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エンパイアウォー⑳～世を乱せし大悪災

作者：夢幻

●大悪災
「魔軍将の一人である大悪災『日野富子』の居場所が判明したのだ！」
　グリモア猟兵の天御鏡・百々（その身に映すは真実と未来・f01640）は、集まった猟兵へと、魔軍将との決戦の時が来たと宣言した。
「日野富子といえば、莫大な資金力によって買い占めを行い、幕府軍を妨害してきた魔軍将だな。歴史上では、応仁の乱の元凶とも言える人物だ」
　幸いなことに、猟兵達が十分な徳川埋蔵金を発掘したことで、買い占めによる妨害への対処は完了している。だが、日野富子を放置すれば、如何なる企てを行うか分かったものでは無い。

「かの者は、京都の『花の御所』にいる。元々は足利将軍家の邸宅だった場所だが、有り余る私財を投入して、豪華絢爛な御所を作っているようなのだ」
　戦場はこの花の御所となる。御所の被害は気にしなくていいので、全力で戦って欲しい。
「強力なオブリビオンの例に漏れず、こやつも猟兵に対して先制攻撃を行ってくる。如何にして敵の攻撃に対処するか。その方法を考えねば勝機は無いぞ？」
　敵の先制攻撃への対抗策は必須だ。また、複数のユーベルコードで対処しようとすれば、敵もまた複数回行動するため、それは避けるべきであろう。また、日野富子は倒したとしても再度骸の海より復活するが、短い間に何度も倒すことで完全に撃破することが出来る。
「日野富子は魔軍将の名に違わぬ強敵だ。しかし、貴殿らならば、必ず勝てると信じているぞ」
　百々は猟兵たちを鼓舞し、戦場へと送り出すのであった。

第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ！ 【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。 SPD   :    アタシのジャマをするな！ 自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。 WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ！ 自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。 イラスト：みそじ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

「ああムカツク！　猟兵の奴らめ、金を持ってるアタシに逆らうんじゃねえよ！　みんなぶっ殺してやる！」
「ふん、うちのざしきわらしも金にはうるさいがここまでじゃあないな。噂に違わぬ悪女っぷりだ、この俺たかしが引導を渡してやろうじゃないか」

　豪華絢爛な花の御所の広間にて、猟兵への怒りを露わにする日野富子の様子に、六六六・たかし（悪魔の数字・f04492）は噂通りだと呆れつつ、彼女の断罪を宣言する。

「五月蠅いっ！　アタシの前に立つんじゃねぇ！」

　そんなたかしを、日野富子は憎悪を込めた視線で睨み付ける。それは、対象を焼き払うユーベルコードであった。

「おっと、『かかし』お前の出番だ」

　燃やされては敵わないと、たかしはかかしの人形を操って、自分を日野富子の視線からかばわせる。たかしの狙い通りに、かかしが身代わりとなってたかしは炎を避けることが出来たが、木や藁、布で出来た燃えやすいかかしは大炎上だ。このままではすぐにも燃え尽きてしまうだろう。

「流石は魔軍将だな。だが……四六七悪魔の戦車（デビルカカシタンク）！！」

　たかしがユーベルコードを発動したことで、炎上するかかしは、その姿を鋼鉄の戦車へと変えていく。しかし、炎上のダメージのせいでその変身は完全ではなかった。戦車の砲塔は溶けて曲がり、これでは砲撃は不可能だ。

「ふん。問題ない。なぜなら、四六七悪魔の戦車はその質量自体が武器だからだ」

　たかしは戦車へと乗り込むと、全速力で日野富子へと戦車を突撃させる。

「そんな安っぽいのでアタシの炎が防げるかよ！　その棺桶の中で焼け死んじまえ！」

　日野富子の視線は戦車へと注がれる。しかし、紫色の炎で燃やされようとも、戦車の動きは止まらない。

「今度はこっちの番だ……！　デビル！！　かかし！！！　ボンバー！！！！！」

　戦車の突進に跳ね飛ばされ、日野富子は豪華な調度品をぶち壊しながら広間の壁へと叩きつけられた。しかし、炎を耐えていた戦車もここまで。キャタピラの機構が溶解し動かなくなってしまったことを確認し、たかしはかかしの変身を解除する。そして日野富子が起き上がってくる前にと、たかしはボロボロのかかしを手に、急いで戦場から離脱するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　様々な装飾品や調度品に飾られた花の御所の大広間。五条・巴（見果てぬ夜の夢・f02927）はその華美な様子を見て目を細める。

「豪華絢爛な花の御所、目がチカチカするなあ。華はひとつで充分だと思わない？」
「は？　金ならいくらでもあるんだ。飾り立てた方がいいだろうが……！」

　一つで十分だという巴に、あるだけあった方がいいという日野富子。当然とも言えるが、価値観は合わない様子だ。

「そうだね、君の知恵の結果の大金、君の行動の結果のその大金だ。そこまでの知恵があるなら、倍額僕らから巻きあげるなり、信長達から徴収するなりすればいいのに、資金を集めることは出来ても元手を増やすことは出来ないのかな？」
「ああもうイライラするっ！　誰かアイツをぶっ殺せよ！」

　更に挑発的な言葉を投げかける巴に、日野富子の苛立ちが募る。すると、それに呼応して火矢の怨霊が召喚された。その数は百にも届こうかという程だ。怨霊達は苛立ちを与えた巴を標的にするが、召喚というワンテンポが挟まったおかげで、巴の迎撃のユーベルコードの発動はギリギリ間に合った。

「どうぞその場で眠るといい。煌めく夢を見せてあげよう」

　巴の放った二百を超える雷の矢は、怨霊達を縫い止めて撃破する。しかし、数が多いということは、その分一撃一撃の威力はそこまで高くない。『明けの明星』によって倒せた怨霊は、全体のおよそ半数程度だ。強力なオブリビオン相手に、相性の優位も無くただ撃ち合うだけでは、押し負けるのも必然だ。残る怨霊達は巴目掛けて殺到してくるが、機械の天使が巴を守るように立ちはだかった。

「イヴ・クロノサージュ、参ります。プリズム・セイントランス！」

　巴をかばい、魔力を込めた鎧で火矢を受け止めたのはイヴ・クロノサージュ（《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113）だ。それから彼女は、破魔の力を込めた光で至近にいた怨霊を浄化すると、聖槍を振りかざして残る怨霊を撃破しながら、日野富子へと突撃していく。

（「ダメな夫に、先立たれた息子様。不安定な情勢だったからこそ……家を守る為、貯蓄が必要だったのでしょう」）

　突撃の最中、イヴは日野富子の背景、そしてその人生へと思いを馳せる。

（「悪女と呼ばれた彼女ですが、朝廷の復興に膨大な資金を使ったとも聞きます。全部が全部、私利私欲なはずがないと思われます。悪女に仕立てられた女性……真実は一体、どこにあるのでしょう？」）

　疑問は残るが、この場においては戦う以外に道はない。そうして迫るイヴに、日野富子は再度火矢の怨霊の召喚を試みる。

「クソッ、もう一回出てこいよ……何っ！？」
「もう一回召喚させるわけにはいかないよ」

　先制されなければ、召喚のタイミングに攻撃も間に合うというわけだ。巴の第二射は日野富子を感電させ、怨霊の召喚を妨害した。

「神速の槍撃、受けて下さい！」

　絶好のチャンスに、イヴの放つ聖槍の連撃が日野富子の右腕に突き刺さる。幾度も槍を受けたその腕は、最早使い物にならないだろう。

「ぐあっ！？　クソッ！　金も無いくせに……」
「お金は大切だけど君みたいにはなりたくないなあ。いい勉強になったよ」

　この後に及んでも金としか言わない日野富子に、猟兵たちは連携の力を見せつけたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「金の亡者如きが、大きな顔をしない事ですね。自分達に見つかったのが運の尽き、ここで終わりと心得なさい」
「圧倒的な資金力っていうのは戦争で一番厄介な手合だからな。その土台じゃ勝負にならねぇし、悪ぃが暴力で押し通るぜ」

　月山・カムイ（絶影・f01363）とガルディエ・ワールレイド（黒竜の騎士・f11085）は金の力で世を乱す大悪災を滅ぼすため、この花の御所へとやってきた。

「従うどころか後から後から出てきやがって……！　ああああムカツク！　いいからここで死んどけよ！！」

　自分を倒すために、次から次へとやってくる猟兵たちに日野富子の苛立ちは頂点に達している様子だ。そして、猟兵たちを焼き付くさんと、憎悪の込められた視線で彼らを睨み付けてくる。

「アタシの前に立つんじゃねぇ！」
「前に立たれるのが嫌なら、後ろに立てばいいのか？」

　カムイとガルディエをかばって、セゲル・スヴェアボルグ（豪放磊落・f00533）が日野富子の視線の前に立ちはだかった。カムイもガルディエも多少の被害は覚悟の上で突っ込むつもりだったが、相手は魔軍将たる強力なオブリビオンだ。まともに燃やされれば、肉を斬らせたつもりが、骨まで炭にされかねない。二人はセゲルに感謝を伝えると、盾を構えて進むセゲルの後ろに付いた。

「ぐ……凄まじい火力だな。だが耐えられん程ではないな」

　セゲルは紫の炎に燃えさかる盾を交換しつつ、日野富子へと突き進む。盾越しであっても猛烈な熱波が彼をあぶるが、持ち前の体力でそれを耐えきったセゲルは、日野富子の目前まで迫った。

「さあ、ここまで近づけばこっちのものだ」
「チッ、邪魔だ！」

　セゲルが日野富子の視線を塞ぐように盾を投げつけると、彼の後ろからカムイとガルディエが左右に分かれて飛び出した。

「小賢しいんだよ！　焼け死ね！！」
「ぐあっ！？」

　セゲルの投げた盾を振り払った日野富子がカムイへと視線を向けると、紫の炎の大爆発が起こり、その炎はカムイを包み込んだ。しかし、視線を向けられるのは一人のみだ。カムイを攻撃している間に、ガルディエは逆方向からの接近に成功する。

「騎士たるもの女性の言葉には従うべきだろう。正面に立つのは控えとくぜ」

　全身を『竜神領域』の不可視の領域で覆ったガルディエは、低空を飛翔しながら、日野富子の側面や背面に回り込むように位置取りながら攻撃を仕掛けていく。更には目潰しの雷撃に、念動力による顔の殴打とまで来れば、その視線はガルディエをまともに捉えることは出来はしない。例え多少の炎にあぶられたとしても、オーラによって強化した念動力の前では炎の威力は最小限に抑えられる。

「アタシのジャマをするなああああ！！」

　日野富子は爪を伸ばして近接戦闘で抗おうとするも、これまでの猟兵との戦いで右腕は重傷で使えない。左手の爪のみでは魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀を振るうガルディエに手数で負けていた。そして防御を突破したガルディエの攻撃は、次々に日野富子へと傷を与えていく。

「そらっ！　ここがてめぇの死に場所だ！！」

　ガルディエの振るった魔槍斧ジレイザによる渾身の一撃は、日野富子の爪をへし折り、彼女を吹き飛ばした。そしてぶつかって粉々に壊れた調度品の中から起き上がろうとした日野富子を、今度はセゲルのユーベルコードが捉える。

「忠なれば即ち二心無し。逆らわない方が身のためだぞ？」
「ぐはっ！　こんなもので、アタシを従わせられるかよ！」

　『承従タル対者』、先ほどとは逆に、セゲルの視線が日野富子を爆破する。服従の鎖は完全な効果を発揮しなかったが、動きを鈍らせるには十分だ。

「流石に簡単には御せんか。だが……」
「……終わりの時が来た、そういうことです」

　先ほど爆破され倒されたかと思ったカムイだが、もとより一撃は受ける覚悟。爆発に身を苛まれようとも、その痛みと呪詛を耐えきって日野富子の至近まで接近したのだ。

「ま、待て！　金ならやるから、ここは見逃せ……！」
「人を見下し、金子以外に誇る部分が無い程度の外道が……！」

　どこまでも金にすがる日野富子に、カムイの憤怒は頂点に達する。そして、怒りのままにカムイは、決着の一撃を放つのだった。

「痛みを教えてやろう、己の愚かさを呪い骸の海に逃げ帰りたくなるほどの、鮮烈な痛みをな！　咲き果てろ！　神域剣技・絶華！！」

　至近でしか使えぬ代わりに、絶大な威力を持つ一撃だ。亜光速にも至るほどの神速の突きは、日野富子の胸の中心を貫き、貫通した！

「クソ……金を持ってるアタシが正義のはずなのに……」

　日野富子の体は消滅し、骸の海へと還っていく。猟兵たちの勝利だ！　日野富子はすぐにまた骸の海より浮かび上がってくるだろうが、この調子であれば完全な討伐も近いことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月09日