エンパイアウォー⑯~決戦、大車輪の間
●風魔忍者屋敷~大車輪の間
「小賢しい猟兵どもめ」
風魔忍軍の屋敷に、髑髏面を顔に並べた異相の忍が立っていた。
史上最強とされる化身忍者。
百鬼面・風魔小太郎である。
「或いはこの首をも取りに来るか。面白い、そうなればこの大車輪の間で返り討ちにしてくれる」
その名が示す通り、そこは実に奇妙な構造をしていた。小太郎の立つ中央の円形広間から、放射状に、幾筋もの通路が伸びているのだ。
さながら車輪の如くに、である。
中央の広間に繋がる通路には、その全てに二種の凶悪な罠が仕掛けられている。
一つは四方の壁から放たれる毒矢。
そしてもう一つは、床と天井から鉄柵さながらに飛び出す鉄槍だ。
小太郎のいる中央の広間に辿り着くには、罠を潜り抜けながら通路を突破するしかない。
「信長様の儀、邪魔だてさせはせんぞ。この風魔小太郎がある限りな」
●グリモアベースにて
「風魔小太郎の居場所が判明しました。風魔忍者の屋敷内、大車輪の間の中心部です」
真剣な表情で化野・那由他が言った。
「大車輪の間は、その名の通り、車輪のような構造をしています。中央に円形の広間があり、そこから放射状に通路が伸びているというものです」
通路を抜けた先の円形広間に、小太郎はいる。
そこへ至るためには、各人が、罠の張り巡らされた通路を駆け抜ける必要があるのだ。
「各通路には全てに二種類の罠が設置されています。一つは、四方の壁から射出される毒矢。もう一つは、床や天井から鉄柵のように飛び出す鉄槍です。槍にも毒が塗ってある模様ですが、猟兵の皆さんであれば、たとえ直撃を受けても命に関わるものではありません」
だが、通路の先で待ち構えるのは、最強の呼び声も高い化生忍者、風魔小太郎である。手負いの状態で倒せる相手とは言いがたい。
「状況と構造上、皆さんにはどうしても罠が仕掛けられた通路を潜り抜けて頂く必要があります」
傷を負わずに駆け抜けることができれば、戦闘を有利に運べる可能性が高まる。
「そして通路の先の広間で待つ風魔小太郎は、必ず先制攻撃を仕掛けてきます。こちらへの対応も考える必要があります」
先制攻撃を打倒し得る、一点集中型の攻撃が有効かも知れない。
ともあれ、罠を潜り抜ける方法。そして先制攻撃してくる風魔小太郎への対策。
この二つが勝つための要だ。
「大変な強敵ですが、皆さんであれば勝利できる筈です。……ご武運を」
相馬燈
※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
本シナリオでは、風魔小太郎との決戦を扱います。戦場や注意点は、以下の通りです。
●戦場
風魔忍者屋敷『大車輪の間』が戦いの舞台です。
風魔小太郎の待ち受ける中央の円形広間から、放射状に、四方を壁に囲まれた通路が伸びています。
通路には罠が仕掛けられており、この通路を潜り抜けた上で、広間で待ち構える風魔小太郎と戦って頂くことになります。
通路に仕掛けられた罠は『四方の壁から放たれる毒矢』『天井と床から柵のように飛び出す、毒が塗られた鉄槍』です。
通路そのものを派手に破壊(隣の通路に繋げようとしたり)すると、更に凶悪な罠が発動するため逆効果となるようです。
(大車輪の間と言っても、部屋が回転したりはしません)
●特殊ルール
百鬼面・風魔小太郎は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『百面鬼『風魔小太郎』』
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POW : 風魔忍法『風魔頭領面』
自身の【身に着けた『面』】を代償に、【召喚した風魔忍者の軍勢】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【忍者刀と手裏剣】で戦う。
SPD : 風魔忍法『六道阿修羅面』
自身の【髑髏の面の瞳】が輝く間、【六本の腕で繰り出す忍具や格闘】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 風魔忍法『死鬼封神面』
【歴代風魔小太郎たち】の霊を召喚する。これは【極めて優れた身体能力を持ち、手裏剣】や【鎖鎌】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大神・零児
対抗策
大車輪の間の構造をそのまま利用(地形の利用)
まず戦士達にマルチギアイヤフォンを配布し、突入、攻撃のタイミングを合わせられるようにする
遠距離攻撃部隊には多段のミサイルランチャーを持たせ、近接戦闘部隊には予備ミサイルの運搬と魔改造したマルチグレネードを持たせる(メカニック)
それぞれの部隊の人員が均等になるように組ませて、全通路入り口に配置、一斉突入しマルチギアの機能をフル活用、罠のある部屋を見極め、尋常じゃない破壊力のグレネードで「部屋ごと」破壊(破壊工作)
最後の部屋の前で待機、手裏剣等が来る前にタイミングを合わせ一斉に部屋ごと破壊し射線を通し、同時にスモークを発生させ、同時にミサイルで攻撃
ナイ・デス
信長さんが、どんな儀を行っているか、知りませんが
世界を滅ぼすこと、なのでしょう?
なら、邪魔します。あなたを、倒して
【地形の利用、ハッキング、情報収集】
地縛鎖屋敷に刺し、情報吸い上げゴーグルで解析、罠回避
無理なものは、触れたら【吹き飛ばすオーラ防御】纏って強引に突破
【第六感】で先制に反応【見切り】回避か防御
全ては無理でも、首から上だけは【かばい】
あとは【覚悟と激痛耐性】で耐え
忍法の、お返しです
包囲するように自身を複製
首輪とゴーグルで補助して
全方位の複製から全てばらばらに、短剣を放つ
【念動力】で操作された短剣の嵐
それに紛れて
【迷彩忍び足ダッシュ】
【鎧無視する暗殺】剣刺し【生命力吸収】
して、離脱です
ドロレス・コスタクルタ
UCを展開し、毒矢と毒鉄槍を腐食させ、
なまくらにして刺さらないようにして毒を防御&ダメージ軽減。
もろくなった毒矢と毒槍をポテスタースで叩き落し、
捌ききれない攻撃はウェリタースで防御。
「この戦いに備えてわたくしも忍法を研究して参りました。
その名も忍法・山津波!」
地形と一体化したナノマシンを発動。
天井・壁・床を大きく波打たせて『津波』を4つ生成。
天井と左右の壁の津波を発射。
津波の質量で風魔小太郎の攻撃を防ぐ。
天井や壁の板、柱等は波打つ構造体に耐え切れず
弾け飛ぶと思うので、それらも防御と牽制の障害物
として利用。
4発目且つ最後となる床の津波には自分が乗り、突撃。
津波の質量と鋼の拳で風魔小太郎へ攻撃。
上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
何が相手だろうとやることは変わらない。
もとより常在戦場。
どうあっても先手を取られるというなら、端から後の先の【覚悟】を決め、腹を据えて【勇気+激痛耐性】推して参る。
調息、脱力、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据え、敵の戦力、総数と配置、周囲の罠と遮蔽物を確認。
得物は素手格闘【グラップル】
長期戦を想定しUCは防御強化。
先ずは雑魚の処理しながら機を伺い、敵将の隙を量【見切り】る。
無駄な動きを抑え、近くの敵を盾にする、または周囲の遮蔽物や罠を積極的を利用【地形の利用+学習力+戦闘知識】
雑魚を処理し敵将への障害を排除、最短距離を【ダッシュ】で懐に肉薄し【捨て身の一撃】を叩き込む。
ノイン・フィーバー
心情:隕石落し? あんなもの小物の神風攻撃ではアリマセンか! 話を聞いて、宇宙から隕石を落とすトンでも忍術だと期待したワタシへ謝罪なさい!!(不条理)
戦場:
ひとまず壁と床は定番ですネ?
では四隅は死角では? 通路の右端、左端を匍匐前進してみる
そこでも当たるようなら、宇宙バイクブーストスライガーをオートで先行させます。傷がついてしまう……
VS小太郎:
小太郎が代償にした面が弱いものなら、技能【一斉発射】で対応
それなりに強ければユーベルコードを発動し、召喚したそばから軍勢を小太郎ごと殲滅します。
「アナタには償いをして頂きまス。ワタシの期待を裏切った償いを!」
不条理が小太郎君を襲う!
共闘絡み・援護役OK
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
さて、と。この世界には妹が神隠しの時にはお世話になったみたいだし、私も人肌脱ぐとするかな……(眼鏡を外し)――さあ、やるであります。
屋敷の罠やら敵のアンブッシュは【選択UC】(第六感,見切り)や経験(戦闘知識)を参考に対処。【ダッシュ】なり【ジャンプ】なり電脳魔術を使った【盾受け】等をしつつ、【カウンター】の隙を伺う。
右手には『刹那』、左手には『[K's]Sirius』(鎧無視攻撃)を装備して、手数(2回攻撃)で勝負を仕掛ける。トドメとならなくても【援護射撃】になれば十分。なんなら敵の攻撃を【おびき寄せる】囮でも構わないでありますよ。
「――視えているであります!」
龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎
【POW】
まずは、ちょっと可哀そうだけど、ホムラに先行してもらって、矢や槍が飛び出すタイミングや方向を確認
あとは、作動音や起動音に注意しつつ【気合い】と【勇気】で突破するよ
中央についたら、ホムラには休んでもらうよ
…ホムラが無茶した分、私もすこし無茶しないとね…。
ということで、風魔小太郎に急接近して召喚できないように"面"を黒焔竜剣参式の焔【属性攻撃】で【部位破壊】を試みるよ
もし召喚されてしまったら、黒焔竜剣壱式で風魔忍軍の猛攻を【武器受け】などで対処しつつ、うかつに接近してきた風魔小太郎を忍軍もろとも『煉獄猛焔波動』で焼き尽くす
…これで生きているようなら、さらに"面"を壊すよ
●先陣
「罠の、配置は……」
忍者屋敷の通路に転移を果たしたナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)が真っ先に取った行動は、情報収集だった。
黒手袋に覆われた繊手に操られ、地縛鎖が音もなく床に突き立つ。
もう片方の手で顔半分ほどを覆う電脳ゴーグルの位置を整え、起動させた。
電子音。
紅玉にも似た双眸に、解析処理された通路の情報が映し出される。床に突き立てた地縛鎖が周囲の環境情報を吸い上げ、電脳ゴーグル上の映像を補強しているのだ。
天井と壁、そして床に隠された絡繰仕掛けの矢を捕捉。鉄槍の位置を確認。
「行きます」
軽く頷き、ナイは疾風のように駆け出した。
反応した絡繰の射出装置が壁や床からせり上がって一斉に矢を放つ。
表示された矢の射線から最も被害の少ない避け方を掴んだナイが、長い白髪と真紅のマフラーをはためかせて通路を駆け抜ける。円状に張ったオーラが矢をへし折り、手袋から変じた両手の黒剣が上下から飛び出す鉄槍を容易く切断。無傷のまま隠し扉を抜けて広間へと躍り出た。
「来たか、猟兵――!」
六本の手に忍具を手挟んだ風魔小太郎。
その威容を目にするや否、無数の飛び道具が押し寄せる。
手裏剣、苦無、鎌に忍刀――猛毒が塗り込められた凶器が殺到するのを、ナイはゴーグル越しに把握。逃げ道の尽くを断つ忍具を前に、ナイは首から上だけを庇って左へ跳んだ。服が血に染まるのも構わず床に転がり、受け身を取る。
「く、っ……!」
恐るべき威力を誇る投擲が、全力展開したオーラさえ容易く貫いていた。
「ほう……一息に仕留める心算だったが。切り抜けるとは」
悠揚迫らざる声音で言う小太郎。
その周囲に突如として複数の人影が立ち昇った。
首輪型増幅器の後押しを受けたナイが四十七もの仮初の肉体を錬成して見せたのだ。
「分身の術、か」
「忍術の、お返しです」
「なかなかのものだが、何処まで自在に操れるものか」
小太郎の顔面に並んだ髑髏の面、その一つが音を立てて割れ落ちる。
「忍法――風魔頭領面」
重く声を響かせた小太郎の背後の隠し扉が吹き飛び、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が突っ込んできた。
「風魔小太郎、相手にとって不足はない。推して参る――!」
続々と降下してきた風魔忍者の軍勢が修介を取り囲む。
踏み込んだ修介が刺突を避けて胴に拳を見舞い、左から刀を振りかぶってきた忍の顔面を裏拳で弾く。息を吐き、振り抜いた蹴りが斜め右から迫る忍者を纏めて薙ぎ倒す。
実戦で鍛え抜かれた格闘技術は、小太郎が召し寄せた手練の忍にさえ通用する。
しかし。
「既に手負いの身か。それでこの小太郎を討ち取れるのか」
「さてな、やってみなければ分からんぞ」
通路を強行突破した修介は既に幾筋かの毒矢を浴びていた。防御を高め、浅手に止めたものの、忍の頭目たる小太郎はそれを見逃しはしない。
(「長期戦は覚悟の上だが」)
群がる忍の攻撃を掻い潜って拳を見舞い、蹴り飛ばし、目の前の忍者を掴んで手裏剣や苦無の盾とする。息絶えた忍者を投げ飛ばして修介は丸木柱の陰に隠れた。
太い柱に幾つもの手裏剣が突き立つ。
痛みを無視し、呼吸を整えた後、修介は呟いた。
「……やはり捨て身で行くしかないな、これは」
●時は僅かに遡り
「さて、と。私も一肌脱ぐとするかな……」
一直線に伸びる通路の上で、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)は眼鏡の弦に指をかけていた。
一瞬、思いを巡らせていたのは妹のこと。
「この世界には、神隠しの時にお世話になったみたいだし」
世界の危機となれば、見過ごすわけにはいかない。
眼鏡を外した智華の表情が一変し、鋭い視線が通路の奥へと注がれる。
「――さあ、やるであります」
未来演算を可能とする朱の義眼が、四方に設置された隠し矢の位置と射線を演算。
待ち伏せ(アンブッシュ)が確定している以上、回避できない道理はない。
二丁のライフルを手に、智華は最も安全な道筋を導き出して走り、罠を潜り抜ける。
避けきれない矢も硬質化したナノマシンスキンアーマーは貫けない。
駆ける足を早めて上下から迫る鉄槍の間を抜けると、中央の間へと繋がる隠し扉の直前で、壁に背を預けた。
既に広間では猟兵達と小太郎との激闘が繰り広げられている様子。
「先制攻撃をしてくるとなれば……手数で勝負、でありますね」
言うと、智華は両手のライフルの銃口を天井に向けた。
「この程度の罠、大したことありませんわ」
別の通路では極めて奇妙な現象が生じていた。壁や床が生き物のように蠢き、絡繰仕掛けの隠し矢が急速に酸化して機能停止に追い込まれていく。
それこそはドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)が解き放ったナノマシンの為せる技だ。
「ここはわたくしも忍法を見せるべきですわね」
腐食属性を付与したナノマシン群が四方の建築材と同化し、爆発的に増殖。
材質そのものを作り変える勢いで大きく変容させる。
伴って天井や壁、そして床が波打ち始めた。
「さあ、参りましょうか」
ナノマシンにより作り出した波に乗って高速で通路を滑るドロレス。腐食して軋みを上げる隠し矢の絡繰や鉄槍は、念動力で操作可能な巨大な鉄拳で破壊し尽くした。
「他愛ないですわね」
目の前の隠し扉がナノマシン群の働きにより崩れ落ち、無傷で通路を突破したドロレスが文字通り波に乗ったまま激戦のただ中に突入する。
●激闘の中で
広間に短剣の嵐が吹き荒れていた。
分身した四十七人のナイが小太郎を囲んで投擲した黒剣だ。
念動力により操られた剣は不規則な軌道を描いて飛ぶが、六本の腕を自在に操る小太郎は忍刀を振るって火花を散らしながらそれら全てを捌いていた。
小太郎に突貫する修介が、防ぎに回る忍者集団を殴り、投げ飛ばす。それを上回るほどの忍が尚も執拗に取り囲む。
そこへ突如として光条が迸った。
数人の忍者を蒸発させて迫るレーザーを小太郎が右の巨腕で防ぎ切る。射撃地点に焙烙玉を投げた瞬間、背後に忍び寄ったナイに脇腹を刺され、小太郎が呻いた。
爆発、そして。
「信長さんが、どんな儀を行っているか、知りませんが……世界を滅ぼすこと、なのでしょう?」
無言を肯定を受け取ったナイが、突き立てた黒剣から生命力を吸収。
「なら、邪魔します。あなたを、倒して」
即座に飛び退いて離脱。
「貴様……」
「――視えているであります!」
通路に伏せて爆風を凌いだ智華が立ち上がり、回避行動を予測しながら両手の銃の引き金を引く。刹那と銘打たれたアサルトライフルが火を噴き、射線から逃れた小太郎をハイレーザーライフルの光条が呑み込む――その直前。
「なるほど、良い攻撃だ」
小太郎の目前に飛び出した忍者集団が纏めて壁となり、身を呈して猛射を防いだ。反撃を読んだ智華が広間に踏み入り、丸木柱の陰に滑り込みながら挑発するように言う。
「部下を盾にするとは、冷酷でありますね」
「忍とは己の命を省みぬものだ。それこそが忍の法というもの」
その時、残る手練の忍者達が突如として襲って来た奇妙な津波に飲み込まれた。
「忍の法……そう、この戦いに備えてわたくしも忍法を研究して参りました。その名も忍法・山津波!」
ドロレスが巨大な拳型の兵器を縦横無尽に振るいながら、周囲の天井や壁、柱にもナノマシンを放って見る間に液状化させていく。作り出されるのは大増殖したナノマシンの働きによる大津波だ。
「愉快な技よ。ならば我が秘技を見せるとしよう」
余裕を見せた小太郎は、攻撃が届く前に残る全ての髑髏面を一斉に輝かせた。
「忍法――死鬼封神面」
周囲に圧倒的な気を放つ影が凝集、見る間に禍々しい人型を成す。
「これは……」
智華が目を細める。
顕現したのは多数の髑髏面を輝かせる歴代の風魔小太郎――!
「援護するであります!」
恐るべき速さで投じられる手裏剣の数々がまるで嵐のように、且つ、逃げ場を封じるように飛び交う。
アサルトライフルと出力を上げたレーザーライフルで迎撃する智華。
ドロレスがナノマシンを操り天井を波打たせ、強度の限界を越えた天板が遂に崩落、敵の視界を塞いで降り注ぐ。
猟兵達の目の前で小太郎の面がまた一つ割れ――周囲に再び忍者の軍勢が召喚された。
多勢に無勢、圧倒的な戦力差で迫る小太郎と懸命に凌ぐ猟兵。
その勝負の行方は、如何に。
●援軍来たりて
「先行して、ホムラ」
通路に転移した龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)が、抱えられるほどの大きさの白銀竜を解き放った。
少し可哀想な気もするけど――主人の心配をよそに元気よく鳴いたホムラは、羽根を羽ばたかせると、投じられた槍の如き速さで通路を翔け抜ける。襲い来る矢を渦を巻くような動きで避け、上下から束となって迫る鉄槍を軽々と飛び抜けて見せた。
「ありがとう、戻ってきていいよ!」
紅音が手を振り上げると、名が示す通り炎を纏う竜騎士の槍に変身したホムラが鉄槍の間を縫って勢いよく飛んできた。
自らも駆け出しながら空中でそれを掴み、ねぎらいの声をかけてやる紅音。
罠の位置を把握できれば、後は集中して、勇気と気合で乗り越えるのみ――!
通路の奥にある隠し扉の先から激戦の音が聞こえてくる。
この道の先に手助けを必要とする味方がいる。
罠を潜り抜けながら翔ける紅音、その背に広がる焔の羽根が燃え上がった。
「隕石落し、あんなもの小物の神風攻撃ではアリマセンか!」
ノイン・フィーバー(テレビ顔のメカ野郎・f03434)は中央の広間に繋がる通路の隅を這いながら憤っていた。
風魔隕石落としと聞いて、どれほどの大技なのかと思ってみれば――配下を用いた単なる特攻兵器に過ぎないではないか。
「全く以て期待外れデス!」
ブラウン管テレビ、その趣ある仮面のモニターに怒りの表情が映し出される。
憤慨しながら進むノインの歩みはしかしなかなか進まない。
「ひとまず壁と床は定番ですよネ?」
罠は飛び出してくる矢と鉄の槍であるという。
「四隅は死角のハズ」
通路の左端をそろりそろりと匍匐前進するノイン。
テレビ型の頭をした長身のスーツ姿が通路の端を這うという不思議な光景である。
「ひっ……!?」
突然、矢が目の前に突き刺さり、思わず悲鳴をあげる。
「仕方ありませんね……」
やれやれと溜息を吐いたノインは手で背後に合図を送った。
エンジン音。
大型宇宙バイクのブーストスライガーが唸りを上げて通路を走り出す。
「ああ、傷がついてしまう……」
罠が作動し、矢がバイクに突き刺さるが、アームドフォートを分解内蔵したバイクが罠を破壊しながら突っ走り、鉄槍の束さえもぶち壊して爆走していった。
「各部隊、進行状況と負傷者を報告しろ」
高性能な機器を存分に駆使したとは言え、ここまでの行程は困難なものだった。
人狼対応型のマルチギアイヤフォンを用いた大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)が進行度と被害を確認する。名も無き人狼の戦士団(クルースニクゴースト)を各通路に展開させ、連携を取り合いながら攻略を進めているのだ。
近接戦闘部隊は極限まで改造を施したマルチグレネードと、予備ミサイルを。
遠距離攻撃部隊は多段ミサイルランチャーを。
通路に一斉突入した部隊は、罠を見つけ次第、グレネードによる爆破を敢行した。
トラップを文字通り虱潰しにして進行してきたことになる。
その一方で、
『――予期せぬ襲撃を受け損害多数。作戦続行は可能』
途上、破壊された壁から飛び出した忍者による攻撃を受けたが、零児以下、各員の奮戦によりこれを撃破し、幾つかの部隊が最終攻撃準備を整えつつあった。
突破するべき通路を爆砕した代償ということか。
「やはり無傷とは行かんな。だが」
攻撃は十分に可能だ。
激しい戦闘が行われている中央広間の直前、隠し扉の手前で、零児はマルチギアイヤフォンを通して残存する部隊に待機を命じる。
「タイミングを合わせ一気に仕掛けるぞ。いいな」
マルチギアイヤフォンから了解の声が異口同音に響いた。
●決着
「その程度、読めていますわよ!」
歴代の風魔小太郎が投じた手裏剣や鎌を、ドロレスがマント型の防御殻を翻して防ぐ。
そればかりではない。ナノマシンに変質させられた柱や天井が波打ち、崩れ、他の猟兵を狙った忍具さえも阻む目隠しとなっていた。
「そこまでだよ、風魔小太郎!」
歴代の小太郎が効果時間を迎えて消え去り、尚も援軍を呼ぼうと仮面を光らせた小太郎の顔面めがけて、今度は地獄の炎が迸った。多少の傷を負いながら通路を抜けてきた竜人少女が、焔の翼をはためかせ、強大な敵に挑戦する――。
「小娘が、我が前に立ちはだかるか」
炎弾の連続放射を小太郎が忍刀で防ぎ、そうしている間にも統率の取れた忍者集団が紅音に殺到する。
「ホムラは休んでて……!」
槍から戻った銀の竜を逃し、交互に振るうのは黒焔竜剣参式『魔焔双爪』。双剣が苦無や手裏剣を弾き落とし、斬撃された忍者が火柱となって燃え上がる。焔の翼がはためいて、再び飛んだ焔の塊が遂に小太郎の仮面を一つ砕いた。
「今のうちに攻撃するであります!」
風魔忍者の軍勢は未だ多い。
激戦のただ中に辛うじて残っていた丸木柱を盾にしつつ智華が両手のライフルを連射する。それは牽制であり、派手な攻撃は敵の注意を引くのにも一役買っていた。忍刀を振りかぶってきた忍者を、刹那と名付けられたマルチロールアサルトウェポンで受け止める。銃身下部の刃で押しのけ、近距離射撃で吹き飛ばした。
「力比べだ、風魔小太郎」
「何をッ……!」
踏み込んできた修介と組打ちする小太郎。
ギリギリと床を踏みしめる小太郎が次第に圧され、遂に修介に蹴り飛ばされる。
「これはその腕でも防ぎきれませんわよね?」
ドロレスが念動力で自在に操る巨大な鋼の拳を、小太郎は巨大な拳で弾く。
尚も猛追してくるの見ると、扇子を振るい、炎で包んだ。
火遁。
しかし鋼の一撃は炎を割って飛び、強かな一撃が胴鎧を砕け散らせる――!
「グ、ヌゥ……!」
再び髑髏面を輝かせて風魔忍軍を召喚する小太郎。
「エンジン音、でありますか」
と、気付いた智華が音のする方向に一瞬だけ目を向けた。
宇宙バイク――ブーストスライガーが通路から飛び出し、複数の忍者を轢き殺しながらスピンする。流石に手練の忍者軍団、通路めがけて一斉に手裏剣や苦無を投擲したが、弾丸の猛射にその全てが迎撃されていた。
颯爽と広間に現れたのはテレビ頭の仮面男――ノイン・フィーバーだ。
「風魔の忍術などこんなものでス! 何が隕石落としですカ! 宇宙から隕石を落とすトンでも忍術だと期待したワタシへ謝罪なさい!!」
三方から襲来する忍を迎え撃ったノインが割れんばかりの声で叫びながら全身の武装を一斉展開。相手が数で来るならば、弾丸の飽和攻撃によって殲滅するのみ。
「隕石落としか。必要な戦法を持てる戦力にて行ったのみだ」
「いいえいけませン」
テレビ頭を振るノイン。
「アナタには償いをして頂きまス。ワタシの期待を裏切った償いを!」
不条理を叫ぶノインが身に纏うパワードスーツ型ガジェットから今まで以上の弾丸を発射する。鉄の嵐さながらの射撃が、忍者軍団、そして小太郎にも降り注ぎ、
「今であります!」
智華がこの時とばかりにライフルを連続射撃。
実弾と光条が小太郎の体を穿ち、呑み込んだ。
「みんなまとめて焼き尽くすよ!」
焔の翼を広げて飛び上がった紅音が、暴れまわる火龍を思わせる炎の波動を放出。
防御姿勢を取る小太郎を忍者集団ごと火炎で包む。
「よもや、ここまでやるとはな」
黒煙を上げる小太郎の仮面がまた一つ割れ、強力な忍者集団が再召喚される。
最強の化生忍者、風魔小太郎――その圧倒的力量を以てすれば、複数の猟兵達を撃破することさえ容易。それは紛れもない事実であると思われた。
見誤っていたとすれば、猟兵達が、既に二つの世界で強敵との戦いを経験していたことだろう。事実、この戦場に集った誰一人として、小太郎の先制攻撃への対処を怠りはしなかった――。
「攻撃が来るようであります! 伏せて!」
一瞬先を未来予知した智華が猟兵達に叫ぶ。
「今だ、攻撃開始!」
零児が命令を下し、煙幕弾が投じられる中、名も無き人狼の戦士団(クルースニクゴースト)が広間の全方位から多弾頭ミサイルとグレネードによる一斉攻撃を仕掛ける。
凄まじい砲火が小太郎と忍者達を襲い、ここぞと爆発の花を咲かせた。
「馬鹿な……」
小太郎の面がまた一つ割れ砕けた。
「同じ手は、効きません」
召喚された忍はしかし、分身していたナイの投じた黒剣によって串刺しにされていた。
朦々と煙るスモークの中でも、ゴーグルを装備したナイは敵の動きを捕捉できる。
「逃げても無駄ですヨ!」
逃れようとした忍者達が、ノインの全武装一斉射によって瞬く間に全滅を遂げた。
六本の腕で忍具を投擲し続ける小太郎に智華がライフルを連射。
「捉えましたわ!」
回避したところを狙ってドロレスが操る鋼鉄の巨拳――ポテスタースが吹き飛ばした。
「これで最後だ」
よろめきながらも投擲される手裏剣と苦無。
切り裂かれながらも急所を避けて突撃する満身創痍の修介。
遂に間合いに捉えた。
拳を振り抜いた修介のその腹部に下から忍刀が振り上げられる。
突き刺されながらも、振り抜いた拳が小太郎の最後の面を遂に打ち砕いていた。
紛れもない捨て身の一撃。
「――御見事」
「良い腕だった……風魔小太郎」
血を吐きながらも声を絞り出す修介。
その腹を斬り裂いた刀もまた塵と化し、最強の化生忍者はここに潰えた。
崩壊した天井から差す光が、戦い抜いた猟兵達を燦々と照らしていた。
成功
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