赤い糸での縛りつけを
身動きを鈍らせたら妖刀での攻撃
敵攻撃にはオーラシールドで防御したつ
【激痛耐性】で
「貴女にいたぶられるのも素敵です…!」
悦ぶド変態
仲間いれば連携し
「骸の海でお金にまみれてください…!」
妖刀で斬激を
※アドリブ&絡み大感激
甚五郎・クヌギ
・心情
金銀財宝、欲に目が眩んだその怨念
我輩の野辺送りで斬ってやろう
ヨシ!睨みあいだな!睨みあいなら負けぬぞぉ!
壊された調度品が目に入る
それは我輩が思うよりもずっと価値のある物なのだろう
だがあの姫の下にあるよりは
壊された方がずっと良いと思うのだ
・戦闘
【化ヶ猫変化・連獅子】使用
増強された脚力で火矢の怨霊を避ける
御所の中という「地形を利用」して
身を捻り、壁を蹴り、体のすぐ傍まで迫る火矢はなぎ払う
攻撃を通す隙が生まれたら
ぐっと脚に力を入れてひとっ跳び、小さき体躯を活かし
富子の懐に潜り込んでやるのである
共に戦場に立つ者がいれば手助けするぞ
気を引く役目は任せ給えよ!
・連携、アドリブ歓迎です
「クソッ……クソッ、クソッ、クソッ! なんでこうなる、なんなんだよ! 猟兵も徳川も、信長の野郎も、みんなみんなムカツク!」
絢爛な着物を血で濡らしながら、富子は御所の最奥にいた。出て来るのは罵声ばかりだが、聞いてみると弱音にも近い。まるで棘だらけの甲羅で己を守っているかのようだ。
「くふふ……! 欲望に忠実で気性の激しい女性も愛しいですね……!」
「っ! 追っ手か! 犬みたいに追ってきやがって!」
「ああ! 其のけだものを見るような目……! イイ! ぜひ戦い、愛し合いましょう!」
変態が現れた。……失礼。明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)である。隣で“なんだコイツ……取り敢えず一緒に来たけど……”という目をしているのは甚五郎・クヌギ(左ノ功刀・f03975)。
「おぬし、此処に戦いにきたのだよな?」
クヌギが確認する。
「ええ! 勿論です! 戦い、愛し合うために!」
珠稀が答える。駄目だ、問答になっているようでなっていない。
「ウゼエな! 変態だかなんだか知らないが、アタシの御所に入ってきたからには死んで出る覚悟はできてるんだろうな!」
「ああ、怒った顔も美しいですね……ほら、見て御覧なさい。貴女の其の憎悪に塗れた視線は、とても蠱惑的だ……!」
富子が珠稀の血肉を吹っ飛ばしてやろうと視線を向けた瞬間、珠稀が手鏡を向ける。其処には憎悪に表情をゆがめた富子の美貌があり――ぴし、ぱりん! と、彼の身代わりになるように手鏡が砕け散る。
「ああ! 貴女の余りの美貌に鏡さえ耐え切れなかったようだ……許してくれたまへ」
「ウゼエエエ!! こんな奴らにやられるなんてゴメンだ! おい! 誰かあいつらをまとめてブッ殺せ!」
答えて現れるのは、在りし日の弓兵達。一斉に弓を引き、弦を鳴らして紫色の火矢を放つ。
「むっ……!」
「これはいけない! ああっ!」
「あ、明智君!?」
狙われたクヌギ。幾つかでも撃ち落としてやろうと愛刀“野辺送り”を構えたその時、火矢と彼の間に割り込んだ珠稀が己の体で火矢を受ける。
「だ、大丈夫か!? 明智君!」
「これしき、平気ですよ……富子さんにいたぶられている、そう思うとこの体は火照り、力を増すのです……!」
誰だこの変態を連れて来たのは。
「うぬう、しかしこれは好機! 吾輩の野辺送りの錆となるがいい!」
「さっきから仲間ごっこがウゼエんだよ! この世は金! 上と下で成り立ってんだ! 友情とか愛情とかそういうのはクソクソのクソにウゼエったらありゃしないんだよ!!」
「――哀れな。人の情を躯の海に忘れて来たか」
ざわり、クヌギの毛並みが蠢く。
ざわざわと鬣のラインの毛並みが伸びて、まるでその姿は獅子に似る。其の技の名は、“化ヶ猫変化・連獅子”。
「少なくとも、愛を証明する事は出来ますよ……例えば僕と貴女、とか、ね」
珠稀も、矢傷を身体の前面に受けながら、富子にウィンクしてみせる。其の流し目は愛の奔流、爆裂を巻き起こし、互いを赤い糸で繋ぐ。
「ほら、僕と貴女、もう逃げられません」
「クッソ……! 死ねよ! 死ね! 愛とかさア、金にならないもんはいらないんだよ! こんな糸……!」
「フフフ……! さあ、今ですよ」
「応! 明智君が作った隙、我輩がモノにしてみせるのである!」
敗因はなんだったのだろう。
珠稀のペースに飲まれた事? クヌギと珠稀の対応が、見事に噛み合っていたこと? 手傷を負っていたこと? 猟兵に戦いを挑んだこと? 其れとも――信長に導かれ、蘇った事そのもの?
其れは誰にも判らない。
けれど一つだけ、確かな真実があった。光のような速さで富子の懐に飛び込んできたクヌギの一閃が、富子の美しい顔を刃に映した刹那――其の首を綺麗に刎ね飛ばしていた。
「……」
血払いをし、刀を収めるクヌギ。ころりと富子の首が転がる音を聞きながら、来る時に見た壊れた調度品の事を思い出していた。
意図的に粉々にされた調度品たち。あれはきっと、想像もつかないほどの価値のあるものなのだろう、けれど。この女の手元にあるくらいなら、壊された方がいっそ良いのかもしれない。
「――ああ」
濡れ羽色をした髪の先からさらさらと灰になりながら、富子がクヌギを見上げていた。
「オマエの刀、……金になりそうだ」
まさに、慾に溺れるとはこの事。
日野富子という女は、最後の最後まで金慾の沼に首まで浸かり、助けも求めず、自ら沼の底へ沈んでいったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵