エンパイアウォー⑳~怨念の炎を燃やす大悪災
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サムライエンパイアで繰り広げられる『エンパイア・ウォー』。
現状、織田信長を撃破する為、進軍を行う徳川幕府軍を守りつつ、猟兵達は信長軍との交戦を続けている状況である。
京都『花の御所』。
そこは、室町時代、足利将軍家の邸宅だった場所だ。
「金、金、アタシの金……!」
オブリビオンとして蘇った富子はこの地に豪華絢爛な御所を作り、住み着いていた。
「ハァ? 猟兵が攻めてくる? 何やってんだ、使えない連中だな……!」
当時、幕府でも大きな影響を与えていたという日野富子。
彼女の様子は歴史書にいくつか残っており、悪女、守銭奴という記録が残っているが……。
今、オブリビオンとして蘇ったこの大悪災は、それらの面が強く出ているようだ。
癇癪を起こす彼女は辺りかまわず苛立ちをぶつけ、憎しみの炎を燃え上がらせる。
「ああムカツク! ああああムカツク! どいつもコイツも、アタシが殺してやる!」
その怒りはとどまるところを知らず、徳川に、猟兵に。そして、織田信長にすらも向けられていた。
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グリモアベース。
エンパイア・ウォーに進展があったようで、多数の猟兵達が情報を求めている。
そんな中、セレイン・オランケット(エルフの聖者・f00242)が自身の集めた情報を説明していた。
「大悪災『日野富子』の居場所が判明したわ」
彼女は京都某所の『花の御所』にいる。わざわざ、自らの富をはたいて作らせた建物なのだそうだ。
この地、新築されたばかりで、贅沢の限りを尽くした御所内での戦いとなる。
華やかな装飾、意匠がこらされた御所内部で、華やかながらも激しい戦いを繰り広げることとなるだろう。
「ただ、相手は強敵オブリビオンよ。幾度も討伐が必須になるのは間違いないわ」
セレインが案内するこの戦いも、そのうちの1つだ。
この日野富子だが、確実に先制攻撃を仕掛けてくる。
先制攻撃のタイミングで行う攻撃は、猟兵が使うものと同じ能力のユーベルコードだ。
彼女に攻撃を加える為にはこの先制攻撃を防ぎ、反撃を繰り出す手段を考えねばならない。
下手に攻撃することだけ考えて特攻でもしようものなら、相手のダメージすら与えられずに返り討ちに遭ってしまうことだろう。
対策を講じても不十分であれば、苦戦に至る可能性もある。効果的な手段をできるだけ考えておきたい。
「異常なまでに、お金と権力に固執するこの大悪災……放置するわけにはいかないわ」
彼女を取り逃がせば、後々の戦いにも何らかの形で介入してくる可能性がある。
だからこそ、この場でしっかりと大悪災『日野富子』を叩き、仕留めておきたい。
「どうか、この戦いに参加を。よろしくお願いするわ」
セレインはここまで話を聞いてくれた猟兵達へと、改めて戦いへの参加を願うのである。
なちゅい
猟兵の皆様、こんにちは。なちゅいです。
当シナリオを目にしていただき、ありがとうございます。
エンパイア・ウォー、大悪災『日野富子』との一戦です。
こちらのシナリオは、1章構成のボス戦です。
以下の特殊ルールが適用されます。
●特殊ルール
大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
『花の御所』での戦いに特別なルールはありません。
場所、立地を生かして思う存分敵と戦うと、華やかなシナリオになると思われます。
●シナリオフレームについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイア・ウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●執筆予定
できるだけ早く、全参加者一括執筆予定です。
これまでの戦争シナリオから、以下のパターンになることが多いです。
10名様以上で優先執筆。
6~9名様で、他作業の予定に組み込みつつ執筆。
5名様未満で、最初参加者失効前日(だいたい3日後くらい)まで待って執筆。未クリアーで個別参加、完結を目指します。
シナリオの運営状況はマイページ、またはツイッターでお知らせいたします。
それでは、行ってらっしゃいませ。
第1章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
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POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆行動
花の御所が金ぴかですねー
視覚的に惑わされ易いとも言えますが
【第六感】で先制攻撃の気配を感じたら
【気合い】を入れ防御体勢を整えるのと同時に
『徳政令』と書かれたキラキラした紙を【念動力】で
富子の眼前にばら撒き視界を奪いましょう
その隙に【空中戦】の応用で天井に飛び付き
【毒使い】で誘眠効果のある毒を撒きましょう
あまりにも視界と感情に依存し過ぎている、それが弱点です
以上を以て【黒竜の邪智】の証明としましょう
何かを為す為にお金を追い求めた当時の貴女はむしろ革新的だったと思います
でも何も為せない今の貴方は否定しましょう
他でもない貴方自身の為に
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
芦谷・いろは
史実としては
彼女の行いは決して悪だけではなかった~って感じなんですけど…
オブリビオンって酷いですね
彼女自身が守りたかった国まで怒りで壊してしまいそうになるんですから
【SPD】
折角の京都、豪華絢爛な御所なのですから《礼儀作法》はしっかりと
あやつり人形さんもおめかしして
《誘惑》等有用そうな技能を使って いろはの方に相手の気を向けさせて
一気に身体の力を抜きますよ、戦意喪失に見えるかもですね~
相手に先制攻撃をして頂き『オペラツィオン・マカブル』を使用します
痛いのは嫌いなんですけど
少しは頑張らないと この世界壊れたら後味わるいじゃないですか
猟兵じゃない方も頑張ってるみたいですしね
梅ヶ枝・喜介
なんでい!ドギツイ顔をしなさるが別嬪さんじゃねぇか!
そしてこの気迫!
流石!一度は天下を統べるトコ手をかける直前まで行っただけのことはある!
ちくっと話も聞いてみてェが…そんな空気でも無いか!
アンタが活躍しなさったのは遥かに遠い過去の事!
アンタにゃアンタの理が在ろうが、今の世には今の世を慈しむ仁が在る!
悪ぃナ!討たせて貰うゼ!
視線を避けるなんておれには出来ん!
せいぜいが爆発する勢いを流すために後ろに跳ねるくらいよ!
だが!これは後退じゃあねえ!助走の為の合間!
下がると同時に地面をブッ叩き!土煙にて炎を消し!視線を遮る!
たっぷり勢いを付け、煙を突き破って突貫するぜ!
どうにか相討ちくらいにゃ持っていく!
ヒューベリオン・アルカトラズ
■心情
気の強い女性は嫌いではない。亡き妻も怒った時はあんな感じだった......(しみじみ)
だが、このオブリビオンには妻のような可愛げはないようだ。悪いが始末させてもらう。
苛立ちを感じた者を追跡するユーベルコード......ならばあえて最初の一撃で派手にやられたように見せ、爽快な気分にさせてやろう。怨霊をやり過ごし、私から注意が逸れたタイミングで不意打ちを叩き込む。お前の憎しみの炎、我が炎で焼き尽くしてやろう。
ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK
武器の零刀(未完)をナイフに変貌
憎悪と強欲だけの人…ね
【残像10】や【迷彩10】で当たり難くし、【念動力10】で室内になる装飾品を私の前に移動させ急所をガード
命中して燃えたら【火炎耐性10】で我慢
アタシの前に立つんじゃねぇ!ですか…確かにわたしは役不足…。
なら『あなたの前に立ちはだかるのは誰』ですか?どなたが来るか楽しみです
Lost memoryでユーベルコード封じと効果無効狙い
(弱点;p見えないと使用不可・s寿命が減る・w苛立たないとダメ)
花やカエルなどから調合した視力低下をさせる毒【毒使い10】で攻撃しつつ使用し【暗殺108】
良い情報を見つけたら大事に【盗み10】で回収
ファラン・ウルフブラッド
【アドリブ・絡み歓迎します】
金に妄執し、権力を振りかざし、民を苦しめる俗物・・・・ふん、敵ながら我が愚父どもを思い出させてくれるではないか。その首、斬り落とさねば腹の虫が収まらぬな、これは。
【行動:POW】
憎悪の炎への対処は技能『火炎耐性』を使用し、更に自身の焔を利用して陽炎の『残像』を作り出して認識をずらす事で直撃を避けます。
「何度も使える手ではないが、一瞬の隙が出来れば重畳!」
こちらの手番で『ダッシュ』して一気に距離を詰め、『UC:居合い斬り』による『力溜め』からの『早業』の『二回攻撃』で攻撃します。
「足利家に取り憑いた鬼女よ。その怨念を抱えたまま、地獄へ行くがいい!」
アイン・セラフィナイト
すごい執念だね……サムライエンパイアの全てのお金は自分のもの、なんて思ってそうだ。
……子供のボクだって分かるよ。あなたのその力は、絶対に良くないものだってことが。
火矢の怨霊は、ボクの装備『忌み断ちの魔導鏡』『神封の書』『乖離咒・災禍封滅』で三重の『オーラ防御』だ。
もちろん、このままじゃ防戦一方、どうすることもできない……けど!!
オーラに護られながら、【双翼の聲】で召喚する!不可視の鴉たちを魔法の座標点にして、360度、豪雨の如く『動物使い・属性攻撃・全力魔法・高速詠唱』で魔法の光弾を浴びせるよ!!
フォルター・ユングフラウ
【WIZ】
【古城】
金金金と、うるさい守銭奴だ…丁度良い、少し「口撃」してやるか
世の中、似た顔が3人はいると聞く
どうも、我と貴様は容姿が似ているらしい
…が、過去の残り滓如きと同列に語られるのは甚だ不快
─よって、消えろ
この挑発で、先制攻撃の火矢が向かって来るであろうな
だがそれは、トリテレイアが凌いでくれる
我はその背後より、呪殺弾で援護射撃をする…という手筈だ
奴の攻撃を凌げば、本番よ
煙幕に隠れUCを発動し、我が巨体にて御自慢の屋敷を完膚無きまでに破壊し尽くしてやる
むしろ、守銭奴よりも屋敷破壊に執心したいくらいだ
噛み付きや巻き付きで奴を捕縛出来れば、騎士目掛けて投げ飛ばす
巻藁の如く斬り捨てられるが良い
トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
日野富子…あの怒りと所有欲は今を生きる人々にとって脅威
倒しておきたいところですが…なんだかフォルター様に似ているような
フォルター様を●かばう為、センサーでの●情報収集から火矢の軌道を●見切り頭部、肩部格納銃器の●スナイパー射撃で撃ち落としつつ、二刀流(●二回攻撃)での●武器受けで矢を叩き落とします
此方に注意が向いたら視線を遮るように背負った盾を投げ爆発を防御(●盾受け)
変身スペースの確保目的で御所の天井を銃器で破壊し、●防具改造で装備した煙幕発生装置で●目潰ししつつUCの電磁バリアを張り、フォルター様の変身を支援
…どっちが悪役なのでしょうと御所の惨状を見て思いつつ、二刀流で切り捨てます
●
サムライエンパイア、京都『花の御所』。
この地に潜む大悪災の討伐の為、複数の猟兵達が訪れる。
「金ぴかですねー、視覚的に惑わされ易いとも言えますが」
贅の限りを尽くしたその屋敷を、黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)が見回す。
なお、ブラックタールのミコではあるが、今回は美少女の姿をとっての参戦だ。
「憎悪と強欲だけの人……ね」
長い金髪、オッドアイのダンピール、ハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)が『零刀(未完)』をナイフに変幻させつつぼそりと呟く。
史実において、彼女の行いは決して悪だけではなかった。
白い髪に大きな目、子供の手を引くように連れた大きな人形が印象的な芦谷・いろは(傀儡使い・f04958)はそう認識しているのだが。
「……オブリビオンって、酷いですね」
過去となり果てた日野富子がオブリビオンなる怪物に変異すると、彼女自身が守りたかった国まで、怒りで壊してしまいそうになってしまう。
その存在の異様さを、いろはは改めて実感していた。
御所に突撃した一行は程なく、広間で待ち受ける1人の女性を目にする。
「なんでい! ドギツイ顔をしなさるが、別嬪さんじゃねぇか!」
三度笠を外し、武者修行中の少年、梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)が率直に敵の姿の印象を告げるが……。
「ああ、ムカツク……。 ああああ、ムカツク!」
すでに、癇癪を起こしている大悪災『日野富子』だ。
「気の強い女性は嫌いではない。亡き妻も怒った時はあんな感じだった……」
漆黒の衣装を纏うダンディ銃使い、ヒューベリオン・アルカトラズ(贖罪者・f18986)は、かつて愛した女性のことをしみじみと思い出す。
ただ、睨みつけてくるその眼光は、並の者ならば射抜かれただけで身を竦めかねぬほどに威圧させられる力がある。
「この気迫! 流石! 一度は天下を統べるトコに手をかける直前まで行っただけのことはある!」
喜介は少しでも話をしたいと考えたのだが、どうもそんな空気ではないらしい。
「金、金、アタシの金……猟兵なんぞに渡すものか……!」
こちらを憎々しげに睨みつけてくる富子は話を聞くどころか、すぐにでも襲ってきそうな勢いだ。
「だが、このオブリビオンには妻のような可愛げはないようだ」
ヒューベリオンはすぐに大悪災の妄執を感じ取り、軽く首を振った。
「すごい執念だね……。サムライエンパイアの全てのお金は自分のもの、なんて思ってそうだ」
青髪のドラゴニアンの少年、アイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)は自身がまだ子供だと自認しているが。
「……子供のボクだって分かるよ。あなたのその力は、絶対に良くないものだってことが」
アインにも分かりやすい程に、敵は本能をむき出しにして周囲へと敵意を向けている。
――金に妄執し、権力を振りかざし、民を苦しめる俗物。
黒い陰陽服を纏う長身の剣士、ファラン・ウルフブラッド(深淵を歩く剣王・f03735)は目の前の大悪災と思い出中の人物を重ねて。
「……ふん、敵ながら、我が愚父どもを思い出させてくれるではないか」
そんな印象を抱き、ファランはあからさまに顔をしかめる。
「その首、斬り落とさねば腹の虫が収まらぬな、これは」
「あああ、返り討ちにしてやるよ!」
ファランの言葉に応じて憎悪の炎を燃え上がらせ、大悪災は猟兵達へと向かってくるのである。
さらに、ギリギリ開戦に間に合った2人の人物が大広間へと駆け込んできた。
「日野富子……あの怒りと所有欲は今を生きる人々にとって脅威」
今回の猟兵達の中で、一際目に付く体躯を持ち、全身白を基調としたカラーリングのトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、目の前の存在を倒すべきと確信するが。
「……なんだか、フォルター様に似ているような」
そこで、トリテレイアは【古城】なるチーム名でペアを組むフォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)の方を見る。
そのフォルターは傲岸不遜、冷酷無慈悲といった言葉が人間になったような人物である。
「金金金と、うるさい守銭奴だ……。丁度良い、少し『口撃』してやるか」
当のフォルター本人は、前方の女性オブリビオンに激しい不快感を抱きながらも、この戦いに加わっていくのである。
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爛々と目を輝かせ、自らの欲望を解き放つ大悪災『日野富子』。
「アンタが活躍しなさったのは、遥かに遠い過去の事!」
そいつに向け、喜介が突撃していく。
「アンタにゃアンタの理が在ろうが、今の世には今の世を慈しむ仁が在る! 悪ぃナ! 討たせて貰うゼ!」
だが、向かい来る猟兵達に向け、彼女は憎悪の籠った視線を投げかけてくる。
「アタシの前に立つんじゃねぇ!」
彼女は向かい来る猟兵達を燃え上がらせようとする。
紫の炎は爆発を巻き起こし、富子が消えろと念じるまで消えはしない。
「視線を避けるなんて、おれには出来ん!」
いっそ、すがすがしく正面からの対応策がないことを認めて見せる喜介だが、ただやられるはずもない。
彼は燃え上がる炎は甘んじて受けたが、そこから広がる爆発は勢いを流す為、後方へと大きく跳躍した。
力で攻めようとしたメンバー全員に、その炎は襲い掛かる。
直感で炎が来ることを察したミコは気合を入れて、防御態勢をとった。
「直撃を受けるわけにはいきませんね」
ミコは対策として、『徳政令』と書かれたきらきらした紙を念動力で富子の眼前にまで飛ばしていく。
「ああ、ああああ、うっとうしい!」
富子はそれらも纏めて燃やしつつ、猟兵を視認していた場所目がけて紫色の炎を燃え上がらせる。
ファランは持ち前の火炎耐性と自らの焔を利用して陽炎の残像を作り出し、認識をずらして直撃を避けていた。
「何度も使える手ではないが、一瞬の隙が出来れば重畳!」
相手の一撃を避けたファランはすぐさま、反撃に打って出る。
ハルピュイアも迷彩と残像を合わせ、居場所の認識をずらしていた。
さらに、室内の装飾品を念動力で強引にもぎ取り、ハルピュイアは自分の手前に移動してガードしていく。
飛んでくる紫の炎が爆発し、大きく燃え上がる。
それでも、燃焼してしまう分は、ハルピュイアも火炎耐性で乗り切っていたようだ。
先制攻撃の炎に耐えきったミコは跳躍して、天井に飛びつく。
ミコはそのまま誘眠効果のある毒を富子に向けて散布するが、身を包む炎は自らを守る為の壁ともなっているらしく、なかなか効果は現れない。
「『アタシの前に立つんじゃねぇ!』ですか……、確かにわたしは役不足……」
そんな敵に、ハルピュイアが呼びかける。見えなければその炎は命中しない、と。
「なら、『あなたの前に立ちはだかるのは誰』ですか? どなたが来るか楽しみです」
「そんなの、お前達猟兵に決まってんだろ!」
だが、ハルピュイアの言葉に反して、現れたのは……。
「義尚……」
目の前に現れたのは、富子の実子である室町幕府第9代将軍、足利義尚。初めての息子とあって、彼女は相当に溺愛していたと言われている。
ハルピュイアの【Lost memory】によって、富子はしばし、ユーベルコードを封じられることとなる。
個々で攻めていれば、富子が言うように返り討ちにされていたかもしれない。
だが、この場の猟兵達は攻めながらも、互いの行動によって追撃から逃れることができていたようだ。
それは、特攻していた喜介も同じ。
「これは後退じゃあねえ! 助走の為の合間!」
喜介は炎と爆発を避けるべく後方に跳んでおり、床をぶっ叩いて炎を消そうとした。
幸い、仲間達が敵の視線を遮ってくれており、攻勢のチャンスと疑わない彼は木刀を手にし、勢いをつけて一気に仕掛ける。
「せめて、相討ちくらいにゃ持っていく!」
「アタシの前に立つなといっただろ!」
とはいえ、さすがに富子も我に返って応戦してくる。
しばしの間、ユーベルコードが使えぬ富子だが、自前でも十分戦う力を持っている。属性魔法の類で、燃え上がる炎を彼女は直接喜介へとぶつけてきた。
突貫した喜介の木刀は確かに、富子の胴を捉えたが、彼女の炎は彼の全身を包み込む。
「そんな手でアタシが負けるかよ……!」
「とどかねェ、か……」
これにはさすがに喜介も立ってはいられず、崩れ落ちてしまう。
しかし、このタイミングをチャンスと見たのはトリテレイアとフォルターの【古城】コンビだ。
トリテレイアは自らに飛んできた炎は背負った盾を投げたことで、爆発を防いでいたが、フォルターが仕掛けるタイミングで彼女の盾となるべく、敵を見据える。
「世の中、似た顔が3人はいると聞く。どうも、我と貴様は容姿が似ているらしい」
この間、仲間達が牽制の攻撃を仕掛けている。
富子が防戦一方になる中、攻撃に加わりたくとも加われないメンバーも。
メンバーによっては、敵の先制攻撃を凌げていない。
いつユーベルコードが使用可能になるかを考えれば攻め込むことが難しく、戦況を見守っていたのだ。
その間も、交戦を続ける富子へと、フォルターが呼びかけを続ける。
「……が、過去の残り滓如きと同列に語られるのは、甚だ不快」
─―よって、消えろ。
じっと、フォルターは仲間達が富子の体力を削るのを見ながら、相手がユーベルコードを使用可能になるタイミングを待つ。
忌々しげに睨みつけていた敵の形相が一瞬、緩む。
「クソッ、使えない連中だ。早くアイツらをぶっ殺せ!」
それまで自らのユーベルコードが使えぬ状況に苛立っていた富子が叫ぶと、多数の火矢の怨霊達が姿を現す。
かつて、富子自身も大きく関わったとされる応仁の乱で飛び交った怨霊達が、富子の命に従い、猟兵達を狙う。
アインもその1人。
迂闊に攻撃に出られずにいたが、アインは『忌み断ちの魔導鏡』による結界、『神封の書』で作り出した防御壁、霊符『乖離咒・災禍封滅』で展開した魔力のオーラと、三重のオーラ防御で怨霊の攻撃を防ぐ。
(「もちろん、このままじゃ防戦一方、どうすることもできない……けど!!」)
だが、やり過ごせば、アイン自身も戦列に加わることができる。ここは踏ん張りどころだ。
同時に、フォルターにも火矢の怨霊は飛んできていたのだが、彼女は悠然と構えていた。
盾として待ち構えていたトリテレイアがセンサーでその火矢の軌道を見切り、頭部と肩部に格納した銃器から発砲し、火矢を次々に撃ち落とす。
その後方、フォルターも黙って見てはおらず、回転式拳銃から呪殺弾で援護射撃して富子にダメージを重ねていく。
そんな中、敢えて敵がユーベルコードを再利用可能になるまで待っていた2人の猟兵達。
(「苛立ちを感じた者を追跡するユーベルコード……」)
ヒューベリオンは富子が発してくる火矢の怨霊から逃げるように立ち回っていたのだが、ある程度音量が集まったところで囲まれてしまう。
「やれ、ぶっ殺せ!」
怨霊は一気にヒューベリオンへと襲い掛かる。
いろはも別の方法で、敵の気を引いていた。
「折角の京都、豪華絢爛な御所なのですから、『礼儀作法』はしっかりと」
連れていたあやつり人形におめかしして戦いに臨むいろはは、誘惑の技能を使って富子の意識を自らへと向けていた。
「アタシのジャマをするな!」
苛立ちげに爪を輝かせてくる敵を迎え撃ついろはは、一気に体の力を抜く。
富子は猟兵達に代わる代わる攻撃を受ける中、執拗に彼女へと長く伸ばした爪で連続攻撃を繰り出してくる。
「ぶっ殺してやるよ!」
富子に滅多切りにされ、全く抵抗しないいろは。
同時に、火矢の怨霊がヒューベリオンを包み、燃え上がるようにして彼は崩れ落ちていく。
すでに、猟兵サイドは1人倒れている。
周りの猟兵達はこれ以上被害を拡大させぬ為、救出に乗り出すのである。
●
仲間達が交戦を繰り返す中、トリテレイアは御所の天井を銃で打ち抜き、破壊していく。
さらに、彼は煙幕を発生させて敵の目を潰そうとした後、攻勢電磁障壁発振器射出ユニットを発して電磁バリアを展開していた。
その準備が整ったところで、フォルターがユーベルコードを使って。
「光栄に思え─―我が真の姿によって朽ち果てることを」
彼女はその体を巨大化させ、全長6~70mほどある9つ首の大蛇へと変身する。
大悪災の討伐に興味がなくはないが、それ以上にこの豪華絢爛な屋敷の破壊をと、フォルターは日野富子自慢の御所を完膚なきまでに破壊していた。
「……どっちが悪役なのでしょう」
御所の惨状を見つつ、トリテレイアは仲間達と敵の討伐に加わっていく。
そんな中、いろは、ヒューべリオンの2人の救出に入る猟兵達。
しかしながら、様子がおかしい。
富子に攻撃を受け続けていたいろはだが、全く傷ついてはいないのだ。
「戦意喪失に見えるかもですね~」
――ユーベルコード【オペラツィオン・マカブル】。
敵の攻撃を全て、いろはは連れていた操り人形から放出して無効化していたのだ。
「痛いのは嫌いなんですけど……」
いろはは一通り、富子の攻撃をしのぎ切ると、脱力状態を解く。
「少しは頑張らないと、この世界壊れたら後味悪いじゃないですか」
この世界では、武士達など猟兵ではない人も頑張っている。
だから、いろはも富子の爪で傷つきながらも、人形を操って応戦を開始していた。
「くっ、面倒なことしやがって……!」
青筋を浮かべる日野富子がいろはに気を取られていると……。
「悪いが、始末させてもらう」
いつの間にか起き上がったヒューべリオンが黒い殺気を発しながら、炎の剣による爆炎で富子の体を焼き払おうとする。
「お前の憎しみの炎、我が炎で焼き尽くしてやろう」
「こいつ、火矢で殺したはずじゃ……」
驚く富子へとヒューべリオンはさらに燃え上がる刃を振るっていく。
彼は超高熱の黒炎で出来た鎧を纏っており、火矢を全て耐えきっていたのだ。
だが、不意打ちにも富子は対処して見せて。
「あああ、ムカツク! ああああ、ムカツク!!」
伸ばした爪による猛攻は、ヒューべリオンを押していく。イロハと合わせて2人がかりではあるが、富子の方が優勢なのは間違いない。
メンバー達の攻撃の合間を見て、入れ代わり立ち代わり攻撃を仕掛ける。
ハルピュイアは何かいい情報は得られないかと、仲間達の戦いを注視してはいたが、合間に攻撃をと調合した毒を投げかけていく。
花、カエルといったものから調合したハルピュイアの毒薬は、視力低下をもたらす。
少なからず、それは、富子にも影響が出始めていたはずだ。
「アタシの前に立つんじゃねぇよ!」
この場のメンバー達を睨みつける富子。御所がいつの間にか破壊されてきていたのも少なからず影響はあったろう。
多数のメンバーを相手にしてなおほとんど怯む様子もなく怒りをまき散らし、紫炎に爪、紫炎と手を止めることなく攻撃を続けてくる。
「アタシの邪魔をするな!!」
近づく猟兵には爪を振るい、周囲へと炎をまき散らし、この悪女は手が付けられない。
「誰かアイツらをぶっ殺せ!!」
欲望への執着、憎悪、怒りこそ彼女の原動力。それが燃え続ける限り、大悪災が止まることはない。
オーラで自らを護りつつ、アインはユーベルコードを使う。
「万象馳せる自在の翼、魔を震わす声を以て羽撃け!」
アインが呼び出したのは、99匹の不可視の鴉。
それらを魔法の座標点とし、アインは全力で富子へと360度、豪雨のごとく魔法の光弾を浴びせかけていく。
「ああ、あああああ!!!」
光弾を浴びる富子は傷つき、衣服をぼろぼろにし、白い肌から血を流し、それでも周囲へと怒りの感情をぶち撒ける。
あまりに弱点がわかりやすい敵へ、ミコが告げる。
「あまりにも視界と感情に依存し過ぎている、それが弱点です」
「ああ!?」
睨みつける敵にも怯まず、ミコは敵のユーベルコードの弱点を指摘する。
実証などが必要ないのは見たままだ。
すぐさまミコのユーベルコード【黒竜の邪智】に応じて現れた無数の竜の残骸が富子の周囲へと絡みつく。
何かを成す為にお金を追い求めた当時の日野富子なる人物は、むしろ革新的だったとミコは評価する。
「でも、何も為せない今の貴方は否定しましょう。他でもない貴方自身の為に」
すると、再び富子のユーベルコードが封じられる。
「クソッ、またかよ……!」
今度は皆、待ちはせずに一気に仕掛ける。
フォルターがその巨体を生かし、富子の体を巻き付けて捕縛した。
「ああああ、離せ、離せ!」
「巻藁の如く斬り捨てられるが良い」
彼女はまるでボールのように、騎士……トリテレイアへと富子の体を投げつける。
すると、トリテレイアは両手に持つ『義護剣ブリッジェシー』と『儀礼用長剣』を二刀流し、敵を切り捨ててしまう。
だが、全身血まみれになりながらも、なおも富子は紫の炎を燃え上がらせて。
「あああああ!! こいつらこいつらこいつらああああ!! ぶっ殺してやる!!!!」
殺意を高める富子は一層強く炎を燃え上がらせる。
その時、力を溜めながら一気に距離を詰めたファランが『神剣バルムンク』を抜いて。
「足利家に取り憑いた鬼女よ。その怨念を抱えたまま、地獄へ行くがいい!」
目にも止まらぬ速さで、ファランは日野富子の体を切り裂いていく。
「か、ああぁぁっ……」
ファランの刃を浴びた富子の周りで、それまで燃え上がっていた紫の炎がふっと消える。
まるで、ろうそくの火が……命の灯が消えたのに似て。
「ぶ、ぶっこ、ろ……」
大きく目を見開き、大悪災はこの場から消えてしまったのだった。
日野富子を討伐した猟兵達。
しかし、また日野富子はこの御所と共に躯の海から復活してしまうのだろう。
猟兵達はその次なる復活を待たずして、別の戦場へと赴き、新たなオブリビオンとの戦いに向かうのである。
大成功
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