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エンパイアウォー④岩と修羅

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 グリモアベースのどこか暗い部屋。
 キル・トグ(空の語り部・f20328)は猟兵を前に言の葉を紡ぐ。
「さて皆さま、御大将軍家光殿の治世なるこの帝国に戦の香りが漂って参りました」
 此度の戦、いかに兵を保つかが肝。
「将軍率いる幕府軍十万、言えば数字にすぎぬのではありますが、全員が足軽ではございません」
 鉄砲担ぎから飯炊きまで、兵のあり方は多様なのでございます。
「それはさておき火事場に紛れて駿河国が一大事」
 織田方魔神将が1人コルテス、配下を繰り絶賛暗中飛躍との知らせ。
「舞台は富士の山、地脈豊かな霊峰と広く知られております」
 そして大層美しくとも何より活火山、元々いつ噴火しても不思議では無いのではありますが。今回はワケが付いてございます。
「なんとコルテス富士を怒らせんと、配下に命じケツァルコアトルなる幼竜を生贄に捧げる儀式の算段をつけているようで」
 このままでは富士の山、あれよあれよと灰を吹き、お天道様を隠してしまい、田畑は荒れ放題、飛脚の足も回らず大江戸は火事が起きた様に大混乱、民草を見限るわけにもいきませんので織田勢との戦の前ではありますが泣く泣く幕府十万の兵より二割ほど支援へ回す事になりましょう。
「かくなる上は広い樹海のどこか祭壇に括り付けられた幼竜の首を断ち切らんとする不届き者を成敗せねばなりません」
 そしてどうやらこの儀式、樹海に広がる地脈を喰らって行うようで、隠された祭壇の在り処未だわからず。
「わたくしの方でも調べは致しますが、いかんせん相手は日の目に当たらず動いているのでございます」
 幼竜隠れるは広大な樹海。それでも地元の先達に聞くと最近どうも北の洞窟にある湧き水が暖かいとか蛇の精を見かけただのいいや亀の精だっただのと何かしらの兆候は起きている様で。
「長々と話しているうちにもう噴煙が上がって来ている様な気がしてまいりました、うかうかしているといつの間に儀式が終わるか判ったものではありません」
 兵は神速を尊ぶと云われにあります様に、皆様、神風修羅となりて獲物を狩り出そうではありませんか。
 と、彼女は猟兵達を送り出したのであった。


 深淵が潜む暗き岩屋の下。
「ワレ水ヲ繰ル武神ニシテ夜ノ黒ヲスベルモノ、ナレバ火ト陽ノ司ナルコノ竜ヲ喰ラウハ必然」
 祭壇に縛り付けられ苦しそうに鳴く幼竜の前、かつて聖なる獣から滴った記憶の雫が暗闇の中に蠢いていた。


柄縞倉庫
 ほんとうのほんとうにはじめまして、柄縞倉庫です。

 そうだ埋蔵金を探そう、と5日の夜に思い立ちそのまま書き上げるといつのまにか神隠しに遭っていました。ですから私は修羅となったのです。

 というシナリオです、正に遅速を歩む。

 なんかスケジュールと戦力的にフジヤマがヤバそうだけど大丈夫、修羅が何人かいればまだ間に合います、多分。

 ただし、私が修羅になりきれるかはまだ分かりません。

 初MS業務で至らないところは多々あると思われますが、お力添えのほどお願いします。

 ●以下留意事項です

 ・このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。はい。

 ・修羅(猟兵)の皆様におかれましてはプレイングの提出期限【8月8日22時30分】とさせて頂きます。

 ・修羅(プレイング提出者)が少なく達成値を満たせない場合、執筆は控えさせて頂きます。

 ・当シナリオはボス戦となりますが探索や捜索、又は敵の弱点ズバリなプレイングを書かれるといいことがあるかもしれません。

 ・何もありませんがMSページもどうぞ。
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第1章 ボス戦 『黒翡曜』

POW   :    地天の甲
全身を【堅牢地神の加護により硬質】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    銀砂の星
対象のユーベルコードに対し【長尾から発生させた光粒】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    気嵐の夢
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:山庫

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠弦月・宵です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ネリネ・リード
ヒュー、フジヤマ大噴火…!派手でイイじゃん…、って、冗談だって。じょーだん。真に受けんなよ。
マジでンなコトになりゃあ、洒落ですまねーよな。
んじゃ、とっととその、儀式?やろうってふてーヤツ、見つけてさ。ぶっ飛ばそう。

あ?探索?ムリムリ。
さっきからスマホの電波ねーし。GPSとか言ったって使いモンになんねーの。
はァ?この国、スマホ使えねーの?マジかよだりぃ…。



……あー、探索じゃ役立たずだったしな。
その分、戦う方は頑張んねーとな。ま、見とけって。

破砕の剛腕のギミックをフル稼働して、渾身の一撃をブチかます…!
コレが、今のアタシの全力全開ってなァ…!
(【武器改造】【力溜め】【怪力】【鎧砕き】【属性攻撃】)


御形・菘
火山を噴火させようという壮大な企みは素晴らしい!
しかーし! そのために幼い竜を生贄にするというやり口は、どーにもイケてないの~

捜索にはドローンの天地を活用しよう
上空から、洞窟の入り口らしき穴を探すぞ
樹海の北の方が怪しいのかのう? 
発見したら即突っ込む!

さて、属性モリモリで随分と強そうではないか
だが妾も闇とか色々とカッコ良い属性持ちよ!
火を喰らいたいなら特盛でプレゼントだ!
右腕を高く上げ、指を鳴らし、さあ鳴り響けファンファーレ!

はーっはっはっは! いくら守りを固めようが関係ない!
聞いた者の心に食い込み、内側から問答無用で燃やす!
そして動けず妾に気を取られるなら、仲間がその隙を見逃すはずあるまい?


フィロメーラ・アステール
「時は一刻を争うってわけだな!」
超特急で【救助活動】するか!
修羅ってヤツになってやろうじゃん!

【第六感】の霊的センスを拡大する【失せ物探し】の探知魔法で、地脈の異常を感じ取り、儀式の場所を探すぜ!
近くに来れば【聞き耳】でも何かキャッチできるかな?
【ダッシュ】で現場に乗り込んで敵と戦うぞー!

敵は、なんか大地の加護っぽいので固くなるっぽいな!?
じゃあ【成層圏・重力隕石落とし】を使うか!

この【踏みつけ】には地形を破壊する効果がある!
つまり大地を砕くパワー!!!
大地の加護が相手なら効果抜群……かも?
【全力魔法】を込めて【気合い】で打ち砕けー!

まあ効かなかったら動けないスキに祭壇とか壊しちゃうか。


鞍馬・景正
妙なる富嶽を穢す、即ちこの国を冒涜するに等しい行為。
断固として降魔の利剣を奮いましょう。

◆探索
噂を頼りに北方の洞窟を目的地として捜索。
樹海の洞窟と言えば富岳風穴、鳴沢氷穴などが有名ですが。

その近辺の水場を探り、常ではありえぬ温度をしていたり、【第六感】が怪しいと告げる所を重点的に調査。

◆戦闘
首尾よく発見すれば、如何に霊獣めいた姿であろうと躊躇は無し。

陰陽道は詳しく無いが、確か玄武は水を司る神でしたか。
そして五行において水は土に弱く、裸虫――即ち人は土の属性を宿すと。

ならば討ち滅ぼせぬ道理なし。

【羅刹の太刀】をあらん限りの【怪力】乗せて、その甲羅を甲冑に見立て【鎧砕き】の一念で斬り抜かせて頂く。


紬雁・紅葉
では陰陽師の真似事、五行を準えましょうか
羅刹紋を顕わに戦笑み

天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現

先制でUC『木曜』+風属性を付与し最大範囲展開
味方(含幼竜)に強化効果を付与

水生木 木気は水を吸う
木生火 木気は火を強める

正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔風属性衝撃波UCを以て回数に任せ防御を貫通し範囲ごと薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受け等で受ける

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

富士の白根を覆そうなどと…
正に天をも恐れぬ大悪行!

玄なる者よ!
あるべき処へ去り罷りませい!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


カタラ・プレケス
アドリブ歓迎

……こういうことをされるとほんとに困るんだよね~
自然の働きでない噴火とかね
星の命がかなり傷付くんだよね~
だから、全力で潰すよ

とりあえず地動観測と天動観測を平行起動
占星術と呪詛による探知で川の流れから敵を捜索

敵を発見しだい
【開花・木花咲耶姫】発動

敵のUCに対しては五行における水生木と土柱を『咲かせて』防御
攻撃は周辺の木々を成長させ敵の拘束と移動阻害
その後炎柱と周囲の木から木槍を大量に『咲かせて』焼却と串刺し
「さあ、星の廻りを壊し己が領域より逸脱せしモノ。
神と星の名のもとに我が汝に裁きを下さん」


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を

*アドリブ・共闘・支援は可能な範囲で
紬雁・紅葉(f03588)と戦います☆

『フェアリーランド』の風の精霊に「あの亀、どうしたら良いだろうね?☆」と聞いてみると風/土/光が挙ってイタズラしたい!とワクワクしてくれているので、「猟兵の迷惑にならない範囲で動いてね♪」と伝えて動いてもらいます☆
ティファーナと聖霊は幼竜ケツアルコワトルを探してみます♪
見付けたら話して治療して猟兵にも伝えて助けてみます☆

<祈り/歌唱/鼓舞/勇気/優しさ/第六感/属性攻撃/手をつなぐ/オーラ防御>を使います☆

「さあ、紅葉も皆様も頑張って力を合わせて竜も土地も世界もお救いしましょう!☆」と拳を上げて応援します!



#

探し方それぞれ、されど神速

●カタラの頭領は星を読む。
傍らには双の書物、『天動観測・アステリオス』と『地動観測・アステリア』。
天変の凶星は富士の北を示し、火難と共に水難を表した。
ホロスコープは水脈を導き、星図の羅針盤は地の底を指す。
 カタラ・プレケス(夜騙る終末の鴉・f07768)は逡巡ののちに立ち、樹海の薄闇を貫く流星となる。
「……そういうことをされるとほんとに困るんだよね~」
 と呟きながら。

●そして流れ星がもう1人
「時は一刻を争うってわけだ!」
 フェロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は地を駆け巡り富士樹海に満ちる地脈を読む。
 頭上の星環は満ちる第六感に輝きを増し己が流れるべき道を示す。
 今しばらく時間はかかるが、地脈と水脈は重なり合い、瞬く流星はその道を同じくし、確信の輝きを増す事だろう。


探し方道ずれ、ゆえに神速

●樹海をかき分け進む人影がふたり。
「にしてもフジヤマ大噴火、ヒュー、派手でイイじゃん」
 しばらく続く沈黙に耐えきれず赤髪両義腕の少女ネリネ・リード(赤・f20899)が軽口を叩く。
「その発言取り消していただけますか、我が国の誇り、妙なる富嶽をフジヤマなどと呼びあまつさえ噴火が派手でイイ等と…」
「冗談だって、じょーだん、本気にするなよな」
「……」
 軽口を受け流さず、今にも刀を抜きはなちそうな威圧感を出している羅刹の青年は鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)。このふたりは先達が残した噂を手掛かりに、猟兵の身体能力と五感をもって樹海の北方を探索していた。
 ネリネが少し声を落とし。
「マジで噴火なんてことになったら洒落ですまねーよな、とっとと儀式やってるってやつ見つけてぶっ飛ばそうぜ」
 と言い。景正が。
「無論です」
 と答える。
 このふたり、生まれ育った文化圏が違うせいか大分前からこのようなやり取りしか生まれていないのであった。
 にしても、この国電波とんでねぇし、マジありえねぇ、とUDCアースの情報機器が使えないことをネリネが毒づいた時。
 蔦と巨樹が溢れる樹海のこずえを黒い影が駆け抜けていくのをふたりの目が捉える。
「ありゃ、なんだ?」
「わかりませんが、何となく追った方がよい気がします」
「だな」
 ふたりを一瞥するように一瞬だけ止まったその黒い影は、またすぐに樹海の奥の方へ向かっていった。
 それを追いながらふたりは疾風迅雷の如く木々の間を駆け出す。
 そして、景正が黒い影を捕まえる頃、ふたりの眼下にはもくもくと湯気を上げる大穴が広がっていた。
「なんだ、あるじゃねぇか」
「これは…派手ですね」
 あまりに偶然の幸運に喉をつっかえさせるように笑いながらネリネは自慢の義腕の動作を確かめ。
 景正はそれでも冷静に衣装と帯刀を正す。
 そしてふたりは洞窟の入り口に身を踊らせる。奇しくも一番乗りだった。

●『フジヤマに囚われた幼竜を助けてみた』近日公開予定
 ふたりが洞窟に入って1分もしないうち、あられもない姿の女邪神が樹海から這い出る。
 半蛇の姿をした彼女はそれを生かした速度もって目的地にたどり着いたのだ、なぜこの場所が分かったか。
「不届き者め!妾がはじめに見つけたのじゃぞ‼︎」
 先ほど2人を導き捕獲され、洞窟の中へ道ずれにされていったのではあるが、黒い影=動画撮影用ドローン、『天地通妙』通称『天地』は彼女、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)のものであり、祭壇の捜索のため自律行動をとらせていたのだ。
 無論彼女は邪神等ではなく一動画配信者であった、だが今は撮影中、つまり彼女はまごうことなき邪神なのだった。
「よくわかりませんが目的地が見つかったのは良きことではありませんか」
 憤る彼女に声をかける影がふたり、初めに声をかけた淑やかな羅刹、紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)と祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は独自の方法で時同じくしてこの場所にたどり着いたのである。
 ティファーナも落ち着かせる為に声をかけたのではあるが、蛇邪神は既に邪悪なる修羅の形相を浮かべて洞窟に飛び込んでいってしまった後だった。
「私たちも急ぎましょう」
 と紅葉が、修羅の形相に怯んだフェアリーを促し洞窟に身を踊らせる。

 猟兵達はこうして太陽を喰らう黒曜の洞窟へと集ったのであった。
 流れ星達もじきに流れ着くだろう。


黒曜洞の戦い。
 地下水脈が流れるそこは最奥奥に水をたたえており、その壁は玄武岩に黒曜石が混じったもので、それが幼竜ケツァルコアトルが縛り付けられた祭壇の灯りによって光の反射を生み出し、まるで全天を黒く輝く星に囲まれているように思わせる。広い洞窟だった。

 その中心に体を横たえるそれは洞窟の壁と同じような黒曜の甲羅に覆われた亀のようであり、しかしその尻尾は蛇のようで大きさは牛車三台分ほどもある。その姿は聖獣玄武に近いものかもしれないが、コルテスにより征服された忘れられしアステカの神、悪魔と定められたテスカトリポカの神性が生贄を求める黒曜に潜み。この帝国の風土に合わせて顕現したものであるのかもしれない。
 とにかく黒緋耀、それは、戦と水混じりの石を讃え、夜の闇に住み、生贄を求めるものであった。

●『REC』始まりのファンファーレ
 ぱちん、と開戦を告げたのは薄暗闇の中、御形・菘の爛れた邪気を纏う右手から鳴らされた指を弾く音、その音と共に彼女の右腕から霧散するように邪気が解き放たれた。
 そして、響き渡るファンファーレ!
 戦笛の様に鳴らされた音色は洞窟に反響し黒緋耀へ突き刺さる。
 それは聞かせた対象を炎で包みこみ、彼女を見ずにはいられない情動を与える忌まわしき呪いの炎だった。
「火山を噴火させようという壮大な企みは素晴らしい!しかーし! そのために幼い竜を生贄にするというやり口は、どーにもイケてないの~」
 続けて。
「さあ、我を見よ!貴様を滅ぼす者の姿をその目に焼き付けよ!」
 一瞬燃え上がる炎に輝きを増す黒く輝く星の下に立つ蛇邪神、邪神闇装にひらめく飾り布を背景に、燦然世界、煌々と煌めく耳下の宝玉が照らす顔には邪悪なる修羅の形相を浮かべ、その体表には怪き文様が蠢く。
 そんな姿を目の当たりにした黒緋耀の心を動かす情動は怒りか恐れか。
「失セヨ」
 と、体じゅうを燃燃やす炎に動きを鈍らせながら黒緋耀はその光輝く蛇の尾を蛇邪神の腹に叩きつけようとした。

●顕現、天羽々斬
「させません!」
 と光り輝く蛇の尾を受けたのは紬雁・紅葉、猟兵達へ戦の加護を授けた戦巫女が握るは天羽々斬。
 命かけ切り結ぶ場にあり微笑む彼女が振るう十拳剣は蛇打ちの力の顕現。
 そのあまりの切れ味に光り輝く蛇の尾の先が断ち切られる。
「ガァァァ…!」
 と、尾を切られてなお蛇邪神を睨みつける黒緋耀を目の前に。
「さて、と」
 まるで散歩をするようにゆるりゆるりと歩み寄り。
 吹き荒れるは正に魔を打つ力、黒緋耀の甲に叩きつけられる、吹き荒れる嵐を纏うように、しかし羅刹紋を浮かべ微笑む姿は正に千刃修羅の如し。
 ただひたすらに黒緋曜の尾に甲羅と切り結ぶ。

●幼竜はどこ?
 苛烈な戦闘を横目に祝聖嬢・ティファーナは猟兵達の助けになるように無邪気な精霊達を送り出し、自身は幼竜を救い出すために影を潜めて祭壇に向かっていた。
 ケツァルコアトルの幼竜は洞窟の奥、半ば水に沈んだ祭壇に縛り付けられていた。その体は絶え間ない水流によって熱を奪われ目は閉じられている。先程まで祭壇から発していた蒸気は止まり、既に瀕死の状態であった。
「ひどい…いま助けてあげますからね☆」
 とティファーナは幼竜を縛り付ける戒めを解き水の精霊の力を借りて水際まで引き寄せた。しかし彼女ひとりでは持ち上げることも出来ない。
 そして、風の精霊の助けを借りてだれか猟兵に助けを求めるのだった。
 幼竜の小さな手を握り癒しながら。

●時を待つ剣鬼
 戦の嵐を抜け、幼竜の元へ向かう者がまたひとり、鞍馬・景正だ。
 妖精にあちらは大丈夫なのですか、と問われ景正は己を鎮めるように呟く。
「未だ時ではない」
 景正は黒緋耀の姿に聖獣玄武の姿を見ていた、もし玄武の系譜にいる者だとしても富嶽を汚す事は断じて許されない。そして玄武は水を司るもの、裸虫、すなわち土の属性を持つ人の剣で切れぬという道理は無いはずだった。
 しかし、黒緋耀の甲羅、既に黑潦、既に濁り水。
 簡単に一刀両断できるものでは無かったのだ、戦巫女の剣舞も苛烈ではあるが決定打とはなっていない。あの甲羅を叩き割るには何かきっかけが必要なのだ、行の正順を乱すような。
「なれば今はこの幼竜を救おう」
 と景正が幼竜に手を添えた時、膠着した戦況が動き出した。
 景正と同じく時を待っていた鉄腕が動き出したのだ。

●灼熱の鉄腕
 ネリネ・リードが召喚した自身の義腕の巨大版『破砕の義腕』の外郭は長時間の吸気により灼熱し圧倒的な熱量を放出している。シリンダー内のハンマーを打ち出す圧縮空気も既に爆発せんばかりの密度となり。あとは開放を待つだけだった。
 そして、固く甲羅に籠る黒緋耀を前に義腕の少女は赤髪の修羅となる。
「しゃらくせェ…叩き潰してやる‼︎コレが今の私の全力全開ってなァ…‼︎」
 鉄拳が振り下ろされる瞬間、同時に義腕の機構に取り込まれた圧縮空気を開放、シリンダー内のハンマーが打ち下ろされその衝撃は灼熱した外殻へ轟をもって伝えられる。
 爆発的なその力を秘める豪腕はそのまま黒緋耀の甲羅へ吸い込まれる。
 鍛治師が鉄槌を振るうだけで鉄を灼熱させる様に、右腕、左腕と打ち据えられる度に甲羅に秘める熱量が上昇していく。
「効カヌ…効カヌゾォ‼︎」
 と声をあげる黒緋耀であったが。その蛇尾を切り詰められ、内側からは忌まわしき邪神の炎、外側からは熱き鉄拳。
 殻にこもる事しかできず臨界は近づいていた。

●流れゆく星の力
 そして星の一欠片が流れる。
「やばい、もう始まってるみたいだぜ!」
 空から流れつき洞窟を進むフィロメーラ・アステールの耳には最奥での戦闘音がしっかりと聞こえていおり、それは隣を行くオラトリオも同じ事のようだ。
「超特急でレスキュー開始!ダッシュ!ダ〜ッシュ‼︎」
 背には妖精の羽を羽ばたかせ小さな体に星の閃光を纏い、靴からは流星の輝きを後に引きながらフィロメーラは空を滑るように走る。
 さらに速度を上げた流星の輝きは一層光り輝き黒曜の天球を照らす。
「敵はどこだ〜‼︎⁉︎、あ‼︎ドラゴン見っけ今助けるぞ!待ってろ‼︎あのデッカい岩じゃまだな‼︎踏み砕け‼︎」
 超加速したフィロメーラの視界には救助対象の幼竜しか見えておらず黒緋耀の黒い甲羅はただの大きい岩、障害物にしか見えていなかった。
 だから、彼女は全力で障害物を排除しようとする。
 成層圏・重力隕石落とし。それは星の力を持って大地を砕く破壊の技。
 とん、と、走り抜けるフィロメーラの足が黒緋耀の甲羅に乗る、それと同時に洞窟が揺れた。
 それまでの戦闘でたっぷりと熱を取り込んだ黒曜の甲羅は隕石の衝撃に耐え切れずほんのわずかだが、ピシリ、とヒビが入り、その余波で洞窟の地面と壁が砕かれ崩壊を始めようとする。
 そしてついに、長い道のりを駆け抜けた流れ星、フィロメーラ・アステールは太陽の竜の元にたどり着く。
 その輝きを失わないままに。

●黒き天球を留める星の力
 流れた星と共に黒く輝く天球の下へたどり着いたカタラ・プスケスはその目にしっかりと黒緋耀を捉えていた。
「自然の働きでない噴火とか星の命がかなり傷付くんだよね~」
 だから、全力で潰すよ。とカタラは宣言する。
「私は桜。儚い桜。華を謳う短き桜、しかしこの身は咲かすもの。炎に飲まれてなお生み出すもの。全てを咲かせて春告鳥を招きましょう」
 オラトリオのその身に宿すものは木花咲耶姫の顕現、カタラ・プレケスは桜の衣纏う姫へと変ずる。
 春に花開く奇跡の力は黒帝の巌を砕かんと玄武岩の洞窟に深く根を張る、そしてそこから咲き誇る桜の枝葉は黒緋耀に絡みつき、きつく締め付ける。
 その時、洞窟が崩れ出した。
「まずい…!」
 プレケスはその身を借す顕現に再び命を注ぐ、そしてその奇跡は黒い天球を支えるために土柱を咲かせ、割れ行く地面を桜の根でつなぎ留めた。

●岩と修羅
 ふたりの聖者は幼竜を癒し。蛇邪神はしかして闇を照らす篝火を絶やさず。桜は岩を引き潰そうと締め付け。戦巫女は休まぬ剣の嵐となり岩に吹く。赤髪の鉄腕は灼熱の鎚となり大地を叩き。そして永き時を待った鬼武者は動き出す。
 春の奇跡により縛り付けられた黒緋耀の甲羅には何人の猟兵がその存在に気がついたかはわからないが流れ星フィロメーラ・アステールが駆け抜けて作り出したほんの少しの亀裂が走っている。
「さあ、紅葉も皆様もも頑張って力を合わせて竜も土地も世界も救いましょう‼︎☆」
 幼竜の手を握り、癒しながら紡がれるセラフ・ティファーナの祈りは確かに届いていた。
「はーっはっはっは!妾の邪悪なる炎は弱まることを知らんわ‼︎」
 蛇邪神、御形・菘の右腕から迸る邪悪なる暗黒の瘴気はとどまることを知らずに溢れ出し黒殺の忌まわしき炎へと注がれる。
「出雲立つ、出雲…!」
 戦巫女、紬雁・紅葉が舞うように叢雲の象る九つの剣を放ち九曜を描く。戦機を導く加護の陣だ。
「玄が武と言うならば、我が武の真髄をもって貴様を討ち滅ぼす」
 そして蒼瞑の剣鬼、鞍馬・景正が立つ。その静謐な佇まいはまるで道場の中にある時と違わずに構えをとる。兜割りだ。
「羅刹の太刀、薙ぎ払う後に残すは屍山血河のみ、いざ参る‼︎」
 斬馬の覇気と共に景正の愛刀『濤景一文字』が巨大化し裂帛の勢いで黒緋耀の甲羅へ振り下ろされる、剣閃は1ミリにも満たないわずかなひび割れを正確に穿ち、超硬の甲羅を叩き割った。
「さあ、星の廻りを壊し己が領域より逸脱せしモノ、神と星の名のもとに我が汝に裁きを下さん」
 カタラ・プスケスの荘厳な声と共に割れた甲羅の中へ吹き上げる樹木の槍が五臓を貫かんと突き刺さる。
「これが最後の一撃だ!食らいやがれ‼︎」
 まっすぐ行ってぶっ飛ばす、を貫き通した赤髪、ネリネ・リードが耐久力の限界近く灼熱した破砕の義椀を木槍に叩きつけ黒緋耀の五腑を抉る。
 木槍は役目を果たし春に花開く花弁のように燃え上がった。
 それは邪神が生み出す忌まわしき炎と共に逆巻き。
「玄なるものよ!あるべき処へ罷りませい!」
 という戦巫女の誓願と共に。黒き星が輝く天球へと黒緋耀を導いていった。
「我、ブシンノ器ニ在ラズ、カ…」
 と声を残して。

 そして、洞窟は光源を失い静寂に飲まれる

 残された猟兵達に残されたのは流星が走り抜けた軌跡、星屑の尾が作りだした道。
 それは、広き大空の下へ導く道だった。

 こうして木が火を助け火と風と土が金に導き超克した金と木と裁きの火が水を制した戦いは終わり富士の噴火は無き未来となったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト