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エンパイアウォー⑯~受け継がれし百鬼面

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #風魔小太郎

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「エンパイアウォーへの参戦に感謝します。リムは現在の戦況を報告します」
 グリモアベースに集った猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「皆様がエンパイア各地でオブリビオンの討伐を続けた結果、信長に仕える『魔将軍』の一人の所在が判明しました」
 魔将軍は信長軍に属するオブリビオンの中でも最高クラスの幹部たち。その中にはエンパンパイアの歴史にその名を刻んだ偉人、名将たちも名を連ねている。
 もし、この戦争に勝利したとしても彼らを討ち損ねることになれば、逃げ延びた魔将軍は戦争後もエンパイアの何処かで暗躍を続けるだろう。
「単なる強敵というだけではなく、戦後のエンパイアの未来を考えても、決して無視することのできない驚異です。リムはこの機に乗じた確実な撃破を要請します」
 そう言ってリミティアは作戦の詳細について説明を開始した。

「今回、所在が判明した魔将軍の名は百鬼面『風魔小太郎』。サムライエンパイア史上最強と謳われる伝説の化身忍者です」
 代々の風魔小太郎は己の先代を喰らうことで襲名し、力を強化していたという。百鬼面の異名ともなっている『面』を用いた忍法は、時に天変地異をも引き起こし、破滅的な被害をもたらす。
「その力は、既に目の当たりにした方もいるでしょう。エンパイアの各地を襲った風魔忍法『隕石落とし』も、彼の仕業によるものです」
 歴代の風魔小太郎からその名と共に受け継がれてきた力と技と忍法。その恐ろしさは、猟兵たちにとっても油断ならぬ強敵として立ちはだかる。いかにしてその攻撃を凌ぐか、計画と対策は必須となるだろう。

「風魔小太郎の拠点は『風魔忍軍の忍者屋敷』です。戦場としては十分な広さがありますが、内部には忍者屋敷らしい様々な仕掛けが施されています」
 予知によれば、今回の風魔小太郎との戦場となるであろう部屋には、細くて見えづらい鋼の糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。この仕掛け自体はユーベルコードではないので、引っ掛かったとしても猟兵なら大きなダメージを受けるような驚異ではない。だが、強敵との戦いの最中においては邪魔になってしまう。
「この仕掛けへの対策も考えておけば、思わぬところで足元を掬われる危険も減るかもしれません。敵の拠点で戦うのですから、備えはいくらあっても困らないでしょう」
 万全の警戒と対策のうえで挑んで欲しいと猟兵たちに告げて、リミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、風魔小太郎の忍者屋敷への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 織田信長に従いし魔将軍、第一に現れしは百面鬼『風魔小太郎』!
 忍者屋敷にて潜む彼の撃破が今回のシナリオの目標です。困難な闘いが予想されますので、以下の注意事項にも目を通したうえで、失敗も覚悟の上で挑戦してください。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 百鬼面・風魔小太郎は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 それでは、皆様のプレングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『百面鬼『風魔小太郎』』

POW   :    風魔忍法『風魔頭領面』
自身の【身に着けた『面』】を代償に、【召喚した風魔忍者の軍勢】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【忍者刀と手裏剣】で戦う。
SPD   :    風魔忍法『六道阿修羅面』
自身の【髑髏の面の瞳】が輝く間、【六本の腕で繰り出す忍具や格闘】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    風魔忍法『死鬼封神面』
【歴代風魔小太郎たち】の霊を召喚する。これは【極めて優れた身体能力を持ち、手裏剣】や【鎖鎌】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルカ・ウェンズ
了解したわ。忍者屋敷を破壊すればいいのね!
【行動】
どこかの軍隊を真似て遠くから【怪力】で持ち上げた岩を投げつけたり、昆虫戦車で攻撃して忍者屋敷を破壊するのを狙うわ。すると敵は屋敷から出てきて『風魔頭領面』で先制攻撃してくるはずだから、昆虫戦車にも遠くから攻撃してもらって、私は宇宙昆虫に【騎乗】して敵に囲まれないように逃げながらオーラ刀を銃に変形させて【空中戦】で風魔小太郎や風魔忍者の軍勢と戦うわよ。

とにかく敵に囲まれないように逃げながら攻撃して、縁切りで風魔小太郎に反撃するわ。面が危険な物だと分かっているから風魔小太郎を攻撃するときは防御されたり避けられたりしても意地でも面を狙って攻撃するわ。



「了解したわ。忍者屋敷を破壊すればいいのね!」
 敵の潜む忍者屋敷の手前に転移したルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)は、近くにあった適当な大きさの岩をおもむろにひょいと持ち上げる。
 屋敷の中に仕掛けがあるのなら、突入する前に屋敷ごと壊してしまえばいい。そんな力技の解決法を思いついた彼女は、戸口目掛けて力いっぱい大岩を投げつけた。
 その淑女のような見た目に違わぬパワー。確かにこの勢いで投げつければ、木造の屋敷くらいは破壊できそうなものだが――。

「――随分と無作法な客が来たものだ」

 大どこからともなく姿を現したのは、幾つもの面を身に着け、歌舞いた衣装を纏った異形の怪人。その六本の腕は、ルカの投げた大岩をがっしりと受け止めていた。
「我こそは百鬼面『風魔小太郎』。信長様に仇なす猟兵……貴様らの方からやって来るとは都合が良い」
 パキン、と男が身に着けた仮面の一つが、音を立てて砕け散った。
 それと同時に召喚されるのは、忍び装束に身を包んだ風魔忍者の軍勢。
「これぞ風魔忍法『風魔頭領面』なり」
 征け、と指し示す頭領の命に従って、忍軍が一斉にルカへと襲い掛かる。

「来たわね」
 藪をつついて蛇を出す。この攻撃を予想していたルカは、使役する「宇宙昆虫」の背に乗って空を翔ける。
 風魔忍者の軍勢は、上空の敵に向かって手裏剣を矢のように次々と放つ。とにかく囲まれないようにと逃げ回るルカの身体に幾つもの手裏剣が突き刺さり、鮮血が飛沫を上げる。
 ルカは顔をしかめながら得物の「変形式オーラ刀」を銃に変形させ、漆黒のオーラの銃弾で風魔忍者の心臓を撃ち抜く。だが、数人の忍者を倒したところで総体としての敵軍の動きには一切の乱れがない。
「忍務の為ならば命なぞ軽いもの。それが我ら風魔忍者の心得よ」
 一人ひとりの力は恐るべきほどではない――だが風魔小太郎の元で統率され、個の感情を捨てた忍軍は、一糸乱れぬ連携で徐々にルカを追い詰めてゆく。

 ――だが、ルカとて無策でただ逃げ回っていたわけではない。
「今よ!」
 血に塗れた仕事人が号令すると、遠方に配置していた「昆虫戦車」が砲撃を放つ。
 轟音と爆風が吹き荒れ、着弾点にいた風魔忍者が纏めて吹き飛ぶ。軍の隊列が乱れた隙を突いて、ルカは全速力で宇宙昆虫を飛ばした。
 狙うはただ一人、大将のみ。猛スピードで白兵戦の距離まで飛び込みながら、銃から刀の形状に戻ったオーラ刀を構え、一閃――。
「温いわ」
 だが、風魔小太郎は忍者刀を振るい、オーラの刃を受け流す。その技量、流石は魔軍将の一人に列せられるだけはあり、面越しに感じられる態度には余裕さえあった。
 それでもルカは諦めず、何度防がれ避けられようとも執拗に、変形するオーラの刃を遮二無二振るい、狙うはただ一つ――。
「そこよ!」
 何度目かになる【縁切り】の斬撃が、風魔小太郎の身に着けた面の一つを真っ二つに切断する。
「……やってくれる」
 敵の忍法は仮面を使用したもの。その面が危険な物だと分かっているなら、まずはそれを断ち、敵の力を少しでも削ぐ。それがルカの狙いであった。
 破壊された面を見て、不快気な唸り声を上げる風魔小太郎。その苛立ちに呼応するように、体勢を立て直した風魔忍者の軍勢が再び襲い掛かる。
 ここまでか、と判断したルカは傷ついた宇宙昆虫に命じて、自らも負傷を押さえながら戦域から離脱していった。

「やはり油断ならぬ相手か……だが、来るならば来い。我が忍法の全てを尽くして、貴様らを迎え撃ってやろう」
 数多の風魔忍者たちを引き連れて、屋敷の中に消えていく風魔小太郎。
 戦いはまだ、始まったばかりであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ユウキ・スズキ
「上等だ、命の削り合いといこうぜ似非忍者」

見切り、情報収集、第六感、戦闘知識、視力、暗視、世界知識、地形利用に空中戦

そして俺自身のSPD
全ての能力を総動員して、奴が疲弊するまで攻撃を回避し続ける
最悪でも激痛耐性で数発は耐えられる筈だ
味方の居ないあいつの一度の攻撃は単純計算54発
たかが、54発だ
「人間をナメるなァッ!」
相手の骸の面の輝きが消えたのを確認後、攻撃に移る
ヴァルクューラシステム起動。
強化された反応速度と空間認識で持ちうる全ての火力を一斉発射
休む暇すら与えん。全弾叩き込んでやる
それでも息があるなら、SPDとPOW。つまりは全力の拳でその仮面のひとつでも叩き割ってやる
アドリブ連携歓迎。



「さあ来たぞ。ここをお前の墓場にしてやる」
 全身に幾つもの銃器と硝煙の臭いを帯びて、風魔の忍者屋敷に最初に乗り込んだのはユウキ・スズキ((元米国陸軍)少尉・f07020)。軍隊仕込みの技術と知識で張り巡らされた数々の仕掛けを見切り、その機械の義眼が見据えるは百面鬼・風魔小太郎。
「それは、貴様がここで死なない自信があってのことか?」
 六本の腕をゆらりと構え、小太郎の身に着けた髑髏の面の瞳が妖しく輝く。
 風魔忍法『六道阿修羅面』。風魔の頂点に立ちし忍、その恐るべき死の技が牙を剥く。

「上等だ、命の削り合いといこうぜ似非忍者」
 その身に埋め込んだ令和壱式義眼【Ráðgrið】の機能をフル稼働させながら、ユウキは風魔小太郎を挑発する。
 戦場を駆け抜ける中で得た数多の経験と磨かれた第六感、そしてこの戦場に仕掛けられた鋼糸の罠。その全てを総動員して、敵の猛攻を躱してみせようと――なれど相手も魔軍将、そう易々と攻略できる手合いではない。
「阿修羅の技、とくと味わえ」
 一閃――としか知覚できぬ早業で、繰り出される忍者刀による九度の斬撃。辛うじて反応したユウキはその場から飛び退き致命傷を免れるが、間髪入れずその喉首を鎖鎌の刃が襲う。
 咄嗟に身体をひねり、切られたのは薄皮一枚。だが体勢を崩したところに、巨腕による猛打が叩き込まれる。
「ぐ……っ」
 たとえ避けきれずとも数発なら耐えきる覚悟でいた。それでも予想以上に重い衝撃が、鍛えられたユウキのボディを揺らす。
 人間を超えた異形より放たれし怒涛の連続攻撃が、彼の生命を削り取っていく。

 ――だが、これだけ強力な忍法には、相応の代償がある。
 僅か数呼吸のうちに54度の連撃。それは風魔小太郎自身の生命を削る技でもある。
「――一度で仕留めきるつもりだったが」
 髑髏面の瞳から光が消える。それでもまだ生きているユウキの姿に、小太郎は感嘆めいた言葉を漏らす。
 凌いだというよりは、どうにか致命傷を免れたと言うほうが近い。だが、満身創痍と成り果ててもなお、ユウキの目から光は消えていなかった。
「人間をナメるなァッ!」
 咆哮と共に【ヴァルクューラシステム】を起動。自身の機械化部分と脳を直結する事で、反応速度と空間認識を超強化。スローモーションとなった世界で、男は全武装のトリガーを引く。
 自動小銃「シュバルトライテ」が火を噴き、銃弾の雨が襲い掛かる。小太郎は咄嗟に射線上から身を翻すが、すかさずユウキはコートの裏から小型短機関銃「レヒツ」「リンクス」を二丁持ちして追撃。
 機銃掃射で標的の足が止まったところに、左腕の義手に内蔵した12G散弾銃と、右腕で構えた対戦車ライフルの70口径劣化ウラン弾【Eir】を叩き込む。
「ぐぉぉ……っ!!」
 休む暇も与えない銃撃の嵐はさしもの風魔小太郎も防ぎ切れるものではなく。全弾を叩き込んだユウキは駄目押しとばかりに踏み込むと、握りしめた拳をありったけの力で突き出す。
 パキン、と甲高い音を立てて、忍びの身に着けた面がまた一つ破壊される。

 ――その拳打を最後に、ユウキはがくりとその場に膝を突いた。
「……これが、猟兵の力か。だが貴様はここまでのようだな」
 全身に幾つもの弾痕を刻まれ流血する風魔小太郎。しかしユウキの受けたダメージはそれ以上。敵から受けたダメージのみならず、【ヴァルクューラシステム】によって肉体の限界を超えた攻撃を繰り出した反動が、彼の身体を蝕んでいた。
 ここではまだ、斃れるわけにはいかない――ユウキは残された力を振り絞って立ち上がると、仲間に後を託して戦場を離脱していくのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シズホ・トヒソズマ
※連携・アドリブOK

【SPD】

連続攻撃はデザイアキメラの磁力反発バリアによる【オーラ防御】で鉄製の忍具を主に防御
格闘はヴィアイスによる予測演算【見切り】で回避
『敵は糸の方に私を追い込もうと位置取りや攻撃をしてくる筈。なら糸が張られるのは必然、私が後ろや上に回避したいと思う方向!』
【早業・操縦】でブーツの糸も使い、後方に出したユングフラウ内から【武器改造】で仕込んだ溶解液を後方に【範囲攻撃】放射し、鋼糸を融解。回避空間を確保

凌いだら、UCでドラゴンテイマーの力を使用
41m内の無機物、周辺に残る鋼糸を黒竜の群れに変え攻撃させ、隙を付き予測演算で【見切った】移動位置にヴィアイスの三呪剣で【2回攻撃】



「次の相手は貴様か」
 2度に渡り猟兵の攻撃を退けた風魔小太郎は、次なる敵の接近に気がついていた。
 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)。人形遣いたる彼女は様々な機能を有した戦闘人形を従えて百面鬼に挑む。
「お覚悟を」
「此方の台詞だ」
 再び輝く髑髏面。人形たちを起動させるシズホに、風魔忍法『六道阿修羅面』による怒涛の猛攻が襲い掛かる。

 一瞬で九つの斬撃を刻む忍者刀に、一息で九度の弧を描く鎖鎌の刃。
 対するシズホは防御型人形「デザイア・キメラ」を右手で操り、鉄の武器を阻む磁力反発バリアを展開。風魔小太郎の忍具も鉄製には違いなく、磁力の防壁によって勢いが削がれた攻撃ならば、回避は可能。
「奇妙な絡繰りを……ならばこれはどうだ!」
 続けて繰り出されるのは巨腕による拳打の九連撃。その軌道を予測演算するのは左手で操る騎士人形「シュヴァルツヴィアイス」。
(敵は糸の方に私を追い込もうと位置取りや攻撃をしてくる筈。なら糸が張られるのは必然、私が後ろや上に回避したいと思う方向!)
 拳の動きと狙いを見切って後退しながら、ブーツに仕込まれた糸を使って三体目の人形――アイアンメイデン型の「ユングフラウ」を操作。放射された溶解液がシズホの後方に張られていた鋼の糸を融解させ、回避空間を確保する。
 時間にすれば一瞬の攻防。その間に交わされた数十度の刃と拳のやり取りを、シズホは紙一重で凌ぎ切ってみせた。

「次はこちらの番ですね」
 攻撃を終えた風魔小太郎が次の行動に移る隙を突いて、反撃へと転じるシズホ。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
 からくり人形の中から現れたのは、かつて彼女がキマイラフューチャーで戦った「ドラゴンテイマー」の幻影。黒竜を従えるオブリビオンの力を【幻影装身】によりその身に纏ったシズホは、周辺に残る鋼糸を対象に【文明侵略(フロンティア・ライン)】を発動する。
「なんと面妖な!!」
 驚く小太郎の目の前で、鋼糸は黒竜ダイウルゴスの群れへと姿を変えて牙を剥く。
 襲い掛かる黒竜に対し、小太郎は六本の腕を振るって迎撃するが――それはシズホの予測した通りの展開だった。

「予測演算完了。そこです!」
 シュヴァルツヴィアイスの演算装置が導き出した、敵の未来の移動位置と、隙の生じるタイミング。その瞬間に狙い定めて、振り下ろされるのはヴィアイスの三呪剣。
 黒竜の迎撃に手一杯の標的を、過去を弱める呪いの刃が連続して切り刻み――その途端、風魔小太郎の動きががくりと鈍る。
「なんだ、これは……?!」
 傷としては決して深いものではない。だがオブリビオンである彼に対して、呪剣の力はそれ以上に有効に作用したようだ。
 シズホはそれ以上の深追いは避け、残った黒竜の群れに足止めを任せて後退していく。戦果としては十分だろう。敵はこれで癒せぬ呪いを負ったのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルノ・ネッケル
「アサルトリボルバー」と「ステンレストンファー」を手に持ち、「R&B」はホルスターに仕舞っておく。鎖鎌で武器を絡め取られかねん、一丁は隠しとくで。

風魔小太郎……勝負っ!!

まずは向こうの番!動いて避ければ糸に足を取られる。
霊の攻撃を【見切り】、トンファーでの【武器受け】で弾き、凌ぐ!

攻撃の切れ目は必ずある、そこさえ来れば反撃や!

鋼は丈夫、生半可な手段じゃどうもならん。
ならば『フォックスファイア』や!
四十二の狐火を束ね、一つの炎と成す……狐の炎は、生半可やない!!
眼前の霊ごと鋼の糸を融かす!これで皆も多少動きやすくなるやろ。
そしてR&Bを【クイックドロウ】の動きで抜き、本体へ向け【2回攻撃】や!!


逢坂・理彦
ただでさえ強くて厄介な敵なのに部屋に張り巡らされた鋼の糸かぁ…対策は立てないとね。
UC【狐火・椿】で鋼糸に火を付けようか。焼け切れてくれればいいしだめでも熱すれば赤くなるでしょう?

それを狙って薙刀で絡めとるように【なぎ払い】俺は熱くなった糸に触れても【火炎耐性】と【激痛耐性】があるからなんとか。

後は風魔小太郎への対処かぁ。面が大事みたいだし面を狙ってみる?まぁ、たくさん持ってそうだけど。

敵攻撃は【第六感・戦闘知識】で【見切り】たいところ。

アドリブ連携歓迎。



「ただでさえ強くて厄介な敵なのに部屋に張り巡らされた鋼の糸かぁ……対策は立てないとね」
 忍者屋敷中に仕掛けられた糸を目を凝らして見回しながら、逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は薙刀「墨染桜」を構える。
 彼と同時に戦場へと踏み込んだのはメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)。右手には防御用のステンレストンファー、左手には愛銃のアサルトリボルバーを握りしめ、その銃口を百面鬼に向ける。
「風魔小太郎……勝負っ!!」
 故郷を守りたい、彼女はその一心でここまで戦ってきた。
 まさに今、この戦争こそが、その胸に燃える炎を燃え滾らせる時だ。

「次から次へと……ならば此方も手勢を喚ばせてもらおう」
 新たな敵を認識した風魔小太郎が、その懐より取り出したのは、彼が喰らい取り込んだという先代風魔小太郎の顔を模した面。
「風魔忍法『死鬼封神面』」
 カッと禍々しい光を放った面から召喚されたのは、歴代の風魔小太郎たちの霊。
 何代にも渡ってその名と力を継承し続けてきた風魔忍者の長たちは、ここに時代を超えて一堂に会し、一斉に猟兵たちへ刃を向けた。

「まずは向こうの番やな」
 歴代の霊が繰り出す忍者刀や手裏剣を、メルノは右手のトンファーで弾く。しかしその全てを凌ぎ切ることはできず、掠めた刃が鮮血を散らす。
 史上最強と謳われる百面鬼には及ばずとも、彼らも生前は風魔忍者のトップにまで至った身。その身体能力と忍具の扱いは尋常のレベルではない。
 加えて、蜘蛛の巣のように張り巡らされた鋼の糸。大きく動いて避けようとすれば足を取られる、かといってそれを警戒しすぎれば動きを限定される。逆に自分の屋敷のことを熟知している小太郎たちは、糸を足場にして縦横無尽に攻撃を繰り出してくる。
「このままだと不味いね」
「攻撃の切れ目は必ずある、そこさえ来れば反撃や!」
 戦闘知識と第六感を元に相手の動きを予測しても、やはり思うように攻撃を避けられない理彦がぼやく。
 しかしメルノは諦めてはいない。傷を負いながらも致命傷となる攻撃だけはしっかりと防ぎ、攻勢に転ずる機会を待つ。

 ――そして、その時はふいに訪れた。
「今や!」
 歴代の霊たちの攻勢が僅かに途切れた一瞬。その好機を見逃さずにメルノは叫ぶ。
 そして発動するのは【フォックスファイア】。四十二の狐火を束ね、煌々と燃える一つの炎と成す。
 同時に理彦も【狐火・椿】を唱え、椿の花のように燃える四十七の炎を、薙刀の刃に纏わせる。
「鋼は丈夫、生半可な手段じゃどうもならん……けど狐の炎は、生半可やない!!」
 戦場に解き放たれた巨大狐火と、薙ぎ払う炎の刃の一閃は、周囲に張り巡らされた鋼糸をまるで飴細工のように融かし斬っていく。
 その火力の凄まじさたるや、逃げ遅れ巻き込まれた歴代の霊たちの一部が、瞬時に蒸発するほどであった。

 これで付近にある邪魔な障害は排除された。
 自由を得た理彦は燃え残った鋼糸の熱さにも構わず百面鬼へと接近し、メルノはアサルトリボルバーの銃撃でそれを援護する。
(面が大事みたいだし面を狙ってみる?)
 忍法の道具となっているらしき面目掛けて、振り下ろされる墨染桜。しかし百面鬼の風魔小太郎は六本腕のひとつで握った忍者刀でそれを防ぐ。
「あの程度の輩を屠ったところで、いい気になるでないわ」
 片腕で理彦の薙刀を受け止めたまま、別の腕で鎖鎌を操り、援護射撃を撃とうとしていたメルノのリボルバーを絡め取る。
 史上最強の化身忍者の技量は、歴代の風魔小太郎と比較しても群を抜いていた。

 ――だが、相手が強敵であることは猟兵たちも承知の上。
 この程度のことは予想済みだと、メルノは封じられたリボルバーを手放し、ホルスターに隠していた熱線銃「R&B」を抜き放つ。
「こいつでどうや!!」
 目にも留まらぬクイックドロウからの抜き打ち二連射。発射された紅い熱線は狙い過たず、風魔小太郎の胸と頭部の面を撃ち抜く。
「ぐぁっ!?」
 苦悶の声を上げてのけぞる百面鬼。理彦はこの機に乗じると薙刀の刃を返し、メルノが穿った面へと渾身の一閃を叩き込む。
「まぁ、たくさん持ってそうだけど、一つもらうよ」
 百面鬼の面がまた一枚、粉々に砕かれ灰となる。

 しかし、二人の攻勢はここが限界だった。
 敵の先制でダメージを負いすぎた二人は、動けなく前にと戦域から離脱する。
「おのれ……やってくれる……!」
 面の砕けた頭部を抑えながら、わなわなと震える風魔小太郎の怒りの声が、後退していく二人の耳に届いた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

須藤・莉亜
「え、百味面鬼?百通りの味を楽しめるってこと?」
…吸うまで大変そうだなぁ。その分美味しそうだけど。

周囲の鋼の糸は異空間収納のすゝめに収納できないか試してみる。出来なければ、悪魔の見えざる手に切り開いてもらっとこう。

敵さんの先制攻撃は、動きを【見切り】、【第六感】で殺気を感じ取り回避。後は【武器受け】で防御。

敵さんの攻撃を凌ぐか食らうかしたら、暴食蝙蝠のUCを発動。無数の蝙蝠に変化しつつ、霧で敵さんを覆って撹乱。
んでもって、全方位から全力【吸血】。
全身噛み砕いて血を奪ってやる。

「お面ばっかで面白い顔してるねぇ。…全部噛み砕いてやりたい。」



「え、百味面鬼? 百通りの味を楽しめるってこと?」
 わざとなのか本気なのか、異名を言い間違えながらかくんと首をかしげたのは、ダンピールの須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)。
 対峙するは百味面鬼――ではなく、百面鬼・風魔小太郎。これまでの猟兵たちとの戦いで少なからぬ負傷を受けてはいるが、今だその強壮な威圧感に衰えはない。
「……吸うまで大変そうだなぁ。その分美味しそうだけど」
 未知の血の味に期待を膨らませながら、青年は白い大鎌「血飲み子」を構える。

「馬鹿なことを……この身に流れ、受け継ぎし風魔の血と力。貴様なぞには一滴とてくれてやるものか!」
 怒れる百面鬼の号令一下、莉亜に襲い掛かるのは歴代風魔小太郎の亡霊たち。
 莉亜は魔道書「異空間収納のすゝめ」の中に、戦いの邪魔となる鋼の糸を収納して、動き回るだけのスペースを確保。人間離れした身体能力で攻めてくる亡霊たちの殺気を感じ取り、忍者刀を大鎌で受け流す。
「……こいつらも霊じゃなかったら、美味しかったかもなぁ」
 柄から伝わる重い手応え。亡霊といえども風魔忍者の歴代頭領、一人ひとりの練度も相当高い。
 数名が忍者刀で莉亜と切り結びながら、残る亡霊たちが後方より手裏剣を投擲。
 一糸乱れぬ連携戦術を前にして、莉亜の体には徐々に負傷が増えていく。

「どうした。この程度か?」
 防戦一方の莉亜に対し、面の下で嘲笑する風魔小太郎。確かにこのままでは、彼が力尽きるのは時間の問題かのように見えた。
 だが、彼にはまだ切り札があった――使うとお腹が減ってしょうがなくなる、少々厄介な切り札が。
「血も肉も全部、僕のモノ」
 敵の猛攻を耐え凌ぎながら【暴食蝙蝠】を発動。莉亜の全身は無数の蝙蝠に変化し、バラバラに飛び散って亡霊たちの攻撃を回避する。
 同時に深い霧が戦場に立ち込め、敵も味方も関係なく、全てを覆い隠していく。

「これは一体っ?!」
 霧の中で敵を見失い、動揺する歴代の亡霊たち。それは百面鬼でさえ同じだった。
 風魔小太郎が敵の意図を悟った時――蝙蝠化した莉亜は既に彼を包囲していた。
「お面ばっかで面白い顔してるねぇ。……全部噛み砕いてやりたい」
 普段は封じている強大な吸血衝動は、この姿になるのと同時に解放された。
 湧き上がる暴食の衝動のままに、無数の蝙蝠は一斉に獲物に襲い掛かる。
「ぐぬぅっ、やらせるものか――!!」
 小太郎は六本の腕と武器を自在に振るい、蝙蝠の群れを叩き落としていくが――全方位から同時に襲ってくるその全てを迎え撃つことは、いかに彼とて不可能。
 全身に纏わりついた蝙蝠は、肉を噛み千切りながら全力の吸血を仕掛ける。
「ぐおおおおおおおおおおっ?!!?」
 体中の血を奪われていく感覚に、絶叫する風魔小太郎。遮二無二暴れ回ってどうにか蝙蝠を引き剥がすが、その時にはもう、彼の失った血は膨大な量となっていた。

「ごちそうさま。百通りの味はしなかったけど、美味しかったよ」
 満腹になった蝙蝠たちは戦場から後退すると一箇所に集まり、元通りの姿に戻る。
 蝙蝠化の追加効果である回復と、風魔小太郎から奪った血と生命力により、彼の全身の傷はすっかり癒えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
面倒な能力に面倒な仕掛けね。でも、それで勝ったと思わない事ね!

自身に【念動力】で防御膜を張った上、【見切り、第六感】や【残像】が発生する程の高速で可能なものは回避。不可能な場合は【武器受け】で防御に徹し、致命傷だけは避けて敵の先制攻撃をUCの発動まで徹底して全力で耐える。
先制攻撃を耐えた後、【ブラッディ・フォール】で「侵略の氷皇竜」の「氷皇竜メルゼギオス」の力を使用(氷皇竜の翼や尻尾等が付いた姿に変化)。
【アイス・リバイブ】で受けた傷を再生し、比例して戦闘力を増強。【アイシクル・ミサイル】による弾幕で敵を追い込みつつ、【アブソリュート・ゼロ】で部屋の仕掛け諸共全てを凍結させて粉砕してあげるわ!


雛菊・璃奈
風魔小太郎…貴方の術は非常に厄介…。逃がすわけにはいかない…ここで仕留める…!

【呪詛、オーラ防御、高速詠唱】で防御呪術を発動しつつ、【見切り、第六感】と凶太刀による高速化で敵の先制攻撃を回避、迎撃…。
その隙に【魔剣の媛神】で封印解放…。
無限の魔剣の一斉斉射を放ち、歴代風魔小太郎たちを迎撃すると同時に周囲に巡らされた鋼の糸を全て切り払い、今度はこちらから攻撃…。
引き続き無限の魔剣による掃射しつつ、凶太刀と神太刀による神速斬撃で攻撃…。
合間に莫大な呪力を用いた【呪詛、高速詠唱】による呪租縛鎖や呪力強化等を攻撃に織り交ぜ、歴代風魔小太郎たち全てを切り伏せるつもりで全力で仕留めるよ…!



「風魔小太郎……貴方の術は非常に厄介……。逃がすわけにはいかない……ここで仕留める……!」
 呪詛のオーラによる防御呪術を発動しながら、風魔の忍者屋敷に足を踏み入れた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。その脳裏によぎるのは、先だって使用された風魔忍法隕石落としの光景だった。
 その被害は阻止されたものの、迎撃に失敗すれば被害は深刻だったろう。そして術者である風魔小太郎が健在な限り、その驚異は完全に消え去ったわけではないのだ。
「面倒な能力に面倒な仕掛けね。でも、それで勝ったと思わない事ね!」
 同じタイミングで屋敷に突入したフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)も、自身に念動力の防御膜を張りながら風魔小太郎を睨みつける。
 敵は強大、かつここは相手の本陣。なれど退かない覚悟と負けない意志が、彼女たちの踏み込みをより力強くする。

「貴様らの実力、努々侮りはしない。この百面鬼もまた、全力を以て屠り尽くすのみ」
 既に幾度の交戦によって傷付き、幾つもの面を割られている風魔小太郎は、奢りも油断もなく猟兵たちを迎え撃つ。その号令に応じて戦場を駆けるのは、風魔忍法『死鬼封神面』によって召喚された歴代風魔頭領の亡霊たち。
「「風魔に仇成す者よ、散れいッ!!」」
 卓越した身のこなしから放たれる、流星雨のごとき手裏剣の一斉投擲。
 フレミアは残像が生じる程の高速で弾幕を躱しながら、魔槍ドラグ・グングニルを振るって手裏剣を叩き落としていく。同時に璃奈も妖刀・九尾乃凶太刀の呪力を借りて自らを高速化し、飛来する手裏剣の軌道を見切って迎撃する。
 しかし亡霊たちは二人が手裏剣に気を取られた隙に接近すると、戦場に張り巡らされた鋼の糸を足場にして、鎖鎌による縦横無尽の攻撃を繰り出してくる。
 数の利と地の利を活かした連携、その全てを無傷で凌ぎ切ることは出来ない。念動力と呪術によって致命傷は免れているものの、二人の身体には次第に負傷が積み重なっていく。

 ――だが、フレミアも璃奈も、このまま一方的に黙ってやられるつもりはない。
 敵の攻撃を耐え凌ぎながら、ユーベルコード発動のタイミングを待っていたのだ。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 僅かな攻撃の切れ間に【ブラッディ・フォール】を発動させたフレミアは、かつてアックス&ウィザーズで討伐した『氷皇竜メルゼギオス』の力をその身に宿し。
 【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解いた璃奈は、莫大な呪力のオーラを放ちながら九尾の妖狐の姿へと変化し、出現した無限の魔剣を自らの周囲に展開する。
「これは……!!」
 明らかに力の段階が跳ね上がった相手を目の当たりにして、警戒の度合いを強める百面鬼。その動揺を感じ取った二人は、すかさず反撃へと転じた。

「これまでやってくれた分、倍にしてお返しするわ!」
 フレミアは氷皇竜の翼と尾と【アイス・リバイブ】の氷の鎧でその身を覆い、亡霊たちから受けた負傷を回復しながら戦闘力を強化。そして【アイシクル・ミサイル】による無数の氷棘の弾幕を放つ。
「ここからが反撃……」
 どこへ逃げようとも標的を高速追尾する氷棘に、追い込まれる亡霊たち。そこに璃奈が従える無限の魔剣による一斉斉射が、周囲に張り巡らされた鋼の糸もろとも、亡霊たちを斬り払っていく。
 氷棘と魔剣による凄まじき制圧攻撃。百面鬼が召喚した歴代の風魔小太郎は一瞬のうちに半数以上が斃れ、残った者も無傷の者はいないという有様であった。

「今度はこちらから攻撃……」
 敵の戦列が瓦解したのを見ると、璃奈は九尾乃凶太刀と九尾乃神太刀、二つの妖刀を構えて吶喊。神速の域に達した剣技、そして莫大な呪力を用いた呪術を織り交ぜ、生き残った歴代の風魔小太郎たちを斬り伏せていく。
「やってくれるわ……! だが!」
 好きにはさせぬと挑み掛かるは百面鬼。六本の腕と武器を阿修羅のごとく振るい、その異形に見合わぬ技量と速度で璃奈を攻め立てる。
 その力量、確かに史上最強の化身忍者と謳われるだけはある――だが、今の璃奈ならば決して敵わぬ相手ではない。極限まで加速された剣技を以て攻撃を捌ききりながら、縛鎖の呪詛を詠唱して百面鬼の身体を拘束する。
「ぐぬぅっ!? このような……!」
 縛めを破られるまでの時間は一瞬。だがその一瞬あれば十分。
「全力で仕留めるよ……!」
 妖刀の刃に呪力による強化を重ね、乾坤一擲の想いで振り下ろした斬撃が、百面鬼の胸を深々と斬り裂いた。

「ぐおおおおお……ッ!! おの、れ……!」
 血飛沫を上げて呻きながら、ふらりとよろめく風魔小太郎。そこに休む暇を与えず追撃するのは、フレミアの放つ【アイシクル・ミサイル】。
 このまま一気に追い込むという強い意志。氷皇竜の力を纏った吸血姫は氷棘の弾幕を展開し続けながら、冷気のエネルギーを次第に高めていく。
「「やらせはせぬぞ!!」」
 当代の頭領を守らんと、残り僅かとなった歴代の亡霊たちが、捨て身の特攻をフレミアに仕掛ける。目的のために我が身を捨てる、忍びらしい覚悟の現れか。
 だが、この瞬間、この場においては、勝利に賭けるフレミアの意志と力が勝る。
「諸共全てを凍結させて粉砕してあげるわ!」
 極限まで高まった冷気を解き放つ、氷皇竜の【アブソリュート・ゼロ】。万物を分子レベルまで氷結させる絶対零度の凍気が、押し寄せる亡霊を、戦場に隠された仕掛けを、そして百面鬼を凍らせていく。

「お、おおおおお……ッ?!」
 一瞬のうちに芯まで氷像と化し、砕け散った歴代の風魔小太郎。そして当代の風魔小太郎も半身を氷に覆われ、甚大なダメージを負っていた。
 凍りついた忍者屋敷で、胸の傷を押さえながらがくりと膝をつく百面鬼。
 戦いの行方は、徐々に猟兵たちの優勢へと傾き始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
「忍者」は間諜や工作、暗殺等の裏の仕事が得手、という偏見がありましたが、この異能に戦闘能力…認識を改めねばなりませんね

ですが護衛を任とする騎士としてはある意味宿敵ともいえる存在
全力で挑ませて頂きます

センサーでの●情報収集で屋敷内の鋼糸の配置を●見切りつつ、小太郎を捜索、発見
頭部、肩部格納銃器の●だまし討ち●スナイパー射撃で、面を幾つか割り軍勢の数を減らします

更に●破壊工作の知識も用い屋敷の天井をワイヤーアンカーでの●ロープワークと●怪力で崩落させ、軍勢を●目潰し&行動阻害

その隙にUC発動
未来予測による射撃を軍に、●防具改造で縁を刃の様に尖らせた装甲で鋼糸を切断しつつ接近し小太郎に接近戦を敢行



「『忍者』は間諜や工作、暗殺等の裏の仕事が得手、という偏見がありましたが、この異能に戦闘能力……認識を改めねばなりませんね」
 激戦の痕跡を深く刻まれた屋敷を探索しながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は呟く。先に起こった風魔忍法隕石落としの事件も含め、相手が彼の考える忍者像からは掛け離れた実力者であることは間違いあるまい。
「ですが護衛を任とする騎士としてはある意味宿敵ともいえる存在。全力で挑ませて頂きます」
 臨戦態勢の騎士は風魔小太郎を発見するや否や、挨拶代わりの機銃掃射を放った。

「もう新手が現れたか……この百面鬼も警戒されたものだな」
 忍者屋敷の奥に後退し、猟兵たちから受けた傷を癒そうとしていた風魔小太郎の周囲には、風魔忍法『風魔頭領面』によって召喚された風魔忍者の軍勢が控えている。
 小太郎は身に着けた面を代償にしてさらなる軍勢を喚び出そうとするが、トリテレイアの精密な射撃は彼の手にした面を的確に割り砕き、忍法の発動を阻止する。
「これ以上軍勢の数は増やさせません」
「小癪な……構わん、総出で畳み掛けろ!」
 苦虫を噛み潰したような声を出しながら、風魔小太郎は召喚済みの軍勢に号令する。風魔忍者たちは我らが頭領を守るべく忍者刀と手裏剣を構えると、疾風の勢いでトリテレイアに襲い掛かった。

 接近する敵の忍者刀を儀礼剣で受け流し、降り注ぐ手裏剣の雨を大盾で防ぎながら、トリテレイアは軍の長である小太郎に接近する機会を窺っていた。
「その身を捨ててでも近付けさせないつもりですか」
 少しでも頭領のダメージを回復させるための合理的戦術。個性らしきものを窺わせず、生命を惜しまず襲ってくる風魔忍者には、既視感めいたものを感じる。
 正面切っての突破は困難。そう判断したトリテレイアは屋敷の天井へと狙いを変えて、ワイヤーアンカーを射出。そして梁に絡めたワイヤーを力任せに引っ張る。
 いくら忍者の屋敷とはいえ、木造家屋がウォーマシンの怪力に耐えられるはずもなく。ベキリとへし折られた梁を起点にして、ガラガラと音を立てて軍勢の頭上の天井が崩落していく。

「「―――!!」」
 咄嗟に四方八方に散って崩落から逃れる風魔忍者たち。だが、崩れた天井の残骸と衝撃で舞い上がった粉塵は、障害物と目潰しとなって彼らの行動を阻害する。
 その隙にトリテレイアは自らの電脳内に搭載されたユーベルコードを起動した。
「コード入力【ディアブロ】、戦域全体の未来予測演算を開始」
 【白騎士の背、未だ届かず】――なれどその力は紛れもなく、銀河帝国最強のウォーマシンが使用したものと同機能の一端。敵の行動予測から戦場に舞う粒子の動きまで、全ての情報から導かれる未来を演算し、最適な行動パターンを構築する。
 今のトリテレイアに予測可能な未来は5.1秒。この5.1秒に、全てを叩き込む。

「予測演算完了」
 カウントスタートと同時に展開した全身の銃火器が、風魔忍者の軍勢を撃ち抜く。
 未来予測に基づく精密射撃は目標の急所へと全弾命中し、一瞬のうちに軍勢を壊滅させた。
「何と……!」
 粉塵の向こうで驚愕する風魔小太郎。この反応も予測した未来の通り。
 トリテレイアは間髪入れずに装甲の縁を刃のように鋭く尖らせると、スラスターを点火し全力疾走。張り巡らされたワイヤーを装甲で切断しながら百面鬼に肉迫する。
「ここであなたを討ちます」
「舐めるな!」
 剣と盾を構えた騎士に対して、百面鬼は怒涛の反撃。六つの腕より繰り出される人の域を超えた武技は、予測困難かつ剣呑極まるもの。だが今だけは――この数秒間だけは、トリテレイアには敵の動きが全て"視えて"いる。
 六腕の猛攻を剣一つで捌ききり、攻撃後に生じる隙に叩き込むのは、全武装と機体の質量を乗せたシールドバッシュ。
「ご、ぐおぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
 重戦車の激突に等しい衝撃を受けた風魔小太郎は、絶叫しながら宙を舞い、屋敷の壁にめり込むほど深く叩きつけられる。
 ――5.1秒ジャスト。機械の騎士が視た未来は、ここに達成された。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジニア・ドグダラ
……絡繰り多く、敵は強大です。努々、注意を怠らずに、行動しましょう。

敵の部屋にある鋼糸や仕掛けに対して、探索者としての経験を活かし、ある程度勘で察知できるようにしましょう。
敵からは霊を召喚し、攻撃して来ると【第六感】で感知し、霊を浄化する【破魔】の術を【高速詠唱】で唱え、無力化していきましょう。

当然敵も行動を妨げて行動するはずです。ですが、此方を攻撃した際の敵意や、殺意は受けています。死霊兵士による種子島での狙撃や、槍や刀での【時間稼ぎ】で対応、霊たちを浄化する隙を作らせていきましょう。

敵の数を減らしつつ、死霊兵士の一体を弾丸に精製、死霊拳銃による【呪詛】で風魔小太郎の生命力を削りましょう。



「……絡繰り多く、敵は強大です。努々、注意を怠らずに、行動しましょう」
 神妙な表情で警戒を強めながら、ジニア・ドグダラ(白光の眠りを守る者・f01191)は敵のいる部屋に突入する。
 そこで待ち受けていた風魔小太郎は、既に先行した猟兵たちの手で深傷を負わされていたが、その身から放たれる剣呑な気配にはいささかの衰えもない。
「残された『面』も少なく、もはや逆転の望みは薄いか……かくなる上は信長様の為に、一人でも多くの敵を道連れにしてみせようぞ」
 窮地を悟ったがゆえの決死の覚悟。迸る殺気と敵意は、荒れ狂う炎のようだ。

「行け――!」
 懐から取り出した『死鬼封神面』が輝くと、一度は撃退された歴代の風魔小太郎の亡霊たちが再び召喚される。直感的にその気配を察知したジニアは、素早く破魔の術を詠唱すると、さまよえる亡霊を浄化せしめんとする。
 させるものかと亡霊たちも即座に動いた。矢継ぎ早に放たれる手裏剣の投射や、喉を締め上げようとする鎖鎌の攻撃が、ジニアの詠唱を妨害してくる。
「そう来るとは思っていました」
 どこにどんな仕掛けがあるかも知れない忍者屋敷の中で、ジニアは探索者としての経験からトラップの配置を察知しながら敵の攻撃を回避していく。
 それでも敵は敵意と殺意を剥き出しにして猛追する。単純な身体能力と数の上では敵方が優位。このままではジニアが追い詰められるのは時間の問題かに思えた。

 ――だが、その敵から向けられた敵意や殺意こそが、ジニアのユーベルコード発動のトリガーとなる。
「不屈たる意志持つ、兵どもよ! 我が声に応え、かの敵を討ち滅ぼせ!」
 【死兵到来】により出現するのは、エンパイア式の装備で武装した死霊兵士たち。
 死霊には死霊を以て対抗する。召喚された死霊兵士は即座にジニアを中心とした陣形を組み上げ、槍衾による防御陣地と、火縄銃による狙撃陣地を構築する。
「その程度の兵力、一気に突き破れ!」
 百面鬼の号令一下、一斉に吶喊する歴代の風魔小太郎。死霊兵士は槍や刀を振るってその猛攻を押し留め、遠距離からの攻撃には火縄銃の狙撃で対抗する。
 そして彼らが時間を稼いでいるうちに、ジニアは再び詠唱を。歌うように紡がれる破魔の呪文が戦場に響き渡り、歴代の亡霊たちの怨念を浄化していく。

「ちぃ……っ、これは不味いか……!」
 次々と消滅していく味方の姿に焦りを覚えたか、百面鬼の風魔小太郎は自らの忍者刀と鎖鎌を握りしめ、戦場を駆ける。その狙いは言うまでもなく、亡霊にとって最も相性の悪い敵――死霊術士のジニアを仕留めることだ。
「退けい!!」
 六つの腕から繰り出される連撃が、死霊兵士を蹴散らしていく。
 相手は史上最強の化身忍者、並みの兵士が太刀打ちするには荷が重いか――ならばとジニアは倒れた兵士の霊魂を弾丸に精製し、抜き放った「死霊拳銃」に装填する。
「これで――!」
 風魔小太郎がジニアを間合いに捉える半歩前。
 重い発砲音と共に放たれた銃弾は狙い過たず、百面鬼の胸を撃ち抜く。
「ぐ、がぁぁぁぁぁ……ッ?!」
 小太郎の口から絞り出すような苦悶の声が上がり、その膝ががくりと折れ崩れる。
 死霊たちの呪詛に塗れたジニアの呪弾は、標的の生命力を大きく削り取っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──来たか
その首、晒しもんにしてやるぜ

なるほど鋼の糸か…事前に知れて良かった
塗料を封じたペイントボールを持ち込もう
こいつをあちこちに投げて、糸に着色することで可視化しやすくする
場所が分かればそれを逆手に取ってもいいな

まずは先制攻撃対処
全装備サイバネを【ハッキング】、出力をオーバロード
【ドーピング】でさらに強化、向上
【ダッシュ】【見切り】【早業】【フェイント】【ジャンプ】【地形の利用】で、鋼の糸を足場に利用した三次元機動
歴代風魔の攻撃を全力で回避
最後に『一発』だけ防御する…UCを使ってな

UCの情報コピー完了
アップデート──完了

さて、じゃあ──
そっちより強い歴代風魔のご登場だ
忍び大戦争といこうぜ!



「なるほど鋼の糸か……事前に知れて良かった。場所が分かればそれを逆手に取ってもいいな」
 塗料を封じたペイントボールをぽいと放り、あちこちに張り巡らされた糸を可視化しやすくしながら、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は忍者屋敷を進んでいた。
 電脳ゴーグルを起動中の彼の視界に、ふと接近する幾つもの敵性反応が現れる。
「――来たか。その首、晒しもんにしてやるぜ」
 にやりと自信たっぷりに笑みを浮かべ、サイボーグの少年は臨戦態勢に入った。

「……次から次へと。だが、この百面鬼の冥土の道連れには相応しい相手よ」
 風魔忍法『死鬼封神面』により召喚された歴代風魔小太郎の亡霊を率いる男は、既に満身創痍であった。だが例え命尽きようとしていても、死の最期の瞬間まで、その技量と気迫にはいささかの衰えもない。
「最期まで付き合ってもらうぞ、猟兵」
「上等だ。だが地獄にはテメェ一人で逝きな」
 歴代風魔の亡霊たちが襲い掛かるのと、ヴィクティムが全身に仕込んだサイバネティクスをフル稼働させるのは同時だった。
 卓越した身体能力を武器とする敵に対抗するために、全サイバネの出力をハッキングでオーバーロード。さらに『フィジカル・エンハンサーVer.2』と『リアクション・エンハンサーVer.2』を起動させ、身体能力と反応速度を強化、向上。
 さらにペイント済みの鋼の糸を足場に利用して跳びまわり、歴代風魔の攻撃を全力で回避していく。

「「大した絡繰りだ。だが我ら忍の体術を侮るな!」」
 歴代風魔の亡霊たちもまた、戦場に張り巡らされた糸を足場として追撃する。
 両者ともに一歩も譲らぬ、縦横無尽な三次元機動による激しい攻防の中、ヴィクティムはあえて『一発』だけ、亡霊の攻撃を避けるのではなく防御した。
 鎖鎌の一撃を受けた左腕のサイバーデッキ『トランシス・アヴァロン』が、そのデータを元に敵のユーベルコードを解析。それを上回る新たなプログラムを構築する。
「UCの情報コピー完了。アップデート――完了」
 起動するのは【Update Patch『Rise』】によって上方修正された『死鬼封神面Ver.2』。召喚されるのはオリジナルと鏡写しのようによく似た、だが細部において異なる忍者たち。
「さて、じゃあ――そっちより強い歴代風魔のご登場だ。忍び大戦争といこうぜ!」
 敵の心を折り、敗北感を刻むのには、相手を上回る同じ力でねじ伏せること。
 ヴィクティムの号令と共に襲い掛かった新たなる歴代風魔小太郎たちは、旧バージョンの歴代風魔小太郎の亡霊を圧倒していく。

「我が風魔忍法を模倣――いや、それ以上の物に仕立て上げるとは……!」
 忍法を極めし者として、驚嘆を禁じ得ない百面鬼の風魔小太郎。
 彼が動揺したのは時間にすれば僅か数ミリ秒であったが、身体機能と反応速度をブーストした今のヴィクティムから見れば十分な隙となる。
「これがテメェを凌駕するFakeの粋だ!」
 歴代風魔小太郎同士の激闘に紛れ、最大出力で百面鬼へと肉迫した少年は、生体ナイフ『エクス・マキナ・カリバーンVer.2』を一閃。
 忍者屋敷に血飛沫が舞い、百面鬼の身に着けた面がまた一つ、真っ二つに両断された。

成功 🔵​🔵​🔴​

月鴉・湊
へぇ、忍びの頭領かい。
同じ匂いのするやつと思ったらこんな大物とはね。
さて、同じ闇に生きるもの同士、殺り合おうかい。

部屋の仕掛け、こちらも利用させてもらおうか。
奴が攻撃を仕掛けてきた瞬間、早業でこちらも更に血の糸を部屋全体に張り巡らせる。

さあ、どうする?
これで二人とも動けなくなったな。おや?どうした?そう言えばお前は攻撃出来なければ命を縮めるんだったな。己を攻撃すれば、助かるぞ。ただし、俺の血の糸に絡みとられなければな。

そんな挑発しつつ、幻の相手をさせて透明化した俺自身は血の針を操り糸を掻い潜らせ奴へ刺す。
刺されば全ての血が抜けきるまで噴出するだろう。
血の染物、いい色だろ?
さて、お前の首頂くぞ。



「――ここまで、か。最後までお仕えできず、申し訳ありませぬ、信長様」
 戦闘により損壊した忍者屋敷の中を、血塗れの百面鬼・風魔小太郎は身体を引きずるようにして歩いていた。
 蓄積されたダメージは限界に達し、忍法の媒介となる『面』もほとんどが破壊された。忍としての合理性から、彼は己の敗北を冷静に理解し――されど大人しく往生するつもりは微塵もなかった。
「この身朽ち果てるまで、一人でも多く、我ら信長軍に仇為す者に死を――!」
 尽き得ぬ妄執と、猟兵への殺意のみが、今の百面鬼を衝き動かしていた。

「へぇ、忍びの頭領かい。同じ匂いのするやつと思ったらこんな大物とはね」
 そこにふらりと姿を現したのは、月鴉・湊(染物屋の「カラス」・f03686)。
 一体いつからそこに居たのか。ここまで接近する音も気配もなく、彼は気が付けば互いの間合いのあと一歩手前にまで踏み込んできていた。
 風魔小太郎も瞬時に理解する。この男は自らと同じ、影と死の宿業を背負うものであると。
「さて、同じ闇に生きるもの同士、殺り合おうかい」
「良かろう。相手にとって不足はない」
 風魔忍法『六道阿修羅面』――最後に残った髑髏の『面』の瞳が輝く。
 傷ついた体に死力を漲らせ、百面鬼は咎人殺しに襲い掛かった。

「部屋の仕掛け、こちらも利用させてもらおうか」
 風魔小太郎の攻撃を受けるよりも一瞬速く、湊は己の周囲に血の糸を張り巡らせる。
「ぬぅ……っ」
 この糸に触れることは不味い。そう直感的に悟った小太郎の動きが止まる。
 だが、そこから踏み込めないのは湊も同じ。迂闊に動けば屋敷に仕掛けられた鋼の糸に引っ掛かり、その隙を敵に突かれるだろう。
「さあ、どうする? これで二人とも動けなくなったな」
 鋼の糸と血の糸。お互いの行動を封じあう形となった両者の間には奇妙な膠着状態が生まれる。この膠着が有利に働くのは、言うまでもなくそれを仕掛けた湊の方だ。
「おや? どうした? そう言えばお前は攻撃出来なければ命を縮めるんだったな」
 六道阿修羅面に課せられた代償。比類なき攻撃速度を得るのと引き換えに、術者は味方を攻撃しなければ自らの寿命を縮めるという。ただでさえ限界が近付いている今の小太郎に、これ以上寿命を削る余裕はない。
「己を攻撃すれば、助かるぞ。ただし、俺の血の糸に絡みとられなければな」
「ちぃ……ッ!」
 その言葉が挑発だと分かっていても、苦々しい声が百面鬼の口から漏れる。
 命など惜しくはないが、無為に捨てるつもりはない。この血の糸を掻い潜り、敵に渾身の一撃を叩き込むには、どうすれば――。

 ――息の詰まるような膠着は、あっけない幕切れを迎えた。
 ちくり。と、首筋に刺すような痛みを感じた小太郎がはっと振り返ると、そこには冷たい笑みを浮かべた湊の姿が。
「馬鹿な……貴様は確かに、あちらに居たはず……」
「残念だったな。それは俺だが俺ではない。お前自身の罪が見させたのだ」
 小太郎が対峙していたのは【咎に儚い幻想を映させよ】により現れた幻。本物の湊は幻と入れ替わって姿を消し、鋼の糸を掻い潜って敵の背後に回り込んでいたのだ。
 彼が小太郎の首に刺したのは血装具「紅染」。血管に突き刺さった針の中央には小さな穴があり、全ての血が抜け切るまで噴出する仕掛けだ。
「ご、おぉぉぉぉぉぉお……ッ!!」
「血の染物、いい色だろ?」
 噴水のように首から迸る出血が、百面鬼の装束を真紅に染め上げる。
 がくり、と力なく膝をついた咎人の前で、湊は緩やかに腰の妖刀を抜き放ち――。
「さて、お前の首頂くぞ」
 一閃。
 華麗さとは無縁の無慈悲なる暗殺の剣が、百面鬼の首を刎ね飛ばす。

「――見事なり、猟兵」

 宙を舞った首の髑髏面から、光が消え。
 それを最期に、百面鬼・風魔小太郎の肉体は塵に還るように消滅していった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月09日


挿絵イラスト