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エンパイアウォー⑯~畳返しにご注意を

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #風魔小太郎

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 とある地方、とある屋敷にておどろどろしく、力あるこえが静かにしかし激しさを持って空気を震わせる。
「ほう、とうとうここの場所が割れたか」
 それは巨大な体躯に数多の仮面を身に着け、絢爛な衣装を纏った『百鬼面・風魔小太郎』によるもの。彼は配下から猟兵がこの地に向かっているとの報告を受けるとそう言葉を発したのだった。
「だが奴らがここに向かって来るというのならば好都合。返り討ちにして風魔忍法『隕石落とし』を成功させるのだ」
 そう言うと小太郎は立ち上がり、複数ある腕を全て合わせると何事か、呪文の如くつぶやき始めると、一つの仮面と引き換えに闇よりも深い黒を纏った忍者の軍勢が召喚される。
「さあ行け、この屋敷を作り変えるのだ」
 その指示によって忍者は一斉に動き出す。屋敷は少しずつ、揺れ始める。外からでは分からないが、中では猟兵を迎え撃つための仕掛けが張り巡らされようとしているのだった。

 グリモアベースの一角、そこでは持ち込まれたスクリーンにデカデカと『小太郎発見』t映し出されており、何事かと猟兵が集まっていた。
「見て分かる通りだ。とうとう敵の幹部の一人、『百面鬼・小太郎』の居場所が判明した」
 ウィルトスはそう告げると集まった猟兵を見渡す。
「小太郎の潜伏先はある山間に位置する屋敷だ」
 そう言ってスクリーンにはサムライエンパイアの地図が映し出される。そこで山と山の間におおきな赤い丸がつけられており、ココ、と矢印が丁寧に引いてあった。
「偵察に行った者の話では最初はただの屋敷であったが、今では忍者屋敷と呼べる物に様変わりしているとのこと」
 そこまで言うと一旦言葉を区切り、ここからが重要なのだが、前置いて再び話始める。
「予知ではこの忍者屋敷に罠が張り巡らされていることが判明した」
 そしてスクリーンの映像は地図から、サムライエンパイアの内装によく使われている畳の画像へと切り替わる。
「これは畳という床材の一種なのだが、この下に罠が仕掛けられている場合がある。まあ踏むと発動する感じだな」
 そう言って今度は屋敷の大まかな見取り図へとスクリーンを切り替える。
「対策は各々に任せるが、この畳は屋敷の全てに使われているという訳ではない。畳の無い場所で仕掛けるという方法もとれるだろう。だが小太郎とて素直にそちらに向かう訳ではないということを忘れるなよ」
 そう言うと今度は『百面鬼・小太郎』の画像へと切り替わる。
「確認できている小太郎の戦法はいずれも手数を増やす類のものだ。油断をすればあっという間に食われるぞ?
 そう言いつつスクリーンでは小太郎が用いるとされるユーベルコードの詳細が映しだされる。
「今回の敵は紛うことなき強敵だ。皆が無事に戻れるよう祈っている。よろしく頼んだぞ」
 そう言ってウィルトスは頭を下げ、猟兵を戦場へと送り出すのだった。


峯雲
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 百鬼面・風魔小太郎は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 今回の判定は厳しめのものとなります。十全の対策をお願いいたします。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『百面鬼『風魔小太郎』』

POW   :    風魔忍法『風魔頭領面』
自身の【身に着けた『面』】を代償に、【召喚した風魔忍者の軍勢】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【忍者刀と手裏剣】で戦う。
SPD   :    風魔忍法『六道阿修羅面』
自身の【髑髏の面の瞳】が輝く間、【六本の腕で繰り出す忍具や格闘】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    風魔忍法『死鬼封神面』
【歴代風魔小太郎たち】の霊を召喚する。これは【極めて優れた身体能力を持ち、手裏剣】や【鎖鎌】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

美国・翠華
【アドリブ歓迎】
罠の位置は地図に書かれているかしら…
とりあえず罠の位置を注意して忍び足…それから暗殺スキルを利用して
周囲を警戒する…

戦闘では
相手が先制攻撃を仕掛けてくるなら、守りに入るしかなさそう。
なら敵の忍者の軍勢は逆に地形を利用して罠を起動させて
攻撃を妨げてみせる…
こちらのユーベルコードは後から仕掛けるタイプ…
先手を出されたとしてもきっと対応はできる…
敵忍者の攻撃を持っている武器で捌いて
その中でユーベルコードが発動したなら
突撃して倒しに行く。

死なせない…なら私は…
せいぜい楽しませてあげる



 遠江国坂宿の外れ、そこに最初に転移してきたのは美国・翠華(生かされる屍・f15133)だった。彼女の視界の先には『風魔小太』郎が潜むとささる忍者屋敷の表門があり、その門は開け放たれていた。それはどんな刺客であろうと返り討ちにするという『風魔小太郎』の絶対の自信を感じさせる様だった。
「罠だとわかっていても行かなくちゃいけないのよね……」
 それは猟兵としての義務か、それとも彼女の内に潜むUDCの思惑か。彼女はこの虎穴の中へと足を踏み入れるのだった。もっとも、その先に居るのは虎子ではなく虎であるのは確定しているわけだが。

「さすがに罠の位置までは書かれていないようね」
 翠華は屋敷の見取り図を片手に屋敷の内部を慎重に進んでいた。罠が仕掛けられているのは畳のある場所。可能な限り畳避けつつ、畳を踏む時には細心の注意を払いながら次の足を繰り出す。彼女の持つ技術により音もなく誰にも気づかれることなく小太郎の居所を探っていく。
 そろそろ屋敷のほとんどを探索し終えようかといったところで彼女は今まで見つけた部屋のどれよりも広い、大広間を発見する。
 大規模な宴会でも開けそうな畳張りの大広間、そしてその中央に人影を見つける。それは人型でありながら背格好は人間のそれを上回っている。その人影はただじっと身じろぎ一つせずに、仁王立ちをしていた。それは彼女が探していた人物、『風魔小太郎』に相違ないのであった。
 気づかれていない今ならユーベルコードで先制出来るか、その考えが翠華の脳裏を一瞬通り過ぎる。だが、首を振って思い直す。ここは敵の砦であり、いわば腹の中。手痛いしっぺ返しを食らうのは間違いないと。
「いくよ……」
 故に、彼女は誰にも聞こえることの無い小さな声でそう意気込むと、ナイフを構えると小太郎目掛けて一切の気配もなく一太刀にて暗殺せんと踏み込む。
 それは完全なる不意打ち、のはずだった。しかし、大広間に身体が入った瞬間に小太郎の巨躯は翠華の方へと向き直るのだった。
「来たな猟兵、信長様に仇なす不届き者め! 風魔忍法『風魔頭領面』」
 小太郎の動きはその巨躯に見合わず素早かった。その巨躯に見合う巨大な手で頭部に付けた仮面に触れるとそのまま握りしめ、原型が分からぬ程に砕いたのだ。砕かれた仮面の破片はパラパラと落ちていき、床に触れると伸び上がるかのように人型を作っていく。
「ゆけ! そして打ち倒せ!」
 現れた人型、風魔忍者の軍勢は大広間へと足を踏み入れた翠華へと襲いかかるのだった。
「それは知ってるよ」
 だが翠華に動揺はない。小太郎の動きは先制攻撃されるというところまで想定通り、彼女は自分目掛けて突っ込んでくる風魔忍者を前に大きく飛び退く。今まで一切立ててこなかった音を出しながら、大きく。
「しまっ……!」
 それは風魔忍者の誰が漏らした言葉だったのか。翠華めがけて突撃した風魔忍者は彼女が先程まで立っていた場所で大きく体勢を崩していた。理由は単純だった。そこには彼女が発動させないようにしていただけで体重が掛かったことを検知すると跳ね上がる罠が仕掛けられていたのだ。
「隙だらけ、よ」
 その隙を見逃すことなく翠華はナイフを振るう。風魔忍者は乱れた姿勢から忍者刀で防御を試みるが、翠華のナイフは過つことなく風魔忍者の急所を刺し貫くのだった。
「次……」
 まずは一人と、召喚された風魔忍者を手早く倒した翠華だったが、彼女の視線の先にはまだ多くの風魔忍者とその頭領風魔小太郎が控えているのだった。

 それは激戦だった。様子見と言わんばかりに小太郎は仁王立ちしたままであったが、風魔忍者との戦いは翠華に数え切れない程の傷を作っていた。
「ここまでのようだな。手ずから葬ってやろう」
 残った風魔忍者の数を幾人かというところで小太郎は翠華に話しかける。既に彼女は全身を赤く染めた死に体。荒く息を吐いており、動くのもやっとの有様。仕留めるのは容易いとの判断だった。
 一歩、二歩と翠華に近づく小太郎。もう一息で翠華の身に手が届く、そんな時だった。小太郎は翠華の身体を見て気づいてしまった。
「なぜ、その身体でまだ息があるのだ!」
 近くで見た翠華の身体、その身を赤く染める血液の出どころが人間の急所というべき首元であったのだ。常人では既に動くこともままならぬ重体。そこに何かしらの理由があると小太郎は訝しんだのだった。
 翠華は小太郎の驚愕混じりの問いかけには答えない。彼女は既に小太郎を見ていない。ただ幽鬼のように呟くのみ。
「死なせない……なら私は……」
 ――せいぜい楽しませてあげる。
 それは誰に向けたものか。その囁きとともに翠華は半死半生のその身を駆る。【名状しがたき被虐の代償】、彼女の持つ武器はそのユーベルコードにより威力を跳ね上げる。
 虚を疲れたのは小太郎であった。自らの常識外の行動によりその身は硬直してしまっていた。
 残る結果は一つ。
 小太郎の脇腹にナイフで出来た大きな傷が出来るのだった。
 翠華は小太郎の脇を駆け抜けるように切り裂くとそのまま屋敷の外へと走っていく。
 その身を操るは翠華の意思かはたまた……。
 ただ小太郎に痛手を与えたという結果は確かなものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

いやぁ、まさか本物の忍者屋敷に突入とはね!
どうしても時代劇とか見てた側からすりゃ、
ドキドキして仕方ないよ!
こういう所の定番としちゃ、鴬張りに畳返し。
畳の下に伏兵が、なんてのも常道だよな。
そういった『世界知識』?を活用しながら、
屋敷内に『地形を利用』できるポジションがないか探る。
裏を返せば、そこに戦力を集めているだろうからそこは避けるよ。
牽制の様に『マヒ攻撃』を込めた電撃を
それとなく屋敷内へ放射して。
圧倒的な手数の攻撃は
『激痛耐性』と『オーラ防御』で何とか凌いで、
致命打は食らわないように『見切り』たいね!
そうして攻め手が切れた時を見計らい、
【黄泉送る檻】を形成するよ!


レイ・アイオライト
畳を踏むと発動する罠、ね。それなら踏まないようにすればいいんじゃない?

●罠対策
『闇ノ足音』で背中の傷跡から漏れ出す影を足場にして空中に僅かに浮遊する。これなら罠は発動しないわよね。

●先制対策・反撃
わざと畳を踏むわ。そうすると、畳返しで罠が発動するでしょ?それを逆手にとって罠を敵たちの攻撃の壁にする。
その隙に反撃よ。
【黄昏ノ月輪】で幻惑の黒の蝶と光の鴉が屋敷内を埋め尽くす。それを見て幻惑に陥った軍勢は、風魔小太郎をあたしとして認識して襲いかかるわ。
その隙に『闇ノ足音』に纏わせた影をブースターとして神速の接近、魔刀で『暗殺』よ。
屋敷の罠が問題じゃないのよ……それをどう使うかってこと、よね。



 鈴虫と夏のそよ風の音が似合う、そんな山中に刃と刃がぶつかり、擦れる音が響く。それはかの忍者屋敷から響くものであり、戦いの火蓋が既に切って落とされていることを周囲の人々に告げ知らせていた。
「どうやらもう始まってるみたいだねぇ」
 そう囁くのは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)だった。彼女の視線の先には忍者屋敷の表門、ないし音の発生源であろう内部の戦場があった。
「そうね。それならここで無駄口を叩いている時間はないわ」
 そう素っ気なく返すのはレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)。彼女も同じように屋敷を見ていたが、多喜の言葉を受けて屋敷の敷地の中へと一足先に入っていく。
「おいおい、先走るなよ。せっかく同じタイミングで来たんだ。協力しないとねぇ」
 多喜はそう言いながらレイの後を追うように屋敷の中へと足を踏み入れる。二人の猟兵が屋敷の中へと進んでいる今尚も剣戟の音は止むことがなかった。

「こういう所の定番としちゃ、鶯張りや畳返しなんてのが常道だよねぇ」
 多喜は屋敷の中を慎重に音を立てずに進んでいく。時代劇を見ていた彼女にはどういう場所に罠が仕掛けられているのかが良くわかっていた。故に要所要所の罠を巧みに見抜くことが出来たのだ。
「まああなたには関係無さそうだねぇ」
 もっとも彼女の隣のレイにはその必要がなかった。何故ならば彼女は背中の傷跡から漏れ出る影、『闇ノ足音』によって僅かながらに浮遊することが可能だったからである。これにより足音は当然のこと、畳に仕掛けられた罠を発動する憂いがなかったのだった。
「当然よ。これぐらいのことは造作もないわ」
 そう言いながら彼女は周囲を仕切りに警戒する。罠の類を避けることは出来ても警邏に見つかってしまえばそれまでなのだから。
 しかしいくら警戒すれども警邏の姿はなく、遠くから響く剣戟の音のみが響くばかりであった。
「警備が誰もいないなんてね……きっと風魔小太郎は自信家に違いないわ」
 レイは思わずそうボヤく。それほどまでにこの屋敷は張り巡らされた罠の割に無防備であったのだ。
「それなら助かるんだけどねぇ。こっちの実力を見くびってるって訳だからね」
 多喜はそう言葉を返しながら慎重にしかし着実に進んでいく。既に罠の配置の大まかな共通性は割り出しており、進む速度は普段の移動速度と変わらないほどまでになっていた。
「小太郎はきっとこの先ね。早く辿り着いて加勢するわよ」
 多喜の動きがスムーズになったのを察するとレイは移動速度を更に早める。目指すべき場所は屋敷に入った時と変わらない。剣戟が鳴り響くその場所へ二人は移動するのであった。

 二人が小太郎の待ち構える大広間へとたどり着いた時、そこにはこちらに背を向ける巨躯、小太郎と赤く染まった畳張りの床があった。
「ッ!間に合わなかったか!」
 多喜はその惨状から最悪の事態を想像するが、それをレイがたしなめる。
「そうと決まった訳ではないわ。死体が無いということは離脱した筈よ」
 レイの瞳には赤い血痕が転々と大広間の外へと続いているのが見えており、既に離脱した後だろうと見切りをつける。
「ほう、また猟兵が入り込んでいたか。先程の猟兵は逃したが、今度はそう簡単には行かぬぞ!」
 話し声から二人の存在に気が付いた小太郎は二人に向き直る。その腹には大きなキズが付けられており、先程の戦いの勝者がどちらであったのかを二人に伝えてくるのであった。
「大口を叩く割にやられてるようだねぇ」
「一人にやられてるいるようでは倒すのはさほど難しくは無さそうね」
 二人の言葉はただ油断しているようにも見える。しかし彼女らの間にはある作戦があった一つは挑発によってこちらのペースに乗せること。挑発することであえて先手を打たせ、対処しやすくすることが狙いであったのだ。
「抜かせ、小娘共! その手の挑発には乗らんぞ!」
 そう言いながら小太郎は頭部の面に手を伸ばすと先ほどと同じように叩き割り、風魔忍者を呼び出す。そして風魔忍者と共に二人の猟兵へと襲いかかるのであった。
「それを乗せられているって言うんだよ!」
 多喜は向かって部屋全体に牽制がてら電撃を放射しつつ、小太郎へと向かっていく。これは事前の打ち合わせで決めていたこと。多喜は自らに襲い来る六本の腕に対して果敢に挑んでいく。迫り来る刃は拳で弾き、飛んでくる鎖鎌は逆に巻取って振り回す。多喜は巧みにこれを捌いていたが、ユーベルコードによって通常の九倍にまで膨れ上がった手数に対しては対処が難しく、次第に身体に傷を負っていった。しかしそれでも備わった痛みへの耐性とオーラによって小太郎の猛攻を凌いでいく。待てばチャンスが訪れると信じて。
 一方、レイは召喚された風魔忍者の相手をしていた。数で押してくる風魔忍者に対してレイはこの忍者屋敷という地形を上手く活用することで渡り合っていた。強引に迫り来る風魔忍者に対しては敢えて足元の畳を踏むことで畳を跳ね上げ、時に盾として、時に下から突き上げる矛として戦場の地形を活かし立ち回っていた。
「屋敷の罠が問題じゃないのよ……それをどう使うかってこと、よね」
 最初は勇み足で突撃していた風魔忍者も次第に慎重に立ち回らざるを得なくなっていた。そして攻勢が緩んだ隙をレイは見逃さなかった。
「全てを惑わす魔性の大群、現れなさい!」
その詠唱は大広間に影で出来た蝶の群れと光輝く鴉の大群を召喚し大広間の中を埋め尽くす。そしてそれらから漏れ出す魔力は風魔忍者を幻惑の世界へと誘うのだった。
「さあ敵はあちらよ」
 レイの指差す先、そこには多喜に苛烈な攻撃を仕掛ける小太郎の姿。風魔忍者はそれを敵だと認識しそちらに向かっていく。
「な、何をしている!」
 風魔忍者は手にした忍者刀でもって小太郎に組み付いていく。これには小太郎も対処せざるを得なかった。
「今がチャンスだねぇ!」
 そしてこの時を多喜は待っていたのだった。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 最初に牽制がてら散らした電撃を小太郎と集まった風魔忍者の周囲へと集めて巡らせる。そしてそれはサイキックブラストの檻となり小太郎と風魔忍者に叩き付けられる。
「し、しまった」
 サイキックブラストによって風魔忍者はほとんどが姿を消し、小太郎もまた檻に高速される。
「後は任せたよ」
「言われるまでもないわ」
 その言葉を言うか言わないか、多喜に言葉を掛けられたレイは既に小太郎の背後に立っていた。それは『闇ノ足音』による神速の高速移動。そしてその速度による魔刀の一撃が背中から小太郎を刺し貫くのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

火守・かこ
戦国の世に名高き風魔衆の頭領と死合えるなんざ正に僥倖ってな!

床下の罠の対策なら、ここは『 狐霊「赤狐」』の出番だ。狐の霊を先行させて、罠が起動するか否かを調べる。起動しない場所を選んで慎重に進んでいけば、そのうち風魔に辿り着くはず!

風魔の下に無事辿り着いた後は気合で勝負だ!
多勢が相手なら『金砕棒』を手に《怪力》と《薙ぎ払い》を駆使した範囲攻撃と、『絡繰刀』で対処する。絡繰刀は俺が手を触れずとも自在に動き回る妖刀だ、こいつに俺の目の届かない死角を守らせる。
忍者共をある程度捌いて隙が出来たら【真・侵掠せよ赤狐隊】で鎧武者の軍勢を召喚!
これで多対多だ。あとは乱戦に乗じて、小太郎に一太刀浴びせるのみ!


フィロメーラ・アステール
「畳を踏むと発動かー」
飛んでいるから踏まない。
って甘い話でもない?

【第六感】が危険察知したら回避する気構えはしておく!
【空中戦】技術があれば急な軌道変更もできるかな?

敵の攻撃には、召喚される忍者の数を逆手に取る!
【ダッシュ】や【スライディング】で合間をすり抜け!
【敵を盾にする】ように立ち回り、攻撃を阻害!

巻き添え覚悟で攻撃してくるかな?
念のため【オーラ防御】バリアも使おう!

逃げ回るだけじゃない!
隙を見て【念動力】で刀や手裏剣を【盗み】取る!
周囲に【空中浮遊】させ【破魔】のオーラで【武器改造】だ!

そして【残像】の速度でボスに接近!
【聖星辰・飛龍段波】発動!
改造武器を念動で【投擲】して攻撃するぞ!



 激しい戦闘音が響く忍者屋敷。その廊下を三つの影が駆け抜けていく。三つの影の内二つが先行し、後を一人が追うという形だった。
「畳を踏むとは発動するかー、なら飛んでいるから踏まないって話だよな?」
 そう言うのは先行する二つの影のうちの一つ、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)だった。彼女はその背にある翼で浮遊しながら前進していく。
「それなら俺も飛べれば良かったぜ」
 そのフィロメーラの気軽な呟きに皮肉混じりの応答を返すのは火守・かこ(戦好事家・f15141)だった。彼女は自らが従える『狐霊「赤狐」』を先行させ、罠がないことを確認した場所を選びながら進んでいく。
 会話を時折挟みつつも先行するフィロメーラは自らの五感を研ぎ澄ませ、伏兵に対応出来るようにしていたが、一向に伏兵が襲いかかってくる気配はない。
「この分だとこの先も伏兵は居無さそうだぜ、かこちゃん」
 もっとペースを上げても大丈夫そうだぜ、と罠に気を付けながら進む火守にフィロメーラは声を掛ける。
「それが出来たら苦労しないんだぜ、あとかこちゃん言うな」
 そう言いながらも火守はフィロメーラに合わせて、スピードを上げる。行く手を阻むものはなく、二人はこの喧騒の元、『風魔小太郎』が待つ場所へと進んでいくのであった。

 二人が大広間へと辿り着いた時、既に小太郎は深手を負っていた。小太郎の側には猟兵とおぼしき二つの人影があり、いずれも疲労し負傷していた。
「ここで選手交代だ。ラッキーなそこの二人はさっさと下がるんだぜ」
 などと良いながらフィロメーラは小太郎の注意を引くように前に出る。先に戦闘を行っていた猟兵は口々に感謝の言葉を述べるとその場からすぐさま離脱していった。
「むう、新手か」
 その場を去る猟兵を口惜しそうに睨みつけながら、小太郎は新しく現れた二人の猟兵の方へと向き直る。胴体からは多くの血が流れ出ており、動きは明らかに鈍っていた。
「瀕死の死に体と侮ってくれるな!」
 そう言いながら小太郎は頭部の面を一つだけ残し、それ以外の全てを叩き割った。
「どれほど傷つこうとも召喚された手勢は万全、これこそが風魔の真髄よ!」
 その言葉と共に大広間を埋め尽くすかのように大勢の風魔忍者が召喚されたのだった。
 二人の猟兵はそれを見るやいなや、その風魔忍者の大群の中に敢えてその身を投げるのだった。

「戦国の世に名高き風魔衆の頭領と死合えるなんざ正に僥倖ってな!」
 かこは手にした『金砕棒』を振り回しながらそう独り言つ。数多の戦場を駆け抜けてきた彼女にはこの程度の危機など慣れたものなのだろう。その怪力でもっていとも容易く風魔忍者を薙ぎ払っていく。風魔忍者は正面からでは分が悪いと背後から攻撃をしかけようとするが、その背後には『絡繰刀』が控えており、宙を自在に舞いながら近づく風魔忍者を切り裂いていく。それは予定調和のようであり、フィロメーラの方を気にかける余裕さえあった。
「脆い、脆いぜ!おいフィロメーラ、そっちの手伝いに行こうか?」
 かこは多数の風魔忍者によって分断され、姿が見えなくなったフィロメーラの方に声を掛けるが、返ってきたのは想像よりも遥かに軽い言葉だった。
「余裕だぜ。かこちゃんの方こそ手伝いはいらないかー?」
 それもそうだろう。フィロメーラは風魔忍者の間を自由自在に動き回りながら攻撃を受けないように立ち回るだけでなく、念動力でもって盗んだ刀や手裏剣を破魔のオーラで改造するとそれを宙に浮かせながら周囲の風魔忍者を切り裂くのだった。
 かこはフィロメーラの声を聞き、少し考え込んだ末に風魔忍者の壁の向こうに控える小太郎をちらっと見ると、どこか合点がいったかのように大きく頷く。
「こいつら自体はさほど問題じゃあねえ。一気にケリをつけるぜ、合わせろフィロメーラ!」
 そう言いながらかこは周囲の風魔忍者を大きく薙ぎ払うと大きく息を吸い込み、屋敷を震わせるかのような大声で高らかに叫ぶ。
「ありったけの気炎をぶち上げろ!俺たちが!!!赤狐隊だあああああああ!!!!!」
 それは合戦の始まりを告げる号砲のようであった。
「さあ行くぜ赤狐隊!」
 彼女の周囲にはいつの間にか紅蓮の炎に包まれた鎧武者の軍勢が立っており、その言葉に呼応するかのように一斉に抜刀し風魔忍者との合戦を始めるのだった。

風魔忍者と赤狐隊の間を縫ってかことフィロメーラは小太郎の目の前へと立っていた。
「なぜ、だ。何故こうも容易く我が風魔忍者を突破することが出来るのだ!」
 それは小太郎の絶叫の様な言葉。自身の実力に絶対の自信を持っていた彼には今の状況を受け入れることが出来ないのであった。
「分からないなんて、その面は飾りかー?」
 フィロメーラはおどけた様な、しかし何も考えていないような調子で言葉を返す。答えているようで何も答えていないフィロメーラの言葉を継ぐようにかこが言葉を紡ぐ。
「てめぇはさっき面を一つだけ残した。つまり、その面以外は代償としても良いぐらい大した価値がないってことだよなあ?それは代償としては軽いもんだって自分の中で考えていたんだよなあ?」
 その確信をついた言葉に小太郎は思わず怯む。
「くっ、ならばこの面を代償に……!」
 そう言って最後に残った面に手を伸ばすが、それは大きな隙。残像を残す程の速さでフィロメーラが小太郎の背後へと回る。
「不覚……!」
 そうしてフィロメーラに気を取られたのが小太郎にとっての致命的な隙となった。彼は直様二人から距離を取るべきだったのだ。
 小太郎の正面ではかこが大太刀を振りかぶっており、背後ではフィロメーラが【聖星辰・飛龍段波】を放たんと改造した武器を投擲していた。
「必殺の、オーラ攻撃だぁー!」
 どこか気の抜けたような声とともに致命の一撃が二方向から同時に叩き込まれ,
それは過たず小太郎の心臓と首を穿つのだった。
 小太郎の身体がゆっくりと倒れていき、それとともに召喚された風魔忍者は消えていく。小太郎の身体が大地に臥した時、そこには二人の猟兵と赤狐隊の武者達のみが残っており、勝鬨を大きく上げるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト