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エンパイアウォー㉖~猟兵犯科帳

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●金狂い、戦狂い
 猟兵の活躍で集まった徳川埋蔵金を使い、幕府軍は補給物資を無事に集める事が出来たが、その一方で買い占めを行っていた商人の中に、大悪災『日野富子』が放った『悪徳商人オブリビオン』がいることが判明する。その内の一人が廻船問屋の若旦那との報せを受け、奉行所から町方同心以下義勇の者を引き連れて、異例の捕り物と相成った。行先は江戸城下、深川の川縁にある船宿である。以前から不審な船が夜毎出ているとの報せもあった。合わせ技で一つ、義憤にかられた同心達が夜半に勇んで乗り込んで目にしたものは、男が三人、安酒を呑み月を仰ぐ姿であった。

『そいつぁおかしいですぜ旦那、本当に俺らがそのおぶりびおんやらだとして、こんな所でのんきに宴会なぞやる訳無いでしょう』
 そこに居る廻船問屋の若旦那。子分を侍らせ月見酒だとふざけた事を抜かしやがる。
『冗談言うんで無え、テメェん所の船宿から覚えの無え渡りが出てる事は承知の上よ。ああ、それが何なのか説明出来るっつうなら考えてやっても構わねえが、どうだ』
 出来んのか? と同心が凄む。こちとら武の者、多少の荒くれ平気の平左さ等と高をくくっていたが、そうは問屋が卸さない。にちゃりと下卑た笑みを浮かべる廻船問屋の若旦那は子分を下がらせて――否、子分に用心棒を呼ばせに奥座敷へ走らせた。
『テメエらが何を待ってんだか知らねえが、喋れねえってなら続きはこっちで……』
『ハッ! 戦でまともな腕前も残ってねえってのに強気なこった。ええでしょ。センセ、お仕事ですぜ』
 がらりとふすまを開けて現れたのは仮面を被った長身痩躯の異様な剣客。
『祭りの場所は……ここか……』
『何でえテメエ、さてはおぶ何ちゃらつう化けもんだな。そっちがその気ならこっちだってなあ……』

「はい、お仕事よ」
 ここはグリモアベース。リモコンでスクリーンに映る時代劇めいた映像を止めてアイリ・フラジャイル(夢見る戦争人形・f08078)が説明を始めた。現在サムライエンパイアで起こっている大規模な戦、その緒戦の成果が想定以上であり、このまま敵の兵站を潰すべく継続して悪徳商人オブリビオンを取り締まる事となったのだ。
「このオブリビオン達が逃走する前に資産を没収する事が出来れば、幕府の財源が潤って補給不足とかの不利を防ぐ事が出来るんだって。大事よね、兵站は」
 木馬に塩を送れとか、色々言い伝えもあるし――じゃなくて、このオブリビオンを取り締まろうとした幕府の役人たちの前に、用心棒のオブリビオンが現れて返り討ちにしてしまうという。
「これを防いで、物資を確保して、オブリビオンどもを成敗して欲しいの」
 倒すべきは用心棒と悪徳商人のオブリビオン。ただ町場だから、火の手が上がるような事はしないよう、気を付けてねと付け加える。
「それじゃヨロシク。きっと皆なら大丈夫よ!」
 小鳥型のグリモアが煌いて、船宿直通のゲートが開かれた。


ブラツ
 ブラツです。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 戦闘は【集団戦】となります。
 用心棒オブリビオンを成敗して下さい。
 悪徳商人オブリビオンは成功達成時に自動で成敗ないし捕縛されます。
 但し町場なので火の手が上がりそうなUCの使用時はお気を付けください。

 文頭に以下の漢字一文字を頂きますと、可能な限りそれに準じて描写致します。
 暴:猟兵一対オブリビオン多の戦です。
 鬼:猟兵多対オブリビオン多の戦です。
 必:猟兵一対オブリビオン一の戦です。
 また、名乗り口上がありましたらお伝えください。

 プレイング募集は公開と同時です。
 それではご武運を。
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第1章 集団戦 『魔神兵鬼『シュラ』』

POW   :    剣刃一閃・奪命
【近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    剣刃一矢・報復
敵を【近接斬撃武器による突き】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ   :    剣刃一弾・止水
対象のユーベルコードに対し【近接斬撃武器による弾き】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

梅ヶ枝・喜介


カネの話は難しくて分からん!
だが!この天下国家の一大事によ!
立ち上がれる勇ましさの持ち主が死んでいくのは惜しい!
指咥えて見ているだけなんざ我慢がならん!

付いて行かねば男が廃る!

おう!間違いねェ!コイツらおぶりびおんだ!
餅は餅屋!連中の相手は天下自在符持ちが引き受けた!

同心の旦那方は舟漕ぎどもを頼む!
ちくと派手に暴れるゼ!離れといてくんな!

元より刃のやり取りに切った切られたは当然!
切れ味を恐れて踏み足が竦むなぞ!んなヤワな覚悟は持ち合わせが無い!

が!今は多勢に無勢!
右手で抜いた木刀の一本じゃあ間に合わねぇか!

ならばと左の手で舟屋の主柱をがっしと掴み!
バリバリと家からひっぺがし!力任せに振るう!



●攻める気勢は火の位
『何でえテメエ、さてはおぶ何ちゃらつう化けもんだな。そっちがその気ならこっちだってなあ……』
 同心が啖呵を切れば、ふらりと影が形を成して――梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)が戦場へと降り立った。
「カネの話は難しくて分からん!」
『応、そんなのは勘定に丸投げよ』
 世の中そんなものだ。出来る事を出来る者がすりゃあいい。だから今は、こいつらを縛につけるか成敗するか、殺気を放つ用心棒の赤い単眼を睨み返し、喜介がするりと自慢の木刀を抜く。
『何だいお前さん、そんな若造寄越して。餓鬼の使いはお呼びじゃねえよ』
 からからと笑い声を上げる若旦那。しかしそんな態度意にも介さず、一歩踏み出た喜介が続ける。
「――この天下国家の一大事によ!」
 月明かりが陰影を深く彩って、びゅうと吹く夜風が頬を撫でる。良い晩だ、こんな血生臭い連中が目の前に居なければだが。
「立ち上がれる勇ましさの持ち主が死んでいくのは惜しい!」
 それは心を震わせて立ち上がった江戸の守り手達へのエール。斬り合いだけが戦じゃないと、喜介は身をもって知っているのだ。
「指咥えて見ているだけなんざ我慢がならん! 付いて行かねば男が廃る!」
『手前、何もんだ……人じゃねえな』
 がらんと木刀を地面に突立て、人ならざる若旦那――悪徳商人オブリビオンへその指を差す。
『坊よ、やっぱりか?』
「おう! 間違いねェ! コイツらおぶりびおんだ!」
 オブリビオンならば猟兵をその目で見れば嫌でも分かる。この物言い、迂闊にも自らの化けの皮を剥ぐことになった若旦那にとって致命傷。そうと分かれば、最早容赦はいらぬ。
「餅は餅屋! 連中の相手は天下自在符持ちが引き受けた!」
『猟兵か! いやこんな場末にいる筈がねえ! 先生!』
 最悪との対峙を認められない若旦那は用心棒に発破を掛けて、目の前の奉公紛いの坊主を睨む。
『――引き受けた。お助け料は』
『もちろん言い値だ! さあ出合え出合え、この分からず屋どもに目に物見せて』
 言われるまでも無く――用心棒は血塗りの刀を抜き放ち、喜介へ間合いを詰める。しかし一手届かず、下段の切先を地に叩き付けられた用心棒は再び距離を取って、正眼の構えで対峙した。

「同心の旦那方は舟漕ぎどもを頼む!」
『合点だ! 後は任せるぜ!』
 掛け声と共に場を離れる同心ら。何も悪人はオブリビオンだけではない。この悪事に加担した全てが、ひっ捕らえる対象なのだ。
「さあ、ちくと派手に暴れるゼ! 離れといてくんな!」
『やるのか……そんな得物で』
 船宿の入り口、人払いを済ませたのか幸いにも人通りは無く、喜介は木刀を大きく、天を貫く勢いの大上段で構える。上段の気勢は烈火の如し、迂闊に懐へ入ろうものなら、音より早い一撃で脳天ごとかち割られる事必定。歴戦の用心棒もその猛々しい気迫に押され、じりじりと後ずさる。ただ夜風だけが、殺気溢れる戦場に荒れる心模様の様な音を立てて。
「……後悔するぞ、それで我は断てぬ」
 喜介が腰に差した一振りに目をやって、嘲るように用心棒は呟く。
「否! 元より刃のやり取りに切った切られたは当然!」
 挑発する用心棒にじわりと近寄って。
「そしてアンタ如きの血で濡らすほど、俺の刃は安かねぇ!」
『……ならば』
 風が止んだ。ふわりと正眼の変形、刀身をやや下げて捨て身の形に。脱兎の如き勢いで飛び出した用心棒は、そのまま一足で喜介の懐へ入らんと――地を這うような姿勢で狙うは喜介の左拳。持ち手を崩しさえすれば、如何に神速の打突だろうと必中には程遠くなる。そしてゆらりと伸びた用心棒の左腕が、不意に喜介の手元を狙う。
「――!」
 しかし喜介の一太刀は用心棒ではなく、その軌跡を、刹那より早く踏み込んでその足元を地面ごと叩き割ったのだ。
『貴様! 最初から』
「応、切れ味を恐れて踏み足が竦むなぞ! んなヤワな覚悟は持ち合わせが無い!」
 割れた大地に足元をすくわれて体勢を崩した用心棒の喉元に、叩きつけた大地の反動で伸びきった喜介の両腕が、木刀の切先を強引に捻じ込んだ。

「……これで終わりってんじゃあ無いだろう」
『……如何にも』
 喜介の呼びかけに応える様に、ぞろぞろと赤目の用心棒達が徒党を組んで現れる。
「こいつは多勢に無勢! 右手で抜いた木刀の一本じゃあ間に合わねぇか!」
 ならば、と。喜介は船宿に乗り込んで壁を背に用心棒らと対峙する。
『……追い詰められたぞ。さて、どうする?』
 表情は見えないながら、ニヤリと嘲笑を浮かべた様な声色でじりじりと喜介へ近付く赤目の一群。しかしそんな輩を笑い飛ばして、喜介は目の前に聳える巨大な主柱に手を掛けた。
「こいつはちと得物が心許無えが……こうすればどうよ!」
 バリバリと、喜介の怪力が柱を床から引き剥がす。ぐらりと船宿の屋根が傾くも、かろうじでその体を保つが、それもいつまで持つだろうか。
『貴様、正気か!?』
「さあな、さてこん中で心中する気合のある奴ぁ前に出ろッ!」
 ブンと振り回された主柱が横並びの用心棒らを薙ぎ倒して。足元に転がる赤目の骸に、片手の木刀を逆手で突き立てる。
「さあさあ、喧嘩が華ならここが上席だ。覚悟のある奴から」
 相手してやろう! 強引に叩き付けられた柱に打たれまた一人、用心棒が骸と化す。
 地を揺らす轟音を背景に、喜介の大立ち回りは始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

二天堂・たま

買い占めをしている連中の資金源か…。
ここを押さえれば兵站の確保に繋がるのだな?
敵の補給を断ち、味方の補給に活かせば勝機を得られる…用心棒は手早く畳んでしまわねばな。

UC:ピヨの波動でスタミナを奪う精神攻撃を放っていく。
敵味方分けること無く攻撃してしまうUCだが、多くの敵を巻き込むには好都合だ。
戦争とは質も重要だが、やはり味方が多い方が有利だ。
多くの戦場で勝利を重ねれば敵幹部の勢力を削ることにもなる。
迅速果断…方針を決めたからには速やかに完了させるのみだ。



●招く猫
 足早に河川敷を駆ける若旦那と用心棒――オブリビオンの一党は、桟橋を抜けて浮かぶ船の中、無造作に積まれた襤褸の奥に隠した金子の束を、ひっ被せていた襤褸にくるんで持ち去ろうとする。
「成程、これが買い占めをしている連中の資金源か……」
 声が聞こえた。ぐらりと船が傾いて、用心棒が外の様子を伺う。月明かりの下、丸々とした一人の猟兵――ケットシーの二天堂・たま(神速の料理人・f14723)が白馬ならぬ巨大なひよこに跨って、眼下の赤目どもと対峙する。
『貴様も猟兵か……しつこい奴め』
「――ここを押さえれば兵站の確保に繋がる。それに」
 まるで王者の風格。月明かりが後光の様に毛並みを煌かせ、ピンと伸びた髭を撫でながらたまは続けた。
「これだけの金子があれば、戦のあるないに関わらず救われる人も居よう」
 若旦那を囲む様に陣取った用心棒らを一瞥しながら、静かに語るたま。戦とは兵站、後方の頑強さが如何に前線に影響を与えるか――それは古今東西の戦史が証明している通りだ。故に戦線を支える民草の命を守る為にも、ただの金貨が与える影響は計り知れない。
『そんな事が! それが今とどう関係がある』
 しかし戦場の亡霊、オブリビオンには分からない。無尽蔵に湧き出る過去の怨嗟にとっては、刃を交える以上に広がる戦場など、理解は出来ない。
「分からぬか? 敵の補給を断ち、味方の補給に活かせば勝機を得られる……それに」
 すとんと、騎乗したひよこから降りてたまが立つ。その手に愛用の鋼糸の束がギラリと鈍い光を放って。
「大局も見えぬ下っ端など手早く畳んでしまうのがいい、という事だ」
『抜かせ、たかが一人で何が出来るというのだ!』
 やってしまえ。若旦那の号令一下、用心棒らが一斉にたまへ飛び掛かる。水平に切先を突き出す様に構え、四方から突き刺すつもりだ。その隙に若旦那は持てるだけの金子を担いで、船伝いにその場を逃げ出した。
「数だけは一丁前か、いいだろう。やり様は幾らでも、ある」
 ずんと一歩足を前に、そして雄々しき獣が月夜に吼えた。

「ぴよーっ!」
『なっ……ぴよ……?』
『気でも触れたか……ぴよ!?』
『おいおいおいお前……ぴよ……?』
 ぴよ。ぴよ……用心棒の頭の中にでは、不意に放たれた奇怪な叫びが延々と響き渡る。超常の咆哮――【常識を塗りつぶすピヨの波動】が、用心棒らの精神を蝕んだ。
「足元がお留守だ、先生ども」
『ぴよーっ!?』
 くるりとたまが手首を返せば、闇に紛れて放たれた鋼糸が用心棒の足元をすくう。そのまま頭を打ち付けて一人、その音に紛れて奇襲をかけるも、不意に甦るピヨの波動に足元がふらついて、柔らかなる肉球の豪快な掌打がもう一人を吹き飛ばす。
『おのれ――だが、それだけで手が止まると思うなッ!』
 ギラリと再び切先をたまへとむけて、じりじりとにじり寄る。一気呵成が適わぬならば、正面からじわりと寄って勝機を伺う。だがナメクジが這う様なのったりとした動きでは、俊敏な肉食獣の動きは躱せない。
『ぴよーっ!』
 進化した脚力は影すら残さず、飛び掛かったたまの膝蹴りが用心棒の顎を割った。これで三人、残る用心棒は最後の一人となった。
「喧しいぞ、こんな夜中に」
 びゅんと振るった鋼糸が風を切って、再びたまの手元へ集まる。一歩、また一歩と用心棒へ歩み寄るたま。脳裏に響く咆哮が、用心棒が真っ直ぐ立つ事を許さない。側頭を押さえながらふらついて、力無く灯る赤目がたまを睨む。
『何故……そこまでして……』
「分からぬか? 戦争とは質も重要だが、やはり味方が多い方が有利だ」
 ぴたり、と正面で止まる為。両手を後ろで組み、無力化された用心棒を一瞥する。滔々と、夜風の様に涼やかな声が河川敷に沁みる。
「それに多くの戦場で勝利を重ねれば、敵幹部の勢力を削ることにもなる」
 じろりと表情の無い仮面を覗き込む様に――そして、鋼糸を巻き付けた片腕を大きく振りかぶる。
「迅速果断……方針を決めたからには速やかに完了させるのみだ」
『貴様……一体何者……』
 ぴたり、とたまの拳が仮面の前で止まる。
「ワタシの名か? ワタシは……「ケットシー」だ!」
 一閃――豪快に吹き飛ばされた最後の用心棒は川中へ没し、たまはその手を頭上に上げる。
「さて、これを確保すれば良いのだな」
 その足で船中へ――隠された金子は無事。
 襤褸を剥がして猫は小判を拾い上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ


名乗るほどのもんじゃあないけれど
得意は剣術、嫌いなものは悪徳商人とおっさんの匂い
桃頭妖狐の侍猟兵とでも覚えといておくれ
……なんて言っても、君らもうすぐ消えちゃうんだった
失敬失敬!

江戸、ココは僕の庭
あ?
他人の事など知らねーよ、僕が気に入ってんだから僕の庭なの

庭だからね、もちろんちょっとした調べ物なんてお安い御用
尻尾は掴んでも掴まれるなってのは僕ん家の家訓
他人の庭を荒らしたらお尻ペンペンじゃ済まないの
良くて首チョンパなの

スッと抜いた刀の最初の一振りで蝋燭の火を吹き消す
火の始末に気を付けろって言われてんのよ
え?僕は見えるよ、夜型だもの
次の一閃で前1、2列をザクっとね
戦は迷った奴から死ぬんだよ



●闇に咲く華
 暗夜の船溜まりを抜けて一路橋の袂へ。その下を潜れば、先回りした用心棒らが若旦那に気付いて行燈に火を灯す。
『馬鹿野郎! そんな物点けるんでねえ。何処に奴らが――猟兵が潜んでいるか分かったもんじゃねえぞ!』
「全くだ、揃いも揃って大馬鹿野郎だよ、お前ら」
 ひゅんと風を切る音が。用心棒が持つ行燈の先をギラリと煌めいた切先が落とす。何時の間に――考えるよりも早く刀に手を掛けた用心棒らが、落ちた行燈を囲む様に陣を為す。しかし影は、現れた猟兵はそんな事など意にも介さず、地に落ちた行燈の火を神業の剣技で、その芯を真っ二つに割り吹き消した。
「悪いね、火の始末に気を付けろって言われてんのよ」
 不意に消えた明かりに一歩、用心棒がたじろいだ隙を猟兵は――ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は逃さない。夜風と共にびゅんと詰められた間合いに気付く事なく、一刀の下に地に折れる用心棒。返り血を払って、下段の構えでじりじりと次の獲物を見定める。
『何時の間に……この闇の中、我等が分かるとでも』
「え? 僕は見えるよ、夜型だもの」
 声を出したが最後、喉元まで跳ねた妖刀の切先が一突き、仮面の下の柔肌を貫く。
『貴様……何者だ』
 更に距離を取り、月下に煌めく刃を印にロカジを囲む包囲が広まる。赤を撒き散らしながら、螺旋の様に広がる陣は花弁の様。
「――名乗るほどのもんじゃあないけれど」
 がちゃりと、刃を下に足を前に、じわりと一人ずつ追い立ててゆくロカジ。その声色は何処か楽し気な――それ故に、想像を絶する剣捌きに用心棒は焦りを隠せない。
「得意は剣術、嫌いなものは悪徳商人とおっさんの匂い」
 桃頭妖狐の侍猟兵とでも覚えといておくれ。その発声が踏込む機先を誤魔化して、地を這う様な一閃がまた一人、用心棒の命を奪う。
「……なんて言っても、君らもうすぐ消えちゃうんだった。失敬失敬!」
 からりと笑い声を上げて、窈窕たる長妖刀の血振りを済ます。その一挙手一投足に一切の無駄は無く、言に惑わし剣に葬る達人の妙は、既に三つの骸を橋の下に生み出した。
『妖か……呪いで我等の行き先を占ったか!?』
「何を言うかと思えば、冗談のセンスは嫌いじゃないかな。ただ」
 激高する用心棒。流石に目が慣れてきたのか、足取りもしっかりと切先をロカジに向けて対峙する。そんな今更な立ち回りにロカジは刀を肩に掛け、空いた指先で大地を示した。淡々と、それでいて凄みを効かせてロカジは続ける。
「江戸、ココは僕の庭だ」

『庭だと、徳川の街に妖風情が随分と大口を叩く』
「あ?」
 じりじりと間合いを図る用心棒に、ずかずかと歩を進めるロカジ。その表情に僅かな怒りを滲ませて――それは己の矜持に対する冒涜への反証。
「他人の事など知らねーよ、僕が気に入ってんだから僕の庭なの」
 するりと両の掌に刀の柄を納め、切先を用心棒の仮面、赤目に向ける。
「庭だからね、もちろんちょっとした調べ物なんてお安い御用。尻尾は掴んでも掴まれるなってのは僕ん家の家訓」
 捲し立てる様に、それでいて一切の淀み無くロカジが言い放つ。
『笑止、所詮は徳川の掌の上よ。妖が飼い犬にでも成ったつもりか?』
「――いいか? 他人の庭を荒らしたらお尻ペンペンじゃ済まないの」
 虚勢を張る用心棒にじわりと近づく。それを知ってか知らぬか、先を掛けんと踏み込んだ用心棒。速さも勢いも威力も十分、出遅れたロカジの肩口を斬り落とす様に振るわれた上段からの袈裟斬りは、しかし届く事は無かった。
「良くて首チョンパなの」
 って、もう聞こえねえか。正眼から片手突き――突き出された片腕は足りぬ半歩分の間合いを乗り越え、そのまま膂力と手首の返しが用心棒の首を胴体から切り離す。切先にぬらりと血が滴り、血振りがロカジの周りに三日月の様な血の跡を残す。
『……ここまで、か』
「そうさ。お前らはここで終わりだよ」
 その言葉は用心棒の先、この戦争を起こした第六天魔王に向けてのものか。再びゆらりと正眼に構え、用心棒の最後の一人と正面から対峙する。
「お前、これだけ仲間がいたのに、どうして束になって掛かってこない?」
 ロカジの口から出た言葉は意外、一夜の立ち回りの疑問。数で圧倒すれば流れは変わったかもしれぬのに何故、と。
『……そうすべきか、あるいはそれでも足りぬと思った、か』
 灯の消えた後の僅かな迷いが、この趨勢を定めたのなら――それは愚かだ。
「怖気づいたってか。あのなあ、戦は迷った奴から死ぬんだよ」
『そうだな。だがもう――迷いは無い』
 そりゃいいねえ。八相に構える用心棒に対し、僅かに切先を上げる平正眼。この勝負も一瞬――刹那に走る衝動を正しく制した者が、勝つ。
『…………』
「――――!」
 ぴくりと用心棒の肩が震える。今が攻め時、では無い。あれは動揺を誘う罠。対してロカジは切先を前に、体のみを詰めて間合いに圧を掛ける。その一手が用心棒の痺れを切らせた。一瞬――ひゅんと振り被った一刀が用心棒の頭上へ届かんとした刹那、それよりも早く神速の一閃が横一文字に用心棒を断ち切った。
「……悪いな、首じゃ済まなかったわ」
『いや、いい』
 最後、この様な立合いに見えた事を感謝する。そう呟き、赤目は光を失った。
 身体を二つに分かたれた骸を見やり、すらりと刀を納めるロカジ。
「命、掛けてやるもんじゃねえよ」
 だからとっとと終わらせねえと。己の庭を見渡し、ロカジは煙管に煙草を詰める。
「……ま、終わってからにするかね」
 そっと燐寸を懐に仕舞い、煙管を片手に静かな夜景を目に納めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御鏡・十兵衛


おぶりびおんには猟兵を、用心棒には用心棒を。道理でござるな。
ちょうどあからさまな化生との戦いばかりで少し飽いていた所、喜んで手を貸すでござるよ。

……ほほう?雑兵ばかりと思えば、居るではないか、いっぱしの使い手が。
同心殿、済まぬが某はこれから手が離せなくなるでござる。守ってはやれぬのでな。他の猟兵の所へと行かれるが良かろう。
さて……貴殿の相手は、某が務めさせて頂こう。

奇しくも似た構え、一対一の舞台。この得難い機会に、無粋な小細工など挟めるはずもなし。
刀一つで、流し、弾き。剣戟の果てに、純粋に相手を上回った者が立ち、敗者は血に沈む。
それでこそよ。



●猟兵稼業
『テメェ! 待ちやがれコラ! オイッ!』
 所変わって船宿の裏手、若旦那に言われるがまま逃げ惑う子分らを追いかける同心らは、その途上で異形の仮面と相対する。
『貴様は、楽しませてくれるのか?』
 ちらりと血塗れの刃を見せつけて、同心を恫喝する仮面の用心棒。だが。
「……おぶりびおんには猟兵を、用心棒には用心棒を。道理でござるよ」
 すわ斬り掛からんとする用心棒の前に、鬼が出た。
『すまねえお嬢、こいつぁ骨が折れる相手でさぁ』
「何、ちょうどあからさまな化生との戦いばかりで少し飽いていた所、喜んで手を貸すでござるよ」
 御鏡・十兵衛(流れ者・f18659)はするりと愛刀を抜き放ち、音も無く対峙した用心棒に斬り掛かった。全てが余りにも不意の出来事――斬撃を返そうものの、触れた刀身が巻き上げられて、刃は宙を舞う。
「――失礼、お次は」
 皆まで言わず、返した手首で逆袈裟に用心棒を断つ。十兵衛を囲む様にわらわらと用心棒らが姿を現すが、それらを一瞥しニヤリと一言。
「まるで某が化生の様ではないか。これでもうら若き乙女でござる」
『貴様の様な乙女がいるか! あ』
 失敬な――怒声を浴びせた用心棒の懐が突如赤黒く染まる。遠間からの片手突き、半端に手元を上げようものなら腸が血に染まるだけ。びゅんと引き抜かれた勢いで血振りを済ませて、十兵衛の背後にいるもう一人を振り向き様に叩き斬る。
「しかし手ごたえが無い、おぬしらにも用心棒が必要でござろう」
 正眼で最後の一人と対峙する十兵衛。しかしその剣圧に、だらりと嫌な汗が出る。ああ、こいつは手練れだ。これまでの者とは違う――。
「……ほほう?雑兵ばかりと思えば、居るではないか、いっぱしの使い手が」
『…………』
 仮面の用心棒は黙して語らない。だらりと伸ばした腕にやや猫背気味の正眼。町道場の正統派とは程遠い、野趣溢れる戦場剣術の形。
「……同心殿、済まぬが某はこれから手が離せなくなるでござる。守ってはやれぬのでな。他の猟兵の所へと行かれるが良かろう」
 対峙した十兵衛も両足を前後に開いて蹴り足に力を込める。狩りをする肉食獣の様に張り詰めた後脚が、微動だにせず爆ぜる時を待つ。
『お、応――お嬢も無事で!』
 承知。静かに言葉を返して、十兵衛は手練れの用心棒と対峙した。
「さて……貴殿の相手は、某が務めさせて頂こう」
 夜風が頬を撫でて――月明かりが二つの影を色濃く映し出す。奇しくも似た構え、一対一の舞台。この得難い機会に、無粋な小細工など挟めるはずもなし。
『…………』
 対する用心棒も微動だにせず――否、既に双方が一撃必殺の間合いなのだ。迂闊に動きを見せれば、そこから先は血風吹き荒ぶ地獄の巷と化すだろう。
 そして再びの風が雲を運んで――闇が二人を包んだ。

 先に仕掛けたのは意外にも十兵衛。極限まで溜め込んだ力を放って、弾丸の様に用心棒へと間合いを詰める。その一撃は正しく岩すら砕く剛剣に等しい。それを払って二の太刀を狙う用心棒――しかし圧倒的な跳躍力と強靭な膂力が、用心棒に自由を許さない。払い落とすまでは至らず、軌道を逸らしたに過ぎない。そして返す刃が十兵衛を狙うが、浅い。横一文字に右へと振るわれた一刀は十兵衛の鼻先を掠めるにも至らない。
 手首をくるりと返して懐を突かんと踏み込む十兵衛。その剣筋をなやして避ける用心棒、前に出た十兵衛の勢いを使って三度目の刃を喰らわせんと半歩前に出るも、その動きを見切られて半身になって躱される。そのまま振りかぶり逆袈裟――用心棒はかろうじで斬撃を受けるものの、詰められた間合いから離れる事も叶わず。戦いは再びの膠着状態となった。
「――良きものよ」
 鍔迫り合いの最中、不意に十兵衛が漏らした。それは剣一筋で生きてきた、己の矜持か。がちがちと鍔元が音を立てて、闇に煌く白刃にちらりと顔が映る。
「超常の力も使わず、己が腕一つで斬り合う。そして更なる高みを目指す――」
 この戦もその道筋の一つに過ぎない。己が修練の一つなのだ。如何に相手が異常の剣士だろうと、それを技一つで乗り越えてこそ現世の剣豪たるものだろう。
「この位置でなければ、まだ見えぬものが沢山あるのだなあ」
『…………ふ』
 ふと用心棒が言葉を洩らした。全霊を傾けられる戦に見えた喜びか、あるいは――それが崩しか。ひゅんと乱暴に左拳を跳ね上げて、十兵衛の右拳を殴りつける。一瞬だ、その一瞬で崩された体勢に、刃筋に合わせた斬撃が十兵衛を襲う。その斬撃をすり上げて追撃を――だが十兵衛の返す刃も再び用心棒に弾かれて、分かたれた二人は再び正面から対峙する。
「そうであろう。お主も、かつては誉れ高き戦人であったろうに」
『だが、死ねば無になる』
 誰もが必ず死ぬ。しかし残された術は我が身に宿る。それがこの一刀――十兵衛にとって至極当たり前の価値観。そして無とは、無念無想、無我の境地。神仏にも等しい悟りの心だ。命を懸けた修羅場に身を置き、魂を震わせて、あらゆる欲望、気配、激情、何もかもを飲み込み――無と返す。それこそが水鏡、事象を俯瞰し己を無とする窮極。
「――その境地に生きて至らん。剣の道はかくも厳しいものよ」
 刀一つで、流し、弾き。剣戟の果てに、純粋に相手を上回った者が立ち、敗者は血に沈む。次が最後になる――そう感じた十兵衛は刀をするりと己の背後に、脇構えで用心棒の一手を待つ。対して大上段に構えた用心棒、最早手練手管はいらぬ、この一刀に全てを懸けて……決死の間合いに飛び込んだ。

「それでこそよ」
 ぶんと血振りを済ませて刀を納めた十兵衛。ややもすれば肩口ごとばっさりと斬られていただろう。だが用心棒の妄執に、十兵衛の執念は打ち勝った。綺麗に断ち切られた両の手首と、真っ二つに割られた上下の胴体を一瞥して、夜空を望む。
 風が吹いて――いつの間にか、雲は晴れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ

(POW)で判定
「斬らせてもらうぜ!!オブリビオン!!」

【オーラ防御】で防御を固め、【戦闘知識】での的確な【見切り】でダメージを抑えるぜ。
【残像】と【フェイント】を織り交ぜながら、2刀流をふるい、【怪力】での【なぎ払い】と【範囲攻撃】を叩き込むぜ
ユーベルコード【二天一流『無双一閃』】により有象無象を斬り捨てる!!


リア・ファル
POW
アドリブ共闘歓迎

このリア・ファル、曲がりなりにも商売人、
あまつさえ猟兵である。

まっとうにお天道様の元で生きる人々を、
過去から彷徨い、食いモンにする悪党は、許しちゃおけないAI(質)なのだ。

「行くよ、ヌァザ! 今宵のキミは遠慮無しだ!」
銀縞猫が「にゃあ」と鳴きゃ、魔剣がこの手に現れる。

なに、そのモノアイが命取りさ。
ヌァザで斬り合った接触面、もしくは斬りつけた相手の頭部から
「ハッキング」を用いて判断を奪う「マヒ攻撃」
『グラビティアンカー』で「ロープワーク」で動きを封じ、
ラストは、UC【銀閃・次元斬】で、たたっ斬る!

「今夜この船宿から出るのは、骸の海行きだけってことさ」



●銀剣と守護者
『この野郎、何処まで逃げるってえんだ!』
 息を切らせながら走る同心、追われる若旦那の子分どもは長屋の裏を通り抜けて、大通りまで逃げ果せた。しかしそれを追いかけるのは同心だけではない。
「――待ちなさい」
 月明かりの下、しゃなりと白地の着流しを纏う女が現れる。
『な、何だよ! やんのかテメエ!』
 女とみて強気に出る子分共。しかしその威勢を一笑に飛ばして、女は――リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は口上を続ける。
「威勢だけは一丁前、だが心根は半人どころか人ならず腐敗の極み」
 狼狽える子分の元へ一歩、一歩と近付くリア。その瞳は怒りに燃えて、凛とした声音が夜の街に響き渡る。
「このリア・ファル、曲がりなりにも商売人――あまつさえ猟兵である」
『せ、先生方! いるんだろ! 何とかしてくれ!』
 その声に応じたのか、ゆらりと幾十もの影が徒党を組んで、大通りに姿を現した。用心棒のオブリビオン――神出鬼没に、この街に網を張っていたのだろう。
「出たねオブリビオン。まっとうにお天道様の元で生きる人々を、過去から彷徨い、食いモンにする悪党めが……ボクはそんな奴等は許しちゃおけないAI(質)なのだ」
 ふわりと風が――銀光眩い縞模様の猫がリアの足元に現れる。それは猫の形をした多元干渉デバイス、尋常の猫などではない。
『仕事は……しよう』
「行くよ、ヌァザ! 今宵のキミは遠慮無しだ!」
 すらりと伸びた腕が袖をまくると共に、白い着流しが清廉な宇宙戦闘服へと姿を変えて――にゃあと一声猫が叫べば、その姿は美しき魔剣へと形を変える。その異様にたじろぐことも無く、用心棒らは一斉にリアへと飛び掛かった。

「――なに、そのモノアイが命取りさ」
 キミ達が機械ならば、その時点でボクの術には抗えない。次々と飛び掛かる命知らずな用心棒ら。上段へ跳ね上げた刃でその胴を、飛び掛かったその腕を横薙ぎに切り落とし、地を這うように迫れば返す刃が下段で脚を斬る。そして機械故の不都合――リアのハッキングが動きを止めるマヒの指令をドライブすれば、傷が深ければ即死、浅い傷であろうと触れれば最後、文字通りの魔剣と化したヌァザの太刀捌きが、瞬く間に動けぬ機人の、用心棒の骸の山を築いていった。
 正に三界の魔術――何が起こったかも分からずやたらに飛び掛かる用心棒らが、次々と力を失い倒れていく。通りの大立ち回りは一見、リアの優勢に見えたが、しかし思わぬ伏兵が危機を呼び起こした。同心だ――彼はまだ子分を捕らえようと、戦いの影に隠れていたのだ。その同心が、戦列を離れた一人の用心棒に襲われる。だが、こちらも一人ではない。

『っテメエ! 一体何だってんだ!』
 赤目をぎょろりと同心へ向けて、ずるずると間を詰める用心棒が一人。子分を追いかけた小道の先、大通りの手前で立ち塞がった用心棒に飛び掛かるも一蹴され、逆手に持った血塗りの刀が今まさに同心の命を絶たんとしていた。
「――待ちな」
 背後より黒い影が――抜かれた二振りの刃がギラリと月明かりで輝いて、否応なくこの影が敵である事を強く示す。
『もう一人、いたか』
 がちゃりと刀を八相に構え、振り向いて対峙する用心棒。その先――ガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)を睨む様に、赤い目を明滅させて。
「御託はいらねえ。斬らせてもらうぜ!! オブリビオン!!」
 疾走――間合いに入る刹那、大きく振りかぶった用心棒の懐へ肉食獣の様な健脚がガイを運ぶ。一閃、右の手で振るわれた一刀はすれ違い様に用心棒を両断した。
「アンタ、ここは危ない。捕らえる奴がいるなら待ってな」
 すぐに片づけてやる。そう言うと再び用心棒が湧いてきた通りの方へ駆け上がる。
『猟兵だ、まだいるぞ』
 大通りの入口、三方から奇襲を仕掛ける用心棒は水平に構えた刃でガイを狙う。リアが無力化した連中と別動隊だ。しかし暗い夜道に煌く赤目を頼りに、ガイはその速度を上げる。一瞬の交錯――しかし元より恐れるまでも無いという強い気迫が不可視の力場を形作って、ガイは奇襲を難無く受け流した。
「見えずとも、その程度!」
 左右の刀がすれ違い様に両脇の用心棒を叩き斬る。滑る様に上から下へ伸ばされた両腕が、圧倒的な膂力と相まってそのまま胴体を両断――続けざまに正面の用心棒が動くよりも早く、バツの字にその身体を断ち切った。
『……手が足りん』
 用心棒の声にずらりと、まだ動ける赤目の集団がガイを囲む様に集まった。完全な包囲――円陣を組み刀を下段に構えて、じわりじわりとガイに近寄る。
「ハ! それがどうした……遅いぞ!」
 何をしようと、かような動きはとうに見切った。刹那、姿を消したガイが一斉に用心棒達の前に姿を現した。
『面妖な! 幻術か――』
「剣術だ!」
 それは残像、不意に現れたガイの虚像に一刀を振ってしまう用心棒ら。しかしその隙が、ガイからの最大の反撃を許してしまった。二刀で天地を遮る様な異様な構え――それこそが円陣を組む有象無象を纏めて叩き斬る奥義。一瞬で極限まで身体を捻り、その絞りを解き放つ。独楽の様に回転した剣刃が、その切先を群がる用心棒の全身に叩き込まれる。刹那の反撃が赤目の尽くを地に伏せた。
「さあ、次はどいつだ――!」
 二刀をだらりと下げて無構えに、だが敵は遥か上より――長屋の屋根からガイに飛び掛かる。
「そうはさせない!」
 ガイの側方、共に戦うリアが放つは重力の錨……足元を絡め取られ、引き寄せられた最後の一人がその首をガイに撥ねられた。

「これで終わりか……?」
「ええ、ここにいるのは」
 赤目の骸が山の様に重なった大通りで二人は顔を合わせる。先程も突然、奴らは現れた。であればここで終わりとは言い切れない。その予感が果たして現実に呼び寄せたのか、再び通りの奥から赤目の集団が徒党を組んでこちらへ向かう姿が見えた。
「いい加減しつこいな――でも」
「ああ、幾らでも相手になってやる!」
 スラリと抜かれた二人の得物が銀光を放って、狙うは物言わぬ骸の山。マヒさせたとは言え、二度と動かないという保証は無い。
「……煌めき奔れ銀の閃き!」
「有象無象を斬り捨てる!!」
 その一閃が容赦なく眼前の用心棒だった物を無へと返す。ばらりと崩れ落ちた山の向こうからは、新たな赤目の群が顔を覗かせて。
「――さあ、次にこうなりたい奴は前に出ろ!」
「まあ、今宵ここから出られても、骸の海行きってことだけどね」
 覚悟は出来てるな、とそれぞれの切先を赤目に向ける。
 夜の戦の最大多数をここに引き付けた――戦の趨勢はこちらに傾いたのだ。
『一体、何なんでい……猟兵ってのは』
 ひっそりとこの場を逃れようとする子分を捕まえ、その身を縛りながら同心が呟く。異常の敵に超常の剣技、こんな奴らと将軍様は戦をしてるっていうのか。
「何、ボクらは通りすがりの正義の味方って所さ」
「覚えておきな。そしてお前らは」
 骸の海へ還ったらよく伝えておけ。世界は俺達が好きにさせないってな。
 白刃の先の赤目へ宣うガイ。再び戦端が開かれる。
 しかし今度こそ怖いものは無いと、心から安堵した同心であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミハエラ・ジェシンスカ


……紙と木の建造物か? これは
脆いな。それに小さい
大立ち回りはできんか

踏み込まずフォースレーダーによる【情報収集】で戦況を俯瞰
逃走しようとする悪徳商人と護衛の用心棒を迎え撃つ
悪いな。貴様に怨みはないがこれも仕事だ

"戦さ絡繰"とでも言ったところか。この世界の流儀に則るなら
ミハエラ・ジェシンスカ
流派なぞはない。ただの邪剣だ

【武器受け】【見切り】で攻撃を凌ぎ
【カウンター】【2回攻撃】で反撃
隙を見せればそこへ【捨て身の一撃】を叩き込む

この一撃で殺せる程度の相手であればそれで良い
だが、見事弾いてみせたのならその隙にこそ【邪剣開帳】を叩き込む
「見た」技を相殺する魔剣には「見せぬ」邪剣を以って抗するまでだ



●剣の正邪
 橋の下から辛くも抜け出した若旦那は、更に先の桟橋でその身を隠していた。
『一体……どれだけ出て来るってんだ』
 その傍らには用心棒が三人、既に大通りで大半の赤目は討ち取られている。残り僅かな戦力を見やり、神出鬼没な猟兵の動きに僅かな手勢では不安を禁じ得ない。
「……紙と木の建造物か? これは」
 矢張りというべきか。大きな影が一つ、襤褸を纏った痩躯の剣士が、霧の立つ川縁にふらりと姿を現した。涼やかな女性の声色。だがそこから放たれる殺気は尋常のものではない。歴戦の身が漂わせる風格から、殺しの気配がびりびりと伝わってくる。
『…………』
 若旦那の前に二人、赤目の用心棒が並び立つ。ギラリと光るモノアイがその影を舐める様に見て、そして刀に手を掛けた。
「脆いな。それに小さい。大立ち回りはできんか」
 言と共に襤褸から腕が伸びる。直立不動、何の気配も見せないで放たれた一撃は、不用意に前に出た一人の用心棒の首を掴んで持ち上げ、もう一つの腕から光剣を放ち――その懐を貫いた。
「――悪いな。貴様に怨みはないがこれも仕事だ」
 ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は淡々と、己の内なる命令に従い、仕事を開始した。

『な、テメエも猟兵か……化け物め』
 音も無く倒された用心棒を見やり、若旦那が再び逃走を図る。
「化け物、か。むしろ“戦さ絡繰"とでも言ったところか」
 貴様らと似た様なものだ。もっとも、徒党を組んでこの様では私の世界では三流以下だがな。どさりと事切れた用心棒を放り投げて、残る用心棒へじわりと歩み寄る。
『……その腕、相当の者とお見受けする。何者か』
 下段のままじりじりと間合いを図る用心棒が静かに尋ねる。長身、痩躯、絡繰――似ている様でその実違うミハエラに少なからず因縁めいたものを感じたか、張り詰めた空気の中で不意に飛び出た言葉は、意外なものだった。
「この世界の流儀に則るなら――私はミハエラ・ジェシンスカ」
 襤褸より飛び出た長い腕より、熱を帯びた二振りの光剣が赤黒い光を放つ。闇夜の中、蒸発した霧が音を立てて、光剣の輝きがミハエラの顔をじわりと照らす。
「流派なぞはない。ただの邪剣だ」
 再び、腕が伸びる。左右から飛び出た光剣の斬撃をばちりと打ち落とし、その勢いで更に間合いを詰める用心棒。地に落とされた光剣が再び不規則な軌道で用心棒を狙うが、絶妙なる応じがその打ち込みの尽くを回避する。
「ほう、意外と――やるものだな」
 左右からの連撃、油断すればそれこそ背後からも邪剣は飛んでくる。神出鬼没、変幻自在な帝国流剣術はこの侍の国においても圧倒的な威力を誇示していた。
『何、二人掛かりとやり合うものだと思えば――容易い』
 成程。ではこれならばどうだ? 口には出さず、ミハエラは剣戟のパターンを切り替える。前後左右で不規則な動きを見せた打ち込みから、今度は間合いを取って鏡映しにした様に、同時のタイミングで用心棒を斬りに掛かる。
「さて、どうする。片方を防げばもう片方が飛んでくる――」
『否、その時を待っていた』
 前後から同時に振り下ろされた光剣を、その立ち位置を軸にして回り込む様に躱す用心棒。タイミングが同時ならば、それを躱せば必ず隙が出来る――回転しながらその勢いを使って、一気にミハエラの方へと詰め寄った。
「ほう、確かにそれならば――ここまでは躱せたな」
 淡々と、躱された斬撃など気にも留めずにミハエラは続ける。この一撃で殺せる程度の相手であればそれで良い――でなければ、わざわざここまで来た甲斐など無い。
『終わりだ』
「貴様がな」
 ミハエラの左方より迫る用心棒。抜き放たれた横一文字がミハエラの首を狙うが――先に膝をついたのは用心棒だった。
『! ……ま、だ』
「拝む程の価値もない邪道の剣だ。知らぬままに死んでゆけ」
 がたりと倒れた用心棒の懐から赤い血が噴き出る。ミハエラの襤褸より伸びたもう一本の隠し腕が、決死の一撃を放った用心棒に痛烈な返しを喰らわせたに過ぎない。
「「見た」技を相殺する魔剣には「見せぬ」邪剣を以って抗するまでだ」
 飛び出した三本の光剣を仕舞い、辺りには再び闇が戻る。
「……しかし、逃げ足だけは一流か」
 センサを走らせ若旦那の足取りを追うミハエラ。だがもう、仕舞いだ。
 仕事は一人でやるものじゃない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルノ・ネッケル
《必》
狐火と熱線を封印、今回はトンファー&リボルバーで行くで!

まずは乱入しつつ【先制攻撃】、挨拶代わりの鉛玉や!
とはいえ当てるつもりはあらへん、気を引ければ十分。

……何者かって?名乗れってんなら名乗ったる。
「生まれも育ちも島国なれど、何の因果か銃客商売。傾奇に傾奇いた名に体、されど故郷は見過ごせず。メルノ・ネッケル……又の名を、"火器狐"や。討たせて貰うで、不埒者!」

奴の突きは苦境に立つほど強くなる……ならば取るべきは後の先、カウンターや!

稼ぐのは九秒……一つ、二つと数えながら突きを【見切り】、トンファーの【武器受け】で凌ぎ……九つ!
『九秒の狐』!九百間を駆け抜ける弾丸、至近距離から貰っとき!



●狐と踊れ
『はぁ……はぁ……』
 必死の思いで川縁を走る若旦那。護衛の用心棒は最後の一人しか残っていない。元はと言えば日野富子が手配した市場の買い占めが目的で、命までは狙われない筈だったというのに――いや、オブリビオンの自分は、どうしてここへ戻ってきたのだ?
『俺……は……』
 これまでの疲れからその場に倒れ込む様に座る若旦那。俺は元々廻船問屋の若旦那だった。それは間違いない。だがどうして、何の為に――生きようとしたのだ?
 死を間近に起こされた自身の最後の記憶、ああそうだ。あの時もこんな情景だったか。闇の中、役人に追われ、闇に紛れて――何者かに斃された。今もそれと同じ、であれば最後に待ち受けるのは同じく、死か。
 不意に火薬の爆ぜる音と共に、己の頬を鉛玉が掠める。その音がする方を向けば――月明かりの下で一人の妖狐が、銃口をこちらへと向けていた。
『何もんだよ……お前は』
 もう動くのも無理だ。割に合わねえ。若旦那の口から出た言葉は少々の諦観と、怒りが混じっていた。妖狐は銃口を降ろし、そろり、そろりと若旦那の方へ向かう。
「……何者かって? 名乗れってんなら名乗ったる」
 メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)は故郷を荒らす悪漢どもに、雄々しくも凛と啖呵を切った。その言葉は対照的――一片の迷いも無い。
「生まれも育ちも島国なれど、何の因果か銃客商売」
 この侍の国で銃客か……それはまた珍しい。しゃなりと前に出た出で立ちは伴天連の洋装めいたシンプルなもの。勇ましくも精錬とした出で立ちは、戦士に相応しい。
「傾奇に傾奇いた名に体、されど故郷は見過ごせず」
 ああ、故郷が危機ならは見過ごせねえよな。俺もそうだったかもしれねえ。自らを傾奇者と称する妖狐を見据え、若旦那はゆらりと立ち上がる。
「メルノ・ネッケル……又の名を、“火器狐"や」
 そいつはおっかねえ。火事と喧嘩が華と言えば聞こえはいいが、要は不始末の皮肉みたいなものさ。そいつが両方揃ってちゃあ、始末に負えないだろうよ。
「討たせて貰うで、不埒者!」
『そうかい……やってみろや』
 わざとらしく悪態をついて、傍らの用心棒をけしかける。これが俺の大勝負――あの時越えられなかった過去を、今度こそ越えてやる。

『鉄砲か……しかも、ここの物では無いな』
 夜風と共にメルノへ迫った用心棒は、引鉄を弾かせる間もなくするりと間合いを詰める。懐に入れば斬撃の方が早い、場末の賭場でこんな物を持ち出す奴は早々いないが、居合抜きは狙撃銃の初速に匹敵するのだ。距離さえ詰めれば、刀が銃に勝てない道理など無い。
「そう来るのは想定内や。行くで」
 一。リボルバーを右手に、トンファーを左手に持って用心棒の斬撃に備える。
『どうした、引いてばかりでは撃てぬぞ?』
 二。初太刀を見切れ。それさえ凌げば後は時間の問題や。横か、縦か――正面にトンファーを構えて、待つべき時を待つ。
『琉球の武具か。珍しいものだが……それでは!』
 三。来るか。右足を引いた――一気に飛び掛かるつもりやんね。リボルバーを逆手に持って、万が一の防御に備える。
『……勝負!』
 四。鞘は水平――横やな。脇腹を守る様に、トンファーとリボルバーを交差させて斬撃に備える。
 五。抜刀――位置は読み通り、持ってくれよフレーム!
『中々、やるようだが……』
 六。お次は返す刃で霞の構えから諸手突き――ええやろ、出たとこ勝負や。
 七。一挙動引いた、来る! トンファーで刀身を回し受け。弾いたるわ。
『これで、終わりだ……!』
 八。タイミングバッチリや。あと一つ、踏み込んできた奴の足を踏みつけて。
『貴様、まさか最初から!』
「九。そうやで――気付くのが遅いんじゃど阿呆」
 轟音が河川敷に響く。片脚を踏みつけられた用心棒は咄嗟に躱す事も出来ず、至近距離から狐の魔弾を脇腹に受け、その致命の一撃は容赦なくその命脈を断った。
「ユーベルコードや。埒外には埒外を――川ぁ渡って早うお帰り」
 骸の海ヘな。立ち上る硝煙を吹き消して、残る若旦那へ銃口を向けるメルノ。
「あー走っても当てるで。これの弾丸は九百間を駆け抜ける」
 ここからどこへ行こうと、もう逃げられへんよと脅し文句を添えて。
『ああ……もう、そうだな……』
 逃げてえよ。でも遅いんだ。ガチャリと撃鉄を上げる音が響く。
『終わりにしようぜ』
 南蛮渡来の装飾銃を袖から出した若旦那が、銃口をメルノに向ける。
「あんた、阿呆やな」
 最後の銃声が一つ、月光の下に響き渡った。

 同心が残る子分をひっ捕らえ白状させた結果、猟兵が見つけた金子以外にもあらゆる場所に溜め込んだ財貨が隠されていた。それらを無事回収した同心と猟兵達は、深川の廻船問屋に端を発する一連の騒動に無事、幕を下ろす。しかし戦争は未だ終わらない。次の戦場を目指して、猟兵達は再び動くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト