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エンパイアウォー④~悪猫龍を噛む~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●猫は企む
 駿河国、富士山の裾野に広がる、後の世では青木ヶ原樹海と呼ばれる、深い森の中。
 木々がうっそうと生い茂り、昼でもなお薄暗い森の中で、一人の女が何やらぶつぶつと呟きながら歩いていた。
 その顔の上半分を覆い隠すような猫面。肩に担いだ大きな麻袋。腰からは日本の三毛猫の尻尾。
 人間ではない。妖狐でもない。ヤドリガミだったら、もしかしたらこんな姿のもいるかもしれない。
 しかしその身体から発せられる剣呑な空気が、彼女が常人ではないと如実に物語っていた。
「うーん、この場所ならまぁ、なんとか儀式は行えそうかにゃあ……えーと、コルテス様に教わった手順、手順」
 そう独り言ちながら肩に担いだ麻袋を地面に乱雑に下ろし、懐から一本の巻物を取り出す猫面の女。
 その巻物の表には、「太陽神の儀式実行指南」と、下手な筆文字で書かれていた。

●人は抗う
「サムライエンパイアの大戦は、まだまだ始まったばかりですよぉ、皆さん」
 阿瀬川・泰史(酒と杯さえあればよし・f02245)が真剣な面持ちで、指先にぐい呑み型のグリモアを浮かべながらそう告げた。
 江戸幕府将軍・徳川家光の号令により始まった、島原に建つ織田信長の本拠地「魔空安土城」に向けての進軍は、まだまだ始まったばかり。
 道中では信長配下のオブリビオンが、あの手この手で家光たちの進軍を阻み、その兵力を削ごうと策を巡らせている。
 これらの策が為されてしまえば、進軍のための兵の数が減るばかりではない、サムライエンパイアに住む人々の命も脅かされてしまう。
「今回は皆さんに、駿河国に向かっていただきます。目的地は富士山、その裾野に広がる広大な樹海です。
 そこで渡来人コルテスの配下が、富士山を噴火させようと儀式を行っているようなのですよねぇ」
 泰史の告げた言葉に、俄かに猟兵たちがざわついた。
 富士山が噴火してしまえば、関東、東海、甲信越、非常に広範囲に被害が広がってしまう。そしてその広範囲に住む罪のない人々にも犠牲が出てしまうだろう。
 そんなことは、何としても止めなくてはならない。
 儀式の内容は、と猟兵たちの中から声が上がると、泰史の表情が僅かに曇る。
「儀式そのものは単純と言えば単純、ですかねぇ……樹海の中で儀式場を築き、その中に置いた聖杯に、仔竜を殺して血を注ぐ。
 単純ですが、血生臭いですよぉ。それに加えて異質です。間違っても樹海の中でやるような代物じゃありません」
 不快な感情を振り払うように、ゆるゆると泰史は首を振った。
 泰史曰く、猟兵たちのするべきことはこうだ。
 富士山麓の樹海に転移した後、樹海の中で儀式場を探す。
 儀式を執り行うオブリビオンを撃破する。
 しかし儀式場の場所は泰史には分からなかったため、猟兵たちが自らの足で探す必要がある。
「僕が予知した感じですと、儀式場はある程度開けていて、大きな木が等間隔に……そうですねぇ、六角形を描くような感じで生えていました。
 ただ、日が差し込んでいる様子はありませんでしたので、上空からだと何も見えないかもしれませんねぇ」
 額に手を当てながら呻く泰史。その表情には歯がゆさと申し訳なさが見て取れた。
 儀式を行っているのは戸沢・三毛猫斎。猫の面をかぶり、腰から二本の尻尾を生やした女性型のオブリビオンだ。
 猫にまつわる忍術を得意とする忍者で、巨大な山猫に変化して攻撃したり、可愛い猫の群れを放って士気を挫いたり、巨大ででっぷりした猫を上空から落下させて攻撃してきたりするようだ。
「このオブリビオンを撃破すれば、儀式は止められます。聖杯に仔竜の血を注がれてしまう前に、なんとしても倒してくださいねぇ」
 そこまで話して、こくりと頷く泰史。
 その口元には、ようやくいつもの柔和な笑みが戻っていた。


屋守保英
 こんにちは、屋守保英です。
 サムライエンパイアの戦争はまだまだ序盤戦。
 頑張りましょう、皆さん。

●目標
 ・戸沢・三毛猫斎×1体の撃破。

●特記事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●戦場・場面
(第1章)
 富士山の裾野に広がる樹海です。
 この樹海のどこかで、戸沢・三毛猫斎が富士山を噴火させる為の太陽神の儀式を行っています。
 儀式が完遂される前に儀式場を見つけ出し、太陽神の儀式を阻止してください。
 儀式は随分と血生臭く、そしてサムライエンパイアの一般的な観点から見れば殊更に奇妙なものです。

 それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『戸沢・三毛猫斎』

POW   :    きゃっ遁・大山猫変化の術
【巨大な山猫】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    きゃっ遁・猫津波の術
戦闘力のない、レベル×1体の【かわいい子猫】を召喚する。応援や助言、技能「【誘惑】」を使った支援をしてくれる。
WIZ   :    ぐらび遁・でっぷり落としの術
【怪しい印を結んで重力装置を起動すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【でっぷりした猫を上空から落下させること】で攻撃する。

イラスト:華月拓

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠グァンデ・アォです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宮落・ライア
ふぅ…戦うのもいいしやってる事がやってる事だから切り捨てたいけど探索に骨が折れるな。
探すのは専門外だからさー。
と言うわけで頑張ってくれ妖精さんロボ。
いやー便利便利。

で、マタタビぶつけんぞこら。
可愛い子猫が召喚されたら問答無用で薙ぎ払う。
それが可愛いかどうかとかで、お前への殺意が緩む訳も二の足を踏むわけも無いじゃん。
躊躇して刃を鈍らすとかヒーローじゃないじゃん?
死ねよ化け猫。


落浜・語
本当、悪趣味でヤだな。
阿瀬川さんに良い報告するためにも、頑張りますかね。

予め地元の人なんかに聞き込みできるなら話を聞いて【情報収集】
【存在感】を消しつつ【第六感】も便りに場所を探す。同時にカラスにも探してもらおう。俺よりも小回り効くし、居ても不審に思われないだろうからな。

場所を見つけたなら『怪談語り』使用の上で、物陰から【フェイント】いれつつ宿す死神の呪詛【属性攻撃】を奏剣にのせて【捨て身の一撃】で奇襲を。
相手の誘惑なんかは、最悪カラスにどついてもらって耐える。
状況次第で子竜の安全確保を最優先に動く。

アドリブ、連携歓迎


上野・イオナ
仔竜に会えるのかぁ。ちょっと楽しみかも。とりあえずコルテスに捕まってる(?)親も心配してるはずだしすぐに助けないとね!
【バトルキャラクターズ】使用!猫には犬を!(僕の手ネコだけど)19体の猟犬のキャラを召喚。竜なんて元々この樹海には居ないはずだからその変わった匂いを探してもらう!戦闘に入ったら猟犬達には【きゃっ遁・猫津波の術】の相手をしてもらおうか、数が足りるかは分からないけど戦闘能力の差で埋めよう。僕は仔竜の救出を確認してから、いつも通り彩虹の剣で戦闘かな。


ヴィゼア・パズル
【wiz】使用
絡みアドリブ歓迎
「さて…樹海探索は骨が折れそうですね。」
樹々を駆ける鼠やリス、野良猫など樹海に生息する動物達へ【動物会話】で六角形に生えた樹の場所を尋ねましょう。案内のお礼はジャーキーです
仲間と協力し情報を共有
【追跡・聞き耳】技能を使い痕跡を探して進みます

仲間の攻撃直後死角から狙い【空中戦】使用、低空飛行接近して、戦闘開始と同時に【先制攻撃】
「させませんよ。…猫同士、仲良くしておいて下さい?」
足元へ潜り込む事で【敵を盾にする・カウンター】を狙い
突き上げる様に【マヒ攻撃・鎧砕き・範囲攻撃・二回攻撃】を狙う
即座に離脱し距離を取りましょう
「あぁ、久しく楽しい… 噴火など、させませんよ」


烏丸・都留
アドリブ共闘可

「広範囲の捜査は数よね……」

UC:アイテールの威武氣で、対象位置と状況を確認。六角形配置の木を対象に誘導弾をアイテールのサークレットの能力で打ち込む。その誘導弾の軌跡を仲間や自身のアイテムの索敵能力で追尾し位置把握。
最悪の場合、UCの効果で、聖杯に仔竜の血を注がれようとする時を狙って聖杯の位置をUCでずらし、血を注がせない様にする。

なお上記以外にも並行して、自身の装備である、クラスタード・デコイとリレイ(各64000機)を使い、周辺から渦を巻く様に範囲を絞り込みながら捜査及び迎撃、それらの情報を後方で隠蔽状態のCICユニット内で状況を管理し、仲間との共闘連携又は全装備での殲滅。



●兵は集う
「本当、悪趣味でヤだな」
 樹海の入り口に立って、開口一番そう零した落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)に、異を唱える者は一人もいなかった。
 仔竜の命を消費して行われる血生臭い儀式、それによって齎される富士山噴火という大災害。悪趣味にも程がある。
「確かに、猫面を付けた女がここから樹海の中に入っていったんだよね?」
「ああ、そうだ。地元の人が姿を見ている。華美な着物を着ていたし、尻尾も生えていたから、よく覚えていたそうだ」
 上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)が確認の問いをかけると、こくりと頷く語。予め周辺の村々に赴いては、最近樹海近傍に行った人がいないかを探して、この情報に行き当たったのだ。
 二人の足元で、ヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)が小さくため息を漏らす。
「さて……樹海探索は骨が折れそうですね」
「全くだ。戦うのもいいし、やってる事がやってる事だから切り捨てたいけど、探索に骨が折れるな」
 ヴィゼアの傍にしゃがみ込んだ宮落・ライア(ノゾム者・f05053)も、げっそりした表情で同意している。
 森の中は昼でもなお薄暗い。さらに風景が変わり映えしないゆえになかなか目印を見つけにくい。ヴィゼアとライアの二人がこれから行われる探索に、沈鬱な気持ちになるのも無理は無いだろう。
 と、そこで。今の今までずっと沈黙を保っていた烏丸・都留(ヤドリガミの傭兵メディック・f12904)が、静かに口を開いた。
「……見つけた」
「えっ?」
 キョトンとした様子で声を漏らしたのは語だ。知り合いの唐突な発言に首を傾げていると、都留はゆっくりと前方、からやや右に逸れたところに指をまっすぐと向ける。
「アイテールの威武氣で対象の現在位置と、六角形配置の木の位置を調査したわ。
 木の位置はここからこの方角におよそ五キロメートル、対象はそこから南に三百メートル離れた位置。まっすぐに木の方に向かって歩いているわ」
「まずいですね……もうすぐ到着されてしまう、急がないと」
 都留の報告に焦りの色を見せたのはヴィゼアだ。他の三名もこくりと頷く。
 そして、五名の猟兵は一斉に樹海の中へと飛びこんでいった。

●獣は駆ける
 樹海の中に踏み入って、まず最初に行動を起こしたのは都留だ。
「誘導弾を発射します」
 そう告げるや、サークレットの額に嵌められた宝石から、光弾がいくつも発射された。
 光の軌跡を描きながら、弾は次々に五キロメートル先の六角形の木があるところへ、猫忍者のいるところへ飛んでいく。
 こうして描かれた軌跡を、五人が五人ともしっかり見ていた。
「いやー便利便利。それじゃこっちも、妖精さんロボの出動といこう。頑張ってくれ」
「僕もいくよ!猫には犬を!」
 道筋が明らかならばまだ動きやすい、とにっこり笑って、ライアとイオナがそれぞれに妖精さんロボと猟犬のバトルキャラクターを呼び出した。手数を増やし、徹底的に追い込んでいく作戦だ。
 さらに樹海のこの近辺一帯を取り囲むように、都留のクラスタード・デコイとクラスタード・リレイが展開して索敵に当たっている。親機と子機を合わせて、それぞれ64,000機。桁違いである。
「広範囲の捜査は数よね……」
「そこには同意しますけど烏丸さん、運用数がもの凄いですよ。烏丸さん一人で担えるんじゃないですか」
「同感です……さて」
 語とヴィゼアが走りながら視線を巡らせると、いた。正面方向から飛んでくる一羽のカラス。
 カラスはくるくると語の頭上で回ると、カァカァと鳴き始める。一頻り鳴き終わったのを聞いて、語の視線がヴィゼアに向いた。
「パズルさん、今のカラスの言ったこと、分かりました?」
「『六角形の木は、ここから左、右、右、左、左。猫は木のある場所で巻物を呼んでいる』……だそうです。よく頑張りましたね、お礼のジャーキーです」
「ワンッ!」
「猟犬も仔竜の匂いを嗅ぎつけたって!あと、えーと、ヴィゼア君そのジャーキー、後でちょっと貰えるかな?」
 懐から取り出した細く切ったビーフジャーキーをカラスに与えて、ヴィゼアはほくそ笑んだ。隣でイオナも笑いながら猟犬の報告を受けている。
 都留の誘導弾と、語のカラスが齎した情報。だいぶ位置は絞れた。
 描かれた軌跡を追って、曲がって曲がって走り抜けて。最後の左に曲がる角を曲がり、くねくねと蛇行する森の中の道を進んでいくと、急に不自然に道が整えられてまっすぐに伸び始めた。
「これは……?」
「おい、あそこだ!」
 途端にまっすぐになった道を訝しんでいると、語が声を上げた。
 視界の先、森を覆う木々の葉が茂る中で間隔を開けて六本の木が生えるその中で。
 おどろおどろしい見た目をした真鍮製の杯の上で、仔竜の首をわしづかみにする和服姿の尻尾を生やした女が、手に刃物を握っている。
 その手の中でぐったりと動かない、白い鱗を持った仔竜。
 女の手が握った刃物が、仔竜の首に当てられた瞬間。
「させません!」
 都留がばっと、前方に手を翳す。真鍮製の大きな聖杯が、女の下からしゅっと奥の方へ移動した。

●竜は眠る
「にゃっ!?突然何が起こったにゃ!?」
 突然に前触れもなく勝手に聖杯が移動したことに、困惑する戸沢・三毛猫斎。
 そこに。
「お前がコルテスの配下か」
 語が昏い空気を全身に纏いながら、剣を構えて突貫した。その速度は明らかに、人間が出せる限界を超えている。足からはぱたぱたと血が垂れていた。
 その猛然と突っ込んでくる語の姿を三毛猫斎が見る頃には、語の奏剣が三毛猫斎の身体に傷をつけており。
 美麗な着物に一閃、切り傷が走る。
「ぎゃっ!?」
 走る痛みに思わず、手に持った仔竜を取り落とす三毛猫斎。語の手がそれを拾い上げるや、すぐさまにその場から離脱して去っていく。
 そうして安全な場所に退避して、怪談語りを解除してから、語は自分の手で救い出した仔竜を心配そうに見遣った。
「……」
「よし、息はあるな。薬で眠らされたか、何かしたんだろう」
「こんなかわいい子を薬で眠らせて殺そうだなんて……あくどいね!」
 猟犬たちを使役しながらイオナも憤慨した。彼の隣ではライアも冷たい視線を三毛猫斎に投げている。
「ふざけんな化け猫、マタタビぶつけんぞこら」
「にゃー!?猟兵、どうやってここを見つけたにゃ!邪魔するんじゃないにゃー!!
 きゃっ遁・猫津波の術!!」
 作戦を邪魔されたことに、三毛猫斎は憤慨した。怒りのままに猟兵たちに向かって指を突き出すと、虚空からわらわらと、わらわらと大量の子猫が出現する。
 それは本当に津波のように大量に、である。
 にゃーにゃー鳴きながら押し寄せてくる猫を。
 ライアは。
「問答無用」
 一刀の下に薙ぎ払った。
 にゃー、と断末魔を発しながら、子猫の何割かがまた虚空へと消え去っていく。
 残りの子猫に猟犬をけしかけて退治させるイオナが、凄いものを見るかのようにライアを見ている。自身も猫であるヴィゼアも、微妙に複雑そうな表情をしていた。
「な、なっ……」
 そして三毛猫斎は、心底から信じられないという表情でライアを見ていた。ぷるぷると身体が震えている。無理もないところではあるが。
 刀を片手に握りながら一歩を踏み出したライアが、冷たい視線で三毛猫債を射抜いた。
「それが可愛いかどうとかで、お前への殺意が緩む訳も二の足を踏むわけも無いじゃん。躊躇して刃を鈍らすとかヒーローじゃないじゃん?」
「ぐっ……鬼!悪魔!猟兵!」
「まぁ確かに猟兵ですけれどね……させませんよ?」
 苦笑しながら宙を跳んだヴィゼアが子猫の群れを飛び越えて三毛猫斎の足元へと飛び込んだ。
 自身の懐まで潜り込まれた三毛猫斎が後退するより早く。
 ヴィゼアの手から突き上げるように、氷の竜巻が巻き起こった。それが、一発のみならず二発。
 氷塊に身体を打たれ、浴衣を破られながら苦悶の声を漏らす三毛猫斎。
「ぐっ……!おのれ……!!」
 眼下のヴィゼアを睨みつけると、手元を素早く動かした。謎の印を結ぶや否や、ヴィゼアの頭上に影が落ちる。はっと上を見上げると、降ってくるのは巨大な毛玉。
 急いで地を蹴って飛び退いた次の瞬間に、ずずーんと地響きを立てて巨大なデブ猫が降って来た。ヴィゼアの体格では、この猫に潰されたらひとたまりもなかったであろう。
「あぁ、久しく楽しい……噴火など、させませんよ」
「そう、あなたはここで終わりです」
 そんな声がしたのはどこからだったか。姿の見えない声の主に、三毛猫斎が慌てて辺りを見回す。
 声の主である都留は、隠蔽状態にしたCICユニットの中にいた。味方の後方で自身の存在を隠匿しながら、樹海周辺に放っていたデコイとリレイを次々にこの戦場に呼び寄せては攻撃させている。
 そして気付けば、三毛猫斎は無数のデコイに取り囲まれており。
「あ……にゃ、にゃ……」
「これで仕舞いだ……死ねよ化け猫」
 最後に声を発したのは徹頭徹尾冷たい声色だったライアで。
 次の瞬間に都留の有するありとあらゆる武装が、三毛猫斎にビームを放った。
 三毛猫斎の断末魔も砲撃音にかき消され、塵の一片も残らないほどに消え去ったその身体。
 後に残されたのは大きくえぐれた地面と、役目を果たせずに地面に転がった聖杯、そして救い出された仔竜のみである。
「コルテスに捕まってる親も心配してるはず……だよね?」
「かもしれないね……親が、居るかどうかも分からないけれど。ともかくこれで、阿瀬川さんに良い報告ができそうだ」
 戦闘を終えてもなお、仔竜とその母親を心配するイオナの腕の中で。
 語がうっすらと目を細めて見つめる中で。
 仔竜が一声、小さく「きゅう~……」と鳴き声を漏らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月08日
宿敵 『戸沢・三毛猫斎』 を撃破!


挿絵イラスト