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エンパイアウォー⑳~財に溺れしは克伐怨欲

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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●悪災、怨怒に狂い咲き
「この、この! 役立たずの愚図共が!」
 狂気にも似た女の叫びが、絢爛たる邸宅にこだまする。

 ――京都、花の御所。
 かつて戦火に晒され、歴史の波に呑まれ、躯の海へと消えていったはずの夢の跡地。
 しかし、それは確かに其処にあった。
 時代を超え、主を変え、かつての御所は今、理を歪める伏魔殿として聳え立つ。

「どうしてアタシの思い通りに行かない! なんでどいつもこいつもアタシに楯突く!」
 猟兵達が数多の兵を破り、富子の本拠であるこの地に迫りつつあるという報せが届いたのは夕刻過ぎのこと。
「忌々しい徳川の犬、猟兵共! それに信長の野郎もだ! アイツがもたもたしていなきゃ、アタシの金がアイツらに使われる事もなかったんだ! 徳川埋蔵金だ? フザけやがって……!」
 身を焦がす激情は炎となりて天を焼く。
 かつての才女は既に亡く、此処に在るのは憎悪に塗れた躯のみ。
「こうなったら全部アタシが殺してやる! アタシに従わない奴は全員、この手で殺してやる……!」

 富子無き謁見室。漂うは鼻をつく焦臭さ。
 其処に残されていたのは、引き裂かれ、黒く焼け爛れた伝令の成れの果てだった。

●禍を払い、恨を断つ
「皆の働きにより、『第六天魔軍将図』に記されていた『魔軍将』が一、大悪災『日野富子』の所在が明らかとなった」
 集まった猟兵達を見遣りながら、神々廻・夜叉丸(終を廻る相剋・f00538)は淡々と言葉を紡ぐ。
 場所は山城国。かつての足利将軍家邸宅、花の御所跡地。
 富子は有り余る私財を用い、そこに絢爛な邸宅を建てているようだ。
「幸い御所の内外共に警備や侵入者を迎え撃つ罠の類は存在しない。……余程自らの力に自信があるのか、はたまた驕りの表れか」
 相手はかの第六天魔王に仕えし魔軍将。油断して良い相手では決してない。
 そしてその本拠に攻め入るということは、自ら進んで火中に飛び込むことと同義。
「いずれにせよ、敵の力は強大だ。おそらくは厳しい戦いとなるだろう」
 だが、それでも、だとしても――。

 この世界を守る為に死地へ赴かんとするは10万の命。
 たとえその先に待ち受けるモノが逃れられぬ死の運命であろうとも、彼らが歩みを止めることは決してない。
 そんな彼らに報いる為、そして彼らが征く道の先を――この世界の未来を切り拓く為に。

「……かの大悪災を討つ為に、どうか皆の力を貸して欲しい」
 そう締めくくり、夜叉丸は猟兵達へ向け頭を下げた。


空蝉るう
 猟兵の皆様、こんにちは。空蝉るう(うつせみ・――)と申します。
 此度はサムライエンパイアの未来を守る為、どうか皆様の力をお貸しください。

●だいじなこと
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイア・ウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

●やるべきこと
 オブリビオン「大悪災『日野富子』」の討伐。

 シーンは邸宅内に侵入後、富子と邂逅したところから始まります。
 邸宅内は無駄に豪華かつ個々の部屋に十分な広さがある為、戦闘に支障が出ることはありません。
 もしかしたら小型の戦車くらいなら持ち込めるかもしれません。すごい。

 それでは、皆様の熱いプレイングを心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニィ・ハンブルビー
うわ…ヒスおばさんだ…こわぁ…
年をとってもあんな風にはなりたくないね…
なんて本音はさておいて!
この世界の平和の為にも躯の海に帰ってもらうよ!

てことでまずは視線対策だね!
人間用の鏡を用意して持ってくよー!
ほら、ボクの身長なら全身隠せるじゃん?
鏡って視線跳ね返すじゃん?
もしかして自滅するかもじゃん?
そうでなくても躊躇ってくれれば儲けものじゃん?
そして当てが外れても単純に盾になるって寸法だよ!
まあ【火炎耐性】で耐えつつごり押しでもいいんだけど!

そんなこんなで時間を稼ぎつつウェポンエンジン起動!
自分を【吹き飛ばし】て敵目掛けて猛【ダッシュ】!
そのまま懐に飛び込んで【熱き一撃】で思いっきりぶん殴るよ!


スペードスリー・クイーンズナイト
なんという恐ろしい女だ……だが、臆するわけにはいかん!必ずお前を倒す!

【ナイツ・ラウンド・シールド】を使用する
敵のユーベルコードの発動条件は視線だ
ならば我がユーベルコードで作り出した盾により視線を遮って防御する
もちろん視線を受ける盾は攻撃を食らうだろう
だが、いくら恐ろしい敵であろうとも我が盾はあのような信念を持たない……いや、金に対しての執着を信念というのならあるのかもしれないが、そのような自分のことしか考えていないような者には負けん!【鼓舞】
防御したらそのまま盾に身を隠し全力で勢いをつけて接近しランスによる攻撃だ!【ランスチャージ】



●小さな体、大きな心
 現し世に蘇りし絢爛豪奢な花の御所。
 その中心に坐すは、怨怒に狂いし大怨霊。
 高貴な出で立ちとは裏腹に、内に潜めし宿怨はどこまでも醜く、昏く。
「うわ……ヒスおばさんだ……。こわぁ……」
 その様相を目にしたニィ・ハンブルビー(炎の妖精・f04621)が、そんな言葉を漏らしてしまうのも無理はないのだろう。
「……そんなに死にたいなら、まずはアンタから殺してやるよ!」
 純真な妖精の落とす言葉に、富子のこめかみに走った幾重もの青筋。
 上塗りされた怒りに引き攣る表情を取り繕うこともせず、振り乱す黒髪はまるで修羅の如し。
「歳をとってもあんな風にはなりたくないね……っと!」
 血走った瞳が声の元を辿るよりも早く、ニィがどこからともなく取り出し構えたのは人間用の姿見だった。
 ニィの体を覆い、視線を遮る盾とするには十分すぎる大きさを誇るそれ。だが――。
「ハッ、一体何を出してきたのかと思えば! そんな薄っぺらい鏡なんかでアタシの炎を遮れるとか本気で思ってるワケ? ……ナメんじゃねえよ!」
 ニィの動きに富子が怯んだのも一瞬のこと。
 ありったけの憎悪が籠められた視線は立てられた姿見を容易く焼き尽くし、防ぎきれなかった紫炎がニィの体を容赦無く焦がしていく。
「うえっ……!?」
 その様をあざ笑うかのような表情を浮かべた富子が改めて捉えた妖精の姿。
 『もう、逃しはしない』と、その嗜虐的な笑みを更に深めて。
「燃えろ、燃えろ! そして死ね! 焼け死ね!」
 そう言い放った刹那、ニィの体は成す術なく紫の炎に包まれて――。
「うむ、なんと恐ろしい女だ……。だが、臆するわけにはいかん!」
 御所に響き渡る凛とした叫び。
 晴れた爆炎の向こう側で富子が目にした騎士の盾。
 小さき者を守り、悪を決して許さぬと、エンパイアの地に聳え立った鉄壁の城塞。
 それは大型の円形盾を構え、ニィを庇うように立ちはだかるスペードスリー・クイーンズナイト(女王の騎士・f20236)の姿だった。
「ハァ!? 何邪魔してんだよ! 死ね、死ね! 纏めて焼き殺す!」
 その身を焼き尽くさんと再び押し寄せた憎悪の炎に、スペードスリーの守りが揺らぐ。
 しかし、それでも今此処を退く訳にはいかない、仲間を傷つけさせる訳にはいかないと。
 スペードスリーは渾身の力を籠め、信念の盾を構え直す。
「ぐう、なんと悪辣な……! そこの君、大丈夫か!」
 スペードスリーの呼びかけに、突然の事で呆けていたニィの意識が引き戻される。
「えっ、あ……う、うん! ありがと、助かったよ!」
 ニィの目に映るのは激しく燃ゆる憎しみの業火。
 炎の精霊の加護を受けたその身であれば、おそらくは富子の一撃を耐え抜くことはできただろう。
 だが、まともに喰らっていれば反撃に移ることもままならなかったかもしれない。
 ニィはその心の内で頼もしき仲間へと再度感謝の言葉を落としながら、毅然とした態度で富子へと向き直る、
「ねえキミ、もう少しだけ時間を稼げるかな? そしたら、あんなやつボクの一撃で……!」
 ニィの背中で唸りを上げたのは飛行の補助にと身につけていたウェポンエンジン。
 しかし、そのエンジンが本調子となるには今暫くの時間を必要としていた。
「ああああ、ムカつく! 死ね! さっさと死ねェ!」
 富子の絶叫と共に更に激しさを増す怨怒の焦熱。
 文字通り焼け付くような腕の痛みにスペードスリーの頬を伝った流汗一筋。
「む、むう。流石にこれ以上は……いや! 耐えられる、耐えられるとも! 我が盾はあのような信念を持たない者には負けん!」
 もしあの異常なまでの金に対しての執着を信念と呼ぶのであれば、一応は富子にも相応の信念があるということにはなるのだろう。
 だが、自分のことしか考えていない歪な信念を持った相手などに負ける訳にはいかない。負けていいはずがない。
「ぬ、おおおおおおおおおっ!」
 左手には人々を守る為の盾を。右手にはかの悪災を貫き討つ為の槍を。
 盾に身を隠しながら全身全霊の叫びと共に、スペードスリーは自身の体を一本の槍として富子へと肉薄する。
「この、この、この! いい加減死ねよ! くたばれ!」
「ぐ、ぬ……!」
 絶えることなく叩きつけられる炎の波に、然しもの守りにも限界が近づいていた。
 悪災の眼前で膝を突くスペードスリー。勝ち誇ったような笑みを浮かべる富子。
 だがその一瞬、勝利への慢心から炎の勢いが弱まったその瞬間。
 スペードスリーの背後から飛び出し、弾かれるようにして富子との距離を詰める姿があった。
「なっ……!?」
 ウェポンエンジンの生み出す推進力に体を預け、弾丸のように駆け抜ける煌き一閃。
 拳に籠めるはかの騎士にも負けぬ熱き信念。
 今までにやられた分と、ここまで耐え抜いてくれた仲間の分。そして――。
「この世界の平和の為にも、躯の海に帰ってもらうよ!」
 懐で振り抜くその一撃はニィの想いに呼応し、どこまでも強く、熱く。
 それは単純で重い、熱を帯びただけの拳の一振り。
 されどそれは今、眼前の悪災を撃ち貫くもう一本の槍となる。
「――いっけえええええ!」

「……うむ! 誰にも負けぬ信念の篭ったその一撃……確かに見届けたぞ……!」
 地に伏し、朦朧とした意識の中でスペードスリーが見上げた先。
 そこには驚愕と苦痛で顔を歪ませた富子の姿が、そしてその懐へと突き立つ槍の如き拳を振り抜いたニィの姿が確かに映っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天御鏡・百々
金さえあれば全て思い通りになると思ったら大間違いだ!
金に囚われし過去の亡霊め、我が力にて滅ぼしてくれようぞ!

ううむ。なんと豪華絢爛な場所であることか
これほどの富を民のために使えば
一体どれほどの民が救えようか……

火矢の怨霊による攻撃は
神通力による障壁(オーラ防御64)で防ぐとしよう
そして、『天鏡破魔光』による破魔の光で
怨霊を悉く浄化してくれようぞ(破魔69)

日野富子に対しては
念動力10にて操る通常の鏡で『天鏡破魔光』の軌道を変えることで
敵の防御をかいくぐって命中させてやろう(鎧無視攻撃5)
味方がいるなら顔を狙い目潰し5で援護だ

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG


セプテンバー・トリル
事態が貴女の思い通りにいかないのは貴女自身のせいですわ。
策は潰され、金は奪われ、自らの命すら守れず消えるのは、何もかも貴女が間違えているせいですもの。

【WIZ】連携・アドリブ歓迎
こちらの挑発で放たれる先制攻撃を【ガイドロッド】で召喚した【ナックルダンパー】で受け止め…いえ、体当たりで潰します。
それを避けた火矢に対しては氷の【属性攻撃】による【誘導弾】で相殺しましょう。
その後にUC【霧幻抱擁】を発動。向こうの視線を遮る濃厚な霧で敵の周囲のみを覆い、攻撃を阻害しますわ。
霧を凝縮させた竜の分身と私の【螺旋剣】で直接攻撃。
これにも氷の【全力魔法】を乗せます。

貴女に必要なお金は六文銭で充分ですわ。



●宿る命の輝きに
 崩された体勢を立て直す為に一時身を引いた富子の瞳が捉えたのは新たな猟兵達。
 それは天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)、そしてセプテンバー・トリル(ゼネコンのお姫様・f16535)の姿だった。
「退けよ! 揃いも揃ってアタシの邪魔をすんじゃねぇ!」
 先の猟兵達を庇うよう立ち塞がった二人。それを憎々しげに睨みつけるは大悪災。
「いいえ、退きませんわ」
 まるで御所そのものが軋むかの如き禍々しい重圧の中、セプテンバーが凛とした態度を崩すこともなく静かにそう告げる。
「その通り。何もかもが貴殿の思い通りになると思ったら大間違いだ!」
 それは百々もまた同じ。
 金に囚われし過去の亡霊を調伏せんと、自身の本体たる神鏡を手に並び立つ。
「この……! どいつも、こいつも、アタシに楯突いて……!」
 何故アタシに従わない? 金を集める事の何が悪い?
 何時の世も愚かな民草は変わらない。そう、そういえばあの時もそうだった――。
 不意に富子の脳裏に過るのは、かつて『日野富子』として生きていた頃の記憶。
 積み重なり続ける苛立ちに、富子の纏う憤怒の炎は勢いを増すばかり。
「そもそも、事態が貴女の思い通りにいかないのは貴女自身のせいですわ」
「あァ……!?」
 地団駄を踏むその姿を認めたセプテンバーは、畳み掛ける様更に言葉を紡いでいく。
「策を潰され、金は奪われ、人々から後ろ指をさされ……何もかも、貴女が間違えているせいですもの」
 向けられた言葉の一つ一つが、その身体の奥深くへと突き立てられる。
 心の奥底から湧き上がる不快な感覚は富子の思考を鈍らせ、その全身をただ一つ――憎悪という感情で塗りつぶしていく。
「そう、これから貴女が自らの命すら守れずに消えていくのも」
 落とされた言葉に世界が凍りつく。
 刹那、凍りついた世界を焦がすよう燃え盛った深紫の炎。
 セプテンバーの挑発を受け、富子の怒髪は天を衝くかの如く。
「ふざっ……けんじゃねぇ! もういい、死ね! すぐに死ね! 殺す、殺してやる!」
 間髪を容れず富子の背後から放たれたのは、かつての戦で飛び交った火矢の怨霊。
 冷静さを欠いた主に呼び覚まされる幾百もの殺意の雨は、その目に映る全てを射殺さんと部屋中に降り注ぐ。
「…………!」
 飛び交う火矢を神通力による障壁で逸らしていく一方で、百々は射抜かれていく調度品へと視線を向けていた。
 それは知識の無い者が見ても分かるほどに豪華絢爛な品の数々。
「これほどの富、民の為に使えば一体どれほどの者達が救えようか……」
 音を立て崩れていく器物達を見つめ、真一文字に結ばれたその口元。
 しかし、百々が感じている怒りはそれだけではない。
 たとえその目的が違えども、道具とは人々の助けとなる為生み出されたもの。
 それらが今、心無き者によって無慈悲に打ち壊されている。
 自らの役目を果たせずに死にゆくそれらを想えば、ヤドリガミである百々の心中が穏やかであるはずもなかった。
「やめぬか! 貴殿は道具を……この者達を、一体何だと思っておる!」
 百々の悲痛な叫びに、富子の視線が移される。
「ハァ? 知るかよ! 道具なんて壊れたなら買い直せばいいだけだろうが! くだらねぇこと言ってねぇでとっとと死ね!」
 富子の怒りに呼応し、降り注ぐ矢雨は更にその勢いを増していく。
 積み上がる怨怒は見境なく、目に映る全てを焼き尽くす。
 しかし思考すらも鈍らせる程の強烈な憎しみは富子から正常な判断力までをも奪い、精確な狙いをつけることを困難とさせていた。
「ああ、ムカつく、ムカつく! なんでまだ生きてんだよ! 早く死ねよ、なあ!」
 憎しみが憎しみを呼ぶ悪循環。意識せずして大振りになる攻撃。
 ガイドロッドで召喚した大型ダンプトラック・無双運搬車両【ナックルダンパー】の陰から様子を伺っていたセプテンバーは、富子に生まれたその隙を決して見逃さなかった。
「……今ですわね!」
 その呟きに応えるよう高らかに唸りを上げたエンジン。
 放たれる火矢を叩き潰しながら、ナックルダンパーはその視線を遮る形で富子の元へと疾走する。
「チィッ……!」
 鋼の巨体がその身を掠めた瞬刻、セプテンバーへと向き直った富子を覆うのは濃厚な毒の霧。
 一寸先も見えぬ程に広がった霧の海は、視界を奪うと同時にその身を少しずつ蝕んでいく。
「このっ……程度で! アタシを止めたつもりかよ! 姿が見えなくても数撃ちゃ当たるだろうが!」
 自身を蝕む毒霧に怯むこと無く解き放った火矢の群れ。
 しかし、それらがセプテンバーの元へと届くことはない。
「ギャッ……!」
 毒霧の向こう側から不意に差し込んだ一筋の光芒。
 それは百々の本体たる神鏡から放たれた、悪しきを祓う破魔の輝き。
 その輝きは飛び交う火矢を浄化するのみならず、邪悪の根源たる富子の肌を容赦無く焼き清める。
「ゴホッ……! なんだ、どうなってる!? この光、なんでアタシを追いかけて……!」
 降り注ぐ痛みに堪らず身を翻すも、その度に軌道を変え追従する光から逃れる事は叶わない。
 混乱の最中、激しく咳き込みながらもやっとの思いで毒霧から逃れた先。富子が目にしたものは――。
「か、がみ……?」
 それは百々の念動力によって操られた道具達。
「そう。貴殿が手にかけ、買い直せば良いと断じたその鏡達だ!」
 調度品として室内に飾られていた、矢雨に穿たれ罅割れた幾枚もの鏡の姿だった。
「ナイスアシストですわ!」
 呆ける富子の懐から響いたセプテンバーの声、そして突如として身を包んだ極寒の冷気。
 慌てた様子で眼下を見遣るも、時既に遅く。
「貴女には沢山のお金なんて必要ない。六文銭で充分ですわ!」
「貴殿が粗末に扱った道具達の力……そして我が力にて、今ここで滅ぼしてくれようぞ!」
 目も眩むような浄化の輝きの向こう側、次いで振りかざされたのは螺旋の剣。
 冷気を纏ったその剣は富子の身体を容易く引き裂き、追従する毒霧の竜は決して癒えぬ傷を刻みつける。
「ああああっ! 痛い、痛い! この、クソっ……猟兵風情がぁ……!」
 襲いかかる痛みに耐えきれず、富子は猟兵達へと背を向け奥に続く部屋へと姿を隠す。
 セプテンバーと百々は互いに頷き合えば、闇の中へ消えたその姿を共に追いかけていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウィルバー・グリーズマン
前に立つなと言っているので、立たない事にしましょう
それにしても怖いですねぇ

『シャドウプラン』で最初は影の中で日野富子の視界から逃れるようにしましょう。影を見てきたら、「カウンター」の「全力魔法」で『フラッシュボール』を発動して、目を眩ませます
UCが発動可能になれば、『ミスチーフ』で転ばせてから、『マッドネスソーン』で床などを粘着化させて【マッドハッター】発動です
ルールは、[目を開けるな]

後は影から剣や針を作り出して斬ったり貫いたり
『ブラスト』の土弾で物理攻撃も良いでしょう。これも粘着化してあるので、ウザい事この上ないでしょうね

思い通りに行かないのはよくある事です
気を落とさずに頑張って下さいねぇ



●Trick and Magic
 止むことのない追撃から逃れ、御所の中を駆け巡ること四半刻。
 既に日は落ち、絢爛たる邸宅は夜の闇に包まれ始めていた。
「ハア……ハア……! クソッ……クソ、クソッ! なんでアタシがこんな目に……!」
 辿り着いた一室で追手を振り切った事を認めれば、次に湧き出してきたのは身勝手な怒り。
 最早目に映る全てが憎いとばかりに、豪奢に飾り立てられた室内を引き裂き、踏み荒らす。
 整った顔立ちも今は尽きぬ怒りとその身を苛む苦痛で歪みきり、乱れた黒髪は宛ら修羅の如く。
「鬼の様な形相で八つ当たりとは……いやぁ、怖いですねぇ」
 そんな富子の耳朶を打った男の囁き。
 弾かれたように辺りを見渡せど、声の主は見当たらない。
「誰だ! 人ん家でコソコソとしやがって……とっとと出てこいよ、オイ! すぐ殺してやるからさぁ!」
 無作法な侵入者を焼き殺さんとする視線は右へ左へ忙しなく。
 声を荒らげ、畳を踏み鳴らし、闇の中へと言葉を投げる。
「いやはや、殺すと言われているのに素直に出ていくはずが無いでしょう」
 どこまでも落ち着きを払ったその響きに思わず頬が引き攣った。
 募り募った苛立ちの数々。我慢の限界などはとうに超えていて。
「テメエ、アタシをナメんのも大概に……!」
 と、血走らせた瞳が捉えた一角。
 先の見えぬ暗闇で、殊更に影の深まったその一点。
 "何かがいる"。そう確信した富子はその口角を残酷なまでに吊り上げて、ありったけの憎悪を籠めた視線を投げかける。
「クソ野郎が、今すぐぶっ殺してやる! アタシの前に立った事を後悔して――!」
 放たれた視線が影に届くその瞬間、須臾にして激しく輝いた魔術の光。
 暗闇を真昼間の如く照らし出す光の奔流は、闇に慣れた富子の目を焼くと同時に一人の男の姿を浮かび上がらせた。
「なん……っ! ――ああああっ!」
「立ちませんよ、前になんて。焼かれたくはありませんし」
 突然の輝きに目を潰され狼狽える富子のすぐ後ろ。
 自身の魔術でこの瞬間まで影に身を潜めていた男――ウィルバー・グリーズマン(入れ替わった者・f18719)の姿がそこにあった。
「クソ、クソクソッ! フザけんなッ!」
 徒らに爪を振るえども、ただただ虚しく空を切るばかり。
 激情のままに悶え苦しむ哀れな躯は、既に魔術師の掌の上。
「死ね! 死ね、死ね……ぐあっ!」
 ウィルバーの紡いだ次なる魔術は、愚か者の足を掬うささやかな悪戯。
 視界を奪われ平静を失ったその身では、子供騙しの魔術すらも避けることは叶わない。
 後頭部を強かに打ち付けた富子がうめき声を上げたのも一瞬、全身を覆う粘つきに、これ以上なく歪みきった表情を更に歪めて吠え猛る。
「人を馬鹿にするのも大概にしやがれ! こんなもの……こんな……!」
 もがけばもがく程に纏い付く粘着感は強まるばかり。
 今までに感じた事もない程の屈辱に塗れるその中で、富子は漸く目の痛みが引いてきたことを感じ取る。だが――。
「では、ここでゲームでも始めましょうか。ルールは……『目を開けるな』」
 ウィルバーの言葉と共に体中を這い回るような不快な感覚。
 魔術的な拘束は富子の思惑を決して許す事無く、その身を雁字搦めに縛り付けていく。
「何がゲームだ! こんなモンでアタシを止められると思ってんなら――」
 突きつけられた理不尽なルールに従う理由などありはしない。
 全身に刻みつけられる苦痛に歯を食いしばりながらその目を開けども、其処にウィルバーの姿は無い。
「グッ……クソ、どこに行った! どこに……!」
 憎き魔術師を探すことに意識を向けていた富子は、自身の足元から這い上がる影に気づけない。
 それらは多種多様な武器の姿を形取り、無防備なその身体を傷つけた。
「ああああっ! クソッ、クソォッ!」
 ありったけの怨嗟を吐き捨てながら、堪らず部屋を飛び出し闇の中へと駆けていく。
 そんな富子の背中を追いかけるよう掛けられた言葉が一つ。
「何事も思い通りに行かないのはよくある事です。気を落とさずに頑張って下さいねぇ」
 ダメ押しとばかりに放った土弾の行方を見送りながら、ウィルバーは再び影の中へと姿を消していった。

成功 🔵​🔵​🔴​


●焦がす炎、そこに残るのは
 板張りの軋む音。
 血痕滴る廊下の先に、色鮮やかな十二単を忌々しげに引きずる姿が一つ。
「痛い、痛い痛い痛い……! なんだってアタシがこんな……。この……誰か、誰かいないの……!?」
 宵闇の中で問いかけてみても、返されるのは木霊だけ。
 自ら人払いを行った屋敷を彷徨い歩き、やっとの思いで行き着いた御寝所。
「誰か……ハア……アタシを、助けなさいよ……!」
 不意に感じとった気配、思わず襖へと掛けた手が止まる。
 それは富子の背後から、暗がりの彼方から迫る影。怨敵たる猟兵が二人。
「ハア……クソ、いい加減にしろよ……! なんなんだよ、アンタ達はさぁ!」
 その姿を認めるよりも早く、振り返りざまに放たれた火矢の嵐。
 最早この屋敷が燃え落ちようとも構わない、また立て直せば良いのだから。
 だが、それよりも、今は――。
「アタシを一体誰だと思ってんだ! 足利将軍家御台所、日野富子だぞ!」

 気に入らない、気に入らない、気に入らない。
 アタシは正室だ、将軍の妻だ。なのに、誰も彼もがアタシに歯向かう。
 金を集めて何が悪い? アイツがしっかりしないなら、アタシが上手く立ち回るしかないだろうが。
 信じられるのは金だけ。そう、金だけは嘘をつかない。
 こんな世の中でも、金だけは裏切らない。金は正義、アタシは正しいんだ。

 ――偽りの ある世ならずは ひとかたに

 ――たとえ上手く立ち回ったとしても、天さえもがアタシを裏切る。
 そう、こんな時代だからこそ、アタシは――。

 怨怒の業火は全てを焼き尽くす。
 人の想いも、心も、過去も。
 燃えに燃やして焼き焦がされて、後に残るは躯だけ。

「従え! 平伏せ! わかったらとっとと死ねェ!」
浮世・綾華
黒羽(f10471)と

先制対策
氷の花弁を巻き込み火矢を消し落とすべく
夏ハ夜の範囲・属性攻撃で強風を起こす
万一火種が落ちてもご自慢の屋敷が燃えるだけだろ
多少の矢は受けても、という覚悟だ

巫覡載霊の舞を使い接近戦へ
まずは黒羽の攻撃の補佐
ピアスの誘惑で引き付けたり
衣を靡かせフェイントでかわしたり
神霊体で攻撃を引き受けたりしながら
隙が出来る瞬間を見計う

――黒羽。どいてな
頭に触れたのは一瞬

首を狙って放つ衝撃波
全力を鍵刀に込め

痛みを伴いながら戦う彼を否定することはない
それがお前のやり方なら

いいよ、と笑う
(俺も人のこと言えねーしな
でも、放っておいてやる筋合いもないから)

何度だって一緒に戦ってやるよ

アドリブ歓迎


華折・黒羽
綾華さん(f01194)と

先制対策
迫る火矢に向けられた風に
氷の花弁を織り交ぜ
その動きを少しでも殺ごうと

綾華さん対しいつも燻らせてしまう対抗心
内の炎が自身の脚を叩き動かし
屠も持たぬその身で前線へ駆ける

武器は四肢だと言わんばかりに
力の限り敵へと叩き込む爪、拳、脚
一瞬の隙が命取り
野生の勘を行使し集中は高めていくまま
受ける傷すら激痛耐性で耐え続け

負けたくない
追いつきたい

─あの背に

脳裏浮かぶ赤い羽織
不意に耳打つ声に
反射でその場を退いた

放たれた攻撃は舞の様に優雅に見えて
上がる息のまま見惚れる
けれど視線が向けられたなら
気まずそうに顔は逸らされるだろう

未熟な己の不甲斐無さに、拳を握った

※アドリブ歓迎



●追う背中、浮世の随に漂いて
 吹き込んだ一陣の風、富子の視界を覆うように舞い散ったのは氷の花弁。
 凍てつく逆風は降りしきる矢雨を散らしながら、夏夜に似合わぬ寒を呼んだ。
「ああああ! もう誰でもいい! 誰かアイツらを殺せ、ぶっ殺せ!」
 狂気に染まった怒号が空気を震わせるその一方で、地を穿つ雨音を掻い潜りながら進む影が一つ。
 尾先を季節外れの寒風に靡かせながら、一歩一歩を跳ね跳ぶように肉薄する黒き翼。
 月明かりが映し出したのは武器すら持たぬ黒猫――華折・黒羽(掬折・f10471)の姿だった。
「ナメやがって、ナメやがって! 死にたがりは勝手に死んどけよ、なあ!」
 歯噛みと共に新たな産声を上げ殺到する火矢の怨霊。
 死の気配が間近へと迫った、刹那。
「――、」
 富子には届かぬその囁き。
 少しだけ顔をしかめた黒羽が頭を下げれば、その頭上を翔け抜けた鍵刀一閃。
 縋り付く魔の手が打ち払われれば、その道を阻むモノは何もない。

 ――タッ、タッ、タッ。

 耳に残ったその声が、どうしようもなく心を燻ぶらせるんだ。
 負けたくない、追いつきたい。
 それでも、あの人はいつも俺の先にいて。
 
 追い風を全身で受け止めながら宵闇を駆ける。
 たとえその身が削られようとも、ただがむしゃらに突き進む。
 そんな姿を見つめる浮世・綾華(千日紅・f01194)は、迫る矢雨に再び鍵刀を構えた。

 傷つく事を厭わないと言うのであれば、それでいい。
 それがお前のやり方なんだよな?
 なら、俺はそれを助けよう。
 だからな、黒羽。お前は――。

 『――前だけを見て、突っ走れ』

 神霊と化した綾華の体躯。その動きは軽やかに、華やかに。
 まるで舞踊でも舞うかの様に、手にした刃で風を裂く。
 一度振るえば巻き起こる風が火矢を払い、二度振るえばその衝撃は富子の眼前に迫りゆく。
「さっきからチャラチャラと鬱陶しいんだよ!」
 降り注ぐ火雨。衣を靡かせ、舞い踊ること三度、四度。
 薄笑いを浮かべる綾華の姿は、富子の神経を逆撫で、その視線を釘付ける。

 ――タッ、タッ、タッ。

 俺の心の燻りが、この脚を叩き動かすんだ。
 敵わない。だからこそ、叶えたい。
 届かない、でも届かせたい。
 ――あの、背中に。

 富子の至近へと詰め寄れば、繰り出す一手は徒手空拳。
 剣が無ければ拳を振るえばいい。盾が無ければその身で受ければいい。
 爪も、拳も、この脚も。
 全てを自らの武器として、力の限りに叩き込む。
「コイツ……ッ!」
 いくら矢を放とうとも怯まない。
 いくら爪を振るおうとも止まらない。
 致命の一撃を既の所で避け続ける黒羽の姿に芽生えた恐怖。
「く、来るな、来るなッ……!」
 狼狽えるようにその身を翻し、距離を取る。
 幾度目かの号令、飛び交う怨霊達。
 放たれた紫炎の鉄鏃が、遂に黒羽の右肩を捉え、貫いた。
 焼け付く痛みに足が縺れ、意識に反して体が傾く。
「…………ッ!」
 生まれた空白の時に殺到する矢の嵐。
 右足、左肩、左大腿。体を穿たれる度に苦悶の声が漏れ出して。
「まだ……まだっ……!」
 突き刺さった鏃を乱暴に引き抜けば、黒羽は再び地を蹴って走り出す。
 まだ止まらない、止まりたくない。
「ハッ……ハハッ! いいザマだなぁ、オイ!」
 明らかに動きの鈍った姿に嘲りを浮かべたのも一瞬、伸ばした爪は悪鬼の如く。
 眼前の命を刈り取らんと、高く、大きく振り上げる。
「死に損ないのクセに生意気なんだよ! これで――!」

「――黒羽。どいてな」
 
 不意に視界で翻った赤い羽織。
 ふわり、と。頭に触れられたのは一瞬のこと。
 耳打つ声に、思わず身を退いた。

「ああ。これで、終わりにしようぜ」
 弟分を害さんとする躯には手向けの花など必要ない。
 力強く、されどその動きは流れるように。
 握りしめた鍵刀にありったけの力を込めて――ただ、振り抜く。 
「ガッ……ゴボッ……!」
 瞬刻、富子の喉元に咲いた赤い華。
 振るった刃は届かずとも、吹き抜けた刃風はその首を捉えていて。
 流れ出る命の色はとめどなく。はたり、はたりと地を濡らす。
「ぐ……ぎ……! こんな、こん、な……!」
 崩れたその身で地を這いながら、逃げ縋る先は襖の向こう。
 もう、永くはないのだろう。
 そんな富子を横目に、綾華が駆け寄った先は弟分。

 放たれた一撃は優雅な舞のようで。
 気がついた時には全てが終わっていて。
 大丈夫かと問いかける声に、顔を背けてしまう。
 ――まだ、届かない。
 自分の不甲斐なさに、思わず拳を握りしめた。

 声を掛ければ気まずそうに顔を背けるその姿。
 傷だらけになりながらも、がむしゃらに走り続ける青二才。
 でもな、それでもいいんだ。俺だって、人の事は言えねーしな。
 ただ、まあ、放っておいてやる筋合いもないから――。

「何度だって、一緒に戦ってやるよ」

 それは誰にも聞こえぬ程の小さな声で。
 月明かり差し込む屋敷の中、今だ顔を背け続ける弟分に綾華は堪らずくつくつと笑いを零した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

杜鬼・クロウ
アドリブ、連携、怪我◎

嘗て才女だった面影すらねェ…なれの果てか
見るに耐えねェ
只のヒステリー女だな(憐れむ
だが実力的には申し分ねェ、油断はしない
根刮ぎ刈り取ってヤんよ!(挑発

黒外套翻し
担いだ玄夜叉を振り下ろし地面に突き立て
【錬成カミヤドリ】で神器の鏡を46個複製
敵の攻撃を鏡を重ね緩和し防御
貫通するなら剣でいなす(見切り・第六感
つんざく爪の音に眉顰め
長い爪の上を走り抜ける
間髪入れず本体へ一直線
紅炎を剣に宿し助走つけた勢いで炎の熱を顔面に
少し怯んだら隙突いて胴に横薙ぎ(属性攻撃・2回攻撃・部位破壊
零距離打撃
仲間がピンチなら武器受け・カウンター

女の顔を穢すのは心が悼むがなァ!
元々醜いから変わンねェか



●求め溺れて、その果てに
 満足に力の籠もらぬ体で這いに這い、震える手足で壁を伝いて行き着いた終焉。
 喉元から漏れ出す風の音は揺らぐ灯をかき消すようにひゅうひゅうと。
 身飾る重も血に塗れ、丈なす艷やかな黒髪は見る影も無く。
「嘗て才女だった面影すらねェ、そのなれの果て……か」
 ぽつり、ぽつり。
 骸の耳を打ったのは、静寂に落ちる憐憫の呟き。
 月明かり遮る人影に顔を上げれば、そこには悪災見下ろす男が一人。
「……ああ、見るに堪えねェな」
 担いでいた玄夜叉を振り下ろしながら杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)はそう独りごちる。
「ク、ソ……! アタシを……ハア、そんな目で……見てんじゃ、ねえ……!」
「ハッ、ヒステリー女が死に体でよく吠えやがる。だがなァ、それもここまでだぜ」
 地に伏す富子の首元へと添えられた黒刀の切っ先。
 刃が伝える冷たさは死への誘いか、はたまた救済か。
「こんな……こんな終わり方があってたまるか……! アタシは認めない……認めない……! 認めてなるものかぁっ!」
 閃きは一瞬。不意の爪撃は火花を巻き上げ、向けられた黒鉄を退ける。
 力の籠もらぬ足取りで立ち上がる姿は幽鬼が如く。
 されども瞳に宿る深き怨怒は、未だ衰えることを知らず。
「へえ、腐っても魔軍将ってことか。いいぜ、まだ殺り合うって気があるってンなら、俺が根刮ぎ刈り取ってヤんよ!」
 不敵な笑みと共に外套を翻せば、クロウは弾かれた玄夜叉をそのままの勢いで板張りへと突き立て、富子の姿を真っ直ぐに見据える。
 手負い、朽ちかけの骸とはいえ、眼前に立ちはだかるは音に聞こえし大悪災。
 その実力を理解しているからこそ、油断するつもりは決してない。
 ――舞い上がれ。
 呼び声に応えるかのよう現れたのは、神鏡の写し身たる46枚の複製された鏡達。
 その大立ち回りを認めれば、富子の顔が醜く歪む。
「ああああッ! クソッ! 目障りなんだよ、アンタ達猟兵はさぁ! ちょっと目こぼしてやったら、調子に乗ってアタシ達の国でうろちょろしやがって!」
「ハッ、此処が誰の国だって? 耄碌してんじゃねェのか、時代遅れの阿婆擦れがよォ!」
 振るわれる我武者羅な一閃はその一筋一筋が致命の一撃。
 虚空を刈り取る風切り音に身を引いた瞬間、クロウの耳に届いた金属音。視界の隅で弾けた鏡片。
「チッ、こいつは……」
 頬を掠めた爪の音に眉を顰めれば、突き立てた玄夜叉を抜き取り自らの盾とする。
 繰り返される命のやり取りの中で徐々に数を減らしていく複製達。
 詰めようにも詰めきれぬ現状が、クロウの心に僅かな焦りを生み出していく。
「消えろ、消えろ、消えろ! これ以上アタシのジャマをすんじゃねえ!」
 決して戦い方を、その対策を間違えている訳ではない。
 富子の放つ絶え間のない爪撃とクロウの操る有限の複製達。
 それら二つの相性の悪さが、今のこの状況を作り出していた。
「…………ッ!」
 ――躱し損ねた。
 クロウが理解するよりも早く、左肩に刻まれた深い傷跡はその体に耐え難い苦痛を伝えていた。
 ぐらついた体幹。富子の顔に広がる喜色。
 今が好機とばかりに、伸ばしに伸ばしたその爪を大きく振り上げて。
「死ね!」
 慈悲無く振り下ろされる一閃は確実な死を与える為に。
 だがしかし、それは煮え滾る怒りが故か。
 終わりを齎すべきその一撃はどうにも大振りになってしまっていて。
 其処に生まれた僅かな隙を、クロウは決して見逃さない。
「……甘ェんだよ!」
 迫る爪撃の合間をくぐり抜け、駆け抜け目指すはその懐へ。
 赤熱する黒刀に宿すは紅炎。
 風を切る勢いに任せ、深く、大きく振りかぶる。
「なっ……ぐっ、熱っ……!」
「女の顔を穢すのは心が悼むがなァ! ま、元々醜いから変わンねェか!」
 迸る炎熱、弾けた火の粉。
 視界を覆う炎の波に意識を逸らされた、刹那。

 ――ザンッ。

 真一文字に振るわれた玄夜叉が、富子の体を真っ二つに斬り裂いた。

「……この世界は今を生きるヤツらの為にあるンだよ。それが分かったら、骸の海にでもとっとと還りやがれ」
 二分されたその体は漏れ出した紫炎に焼かれ、光の粒子となって消えて逝く。
 摂理を歪めし骸には、二度目の手向けなど必要ない。

 怨怒の業火は全てを焼き尽くす。
 人の想いも、心も、過去も。
 燃えに燃やして焼き焦がされて、其処には何も残らない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日


挿絵イラスト