エンパイアウォー⑳~傾国の大悪災
●その名は日野富子
その豪華絢爛な舘は、多くの寺社や貴族の邸宅の並ぶ京都の地でも、一際目を惹く存在だった。
『花の御所』と呼ばれるその舘は、かつては足利将軍家の邸宅だった場所だ。
足利幕府が滅んだ後は『花の御所』もなくなっていたのだが、その土地を買い取り、往時を遥かに上回る豪華絢爛さで蘇らせた者がいる。
それこそが、第六天魔軍将の一人にして『大悪災』の二つ名を持つ『日野富子』だった。
「ああムカツク! ああああムカツク!」
その富子は、苛立ちを隠そうともせず、花の御所内を闊歩していた。徳川幕府と猟兵に、兵糧の買い占めを阻止されたことが、よほど悔しかったのだろう。
「どいつもコイツも、アタシが殺してやる! 徳川を殺して、猟兵を殺して、もちろん信長の野郎も、ぶっ殺す!!!」
かつて自らの欲望を満たすために『応仁の乱』を引き起こしたと言われる富子の身勝手な怒りは、徳川幕府や猟兵に対してのみではなく、今の主君たる織田信長にすら、向けられていたのだった。
●大悪災、来たる
「みなさんの活躍で、第六天魔軍将の一人『日野富子』の居所が判明しました」
エルシー・ナイン(微笑の破壊兵器・f04299)は、労うように集まった猟兵達にそう告げた。
「……もっとも、かなり目立つ場所にいたので、本人的には隠れているつもりは毛頭なかったようですけど」
日野富子は京都に再建した『花の御所」で、特に身分を隠すこともなく、金に飽かせた贅沢な暮らしを楽しんでいたのだという。
「日野富子は、室町幕府八代将軍足利義政の正室であり、九代将軍の母親でもあります。オブリビオンになる以前は、その地位と莫大な資産を利用して権力を拡大し、欲望のままに人々を苦しめ、サムライエンパイアを壊滅寸前まで追い込んだのだと伝えられています」
それゆえに、『大悪災』の二つ名を冠されることになったのだ。
「生前は戦闘能力は全くといって良いくらいなかったはずですが、オブリビオンと化した今、彼女は憎悪と苛立ちを武器に、とてつもない戦闘能力を持つに至っています。何の準備もなく挑んでは、苦戦は必至でしょう。特に『花の御所』は彼女の庭であり領土そのもの。『花の御所』内で彼女に先んじて攻撃を仕掛けることはほぼ不可能です」
ですが、とエルシーは続けた。
「財力を武器に使う彼女は、ある意味信長よりも恐ろしい存在。彼女を野放しにしていては、サムライエンパイアの経済は滅茶苦茶になってしまいます。強敵ではありますが、みなさんなら必ずや彼女を撃破できると、ワタシは信じています」
エルシーは祈るようにそう言って、猟兵達を送り出したのだった。
J九郎
こんにちは、J九郎です。
エンパイアウォー二人目の天魔軍将の登場です。気を引き締めていきましょう。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
また、大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
それでは、皆さんの知恵を絞ったプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
|
POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
清川・シャル
お出ましですね?富子さん
埋蔵金は先程ゲットしてるんですよねー
私利私欲に使うものじゃないですよ?
ここでお仕置きさせて頂きましょう!
先制攻撃ですね?
こちらが使うUCは言うならばバフ効果
貴女パワーアップでしょうけど、私もです
これで如何です?
先制直後にAmanecerを召喚、スピーカーから私も歌います
但し、熱光線の串刺しと目潰し付き
貴女のUC対策は氷魔法で壁を作りましょう
鏡のようにピカピカ
透明だと此方に視線来るので此方側は摺りガラスぽく加工を
そして炎が溶けて水になるので
氷のミストも追加して延焼も消し
あとはそーちゃんで殴りましょう!薙ぎ払いつつ衝撃波です!
その後はチェーンソーモードでフルスイングです
エル・クーゴー
●POW
●対先制
【空中戦】用バーニア、展開
低空飛行で蛇行しつつ後退、敵視線による照準より退避します
被照準率上昇時、体表に【迷彩】を展開、回避率増を期します
爆破に呑まれそうな際はバーニアを瞬間的に強噴射、自身を【吹き飛ばし】て回避します
●反撃【ファイアワークス・ドライブ(攻撃回数重視)】
フォートより焼夷弾を発射、応戦します
この焼夷弾頭は起爆時、敵の操る炎の色同様の紫に炎色反応を起こすよう【武器改造】を施しています
この焼夷弾を己の前方・扇状に、徐々に敵へ着弾地点を迫らせるよう連射(範囲攻撃)
敵にとって「どれが自分の炎なのか判じ辛い状況」を構築しつつ、爆炎を縫って本命のライフル射(誘導弾)を放ちます
●突入、花の御所
「攻撃対象、確認。バトルフィールド、『花の御所』。これより突入を開始します」
花の御所のはるか上空。空中戦用バーニアを展開して宙に浮いていたエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は、急降下をして花の御所へ突撃していった。
「なんだおまえ!? アタシを、上から見下ろしてるんじゃねえーっ!!」
エルの存在に気付いた日野富子は憤怒の表情を浮かべ、憎悪の視線をエルに向けた。たちまち、その視線を向けられたエルの眼前で紫煙の炎の大爆発が起こる。
「……バーニア、全開」
だが、エルは空中戦用ブースターを全開にし、さらに建物を遮蔽にするように蛇行しつつ後退することで、爆発の直撃を辛うじて避けていた。
「ちょこまかと逃げんな! アタシの御所が、黒焦げになるだろうがっ!!」
理不尽な怒りをぶちまけつつ、なおも富子の視線はエルを追う。その都度巻き起こる爆発が舘の壁や柱を吹き飛ばし、吹き飛んだ破片や爆風がエルにも小さな傷を負わせていった。
「被照準率上昇を確認、装甲表面に迷彩を展開」
エルはL95式バトルスーツの表面色を迷彩に変化させることで、なんとか富子の視線から逃れんとする。
「アタシは視力には自信あるんだ! そんな目くらましで、逃げ切れると思うな!!」
富子は、エルが庭に飛び出したのを確認すると、その動きの先を読むように視線を向け、紫煙の大爆発を引き起こした。たまらず、エルの姿が爆発に飲みこまれ――、そして吹き飛ばされていく。
「まずは一人。次は、おまえか!」
富子の視線の先にいたのは、表門から悠々と花の御所に侵入した清川・シャル(ピュアアイビー・f01440)の姿だった。
「お出ましですね? 富子さん。残念ながら埋蔵金は先程私がゲットしてるんですよねー」
「お出ましも何も、ここはアタシの舘だ! ついでに、徳川の埋蔵金も元はといえば、アタシの集めた金なんだよ……!」
挑発するようなシャルの言葉に、富子の苛立ちが増していく。
「お金っていうのは、私利私欲に使うものじゃないですよ? ここでお仕置きさせて頂きましょう!」
「うるさい小娘め! ええーい、誰かアイツをぶっ殺せよ!」
苛立ちの限界に達した富子の呼びかけに応じ、50を超える火矢が富子の周囲に浮かび上がった。応仁の乱に飛び交ったという火矢の怨霊は、一斉にシャル目掛けて飛んでいく。
「おおっ、先制攻撃ですね?」
だが、あらかじめ火矢の攻撃を予期していたシャルは、富子が火矢を召喚した直後に氷魔法で自身の眼前に氷の壁を生み出していた。
殺到した火矢が、鏡のようにピカピカと輝く氷の壁に次々と突き刺さっていく。
「くそっ、どうなった!?」
曇りガラスのように視線を通さない氷の壁に遮られて、富子からはシャルの姿を見ることはできない。だが、火矢は自身の消滅と引き換えに、あっという間に氷の壁を溶かしてしまっていた。氷が解けて発生した水蒸気の向こうに、うっすらとシャルの姿が浮かび上がる。
「貴女、火矢呼んでパワーアップでしょうけど、私もです」
水蒸気が晴れた時、そこから現れたのは召喚型のインカム、スピーカー&アンプ群である【Amanecer】を身に纏ったシャルだった。シャルはインカムの位置を調整すると、
「せっかくですから、私の歌を聞かせてあげます。さあ、これで如何です?」
おもむろに歌を歌い出した。その歌に合わせるように、スピーカーから熱光線が放たれ、富子に迫る。
「ふざけるなよ! そんなもん、アタシが喰らうわけないだろっ!!」
だがその熱光線は、富子の全身を覆う紫煙の炎に阻まれ、富子自身までは届かない。さらには、先程の氷の壁と対消滅しなかった残りの火矢が、シャルに次々と襲い掛かっていった。
「……ねえ、知ってます? 私の歌、言うならばバフ効果なんですよ」
火矢の直撃を何度か受けつつも歌い続けるシャルの言葉に、富子の表情が苛立ちに歪む。
「バフ? 意味の分からない言葉を使うなよっ! アタシに分かるように説明しろっ!!」
その、富子の怒声に応えたのは、シャルではなかった。
「つまり、彼女の歌声には、友軍の戦闘力を増強する効果があるということです」
背後から聞こえてきた声に富子が振り向けば、そこにいたのは先ほど吹き飛んだはずのエルの姿。
「おまえは! なんで生きてる!?」
先程、紫煙の炎の大爆発に巻き込まれそうになった時。エルはバーニアを瞬間的に強噴射し、自身を吹き飛ばすことで爆発を回避していたのだ。
「これより、反撃に移行。射撃開始」
エルは展開していたL95式アームドフォートから焼夷弾を扇状に連射していった。焼夷弾は着弾するとその場で紫の炎を噴き上げ、富子の周囲を炎で覆っていく。
「!? この炎は!!」
特別に紫色の炎が上がるように調節された焼夷弾が巻き起こす炎は、富子の纏う紫煙の炎とよく似ており、富子自身にとってもどこまでが自分の炎で、どこまでが焼夷弾が吹き上げた炎なのか判じ辛い。
「くそっ、くそっ! どいつもこいつも小賢しい真似を!」
富子は炎の向こうのエルに憎悪の視線を向けようとしたが、それよりもエルが本命のライフルの一斉射を放つ方が速かった。炎を割いて襲い掛かるライフル弾は、まるで意志があるように誘導しつつ、富子に迫る。富子は驚異的な動体視力で次々にライフル弾を睨みつけ、着弾前に焼き払っていくが、それでも全ての銃弾を防ぎきることはできない。何発かの銃弾は確実に富子の身体を射抜いていった。
「いってえ! このアタシにこんなことして、許されると思ってるのかてめえっ!!」
富子の意識が、完全にエルに向いたその隙に。
背後から富子に迫っていたシャルが、手にしていた桜色の鬼の金棒『そーちゃん』を、薙ぎ払うかのように思いっきり振り抜いた。その薙ぎ払いを辛うじてかわした富子だったが、その余波で放たれた衝撃波までは避け切れず、大きく態勢を崩してしまう。
「さあ、どんどんいきますよー!」
シャルが大きく振りかぶった『そーちゃん』はいつの間にかチェーンソーモードになっており、その表面を無数の刃が高速で回転を始めていた。
「フルスイングで勝負です!」
「ふざけんな、おまえらーっ!!」
全力で振るわれた『そーちゃん』が富子の腕に深い傷をつけたのと、まだ残っていた火矢がシャルとエルを射抜いたのは、ほぼ同時だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エメラ・アーヴェスピア
まさに悪霊のような相手、と言った所かしら
まぁ、このままにしておくのも猟兵としては、ね
早急に骸の海へとお帰り願いましょう
さて、先制攻撃が厄介なのだけど…私ができる対処は簡単なこれ位しかないのよね…
『出撃の時だ我が精兵達よ』
まずは盾役として魔導蒸気製の大盾と拳銃を装備したLv1、20体を前衛に【盾受け】で【かばう】させるわ
壁の様にきっちり詰めて後ろに私が隠れれば、爪の様な直線的な攻撃なら防げるでしょう
これだけいれば移動も制限できるのではないかしら?
後は魔導蒸気グレネードランチャー装備のLv15二体で後ろから曲射攻撃よ
敵の位置は回避に専念させた猟犬越しに【情報収集】しましょう
※アドリブ・絡み歓迎
宙夢・拓未
要は、視線を俺から逸らさせればいいわけだ
それなら……
▼防ぎ方
乾電池式のミラーボールを持参し
富子の顔面を狙って、思い切り【怪力】で投げつける
ビカビカ光る物体が顔目がけて飛んできたら
嫌でも、視線の向く対象はそっちになるはず
『憎悪の籠った視線』でないといけないかもしれないから
スピーカーから、挑発の音声をループ再生させつつ投げよう
『金食い虫! 金食い虫!』ってな
ミラーボールが爆発したら、反撃開始だ
▼攻撃
【ヴァリアブル・ウェポン】命中率重視
左肘から振動剣を引き抜き、右手で構える
そのまま宇宙バイクの【運転】で接近
加速しながら、そのまま突き刺す一撃
着物が邪魔だから、露出した喉元を狙う
●魔導蒸気兵と宇宙バイク
「ああくそっ! いてえじゃねえかよっ!!」
チェーンソーに裂かれた腕を抑えながら、憤怒の形相を浮かべる富子。その姿を見て、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は呆れたように肩を竦めた。
「まさに悪霊のような相手、と言ったところかしら。まぁ、このままにしておくのも猟兵としては、ね。早急に骸の海へとお帰り願いましょう」
エメラが、そう呟いて腕を前方に突き出す。
「さぁ出番よ、私の勝利の為に出撃……」
自らの忠実なる部下にして精兵たる魔導蒸気兵を召喚しようとするエメラだったが、
「ごちゃごちゃうるせえっ! 何勝手に他人様の家に入り込んでるんだ!!」
召喚が完了する前に、富子の爪が光り輝きながら長く伸びた。そのまま勢いよく振るわれた爪が、連続でエメラを切り裂いていく。
「まずいな、これは」
やや遅れて駆け付けた宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は、富子の気を逸らすべく、抱えてきた乾電池式のミラーボールを、富子の顔面目掛けて投げつけようとした。
だが、
「アタシの前に立つんじゃねぇ!」
それよりも、富子が拓未を睨みつける方が速かった。憎悪の籠った視線に見据えられた拓未が慌ててミラーボールを手放すのと、ミラーボールが紫煙に包まれ大爆発を起こしたのはほぼ同時。砕けたミラーボールの破片が、拓未の機械の身体を切り裂いていく。
「ビカビカ光る物体を投げつければ、自然と視線もそっちを向くかと思ってたんだが、投げるより視線を向ける方が速かったか。だが、とりあえず目的は果たせたぜ」
後退して爆発によるダメージを最小限に抑えた拓未の言葉を、富子は耳聡く聞きつけていた。
「ああ? どういうことだよ」
「こういうことよ」
声のした方に目を向ければ、エメラを護るように総勢50体もの魔導蒸気兵が隊列を組んで立ちはだかっている。拓未が気を逸らせた隙に、召喚を完成させていたのだ。
「ふん、何だよこんな人形っ!!」
富子が苛立ちをぶつけるように爪を振るい、魔導蒸気兵を蹴散らそうとする。だが、前衛の魔導蒸気兵達は大盾を構えて密集し、壁の様にきっちりと固まって守りを固めていた。
それでも、富子の爪の威力の前にはその鉄壁の守りでもまだ足りなかった。富子が爪を振るう度に、一体、また一体と魔導蒸気兵が潰されていく。だが、総勢20体の前衛の蒸気兵達は、仲間がやられる度に隊列を組み直し新たな壁を生み出して、富子を足止めしてみせた。
エメラは、その魔導蒸気兵の壁の後ろに隠れつつ、先程爪に裂かれた傷の止血を行う。
「ああもう! 邪魔邪魔邪魔! アタシのジャマをするな!!」
荒れ狂う富子の爪が、さらに何体かの魔導蒸気兵を破壊する。
「おっと、一人に集中すると他の相手の存在を忘れるのは、お前の悪い癖だぜ、金食い虫」
富子が魔導蒸気兵を蹴散らすことに躍起になっている間に、拓未は反撃の体制を整えていた。体内に埋め込まれた『チクタクエンジン』が最大出力で稼働し、放たれた魔力を含む電流が、富子目掛けて迸る。
「さっきは良くもやってくれたわね。こっちからも反撃させてもらうわ」
拓未の電撃に合わせるように、エメラが指示を飛ばした。すると15体を合体させて強化した魔導蒸気兵2体が、富子目掛けて魔導蒸気グレネードランチャーを曲射で撃ち出した。
「なんだよそれ!? 前衛が邪魔でこっちのこと見えてないだろうが!!」
電撃とグレネードの爆発の挟撃に、防戦に追い込まれた富子が吠える。
「ふふ、こちらにはちゃんと『目』がいるのよ」
エメラの得意げな言葉に、富子は気付いた。戦場から少し離れた庭の片隅で、機械仕掛けの犬がじっと富子の様子を観察していることを。その魔導蒸気猟犬を情報収集用の端末として、エメラは運用していたのだ。
「どいつもこいつも、ふざけやがって!!」
電撃とグレネードの攻撃が止んだ隙に、怒りと共に紫煙の爆発で一気に魔導蒸気兵を吹き飛ばす富子。
「ふざけてんのはそっちのほうだぜ、金食い虫」
そんな富子目掛けて、宇宙バイクに飛び乗った拓未が突撃を仕掛けた。バイクを駆りつつも器用に左肘から振動剣を引き抜き、右手で構える。
「はっ、真っ直ぐ突っ込んでくるとか、馬鹿だなお前!!」
富子が嘲りを込めた視線で拓未を睨むと、たちまち巻き起こった大爆発が宇宙バイクごと拓未を飲み込んだ。
「はっはっはっ、ざまあみろ!!」
高笑いをする富子だったが、笑っていられたのも爆炎を割いて拓未のバイクが姿を現すまでだった。走っていられるのが不思議なくらい激しく損傷しながらも、バイクは真っ直ぐに富子に突っ込んでいく。慌てて富子が爪を振り下ろすよりも、バイクを加速させて至近距離まで接近した拓未が振動剣を突き出す方が速かった。
「これで終わりだっ!!」
邪魔な着物をよけ、狙うは露出した喉元。だが、振動剣が富子の喉を貫く直前。紫煙の直撃を受けていたバイクが耐えきれずに転倒した。振動剣は狙いをわずかにそれ、富子の肩を貫くに留まったのだった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
経済戦争を仕掛けられる程の財力に、全てを敵とみなすその思考……
一般人の生活すら脅かすその脅威、騎士として看過出来る物ではありません
その野望、阻ませて頂きます
初撃は大盾を視線を遮るように投げ、視線を●盾受けで防ぎ盾を犠牲に回避
更に日野富子の直上、花の御所の天井を●破壊工作の知識を生かし格納銃器で●なぎ払い掃射で崩落させ防御させつつ、防具改造で装備した煙幕発生装置を使い●目潰し
マルチセンサーでの●情報収集を活かし敵の位置を●見切り、装備していたUCの機能を発動させ突撃を敢行
視線からの爆発を追加装甲の●盾受けとそれのパージで防ぎつつ、高速で接近し装甲展開、●怪力で振るう剣で切り捨てます
スカル・ソロモン
敵が花の御所という領土内で絶対的な力を持つと言うなら、その領土を塗り替えよう。
敵の攻撃に対して真なる贋作を使い、この世界で手に入らないであろう西洋の城内部の一区画(42m四方)を精巧に再現し、自身と敵をその内部に閉じ込める。
これで敵は「花の御所内にいる」という優位性を失い、付け入る隙が生まれるはずだ。
さらに敵の爪の輝きを曇らせるために油性塗料を真なる贋作で作り出し、ぶちまけて敵の爪を汚し、輝けなくする。
「ただの爪に怯む私ではないよ」
その後はタクティカル・スパインで敵を強かに打ち据えよう。
もし敵に対抗できなかった場合は、
「くっ、これでも止まらないか……!?」
と言いつつ派手にやられるとしよう。
メンカル・プルモーサ
…厭われたのはお金の問題じゃ無い気もするけど…
…まずは長くのびる爪による連続攻撃に対処できなければ始まらない…
…全力魔法で強化されたオーラ防御による多重のヴェールのような特殊な障壁を張って爪に対処…
…単純に硬い障壁ではなく…一枚一枚は爪に纏わり付くぐらい「薄く」「丈夫で」「柔らかい」障壁、それが何十、何百と纏わり付くことで障壁触れる度に爪の動きや切れ味を阻害するよ…
更に術式を加えて腕や足を拘束する事で動きを鈍らせることで時間を稼ぎ…
【愚者の黄金】を発動。天井付近から部屋一杯、数十トンの黄金の塊を落下させることで攻撃するよ…
…お金をもっているのが正義、と言うなら…それ以上の黄金には従うのかな…?
●花の御所の乱
「経済戦争を仕掛けられる程の財力に、全てを敵とみなすその思考……。一般人の生活すら脅かすその脅威、騎士として看過出来る物ではありません」
花の御所に駆け付けたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、怒りの炎に身を焦がす富子の姿を目にすると、自身の大盾を掲げた。
「ああ!? アタシがアタシの金で何しようが、アタシの勝手だろうがっ! 所詮おまえらは、アタシを妬んでるだけなんだよっ!」
富子が、憎悪を込めた視線でトリテレイアを睨みつける。同時に、トリテレイアは手にした大盾を、富子目掛けて投げつけた。富子の視線を盾が塞ぎ、直後大盾が大爆発を起こす。
「……厭われたのはお金の問題じゃ無い気もするけど……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、トリテレイアが盾を身代わりに爆発を凌いだのを確認すると、一歩前へ踏み出した。
「小娘が、偉そうにアタシに説教するのかっ!」
トリテレイアを仕留め損ねた苛立ちをぶつけるかのように、富子が光り輝く爪でメンカルへと切り付ける。
が、
「……無駄。あなたの爪では、私のヴェールは裂けない……」
メンカルは多重のヴェールのような特殊な障壁を自身の周囲に張り巡らせ、富子の爪を受け止めていた。メンカルの全力の魔法で強化されたオーラのヴェールは、単純な硬さでは、トリテレイアの大盾には遥かに及ばないだろう。だが、爪に纏わり付くぐらい『薄く』『丈夫で』『柔らかい』障壁が、何十、何百と纏わり付くことで、爪の動きや切れ味をまるで受け流すように阻害していく。
「ええーい、ムカツクムカツクムカツク!! 何で切り裂けないんだよっ!!」
富子が苛立ちつつヴェールの障壁を切り裂こうと躍起になっている間に、新たに戦場に駆け付けたスカル・ソロモン(目覚める本能・f04239)は、思わぬ行動に出ようとしていた。
「そちらが花の御所という領土内で絶対的な力を持つと言うなら、その領土を塗り替えるとしよう」
背骨を模した杖『タクティカル・スパイン』を構えたスカルは、杖に魔力を集めると、花の御所の建物目掛けて杖を振り下ろそうとする。
「そこの髑髏野郎っ!! 他人様の家に、なにするつもりだよっ!!」
だが、スカルの存在に気付いた富子は、ヴェールの相手をするのを諦めると、たちまちの内にスカルに肉薄し、爪を振り抜いた。
「くっ、やはり速いな!」
鋭い爪に切り裂かれながらも、スカルは『タクティカル・スパイン』を舘に向けて振り下ろす。
『理念、骨子、材質、技術、経験、年月──その全てを再現する』
スカルが放ったのは【真なる贋作】を生み出すユーベルコード。たちまちの内に花の御所が、純和風の装いから一変し、石壁造りの西洋風の城へと姿を変えていく。
「な……!? ア、アタシの御所が!?」
流石の富子も、余りの事態に呆然と立ち尽くす。
「これでお前は『花の御所内にいる』という優位性を失ったわけだ」
そして、そこには必ず付け入る隙が生まれるはず。スカルのその読みは、すぐに的中する。
「……動きを止めた。好機……」
メンカルがヴェールの障壁に新たに術式を加えて、動きを止めた富子に纏わりつかせた。
「おい、やめろ! アタシを縛り付けるんじゃねえ―っ!」
障壁は、今度は手足を縛る枷となり、富子の動きを制限する。
「おっと、ならば私は、その爪を封じさせてもらおう」
スカルは、今度は舘の庭園内にあった池目掛けて、タクティカル・スパインを振るった。すると池の水が油性塗料へと変化し、杖の動きに合わせて富子の爪に降り注いだ。輝きを帯びていた爪は、池の水を反映した青の油性塗料に塗り潰され、輝きを失う。
「ア、アタシの爪が!?」
「一度切り裂かれたとて、ただの爪に怯む私ではないよ」
爪が威力を失ったことに動揺する富子を、スカルはタクティカル・スパインで強かに打ち据えた。
「ここは一気に畳みかけるべきですね」
次に動いたのは、トリテレイアだった。トリテレイアは頭部と肩部に内蔵された銃火器を展開すると、その銃口を富子に向けた。――いや、違う。狙いは富子ではなく、その直上。花の御所の、今は石造りと変じた天井だ。薙ぎ払うように放たれた銃弾が天井に炸裂し、崩落した天井が富子を飲み込んでいく。
「とはいえ、仮にも第六天魔軍将の一人。これで終わるとは思えませんが……」
念を入れるように煙幕発生装置で天井が崩落した辺りを覆ったトリテレイアがそう呟くと、
「……なら、追い打ちをかける……」
メンカルが瞳を閉じ、魔力をその身に集中させていった。
『世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金』
彼女の呪文に合わせ、富子の頭上、崩落した天井のあった辺りから、数十トンはするであろう黄金の塊が落下してきた。
「……お金をもっているのが正義、と言うなら……それ以上の黄金には従うのかな……?」
天井の崩落に巻き込まれ、更には煙幕に巻かれていた富子に、それが金塊と判別できたかどうかは分からない。だが、恐らく避ける間もなく、富子は金塊の下敷きとなっていた。
「金塊に埋もれて死ぬか。金の亡者の最期にはふさわしいな」
スカルが、そう言ってタクティカル・スパインをしまおうとした時。
「待って下さい。センサーに感あり。敵性体の生存を確認しました」
『高感度マルチセンサー・収集情報解析ユニット』を展開していたトリテレイアが、警告の声を発した。直後、光が一閃し、金塊が真っ二つに切り裂かれる。
「この程度で、アタシが死ぬもんか……! この金塊も、アタシのものだーっ!!」
二つに裂かれた金塊を押しのけるようにして、富子が姿を現した。いつの間にか油性塗料を振り落としていた富子の爪は再び輝き、長く伸びている。富子はそのまま、最も近くにいたスカル目掛けて爪を目にも止まらぬ速度で一閃、いや九閃させた。
「くっ、これでも止まらないか……!?」
驚愕の声を発しながらも、全身を切り裂かれたスカルが飛び退く。
「聞きしに勝る執念。ですがその野望、ここで阻ませて頂きます」
代わりに前に出たのは、トリテレイアだ。全サ連メカニック班謹製の追加機動装甲を纏い、【フルアーマー・トリテレイア】へと姿を変じたトリテレイアは、『義護剣ブリッジェシー』を構え、富子目掛けて突撃していった。
「アタシの前に立つんじゃねぇ!」
富子は突っ込んで来るトリテレイアを、怒りと憎しみを込めた視線で睨みつけた。たちまちトリテレイアを、紫の炎の大爆発が飲み込んでいく。
しかし――、
「追加装甲、パージ。突撃、続行します」
損壊した追加装甲を脱ぎ捨てながらも、トリテレイアの足は止まらない。そして、富子が飛び退くよりも速く振るわれた『義護剣ブリッジェシー』の一閃が、富子の腹部を深々と切り裂いていたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
泉宮・瑠碧
…かつての戦はもう終わった筈なのに
火矢の怨霊達はずっと恨みに囚われているのか
僕は杖を手に
放たれた火矢の怨霊へは
飛んで来る射線を線で結びながら一点へ引き寄せ
第六感で射線の無い回避方向を見切り
跳んで一時回避
矢が追尾でターンする間の距離を取った後
杖を払う様に振って
浄化である破魔を宿した属性攻撃の水を放つ範囲攻撃
同時に飛沫を幾重に生み出して霧を作り
追尾で霧を通れば破魔で浄化される様に
火矢の怨霊を追加されても同様
反撃は精霊祈眼
氷の精霊に願い
漂う破魔の霧から作る氷柱で縫い留めたり
富子自身を凍らせて攻撃
視線は
水の壁を作り
屈折で距離感をずらそう
…欲というのは限りが無い
過去を繰り返す前に、怨霊達と共に眠ると良い
●火と氷
「ああ、いてえっ! なんでアタシがこんな目に遭わなきゃいけないんだよっ!!」
肩を刺し貫かれ、腹を裂かれ。さらには天井と金塊に潰されて。もはや日野富子は満身創痍だった。だが、その目に宿る生と金と権力への執着の炎は、未だに消えることはない。
「……欲というのは限りが無い。過去を繰り返す前に、怨霊達と共に眠ると良い」
杖を手に姿を現した泉宮・瑠碧(月白・f04280)は、そんな富子の姿を見て、哀れみすら覚えた。せめて速やかに骸の海へ送り返そうと、瑠碧が杖を振るおうとした時。
「また猟兵かよ! どんだけしつこいんだよ! もう誰かアイツをぶっ殺せよ!」
富子の周囲に、火矢の怨霊が次々と出現し、一斉に瑠碧目掛けて放たれた。
「……かつての戦はもう終わった筈なのに。火矢の怨霊達はずっと恨みに囚われているのか」
火矢の怨霊はただ一点、瑠碧のいる場所目掛けて殺到する。瑠碧は直感的に射線の死角を見切り、その矢の群れをかわした。だが、その程度で怨念と化した火矢達は諦めない。空中で向きを変えると、再び瑠碧目掛けて飛んでいく。
けれど。わずかでも時間を稼ぐことができれば、瑠碧には十分だった。
瑠碧が杖を払う様に振るえば、破魔の力を宿した水が広範囲に吹き出す。そして発生した水飛沫が、たちまちの内に霧を作り出した。
その霧の中に、火矢の怨霊は次々と飛び込んでいく。だがそれは、自ら破魔の力に浄化されにいく自殺行為だ。霧に巻かれた矢は次々と浄化され、消滅していく。
「ああもう、役に立たないな、怨霊共っ!!」
富子が、苛立ちと怒りを込めて瑠碧を睨みつけた。視線を向けられたものを爆発される危険なその視線に対し、しかし瑠碧は既に対策を打っている。瑠碧が再び杖を振るえば、床から噴き上がるように発生した水の壁が、富子の視線を塞いだ。
「そんな水の壁なんかあっても、そっち側は透けてるんだよっ!」
構わずに瑠碧に視線を合わせる富子。だが、爆発が起きたのは瑠碧のいる場所からわずかに逸れた位置だった。水の屈折率が、富子の視線をずらしたのだ。
その間に瑠碧は、逆に富子に視線を向けていた。
「氷の精霊よ、どうか、力を貸して……この願いを聞き届けて」
瑠碧のユーベルコード【精霊祈眼】は、視線を合わせた相手に、精霊の力を向けさせる力がある。氷の精霊達は瑠碧の願いを聞き受け、富子の周囲に漂う破魔の霧を氷へと変えていった。
「なんだ、これはっ!!」
そして富子が抵抗する間もなく、その身を氷の塊に変えていったのだった。
成功
🔵🔵🔴
チガヤ・シフレット
是空(f16461)と出撃だ
こりゃまた怖い顔の女が出てきたもんだ
はっはっは、金に執着してるやつは、いい感じに歪んだ顔してるなぁ?
もっと笑ったほうが良いぞ
っと、是空も相手が美人だからって加減とかするなよ?
気合入れていくとするか!
両手脚の整備は万端。耐久出力速度共に問題なし
敵の爪での攻撃をひたすらにメタルアームなどで防いでしのぐ
速度が追い付かなくなるならガントレットのコアを起動して魔力で補助
一瞬の隙をついてボロボロになった義手を切り離し、爆砕華!!
はっはっは、ビビったか?
そのあとは予備を装備しなおして是空と連携
派手に炎の華を咲かせて燃やしてやろう
さぁ、笑顔であの世へ!
向こうへは金は持って行けないぞ
無累・是空
チガヤ(f04538)と組むぞい!
たわけ。わしはもうちょい笑顔のキャワイイおなごが好みじゃわ!
こんな欲の面のつっぱった根性曲がりの癇癪持ちとか無理無理の無理じゃろ!!
まずは先制攻撃を凌がんとな。
【火炎耐性】【オーラ防御】、利用できるものがあれば【地形の利用】もか。煽れば狙いも分かりやすくなろうっちゅうもんじゃ。いや無理無理なのは本音じゃが。
『魂縛絶禁呪』でもって彼奴の術を封じる。【念動力】全開じゃ!
どこまで捕らえられるかは分からんが、効くまで縛るぞい!
止めさえすればあとはチガヤがなんとかするわい!
「魂魄掌握。汝の狼藉を禁ず」
●全てを焼き尽くす紫炎
「こりゃまた怖い顔の女が出てきたもんだ。しかもそれが氷漬けときた」
花の御所へとやってきたチガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)と無累・是空(アカシャ・f16461)が目にしたのは、怒りに歪んだ形相のまま凍り付いた、日野富子の姿だった。
「はっはっは、金に執着してるやつは、いい感じに歪んだ顔してるなぁ?」
氷像のように固まった富子の顔を覗き込むチガヤ。すると、富子を覆うように突如紫の炎が膨れ上がり、チガヤは慌てて富子と距離を取った。炎はたちまちの内に氷を溶かしていき、富子は息を吹き返したというように深く息を吐いた。
「……このアタシを凍らせるなんて、絶対に許さないっ! どいつもこいつも、皆殺しにしてやるっ!!」
もはや狂的なまでに顔を歪ませた富子に、チガヤが気安く声を掛ける。
「おいおい、あんたもっと笑ったほうが良いぞ」
それから首をひねって是空と目を合わせた。
「っと、是空も相手が美人だからって加減とかするなよ?」
「たわけ。わしはもうちょい笑顔のキャワイイおなごが好みじゃわ! こんな欲の面のつっぱった根性曲がりの癇癪持ちとか無理無理の無理じゃろ!!」
笑いながらそう返す是空。そんな二人の会話に、富子の額に青筋が浮かんでいった。
「お前達、好き勝手言ってんじゃねえ!!」
富子の爪が長く伸び、同時に怪しい輝きに包まれる。そのまま硬度を増した爪が、チガヤ目掛けて振るわれた。
「さて、気合入れていくとするか!」
チガヤはその爪を、両腕を盾代わりにして受け止める。
「ああ!? なんで切れない!?」
「両手脚の整備は万端。耐久出力速度共に問題なしだ!」
そう、チガヤはサイボーグレディ。その両腕は鋼鉄製の上、黄金で出来た『THE GAUNTLET』で覆われている。そう簡単には切り裂くことはできはしない。
「なら、これでどうだよっ!」
富子が、爪を振るう速度を速めていく。だが、チガヤはそれに合わせてガントレットのコアを起動。六つの魔導コアが光り輝き腕の反応速度を補助し、爪の攻撃全てを受け止めてみせた。だが、代償としてチガヤのメタルアームはボロボロになってしまう。
「アッハッハッ、もうこれ以上耐えられないだろう!」
勝ち誇る富子に、チガヤは凶悪な笑顔を向けた。
「ああ。おかげで腕がボロボロになったぜ。だから、『派手に吹き飛ばそう!』」
次の瞬間、チガヤはボロボロになった右の義手を分離した。そのままチガヤ自身は後方へバックジャンプ。そして切り離された義手は、その場で大爆発の華を咲かせた。至近距離での爆発に巻き込まれた富子が、衝撃で弾き飛ばされる。
「おのれ、おのれ、おのれぇっ! なら、お前らも燃やしてやるよ!!」
ボロボロになりながらも憤怒の表情を浮かべた富子の周りに、火矢の怨霊が次々と浮かび上がった。
「なんじゃ、いざとなったら怨霊頼みか。情けないのう」
是空がわざと挑発するように言えば、富子は怒りの矛先を是空へと向ける。たちまち火矢の怨霊が、是空目掛けて殺到していった。
(「おおう、これは無理無理じゃろう」)
心の中ではそんなことを思いつつも、是空は花の御所の柱や襖を巧みに利用しつつ、火矢をかわしていく。そしてどうしても避けきれない火矢は、火炎耐性を持たせたオーラで受け止めていった。
「おおう、熱い熱いっ!!」
それでも、全身に突き立ち炎を噴き上げる火矢に、思わず叫び声を上げる是空。
「やっぱり彼奴の術は厄介じゃな。ならばその術、封じさせてもらうとしようか。『念動力』全開じゃ!」
是空の神としての力の顕現たる神通念動力が、鎖状に具象化して富子に飛びかかっていく。万全の状態なら避けられたであろうその鎖を、しかし満身創痍の今の富子にはかわすことができなかった。
「くっ、何だこの鎖!?」
富子は爪で鎖を切り裂こうとしたが、逆に伸びていた爪が、見る見る縮んでいく。
「『魂魄掌握。汝の狼藉を禁ず』。これでお主の術は封じさせてもらったぞい」
飄々としてはいるが、是空とて己の神通念動力を全力開放してやっと富子を捕らえていられる状況だ。これ以上の追い打ちはおろか、この封印も、いつまで保つか分からない。
「じゃが、短時間でも止めさえすればあとはチガヤがなんとかするわい!」
それでも、仲間を信じているからこそ、是空は全力を投入できる。
「ああ、後は任せな。派手に炎の華を咲かせて燃やしてやろう」
チガヤは、鎖に動きを封じられた富子に、残った左の義手を向けた。
「さぁ、笑顔であの世へ! 向こうへは金は持って行けないぞ!!」
そして、左の義手をロケットパンチのように撃ち出す。義手は高速で飛んで富子の顔面に激突すると、直後に大爆発の華を咲かせた。
「ふざけるなよ、おい……。こんな所で……お前らなんかに……このアタシが!!」
富子の身体が、ゆっくりと仰向けに倒れていく。直後、常に彼女の身体を覆っていた憤怒の紫炎が、制御を失って富子自身の身体を瞬く間に焼き尽くしていった。
そのとてつもない財力と尽きることない怒りでサムライエンパイアを思うままにしようとした『大悪災』日野富子は、そのまま骸の海へと帰っていったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵