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闇境の水面

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 仄かな月明かりだけが屈折して揺らぐ、遥かな湖底。
 水中を回遊する魔獣の影が落ちるそこに、城は在った。
 いつから存在したとも知れない建造物。苔生しながら、さりとて朽ちた様子もなく佇む巨大な影。
 ただの水底に沈んだ廃墟であるはずだと、噂に聞くものは言う。ずっと以前、自分達が知らぬ時代のものであるのだろうと。
 けれど今この時、その城に蠢くものが居る。
 いつから棲みついたとも知れぬ影がひとつ、ふたつ、無数。
 何かを待ちわびるように。
 何かを目論むように。

「ダークセイヴァーの世界において、調査に赴いて頂きたく思います」
 グリモアベース。
 千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は猟兵達に話を始めていた。
 それはとある湖の話。
「人の住む領地ともさほど離れていないという湖ですが──そこに異変が察知されたのです」
 その湖の底には、かなりの大きさを持つ城があるという。
 廃墟のようなものだとも考えられていたようだが、そこに何かが潜んでいるらしきことが判ったのだ。
 おそらくはオブリビオン。
 最近になって湖の水面の高さが変化したという情報もあり、中に潜むその存在が湖全体に異変を齎そうとしている可能性もある。
「水中には魔獣もいて、元より一般の人々では対処もできないでしょう」
 何よりオブリビオンが潜む可能性があるならば猟兵の出番だろう。
「皆様にはこの湖へ赴いて頂き……異変の正体を確かめて頂きたいのです」

「まず皆様には、城の内部に侵入して頂きます」
 城は水底に建っている。水深も深いため、それなりに長い距離と高度を潜る必要があるでしょうと言った。
 城に辿り着くまでにも、水中には大小の魔獣が泳いでいる環境だ。
「皆様にとっては強敵とは言えぬ敵でしょう。或いは、余分な体力を消費することを避けて逃げることに集中してもいいかも知れません」
 城は古めかしいことを除き、おおよそ見た目に突飛な部分はない。
「正面の門や、窓……入れそうな入口を探しつつ潜入を試みて下さい」
 潜入した後は安全な場所の確保なども必要になるだろう。
「城に何が潜んでいるか調べつつ、安全に留意して行動してください」
 おそらく内部にはオブリビオンが潜んでいる。一度潜入したらいつでも戦闘できる心構えをしておくといいでしょうと言った。
 空気のある空間もあるだろうが、水に満たされた環境で戦う可能性もある。特異な環境となる分、警戒をお願いいたしますとレオンは言った。
「では──人々の、或いは世界の危機を防ぐため」
 湖へ参りましょう、と。
 レオンはグリモアを輝かせ、その世界へと移動し始めた。


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 ダークセイヴァーの世界での調査、戦闘シナリオとなります。

●現場状況
 湖の底に建つ城。
 湖自体広く、深さもそれなりにあります。月明かりは差していますが、底の方は暗い状態となります。

●リプレイ
 一章は冒険で、城への侵入がメインです。
 内部に入り、敵を見つけることができれば成功となります。

 二章は集団戦、敵は『暴食飛蝗の群れ』です。
 三章はボス戦、敵は『蒼竜の異端神ウォルエリス』です。戦闘状況の詳細などは不明です。
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第1章 冒険 『湖底城』

POW   :    気合と体力勝負で泳ぎつき、城への出入り口を探す

SPD   :    水棲の魔獣から逃げ切りながら、周辺を調査をする

WIZ   :    状況を分析し、城に何が住んでいるかの推測を行う

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セツナ・クラルス
敵との戦いよりも空気の確保が問題かもしれないね

水中内にも酸素を持ち込めるように
風と水の属性を組み合わせ
簡易的な酸素ボンベを作成
とはいえ長時間はもたないだろうし
速やかに任務を果たさねばならないね

魚型の観測者を呼び出す
水中内では必ず観測者に先行させ
安全確保&最短ルートを常に模索

基本的には目立たぬように行動し
探索中の戦闘は最低限
私一人で倒せそうなら、
交戦中も観測者は周囲の探索を継続

侵入経路が見当たらない&空気の残量が残り僅かの場合
手頃な敵に仕留めない程度に加減した一撃を死角から浴びせる
敵を怯ませたら、隙を作り逃亡させ後を追う
このまま、彼らの安全地帯である城内へと案内してくれればありがたいのだがね



 水面が鏡のように月光を反射して、淡く光っている。
 ゆったりと波立つ湖は、美しくもどこか不思議な印象を与えていた。風のせいではなく、独りでに揺らめいているようにも見えるからだろうか。
「確かに何か、普通とは違う印象を覚えるね」
 セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)はそっと水辺にしゃがみながら、その湖を見据えている。
 深い夜では湖の全体を見通すことは出来ない。とはいえ水は澄んでいて、こうして見るだけでもかなりの深さがあることは推測できた。
「これは敵との戦いよりも空気の確保が問題かもしれないね」
 ふむ、と。
 指を軽く顎先に触れさせると──セツナは思い至って手を水に少しだけ沈めた。
 そこへ魔力を注ぎ、薄い光を明滅させる。
 すると手元と周辺だけが泡立ち始め、水が排除されるように空気の塊が出来上がった。風と水の属性を組み合わせた、言わば簡易の酸素ボンベだ。
 水中における命の供給源。
「これで呼吸はどうにかなりそうかな」
 後は、この目で見て判断するしかない。音を立てぬように水中に入ったセツナは、そのまま下方に向けて泳ぎ始めた。
 季節は暖かな時分。けれど水の中はひんやりとした温度を肌に伝えてくる。
 こぽ、と水面が軽く波打つ音がくぐもって聞こえる。
 柔い水の流れが体の動きに抵抗を加える。
 雄大で昏き世界。地上とは全く違った感触の中を、セツナは進んだ。
 今の所、魔法のおかげで呼吸に問題はない。
(とはいえ長時間はもたないだろうし、速やかに任務を果たさねばならないね)
 泳ぎながら、セツナは並走する観測者(ウノメタカノメ)──魚型の使い魔を召喚し先行させる。
 そうして安全と判ったルートを最短で辿るように探索を進めた。
 すると道中、観測者が大きく迂回する場所がある。仄かな月明かりで、セツナにもそこに何が居るかは見えた。
 魔獣だ。
(水生生物……ただし、人を容易に取って喰らえるもの、か)
 見えたのはイルカにも似た生物。
 だが鋭い光を湛えた牙には、魔力にも似た力が宿っている。普通の人間なら当然のこと、猟兵でも油断すれば傷を負わされるだろう。
 セツナは使い魔に従って接触を回避し、ひとまずは余分な戦闘を避ける方針でいく。
 すると程なく眼下に巨大な影が広がった。
(中々の規模のようだね)
 見下ろす視界にあるのは、湖底城。
 石造りの巨大な城壁に、門。
 高い尖塔に、物見台。
 外から見ると違和感は無いようだが、確かに何らかの気配が潜んでいる感覚はあった。
(ゆっくり調査、と行きたいところだけれど)
 魔力による空気の残量も減ってきている。
 一見して開放されているような侵入口もないが故に──セツナは少々考えて、敵に案内して貰うのもいいだろうと決めた。
 魔獣にとって城が隠れ家や安全地帯の役割を果たしているのなら、自分よりも内部には詳しいだろうから。
 セツナは先の一体の魔獣に軽くナイフで攻撃。仕留めない程度に死角から斬撃を浴びせ──隙を作って敢えて逃亡させる。
 そのまま魔獣が城の方へ泳ぐのを確認するとそれを追って泳いだ。
(地下、か)
 それは城の堀の一端に当たる部分。見えにくいその位置から内部へ入る通路があったのだ。
 セツナは素早く侵入し、折れ曲がった路を進行。幾つかの分かれ道から、空気のある空間を見つけてそこに登った。
 ぷは、と息をしつつゆっくり立ち上がる。
「ここは──回廊の一角かな」
 天井の高い、長い通路がのびている場所だった。
 位置関係で言えば、城の正面から入った場所に隣接した、側面にある通路といったところか。
「このあたりは空気に満ちているんだね」
 中に潜む敵が水を好むなら、全てが水に満たされていてもおかしくはない。だがこの様子では、城内には空気のある場所が点在していそうだ。
「つまりは、そうじゃない敵もいるということかな」
 セツナは警戒しつつ、それでも通路に沿って前進することにした。
「ま、戻るわけにも行かないしね」
 すると巨大な広間に出たところで、急に気配が濃くなるのを感じる。
 或いは侵入者を拒む尖兵か。間違いなく大群と言える敵が近くにいるのが判った。
「この先を越えないと、奥には進めない、といったところかな」
 周囲を見回す。
 広間は幾つかの入口や通路から繋がっているようだ。
 或いは、ここに合流してくる仲間もいるかも知れない。セツナは一端態勢を整え──それから前進することにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ボアネル・ゼブダイ
湖内の城とはな…
遠目からならば幻想的に見えるが
居住者がオブリビオンであれば我々の出番だろう

UCを発動
水中で風属性の薔薇を爆破させ、爆風で推進力を得て一気に城内へと接近する

吸血鬼共のように水が苦手と言うわけではないが…
かなりの深さがある湖だからな
悠長に泳ぐよりはこちらの方が良いだろう

道中で絡んでくる魔獣がいたならば殺気を飛ばして牽制するか
風属性の薔薇を辺りに浮かせ、機雷のように爆破
衝撃波で気絶させて対処し
脅威になりそうな場合は武器での攻撃も行う

無用な殺生は好まんが
邪魔立てするならば容赦はせんぞ

暗視で湖底を見まわし城内が近くにあれば
普通に泳ぎ、敵に接近を悟られぬように静かに潜入する

アドリブ連携OK


駆爛・由貴
うへー…敵さんの居場所は湖の中かよ
そのまま溺れててくれりゃー楽なんだけどなー
そう上手くはいかねーか

UCを発動
いくつかの自律ポッド達を水中スクーターのように動かせて
そいつに掴まって水中を進むぜ
残った自律ポッド達には治療用の酸素ボンベを持たせて
水中での行動に支障が出ないように常に酸素を補給するぜ

ほー、湖の底は結構おもしれーな
地上では見た事ねー奴らがそこかしこにいやがる

暗視で湖底を入念に探査するけど
魔獣がこっちにちょっかいかけてきたら自律ポッドで追っ払うか
場合によっちゃ俺のローゼン・ディセクトで三枚おろしだな
まぁ食えねー魚を捌く趣味はねーからな
襲ってこなけりゃこっちから手は出さねーよ

アドリブ連携歓迎



 月明かりが解けて無限の光に割れる。
 水面に映る外光は何処か宝石のようで、無数のガラス玉を転がしたような美しさがある。それが通りがかっただけの景色であれば、風流さすら感じたかも知れない。
 だがこの湖が美しいだけの場で無いことを、猟兵は知っている。
 降り立ったボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)は静かにその湖面を見下ろしていた。
 全容は窺えないが、水中に何か巨大なシルエットが有るのだけはここからでも判る。
「湖内の城、とはな……」
「うへー、……敵さんの居場所はこの中かよ」
 少々胡乱な声音を零すのは駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)。可憐な相貌に眉根を寄せさせて、面倒そうな色を隠さない。
「そのまま溺れててくれりゃー楽なんだけどなー」
「おそらくは水の中を得意とするか、そうでなくとも苦労はしない類の敵なのだろう。故にこそ、あのような場所に居るはずだからな」
「まーそうだな。そう上手くはいかねーか」
 ボアネルの向ける瞳にため息を零しつつ、由貴はそれでも水に半身を浸した。
「じゃ、行くか」
「ああ。急ぐとしよう」
 ボアネルも頷き水中へ。
 如何なものが潜んでいるかそれは未だ不明だ。しかし居住者がオブリビオンであるというのなら、自分達の出番なのだから。
 二人は躊躇わず月明かりの差す湖へと泳ぎ入る。
 冷たさと体を纏う水圧。特有の感覚を肌に感じながら、高度を下げていった。
 進み始めて判ったことは、見た目以上に湖の中は広大だということだ。水底までの距離も容易に推定できぬほどで、漫然としていれば時間ばかりが過ぎるだろう。
 無論、二人は悠長にするつもりはない。
 艶のある紅と、明朗なオレンジ。互いの瞳を見合って視線を躱すと──早速行動に移った。
 まずボアネルは、水中に魔力を揺蕩わせ、自身の後方へと収束する。瞬間、それを風属性の薔薇へと開花させて巨大な爆風を生み出した。
 憎悪する薔薇(スピット・ローズ)。
 震動にも似た低音と、泡が暴れる細かな破砕音。強力な慣性と水流で推進力を得るように、ボアネルは高速で降下し始めていた。
 一瞬で遠方に消え去るボアネルを見ながら、由貴が用意したのは自立ポッド。複数を合わせることで水中スクーターにも似た動力を生み、そこへ掴まる形を取る。
 残るポッドは酸素ボンベを持たせてあり、水中での行動に憂いがないよう備えてある。
 そのまま由貴は真っ直ぐに加速。ボアネルの後を追うように進行し始めた。
 速度が出れば、湖底まで時間はかからない。程なくして平坦な闇のような水中の果てが見つかり──そこに鎮座する巨城の姿も見えてくる。
 水中を突き進む余波に誘われるように、そこには魔獣も寄ってきていた。
 まるで翼のようなひれを持つジュゴン、触手から淡い魔力を零している巨大な海月。中には此方を取って喰おうとする個体もいたが──。
(大人しくしていてもらうとしよう)
 ボアネルはそこへ風の薔薇を浮かせ、爆破。機雷のように大輪を咲かせ、衝撃波を伝搬させてその個体を気絶させていた。
 やるじゃねーか、という視線を由貴が向けると、ボアネルは特段大きな反応を示すというわけでもなく。さあ行くぞといように視線を先へ向けて探索を始める。
 由貴もそれについて水底沿いに周囲を観察し始めた。
(ほー、湖の底は結構おもしれーな)
 先の魔獣の他にも、そこには地上では見られないものがそこかしこにいる。
 光から姿を隠すよう、光度によって体を透明化する甲殻類。魔力を含んだ唄声を響かせながら周囲の生き物を統制する大型魚──挙げれば枚挙に暇がない。
 尤も、そのうちの幾らかは野生らしい乱暴な敵意をこちらに向けてくる、が。
(ちょっかいかけてくるなら、やり返させてもらうぜ)
 由貴はポッドの一つを虹色の軌跡を描く鯰にむけて射出。威嚇射撃を敢行させて水流に衝撃を交え追い払ってみせた。
(あとは──まあ放っておくか。食えねー魚を捌く趣味はねーからな)
 襲ってこなければ、それは無害と同じだ。数多くの魔獣を道中で見かけたが、その大半をすり抜けていくように由貴は進んでいく。
 程なく湖底城の正面方向に入った。地上に建つ城と形は変わらぬようで、壁に囲われた通路から大きな城門を仰ぐ形だ。
 先行していたボアネルと由貴は今一度見合い、頷く。
 ここからは大きな音や衝撃を立てるのを避け、調査に集中することにした。何処から敵が出てくることも判らぬ状況だ。侵入口だけを集中して探っていく。
 一見して判りやすい出入り口はなかったが──円柱形の高い壁が立ち並ぶ中の、一箇所。その中の窓の一つが開いていた。
 そっと近寄ってみると、奥まで水が通っているようだ。二人は注意深く潜航し、城の高所とも言えるそこから入り込むことにする。
 すると、暫し真っ直ぐの水路が続いた後で空気のある空間に出た。
「よ、っと」
 由貴は素早くその床に上がり、ポッドを回収する。
 続いてボアネルも水中から出て小さく息をついた。
「水が侵入していないということは、おおよそ上方向には密閉されているのだろうな」
 水気を軽く払いながら、周囲を見渡す。
 装飾品は少ないが、広く雄大な造りをした城であった。
 通路は広く天井は高い。彫刻のような溝や流線が美しく、過剰な装飾が無くとも無機的ではなかった。
 由貴はポッドの雫を拭き取りつつ奥を見つめる。
「ひとまず、進むしかなさそうか」
「ああ。ここは高所だから、ある程度下っていく必要もあるかも知れない」
 こつりとボアネルは歩み出す。
 位置としては尖塔の内部。敵が奥部に潜んでいると仮定するなら、一度下方のもっと広い場所に出たほうが良さそうだと判断した。
 仮に城の正門やその近辺から侵入した仲間がいたとすれば、その面々との合流も必要だろう。
「でも、静かだな」
「この辺りは元より敵の少ない場所だったのかも知れないな」
 階段を見つけて降りながら、由貴の言葉にボアネルは頷く。
 城に入って即座に奇襲されるということもなく、今のところは静かに歩んでいる。見つかりにくい侵入口でもあったため、見張りの配置もされていなかったのかも知れなかった。
「或いは、裏口のようなものだったのだろう」
 呟きつつも用心を欠かさず城の内部を降りていく。
 果たしてその考えは的を得ていた。時折水中の通路を経ながら城内を降りていくと、そのうちに巨大な広間に出たが──。
「お? ずいぶん高いところに出たなー」
 由貴は首を伸ばして眺める。
 そこは広間自体の正面の入口ではなく、高い位置にあるバルコニーと壁沿いの通路に繋がるものだった。かなりの高さと広さを持つ広間全体を、見下ろすような場所だ。
 そこから降りても良かったが──ふと、そこに迫る敵の気配もあった。
「なんか来るぞ」
「水中ではないから魚類ではない、のだろうな」
 何であれ、敵ならば対処するだけ。二人は戦闘態勢を取り、開戦の瞬間を待つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チガヤ・シフレット
【狼の巣】で参加
リィは楽しい妹分で可愛がり

湖の底の城だぁ?
沈んだのか何なのか、間抜けが建てたりしたのか?
仕方ない、潜っていくか
敵襲にも対処できるようボディスーツ系の水着で万全だ!

「っくっく。避暑もできるし美女の水着も見れるんだ、嬉しいだろう?」

【SPD】
水中用の手脚を用意してすいすいっと
ライトも準備して、サイバーアイも暗さに対応調整しておく
仲間と離れすぎないようにし手分けして入れる場所を探そう
リィが危ない目に合わない様にだけ注意だな
ザザは……まぁ、ほっておいてもいけるだろ?

壁とか爆破していいなら手っ取り早いが……流石にダメだよな?

魔獣やらに襲われたらさっさと逃げるか、威嚇で追い払うぞ


ザザ・クライスト
【狼の巣】

「任務だ」

煙草に火を点けると煙を吸って【ドーピング】
【破魔】の力を纏いながら切り出す
水中戦が想定される、気を引き締めろよ

オレは鍛えられた水着姿
装備類は完全防水のバックパックに詰める
黒剣は腰に差す

「夏で良かったぜ。避暑には最高だなァ」

二人の装いに、

「似合ってるぜ。ここがビーチなら注目を集めそうだ」

褒めるのは忘れない
煙草を仕舞うと猟犬レオンと共に水中へ

偵察にドローンを先行させて【情報収集】

「爆破して問題が生じたらどうする?」

スパコーンと曹長とリィの頭を叩く
レオンは【野生の勘】で周囲警戒
入口を発見したら内部へ
開かないなら爆破してもイイ

「嬉しそォだなァ、オイ……」

手早く行くぜ
これからが本番だ


リィリィット・エニウェア
【狼の巣】で参加
チガヤ・シフレット(f04538)のことはチガねーさんと呼びます
他は姓+さん、もしくは役職
【SPDで判定】

「そ、そんな何でもかんでも爆破しないし!」「……今は」
服装は水着でGO!気に入ってるんだよ
チガねーさんには見せたけどリーダー(ザザさん)はどー?
「ぶなーん」「ソツがナイかんじ!」
ちゃ、ちゃんと灯りとかも準備してるからねっ

水中ならアレができるかなーって期待してわくわくしてる
アレってなにかって?爆縮☆
ま、使い道があったらね

魔獣からは逃げる方針なんだね、じゃあ威嚇用の爆弾を用意しとくね!
え、集まって来るかもって?
まあ、知性が低そうなら大丈夫かな



 夜の世界は昏くて灯りがよく目立つ。
 故に月明かりですら、仰げば眩しい中で──そこに橙に灯る小さな火が一つ。
 湖の畔に降り立ったザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)が取り出した煙草を点けて、煙を体に吸い込んでいた。
 それを体内に存分に巡らせて、破魔の力と成して己に纏わせる。
 残った煙をふっと夜空に昇らせながら、一歩水辺に歩み寄っていた。
「任務だ。水中戦が想定される、気を引き締めろよ」
「ふむ。湖の底、か。しかもそこにある城だぁ?」
 と、地に手をついて少々水中を覗き込んでいるのはチガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)だ。
 月光に揺らめく水面のずっと奥に見えるのは、不確かな影。
 細かなところまでは見えないが、確かに何者かの手によって造られた建造物だ。
「沈んだのか何なのか、間抜けが建てたりしたのか?」
「さァな。中に入りゃ、判るかも知んねーぜ」
 ザザも軽く視線を落として湖内を見やる。
 尤も、ここから判るのは侵入がおそらく容易くないということくらい。
 チガヤはうーむと腕を組んでいた。
「あの大きさの建物の入口を探すのは面倒そうだな。壁とか爆破していいなら手っ取り早いが……流石にダメだよな?」
「当たり前だろ。爆破して問題が生じたらどうする?」
 スパコーンと頭をはたきつつ、ザザは隣にも目をやった。
「つーわけだから気ィつけろよ?」
「だ、大丈夫だよ! そ、そんな何でもかんでも爆破しないし!」
 今は、と小さく付け加えつつ、指をつんつんさせるのはリィリィット・エニウェア(迷宮は爆発だ・f13106)。
 それより! と、ザザとチガヤに視線を巡らせてはきはきした声を聞かせる。
「さっそく準備しようよー! 水着、用意してきたんでしょ?」
「あァ、泳ぐことになるだろうしな」
 言ってザザは上着を脱いでいた。
 現れたのは鍛えられ引き締まった肉体を包む、水着姿である。上着を含め、装備類は完全防水のバックパックに詰める形で携行。黒剣は腰に差す形で装備した。
 二人も無論、水中行動に備えてきている。
 羽織っていた服を脱いだチガヤは、動きを阻害しないようボディスーツ型の水着。水の抵抗も抑えたように艷やかなデザインと言えた。
 リィリィットもじゃーん! と上着を取り払う。丈の短い動きやすいタイプで、可憐な装いだ。
「気に入ってるんだよ! これ、チガねーさんには見せたけどリーダーは初めてだよね! どー?」
「あァ。似合ってるぜ。ここがビーチなら注目を集めそうだ」
 勿論ザザは褒めるのも忘れずに、さらりと言ってみせる。
 ただリィリィットはそんなザザを少々見つめていた。
「ぶなーん」
「……」
「なんだろー。ソツがナイかんじ!」
「っくっく。言われているぞ、ザザ。まあ、何にせよ」
 と、チガヤは肢体を伸ばし暖かな夜風を浴びる。
「避暑もできるし美女の水着も見れるんだ、嬉しいだろう?」
「ま、確かに──避暑には最高だなァ、夏で良かったぜ」
 ザザも頷く。
 これから赴くのは死地に違いない。だが、それは全ての戦いがそうである。ならば寒中水泳よりも、少しでもバカンスに近いほうがいいに決まっている。
 そういう意味では、悪くない戦場だ。
 ザザは煙草を仕舞うと、狩猟犬のレオンハルトを連れて水中に入った。
「さ、行くぜ」
「よし、では水中探索といこう」
「GOGO!」
 三者三様、それでも離れずちゃぷりと潜り──月に彩られた水の世界へ。

 湖中に入ると月明かりが複雑に屈折し、遠くの闇を淡く照らしているのが見える。
 それでも光は減衰して底までもを照らしはしないが──。
(ちゃんと灯りとかも準備してるからねっ)
 リィリィットはこぽ、こぽ、と潜航を続けながらゴーグルを操作。連結したガジェットによるライトが光り、湖内を明るく照らし出した。
(どー?)
 すごいでしょと言ってみせるように視線を向ける妹分に、チガヤは頷きながら頭を撫でてあげていた。
 そのチガヤも手足を水中用に換装してある。
 四肢の先は水流を感じてオートマチックに水掻きのように可変する。同時にスクリューを動かすことで推進力も生み出し、泳ぐ動作をリアルタイムに助力する形になっていた。
 それにより、すいすいと水中を進行していく。
 チガヤ自身もライトを準備、サイバーアイも暗視に耐えうる調節を施してあるため、視界に不安も無かった。
 そんな二人を見やりつつも、ザザは警戒を欠かさない。
 ドローンを自分達に先行させるように進ませて、偵察。適宜情報収集をさせていく。同時にレオンにも周囲に警戒するように言い聞かせてあった。
(ま、こんくらいやっとけば何とかなるだろ)
 事実、対策は功を奏する。
 闇の中で合図を送るドローンは、その先に敵性の存在が有ることをこちらに告げていた。
 レオンもザザに顔を向けて意思を示す。
 ザザはそんな猟犬を軽く撫でてやってから──二人と見合って、大きく曲がる進路を取ることにした。
 すれ違ったのは巨大な魚影。鯨とも鮫ともつかぬが、ヴェールのようなひれを有していてまるで水中をゆっくりと踊っているような魔獣。
 正面衝突して苦労はしないだろうが、それでもいくらかの時間は犠牲になるだろう。
(それならまァ、すり抜けてった方がいいわな)
 ザザはドローンとレオンに頼りにしつつ、その後も幾つかの魔獣を避けていった。
 ただ、数が多い場合はそうともいかない。
 徐々に城の姿が近づいてきた湖内の中腹。鰯の群れにも似た動きをする魚影の群が丁度ザザ達を囲うように回遊してきていた。 
 四方八方を囲まれれば、回避と言える状況ではない。そこで嬉しそうに──リィリィットが金属の塊を取り出していた。
 水中で爆発する爆弾。
 無論、殲滅用ではなく威嚇用。起爆して炸裂すると──水中に巨大な衝撃の波を生み出し、全体をたわませるほどの水流を発生させる。
 ザザ達をも軽く煽る程の威力は、無論魔獣には脅威以外の何物でもなく──魚影の群れは逃げ出すように道を空けていた。
 チガヤがよくやったというように合図を出すと、嬉しげに笑んでみせるリィリィット。それを横目にまたザザは降下して、湖底の牙城へ到達した。
 強大な気配を内包する石の建造物は、単純な巨大さと造形の美しさで見るものを圧倒するようだ。
 確かに内部に潜むものは、魔獣とは比べ物にならぬ怪物だろう。三人は一度見合い、手分けして入口を探すこととした。
 離れすぎない程度の距離を保ち、緩く広がる形で城の周囲を周り、潜入できそうな隙を探索していく。
 チガヤはその機動力で、まるで地上で跳躍するかのような速度で壁から壁、塔から塔へ移動していた。
 その間も、リィリィットが危ない目に遭わぬよう視線を外さない。
(ザザは……まぁ、ほっておいてもいけるだろ)
 と、伊達男の方に関してはあまり気にしていなかったけれど。
 ザザはそんなチガヤを遠目にしつつ、肩をすくめて調査を継続。そのうちに城の側面に通用口にも似たものを発見する。
(厳重なもんだな)
 けれどそこは扉らしきものが付けられており、施錠されているのか開かない。
 チガヤを呼んで、力押ししようとしてみるも、うまくは行かなかった。
 びくともせぬ扉に、チガヤは半ば呆れ気味でもあったが──そこで思いついたように口の端を持ち上げた。 
 視線の先はリィリィット。
 リィリィット自身も何かをアピールするので、ザザは何かを察して諦めたように僅かの距離をおいた。
(やったー!)
 リィリィットがわくわくするのは、また爆破ができるからに他ならない。
 扉の手前と、それに加えて扉と内部の微かの隙間に爆薬を挟むように配置。自身も少しばかり離れてから起爆した。
 深い震動と、一瞬視界を塞ぐ、舞い上がった塵。
 爆破は成功──尤も、壁の一部や内部に至るまでいくらか亀裂は奔っていたけれど。
 それでも扉が瓦解したのは確かで、三人はそこから内部へ侵入していった。

 通路は短い水路となっていて、中に入るとすぐに空気のある場所にたどり着いた。
 三人は早速水から上がり、装備を直すことにする。
 リィリィットは満面の笑みだった。
「どー? うまくいったでしょっ!」
「嬉しそォだなァ、オイ……」
 ザザは呟きつつ、内部を観察した。
「見た目に違わず、巨大な建造物のようだな」
 チガヤも腰に手を当てて見回している。
 そこは文字通りの多目的の通路らしく、城内の様々な場所に通じていることが見て取れた。
 正面方向のホールと思しき場所へ通じる路。
 塔を登る方向へとのびる階段。
 城内の奥へ通じる扉。
「便利そうな場所に出たじゃないか、ザザ?」
「どうだかなァ。ま、この先で囲まれても引き返してくることはできるか──」
 見た所、この空間に敵の気配はない。退避や態勢を立て直す場所に使うことはできるだろう。
「あたしの爆破、役に立ったでしょっ?」
「無論だ。ここまで来られたのはリィおかげだからな」
 チガヤが言うとリィリィットはえへへと胸を張る。ザザもその功労には感謝を示しつつ、さてと歩を進め出す。
「まず安全な所から見ていくかァ」
 向かったのは正面方向に通じる路。
 優美な柱の立つ回廊を進んでいくと、正門からの通路と合流するようになっているようで、幾分広大な空間に出た。
 ふむとチガヤは一回転して観察。
「敵の気配は寧ろ薄まったようだな」
「あァ。つーことは、やっぱ敵は奥に固まってる感じかね」
 その推測がおおよそ裏付けられるのは、塔を登る方向の階段を少し進んでみても敵影が発見できなかったからだ。
 元の通路から調べていないのは、奥の方向へ進む扉だけ。
 何かが有るとすればそこだろうと、三人は一度軽く見合いその扉をくぐる。
 するとその先にあったのは巨大な広間だ。
 天井は一見窺えないほど高く、左右方向にも広い。ただその広大さに反してどこか牢獄のような窮屈さを与える場所でもあった。
 こちらが通ってきた通路は、広間の側面方向に繋がる路だったようだ。奥の方向は、ザザ達から向かって右手側。そこに──。
「なにか出てきそうだよ!」
 リィリィットが反応して視線をやる。二人もすぐにそれが敵の気配と気づいた。
「ようやくお出ましかァ」
「ザザ、油断するなよ」
 誰が、と呟いてザザは目を細める。
 そこに居る敵が何か、何の目的を持っているか、今は推測することしか出来ない。だが敵が出てくるというのなら討つだけ。
 だから三人は戦いの構えを取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネフラ・ノーヴァ
アドリブ、共闘OK。

水底の廃城か、ロマン溢れる響きだが、魔獣共がいるのでは落ち着いて眺められんな。
ではクリスタライズで透明になって潜行しようか。水中ならより視認されにくいだろう。熱を探知するような敵もいないだろうし。
近くで誰か苦戦しているようなら加勢しよう。透明なら不意打ちにもなる。

廃城に着いたならまずは空気の確保だな。城内の探索はみな行うだろうから、念の為、城外に何か目につくものがないか観察してみたいところだ。



 暗夜の世界に、ふわりと降りてくる淑女が一人。
「水底の廃城か。ロマン溢れる響きだが──」
 翡翠がかった髪を風に僅かに靡かせ、すらりと伸びた脚で湖の麓へ着地する、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)。
 緩く波立つ湖面に視線を落とし、その内部を見つめる。
 夜の昏さと明滅する月の反射に遮られて、水中の全貌は知れない。それでもそこに異形の数々が回遊するのは窺えた。
 魚の形を、或いは哺乳類の形をした捕食者達。
「──こう魔獣共がいるのでは落ち着いて眺められんな」
 呟きながら、ネフラはそれでも相貌を崩さない。
 確かに魔獣は厄介ではあろう。
 見つかれば手間も体力を取られる。
 ならば、見つからなければいい話だと。
 そっと歩みながら、ネフラはその足先から体の色味を変えていっていた。
 白色のネフライトの澄んだ色彩を帯びたかと思うと、その光の屈折が無くなったかのように透明になり始めてゆく。
 それが手先、そして上半身と首にも及び──そのうちにネフラは全身を世界から隠した。
「これでも問題あるまい」
 呟くと、水面の僅かな波紋にだけその存在を見せながら……潜航を開始した。
 湖内は仄かな月の光が差す程度。その中では色の無いネフラが作る揺らめきなど、闇に隠れてほぼ完全に消えてしまう。
 そうして翼を持つイルカや、光色の磯巾着の横を悠々とすり抜け、ネフラは水の中を滑った。
 何にも遮られず、くるりと廻り、時に腕を広げて羽ばたくように。魔獣にも劣らず水の中を回遊しているかのように。
(さて──城も見えてきた)
 邪魔されずに泳ぎ進めば、湖底城にたどり着くのもすぐのこと。城門を見下ろす形で静止し、観察を始めていた。
(まずは空気の確保だな)
 じっくりと探索するにしてもある程度は態勢を整える必要がある。細腕で水を掻いて進むと、それを求めて城の周囲を巡った。
 と、そこで側面の扉が破壊されているのを見つける。他の猟兵──ザザやチガヤ、リィリィットのこじ開けた通路だ。
 ネフラは一先ずその通り道を借りて空気を確保すると、それから湖中に取って返した。
 内部の探索は行うものも多いだろうから、自分は城外をもう少し詳しく見てみようと思ったのだ。
(とはいえ、外目には普通の城だが……)
 外壁や塔に触れるようにして見ていくと、見目にはただ石造りの建造物と言って問題ないように思えた。 
 ただ、気にかかったことはある。
(……城内から水流が発生しているようだな)
 それは体に感じる水圧のようなもの。
 緩やかだが、しかし確かに城から外に向かって生まれていた。
 最近になって湖面の高さが変わった、という話を想起する。
(水面の高さが上がったということは、湖の水量が増えたということだろう)
 その原因がこの城ということだろうか。
 なるほど、とネフラは城の奥の方向を見やる。
 そんな芸当ができる存在と言えば、やはりオブリビオンしか思い浮かばないが──。
(想像していたより、超常的な怪物がいるようだな?)
 そんな敵との戦闘も、しかしまた一興。
 美しきクリスタリアンにして闘争を求む妖剣士は、それに恐怖や畏怖を覚えるよりも、早く相見えてみたいと、そんな感情を抱く。
 後は見るべき場所もないと判断すれば──内部への侵入に舵を切ることにした。
 丁度水流の発生している隙間に、人の通れそうな大きさのものを見つけて──ネフラはそこから侵入していく。
 中は細道で、大きいものから小さいものまで分かれ道も多い。
 どうやら水路は城を血管のように奔っているようだ。ネフラはそこから通れる大きさの路をたどり、空気のある通路に出た。
 場所は正面方向のホール。すぐ近くに仲間が居る気配もあったから、ネフラはその場所──広間へと向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワズラ・ウルスラグナ
空中戦ならぬ水中戦か。うむ、不得手だな。
ならば克服せねば。挑み甲斐が有ると言うものだ。

戦獄龍渾然で自己強化。
魔獣に襲われた場合は翼を用い、空中戦の要領で対処する。
最悪、周囲の水を加熱して煮殺すか水蒸気爆発でも起こす。
先々の為目立ちたくないので程々にな。

城の入り口は虱潰しで探そう。
息継ぎは獄焔で水を気化して確保。難しければ水上と往復しても良い。
先に空気が確保出来そうな場所を探すでも良いな。
場内に酸素が有れば良いのだが…。

仲間が居れば可能な限り連携しよう。
城内侵入後は安全な場所の確保と、索敵だな。
灯りと暖取りには獄焔を用いる。凍えている仲間が居れば当たると良い。
城内外を問わず、油断せずに進もう。



 闇の中に、夜よりも暗き漆黒の龍が降下する。
 風を掃いて宙から羽撃き、水辺のそばに着地する──ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)。翼の余波で大きな波が水面に立つ様を、金色の瞳で見下ろしていた。
「文字通りの湖か。この中で戦うならば空中戦ならぬ、水中戦だな」
 ちりちりと零れる獄炎が、脚先を水に浸すことで焦げ付く。
 焔の様相一つとっても地上と水中は違う。
「うむ、不得手だな」
 衒わず呟いてみせる程度には、慣れぬ戦場であることにはたがいなかった。
 ──ならばこそ、克服せねば。
 全てを戦いに通ずるとし、闘争を是とする龍には、死地こそ挑み甲斐が有る場所に違いない。
 ならば、それを経験しよう。
 そして、闊歩するように乗り越えてみせよう。
 瞬間、ワズラは滾る戦意を形にするように、全身を覆う戦獄、そしてそこから吹き上がる黒い獄炎を燃え盛らせた。
 戦獄龍渾然(ケイオス・ドランマキア)。
 猛る地獄による自己強化の業。ただ自身を強めること、それだけを準備とすると、後は躊躇わず水中へ。体を沈ませ雄大な湖へと泳ぎ入っていく。
 暗い視界を、水中でも消えぬ獄炎がゆらゆらと照らす。眼下を見ると、未だ距離はあれど早くも城の影が見えていた。
 ここから窺うだけでもかなりの大きさであることが判る。反して湖自体の地形の凹凸は少なく、障害物と言えるものは無かった。
 無論、それも魔獣がいなければの話である。
(──早々に出てきたか)
 ワズラの威容を見て、敵と感じたか。
 或いは獄炎に誘われるようにやって来たか。
 巨大なひれを刃のように尖らせた鯨型の魔獣が、底から泳ぎ上がってきていた。
 単体ならば避けて通ることも可能だったろう。だがそこに鮫型の小型の魔獣が付き従い、ワズラを囲うように位置取っていた。
(住処を脅かす生き物とでも認識されたか──)
 何にせよ、退けねば通れないことは確かだ。
 ならば、戦うのみ。ワズラは業火を揺らめかせると、翼で水を掃き加速。まるで宙を翔けるかのような速度で敵の只中へと突撃していた。
 そのまま体当たりで一体を四散させ、路を切り拓く。それでもついてくる敵がいれば──獄炎で水を加熱し、周囲を沸騰させるほどの温度に引き上げる。
 魔獣はそこでようやく、目の前の龍が勝負を挑むには無謀な相手だったと悟ったことだろう。細い鳴き声を零し逃げるように去っていった。
 ワズラとて無為に目立ちたくはないので好都合。他の魔獣が追ってこないことを確認すると、城へと降りて調査を始めることにした。
 呼吸は適宜、水を焔で気化することで補っている。短い時間であればこれでも問題はないと判断し、そのまま城の入口を調べてゆく。
(それでも場内に酸素が有れば良いのだが……)
 と、虱潰しに周りを回っていると──その一角で小さく振動する場所を見つけた。壁の一角で、その狭い四方の石だけが揺れている。
 湖内の流れとは別の水流の音も聞こえたため、そこに手を当て僅かに力を込めると──石が砕けて中に通路があるのが見えた。
 そこにも水が通っており、水圧がこちらに向かって流れてくるのが判る。
(水路、か)
 隠されていた、という程のものではないだろう。中から水が流れ出てきていたのなら、放っておけば開通していたというような強度だった。
 だとすれば、ここは元々開く予定の水路だったのだ。
 考えられるのは何者かが意図的に内部から水を流していた可能性だ。
 敵は、城の中で何かの計画を目論んでいるのだろうか。
 それでも今できることは進むこと。ここも城内に通じる路に違いないから、ワズラは警戒をしながらも侵入。幾つかの分かれ道を通って──そのうちに空気のある場所へ出た。
「どうやら酸素はあるようだな」
 体の水気が蒸発していくのを感じながら、ワズラは見回す。
 現在位置はおおよそ把握していた。正面から入っていくらか進んだ程度のところだろう。
 その証拠に、正面方向と思しき真っ直ぐの回廊にすぐに合流し──仲間の気配も感じ取る事ができた。
 同時に、奥の方向に敵の存在があることも察知できる。
「位置から考えると、おおよそ城の中心部に何かがあるというところだろうな」
 ならばこの辺りは安全地帯とも言える。まずは仲間を待ちつつ、進軍に備える。戦獄龍は未だ泰然と、戦いの時を待っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七篠・コガネ
水の中って…なんだかちょっと宇宙と似てるような気がします
足が付かない程深い水の中へ入るの初めてですよ
機体に水が入っでも大丈夫
銀河帝国テクノロジーです!…原理は知りませんけど

普段の格好で湖へ飛び込みます
コート脱いでもいいんですけど…まあ色々事情があって。
『羽型ジェット』でプラズマ発射して底を目指して進みます
ま、何もしなくても勝手に沈んでいきますでしょうね
魔獣が襲ってきたらUCで対処ですよ
砲撃は勢いで自分がどっか行っちゃいそうですからね

体の発光部分光らせて光源確保しつつ僕でも入れる入り口探します
『Heartless Left』で穴開けて潜入してみましょう
センサーの感覚研ぎ澄まして【情報収集】です!



 その世界へと移り変わると、視界に広がるのは闇色だった。
 何者も通さないような暗闇は、どこか遥かな空に似ていると思う。そして見下ろす深き湖も、また。
「水の中って……なんだかちょっと宇宙と似てるような気がします」
 七篠・コガネ(コガネムシ・f01385)は呟いて、土を踏んで微かに体勢を低めていた。
 顔に近づけた水面は月明かりが揺らぐばかりで、底は見えない。
 空気の通わない、無限の昏がり。やはり似ていると思った。
 とは言え、宇宙の帝国で生まれた戦士は、足がつかない程深い水の中へ入るのは初めてだった。機械の脚をそっと水面から沈めて、自重が軽くなるのを感じる。
 そうして半身を浸けると、始めは違和感も大きかったものの──やはり強く感じたのは無重力空間との相似だった。
「……」
 物理法則は真空と水中では全く異なる。それでも、命の息づくこの空間が宇宙を想起させるのが、どこか不思議な気分でもあった。
「では、行きましょうか」
 コガネはそのまま、水中へ侵入していく。
 機械の体は水に濡れたくらいで不調をきたすことはない。故に普段の格好のまま潜って高度を落としていった。
 放っておいても自然と沈んでいくが──それでもコガネは背中にある羽型のプラズマジェットを起動。明滅する輝きと共に強力な推進力を生み出して、更に速度を上乗せして降下していく。
 するとすぐに、その視界に湖底城が映った。
「かなり巨大な構造物のようですね」 
 一見して全貌が窺えないほどで、地上にあれば要塞、宇宙にあれば戦艦といった様相だ。
「中々大変そうですが──」
 それでもオブリビオンが潜む戦地であるなら迷う理由はない。コガネは周遊しながら侵入口を探索し始める。
 辺りを照らすための体の発光部分、そしてプラズマの煌きにも吸い寄せられてか、道中に魔獣が寄ってくる気配もあった。
 見上げると、巨大なエイにも似た個体がコガネに喰らいかかろうとしてきている。
(砲撃──は、慣性がありますからね)
 コガネは武装を吟味し──クリムゾンティプト。手先を鉤爪へ変形させて攻撃し、エイの一端を鋭く切り裂いて撃退してみせた。
 鋭利な攻撃力に、魔獣程度では太刀打ちできない。エイは即座に方向を反転させるように退避していった。
「これで集中できそうですね」
 とはいえ、単純に開閉して侵入できる入口は見当たらないが──それでもセンサーを研ぎ澄ませれば、壁の一枚向こうに敵がいないことくらいは察知できる。
 すなわち、その壁を多少破壊したところで危険はないということだ。
 コガネは手頃な箇所で左腕のパイルバンカーを駆動。小さな四隅に穴を開け、壁を取り払う形で内部へと入り込んだ。
 その後も、接合部を壊せば通れる箇所などを、適宜パイルで穿って進む。
 そうして空気のある空間を発見したが──それとは別に、見つけたものがあった。
 それは城の中心方向へ進む水路から見える場所で、進むことは出来ず、その先を観察することしか出来なかったが──。
 そこにまるで水没した植物園の如き景色が広がっていたのだ。
「中庭、のようなものでしょうかね……」
 豊かな翠と生き物、魚。奇怪な程に美しき色彩。
 湖とはまた一風違った光景だった。
 城の外観から見えなかったのは、天井に覆われていたためだろう。
「自然にできたもの、とも違うようですが」
 呟きつつ、想起するのはやはりオブリビオンだった。元より、その中庭には色濃い敵の気配を感じたのだから。
「あそこに敵が居るとするなら……あの景色は敵が作ったものでしょうかね」
 今はまだ何とも言えない、ただ、城の中心部には何かがいる。その確信を抱くだけのものではあった。
 コガネはそれを収穫として、あとは方向を変えて迂回。空気のある場所へと上陸し、仲間との合流を急いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
ふふっ…こういう水中探索経験は初めてじゃないのよね。こういう経験が何度もあるのも問題かもしれないけど…。

潜る前に【念動力】で周囲の空気を圧縮して自身に纏わせ、念と空気の潜水服(潜水球)を形成。
水に潜った後は水の流れを【サイコキネシス】で操り、そのまま外まで移動するわ。
近寄って来る魔獣の類は【念動力】と【サイコキネシス】の念でそのまま捕縛し、圧縮してゴミの様に潰したり、そのまま捻じり殺したり…圧倒的な力を魅せつけて手を出すと危険だと周囲に解らせるわ。

後は城の近くまで接近したら、【念動力、情報収集】で念動力の網を周囲に広げる様にして情報を収集。
城の入口や状態等、情報を集めるわ



 木々に囲まれた湖が、静かな波音を立てている。
 柔らかい風に揺れる水面は美しく、一見ただの鏡面のようだ。けれど少し覗けば昏く黒い影が眼下に広がっていた。
「とても大きな湖ね──」
 フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は赤い瞳でその水中を視る。既に魔獣の影も見えているが、ためらう心は無かった。
「ふふっ……こういう水中探索経験は初めてじゃないのよね」
 元より、敵地に怖じける性格でもなく。 
 強力な念動力を発揮して周囲の空気を圧縮し始めている。
 不可視の空気の塊を作り出すと、それを自身に纏わせて球型の潜水服と成す。ゆっくりと水に入ると、まるで大きな泡に包まれたように、フレミアの周りにだけ空気が保たれた。
「問題ないわね」
 硝子を通して水中を見るように、空気の壁から湖内を観察しながら──更にサイコキネシスを行使する。
 すると周囲の水流が意思の通りに動き始め、巨大な重量がフレミアを動かすためだけに対流を開始した。
 始めは遅く、次第に高速に。フレミアは水中を飛ぶような速度で移動し始める。
 道中、魔獣の群れと出くわす事もあった。
 だが異形の蛸の如きその群れに、フレミアは惑わず念を使用。サイコキネシスを併せて畳み掛けることで捕縛し、潰していく。
 それを繰り返していけば、そのうちフレミアに手を出す魔獣もいなくなる。その頃には湖底城にたどり着き、その巨影を見下ろしていた。
「それじゃ少し、探らせてもらおうかしら」
 フレミアは城の中程を眼下にすると、念動力の網を広げ、範囲にある情報を余さず調べるように意識を集中させた。
 自己の感覚が増大していく感覚。
 五感が巨大な体積を覆っていく感触。
 目を閉じて、そうして感じ取ったのは城には多くの水路が通っていること。殆どは小さく通路として使用できるものではないが──その源流は城の中心にあることがわかった。
 敵の気配らしきものも、おおよそそこに集中している。
「なるほどね」
 そこまで判れば、あとは入れそうな水路を見つければいい。水路だけをたどって城の中心にまでは行けないだろうが──内部にさえ入ってしまえば徒歩で探索することもできるはず。
 故に、フレミアは地下を通る水路を見つけ侵入。城の内部の酸素のある空間に出て、歩んで中心の方向を目指すことにした。
「猟兵の皆もいそうね」
 念を広げればそれも察知できる。
 正面方向から城の中心に向かう道中にある、大広間──どうやらそこを境に敵の気配が濃くなっているようだ。
「なら、向かうとしましょう」
 戦いの時は遠くない。それでも悠々と、靴音を鳴らしてフレミアは歩みゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
水底の城……御伽噺のようで不謹慎ですが少し興味を惹かれます
ですがグリモア猟兵の予知が導く異変が確認された以上、近隣住民への被害をもたらす存在がいることは確実
未然に排除しなければなりませんね

鋼の身、そのままだと沈んで水底の鉄屑ですが●水泳の技能も上がる水中用装備を付ければ潜水できます

マルチセンサーでのソナーなどを使った●情報収集、●暗視で魔獣の分布や城の所在を●見切り、最適な侵入コースを選定
ランスに付いた推進器を使った●ランスチャージで水中の魔獣を蹴散らしつつ城を目指しましょう

●世界知識から城の構造を類推し、侵入しやすい箇所を発見
城内の水上に出たらUCの妖精ロボで城内を偵察し、索敵を行います



 月明かりが解ける水面。
 そのずっとずっと奥に沈んだ巨大な影──水底の城。
「不謹慎かも知れませんが……御伽噺のようで、興味を惹かれますね」
 夜の畔に歩んできたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、静かな水音を立てるその湖を見据えている。
 美しき場所にある、思いもしないもの。
 それはやはり、文字通りのメルヘンを感じさせて──トリテレイアの中の多くを構成するものに強く訴えかけてくる。
 無論、騎士として歩もうとする自覚があるからこそ、そこが無辜の人々にとって危険な場だと想像するに難くない。
「予知が導く異変が確認された以上、近隣住民への被害をもたらす存在がいることは確実ですからね──」
 ならばこそ未然に排除せねば。
 トリテレイアは迷うことなく機械の体を水に入らせ、湖内へと潜り込んでいった。
 風の音が消え去り、水の揺蕩う低い音が辺りを包む。
 鋼の身では、抵抗も無く沈み水底の鉄屑になってしまう──そう予期していたトリテレイアは、水中行動用に新たなパーツを付け加えてきている。
 それが大型のランス。
 スクリューに寄る推進力を生み出す機巧がついており、思うままの方向へ潜航していける。同時にマルチセンサーによるソナーで周囲の環境を探ることで、潰さな情報収集も可能にしていた。
 その恩恵はすぐに現れる。
(──魔獣、ですね)
 探知したのは、一角のような見目を持つ、巨大な角を有した魚影。暗視を働かせることで遠方からも視認することが出来ていた。
 それも一体ではない。行く手を阻むように三体、それに後方にも一つの影があることがわかった。
(避けては通れませんか)
 尤も、それも予想していたことではある。 
 トリテレイアはランスを進行方向に対し水平に向けると、推進器を最大駆動。猛烈なまでの加速を生み出してランスチャージを刊行し──魔獣を貫き、蹴散らしながら一気に下方へと突き進んでいった。
 その速度で移動すれば、湖底城が見えてくるのもわずか数瞬後。
 巨大な造形を見て暫し興味を抱きつつ、同時に蓄えた知識から構造を類推し、侵入しやすい箇所に当たりをつける。
 あとは素早くそちらへと進み、城内へ入り込むだけ。
 城の側面に裏口にも似た隙間を見つけたトリテレイアは、そこから潜航。程なく空気のある場所を見つけて上陸した。
 そこは長い回廊で、敵影は無い。
 一先ず安全と見れば、あとは偵察と索敵。
「さて、頼みますよ」
 と、宙へと解き放つのは自律式妖精型ロボ。ひらりと舞ったそれを遠隔で操作しながら先行させることで安全に調査を進めていく。
 妖精ロボが異変を察知したのは、城の中央方向に進んで暫し経過したときだった。
「……敵の群れが居るようですね」
 正体はつかめないが、闇の中に多数の影があることを掴む。
 ただ、正面側に回り込めば仲間の猟兵が多数いることも掴めたから──そちらに合流して参戦するのが得策と思われた。
「ルートは広間から城の中心部へ、ですね。参りましょう」
 そうしてトリテレイアは城内を足早に進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。今度の依頼は水の中なのね…。
それなりに多くの戦場を渡ってきたつもりだけど、
思えば水中で闘った経験は無かったわ…。

事前に湖の側と手に持つ小石に【常夜の鍵】を設置、
さらに“精霊石の宝石飾り”に魔力を溜めて、
目立たない精霊の存在感を残像として見切り、
全身を風のオーラで防御して、水中でも呼吸ができるようにする

…これで退路は確保したし、準備も完了。
後は、実践して初見の不慣れを解消していくしかないか…。

暗視や第六感を頼りに城への潜入ルートを探り、
“血の翼”を広げ空中戦の要領で水中を進んでいくわ。
魔獣は生命力を吸収する呪詛を放つ闇属性攻撃で撃退し、
殺気や危険を感じたら無理せず【常夜の鍵】の中に撤退する



 凪に近い状態でも、湖のそばでは水面から緩い風が吹く。
 夜色の気流に裾を柔くなびかせながら、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はゆっくりと岸辺に歩み寄っていた。
「……ん。今度の依頼は水の中なのね……」
 済んだ紫の瞳に、月色に揺れる波間を映す。
 それなりに多くの戦場を渡ってきた自覚はあれど、水中で闘った経験は無かった。故にこの中に入り、敵と出遭えばどうなるか、自身でも少々想像がつきにくい。
 だからこそ対策は万全にしたい。
 リーヴァルディは指先をのばすと、薄く切った膚から紅の雫を落とす。それを魔法陣の形に広げると──常夜の鍵(ブラッドゲート)を生成。
 その上で、携えた小石にも同じ能力を施し鍵とした。これで転移を介していつでも岸に戻ってくる事ができるだろう。
「あとは──」
 細指に握ったのは精霊石の宝石飾り。
 そこへ魔力を注ぐことで、虹色の光を美しく明滅させて目立たぬ精霊を感じ取る。そうしてその存在感を残像として見切ることで、全身を風のオーラで常に防御する状態を保った。
 仄かに肌を撫でる涼しい感覚。
 この僅かな対流が体を水から護ってくれるだろう。
 リーヴァルディは一度瞳を閉じて呼吸する。
「……これで退路は確保したし、準備も完了」
 できることはやった。
 後は、実践して初見の不慣れを解消していくしかない。 
 なれば迷わずに。脚先から静かに水に入り、そのまま下方へと潜っていった。
 視界に昏い世界が広がる。
 水の中は地上とは全く環境を異にする場所だ。風も吹かず、重さを持ったものが常に対流し独特の流れを作っている。
 それでも、風に守られているリーヴァルディは呼吸に困ることはなかった。体自体もオーラを纏っているため水気に触れず、感覚としては空に浮遊している状態に近い。
 ならば、空を飛ぶように進めばいい。
 リーヴァルディは、限定的に吸血鬼化。背中から血色の魔力の双翼を広げ、羽ばたくように水中を進行し始めた。
 暗視によって遠くまでを見通せているため、進路には迷わない。すでに眼下には城が見えていて、そこを目指せばいいだけだった。
 とはいえ、中にはそれを阻むものも居るけれど。
 ごぽり、ごぽり。
 水音を立てて此方へと泳いでくる魔獣の影がある。
 一見水中に揺蕩う蛭のようだけれど、尖った翼のようなひれを持つ姿は何処か蝙蝠にも似ていた。
(……血でも吸いに来たのかしら)
 無論、好きにさせはしない。
 リーヴァルディは手を翳すと魔力による濃密な呪詛を形成。闇属性の波として撃ち出して、逆に生命力を喰らう形で撃退した。
 そのまま小さな魔獣程度であれば、退けつつ速度を落とさず進行していく。
 巨大な魔獣に囲まれることがあれば──即時に常夜の鍵から撤退。敵が通り過ぎた辺りで再び元の位置に転移し、泳ぎを再開した。
 そうして湖底城にたどり着くと、第六感も駆使して内部へ通じる水路を見つけ、潜航。曲がりくねった道を進み、城内の通路へと到着する。
「……ん。空気が、ある……」
 回廊らしきそこへ上陸しながら、リーヴァルディは少しばかり不思議な感覚だった。
 長らく水没している城なのだから、普通に考えれば中まで水で満たされていてもいいはずだ。それなのにこうして空気があるのは、やはり異常の端緒とも思える。
「……これもオブリビオンの仕業……」
 それを確認するためにも、進まねばなるまい。
 幸い、ここに敵影はなく不意を突かれる心配はなかった。
 ただ、勘は遠くない場所に敵がいることを告げている。けれどそこに猟兵達がいることもまた察知できたから、今そこへ向かおうと思った。
 目指すは、側面の入口から入る巨大な広間。その扉をくぐると、敵の気配が一気に濃密になった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『暴食飛蝗の群れ』

POW   :    選択進化
戦闘中に食べた【肉】の量と質に応じて【各個体が肉を喰らう為の身体へと進化して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飢餓
戦闘中に食べた【動植物】の量と質に応じて【少なければ少ない程に攻撃性を増して凶暴化】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    大繁殖
戦闘中に食べた【動物の肉や植物】の量と質に応じて【群れの個体数が飛躍的に増殖して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●空這う蟲
 湖底城の広間。
 細道から、また回廊から、通路から。様々な方向から会した猟兵達は、その空間の奥に無数の敵影がいるのを感じ取っていた。
 程なく現れたそれは──蟲の大群。
 ばたばたと羽撃き、獣にも似た獰猛な殺意を表す、暴食飛蝗の群れ。
 まるで奥部を護るかのように、壁となるように広間の奥を塞いでいた。
 セツナはそれを見上げ、ふむと呟く。
「湖中の城に、空を飛ぶ蟲か」
「魚類ではないとは思っていたが、飛行生物か」
 ボアネルは高所から見下ろすように、その敵群が飛来してくるのを観察する。
 隣に立つ由貴は柵から軽く身を乗り出すようにして見ていた。
「なんかチグハグだな。虫が城を支配してるわけじゃないだろ?」
「それは間違いない。奥部の敵は、膨大な量の水を発生させている。形はどうであれ、水生生物の類のはずだ」
 ネフラが声に応えると、コガネも頷く。
「中心部には水没した中庭もありましたから。敵の首領がいるとするなら、やはり水の中に潜んでいるはずです」
 おそらく、と、虫を見つめる。
「これは防衛機構の類ではないでしょうか」
「自分よりも弱い蟲を使って、城を守らせているということね」
 フレミアが一歩歩み出せば、トリテレイアはなるほどと得心したようでもあった。
「空気がある場所を作ったのは、水の生き物もそうでないものも、全てを寄せ付けないようにするためでもあったのかも知れませんね」
「ハッ、要は、ここを力づくで通りゃ問題ねェってコトだ」
 ザザが声を投げれば、チガヤもうむと頷く。
「厳重に護っているということは、さぞ大事な場所なのだろうからなぁ」
「じゃあ、あの敵をぜんぶ倒せばいーんだねっ!」
 リィリィットが明るく言えば、ワズラも獄炎を滾らせ戦闘態勢を取る。
「こちらにできることは、少なくともそれしかあるまいな」
「……ん。来るわ」
 リーヴァルディが瞳を向けると同時。蟲の群れが猟兵へと飛びかかってきた。
セツナ・クラルス
…ふむ
実は私は虫は嫌いではないのだよね
生きることに貪欲というか
生きることに特化させた戦略的な進化過程とか
知れば知るほど興味深い
できればきみたちのことも、
もっと知りたいと思うのだが…
そんなこと言っている場合ではないよね
残念そうに鎌をもたげて

虫といえば…やはり炎かな
灯火を発生させ
虫たちの群れに放ち、
散会させて戦力を分担

群れからより離れた虫には
小さな炎で文字通りに命を燃やし
群れには幾つかの灯火で追い立てて混乱を誘い、
徹底して虫たちのチームワークを乱していこう
虫とはいえ、
生きることを目的とした彼らの恐ろしさを見くびることなど決してしないよ
敬意を持って最後まで戦おう



 肌を圧迫するような闇の重さ。外光を通さぬ薄暗さ。
 奥部の見えぬ昏き空間は、空気に満ちていてもどこか水底に似ている。
 けれど、耳朶を打つのは無数の羽音。手足を擦り合わす細かな擦過音。牙を噛み合わす耳障りなリズム。
 その敵の存在が何より、この部屋が水中生物の棲家でないことを示していた。
「……ふむ、虫か」
 セツナは遠目に煙にも見えるその大群を、静かに見やっている。冷静、というよりも寧ろ何処か興味深げですらある面持ちで。
「実は私は虫は嫌いではないのだよね」
 刻一刻と、闇の間を詰めて飛来してくる影達に語りかけるように。
 その言葉の色も語り口も、友好的な風合いさえあったろう。
 なぜなら、彼らは生物として純粋だから。
 生きることに貪欲であること。
 或いは生きることに特化させた戦略的な進化過程。
 それは心に迷いを抱く生き物とはまた違った性質で、確かな独自性の塊にも思えるのだ。
「知れば知るほど興味深い。だからこそ、できればきみたちのことももっと知りたいと思うのだが……」
 その心は本音にたがい無かった。
 けれど、その蟲の羽が生んだ濁った風が、髪をゆらゆらと撫ぜてくれば──。
「そんなこと言っている場合ではないよね」
 残念そうに零しながら。
 袖をすり、と小さく鳴らしてセツナは手を前に差し出していた。
 生きることに貪欲であるが故に、蟲達は目の前のものを喰らわないではいられないだろう。
 今この時、それは自分も同じ。この先に斃さねばならぬものもいるが故に、ここで生存競争に敗れるわけにはいかなかった。
「こちらも全力をもって当たらせてもらうよ」
 ぽっ、と。
 暗がりに点いたのは灯火。
 深い藍色の空間を、温かな光色で照らし出すように。ひとつ、ふたつ──それは段々と増えて行き、そのうちに数十を数える狐火の群となる。
 原初の灯火(ハッピーバースデー)。
 それを一箇所に集めることで巨大な焔と成すと、セツナは指先を静かに伸ばし、それを真っ直ぐの方向に飛ばしていた。
 標的は眼前に迫る群の一つ。
 一個の巨大な塊にも見える、その中心で炎を爆発させ、数十の蟲を灰にしてみせると──同時にその衝撃で周りの個体の間隔を開けていく。
 塊が脅威であればこそ、数が減れば戦力的に劣る。
 視線を巡らせ、敵が広範囲に散ったことを確認すると──セツナは再び数十の火を生んで、それを個別に発射。群から離れた蟲を一体、また一体と確実に灼いていった。
 その間にも生き延びた蟲は再び複数の群れを作り、多方向からこちらへ飛びかかって来ていた。
 が、セツナはこつんと下がって間合いを取って。
 そちらに中程度に固めた狐火を放ち、複雑な軌道を描かせることで──群れを後方から追い立てていた。
 眩い熱気に、蟲はセツナを追うどころではなくなる。
「きみたちと同じくらいには、こちらも精一杯やりたいからね」
 そのうちに敵の群れが散らばれば、その蟲をまた焔で穿っていた。
 火が弾け、光の残滓が閃く。
 セツナは全霊を以て闇の中に戦火を瞬かせていた。
 虫といえど、生きることを目的とした彼らの恐ろしさを見くびることなど決してしない。
 敵が何処までも生きるために本気なら、こちらも同様に。
 敬意を持って、最後まで戦う。
 それが純粋なる命に対する、セツナの対峙の仕方。確実に、そして油断なく。敵を退けながらセツナは一歩一歩、進み始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ボアネル・ゼブダイ
【エルフの部屋】で参戦

蝗害は古くは悪神の名になるほどの被害を齎してきた
小さな虫と言えど、決して侮れんな

グリッグスの鞄から殺虫剤を取り出し
食糧袋から取り出したいくつかの巨大な塊肉に投与し投げ落とす
毒餌と言う奴だ
体内の水分を急速に奪い、呼吸器官を麻痺させ、さらにその毒性は死骸にも留まるほど強力な特性の薬剤だ
奴らが肉を喰らう為の身体に進化したならばさらに効率よく毒を取り込んでくれるだろう

手筈は整った
出番だぞ、由貴

UCを発動
人工血液セットから吸血したら攻撃力を高め
コ・イ・ヌールの刀身を伸ばし敵から距離を取り薙ぎ払うように範囲攻撃を行う

互いを食い合うほどの貪欲さか…
ある意味では、警備に最適かもしれんな


駆爛・由貴
【エルフの部屋】で参戦

UCを発動
群れを操ってボアネルの毒を食った暴食飛蝗の死骸を積極的に食わせるように操るぜ
これも毒餌って奴だな
こうすりゃ食い止められるぐらいには奴らの増加速度も落ちるだろ

腹が減ってるんだろ?
残さず食えよ!じゃなきゃ他の奴らに食われちまうぜ!

まぁ、これだけで全部は仕留めきれねーだろうな
バサンとオンモラキを起動させてガトリングをビームランチャーで一斉射撃
漏らした奴らも残さずなぎ倒すぜ
毒を食ったやつらはそのまま毒餌になるだろうからな
操られてない集団を中心に撃ち込むか
毒餌が無くなり出したらUCでさらに互いへの食欲を増進させ
群れ同士での共食いを加速するぜ

我ながら悪趣味な光景だなこりゃ…



 風も無いのに轟々と低い音が耳朶を叩く。
 空間そのものが小さく震動している、そんな感触すら伝えてくるそれはさながら黒い波。広間を侵食するように迫ってくる、数え切れぬ影。
「飛蝗、であったか」
 カフェオレ色の肌の指先を、バルコニーの柵に添えて。ボアネルはその露濡れたような美しき瞳を僅かに細めさせていた。
 細い体に長い翅。
 統率が取れている、というよりも集団の本能で巨大な脅威と化す蟲。
 一体一体は小さく、大した戦闘能力を持っていないであろう。ただそれは一体一体を個別に相手にすればの話。
「蝗害は古くは悪神の名になるほどの被害を齎してきた──小さな虫と言えど、決して侮れんな」
「ああ、しかもただのバッタじゃねーんだもんなぁ……」
 見下ろす由貴は微かに眦を下げて、息をついてみせるよう。あの全てがオブリビオン、ならばそれが寄り集まった蝗害は如何なる力があるか。
 それでも、由貴はすぐ後には快活な表情。
 蟲の大群に襲われることくらい、今更恐怖でもないという心の強さがあったし──隣に立つこの静かな黒騎士と力を借り合えば、突破できるという確かな目算もあったのだ。
「じゃ、始めよーぜ」
「ああ」
 応えるボアネルは古めかしい革の鞄を開ける。
 そこには薬剤や医療器具が整理されて収まっているが──その中から殺虫剤を取り出していた。
 それを食料袋から出した幾つかの塊肉へ満遍なく投与。巨大な餌をこしらえる。
 血の滴るそれを見つめながら、由貴はほー、と感心の色だ。
「いい感じだな」
「奴らには極上の餌に見えることだろう」
 襲い喰らう為に来ているのであれば喰らいつかぬはずもないと。ボアネルはそれを床の複数方向に投げ落とし、群れの渦中に与えた。
 それを目にした飛蝗は、一も二もなく飛来し啄み始める。そうして知らずのうちにそこに含まれた成分を体に取り込んでいくのだ。
 ──毒餌。
 体内の水分を急速に奪い、呼吸器官を麻痺させ、死骸にも留まるほどの猛毒。
 骸の海より生まれた変異体の飛蝗達は、肉を喰らうための体に進化しながら猛烈な勢いでそれを喰らっていく。
「ああなれば、より効率よく毒を取り込んでくれることだろう。そして──」
 死に至り斃れた飛蝗達そのものが、濃密な毒を含んだ新たな餌となる。
「これで手筈は整った。出番だぞ、由貴」
「おーし、やるか」
 頷いた由貴は赤の電脳ゴーグルを装着していた。
 起動して視界に淡い光を表示するそれは、ホムラⅣ・サイバーシステム。
 元は只の汎用品だったそれは、しかし度重なる改造によって由貴の戦いに完璧に適応する形となった一品だ。
 由貴は視線操作と仮想キーボードを操って、空間をスキャン。巨大な球形を広げるように電脳空間を現実に互換させ、蟲の体を分析し──そこに流れる生体信号を読み取りハッキングを可能にしていく。
 一つ頷くと由貴はそこへ電気信号を放った。
 ハッピー・フレンド(ミンナノトモダチ)。
 戯画化されたキャラクタとして空間を駆け抜けた電子の配列は、無数の飛蝗の挙動を操り──毒を含んだ死骸を共食いさせ始めていた。
「腹が減ってるんだろ? 残さず食えよ! じゃなきゃ他の奴らに食われちまうぜ!」
 死骸を喰らう飛蝗は苦悶して息絶え、新たな毒餌となってゆく。
 そうして生まれた毒餌は由貴の操作によって更に別の飛蝗に喰らわれ、捕食の連鎖を作り出していた。
 よっし、と由貴はその様子を眺める。
「これで食い止められるぐらいには奴らの増加速度も落ちるだろ」
 実際、絶えず増殖する群れではあったが、繰り返される共食いによってその速度が緩まり、段々と減少速度と拮抗し始めていた。
 無論、それでは絶対数は減らないが──。
「後は、俺達でやろーぜ」
「そうだな」
 二人は既に追撃の準備を始めている。
 元より毒だけで敵を殲滅できるとは思っていない。仕込みが済み、ようやくここで直接攻撃の手を出す機会が訪れたというわけだ。
 ボアネルが口腔に、膚に、浴びるように摂り込んだのは人工血液だった。
 ──人の理を外れた悍ましき吸血鬼の力よ。
 血を求める本能、その香りを欲する衝動は、例え調合物だとしてもその鮮やかな紅に反応して力の一端を解放させる。
 血呪解放(ブラッディ・インセンス)。
 どくりと鼓動が高鳴って、僅かに生まれた感情の昂りが、自身の力を爆発的に増大させたことを自覚させる。
 それでも平静を崩さぬボアネルは、その手に光剣コ・イ・ヌールを携えていた。光爪として伸ばされた輝きは、高まった力でその眩さを増している。
 刹那、一閃。
 軽く払うような仕草で、ボアネルが光の弧を描けば──長大なリーチを得た刃が蟲を一度で数十体斬り飛ばしていた。
 強大な衝撃の余波に、直接光に触れぬ飛蝗までが散り散りに散っていく。
 そうして、二閃、三閃。
 薄闇に燦めく光の斬閃が、容赦なく蟲の数を減らし始めていた。
 衝撃から逃れた飛蝗は、そこで初めて高所にいる二人に気づいて飛来しようとしてくる。けれどその頃には由貴の出番だ。
「しっかり頼むぜー」
 声と共に、起動させるのは二機のポッドだ。
 ふわりと浮かんで柵を越え、敵の上方を取る、「波」の字を持つバサン、そして「陰」の字を持つオンモラキ。
 ゴーグルを通して制御することで、それは遠隔にありながら由貴の手足のように動く。
 ばらばらにこちらに近づいてくる個体に、しかと狙いを向けると──まずはバサンのガトリングで射撃。地鳴りの如き音を上げながら、驚異的な連射速度で蟲を四散させていた。
 それを避けるように、群れが側面に固まっていくと──オンモラキの砲口がそこに向いている。
 瞬間、放たれたのは長大なまでのビームランチャー。
 黒色の背景に、巨大な筆で光色の線を引いたように。凄まじき光量の直線が群れを丸まま飲み込んで焼き尽くしていった。
「さーて、段々減ってきたな」
「そのようだな」
 ボアネルも刃を振るいながら頷く。前方の視界を埋め尽くす霧のようだった飛蝗も──そこに穴が空き、途切れが見え始めている。
 毒餌の餌食となった個体は、放っておいても増えはしない。故に二人はそれ以外の群れに狙いを定め、皆の進路を切り拓くことにしていた。
 そのうちに毒も薄まり、餌としての効果は切れてくる。
 そうなれば──由貴は再び生体ハッキングを行使。餌を求めていた個体の信号パターンをそのまま切り貼りするように、健全な個体同士でも共食いを誘発させていった。
 互いが食欲のままに喰らい合い、殺し合う。
 由貴はうーん、と腕を組んだ。
「我ながら悪趣味な光景だなこりゃ……」
「共食いの素質を持ったが故の、敵側の隙だ」
 ボアネルは静かに呟く。
 毒餌の作戦に嵌った時点で、この結末は必定だった。目につく全てを喰らおうとする異形に成り果てたが故に、その毒牙に自分自身が溺れたのだ。
 とはいえ、その獰猛さにはやはり目を見張るものがある。
「互いを食い合うほどの貪欲さか……ある意味では、警備に最適かもしれんな」
 こんな生物を行使し、水の奥に潜む。
 奥にいる敵は一体如何なるものかと、ボアネルは少しだけ思いを馳せた。
 由貴は、よっ、と柵を乗り越えている。
「敵を押し止められてるみたいだし。俺達も降りて進もうぜー」
「そうしよう」
 ボアネルもひらりと跳んで床に着地。仲間と共に広間を前進し始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七篠・コガネ
う〜…それにしてもこんなのがいるなんて想像してませんでしたよ
もっとお魚さんとかそういう…いいえ、期待しちゃ駄目だったですね

道中、狭くて天井の高い空間とかなかったかなぁ?
内蔵メモリからちょっと思い出し…あ、あったかも!
体の発光部分を誘導灯代わりに光らせて蟲達を誘導してみます
目指すは思い出したあの空間

お生憎様でして。食べられる肉など僕の身には無く
誘導が出来たら天井高く飛んで【一斉発射】で蟲達を一箇所に集めてみます
電気やプラズマ光が食べたいってなら交渉ぐらいはしてもいいですよ?
頃合い見計らってそこからUCで【踏みつけ】て攻撃です!
丸ごと踏み潰してくれますよ!

…でも足の裏見るのちょっと嫌かも



 視覚に取り込んだ情報を、余す所無く伝えてくれる金の瞳。
 それが今視界一杯に映しているのは、数えることも出来ぬほどの蟲の群れ。コガネは僅かにう~、と声を零しつつ形の良い眉尻を下げていた。
「こんなのがいるなんて想像してませんでしたよ……」
 元より湖底城にて飛行生物に出会う事自体が想像の埒外ではあった。
 それだけならば良かったが、想定よりも見目に気味の良いものではないことが少しばかり、哀しいような。
「もっとお魚さんとかそういう……いいえ、期待しちゃ駄目だったですね」
 首元の関節を微かに動かし首を振る。
 半ばそれは言い聞かせるようでもあったけれど。オブリビオンの牙城に居る時点で、眼前に如何な敵が出てきても不思議ではなかったのだ。
 コガネは決心すると、後は迎撃方法の分析にかかる。
(広い空間では、囲まれた時に厄介ですかね)
 遮蔽や、こちらが囲い込めるようなものは広間にはない。敵が集団でかかってくることを考えれば、別の空間に引き込むことが良い策に思われた。
(道中、狭くて天井の高い空間とかなかったかなぁ?)
 コガネは視線は敵に向けたまま、内蔵メモリを複数ラインで検索するように記憶をたどる。
 するとすぐにあっと気づいた。
「あったかも! ここからは……遠くないですね」
 視線を向けるのは正面でなく横側の出入り口。そこから抜けて下がることで敵を誘うのに丁度いい場所があると思い至っていた。
 策を決めれば動くだけ。
 コガネは発光部分を誘導灯代わりに光らせて、蟲達を誘引。群れの一角がこちらに興味を示したと見ると、そのまま広間から通路へと下がっていった。
 目的の空間に到着するのはすぐのこと。一瞬の静けさのあと、無数の羽音がコガネを追って中に入ってくる。
 誘われているとはつゆ知らず。
 ただ目の前の獲物を喰らおうと羽撃き飛来してくる飛蝗達。
 ここまでくれば、距離を詰められようともコガネが惑うことは一切なかった。
「お生憎様。食べられる肉など僕の身には有りませんよ」
 元より少々噛みつかれようが、機械の体にはびくともしない。
 囲まれればその限りではないだろうが、コガネはそれよりも早く飛翔。天井近くまで昇り群れを見下ろしていた。
「電気やプラズマ光が食べたいってなら交渉ぐらいはしても──いいですよ?」
 瞬間、腕に装着した砲口からまばゆい光を放射。数十の敵を貫きながら、同時に群れを囲い込むように一箇所に集めてゆく。
 そうして蟲達の大半が、コガネの直下に位置した時。
「丸ごと踏み潰してくれますよ!」
 コガネは逆噴射する形で真下へ加速。猛禽脚(モウキンキャク)──鉤爪の威力を含んだ猛烈な蹴り落としで群れを踏みつけた。
 衝撃音が響き、床が大きく軋む。
 重力と重量、エネルギーと勢い。その全てをぶつけた一撃に、コガネの体にすら幾分か反動を伝えるほどの威力。
 それにより聞こえていた羽音はなくなり、そこにいた蟲のほぼ全てがその一撃で息絶えていた。
 残ったのは静寂と、微かにひび割れた床のみ。
「どうやらうまく行ったようですね。……でも足の裏見るのちょっと嫌かも」
 呟きつつ、それでも一応きちんと敵の死を確認すると、その死骸も消滅し始めるので良かった、と思いつつ。
 コガネは素早く広間へ。同様の作戦を繰り返しつつ、敵の群れを確実に減じさせていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
あのような数で攻める小型生物は面での攻撃…特に炎で焼き払った方が効果的かもしれませんが、通常の炎では酸素の消費が気がかりですね
私のような者だけなら「アリ」なのですが…

数の脅威は四方八方からの回避不能な連続攻撃が主
それを防ぐため包囲を防止する即席の「陣」を敷きましょう
戦場に発振器を射出しUCの電磁バリアで形成した「コ」の字型の陣を構築

横や背後からの攻撃を防止する形で味方を●かばいます
侵入方向が限られている以上、飛蝗はそこに殺到するはず
そこに頭部と肩部の格納銃器の●なぎ払い掃射で一掃
範囲攻撃を持つ仲間への支援も兼ねてバリアの解除も視野に

接近されたら●怪力で振るう●シールドバッシュで潰していきます


ネフラ・ノーヴァ
アドリブ、共闘OK。

「蟲共、貴様らに食わせる肉はないぞ。」
まあ、クリスタリアンの身を食えるとは思えないが。
小さな蟲とて私の刺剣なら貫けないものではないが、随分と数が多いものだからな。
UC葬送黒血、刺剣で右手を切り、燃える血を奴らに浴びせ発火させる。少々酸素を使うが火で焼き払う。
同じく火を使う猟兵もいるようならタイミングを合わせよう。
「やあ、綺麗な炎を使うじゃないか。」

足元でまだ蠢いてるのがいればハイヒールで踏みつけてしまうかな。
足癖が悪いものでね、フフ。



 広間の奥にはおそらく、次の空間へ通路があるのだろう。
 確かにその方向に何かの存在があるのは感覚として感じられる。けれどその視界を全て、蟲が埋め尽くしていた。 
 闇色の暴流。
 押し寄せる狩猟本能の集団。
 あれに飲み込まれてしまえば、果たして無事でいられるか。
「やれ、随分と数の多いことだ」
 淡碧色の瞳で前を見据えながら、ネフラは軽く肩を竦めてみせる。
 その瞳にはあくまで焦りはなく、文字通りの宝石の如き美しい色が湛えられているばかりだ。
 隣り立つトリテレイアも退かず、真っ直ぐに見つめて分析を始めている。
「あのように数で攻める小型生物は、面での攻撃が有効かも知れませんね」
 少なくとも単体を討つことを繰り返しても、敵の増殖速度に追いつけまい。だけでなく、一体に対峙している間に囲まれてしまう危険もある。
 ネフラは流麗な刺剣を手元で游ばせつつ頷いた。
「小さな蟲とて私の刺剣なら貫けないものではないが──確かにこれが有効打では無いだろうな」
「広範囲を覆うことのできる攻撃……特に炎で焼き払うなどすれば、効果的かもしれません。尤も、酸素の消費が気がかりですが」
 トリテレイアは機械の視線を周囲に奔らす。
 広間は広大だ。
 とはいえ密閉されている場所には違いなく、環境の変化が如何な影響を齎すかは不安要素の一つではあった。
「確かに酸素は心配だな。だが」
 と、応えながらネフラは歩み出ている。
「城内の酸素のある空間はかなり多い。風の流れは無くとも、隣接する水路も数多くあるから、ある程度城内での空気の対流も生まれていることだろう」
 それは見てきたことと、分析によって判る確かなこと。
 故に少々ではあれば問題はない、と。
 結論を得たネフラは既に行動に移っていた。
 左手に握った刺剣でそっと右手を傷つけ、肌を破る。そうして流れ出した血の雫を──ネフラは振りまくように蟲の群れに飛ばしていた。
 瞬間、黒き血が明滅するように輝き、爆発するように発火。轟々と響く巨大な焔と成って蟲を焼き尽くしていた。
 葬送黒血(ブラック・ブラッド・ブレイズ)。
 数滴の雫が変じた炎の塊。
 それが数十体の群れを跡形もなく消し去り視界を開いていく。
 ネフラは敵が絶えたと見れば、素早く延焼分の炎を消去。余分な酸素の消費を抑えることも忘れない。
 敵意を抱いた後続の蟲達が迫ってきても、新たに溢れる血をその手に握るのみだった。
「蟲共、貴様らに食わせる肉はないぞ。まあ、クリスタリアンの身を食えるとは思えないが──」
 どちらであろうとも、寄せ付けるつもりはないのだから。
 放つ血を燃え盛らせて、飛来する全てを焼き払ってみせていた。
 蟲達は遅まきながらそれを脅威と感じたか、広く角度を取って囲い込むように飛ぶ形を取ってくる。 
 そこへはトリテレイアが腕を翳していた。
「私にお任せを。護ってみせましょう」
 瞬間、駆動させるのは攻勢電磁障壁発振器射出ユニット(バリアジェネレーターランチャー)。
 駆動音を響かせて発振器を射出し、広間の数点に固定。そこにエネルギーを通わせることで、発振器同士を結ぶ眩い光の線を展開していた。
 それは強力な指向性電磁波を障壁と成すテクノロジー。
 丁度「コ」の字型の陣として構築されたそれは、こちらの味方を護る形で輝き、敵の攻撃を阻んでいく。
 限られた侵入方向へと敵が殺到してくれば──そこを狙うだけ。
 トリテレイアは肩部に隠蔽・格納されていた銃器を展開。同時に騎士兜をも牙を剥くように開かせ、機銃を突き出させていた。
 瞬間、暴雨の如き銃声を響かせながら掃射。集まっていた蟲を薙ぎ払うように撃ち落とし、一掃してみせる。
「これでさらに数は減りましたね──」
 言いながら、油断はしていない。
 掻い潜ってきた数匹の敵に、群れが朽ちてもなお迫る後続の敵。いくらかの蟲がまだ至近へと近寄りつつあった。
 けれど射撃の間合いでなくなれば、トリテレイアは無理にそれを敢行しない。そんなことをせずとも、トリテレイアの怪力そのものが凶器なのだから。
 瞬間、一歩踏み出たトリテレイアは盾を強烈な腕力で突き出しシールドバッシュ。弾き飛ばすように力で蟲を爆散させた。
「他の方向は……」
「まだまだ迫っているようだぞ」
 応えるのはネフラ。
 バリアを突破しようとしてか、確かに群れの塊が複数方向に見える。
 無論、科学の粋はたやすく破られるものではない。それでも数の暴力は凄まじく、群れの内の数匹は光の間を縫うように突破し、別の個体もまた半身を焼きながら無理に掻い潜ろうとしてきていた。
 それでも、短時間でも押し止められたのなら十分だ。
「片付けるから、一度バリアを抑えてくれ」
「判りました。2、1、……解除します!」
 合図と共に耀く障壁が綺麗に失せる。
 すると同時にネフラは溜めていた血を一気に投げつけ、発火。空間そのものが燃えたかのような凄まじい火力で、迫っていた蟲も留まっていた蟲も纏めて灰にしていった。
 ネフラは味方にも視線をやりつつ、セツナが炎を行使していると見れば歩み寄る。
「やあ、綺麗な炎を使うじゃないか」
 併せて敵を消し去ってしまおう、と。
 セツナともタイミングを合わせ、さらに後続の敵を灼いていった。
 飛躍的に敵数が減ってくると、ネフラはふむと奥を覗く。
「向こう側も見えてきたようだ。こちらも前進するとしようか」
「ええ、そうしましょう」
 トリテレイアは近場の敵がいなくなると、発振器を回収。素早く前方に陣を進める形で、また新たに障壁を展開していた。
 ネフラもそれに合わせてこつりこつりと歩んでいく。
 足元でまだ蠢いている蟲がいれば、ハイヒールで踏みつけながら。
「おっと。足癖が悪いものでね、フフ」
 そうして後顧の憂いも断ち、悠々と進んで──再び蟲の群が迫れば焔で灼きながら。着実に奥部へと進軍していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
【狼の巣】

【ブラッド・ガイスト】使用

「チッ、着替えてる暇はねェな」

銃器を出して、あとは煙草に火を点ける
【ドーピング】と【破魔】を効かせると、

「殲滅戦だ。一匹残らず片付けるぜ」

バラライカで【先制攻撃】
銃撃で蟲どもを【なぎ払い】
接近されたら【零距離射撃】

曹長やリィに蟲がいかないよう【挑発】して【おびき寄せ】る
他の猟兵、ヘル・クラルスなどに【援護射撃】

「テメェらの相手はオレ様がしてやるよ!」

【ダッシュ】でこまめに位置を変えながら戦う

「チマチマやっても埒があかねェ! 曹長、リィ、連中をまとめて爆破しろ!」

負傷者がいればレオンに後方へ下げさせる
爆風は【盾受け】
オレまで吹っ飛んだらどうするつもりだ!?


チガヤ・シフレット
【狼の巣】で参加だ

虫?蟲?むしぃ??
大量発生の蝗とは、この場所に似合わない奴もいたもんだな!
あれは食ったら美味いやつか?
不味いか
さっさと消し飛ばして、親玉を殴りに行くとするかぁ

ザザ、私にも一本くれ。火が消える前にあらかた吹っ飛ばそう!

兵装を起動。敵が群れで来るなら、こちらも手数やらでいくとしよう!
銃火器使って【二回攻撃】!
【一斉発射】と【零距離射撃】で遠くのやつも近くの奴も撃って撃ちまくって撃墜だ!

蟲ばかり撃って厭きた、キリがないな!
ミサイルやらの爆破、広範囲兵器に切り替えて、【衝撃波】やらで吹っ飛ばす!
「リィ、お許しが出たぞ。派手に吹っ飛ばすとしよう!」
っま、許しがなくてもやる気だったけどな


リィリィット・エニウェア
【狼の巣】で参加
チガヤ・シフレット(f04538)はチガねーさん
ザザ・クライスト(f07677)はリーダーと呼びます

うげぇ、蟲の大群とかぞわってするね
でも群体には二倍ダメージだったはず。何か知らないけど

ちまちま攻撃して追い込んでいくよー
目指すは集めての爆破!
ふふふ……爆破に繋がる仕込みも楽しいんだよっ

リーダーから許可が出たら、きょとん
(「えっ、最初からそのつもりだったけどダメだったの?」)
と言う目。
一瞬後に、わ、わかってたよ!無差別爆破しようとかしてなかったからね!?と、いきます
リーダーの言葉には「避けてくれるって信じてた!」とサムズアップ!

さぁて、ボスはどんなやつかなー?



 壊れたラジオのような、雑音の入り混じった音が持続する。
 空気が小さな悲鳴を上げているかのような、高域と低域の入り混じった騒音。それは無数の蟲が羽ばたき、ぶつかり合い、鳴く音の集合体だ。
「──虫? 蟲? むしぃ??」
 闇が蠢くようにして奥から現れたその大群を、チガヤは眉を顰めて見つめている。湖底城にそぐわぬシルエットの襲来に、両腕を広げて驚きを表明していた。
「大量発生の蝗とは、この場所に似合わない奴もいたもんだな!」
「蟲の大群とかぞわってするね」
 うげぇ、と表情を曇らせるのはリィリィット。
 さもあろう、のたうち明滅する大群は、巨大な流体の塊に見えるほど。
 その数は当然百は下らないだろう──或いはもっともっと遥かな個体数かも知れない。よく目を凝らしてやっと、一体一体の姿形を望めるほどだ。
 チガヤはふむ、と呟く。
「あれは食ったら美味いやつか?」
「えぇー……食べるものじゃないでしょ?」
 リィリィットがちょっと想像して眉を八の字にすると、食ってみねば分からないというようにチガヤは再度観察してみる。
 ただ、近づけば近づくほどその蟲の奇怪さが顕になってくるからだろうか、チガヤもそうだなとすぐに首を振った。
「仮に食えても不味そうだな」
 ならばやることは一つ。
 さっさと消し飛ばして、親玉を殴りに行くとするかぁ、と。肩を少し慣らすように回してみせる。
 折しも、蟲は真っ直ぐに突き進んできている。望もうが望むまいが、程なく衝突することになるだろう。
 チッ、と、ザザはそれを見て息をついていた。
「着替えてる暇はねェな」
 こちらはまだ、水中探索時の水気も完全には乾ききっていない体。
 せめてそのくらいの猶予は与えてほしかったものだが──それでも首を振る。それこそ蟲相手に言っても始まるまい、と。
 そう決めれば、すぐに短機関銃を出していた。
 あとは、ぽん、と手元に煙草の箱を遊ばせると一本取り出して。ライターで軽く周囲を照らしながら火を点ける。
 燻されたような香りと苦味、仄かに甘い口当たりの煙が肺に巡った。それが細胞の一つ一つ、血流の一本一本を活性化させるように肉体を強化していく。
 同時に魔除けの効能を持つ葉の成分が、体に溶け込むことで破魔の力と変じてザザ自身に宿っていた。
 戦いの準備にはこれで十分。
「ザザ、私にも一本くれ」
 と、それを眼にしたチガヤも煙草を所望。
 指先からぱちりと火花を生んで手早く火を灯すと、一杯に香りを吸い込んで──それを咥えたまま敵に向き直った。
「いくぞ。火が消える前にあらかた吹っ飛ばそう!」
「あァ。殲滅戦だ。一匹残らず片付けるぜ」
 紫煙混じりの吐息でザザが応えると、リィリィットも頷く。
「うんっ、がんばろー!」

 広間の奥から迫ってくる蟲は巨大な壁の如く。途切れのない群れを形成してこちらの全てを包み込もうとしてきている。
 そこにあるのは単純な捕食の本能。
 肉を喰らうために飛び、牙を研ぎ澄ます、獰猛なまでの食欲。
 ザザはそこに銃口を向けてやる。
「くれてやるのは、弾丸さ」
 瞬間、ブラッド・ガイストを行使。
 どくりと血の流れが脈打って、その幾分が失せたように体の違和感として残ると──代わりに齎されたのは銃の形態変化。
 KBN18バラライカ──ドラムマガジン式の銃は蠢くようにその姿を鳴動させ、流線を描くような形に変貌。弾丸も同時に変質し、一発一発が敵に喰らいつき、逆に捕食してしまうような自立式凶器となっていた。
 刹那、花火を弾けさせるような小気味良い銃声を鳴らし、ザザは高速連射。その弾丸を宙にばら撒いていく。
 弾丸は蟲を捕らえると体内へ侵入し、凹凸を持った弾頭が廻転するように肉を抉り喰らう。同時に他の部位も腐食させるように蝕み、その生命を潰えさせた。
 ザザは弾幕を張るようにして群れを薙ぎ払っていく。
 無論、その初手だけで敵の進軍を止めることは出来ない。だからこそチガヤも素早く兵装を起動させていた。
「群れで来るなら、こちらも手数でいくとしよう」
 丁度ザザの攻撃の及んでいない部分を、カバーするように。
 腕をぐるりと回し、銃器へと変貌。
 脚先もまた砲口へ変化させて一斉発射。弾丸と光弾、砲弾を放ち衝撃の暴嵐を見舞っていった。
 羽が散り、胴が千切れ、頭部が灼けていく。
 絶え間ない連射で蟲は凄まじい速度で消し飛び、その数を減らし始めていた。
 ザザが左方、チガヤが右方。主にその方向をカバーしながら、撃ち漏らす数も零とは言えないが──そこにリィリィットが躍り出ていた。
「あたしの番だねっ!」
 手を翳して現出させるのは小型の銃の形のガジェット。
 引き金を引くことで輪型の光線が発射され、複数体を同時に攻撃できるものだ。
 威力は決して高くはなく、クリーンヒットをさせなければ一体を斃すのも容易ではない。だがその光が音波を含んでいることに意味があった。
(こうやって少しずつでも追い込んでいくよー)
 目指すは集めての爆破だ、と。
 楽しげな面持ちで射撃を繰り返すうち、まるで蟲達が忌避するように離れ始めていく。独自の周波数を含めたそれは、蟲に対して自然な嫌悪感を与える装置でもあった。
 こうして、傷を与えるよりも追い立てることで敵を制動しつつ。
 集めに集めてその時を待つ。
(ふふふ……爆破に繋がる仕込みも楽しいんだよっ)
 刻々と高まる期待に、リィリィットは笑顔を零していた。
 蟲の中にも違和感を覚えたものがいるのだろう、回り込むようにリィリィットへ攻めてこようとするものもいた。
 が、そこへ弾丸の雨。
 ザザが素早く動きを見て取って銃口を向けている。
「テメェらの相手はオレ様がしてやるよ!」
 挑発で敵の狙いが集中するのは予想済み。
 素早く駆け出したザザは、ときおりバックステップで振り向いて、ゼロ距離射撃を敢行しながら華麗に奔って追っ手を振り切っていく。
 それでも敵数が増えれば、チガヤが火器を向けて補助。ザザがステップするのに合わせて射撃をし、迫る敵を撃ち落としていく。
「どうだ、さすがだろう」
「まァな」
 言いながら、ザザはそれでも形勢の変化が鈍足だと気づいている。
 敵自身も群れの何処かで増殖を続けており、それがこちらの討伐数にも勝るとも劣らないのだろう。
「チマチマやっても埒があかねェな──!」
 息をつくと周囲に負傷者がいないことを確認。レオンも奔らせて、敵の只中に味方がいないと判ると──ザザは声を投げた。
「曹長、リィ、連中をまとめて爆破しろ!」
「よし。こちらも飽きてきた所だ。何よりこのままではキリがないからな!」
 頷いたチガヤもリィリィットに視線を向ける。
「というわけだ。リィ、お許しが出たぞ。派手に吹っ飛ばすとしよう!」
「うん……えっ?」
 答えつつ、一瞬きょとんとするリィリィット。
(最初からそのつもりだったけどダメだったの?)
 そんな眼をしつつ……一瞬後にこくこく頷いた。
「わ、わかってたよ! 無差別爆破しようとかしてなかったからね!?」
「……本当か?」
 ザザは呟きつつも、まぁいいとばかりに群れから下がろうとする。
 と、その頃には既に、チガヤが巨大砲身を構えていた。
 チガヤとて、許しが無くともやる気だったのだ。準備は早くあっという間に着火。強烈な轟音と共に、ミサイルを撃ち出し始めていた。
 着弾点付近でザザが目を剥く。
「オイ曹長、オレがまだこっちに──」
「あたしもいきまーすっ!」
 その声をかき消すように、リィリィットも全火器を展開していた。
 小さな要塞と化した武装に、爆破支援ガジェット・ぷちリィちゃんの手助けで装弾、点火を敢行して発射準備。
 同時に、鮮やかに彩られた爆弾を蟲の群れ(とザザ)が居るところへ連続投擲。
 更に炸薬式衝撃増幅装置・ふえたろうで火力を増した銃身と砲身からありったけの弾丸と砲弾を撃ち出して──。
「最後はこれっ!」
 エネルギー式炸裂弾誘導装置・えにぃわんで長大なビームを眩く閃かせ、爆弾とその他諸々へ撃ち当てて強烈な誘爆を齎す。
 刹那、白光。
 闇が真っ白に染まるほどの巨大な爆発が巻き起こった。
 悲鳴とも啼き声ともつかぬ蟲の声が反響すると同時に、発火点の中心から蟲の体、羽、その全てが蒸発するように消し飛んでいく。
「うぉお──!」
 と、響くのはザザの声だ。爆風をうまく防御して、横に転がり出る形で何とか衝撃から逃れていたのだった。
「オレまで吹っ飛んだらどうするつもりだ!?」
「だいじょーぶ! 避けてくれるって信じてた!」
 リィリィットは派手な爆破が出来ことに満足げな面持ちでサムズアップしている。
 チガヤはからからと笑んでいた。
「生き残ったようだな? ザザ」
「間一髪でな……」
 ため息をつきながら、それでもザザの口からは煙草が落ちていない。
 チガヤも先の言葉通り、まだ煙草は点いたままだった。
 ふっ、と一度紫煙をくゆらせて、チガヤは前方を見やる。
「近づいてきた敵はあらかた吹き飛んだな」
「あァ、あとは奥だ、進むぞ」
「はーい! さぁて、ボスはどんなやつかなー?」
 ザザが歩を踏み出すと、リィリィットも呟きながら歩んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
飛蝗ね…こんなトコじゃ食べるモノも無いでしょうに、こんなに繁殖してるなんて、面倒な相手ね…。
虫の餌になるなんてごめんだし、さっさと片づけるとしましょうか。

【ブラッディ・フォール】発動。「仮病とは最大の病に他ならない」の「炎槍使いの魔嬢様」の服装へ変化。【滅びの殺風炎】で一気に焼きつくして数を減らし、討ち漏らしは焔の魔力【属性攻撃】を纏った魔槍【怪力、早業】で叩き潰して【私の「おもちゃ」に殺させてあげる♪】で死体を炎の巨人に変えてこちらの手駒にしてそのまま殲滅するわ。

力の大元になった魔嬢様は気に食わないのだけど、力の使い勝手は良いのよね…。複雑な気分だわ…。



 湖の匂いの残る空間で、縦横に羽を踊らす蟲の群れ。
 蜂蜜色の髪を指に巻き付けて、それを見つめるフレミアは悩ましいというよりもほんの少しだけ、胡乱なため息をついてみせていた。
「飛蝗ね……」
 遥かな水の底に何がいるのか、とは気になっていたけれど。
 その姿に感慨と言うよりは、仄かに退屈そうな色さえ浮かべてみせる。
「こんなトコじゃ食べるモノも無いでしょうに、こんなに繁殖してるなんて、面倒な相手ね……」
 ま、虫の餌になるなんてごめんだし、と。
 さらりと髪を流したフレミアは、体を魔力で包んで淡い光を纏っていた。
「──さっさと片付けるとしましょうか」
 揺蕩うのは焔の気配。
 瞬間、魔力が全身を白色に輝かせたかと思うと──その耀が晴れた時、フレミアは紅色の服へとその様相を変えている。
 ブラッディ・フォール。
 過去に斃したオブリビオンの力を自身に降ろし、行使することを可能にする超常の力。
 フレミアは炎の魔力抱く槍を携え、焔に特化した力を携えた存在となっていた。
「さて、行きましょ」
 こつっとブーツを踏み鳴らして前進すれば、丁度蟲の群れが前方に迫っている所。フレミアはそこへ武器を薙ぐと、燃え盛る風を放っていた。
 それは空気を巻き込むように成長し、数十の蟲を飲み込んで焼き尽くしてしまう。
 側面に逃れていた蟲が左右から反撃にかかろうとしてくる──が、フレミアはそこへも一歩下がって焔風。僅かも触れさせず、群れを熱波に灼いていった。
 それでも多方向に数体、討ち漏らした蟲はいる。
 そんな敵には、フレミアが自ら近づいて。
「直接打ち落としてあげるわ」
 魔槍に焔の魔力を滾らせ、強烈な刺突で叩き潰す。
 逃れようとする数体にも、体を回転させて早業の横薙ぎ。切り飛ばすように残さず退治してみせた。
 床に落ちた蟲の死骸も放置はしない。
 槍の先を向けて魔力を注ぐことで、ぽつ、と点火させる。その火は段々と巨大になり──その内に炎の巨人へと変貌していた。
「征きなさい」
 フレミアは手駒としたそれに命令を下し前進させる。
 ゆらゆらと焔を湛えた巨人は、体当りするように後続の蟲にぶつかり、その熱量で複数体を灼いていく。
 そうして斃れた蟲を、フレミアはまた新たな巨人として従え敵にけしかけていた。
 火力が衰えた巨人がくすぶるようにして消失しても、新たな巨人はすぐに供給される。そうして焔の軍勢に攻め入らせるようにして進軍をしていった。
「あとは進むだけね」
 呟きながら自身も前へ。
 奥から敵が向かってくると見れば、炎の風を放って振り払い、槍を振るって消し飛ばし。
 いつしか次の空間への道が見えるまでになっていた。
「やっぱり通路があるのね」
 さて、あの向こうはどうなっているかしらと。
 一つ呟いて、フレミアは歩む。
 飛来してくる蟲は悠々と、妖艶に──全て薙ぎ倒してみせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワズラ・ウルスラグナ
ふむ。守る事をよく考えている、良い居城だ。
城主に遭うのが益々楽しみになったな。

褒めておいてなんだが、進む為には第二の守りも崩さねばならん。
剣と焔で薙ぎ払わせて貰おう。

敵は飛蝗。喰うとも喰わずとも強くなる大群のオブリビオン。
共食いまで考慮すれば強化を阻止するのは難しかろう。
ただ、餓えるも満たすも時間は掛かる筈だ。
ならば戦獄龍永戦を用い、掛かった時間の分だけ俺もまた強くなろう。

後は食事の邪魔を欠かさぬ事、群れの足下を狙い炎と熱気で焼き焦がす事を意識する。
俺の肉を喰らいたいなら、獄焔をも呑み込んで見せろ。
出来ないのなら、俺の焔が呑み込むだけだ。

折角仲間と合流したのだ。
可能な限り周囲にも合わせよう。



 月光も届かぬ水の奥。
 深く沈んだ闇はそれだけで分厚い盾だというのに、そこには更に蠢く蟲がいた。
 観念でもなく形而上でもなく、ただ物理的に個と全を兼ねた数の暴力。唸る羽音が流動する鳴き声のように壁に反響する、飛蝗の群れ。
「泳いで渡ったと思えば、今度は逆に水生生物でも近寄れぬ空気の壁。そしてその中には飛行生物の群、か」
 ちり、ちり、と。
 戦意の焔をちらつかせながら、ワズラはそれを嫌悪するでもなく、憂うでもなく。ただその要塞に僅かな感心を浮かべてみせる。
「ふむ。守る事をよく考えている、良い居城だ」
 城主に遭うのが益々楽しみになったな、と。
 云いながら、昏い空気の中に一振りの巨刃を耀かす。
 暴風龍サルヴァ──巨躯たるワズラが握って尚長大という印象を覆さない鉄塊剣。戦いを求めるように、そこへ煌々と鋭き光を湛えさせていた。
「褒めておいてなんだが、進む為には第二の守りも崩さねばならん」
 それは何より、ワズラ自身が言ったように、この奥に潜むものへ早く相見えてみたいからに他ならない。
 そして城の優秀な守り手だからこそ、その蟲を正面から叩き伏せることにも意味があった。
 全ては戦いに通ず。
「この剣と焔で薙ぎ払わせて貰おう」
 刹那、闇が獄炎に押しのけられて、周囲の暗がりが明るみに出る。
 床を蹴り前進したワズラの体から地獄が零れ、まるで長く棚引く尾となるように波打っていた。
 その残滓をなびかせながら、ワズラは一閃。
 静謐に、熾烈に。戦気漲る剣撃で焔の孤月を描き、まずは眼前に飛ぶ五体ほどの蟲を両断。ついで訪れる焔色の風圧に寄って跡形も残さず吹き飛ばす。
 その勢いを殺さず横に輪転し、水平から多少の角度のついた廻転斬撃。初撃で討ち漏らした個体と、ほんの僅かの時間差を置いてやってきていた後続の数体を、まるで暴風に見舞うように斬って捨てていた。
 獄炎交じりの戦意の吐息を微かに零し、ワズラは前方を確認する。
「やはりな」
 初撃で既に十体以上を屠ったが、予想通りそれでは焼け石に水。まだまだ個体数の減少など見られないし──それどころか、敵同士が積極的に共食いをすることで、その戦闘力を増大させていた。
 すなわち、時間を置けば置くほど不利になる。
 その内に、焼け石に対して水を垂らす暇すらなくなるというわけだ。
 だがワズラは焦らない。
 敵の戦闘力が増しているとはいえ、一体一体が脅威となりうるには時間がかかる。こちらに不利な状況とはいえ、それは今すぐに訪れるわけではないのだ。
 とはいえこちらも一瞬で敵の殲滅はできないが──。
「ならば、同じ時間をかけてこちらがより強くなればいいだけのこと」
 ワズラは戦闘開始時より、僅かにその獄炎の密度を増していた。
 敵が肉を喰らって強くなるのと同じ、否、同等以上の速度で。焔は滾り、刃は研ぎ澄まされ、熱気は強くなる。
 戦獄龍永戦(エンドレス・デッドエンド)。
 戦闘狂の本能が齎すそれは、敵と戦い続けることで戦闘力が増えるというシンプルにして強力な能力。
 焼け石が熱いなら、それよりも熱い温度を以て打ち砕けばいい話。
 同時にワズラは敵の捕食をつぶさに阻害するよう、共食いに入ろうとする敵を見つければ切り裂き、貫き、散らしていく。
 蟲が群れで寄り集まっていると見れば、足下から炎を爆発させ、熱気で灼け焦がしてまるごと消失させてみせた。
 こうすることで、敵の戦力増強速度はワズラを超え得ない。
 故に、蟲の選択できる最終手段は──。
「俺の肉を喰らうか」
 数で押すように飛びかかり、誰あろう敵であるワズラそのものを捕食しようとしてきていた。
 攻撃と自身の増強、それを兼ねた最終手段、だが。
「喰らいたいなら、獄焔をも呑み込んで見せろ」
 焔が燃え盛り、陽炎に空間が歪む。
 ワズラの膚は何よりも熱い地獄に守られ、鉄壁だった。
 この肉を喰らえないのなら、ただ焔が飲み込むだけ。ワズラが振り払うまでもなく、触れた蟲は灰となって朽ちていった。
 気づけば奥部は近い。
 ワズラはその先に存在するものを心待ちに、闇を照らしながら歩んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。幸い、この場には多くの猟兵がいる。
護りは彼らに任せて、私は敵の殲滅に専念しましょう。

…空気があるけれど風が無い閉所ならば。
この術で一網打尽にしてあげるわ…。

他の猟兵に前衛を任せ、第六感が殺気や危険を感じたら、
即座にその場から離脱するように心がける。
“精霊石の宝石飾り”を使い目立たない精霊の存在感を捉え、
吸血鬼化して【血の教義】を二重発動(2回攻撃)

…闇の精霊、水の精。暴食の蟲を喰らう死の霧を此処に…。

生命力を吸収する呪詛を宿した“闇の霧”を広域に放ち、
群れが増殖する毎に力を溜める闇属性攻撃を行い、敵群をなぎ払うわ

…数で私を止める事は出来ない。
さぁ、出てきなさい。この湖に巣食うもの。



 水は流れるけれど、風の動かない場所だった。
 水底の広間は空気が閉じ込められた檻。
 闇の世界が静かなのは知っているけれど、じっとしていると柔らかな銀の髪も全く揺れず──やはり外とは違うと、リーヴァルディは実感する。
(……それでも、音が耳に痛いほどなのは)
 ふと視線を前方にやって。
 そこに見えたのは数多の蟲だった。
 静謐の部屋だからこそ、それが耳朶を煩いほどに叩く。同時にこの部屋は決して狭くない。多方向からかかられればきっと、厄介極まりないだろう。
 けれど。
(……ん。幸い、私以外にも多くの猟兵がいる)
 ならばこの群団にたった一人で立ち向かう必要はなかった。
 リーヴァルディは愚直には攻めず、護りを前面の仲間に任せることにする。
 丁度護りに秀でた陣を敷いている仲間もいるから、立ち位置に間違えさえしなければ敵がこちらにまで向かってくることはない。
 その上で、後方から敵の殲滅にかかればいいのだ。
 リーヴァルディは精霊石の宝石飾りに優しく触れて、目立たぬ精霊の存在感を捉える。そして同時に牙を研がせ瞳を明滅させ──吸血鬼と成った。
 そのまま、行使するのは限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)。
「……闇の精霊、水の精。暴食の蟲を喰らう死の霧を此処に……」
 瞬間、ゆらり。
 大気の動かぬ世界に、漂い始めるものがあった。
 揺蕩う黒色。広がる暗色。
 精霊のマナが、吸血鬼のオドが、合わさり交わることで生み出された“闇の霧”。
「……空気があるけれど風が無い閉所ならば。この術で一網打尽にしてあげるわ……」
 揺らめくそれは、形なきもの。
 さりとて無風の中では流されること無く、真っ直ぐに広がって蟲の群れを包み込む。
 生命力を吸収する呪詛を宿した霧は、その一端に触れるだけでも蟲には強力過ぎる程のもの。闇色に覆われた羽は朽ちて散り散りになり、胴体はやせ細って肉を失い、最後には命が干からびるように消滅していった。
 その間にもリーヴァルディは、近づく気配を感じれば下がることを忘れない。そうして護りに重きを置きながら、同時に攻撃を続けることで前進を始めていた。
 こうなれば長々とはかからない。
 群れの増殖は続いていた。けれどそれごと覆い尽くすように霧を展開すれば──敵は増えても直後に死に絶えてゆくからだ。
「……数で私を止める事は出来ない」
 奥へ進み、気配の只中へやってきたリーヴァルディは、呼びかけるように言った。
 ──さぁ、出てきなさい。この湖に巣食うもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『蒼竜の異端神ウォルエリス』

POW   :    我こそが水なり
対象の攻撃を軽減する【超圧縮した水で出来た身体】に変身しつつ、【渦巻く大海流のドラゴンブレス】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    「水の巨大竜巻」で攻撃しつつ、その中を泳ぐ
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
WIZ   :    天覆い地砕く波濤
単純で重い【召喚した津波】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガルディエ・ワールレイドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●水の化身
 城の最奥にあるのは、巨大な水たまりにも似た水中への入り口だった。
 中庭と言える水没した自然の中央に繋がるだけの、ただの大穴。
 だが、そこに気配の全てはある。
『貴様らが侵入者か──愚かなことを』
 それ以外に何もない空間から、声が響いて周囲が鳴動する。
 水がせり上がったかと思うと──そこに巨大な竜の姿があった。
『我こそが、水なり──』

 それは自然現象の具現として顕れた異端の神だった。
 水そのものを自身の属性とし──ただ世界を水の領域で包もうとしている。
『元来、生物とは水より生まれしものだった』
 蒼竜は言って、半身を水に沈める。
 風もないのに大波が立っているのは、その竜が水を生み出し、水路を通して湖へ送っているからに他ならない。
『ならば、生物が水域から離れるのは退化ではないのか?』
 水こそが命の本質なら、全ての生命は水中にあるべきと、竜は云う。
 ──故に、全てを水に沈めるのだ。
 この大穴から見える中庭は、いわば理想の環境のモデルとして竜が作り出したものだろう。
 世界の全体を、このように魚や海藻、水中生物に満ちた環境へと変えようとして。
『この城は良い隠れ家だったが、いずれ沈めるつもりだった。その時が一足早く来たようだ』
 邪魔をするならば貴様らも水に沈むがいい、と。
 竜は巨大な水流を生み出し、空間を水で満たし始めた。

 猟兵達は周囲を見渡す。
 ここは大きな正方形の部屋。だが、刻一刻と水で満たされつつある。
 蒼竜は常に中庭へ繋がる水中にいる状態で、攻撃するときにはこちらも水中に入るか、水中にまで及ぶ能力を使うする必要があるだろう。
 ここにいれば呼吸はできるが、それもいつまででも、というわけにはいかない。城も崩れつつあるために、迅速な行動が必要だ。
駆爛・由貴
【エルフの部屋】
うへーどんどん水が増えてくぜー…帰っていい?
しゃーねぇ、給料分は働くかねー

つーわけでボアネルのUCと俺のUCを組み合わせて行くぜ
圧縮空気を搭載した風属性のペンシルロケットを津波のど真ん中に打ち込んで爆破
デカい風穴を爆風で開けたら、ボアネルのUCで氷のトンネルを作る
タイミングは俺に合わせろよ、ボアネル
トンネルが出来たら俺のエヴァー・トラッシュに魔力を通して加速
ダッシュで一気に駆け抜けるぜ

クッソ寒いなオイ!
水に住めってんならもうちょっと快適な温度を頼むぜ!

出口に着いたらオンモラキを展開
ビームランチャーで敵の身体を打ち抜いたら
そのままロケットで爆撃だ

あんまりカッカしてると体に毒だぜ!


ボアネル・ゼブダイ
【エルフの部屋】
水が満たされていく前に奴を討たねばなるまいな
…尻尾を巻いて逃げる事は出来んぞ、由貴

津波は脅威だが、私と由貴の技を合わせれば突破できるだろう
UCを発動
氷結属性の薔薇を由貴のロケットと共に放ち
津波に風穴を開けると同時に爆破
周囲を凍らせて敵まで続く氷のトンネルを作り出し
崩壊前にダッシュで走り抜ける

ここの水は少々冷たすぎるな
温めさせてもらおう

辿り着いたら敵にフランマ・スフリスを突き刺し
炎を最大まで燃え上がらせて傷口から沸騰させる
怯んだら爆破属性の薔薇を投げつけて追撃する

生物とは水から生まれた
その言葉に間違いはない…が、子はいずれ独り立ちするものだ
ならばそれを見守るのが親の役目であろうよ



 轟々と低い音が響いていた。
 色彩の薄い灰色の空間に深い透明色がなだれ込んでいる。巨大な穴、そして壁の亀裂からも流れ始めてきた水だ。
 そう長い時間を置かず、この空間を、そして城の全体を征服するだろう。
「うへーどんどん水が増えてくぜー……」
 既に足元が浸かる程になっているそれを、由貴は見下ろしてちゃぷりと足踏み。
「……帰っていい?」
「いいや。尻尾を巻いて逃げる事は出来んぞ、由貴」
 ボアネルはぐるり、周囲を見渡して現実を言い渡してみせる。どちらにしろ、逃げ場となるような場所はあるまい。
「水が満たされていく前に奴を討たねばなるまいな」
「……まーそーだよな」
 由貴は軽く息をつきつつ、それでもすぐにしゃっきりと表情を戻した。
「しゃーねぇ、給料分は働くかねー」
 視線を大穴へ注ぐ。
 大きく波立っているその奥には、巨大な蒼竜の姿が垣間見える。水中を回遊して流れを溜め込み、津波を生み出して攻撃してくるつもりだろう。
「正面から喰らったら、流石にやばそうだなー」
「何、私と由貴の技を合わせれば突破できるだろう」
 ボアネルは言ってみせると、掌に鋭い冷気を生み出し始めていた。蕾が開花するように、それは徐々に花の形を取り始めていく。
 そこで丁度、蒼龍が膨大な水音を上げ鳴動。強大な質量を伴った津波を放ってきた。
 透明な大波が二人を、空間を飲み込まんとする──そこで二人は視線を合わせる。
「タイミングは俺に合わせろよ、ボアネル」
「判っているさ」
 直後、由貴がウィザード・カリオペ。ゴーグルでの誘導レーザーを放ち、そこに大量のペンシルロケットを発射していた。
「ど真ん中だ──喰らえ!」
 水塊の中心に飛び込んだ無数のロケットが、その一点で強烈な爆破を起こす。
 波が泡立ち、爆散したように穴が開く。
 無論、水の塊であるが故に、一瞬後にはその穴も消え去ろうとするが──同時にボアネルがそこへ氷を放っていた。
 大きく咲き誇る氷の薔薇は、冷気の花風を起こすように氷晶を散らし波を低音にする。それにより、波に空いた大穴がそのままの形で凍結。まるでトンネルのような状態で固定されていた。
 ぱり、ぱり、と、巨大な軋みが響く。
 白い煙を上げて、そこに現れたのは蒼竜までの道のりに他ならない。
「──由貴」
「ああ、行くぜー!」
 同時、由貴は身を包むパンクスジャージに魔力を通し、自身の重量を軽減。まるで風の如き速度の動きを可能にさせていた。
 そのままトンネルに飛び込むと、一気に疾駆。駆け抜けて竜へと肉迫していく。
 この間にも氷には罅が入り、崩壊が着々と進んでいた。水は流れ込み、リアルタイムに二人の足元に溜まっていく。
「クッソ寒いなオイ! 水に住めってんならもうちょっと快適な温度を頼むぜ!」
 由貴はそれでも止まらず、オンモラキを展開。方向を真っ直ぐに向けてビームランチャーを放っていた。
 水中に開いた世界に、突き抜ける白色の奔流。それは一直線に竜に命中し、その体の一端を撃ち抜いていく。
『──』
 竜が僅かにぐらついた、そこへボアネルも迫っていた。
 靴が浸るほどになった水、そして周囲を見回してから──焔抱く美しき十字剣を竜へ突き刺す。
「ここの水は少々冷たすぎるな。温めさせてもらおう」
 そのまま刃を引き抜かず、炎を最大まで燃え上がらせていた。
 傷口が沸騰し、その熱波が竜の全身にも伝わっていく。竜は唸るような音を上げて見下ろした。
『水は神にして母。貴様らはそれに抗うというのか』
「生物とは水から生まれた……その言葉に間違いはない。が、子はいずれ独り立ちするものだ。ならばそれを見守るのが親の役目であろうよ」
 だからこそ、手を下そうとしてくるなら抗うのみだと。
 ボアネルは惑わず言ってみせると、至近から爆破属性の薔薇を投げつける。
 巨大な衝撃に竜が水中に後退すると、由貴も同時に近距離からロケットを放っていた。
「ま、そーういうことだ。とにかく、あんまりカッカしてると体に毒だぜ!」
 爆破の波状攻撃。
 二人に迫りくる水ごと吹き飛ばす爆風は──竜の体にも巨大な穴を穿ち、その威力で水底へと巨体を煽っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
【狼の巣】で参加

【POW】

「楽しい竜狩りの時間だぜ」

新たな煙草に火を点けて【ドーピング】
同時に【破魔】の力を纏いながら曹長にも差し出す
予想はしていたが、ちと相性が良くねェな、こっちは全員が火属性絡みと来たモンだ

「リィの"ビックリ箱"に期待してるぜ?」

ガジェットは敵に最適な変化をするって話だからな
そんな会話をしつつ間合いを取ると、

「始めるぜ、ロックンロール!」

バラライカを叩き込んで【挑発】【おびき寄せ】る
防御は【盾受け】で【時間稼ぎ】だ
二人が万が一の時は猟犬レオンが【かばう】

銃で厳しいなら黒剣を抜く

【鉄血の騎士】を発動

黒剣の刃が凍りつくような音で哭いて紅く染まる

「白兵戦かよ。曹長、援護を頼む」


リィリィット・エニウェア
【狼の巣】で参加
チガねーさん
リーダーと呼びます

「おっけー!目指せドラゴンキラー!」
と意気込んで突入
「進化か退化かなんて、遠い未来の人が決めるんだよ
 無駄にスケールの大きいこと言ったって誰も怯まないんだから!」
でもこっちのステージじゃないことは確か、二人に託して
まず【情報収集】だ

満たされる水や戦いの余波で壊れる城を利用するよ
【破壊工作】【地形の利用】【物を隠す】【罠使い】
ワイヤー、爆弾に水流を利用して瓦礫を流したり……とセッティング
時たま【援護射撃】で二人を援護するよー。き、気持ちだけ
準備が出来たらガジェットショータイム!

【誘導弾】【範囲攻撃】【吹き飛ばし】
リィ式ピタゴラスイッチ!本邦初公開!


チガヤ・シフレット
【狼の巣】で参加だ

おおぉ!
こうでなくっちゃ、これくらい面白い奴でなくっちゃあなぁ!
竜が相手とは楽しくなるじゃないか
全力で行くとしよう!

水が相手じゃ、銃弾は相性が悪いか!
脚部兵装を水中用に切り替え、水中でも高速機動。飛び込んでいくぜ
水中ならこっちが鈍ると思ったか?
これが進化、進歩、科学の力だ、ざまぁみろ!

そして、とっておき!
ガントレットの魔導コアを開放、【属性攻撃】を雷や氷に変えて適宜使い分け殴る!

【衝撃波】を纏った殴打と、魔力の【一斉発射】で竜をぶちのめしてやろう!
「任せろ、ザザ! 大物相手に殴り合い出来るとは楽しくて仕方ないな!」

「リィ、爆破するなら私に構わず派手になぁ!」



 畝る大波、跳ねる飛沫。
 密閉空間に溢れる洪水と、水中に沈んだ巨大なシルエット。震動と低い音、徐々に崩れ行く城の軋み。
 激しい音の暴流が耳朶を叩く中、チガヤはマゼンタの瞳を爛々とさせてその敵影を見つめていた。
「おおぉ! こうでなくっちゃ、これくらい面白い奴でなくっちゃあなぁ!」
 敵対する存在が竜と知り、そこにあるのは好戦的な喜色のみ。竜が相手とは楽しくなるじゃないかと、浮かべるのは期待感だった。
 なるほど、と呟くザザも煙草を取り出し、新鮮な煙で流動する力と破魔の作用を刷新。チガヤにも一本差し出しながら微かに口の端を持ち上げてみせた。
「楽しい竜狩りの時間だぜ」
「うむ、全力で行くとしよう!」
 煙草を受け取りチガヤが言うと、リィリィットも拳を天に突き上げて。爛漫に意気込み。
「おっけー! 目指せドラゴンキラー!」
 そのまま気合十分、戦いへ舞い込もうとする。
 とはいえ、愚直に進んでもいけないとザザは冷静に見取っている。敵は今水中に沈んでおり、容易には手が出せぬ状況だ。
「水の奥か。予想はしていたがちと相性が良くねェな」
 こちらは銃撃に爆撃、火属性に絡んだ能力であるし、対地対空に比べ水中は物理的にも威力を発揮しづらいのが事実だった。
「──ま」
 それならそれでやりようはある。
「リィの"ビックリ箱"に期待してるぜ?」
「……うん! 任せて!」
 リィリィットも、こっちのステージじゃないことは理解しているつもりだ。
 けれど勝機も、利用できるものもゼロじゃない。
 だから明朗に、こくりと頷いて。きっと期待に応えるものを用意してみせると胸を張ってみせた。
 ザザもよしと頷くと、バラライカをくるりと一回転。手元にしかと携えて、その銃口を水面に向けていた。
「始めるぜ、ロックンロール!」
 波音にも負けぬほど、ド派手な銃声を響かせ連射。水面に小さな爆発を幾つも作るよう、弾丸を間断なくばらまいてみせた。
 威力は軽減するも、その弾速をもってすれば、水中の多少の距離を弾丸は真っ直ぐ奔る。そうなればダメージはほぼゼロに近くとも──蒼竜にとっては自ら仕掛けない限り防戦一方になるだろう。
 誘われるように、水面近くまでやってきた竜は──そのまま巨大な水の体へ変貌。海流を含んだブレスで空間の高域を薙ぎ払ってきた。
「……ったく、とんでもねェ威力だな!」
 しかと防御態勢を取りながら、それでもザザは空間の端近くまで後退している。水とはいえ、そう何度も受けきれるものではないだろう。 
 ただ、敵は確かに水面近くまで近づいていた。ザザはその機を逃さず射撃。確実に弾丸を撃ち込んでいく。
「……やっぱ、火力に任せた攻撃じゃ効果は今一か?」
 加えて、薄くとも水の壁がある以上は弾速の減衰は否めなかった。
 即断したザザは、黒剣を抜き放つと鉄血の騎士(ジークフリート)。自身の血液を沸騰させ、その一部を代償に刃に力を注ぎこむ。
 するとその刃は凍りつくような音で哭いて、紅く染まった。
 水に限らず、その鋭利さで切れぬものがあろうか。瞬間、ザザは間合いを詰め、浅い水深にいる竜へ直接の斬撃を見舞っていく。
 その一刀は確かに水の化身の膚を傷つけ、体の一部を水中に散らせていった。
『我は水なり。全ての源を討つというのか』
「仕事だからなァ、必要とあらば当然、斬るぜ?」
 ザザは轟く声にも衒わず言ってみせる。
 竜が浮かべるのは波音にも似た静かな忿怒だ。
『それも退化の徴か。如何な生き物も進化を嘯き水から出ねば、不要なことをせずとも済むというのに』
「進化か退化かなんて、遠い未来の人が決めるんだよ」
 と、後方から声を返すのはリィリィット。
 ビームの砲口を向けてエネルギーを収束。光の塊を撃ち出して水を吹き飛ばし、敵の表皮の一部を灼き払っていく。
「無駄にスケールの大きいこと言ったって誰も怯まないんだから!」
 そのままザザの援護をするようにときおり射撃を敢行しつつ──リィリィットは同時に周囲をつぶさに観察していた。
 単純な爆風では敵に深いダメージを与えられない。故にもっと物理的な威力が生める何かを仕立てる必要がある。
(となると、やっぱり石とかを使わなきゃ)
 崩れつつある空間の中では、瓦礫だけは大量にあった。
 それを利用することで単なる爆弾よりも効果的なものを作れないか──考えたリィリィットはすぐに行動を開始。水流のある溝に瓦礫を運び、更に石片と爆弾をワイヤーでつなぎ始めていた。
 その間に、敵が一時水中に逃げ込もうとするが──。
「私がいこう」
 即時に水に飛び込んだのはチガヤ。
 水中用に切り替えた脚部兵装を駆動。後方に空圧を飛ばすことで推進力を高め、一気に竜にまで泳いで近づいていた。
 同時、腕に換装させた黄金のガントレットの魔導コアを解放。眩い光を放っている。
 その瞬間、それは属性と魔力の力を帯びた強力な兵器と化す。氷属性で腕を包むことで速度と硬度を維持。強烈なまでの打突を打ち込んでみせた。
 衝撃波を伴った一撃は、竜を水面近くまで再び押し戻す。
 チガヤは水面から顔を上げ呵呵と割っていた。
「水中ならこっちが鈍ると思ったか? これが進化、進歩、科学の力だ、ざまぁみろ!」
『──最後には全て、水に還るのだ』
 竜は水の竜巻を起こし、その中を泳ぐことで上方から迫ってこようとする。
 ザザはその暴嵐に倒れぬようにしながらも、剣で突撃を受け止め、刺突。攻撃をかいくぐるように応戦してみせていた。
「白兵戦かよ。曹長、援護を頼む」
「任せろ、ザザ! 大物相手に殴り合い出来るとは楽しくて仕方ないな!」
 チガヤは尚朗々と声を上げ、跳躍して自らも竜巻へ侵入。高速度で泳ぎながら肉迫し、雷属性の一撃を叩き込んでいく。
 弾ける衝撃に敵が体を痺れさせると、ザザはそこへ斬り落とし。蒼竜を水に沈み込ませていった。
 体勢の崩れた今が、好機。
 竜を押さえにかかりながら、チガヤは声を上げた。
「リィ、爆破するなら私に構わず派手になぁ!」
「うん! 行くよっ!」
 リィリィットは高所に仕掛けたワイヤーを引き、まずは上方に仕掛けた爆薬を起爆。強烈な衝撃を与え、直下に設置していた瓦礫を爆砕。その衝撃を利用して、さらに真下に仕掛けておいたもう一つの石塊を加速させた。
 二本目のワイヤーを中心に通されたその石は、その道筋通りに地面の方向へ超高速で飛来。水たまりとなっていた場所に凄まじい物理衝撃を齎す。
 水が弾けると、生まれるのはそこと直接繋がっている溝への推進力。爆発的な力で水流が加速すると、その後方に設置された爆薬も同期して発火。さらに水流を勢いづけるように爆裂した。
 弾丸をも凌ぐ速度となった水流に乗るのは、巨大な瓦礫の塊だ。
 砲撃のような状態で水面に突入したそれは──どぱんと大きな音を上げて、水中の水の一部を除去してしまう。
 一瞬後には、揺り戻されるように水も戻るだろう。
 だがその前に、瓦礫が竜に衝突し──同時に、瓦礫のすぐ後ろに結び付けられていた爆弾が、水を介さない状況で竜の体内に放り込まれていた。
「発火!」
 リィリィットがスイッチを押すと、ゼロ距離で爆発。内部から苛烈な衝撃が襲い、竜に苦悶の咆哮を零させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
偉大なる水から離れて生きる種族は
既に衰退する道を辿っている
つまり、生存競争から自ら梯子を外すような愚かな我々は滅んでも構わない
…そういう解釈でいいのかな

しかしこういう考え方できないかな
我々は母なる水から手を離れ
独り立ちしようとしているんだ
愛し子の門出を晴れやかに送り出してくれないかな
大いなる水の神は慈悲深いと信じているよ

詭弁にもならないような主張を並べ立て
此方への怒りでも嘆きでもいい
少しでも集中力を欠けさせた状態で攻撃させたい
攻撃されたら敵と自分の間に
脱出用に準備した圧縮させた空気を挟み緩衝材にして直撃を避ける
崩れた足場は水を凍らることで対応
攻撃を耐えぬけば隣人で反撃しようか



 水が全てを喰らおうとしている。
 湖底城最奥の空間に、滂沱の洪水が流れていた。石壁の裂け目、大穴からの波、そして竜自身の生み出す無限の水量。
 セツナは視線をそっと周囲に這わせて状況を確認する。
 部屋が水で埋まるまでには時間がある。憂う点があるとすれば、敵の攻撃からの逃げ場自体が少ないことだった。
(だからこそまともに攻撃は受けられない、か)
 故にセツナは愚直に攻めず──まずは敵の言葉に返すよう、口を開く。
「偉大なる水から離れて生きる種族は、既に衰退する道を辿っている。つまり、生存競争から自ら梯子を外すような愚かな我々は滅んでも構わない、と」
 そういう解釈でいいのかな、と。
 問いかけるように伝えると、蒼竜はその言葉に鳴動するように応えた。
『その通りだ。だが、滅ぶというよりは還るのだ』
 全てが水に戻り、正しい輪廻に戻っていく。
『それこそがあるべき状態だからだ』
「そう。でも──こういう考え方できないかな」
 と、セツナは一歩だけ歩み寄る。
「我々は母なる水から手を離れ。独り立ちしようとしているんだ。ならば、愛し子の門出を晴れやかに送り出してくれないかな」
 それは詭弁にもならないような主張だという自覚もあった。
 しかし、この敵を相手に言い負かそうなどとは元より思っていない。ただ怒りでも嘆きでも、何かの感情を生ませることができれば。
 そうして集中力を欠かせる事ができればそれで良かった。
「大いなる水の神は慈悲深いと信じているよ」
『子が過ちを犯したなら、それを導くのが神であり、母なる存在の役目であろう』
 竜の言葉は不理解への憐憫に似たものを含んでいた。
 同時に津波を渦巻かせ、強大な質量の塊として撃ち出してくる。
 けれどそこには確かに感情が先行したような、微かな動きの澱みもあって──それこそがこちらの狙い通り。
 セツナは真正面の位置から、準備していた圧縮した空気を挟むことで緩衝材とする。水の勢いが弱まったその一瞬、それるように直撃を避けていた。
 この間にも足元は崩れつつあるが、自身の足場となるところは凍らせて固定することで事なきを得ている。
 そうして体勢を整えたセツナは──眼前の空間を明滅させていた。
「その力を利用させてもらうよ」
 あくまで声音は柔和なままに。
 この敵を骸の海へと導くのもまた、自身の役目かもしれないと思いながら。
 仮の隣人(コピーキャット)──津波に交じる魔力、その概念、力を想像の力に転化し、竜にも似たキャラクターを創造。流線型の体で波を滑るように走り出させていた。
 水属性を有していながら水をかいくぐる力を持つそれは、水中に入っても容易に減速しない。そのまま竜に取り付き、体の一部を鎌の如き鋭い水の刃に変貌させていた。
「では、そのまま頼むよ」
 声に応じて一閃、隣人は淀むこと無く鋭利な斬線を奔らせて──竜の尾を刈り取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
水が命の本質なのは同意しますが、蓄える星自体がなくなることもあります。星の海の出身としては進化、退化ではなく選択肢として水域から離れるのを許容して頂ければ嬉しいですね
騎士としては、人々を脅かす貴方を討たせて頂きますが

(水中戦装備の●水泳で水中戦)
●暗視、センサーでの●情報収集から体躯や口の動きを●見切り、ブレスを●ランスチャージで高速移動することで回避

水中発砲は構造的に各一回が限度ですが、十分
頭部銃器で●スナイパー技能で頭に発砲、ノーダメージの弾丸で油断させ肩部銃器でUCを発射、頭部で炸裂させ液体の身体を凍結させ、●怪力のランスで●なぎ払い●鎧砕き

宇宙を漂う氷の塊を貴方に見て頂きたかったですね



 暗がりの空間に、淡い光がちらつく。
 それは亀裂の入った天井から水が零れ──その中に遥か彼方からの月光の残滓が差しているからだ。
 上方だけでなく、壁も床も、城から水底の瓦礫へと変貌しつつある。
 眼前の蒼竜は、最後にはこうするつもりだったのだろう。
 あらゆる空間を水に還すのだと。
「全ては水より生まれる、ですか」
 トリテレイアは機巧の視覚から周囲の環境を読み取り、声を零す。
 異端の神たる敵の言葉に対し言い淀むこともしないのは、何より自身の体が、自身を生んだ世界がその反証でもあるからだろう。
「水が命の本質なのは同意しますが、蓄える星自体がなくなることもあります」
 命は多様な形を取り時代と世界を生きてゆく。その結果、水と、そして大地とも離れた環境にたどり着くことだってあるのだから。
「星の海の出身としては進化、退化ではなく──選択肢として水域から離れるのを許容して頂ければ嬉しいですね」
『あくまで水から離れることを良しとするか』
 竜は言いながら、それでも一度言葉を続けない。
 或いはトリテレイアを、自身の識る命とはまた違ったものだと理解したからかもしれなかった。
『──ならばどうする。退くか』
「いいえ」
 トリテレイアは毅然と首を振り、一歩前に出る。
「人々を脅かす貴方を討たせて頂きます──騎士として」
 瞬間、そのまま前進し大穴へ。自重を活かすように着水して水中へと潜り込んでいた。
 蠢く竜は、敵意を顕してだろうか、巨大な水流を巻き起こしながら水中を移動し、トリテレイアを撃退しにかかり始める。
 一瞬、体の制動が聞かぬほどの流れが生まれる、けれどトリテレイアは暗視を駆使し、センサーを利かすことでその動きを予測。即座に対応して動きを見切る。
 直後に放たれた巨大なブレスも──流れから着弾速度を予期し、それよりも早く真横へランスチャージを敢行することで回避してみせた。
 そのまま推進力を上げて逆に竜に接近し、頭部と肩部の銃器を向ける。
(水中発砲は、構造的に各一回が限度ですが──)
 今はそれで十分。
 まず的確に狙いを定め、頭に射撃をしてみせた。
 水の体にはほぼダメージが通らない、だがそれでいい。
 敵が油断をしたところで──直後に肩部銃器から超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)を発射。
 瞬間、その弾頭が弾けることで薬剤が飛散し、分子運動を低下。急速凍結の作用を齎してその身体を凍結させていた。
『……!』
「こちらが本懐です」
 驚愕する敵に、構えるのはランス。
 それを以て、怪力を活かすままに一撃。強烈な薙ぎ払いをすることで──鱗を砕き、膚を破り裂いてみせる。
「凍ってしまえば、傷つけることは可能です」
 氷の欠片となって、竜の体の一部が散っていく。
「宇宙を漂う氷の塊を貴方に見て頂きたかったですね」
 それは叶わぬことでしょうけれど、と。トリテレイアはそれでも躊躇いなく、敵の命を削り取ってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネフラ・ノーヴァ
アドリブ、共闘OK。

竜と対峙するのはこれが初めてだ。
なるほど大した威圧感だ。しかしだからこそ戦いがいがあるというもの。
UC電激血壊で高速移動。水の攻撃速度なら避けやすいだろう。
攻撃には、刺剣の刀身を弾体とする超電磁砲を放つ。
水に変化するような身体に血が流れているか不明だが、あるようなら返り血を浴びてみたいな。竜の血などとても効能がありそうじゃないか、フフ。



 ぴしりと硬質な破砕音が響き、軽く震動が奔る。
 水滴がいくらか垂れてきたかと思うと、それがすぐに水流になり、部屋に流れる洪水の一部となっていた。
「刻一刻と、壊れつつあるな」
 ネフラはひび割れた天井を仰ぎながら、それでも焦燥を浮かべてはいない。
 此処まで泳いでたどり着いた経験があるからこそ、水に放り込まれるくらいなら大したことではないと判っていた。
 とはいえ──。
「竜と対峙するのはこれが初めてだな」
 滝のように水の流れを零して、水中からせり上がるように姿を見せる蒼竜を、ネフラは見据えて呟いている。
 猟兵達の攻撃によって少なくないダメージを負った竜は、それでも未だ死には至っていない。一度水上に大きく出ながら、こちらを睥睨しているようだった。
「なるほど大した威圧感だ」
 その姿を見上げながら、しかしネフラは好戦的に笑んでみせる。どこか艶美ですらあるその相貌は、今このときこそ闘争を求めてやまなかった。
 故に、竜がその水量を増して巨大な竜巻を渦巻かせても惑いはしない。
 ネフラは自身に超伝導性の血紋を纏うことで、ばちりと光を明滅させる。
 そしてその剣先にまで激しい雷電の力を溜め込んで──自身までが雷光になったかのごとく高速移動を始めていた。
 電激血壊(ブリッツ・ブラッド・ブレイカー)。
 瞬間、風圧すら追いつかぬ速度で跳躍し、敵が放ってきた竜巻の一端を回避。そのまま円周状に動くことで、水の流れとの相対速度を殺してみせる。
 こうなれば、竜の姿は止まった的のようなもの。
 ネフラは腕を軽く引き絞ると、刺剣に雷光を収束。その剣そのものを弾体として、腕を突き出しながら超電磁砲を放っていた。
 雷色の光の直線が突き抜ける。
 苛烈な電磁力が水を伝い、竜の体にも直撃。その威力で深い痺れを齎していた。
『これは……』
「如何な竜と言えど、弱点を突かれればただでは済むまい」
 ネフラの声に、竜自身も否定をする事ができない。
 ただ、距離を置いては危険と思ったろう、高速の水流に自身も乗るようにしてネフラへの距離を詰め始めてきた。
 それは脅威でもあるが、ネフラにとっては好都合なことでもある。
「自ら近づいてきてくれるなら、何よりだ」
 何よりも血を求めるが故に。
 フフ、と笑いを零すネフラは逃げず、再び刃に雷光を溜め込んで待ち伏せ。
 敵が加速して突撃してくると見れば、バックステップして速度差をなくし──至近から電磁砲。刺突を打ち込むように、ゼロ距離から竜の体を穿ってみせた。
 水に変化はしていなかったため、それは肉体そのもの。衝撃によって血潮が散り、ネフラの頬を蒼に色づかせた。
「竜の血などとても効能がありそうじゃないか」
 声音は何処か喜ばしげに。返り血を浴びた相貌で、ネフラは笑ってみせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
確かに、全ての命は水から生まれた…でも、生物は進化という可能性を求めて水から巣立ったのよ。それを退化と呼び、妨げるつもりなら…貴方はここで朽ちるしかないわ

【ブラッディ・フォール】で「決行、集団人質解放作戦」の「神鳴りのフランチェスカ」の服装へ変化。
【雷帝の誇り】で戦闘力を増強し、【エレクトロニック・インフェルノ】で攻撃速度(回数)を増加。【雷神の見る夢】で巨竜をも討ち滅ぼす無敵の神鳴り(カミナリ)を想像・創造し、水中にいる蒼竜に叩き込み、焼き尽くすわ!水の身体に変身しても雷を防ぐことはできないでしょう

敵の攻撃は【見切り、第六感】と【残像】残る程の速度で回避や【念動力】を球状のバリアにして防ぐわ



 ぱしゃん、と小さく床を跳ねて瓦礫の上へ。
 刻々と上がりつつある水位から逃れ、フレミアは崩れた壁が作り出す足場に移動していた。
「本当に全部を水に沈めるつもりみたいね」
 この空間が水で一杯になる頃には、湖底城も大半が崩れ去っていることだろう。既に轟々と遠くからくぐもった崩壊の音が聞こえている。
 奥に控える竜はそれを当然だというように声を返していた。
『これが最期に行き着く先だ。あらゆるものが水に始まり水に終わっていく』
 自らの正当性を疑わぬ、独善的な言葉。
 けれどフレミアは涼しげに首を振ってみせる。
「わたしはここで終わるつもりは、ないけれどね」
 言うと、瓦礫を蹴って広い足場に跳躍。
 ひらりと着地しながら、同時に魔力で自身を包み始めていた。
 再びのブラッディ・フォール。
 宿す力は先刻とはまた性質の異なるもの。焔ではなく──雷の力。
 瞬間、フレミアは白光に撫でられたように全身を眩さで包むと別の衣装へと変貌していた。それこそ雷を自在に操るオブリビオンを降ろした姿。
「さあ、始めましょ」
 瞬間、暗がりの空間が、目もくらむ光量に満たされる。
 フレミアが落雷を落としたかのように発光。迸る電流を纏う形で、劇的に自身の力を高めていたのだ。
 同時に紅の瞳も雷色に輝かせ、超常的なまでの機動力を獲得する。
 その頃には竜が凄まじい水量の津波を放ってくるが──フレミアは文字通りに雷が奔るかのごとく、超高速の飛翔でそれを悠々と躱していた。
 密閉された薄闇を、縦横に翔ける金色。
 竜はそれで津波の効果が薄いと見たか、一時水底の奥に潜り込もうとする、が。
「意味のないことよ」
 フレミアは手を翳して雷を招来。強烈な閃光を瞬かせ、水底にまで衝撃を伝わせた。
 水中の全体が煌き、竜は微かに苦悶の声を零す。
 堪らず水面から空中に出る竜は──傷ついた身体で、訴えるような声音だった。
『何故、水に還ることを良しとしない。それこそが本来の姿であるというのに』
「全ての命は水から生まれた──それは確かに正しいのかもしれないわ。でも」
 と、フレミアは首を振っていた。
「生物は進化という可能性を求めて水から巣立ったのよ」
 手に溜め込む光は、雷を圧縮させたかのように一層眩い。
 竜はそれでも抵抗するように波を放ってくるが、フレミアは念動力を球状のバリアにして衝撃を逸らしていた。
「それを退化と呼び、妨げるつもりなら……貴方はここで朽ちるしかないわ」
 だから焼き尽くしてあげる、と。
 フレミアが光を放つと、竜の全身に黄金色の衝撃が奔り、焼け焦げた音と共に煙が上がる。そこへフレミアは、躊躇せず連撃。表皮を焼き、水を蒸発させ、命を刮ぎ取っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七篠・コガネ
この空間は暗そうです
視覚デバイスを【暗視】モードに切り替えておきましょう
水を親と表現するのならいずれ水から巣立っていく
貴方のそれは傲慢の押し付けです

ギリギリ飛べる範囲を飛びながら
敵がブレスを吐こうとしたら
その口へ向けてすかさず『code-Nobody』から【一斉発射】
感電しながら口の中大火傷しちまえばいいですよ!
ダメージを負っている間も水の身体に変身したままでいられるでしょうか

敵がUC解除したのを視認した後、急降下
その目を狙ってホークスビークぶち込んでやるとします!
昔の人はこう言いました!“井の中の蛙大海を知らず”
知らないのですか?水は恵み。どの生物も誰も水を捨ててなんかいません



 正方形の空間が、徐々に崩れ始めていく。
 歪な切れ目に水が雪崩込んでくると、薄暗かった空間が一層暗色に染まるようだった。
 コガネは金の瞳を僅かに明滅。視覚デバイスを暗視モードに切り替え、素早く十分な視覚を得ている。
「それにしても、このままじゃ本当に水没しちゃいそうです」
 詳らかになった視覚で判るのは、時間の猶予がそれほどないことだ。
 もって数分。或いはもっと短時間で城は崩壊するだろう。そうして空間の全てが水中となったら、あの蒼竜の独擅場となるのに疑いはない。
(その前に何とかしないと、ですね)
 きゅっと唇を引き結び、コガネはプラズマジェットを起動。浅い高度を保った状態で飛行を始める。
 それを見た蒼竜は──水面から姿を顕して水の体へと変貌。畝るように蠢きながら宙のコガネへと狙いを定めていた。
『空にあるものも、いずれは水に沈む運命にある』
 ならばそれを看過はしないというように。戦意を露わにしながらブレスを放とうと大口を開ける。
 真正面から喰らえば、只では済むまい。
 だが、この瞬間こそコガネの待っていたものだ。
 code-Nobody──その背に内蔵されている機巧を翼のように広げ、正面に向く砲口として展開する。
 同時、収束したエネルギーに荷電させて眩い雷光を燦めかせていた。
「水を親と表現するのなら、そこから生まれた子たちはいずれ水から巣立っていくものです。それすら許さないというのなら──貴方のそれは傲慢の押し付けです」
 刹那、光の砲撃を竜の口に目掛けて一斉発射する。
 滾る白熱。迸る雷鳴。
 熾烈なまでの衝撃が、内部で放射状に炸裂した。それが水の身体全体へ光を瞬かせ、膨大な水量を蒸発させ吹き飛ばす。
 如何な神と言えど、それを無傷で耐えるだけの力は有していない。蒼竜は瞬間的に能力を弱め──その身体を水状態から元の姿へと戻していた。
「見せましたね、最大の隙を」
 敵の体は空中にある。
 その上で変身も解けてしまえば、もはや水の介在しない只の敵。コガネはプラズマの出力を最大にして噴射、急降下するように真下へ加速していた。
 目を見開きながら、竜は自由の利かぬ体で呻きを零す。
『我を……水を、否定するというのか──』
「──昔の人はこう言いました! “井の中の蛙大海を知らず”」
 コガネは声を投げながら左腕を大きく掲げた。
 そこに装着されたパイルバンカーが廻転を伴い、高速で駆動を始める。
「知らないのですか? 水は恵み。どの生物も誰も水を捨ててなんかいません」
 何かを捨てようとしているのは、そちらの方だと。
 真っ直ぐに言ってみせるよう、コガネはゼロ距離に迫るとともにホークスビーク──パイルを射出し、打ち込んだ。
 竜の瞳に命中した衝撃は、確かにそれを穿ち貫く。竜の咆哮が劈き、水底にまでその苦悶を伝えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワズラ・ウルスラグナ
俺が通って来た水路の元はこうなっていたか。成程な。

鯱や鯨の事例もある。陸からまた海へと言うのも善いが、そもそもオブリビオンが世界に居着いては未来も何も無い。
もしそれが骸の海を豊かにする為の策なら、疾く討たねばならんな。

水中戦は道中と同じ。
翼と尾を水掻きに、焔で空気を作りつつ基本は剣で戦う。

用いるのは戦獄龍火輪。
周囲を干上がらせ、敵には焔と水蒸気爆発を浴びせつつ水中から空中に放り出し、空中戦で追撃を仕掛ける。

ブレスは周囲の水を気化爆発させてある程度逸らすように誘導。
その上で竜もブレスも干上がらせる。
水は苦手だが、味方に付けてしまえば心強い。減じた火力を補って貰おう。
不得手を得手に変えて押し通る。



 巨大な落石があった。
 ふと瞳をそちらにやると、天井の一部が破砕して水流に飲まれているのだと判る。敵によって破砕が始まった湖底状は、既に自壊を始めているようだ。
 ただ、それによってより判ることもある。
 城の中心に鎮座する中庭が全ての水路の起点だったということだ。それは崩れた壁の中の端々を見ても確認できた。
「俺が通って来た水路の元はこうなっていたか。成程な」
 ワズラは零れる獄炎で足元の水を泡立たせながら、周囲を見やっている。
 竜はここから水を送り出し、徐々に周囲を自身の望む環境へと変えていたのだろう。
「それこそ全てを水に還すため、か」
 一歩進み中庭を見据える。
 猟兵の攻撃で傷を負った竜は、庭の奥深くに一時退避しているようだった。逃げるつもりなどはないだろうから、機を見てこちらに仕掛けにくるつもりだろう。
 無論それを望み通りにさせるつもりはない。
 水中戦ならば行ってきたばかり。床を踏みしめたワズラは躊躇わず大穴へ跳躍、そのまま中庭へと飛び込んでいった。
 全身が水圧にさらされても速度は落とさない。翼と尾を使って水流を払い、素早く泳いで蒼竜への距離を詰めていく。
 呼吸は水を焔で蒸発させることで行い、止まることなく。敵の至近に迫ったワズラは、水圧ごと叩き伏せるように大剣の一撃を見舞っていた。
 龍神が如き威容の剣、その一撃に異端の神竜すら無傷ではいられない。鱗を削がれ、竜は微かに体を畝らせた。
 それでも水流のブレスをワズラへ放とうとしてくる、が。
 それも容易にはやらせない。
 竜が鳴動してこちらを向く瞬間。ワズラは全身の獄炎を耀くほどの高熱に滾らせ、眼前に放っていた。
 戦獄龍火輪(アグニス・アウトレイジ)。
 それは僅か一瞬で数万度にまで達する、炎の災禍。
 敵が温度の変化に気づく頃には、その場の水が気化されて炸裂。
 苛烈な水蒸気爆発が中庭の一部を干上がらせるばかりではなく──抗えぬ程の慣性力を生み出して竜の体を吹き飛ばし、部屋内の空中に放り出していた。
 そうなれば、ワズラも空を翔ぶだけ。
 元の空間に飛び出し、翼を駆って空中戦。剛速で竜に接近し、猛烈な膂力による剣撃で鱗を斬り飛ばしていく。
 体を水にして壁との衝突を避けた蒼竜は──それでも苦悶混じりの声を零した。
『それが貴様の答えか。水ではなく、大地や空を選ぶと』
 或いはワズラの勇壮なる戦いぶりを見ての言葉。
 ワズラはふむと一度だけ頷いた。
「鯱や鯨の事例もある。陸からまた海へと言うのも善いだろう。だが」
 と、直後には獄炎をゆらゆらと揺らめかせる。
「そもそもオブリビオンが世界に居着いては未来も何も無いからな」
 それは単純な真理だった。
 竜が如何に生物を語ろうと、既に竜自身が今現在の存在から外れた、埒外のものなのだ。
 居るだけで世界を崩壊に導くのであれば、竜自身が何よりも討たれるべき存在。
 故にワズラは迷わず。竜が再度放ってきたブレスも全身の地獄を以て気化爆発させていた。
 そのまま温度を下げす燃え盛らせれば、水の体を持つ竜自身までもが干上がっていく。
 ワズラ自身、水は苦手だったが、味方に付けてしまえば心強い。
 そうして不得手を得手に変えて押し通る。
 勝利はそうやって齎されるもの。
 苦痛を露わに、竜が体の状態を元に戻せば──ワズラは肉迫。その剣を以て、竜の喉元を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。生命が水から出たのは退化したんじゃない。
揺り籠から出て、自らの足で歩きだしたのよ。

…その歩みを止めさせる訳にはいかないもの。
水底に沈むのはお前よ、蒼竜の異端神。

水没する前に風のオーラ防御と“血の翼”を再構築、
水中でも呼吸を可能にして空中戦の要領で移動するわ

第六感が捉えた敵の気合いや殺気の存在感を
魔力を溜めた両眼に残像として暗視して先読みして、
敵の水属性攻撃を紙一重で見切り隙を突いてUCを発動

…確かに水化すれば攻撃が通らない。
だけど無駄よ、私には通じない。

生命力を吸収する呪詛を纏った掌打で敵を掴み、
吸血鬼化した怪力任せに敵をなぎ払うと同時に
傷口を抉る血杭を放つ2回攻撃で仕留めるわ



 いつしか、溢れる水は床を隠すほどの水位に達していた。
 崩れた天井からは滝のような水量が流れ込み、そこはもう部屋と言えるだけの形を保っていない。
 或いは水底に残った小さな空気の溜まり場。
 一方、竜は再度中庭の奥部に泳ぎさり、体勢を整えようとしていた。
 少しだけ待てば城は全て瓦解する。そうなってから湖全体を使って戦うつもりなのだろう。
 けれどリーヴァルディはその静謐の相貌を変えない。崩壊する水中要塞の中で、そっと中庭を見下ろしている。
「……思い通りには、ならないわ」
 ふわりと髪を揺らがせ風を招来。自身を空気で纏いながら、血の彩の双翼を再構築。水中に飛び込むとそれを羽ばたかせ、高速で移動し始めていた。
 飛翔するように暗色の空間を進み、そのまま敵を目指す。
 竜は体を水にしているようだったが、水中の澱みと水流からその位置を読み取るのは難しいことではない。
 すぐに揺れ動く影としてその竜の姿を捉えていた。
 蒼竜は、水中に声音を反響させる。
『水中で、水を拒むか。それも退化の証か』
 水から出ていった他の全ての存在と同じように、と。竜は嘆いてみせるようだった。
 しかし、リーヴァルディはそっと首を振るばかり。
「……ん。生命が水から出たのは退化したんじゃない。揺り籠から出て、自らの足で歩きだしたのよ」
 自然が、命の巡りが選んだ世界の形を、事実として諭してみせるように。
「……その歩みを止めさせる訳にはいかないもの。だから──」
 水底に沈むのはお前よ、蒼竜の異端神。
 静かで、けれどぞっとするような声音。
 その言葉に竜は如何な心を抱いたか。半ば荒れ狂うかのように敵意を露わにし、流動し始めていた。
 だがリーヴァルディは第六感を鋭敏に働かせ、既に攻撃が来ることを察知している。
 瞬間、魔力を籠めた両眼でその気配を捉え、残像として暗視することで動きを先読みする。
 そのまま映り込んだ像の動線からそれるようにして──放たれたブレスを紙一重で避けきっていた。
 竜が微かに戦慄く、その間にリーヴァルディは翼を駆って接近している。
 それでも竜は逃れられると踏んでいたことだろう。体が水である以上、捕らえるのは簡単なことではない。その上で一瞬だけ隙を作れば、高速移動することで間合いを取ることくらいはできるのだから。
 けれど。
「……確かに水化すれば攻撃が通らない。だけど無駄よ、私には通じない」
 リーヴァルディは同時に、自身の手に濃密な呪詛を纏わせる。生命力を吸収するその力を以て、掌打を打ち込み水の体すらしかと捕らえてみせていた。
 ──限定解放・血の聖槍(リミテッド・ヴラッドパイル)。
 竜の驚愕が掌越しに伝わるまま、リーヴァルディはその力の一部を解放。吸血鬼化による怪力任せに巨体を薙ぎ払う。
 水中で大きく体勢を崩す蒼竜。リーヴァルディはそのまま離さずに鱗を捕まえた状態で、圧縮魔力による血杭を生成していた。
「お前がいなくとも、命は生きてゆく。だから終わりよ」
 傷口に突き刺さった血の聖槍は、そこから体内を貫き命を砕く。
 慟哭とともに弾けるような水流が生まれると──それが晴れた頃にはもう、異端の神は残滓もなく消滅していた。

●水に還る
 水底が鳴動し、大きな影が沈みゆく。
 ふと見上げると、中庭の天井も崩れてくるのを発見し──リーヴァルディは空気を纏ったまま取って返し、部屋に戻っていた。
「……城が崩れるみたい。この空間ももうもたないわ」
「そのようだな」
 ワズラは流れてくる水流を都度蒸発させながら、仰ぐ。
 周囲を見回すと既に城だったものの面影はなく。無数の瓦礫が湖の中の水流に飲まれていっていた。
「ここが最後まで残ってた場所って感じね。崩落に巻き込まれる前に脱出したほうがよさそう」
 フレミアが言うと、ネフラは惑わず頷いていた。
「そうしよう。斃すものは斃したし、ひとまずは脱出だ」
「最後もやっぱり泳ぐことになるんですね」
 既に半身が水に浸かった状態から、コガネは水中に入って推進し始める。
 リィリィットもぽーんと水に飛び込む。
「チガねーさん、リーダーも早く早く!」
「よし。では戻るとしようか。ザザも急ぐと良い」
「あァ、分かってるさ」
 顔を出すリィリィットに、チガヤが水中用装備のまま追随していくと──ザザも手早く荷物を纏めながら水中へ。来た経路を戻っていった。
 程なくして、水中にも響く程の轟音が鳴る。
 最後の空間も水と瓦礫に飲まれ、城は崩れた石山となっていた。
 属性の力で空気のボンベを作りながら、セツナはそれを暫し見下ろしている。
(あの水の神は──しっかりと、水に還っていったかな)
 少なくとも、骸の海より這い出て世界そのものを破壊に導くよりは──そちらの方が、あるべき輪廻の形だろう。
 セツナは水面へ視線を向けてゆっくりと高度を上げていく。
 皆が地上に出る頃には、トリテレイアも上陸していた。
「無事ですか?」
 皆を見回すと、全員から健常な声が返る。
 ポッドで上がってきた由貴も頷いていた。
「やー、それにしてもなかなか大変だったなー」
「ああ。ただ遣るべきことは、遣れた」
 ボアネルは湖を今一度見下ろす。そこはもう静かで、独りでに波が立つことも、不穏な空気を漂わせていることもない。
 崩れた城や石も、元々いた水生生物の棲家となってゆくだろう。
 夏らしい暖かな風が吹いて、波紋が立つ。月明かりを反射するそれは先刻より少しだけ静謐で、少しだけ美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月25日


挿絵イラスト