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エンパイアウォー⑳~銭の澱みはここに在り

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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●欲望果てしなく。
 京都、花の御所。
 かつて足利将軍家の邸宅としてその権力の中心でもあった地は、応仁の乱が発生したことによってその役目を他の場所へと移し、そして歴史の中に消え去ったはずであった。
「アタシが住むのは花の御所に決まってんだろーが! 足利将軍家の邸宅だぞ!」
 しかし今、この地には伝えられる姿よりも豪華絢爛なる御所が存在している。
 室町幕府8代将軍足利義政の正室で9代将軍の母親でもある日野富子。彼女はその有り余る私財を投入して再建された花の御所は黄金に輝き、花が咲き、豊かな水が流れる、富の象徴とも呼べる存在感を示していた。
 花の御所。その名にふさわしき、見事なる邸宅であった。
「おい、あの屏風を描いたやつは誰だ! あの虎の顔がムカつく……ぶっ殺す!」
 そこに住まうものの心はともかく。
「アタシに金を払わせたくせにイラつかせやがって……! 徳川の奴らもそうだ! アタシの金に手を付けやがって! ああムカツク! ああああムカツク! どいつもコイツも、アタシが殺してやる!」

●金は天下の――。
「諸君! 聞いてくれたまえ!」
 声をあげたのはゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)である。
「買占めによって徳川軍の補給物資の準備が滞っていた件は知っているな!? その企ての首魁、大悪災『日野富子』の所在が判明したのだ!」
 日野富子。かつて将軍の跡継ぎ争いから『応仁の乱』を引き起こし、室町幕府を事実上支配した女。莫大な資産を背景に権力を拡大した彼女は欲望のままに人々を苦しめ、サムライエンパイアを壊滅寸前まで追い込んだという。
 彼女を見逃せばエンパイアウォーに勝利したとしても、この世界に悪影響を及ぼす事は確実。ここで叩く事ができれば戦況も有利に運ぶだろう。
「日野富子が居座るは京都、花の御所! 豪華絢爛にして広大な屋敷へと攻め入り、奴を討ち果たしてくれ!」
 無論、富子は強力なオブリビオン。決して油断ならない相手であるし、そのユーベルコードへの対抗策なしでは苦戦は必至。十分な覚悟と対策をもって戦いに臨んでほしい、とゴッドは続ける。
「金は天下の回り物ともいうな! 己の欲のままに銭を集め、民を苦しめる奴を見逃す訳にはいかぬ! どうか諸君の力を貸してくれたまえ!」


納斗河 蔵人
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 お世話になっております。納斗河 蔵人です。 今回はエンパイアウォーのシナリオとなります。
 戦争シナリオのボス戦ですので下記のようなルールがあります。

 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 強敵ですので、しっかりと確認のうえ、ご参加ください。
 プレイングをお待ちしております。よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「アタシの御所に土足で踏み入るんじゃねぇ! 一歩でも入ったらぶっ殺す!」
 大悪災『日野富子』は集いつつある猟兵たちに苛立ちを隠さない。
 憎悪のこもった視線が花の御所のあらゆる場所に向けられる。
 そんな中でも、彼女のよく磨かれた爪は陽の光を反射し、煌いていた。
緋月・透乃
うひょー金欲にまみれたばばあじゃん!こわいこわい。
欲の強い奴は戦闘力高いことが多いし戦う相手としては楽しみだね!

視られただけで燃やされるのかー。私には目に見えないほどの動きとかできないし、危険を承知で賭けにでよう!
可能なら転送前に戦斧の刃をきれいに磨いておくよ。
戦場に付いたら敵が私を視るのに合わせて斧の刃で顔を隠したまま突っ込むよ!刃に敵の顔が映ってくれれば敵が燃えないかな?
燃えても燃えなくても視線を動かされると隠してない部分を焼かれるし、勢いを殺さずに突っ込んでそのまま罷迅滅追昇をぶちこむよ!
どこか燃やされても気合いで耐えてそのまま突っ込みたいね。



「オマエも! オマエも! アタシの金を狙ってきたか!」
 日野富子は、彼女を討つべく御所へと入り込んできた猟兵たちに声をあげた。
 その姿は執着と怨念に囚われているようにも見える。が、何かが彼女を歪めたというよりは生来の気質なのであろう。
「うひょー金欲にまみれたばばあじゃん! こわいこわい」
 そんな様子に緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は大げさに怖がってみせる。
 もっとも、彼女は戦いを好み、強敵であればあるほど喜ぶタイプだ。欲の強い奴は戦闘力が高い事も多い、と期待の意味が大きい発言であった。
 
 そんな透乃の出現に対する反応は早かった。
「ふざけやがって! アタシの! 前に! 立つんじゃねぇぇぇぇぇっ!」
 さすがは第六天魔軍将に数えられるだけのことはある。並の存在ではその憎悪のこもった視線の前に一瞬にして焼き尽くされたであろう。
「来たね! いっくよー!」
 その視線に透乃がとった対抗手段。それは強引な、力技。まさしく危険を承知の上で出た賭けである。
 磨かれた戦斧の刃がきらりと光る。それを盾に突撃。富子の視線を遮り、あわよくば反射によって自爆を誘おうという作戦であった。
「そんなもんで! アタシの目から逃れれるか!」
「負けるかぁーっ!」
 富子の視線が透乃の体を焦がす。紫の炎が辺りを包み、爆発が起きる。
 文字通り、目に見えるほどの強烈な憎悪が広がっていく。
「どいつも! こいつも! 全員殺してやる!」
 この力の前にはどんな存在も焼き尽くされる。
 富子はなおも叫びをあげ、次の猟兵へと視線を移そうとする。
 ――その時であった。
「くたばれ、消え去れ、あの世の果てまで飛んでいけー!」
 透乃が炎の中から飛び出してきた。
 彼女は全身を焼かれ、煙を上げながらも。駆けだした勢いのまま、強靭な精神力で富子の元までたどり着いたのだ。
「テメエ……!」
 己の力に自信があるが故に、想像もしなかった一撃。透乃のショルダータックルが富子をとらえた。
『罷迅滅追昇(ヒジンメッツイショウ)――!』
 大きく体勢を崩した富子に足下から戦斧が襲い掛かる。
 その陰から除いた上半身だけは、普段の美しさを保っていた。
「ふざけやがって……! 死ねよ! 死んどけよ!」
 強烈な一撃にさしもの富子も大きくその身を吹き飛ばされる。
 膝をつきながらもなお、その憎悪は燃え上がり続けていた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

黒夜・天
「金持ちなんだろ? 会いたかったぜ」
 貧乏神だからな。金持ちなら大好物だぜ。
「喰わせろよ。その財産」
 足元から禍害の残滓を出して【目潰し】。さらに禍殃の幻影でカラスの群れを出して【範囲攻撃】。これで相手の視線を封じるぜ。
 視線が霧とカラスごと燃やすなら、災禍の腕で【オーラ防御】しながら【激痛耐性】で耐える。そのままカラスの群れから悪神の面をつけ現れ【恐怖を与える】。【ダッシュ】で近づいて災禍の腕で殴りかかる【捨て身の一撃】だ。
 それでもダメなら素直に、なるべくハデに焼かれるぜ。体からミゼリーウイルスと【呪詛】をまき散らしながら倒れるさ。
 そのまま、UC「畏怖」を使う。



「金持ちなんだろ? 会いたかったぜ」
 と、言葉を投げかけるは黒夜・天(有害無益の神・f18279)である。
 彼女は神……しかも、貧乏神。金持ちなら大好物だぜ、と笑ってみせる。
「食わせろよ、その財産」
「ふざけやがって! アタシの金は、アタシだけのもんだ! アタシだけが使っていい金だ! 神だろうと、ぶっ殺す!」
 言葉と共に互いが動き出す。
 
 天は足下から赤黒い霧――禍害の残滓と、その全身から黒いオーラを変化させたカラスを放つ。
 富子の視界を塞ぐべく放たれたそれらにより辺りは黒く染まる。
 しかし、一瞬の後。辺りは紫の炎に包まれる。
「アタシにまとわりつくな! アタシの邪魔をするな! 全部、全部燃やしてやる!」
 その憎悪は決まった形を持たない霧さえも燃やし尽くす。
 かつてその場所で起きた不幸の残滓も彼女の憎悪を止められない。彼女自身が憎悪を向けられる対象であってもそれ以上の力をもってはねのけているのか。
「大したもんだ……ならオレも派手に行かせてもらうぜ!」
 天は辺りを炎に包まれながらも、その顔に悪神の面をかぶり、富子に殴りかかるべく災禍の腕を振り上げる。
 しかし。
「アタシに! 触るんじゃねぇ!」
 富子の視線はその腕が届くより早く天をとらえた。全身から炎が上がる。紫の炎と、天を包む不幸のオーラが混ざり合う。
「立てば災厄、座れば地獄……」
 ぐらり、と天の体が傾く。じわり、と何かが染み出す。
「倒れた先には……」
 その言葉を最後まで紡ぐこともなく、天は花の御所に倒れ伏した。
 
「ああああ! アタシの、アタシの金が!」
 しかし、その瞬間。富子の様子が変わった。突然にうろたえ始め、辺りを駆けまわり、炎が鎮まる。
(神とは本来、決まった形を持たないものだ。オレだってそうだぜ。今、テメエにはオレがどう見える?)
 その視界に移るものは何なのか。それは彼女にしかわからないのだろう。
 今、天が瀕死にまで追い込まれる事で発動する『畏怖(テリブル)』の力が、富子の心を乱し、襲い掛かる!
「ふざけやがって! 一銭残らず、金はアタシのもんだ!」
 富子がその手を伸ばした先から。
 彼女の想像する最悪の災厄がその腕を伸ばし、富子を殴り飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

古上・薺
かような雅な屋敷に居座る割に器の浅い輩じゃの
短気を起こして当たり散らしておっては機を失うと先達に言われておらぬのか?
さておき、彼奴も火を扱うようじゃな…なればわし様の火術とどちらが上か、一つ比べてみるとするかの


しかしまぁ、自身も火を扱うならば当然それに備えるのも常わし様の帯と羽織も火に強くできておるからの、さらに羽衣は呪詛の念に強く作られておる故、羽織と合わせて被れば怨嗟から生み出される類の焔なれば凌げるじゃろう
一度凌げば即座に撃てぬのが術式というもの…
再展開する隙をつき、こちらの火術を見舞ってやるとしよう
なに、ただの火では防がれるかもしれんが…御霊を喰らう焔なれば話は別じゃろ?


雨宮・いつき
怨嗟と欲に塗れた気迫…この圧は間違いなく一筋縄ではいきませんね
ですがこちらとて退けぬ戦い
さあ、御勤めの時間です

先んじて放たれる火矢が怨霊ならば、【高速詠唱】にて冷撃符から【破魔】の力を籠めた氷の壁を生み出します
怨霊を浄化する盾とし、解けて蒸発すればそれを【破魔】の霧として周囲を覆う
ありったけの冷撃符で防壁を量産し、敵の攻撃を弱めつつ【力溜め】をする【時間稼ぎ】です
力を溜めればすぐに【高速詠唱】も交えた【全力魔法】で術を放ち、
御所を煌びやかに彩る装飾や金を砂に変えて敵を覆い包み、
元に戻して金銀財宝で身を固め、雷撃符を束ねた雷の槍で穿ちます!
…その金、三途の渡し賃として持って逝くと良いでしょう



「どいつもこいつも、アタシに逆らいやがって……!」
 ここまでの戦いで日野富子は少なくないダメージを受けている。
 彼女の憎悪はそれに比例するかのようにますます燃え上がり、苛立ちが募る。
「怨嗟と欲に塗れた気迫……この圧は間違いなく一筋縄ではいきませんね」
 そう口にしたのは雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)である。
「雅な屋敷に居座る割に器の浅い輩じゃの。短気を起こして当たり散らしておっては機を失うと、先達に言われておらぬのか?」
 それに続くように古上・薺(傲岸不遜な箱入り狐娘・f03595)もまた口を開く。
「知るか! そんなもんは金があればいくらでも作れるんだよ!」
 富子はそんな言葉に耳を貸さない。価値観の違いどころではない隔絶がそこにあった。
 と、薺は辺りにくすぶる火を目にすると、札で口元で隠すようにして言う。
「どうやら奴も火を扱うようじゃな……なればわし様の火術とどちらが上か、一つ比べてみるとするかの」
「こちらとて退けぬ戦い。さあ、御勤めの時間です」
 二人の妖狐が力の籠められた符を構える。
 その姿は富子の苛立ちを更に強くしたのであった。
 
「力比べだ? 勤めだ? アタシと勝負になると思うな! 誰かあいつらをぶっ殺せよ!!!」
 富子の苛立ちは応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊をこの時代に蘇らせる。
 応仁の乱の発生は富子に大きな原因がある。つまり彼女は怨まれる側の存在である。
 にもかかわらずその怨霊を自らの力として使うのだから、彼女の性格が伺えるというものだ。
 無数の火矢は正確に薺といつきに向けて襲い掛かる!
「薺さん、僕の冷撃符の後ろに!」
 それに向けて放たれるのは氷の力を秘めたいつきの符。素早い詠唱により氷壁を作り出す。
 飛びかかる火矢は勢いを殺され、その力を弱める。
 しかし、あまりにも数が多いのだ。その全てを防ぎきるほどにまで分厚い壁を作ろうにも、その前に次の矢が穿たれた穴を通り抜けて向かってくる。
「やりますね……っ!」
「わし様に任せるのじゃ!」
 言葉と共にいつきの前に躍り出る薺。
 彼女は火を操る事を得意としている。それ故、己の炎で身を焦がさぬように纏う帯と羽織は火に強く織られていた。
 加えて、その羽衣もまた、呪詛に強く作られている。
「ぐっ……」
「薺さん!?」
 その力を頼りに受け止めるもなにせ数が多い。火の力、怨霊の力は弱められても『矢』の勢いを殺しきることはできない。
 とはいえ、無策でこれを受けていれば既に勝負はついていた事だろう。
 
 だからこそ、そこに一筋の光明が差す。
「わし様の事はいいのじゃ!」
「くっ……ならば、荒ぶる山神の力の断片……お見せ致しましょう!」
 薺の声にいつきは『土行・伊吹神楽(ブルーティッシュ・ヴァイパー)』を解き放つ。
 その力が花の御所を彩るあらゆるものを砂と変え、富子を覆い包む。
「アタシの御所に! 触れるんじゃねぇ! ここを自由にして良いのはアタシだけだ!」
 その苛立ちは術者本人だけでなく、自らに襲い掛かる、砂と化した御所にも向けられた。
 無数とも思える火矢もその狙いは乱れ、いつきへ向けられたものは数えるほどとなる。
 ならば、と薺もその力を振り絞り、霊符から術を放つ。
「紅く、朱く、染め上げ、廻れ、魂すらも喰らい焼け!」
 一筋の炎が襲い来る火矢を払う。炎符より放たれた真紅の炎は薺の周りを渦巻くように漂い始める。
 そして炎はやがて一つとなり、『炎符『魂食灼火』(エンフ・タマハミノシャクカ)』は一本の槍となった。
「御霊を喰らう焔、受けるがよいのじゃ!」
 と、同時に富子を包む砂たちも元の姿へと戻りゆく。樹が術を解除したのだ。
「……その金、三途の渡し賃として持って逝くと良いでしょう。雷の槍よ!」
「ふざけるな! これは最初っからアタシの金だ!」
 焔と雷が富子へと放たれる。
 二本の槍は交差するように富子の体へと突き刺さった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

うっわー、完全にヒスってやがる……
分かりやすくゲスなのはいいけど、
ちょっと引いちまうわ。
爪での引っ掻きが得意だってのもまたエグいねぇ……
まぁ、細切れにされる前に止めるしかないか!

『オーラ防御』である程度斬撃の衝撃に備え、
一気に間合いを詰めて『グラップル』の要領で
攻撃を捌きにかかる。
爪が自慢なら、振り抜く時の手首を『見切り』、
掴んでしまえばそう自由には動かせなくなるだろ!
細かい傷は『激痛耐性』で耐え、
周囲に『マヒ攻撃』を込めた電撃を放って動きを鈍らせる。
掴んだ手からも電撃を流し、
収束率を上げようか!

久方ぶりの無茶するよ、
零距離の【黄泉送る檻】、受けてみやがれってんだ!


リミティア・スカイクラッド
そんなに苛立たしいのなら、誰かと言わずあなた自身が来れば良いものを
案外と他力本願な方なのですね

挑発しながら先制攻撃に対して「高速詠唱」でUCを発動
花の御所に魔術城塞を建造し、城壁による防御で火矢を防ぎましょう
今回の城塞の形状は「銀閣」を模したもの
富子の夫である足利義政が建造した寺院ですが、歴史によると富子はこの寺の建造費を一銭も出さなかったとか
さぞかし苛立ちの募る対象なのでしょう

敵の攻撃の標的が城塞に向けられれば、その隙にこっそり城内を脱出
後方へと回り込み、宝石剣の「封印を解く」と解放された魔力と共に斬り掛かり
同時に城塞からも「全力魔法」の砲撃で挟み撃ちを狙います
銀閣キャノン、一斉発射です



「クソッ、クソッ、クソッ! なんで死んでないんだよ!」
 戦場は華やかなる庭園へと移っていた。
 富子は大きな打撃を受けながらも健在。猟兵たちへのダメージも大きいが、彼女の思うようにはなっていない。
 その事実がなおも富子を苛立たせる。
「うっわー、完全にヒスってやがる……」
 わかりやすくゲスなのはいいけど、といいながらも数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はその姿にひきつった表情を浮かべる。
「そんなに苛立たしいのなら、誰かといわずあなた自身が来れば良いものを……」
 と、述べるのはリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)だ。
「案外と他力本願な方なのですね」
 その言葉に富子はやはり、苛立ちを隠さない。
「高貴で金のある人間ってのはなぁ! 人を使うんだよ! こうやってなぁ!」
 言葉と共に無数の火矢が花の御所に舞った。
「誰かアイツをぶっ殺せ!」

「無限城塞、展開!」
 飛びかかる矢を前にリミティアは『魔女の秘儀・夢幻の城塞(ウィッチクラフト・ギガンティア)』を発動する。
 しかし矢の速度は速く、狙いも正確。城塞構築の速度も負けてはいないが、その全てを防ぎきるには厳しいタイミングであった。
「おっと、危ないよ!」
 だが、猟兵とは一人で戦うものではない。傍にいた多喜がかろうじて襲い来る矢の何本かを叩き落とす。
「くっ……」
「大丈夫かい?」
 さすがは大悪災といったところ、そこまでしても一本の矢がこの城塞の主たるリミティアに届く。
 痛みはある。しかし止まる訳にはいかない。
「リムは問題ありません。そして、間に合ったようです」
「この一瞬でこんなものを作り上げるなんてね。なんだい、これは?」
 多喜が問いかけるのと同時、城塞を目にした富子の叫びが聞こえてくる。
「みすぼらしい! くだらない! なにが詫び寂びだ! こんなもんに一銭だってアタシの金をかけられるか!」
 そこにあったのは、「銀閣」を模した城塞。
「富子の夫である足利義政が建造した寺院ですが、歴史によると富子はこの寺の建造費を一銭も出さなかったとか。さぞかし苛立ちの募る対象となるでしょう」
「へーえ。でも、だったらここに居たら危ないんじゃないの?」
「ええ、ですから」
 そこでリミティアはくすりと笑ってみせた。
「こっそり抜け出しましょう」

「ああああムカつく! 燃えてしまえ!」
 火矢が銀閣へと放たれる。ユーベルコードで作り出した城塞は簡単には落ちないが、それでも残された時間はそう長くはない。
 城塞を抜け出し、死角に回り込んだ多喜。すう、と息を吸うと一気に距離を詰める。
「アタシのジャマをするな!」
 しかしその接近に富子は気付く。長く伸びる強固な爪はすさまじいほどの速さで襲い来る。
「うおっ!?」
 多喜も負けてはいない。自身の念動力で防御を固めつつ、富子の動きを読む。
 顔、腕、脚。爪が空を切る。しかしその勢いはますます増していく。
「近づいたら爪で攻撃してくるってのもまたエグイねぇ……まあ、細切れにされる前に何とかするしかないか!」
「何が他力本願だ! アタシについてこれてないじゃないかよ!」
 頬に一筋の腺がはしる。次は右肩に。今度は脇腹に。
 それは誘いでもある。多喜は痛みに耐えながら、辺りに電撃を走らせその動きを鈍らせようとしている。
 だが、その瞬間まで耐えきれるだろうか――?
 
「久方ぶりの無茶するよ」
 多喜はそこであえて、富子の攻撃を避けずに待ち受けた。
 激痛が走る。口の中に鉄の味がにじむ。
「ようやく一人! てこずらせやがって! 残りの奴らもぶっ殺す!」
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...」
 しかし歯を食いしばり、その痛みに耐えながら多喜は言葉を紡ぐ。
 その手が富子の腕を掴む。
「なっ……!?」
「零距離の『黄泉送る檻(サイキネティック・プリズン)』、受けてみやがれってんだ!」
 電撃が収束する。その奔流にさしもの富子も動きを止める。
「ふざけやがって……!」
 ついに訪れた好機。しかし多喜もまたこれ以上の戦闘は困難だろう。
「全砲台に魔力充填。……宝石剣よ、その力を」
 だからこそ、外せない。リミティアが宝石剣で切りかかると同時。
 炎をあげる銀閣の中から魔力砲台が現れる。
「照準、良し――放て」
「クソがぁッ!」
 その一撃が富子を貫くと同時。銀閣は消え失せ、リミティアもまたユーベルコードの負担にふらりと膝をついた。 

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

形代・九十九
【ドールs+α】で連携

敵の先制攻撃は左肩の【盾受け】、或いは手にした妖刀での【武器受け】で凌ぎつつ、アリスを【かばい】、攻撃を引受けてその身を盾とする。
ダメージは【激痛耐性】で踏ん張りながらユーベルコード『抜けば魂散る氷の刃』を発動。
時間凍結による最低限の防御以外はかなぐり捨てた【捨て身の一撃】にて冷気を纏う妖刀で【串刺し】を真っ向より叩き込む。

金は確かに大事だ。
しかし、それは生きている者でなければ使うことはできない。
幾ら富を貯め込もうと、お前はすでに過去に焼き付いた影でしかないのだ。

その富も、妄執も、此処でもう一度おわってもらう。

せいぜい悪く思え。
せめてその嘆き、この身に存分に刻み付けろ。


アリス・レヴェリー
【ドールs+α】で連携。

先制攻撃は九十九さんに、隙を作るのは十六夜さんに頼って、装備している【刻命の懐中時計】による全12枚の結界で必要に応じてサポートしながら機を窺いましょう
注意がこちらから外れたら、【友なる金獅子、勇猛の調べ】で炎と大地の力を御する金獅子、ダイナを召喚、騎乗。
激昂した富子が隙を見せたら、ダイナの力で無数の強固な石柱を格子のように富子の周囲に巡らせるわ
強固に伸びた長い爪。それを振り回すには狭いでしょう?
これくらいなら強引に破ってきそうだけれど、一時的にでも動きを止められれば御の字よ
ここは周囲の被害を気にしなくていい相手のお家。相手の足元から遠慮せずに大火柱をぶつけるわ!


月代・十六夜
【ドールs+α】で連携。

準備としてペンキ入の袋を体の各所に邪魔にならない程度に貼付。
召喚と同時に「お宝貰ったぁ!」と叫んで後方に【ジャンプ】。
相手から距離を取ると同時に適当に高そうな調度品をひったくって盾にする。
これで相手の手が若干でも緩んでくれたらよし、緩まなくても致命傷だけは【視力】と【野生の勘】、身代わりの護符で耐える。
あとは相手の爪におしゃれなペンキのマニキュアをプレゼント。
輝きを封じれれば御の字だが、そうでなくても愉快じゃなかろ?

初撃を凌げば後はいつもの通り。
必死に【視力】【聞き耳】で【見切っ】て【気合避け】で【時間稼ぎ】させてもらうぜ!
余裕があれば他にも適当に盗んでヘイト稼ぐ。



 大悪災『日野富子』の絢爛なる衣装は破れ、焦げ。
 花の御所は激戦の爪痕強く、乱れていた。
 しかしなお富子を覆う憎悪の炎は強さを増し、その動きもまた、粗さを見せながらも驚異的な速さを誇っている。
 その執念、怨念はどこから来るのか。とうに倒れていてもおかしくないほどのダメージを受けているのに。
「どいつもこいつも、アタシのジャマばっかりしやがって!」
 その爪の輝きは今も増すばかり。猟兵たちはそれを掻い潜り、彼女を討たねばならない。
 
「それはアタシのもんだ! 使っていいのも、壊していいのも、アタシだけだ!」
 富子の爪が壺を貫き、砕く。
 その一撃をすんでのところで躱しながら月代・十六夜(韋駄天足・f10620)は冷や汗を垂らした。
「狙い通り、なんだけど……うまくいきすぎちゃったかなぁ!」
 つい先刻、彼は花の御所に現れるなり「お宝貰ったぁ!」と叫び、館の中へと飛び込んだ。
 高そうな調度品を盾に、と手に取ったまではよかったのだが、富子にとってそれは『金さえあればいくらでも手に入るもの』。
 敵の攻撃を引き付ける、という狙いこそ達したものの予想とは違う展開となっていた。
 と、そこへ振り下ろされるのは一本の刀。
「……浅いか」
「なめるな!」
 刀の一撃にさえ富子の爪は耐えて見せた。そのままもう一方の手で貫きにかかるも、形代・九十九(抜けば魂散る氷の刃・f18421)は左肩の盾でかろうじてその一撃をそらす。
「ああムカつく! よってたかってアタシの金にたかりやがる!」
 そんな富子の言葉に九十九は諭すように言った。
「金は確かに大事だ。しかし、それは生きている者でなければ使うことはできない」
「いいや、違うね! 地獄の沙汰も金次第だ! アタシは地獄だって操ってやる!」

 十六夜、九十九と富子の攻防は続く。
 二人には細かい傷が増えていく。富子の攻撃は素早く、十六夜の『気合避け(キアイヨケ)』も怒りと憎悪に囚われた富子の不規則な動きに惑わされ、全てを避けきることは困難。
 一手間違えば致命的なダメージとなることは必至。その事実は精神力を削っていく。
「いい加減、死ねよおっ!」
 と、一瞬の隙。富子の執拗な攻撃がついに十六夜に届いた――
「やべっ……!」
 しかし、その一撃は通らない。
 一瞬だけ現れた強力な結界が必殺の瞬間を弾き飛ばしたのだ。
「ああああムカつく! もう一匹居やがったか!」
 そう、その一撃を防いだのはアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)の持つ、刻命の懐中時計。文字盤に嵌められた世界の雫を代償に結界を作り出し、仲間を守った。
 それに気付いた富子は猛烈な勢いでアリスの方へと走り出す。
「まずはオマエからぶっ殺す!」
「猛る金獅子、気高き王よ、勇みて謳う、わたしの友よ!」
 間の悪い事にこの瞬間、彼女は『友なる金獅子、勇猛の調べ(ブレイヴ・オブ・ダイナ)』を発動するべく詠唱を始めたところであった。
 その間は無防備。だからこそ富子の注意が向いていない隙を狙っていたのだが、これも富子の力か、怨念か。
 そのままアリスの体を爪が貫く――!
 
 か、と思われたが……
「お前の一撃を防ぐ役は任されているのでな。悪く思え」
 その身を盾にアリスを守ったのは九十九。
 刻命の懐中時計による結界も爪の執拗な攻撃によってすべて使い果たし、腹に一撃をもらっていた。
「ジャマしやがってぇっ!」
「そして心せよ。……おまえの血で、紅い蓮の花が咲く」
 と、同時に。深い傷を受けながらもこれを好機と九十九は『抜けば魂散る氷の刃(マカハドマ)』を発動する。
 時を凍らせる冷気も怨嗟の炎を打ち消すまでは至らないが、振るう太刀風が富子の纏う羽織を凍らせる。
「ふざけやがってぇ!」
「お願い、ダイナ!」
 怒りに震える富子へ、アリスは大地と炎の力を自在に御する黄金の獅子に乗り、その力を開放する。
 ダイナが一吠えすると富子を取り囲むように石柱が生み出された。
「こんな安っぽい柱で、アタシを止められるか!」
 富子がなお爪を振るう。石柱は増えていくがそれよりも早く切り裂かれ、その数を減らしていく。
 と、その向こうに。十六夜の姿があった。

「アタシが、隙なんか見せるかよ!」
 石柱を掻い潜り、富子の爪が十六夜に迫る。
 並の人間では――いや、身軽さと五感に優れた猟兵である彼であっても回避は不可能。
 そう思わせるほどの完璧な一撃が十六夜の体を貫いた。
 ――その瞬間、辺りが無秩序に彩られる。
「なんだ! なんだよこいつは!」
「がふっ……へへ、おしゃれなペンキのマニキュアをプレゼント」
 十六夜はこの地に訪れる前、爪の輝きを封じる手段としてペンキ入りの袋を各所に仕込んでいたのだ。
 その策が、ここにきてきいてきた。
「ふざけるな! こんなもんでアタシの輝きは!」
「確かに封じる事ができれば御の字だったが、そうでなくても愉快じゃなかろ?」
 それに、と十六夜は続ける。
「隙はできた」

「幾ら富を貯め込もうと、お前はすでに過去に焼き付いた影でしかないのだ……その富も、妄執も、此処でもう一度おわってもらう」
 一閃。九十九が富子へ向けて冷気をまとう妖刀を叩きこむ。
「クソっ! クソっ! こんなもんで!」
 富子も負けてはいない。再び爪を振るい九十九の足を斬りつける。
 九十九は体勢を崩しながらも、触れた者の熱を略奪し、凍結させる太刀風を放つ。
 そして。
「ダイナ、ここは周囲の被害を気にしなくていい相手のお家。遠慮せずにいって!」
 黄金の獅子が再びうなりをあげた。その咆哮と共に富子の足元から巨大な火柱が上がる!
「があああああっ! ふざけやがって……! アタシの御所を、アタシの金を……!」
 赤い炎は富子を包む。その中にあって紫の炎はなおもその勢いを増し続けた。
「どいつもコイツも、アタシが殺してやる! 全員、全員だ! 全員ぶっ殺す!」
 最期の瞬間まで、怨嗟の炎は消えることはなかった。
 豪華絢爛たる花の御所で。猟兵たちは燃え尽きるまで、その炎を見つめていた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月09日


挿絵イラスト