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エンパイアウォー⑳~憤怒の大悪災

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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●大悪災――日野富子は咆哮する
「ああムカツク! ああああムカツク!」
 長い髪を振り乱す女は、第六天魔軍将図に名を連ねる一人、日野富子その人だ。
 いましがた報告に現れた配下の忍びは、彼女の憎悪に触れて断末魔を上げ焼死した。紫の死煙が上がる。
「猟兵どもがここへ来る!? ナメてんのか! クソ! クソ! どいつもこいつもバカにしやがって!」
 憤怒に双眸が尖る。
「猟兵を殺して、徳川も殺して、」
 女の爪は鋭く尖る――紫の炎に照らされ輝く。

「もちろん信長の野郎も、ぶっ殺す!!!

●嘆息する羅刹
 欠けた角を紫のグリモアで補完する三本角の羅刹は、集まった猟兵を言葉少なに労った。
 サムライエンパイアは戦火の只中にあるが、着実な戦果の賜物――『第六天魔軍将図』に名を連ねる、大悪災『日野富子』の居場所が判明した。
「場所は京。花の御所――日野が私財で作り上げた豪華絢爛な御所だ」
 そこで怒れる女が咆哮を上げている。
「アンタたちが徳川埋蔵金を見つけまくったから、すごく怒ってる」
「……うん?」
「怒ってる理由はアレだが、軍将図に名のある女だ――気を抜くなよ」
 戦闘になる場所は、広い。とにかく広い。その私財を投入し贅の限りを尽くした部屋だ。
 いまだイグサの香り立ち込める真新しい畳が敷き詰められている。
 普通の畳じゃあない。縁には金糸が使われ、品よく金色に輝いているし、欄間には芍薬の花が精緻に彫られている。
 そして、日野も例に違わず、必ず先手をとって猟兵に牙をむく。
 これに対抗しうる策を練り、ユーベルコードをぶつけ凌がなければ、反撃することもできず返り討ちに遭うだろう。
「その策も不十分だったら意味がない。一分の隙なく、徹底的に策を練ってこい」
 羅刹の角が強く紫に輝く。
「アタシのグリモアと、日野の炎が同じ紫なんて癪に障るけど――」
 小さな欠片ももれなく光る。
 繋がった。サムライエンパイアは京――豪華絢爛な花の御所。
「必ず討ってきて」
 長い睫毛が縁取る紫の猫目が、猟兵たちを映しゆく。
 志崎・輝(紫怨の拳・f17340)は、強く一度頷いた。
「アンタらを信じてる」


藤野キワミ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================
大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
====================

藤野キワミです。
難易度相当の判定になります。その覚悟でいてください。

なお、当方の執筆時間確保のため、このシナリオのプレイング受付日時を設定します。
プレイング受付は、当OP公開直後より、【8/8(木)23:59まで】といたします。
先着順ではありませんが、内容いかんで不採用を出す可能性があります。
集まったプレイング数、内容を見て再アナウンスを、マスターページおよびツイッター(@kFujino_tw6)にて行います。
私事で制限をかけてしまいますこと、ご容赦ください。

それでは、カッコいい燃えるプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アレク・アドレーヌ
まぁ奴さんめっちゃ苛立って入るみたいではあるがそもそもその原因が押し寄せてくるからそりゃあそうなるわな

でも慈悲とか全くする気ないけどな!…悲しいけどこれ戦争なのよね
とボケを入れつつも相手の強さ的にそんな余裕はなさそうな気もするが勝手に相手苛立ってるからこっちもつけいりやすいわけで。
とりあえずはUCを使って速さに特化し様子見。
相手の攻撃を確認後【ダッシュ】【早業】【ジャンプ】【逃げ足】で脚を使ってとことん掻き回してさらに主導権を奪っていこう。そして隙が出来たら殴るを繰り返してアドバンテージを取っていきます


香神乃・饗
香神写しで武器を増やし
殺気を警戒しフェイントや暗殺を喰らわないよう、苦無を使い、受け、流し、掻い潜って、力溜めた苦無で一閃ぶった斬るっす!
この数は伊達じゃないっす!9本位凌ぎきってやるっす!
畳返しする等地形も利用して避けるっす
命も体も無駄に削らない、覚悟を決めて死力を尽くして突き進むっす
剛糸で爪を縛りフェイントをかけられない様にしておくっす

金って何っすか?
金で人を従えたかったんっすか?
笑わせるっす!
想う心が無かったら誰もついてかないっす!心は金で買えないっす!
人は想うと強いんっす!
金しか見てない奴は、人に足元すくわれるっす!
ここでずっとわめき散らしてればいいっす!


三寸釘・スズロク
冥府、もとい骸の海に財は持ち込めぬってか。
お気持ちお察ししますケド
そんなにお怒りになってちゃ美人が台無しですよ?
あっごめんなさっ…
おお怖…人形遣うか…

『エレクトロワイヤー』スイッチオン、『バーゲスト』起動…

……
奴の攻撃にはまず人形を前に出して庇わせて
鋼塊の身体で只々耐えさせる
[激痛耐性]多少『俺』が喰らったって別にいい
反撃は【首なし人形の戯れ】
大立ち回りでご自慢の邸宅ごと八つ裂きにしてやるよ

ああ、うるっせえなあ…!
何でも自分のモノになんなきゃ気が済まねえ、
何でも自分の思い通りになんなきゃ気が済まねえ…
悪くねえな、ニンゲンの汚え部分の塊みたいで
『俺』も同じだよ
望みはうるせえてめぇをブッ潰す事だ!



 『第六天魔軍将図』に名を記された一人、大悪災たる日野富子。
 その艶やかな長い髪を逆立て、広間に踏み込んだ猟兵を睨め付ける。
 日野の眼光は鋭く、苛烈に激烈に怒りを燃やし、アレク・アドレーヌ(出来損ない・f17347)を射抜く。
 その苛立ちは相当なものだ。
 理解できなくはない。日野の怒りの原因たる猟兵が大挙して花の御所へ詰め掛けているのだ。
「……まあ、そりゃあそうなるわな」
「哀れんでんじゃねえ! てめえからぶっ殺す!」
「けっこう! はなから慈悲をかける気は全くない!」
 悲しいけど、これ戦争なのよね……とおどけてみせたが、女の怒りはおさまらない。
 むしろ火に油を注いだ。
 強固に尖った長い爪が、禍々しく光り、着物の裾跳ね上げ疾駆――アレクに迫る爪撃は、銀線を描き空を裂く!
 素早い強烈な斬撃――飛び退る。
 熾烈な刺突、翻り疾る鋭爪、一足踏み込んで振り上げる斬閃――息を詰め、辛くも躱すアレク。
「戦争だあ!? てめえに言われるまでもなく! はなから! わかってんだよ!」
 吠える日野の爪による連撃は、アレクを追い詰める。
 怒りに身をやつし我を失っているかとも思ったが、存外その判断は冷静だ。
 アレクの着地点へ日野は爪撃を繰り出してくる。
 顔面を狙ってくる刺突を、咄嗟にしゃがみ込んで躱す、その先に反対の手で横薙ぎに迫る爪、アレクは視認する、体が本能的に後ろに倒れこみ回転し距離をとる――躱せない。
「がっ」
 腹に衝撃。
 熱く広がる、鋭く刺さり、猛然と襲い来る激痛、消失感――否、ここで倒れるわけにはいかない。
 痛みをおして踏ん張り立ち上がった。足裏に力がこもる。真新しい畳がえぐれた。
「ぶっ殺すっつってんだろぉ! ちょこまかしてんじゃねえ!」
 翻弄し掻き乱し、戦闘の主導権はアレクが握るつもりだった。
 噴き出す腹の血が畳を染め上げる。
 日野の爪はまだ輝き続け、凶爪はアレクに迫る――瞬間、爪撃を弾く苦無が奔った。
 長い髪を振り乱して、苦無が放たれた方向へ視線を突きさす。
 漆黒の瞳を静かに尖らせた香神乃・饗(東風・f00169)がそこにいた。
 【香神写し】で饗の苦無は複製される。その数は、五十に届かないまでも、迫りくる斬撃をすべて躱しいなすには骨が折れる数だ。
「この数は伊達じゃないっす!」
「くっそ、くそが! アタシのジャマをするな!」
 爆発的に膨れ上がる殺気、ぎらつく日野の爪はアレクの血で汚れたまま、饗へと迫りくる。
 饗の意志はすべての苦無に纏わせてある――そのすべての刃を思いのままに操ることができるのだ。
 血のついた右手の爪を苦無が弾き、左の一閃も、苦無の盾が守る。それでもだ。
 それでも日野の爪は凄まじい体捌きをみせる饗へと迫り、眼前に広がるは大悪災の凄惨な笑み、爪、その切っ先。
 一瞬で眉の上を裂かれる。跳び退って躱し苦無で弾き軌道を変えたが、無傷では済まなかった。
「くっ」
 すべての苦無が一斉に日野の正面から一直線に走り、その隙に饗は、ダァンっと足を踏み鳴らす――その衝撃で浮かび上がった畳の縁に手をかけて、一気に返す。
 その畳に日野の爪が突き刺さり、その細腕から想像できないほどの膂力を発揮し、畳を斬り捨てた。
 だが、それだけの時間があれば十分だ。
 爪の輝きは収まっている――渾身の力を溜め、解き放つ一閃は、日野の煌びやかな衣装を裂きその下の肌をも斬った。
 むやみやたらに攻め入らないのは、日野がどれほどの強敵であるか分かっているから。
 決めたのだ。
 そうであるがゆえに、心に決めたのだ。
 命も体も無駄に削らないと。覚悟を決めて、死力を尽くし、今とれる最善の一手を見極め、突き進むと。
 苦無の先に彫られた梅が、赤く咲き誇った。
「そんなにお怒りになってちゃ美人が台無しですよ?」
「あァ!? アタシのジャマをするな!」
 今にも焼けつき焦げてしまいそうな饗と日野の睨み合いは、じりじりと辺りをも緊張感で包んでいった――が、日野はあっさりと饗から視線を映し、こちらを見る。炯々と尖り憤怒を隠すこともなく、牙を剝き、爪を光らせる。
 三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)は、日野の様子に、ひゅっと息を飲んだ。
「あっごめんなさっ……」
 思わず口をついて弱音が出るが、スズロクとて遊びにきたわけではない。饗が日野から距離をとるの見届け、
「おお怖……人形遣うか……」
 ズスロクは一度瞬き、紫瞳を瞼で覆った――その一瞬で、主人格は深層に沈み込む。
「《エレクトロワイヤー》スイッチオン、《バーゲスト》起動……」
 現れるのは、スズロクの別人格。
「くっそ、次から次へと! マジでうっとうしい!」
「鬱陶しくって結構!」
 ぎらぎらと爪がまばゆく輝いて、日野はとんとんとその場で足を踏み鳴らす――スズロクは、《バーゲスト》を自身の眼前に展開させ、その鋼塊の体で爪撃をある程度防がせる算段だ。
 鋼に爪が負けて折れてくれれば良いが、スズロクとて高望みはしていない。
 着実に斬撃を防ぐことができれば、凌ぐことができればいいのだ――そのためなら、スズロクはその激痛にも耐えてみせる気概を見せた。
 怒涛の連撃にぼろぼろになりながらも、スズロクを守る《バーゲスト》の背を撫で、

「よく耐えた! よくやった! 暴れていいぜバーゲスト。大立ち回りでご自慢の邸宅ごと八つ裂きにしてやるよ!」

 スズロクの言下、《バーゲスト》は自身の鉤状の爪を掲げ、その場で高速回転を始めた。
 激しい金属音は連続して起こり、凄まじい火花を散らす。
 日野の爪の輝きはもうないが、彼女の爪はまだに長いまま――《バーゲスト》の高速回転による攻撃を躱しきれず、たたらを踏んだ瞬間。
 彼女の爪が縛り上げられた。
 饗だ。
「金って何っすか? 金で人を従えたかったんっすか?」
 爪を縛り上げた鋼糸を手に巻きつけ、決して逃がしはしまいと饗は、日野を見据え――笑わせるなと一喝した。
「想う心が無かったら誰もついてかないっす! 心は金で買えないっす!」
「青二才が! ココロなんてクソくらえだ! それでメシが食えんのか! それで家を建てることができんのか! ココロ!? はっ! 反吐が出る!」
「だから、足元すくわれるっす! そうやって人を侮って……人は想うと強いんっす!」
 その強さを、饗は今まで目の当たりにしてきた。こと、猟兵の心の強さを侮られることは、饗の本意でないし全力で否定してやりたい。
「金しか見てないような奴は、ここでずっとわめき散らしてればいいっす!」
「勝手にアタシの金に手ぇ出して、ごちゃごちゃいちゃもんつけてきてんのはてめえらだろうが!」
「ああ、うるっせえなあ……!」
 たまらず叫んだスズロクは、舌を打ち、
「何でも自分のモノになんなきゃ気が済まねえ、何でも自分の思い通りになんなきゃ気が済まねえ……ただのワガママなガキじゃねえか!」
 日野へバーゲストが走りゆく。その姿を見ながら、スズロクは片方の口の端を上げた。
「けど悪くねえな、ニンゲンの汚え部分の塊みたいで――それな、『俺』も同じだよ」
 その青眼に負けず劣らずの鋭い眼光で、日野を睨みつける。
「望みはうるせえてめぇをブッ潰す事だ!」
「できもしねえくせにべらべらと! アタシに一刀でもいれてから大口たたけよ!」
 饗が爪を縛り上げている中、強気に発言する日野だ。まだそれ相応の策を隠し持っているというのか。
「なら、そうさせてもらう……!」
 しかし、それを展開する前に、骸の海へと追い返すのが得策――素早く走ったのは、アレクだった。その腹の傷を庇いながらの、強烈なひざ蹴りが、クリーンヒットした。
「まだ、始まったばっかだ!」
 アレクの咆哮に、日野はさらに怒りを噴き上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

明石・鷲穂
良くも悪くも、賢妻の日野富子かあ。
アンタ、何に対してそんな怒ってんだ。
綺麗な御殿に住んで…機嫌を悪くするこたぁ、無いだろ。
聞く耳なんて持たないよな…喧嘩だな!

対策
召喚した山羊の巨人から【オーラ防御】を展開しつつ、炎へは氷の【属性攻撃】を放つことで軽減。
武器で防げるものは巨人の槍で【武器受け】。
防げないものは巨人ごと【激痛耐性】だな。

反撃
「是れ開悟に至りて、天魔に乞う。」
攻撃を受けて隙が見えたら、【カウンター】だ。
巨人共々、【捨て身の一撃】で【怪力】を込めた降魔杵で【串刺し】をしよう。

過ぎる憤怒は身を滅ぼす。
欲に溺れるアンタが、悪魔だ。
成道至らずとも…降魔とは、言い得て妙だな!



(「良くも悪くも、賢妻の日野富子かあ」)
 うーん……と明石・鷲穂(門前の山羊・f02320)は、怒れる日野を見て、嘆息を禁じ得なかった。
「綺麗な御殿に住んで……機嫌を悪くするこたぁ、無いだろ」
「アタシの御所に勝手に乗り込んできておいて、よくもまあ、そんなザけたことを! ならさっさと――アタシに殺されて消えてなくなれ!」
 わかっていたことだが、日野に鷲穂の言葉を素直に聞き入れるようなつもりはないらしい。
 さっぱり聞く耳をもたない日野にしてやれることは、喧嘩だ!
「アンタ、何に対してそんな怒ってんのか知らないが――」
「アタシの金を盗んでいったのに、アタシの怒る理由が分からない!? ああああああ!」
 どす黒い憤怒の咆哮を上げて、日野は鷲穂を睨みつける――否、その視線は、鷲穂の召喚した山羊の巨人が一手に引き受ける。
 猛然と燃え上がるは、紫の炎――爆発を引き起こす凶悪な炎は、山羊頭の巨人の足に突き刺さり、大きな爆発を起こした。
「くう!」
 熱波は鷲穂の肌を焼き、巨人を傾げさせる。燃え広がる紫炎に向けて凍気を放ち、治める――それでも、まだ足りない。
 日野の怒りに呼応するように、紫炎は燃え上がり凍気は融かされてゆく。オーラを纏わせ防御し、痛みに耐えうるようにと準備はしたが、その火力も威力も、無傷で凌げるものではなかった。
 鷲穂の動きをトレースした巨人はその手に握る、これまた巨大化した《降魔杵》を横薙ぎに振い、己の身を焼く炎を振り払う。
 激痛に耐えながらの一振りだ。足へのダメージは踏ん張りを弱くする。しかして、そんな弱音を吐いてはいられない。
 大きくダメージを受けはしたが、耐えた。
「是れ開悟に至りて、天魔に乞う」
 《降魔杵》に力を宿す。鷲穂の並々ならぬ怪力を込めた一撃を放つために、山羊頭の巨人を従え、走る――が、巨人はその場に崩れ動けなくなった。
 道理だ。
 日野の炎をその身一つで受け、攻勢に転じれば無理が出る。
 しかしこの機を逃すわけにはいかない。鷲穂は顧みない。
 駆ける勢いそのままに、この一撃にすべてを託す。
 無骨な金剛杵は、一瞬の隙を見せた日野の腹へと突き刺さる。衝撃はそのまま突き抜けていく。
 大きく咳き込み、後退った日野の双眸に鷲穂の精悍な顔が映り込む。
「過ぎる憤怒は身を滅ぼす――欲に溺れるアンタが、悪魔だ」
「黙れ! アタシの金だ! 金こそ正義! 悪魔だあ!? ザけんな! ムカツク! あああムカツク!!」
「成道至らずとも……降魔とは、言い得て妙だな!」
 日野はふらりと、もう一歩後退る。
 鷲穂の話は聞いていなさそうだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナミル・タグイール
金ぴかぴんにゃ!いいせんすデスにゃー!
倒したあとはナミルが住んであげマスにゃ!

相手も金ぴか好きそうだし出会ったらすぐ斧をドヤっと見せるにゃ!
自慢の金ぴか斧にゃ!羨ましいデスにゃ?
黄金の【呪詛】の輝きで視線を釘付けにできないかにゃ。
斧爆発されても気合で耐えるにゃ。直撃よりはましにゃ

ドヤったらプレゼント!じゃないけど相手に向かって斧投げちゃうにゃ。
当たってくれたらラッキーだけど避けられても隙ができるはずにゃ!
突撃して【捨て身の一撃】でUC当てに行くにゃ!ちょっとでも当たればナミルの仕事終わりデスにゃ!
きっと良いことが起こりマスにゃ

…斧は即回収にゃ。あげないにゃ!ナミルのにゃ!



「金ぴかぴんにゃ! いいせんすデスにゃー!」
 衣装を裂かれ、腹に重く鋭い一撃を喰らった、日野はさらなる怒りを隠すこともなく、焦げついた畳を踏みつけた。
「倒したあとはナミルが住んであげマスにゃ!」
 オッドアイを細めて、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は日野を見る。
「はあ!? てんめえ! アタシの御所を乗っ取るつもりか!」
 させるわけねえ――と言いかけた日野の視線を遮るように、ナミルは自慢げに斧を差し出した。
「自慢の金ぴか斧にゃ! 羨ましいデスにゃ?」
「その金がメッキじゃねえって証拠はどこだよ!」
 黄金に輝かせる呪詛をかけた《カタストロフ》の、煌びやかな装飾にちらりと食指が動いたか、それでも、日野の視線に込められた憤怒は弱まらない。
 その視線のすべてを斧で遮るべく掲げるが、日野はナミルを見ていた。
 強烈な爆発が《カタストロフ》を巻き込んで、ナミルを襲う。

「――――っ!」

 鋭い悲鳴があがる。
 確かに直撃ではない。それでもその衝撃は伊達ではない。
 相手は、『第六天魔軍将図』に名が入る強敵だ。その多岐にわたる怒り、金への妄執に囚われる姿に気を取られてしまうが、日野の力は、ナミルの呪詛の力だけでは抑えきることは難しかった。
 凄まじい爆発と、容赦ない炎熱に焼かれ、ナミルはそれでも立ちあがらんと、畳に手をつく。
「ちょっとでも当たれば……」
「させるわけねえだろうが!」
 紫の炎が畳を燃やし炎の勢いを増してナミルに襲いかかった。
 炎熱は身を焼く――それでも、ほんの少しで構わない。この一撃が当たれば、ナミルの仕事は終わる。
 痛みをおして走る。捨て身の一撃を加えんと、ナミルの黄金の爪は輝く――その輝きは呪詛の輝き。手を伸ばす。日野はそれを回避せんと跳び退る。先の爆発のダメージは大きい――否、弱音はあとから吐く。
 今はこの一閃を。
「きっと、イイことが、起こりマスにゃ!」
 日野の頬がさっくりと裂けた。
 その傷口から流れ込んでいく、ナミルの呪詛――イイこととは、日野にとってのイイことか、猟兵にとってのイイことか。
 ナミルはそのまま意識を手放した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

フィオレッタ・アネリ
わ、なんかめっちゃ怒ってるぅー!

先制攻撃対策に
精霊契約《クローリス》で花の精を喚んで
わたしの幻覚をたくさんたくさん展開!

それと同時に、奇跡《カルペ・ディエム》の力で
あたりの畳一面を春の花園に変えつつ
花の中に溶け込んで姿を消し、遠くに逃げ潜んでおくね

幻覚たちには

えっ…あの埋蔵金ってあなたのだったの?
えっと…ぜんぶ使っちゃった! ごめーんねっ!

なんてカンジで挑発させる

苛立って怨霊に幻覚を攻撃させ始めたら
すぐに花園を渡って真後ろに出現!

全力魔法を込めた《エレメンタル・ファンタジア》で
「花」の「竜巻」を起こして吹き飛ばすよ!

ホントはわたし埋蔵金もらってないんだけどね☆

※アドリブ・連携、歓迎です!



 日野へのダメージは着実に溜まっていっている。
 うまく猟兵を排除できないことが、日野の苛立ちを助長させるのだろう。
(「わ、やっぱりめっちゃ怒ってるぅー……」)
 フィオレッタ・アネリ(春の雛鳥・f18638)は、碧瞳を丸くさせて、ぱちくりと瞬いた。
 この苛立ちに怯んではいけない。
 契約した《クローリス》を掲げて、花の精を召喚した。花弁を撒き散らしながら、その視界にフィオレッタの幻影が浮かび上がる。
「小細工してんじゃねえ!!」
 一喝。
 日野の恫喝。
 瞬時に解き放たれ、突き進んでくるのは、おびただしい量の火矢の怨霊――フィオレッタの幻覚を無数に展開し攪乱させる算段だったが、準備が整う前の先制攻撃だ。
 火矢は轟然と燃え盛りながらこちらに飛来する。
 フィオレッタは、それでもしっかと日野を見据え、全力で魔力を練り上げる。制御は困難だ。そのぶんの威力は申し分ない。
 あっという間にフィオレッタの幻影は消え失せてしまって、対峙するのは、彼女本人のみ。
 《カルペ・ディエム》の奇跡が一斉に花開く――時が巻き戻ったかのような春のむせ返るような花の香りが広がる。
「燃えて消えろ! 死ね! てめえも! 怨霊ども! 猟兵どもを焼き尽くせよ!」
 日野の咆哮とともに、いよいよ火矢はフィオレッタに到達――春の香りを戦の死色に変える。
「でも、わたし、」
 万色の花々が一斉に竜巻に煽られ花弁を巻き上げた。
 【エレメンタル・ファンタジア】を発動させたのだ。
 火矢の怨霊を巻き込んでの竜巻に、日野は目を剝き、歯ぎしりする。
「くそがあああ!!」
 残った怨霊をフィオレッタへけしかける。
「どいつでもかまわねえ! アイツをぶっ殺せよ!」
 日野の声に応じる怨霊は、猛然と竜巻を突っ切りフィオレッタへ到達――その肩を、腹を、脚を。
 あまりの痛みと衝撃で喉が凍りついた。
 フィオレッタの碧眼が、長い髪を振り乱した日野の鬼の形相を捉える。
「調子こいてんじゃねえ!」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ディフ・クライン
明(f00192)と一緒に

随分怒ってるね…

死せる深き森の主、巨大なヘラジカを召喚して
先制攻撃には畳を角で返して防ぐ
畳返しって言うんだってね
一枚で足りないのなら、防ぎきれるまで何枚でも
アキラを巻き込まないよう注意しつつ

…ちょっと勿体ないのだろうけども
遠慮はいらないよ、ムース

森の主…ムースを執拗に畳返しをさせつつ
アキラを援護し、必要ならば盾になるようムースに頼む

機が見えたら、角に風を纏い、蹄に力を込めて
「ムース、行っておいで」
全力の突進を

…任せて
彼女が作った隙を通してみせる
「君は、neige. 樹氷を作ろう。大きな樹氷を」
ムースと連携し、全力魔法のエレメンタル・ファンタジアで、敵に樹氷を突き立てて


辰神・明
ディフ(f05200)と
姉人格、アキラで参加

見境無しとか、手負いの獣かっつーの

ヘラジカの背から離れない様に動き
『狂刃』を手にしつつ、敵と火矢の動きを注視
【野生の勘】【第六感】で攻撃の軌道を予測
ディフやアタシに矢が向かってくるなら
『叫雨』で【カウンター】、撃ち落とすよりも相殺を狙う

当たり散らしておいて、その程度かァ?
夫だかが見捨てるのも無理はねェわな
テメェはただの煮ても焼いても食えねぇ、性根腐ったクソ女だろ

【挑発】で自身に苛立ちを向けつつ、単独で接近
痛みも耐えて、血を溢れさせて至近距離で『叫雨』を
虎の生存本能をナメんじゃねぇッ!!!

もし、アタシの攻撃が通らなくても後詰めはいる
――頼んだぜ、ディフ



 日野が私財を投じて作り上げた屋敷のダメージは酷いものだった。
 猟兵の猛攻と同じだけ、怒りに任せた日野が炎を放ち、火矢の怨霊を放ち、爪による連撃を、華麗な体捌きをもって繰り出す――足元の畳はささくれ、捲れあがり、焦げ燃えている。
 もはや、見る影なんぞない。
「随分怒ってるね……」
「見境無しとか、手負いの獣かっつーの」
 ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)と、辰神・明(双星・f00192)――表に出てきているのは、姉たるアキラだ――の二人は、怒りに身を染め上げ傷を負った日野を見る。
 御所に攻め入った猟兵に呪詛を吐き、殺意を吐く。
「殺す、殺す、コロス! アタシの屋敷を、アタシの金を、アタシの時間を奪ったてめえらを許さねえ!」
 ぎらりと光る双眸がディフと明を射抜く。
 それでもそれを静かに見つめ返すディフの影がぞわりと震える――吹き荒れる風。
「なん、」
「ムースよ」
 青い光を湛える双眼が日野を見つめる。ディフの声に呼応したのは、死せる深き森の主――ヘラジカ。
 巨大な双角が纏う風が、日野の髪を衣を掻き混ぜた。
「君の力、借りるよ。アキラ、」
 隣に立つ小さな体をヘラジカの背の後ろへと滑り込ませる明は、守られるだけではない。
「燃やす燃やす燃やす!」
 呪言を吐き、苛立ちをぶつけ、数多の火矢の怨霊を生み出した日野が、
「全部殺す! アタシが正義だ!」
 一斉に放たれた猛火を纏った矢の嵐――刹那、屋敷を揺るがす地響き。
 ヘラジカの蹄が力強く打ち落され、畳が浮く。風がさらに畳を押し上げ、何枚も盾のように展開した。
「畳返しって言うんだってね」
 燃え落ちる、まだだ、畳はある、ムースの角が、風が、畳を巻き上げる。
「その攻撃、終わるまで何枚でも使うよ」
 キミの自慢の屋敷がどんどん壊れていくね――静かな言葉は、火矢の怨霊に消されていく。
「……ちょっと勿体ないのだろうけども、遠慮はいらないよ、ムース」
 応えるように、風が巻き上がり、畳はさらに返され壁となる。明に危害が及ばないように、執拗に畳は日野の前にそそり立つ。
「しつっけえ!!」
 がなる日野。
 主の怒りに触れた怨霊が、畳の壁を抜けてくる瞬間を明は補足した。
 瞬間的に赤黒い槍が虚空に展開、切っ先はすべて日野を向き、ディフと明を狙う炎へ解き放たれる。
 刹那のうちに対応できたのは――明が周到に準備したものでもあるが、日野にとっての【理不尽なアンラッキー】だった。
 数の暴力だ。畳に突き刺さり、畳を燃やした後に迎え撃つのは、二百を超える闇の力を纏った血濡れの槍。
 それこそ壁のように二人の前にズラリと並び揃い、飛翔する。
 撃ち落とすなんぞ、はなから考えてはいない。相討ちで構わない。果たしてそれは、明の目論見通りになった。
「当たり散らしておいて、その程度かァ?」
 アキラが吠える。
「ムース、行っておいで」
 日野へと突進したヘラジカの背を追うように、明も単身駆ける。
 全力で駆ける地響きを伴ってヘラジカが日野へと迫るも、この突進は彼女に躱される――が、
「虎の生存本能をナメんじゃねぇッ!!!」
 ほとんど零距離から明は、【叫雨】を発動させ、すべての刃を日野へと向け、解き放つ!
「夫だかが見捨てるのも無理はねェわな」
 明の見え透いた挑発は、
「テメェはただの煮ても焼いても食えねぇ、性根腐ったクソ女だろ」
 それでも日野の苛立ちを引き出す――そもそも猟兵に良い感情を抱いていない日野だ。怒りの火は再燃しやすい。
「殺す! ぶっ殺す!!!」
 膨れ上がった日野の殺気――明の槍が日野の体を突き破る手前で、猛火が噴出した。轟然と明に迫りくる火矢の怨霊と、血の槍が激しくぶつかり合う。
 血の焼ける死の匂いが立ち込め、畳は赤く黒く染まりゆく。それでも力は互角――否、明の槍がわずかに押し勝ったか、日野の髪を貫き落して、肩を穿ち、その下の腕に深々と突き刺さる。

「あああぁぁぁぁああ!!」

「――続けよ、頼んだぜ、ディフ」
「……任せて」
 ヘラジカの突進、明の【叫雨】、ディフの《neige.》――三段構えだ。
「君は、neige. 樹氷を作ろう。大きな樹氷を」
 ムースは巨躯を軽々と翻し、日野を踏みつけ、倒す。
 日野の体を伝う血が凍りつくほどの極寒を生み出す、ディフに寄り添う雪精は灰色の氷を生み出し、日野を撫で凍りつかせて、樹氷と化した。
「はっ? アタシ、が、」
「足、すくわれたね」
 凍えゆく日野の目がディフを見上げる。四肢はすでに動かないらしい。
「正義だかなんだか……それでも、最後まで立ってたアタシらが、正義ってことでいいよな!」
 日野の心臓へと《狂刃》が深々と突き刺さった。


 紫の炎の焼かれた芍薬の欄間は、すでに焦げ。
 心を落ち着かせるイグサの香りは戦のにおいで打ち消され。
 憤怒に身を焦がし、金に固執した大悪災は消えていく。
 口汚く猟兵を罵った金切り声が、耳にこびり付いている。
 それでも、酷く壊れた部屋に立つのは、猟兵だ――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト