エンパイアウォー④~命の勘定・仕事の感情
「次次ィ、とッとと行くぞコラァ!」
栄養ドリンクらしき小瓶を一気に呷ったグリモア猟兵の我妻・惇は、景気付けらしく吠えて見せる。
三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の『第六天魔軍将』達が、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきた。それに伴い幕府軍は、諸藩の援軍を含めて総勢十万の兵をもって、総力をあげて織田信長の元に向かい、撃破すべく動き出した。今はその戦争の真っ最中である。
魔軍将の一人である侵略渡来人『コルテス』は、太陽神ケツァルコアトルの力を使って、富士山を噴火させようとしており、富士の樹海に隠された儀式場で、コルテス配下のオブリビオンが富士山を噴火させる為の『太陽神の儀式』を行っているようだ。
「知ッてのとォりでけェ山だ。噴火すりゃ大ごとになる」
富士山が噴火すれば、東海・甲信越・関東地域は壊滅的な混乱状態となり、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を災害救助や復興支援の為に残さなければならなくなる。今後の作戦展開においてもそれは大きな痛手となるだろう。そしてそれ以前に。
「テメェの喧嘩に他人様の力ァ使うなンざァ、胸糞悪ィ話だよなァ」
人道的観点から見ても、自然保護の見地に立っても、いち喧嘩屋から見てさえも、気持ちの良い作戦ではない。
「ひとつ、思いッきり邪魔してやろォぜ」
●
富士の山裾広くに及ぶ、樹海深くの何処にか、そに築かれた儀式場。縄に繋がれて暴れてもがく、憐れな生贄、子竜が一頭。
「外っ国のまじないってのは血生臭くてイヤだねぇ。まぁ雇用主サマの望みとあっちゃ、仕方ないんだがね」
グリップで頭を掻きながら、一人のガンマンが嘆息する。呟きながらも油断なく周囲を見渡すそのオブリビオンの眼光は、鋭く、冷たい。
相良飛蔓
お世話になっております。相良飛蔓と申します。お読みいただきありがとうございます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
樹海に隠れて儀式を行っているオブリビオンを発見して撃破するシナリオです。ですのでプレイングでは、通常の戦闘と合わせて、隠れた目標を捜索する旨の記述が必要となります。文字数の圧迫もありますが、挑戦してやってもらえると嬉しいです。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『鈴木『孫一』重秀』
|
POW : 八丁念仏
【斬られた事に気付かせぬ切味の名刀八丁念仏】が命中した対象を切断する。
SPD : 血華繚乱
【敵に肉薄した状態で拳銃】から【敵の傷口に銃弾を複数、霊距離】を放ち、【体内に銃弾を放たれた痛みと流血】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 八咫烏の加護ぞあらん
【拳銃が狙撃銃】に変形し、自身の【移動速度と近接戦闘能力】を代償に、自身の【命中率と射程距離】を強化する。
イラスト:たがみ千
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠水貝・雁之助」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御剣・刀也
ははは。銃か。面白い
俺の剣術は銃弾なんぞに負けん!!勝負だ!!
八丁念仏は第六感、見切り、残像で避けてカウンター、捨て身の一撃で反撃で斬り捨てる
血華繚乱は第六感と見切りで動作を予測し、グラップルで日本刀から手を放すか、そのまま銃口をそらし、蹴りか関節技で反撃する
狙撃銃に変化したら第六感と見切りで狙撃の瞬間と弾道を予測し、日本刀で弾丸を斬り捨てながら突っ込んで、捨て身の一撃で斬り捨てる
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。てめぇは確かにいい腕をしてるが、だからこそ読みやすい。撃つ瞬間の気配を消せるようになったら俺と対等だ。また相手をしてやる」
上泉・祢々
ほう、過去の剣豪と戦えるのですか
それはそれは楽しみですね……
ですがその前に儀式とやらを邪魔しなければいけないようですね
面倒ですが仕方ありません
儀式の場所まで生贄を連れて行ったのであれば痕跡がある筈
それを探しだしその後をつけます
木の上からでも探せばきっと見つかるでしょう
八丁念仏ですか!
いい刀ですねぇ折り応えがあります
儀式の場所を発見したら即座に奇襲
銃を使われてはつまらないですから距離を詰め銃は抜かせません
数度観察し太刀筋を見切り刃ではなく刀の腹を狙い攻撃を同じ一点で受け続けます
そしてタイミングを合わせ手刀を一撃
刀自体を破壊します
所詮は過去の存在
口ほどにもなかったですね
私の勝ちです
伊美砂・アクアノート
【SPD オルタナティブ・ダブル】
―――ひ、火縄銃じゃ無ェのかよッ!!!
そりゃ、連発できない上に雨が降ったら使い物にならないライフリングもない火縄銃なんてオレも使いたくないけど…けど…!
こう、火縄銃には火縄銃の良さ、ロマンがあった筈だろ…!
それを忘れちまったのかよ――雑賀さん…!
…あ、ボクの本音? 火縄銃相手だったら楽だったのになー、一方的に撃ちまくれたのになーくらいしか考えていないよ?
【早業18、2回攻撃10、援護射撃5 】分身し、ショットガンとアサルトライフルのフルオート射撃。拳銃には負けないぞ? 接敵されたら【罠使い11、毒使い10、破壊工作8】で毒と手榴弾を起爆させ、距離をとって再射撃
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
(子竜を見て
何かの犠牲で事を成すのね
ならわたしは
貴方(孫一)を犠牲にあの子(子竜)も世界も守る
(まつりんの声を聞いて、はっと
犠牲、だめ
…少し怒って冷静さ失くしてた
ありがと
落とし前つける
まつりん
幅広の大剣を象る灯る陽光から飛ばす白銀の光で兄の身を覆い、オーラ防御
ん、目一杯暴れてきて?
後方で仲間の様子も確認
第六感働かせ孫一の動きを察知
近接する人に素早くオーラを飛ばし防御
オーラが直撃の邪魔する事を悟らせ
わたしに攻撃を向けさせる
わたしの守りはうさみみメイドさん
来た弾を叩き落として?
その動きを隠れ簑にし
孫一を指差し【華灯の舞】
……そんなに無防備だと狙い易い
心の臓を射抜く
宮落・ライア
【追跡・野生の勘】とアイテムの【嗅覚】で探索。
その特殊な嗅覚によりおおよその方向を判断。
そして野生の勘で獣以外が通った跡を見つけ追跡する。
先に見つけた場合は不意打ちとか苦手だから普通に出て行く。
先に見つかった場合は【激痛耐性・気合い・覚悟】で我慢。
とは言え距離があるうちでは相手は拳銃撃って来るだろうから、一度臨戦態勢には入れれば問題ない。
真っ直ぐにしか飛ばないただの弾なんて見切れるくらいに遅い。
相手が剣を抜こうとした段階で【見えざる手】を発動し抜かせない様推し留める刀をやんわり押し留める。
ねぇ、なんでそんな事するの。
何でそんな小さい子を手にかけるの?
何でそんなに私の感情を逆撫でしてくるの?
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!
子竜? 生贄……儀式。
………。なんかヤダ。助ける!
雑賀衆、っていうんだっけ? 隠れてそうだー。
五感を研ぎ澄まし、野生の勘で樹海に分け入る。
こーゆーの得意なんだ♪(野生児)
子竜に呼び掛けてみようかな。
『ぎゃおーん?』(竜の言葉で)
返事、戻ってくるー?(耳立てて)
アンちゃん。敵でも「犠牲」にしちゃダメだよ。
こういうのはね。
落とし前つけてもらう、っていうんだよ!?(にぱっ)
孫一兄ちゃん発見したら、接近戦の距離までダッシュで肉薄。
護りを信じて、多少の傷は覚悟の上。
致命傷になんなきゃよし!
UC発動。
舞妓姿で懐に飛び込み、白炎投射。
目が眩んだところに。今だ、アンちゃん!!
ヴィリヤ・カヤラ
知人に竜が好きな子がいるから、
これは見逃せないかな。
儀式をするなら広めの場所かな?
『地形の利用』と『情報収集』で
大まかな場所の割り出し、
『聞き耳』と『第六感』を使いつつ、
子竜が暴れてたら木に傷があるかもしれないから
それも頼りに探すね。
出来れば『目立たない』ように接近、
バレても『高速詠唱』の【ジャッジメント・クルセイド】で攻撃。
この儀式が成功したら泣く子がいるから殺すね。
戦闘時は『地形の利用』と『情報収集』を使って動くね。
【ジャッジメント・クルセイド】も使いながら動いて攻撃。
木が多いなら刻旋を木の間に張ってトラップを仕掛けてみようかな
使える手段は何でも使って勝ちにいきたいな。
「ほう、過去の剣豪と戦えるのですか、それはそれは楽しみですね……」
上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)は強い者を好む。代々剣術を磨く家門にて生まれた少女は、他の多くがそうあるように、自らこそが天下無双たらんとの望みを持ち、であれば当然、強きと言われる者には興味を示す。名にし負う雑賀衆の頭目とあらば、相手にとって不足もなかろう。
「ですがその前に儀式とやらを邪魔しなければいけないようですね。面倒ですが仕方ありません」
本当に面倒そうにしながらも、後の楽しみのためにしばらく周囲を探索し、その痕跡を見つけた。木にしがみつき引き摺られ、力及ばず引き剥がされた、望まぬ仔竜の進行の跡。続く標を探すも、周囲一面は視界を遮る樹海であり、定点よりの観測では要領を得ず。そこで祢々は飛び上がり、枝の上からの観測を始めると、もう少し離れた所に同様の手がかりを発見する。この調子なら、そう時間は掛からずに儀式の場までたどり着けることだろう。樹上の剣豪は俯いて、口の端を吊り上げて笑った。
ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)も、発見された樹木の傷を手掛かりとして、一つ一つを辿りながら全体の位置関係を把握し、進行方向を推測する。爪痕の向きや、僅かに残る足跡の向きなど、少ないながらも有力そうな手掛かりは見つかっている。
「これは見逃せないかな」
これは、その手掛かりのことだけではない。仔竜が生贄として犠牲になることは、見逃せない。彼女の知人には竜が好きな者がおり、その人にとってはこうして命を奪われてしまうことは非常に悲しい事であろう。隣人を思えばこそ、竜自体には思い入れはなくとも救出の熱も入ろうというものである。それが友愛によるものにしろ、忖度によるものにしろ。
と、その痕跡が途中でなくなってしまった。明らかに何かがあった痕跡はあるのだが、そこにあるのは『痕跡の消された』痕跡。周囲を探索しても続く爪痕も足跡も残っておらず、目視を主とした追跡は行き詰ってしまった。途中から痕跡が消えているのは、ここから先は確実に隠れたい、ここから先は目的地が近いという証左であると言えるかもしれないが、見つからないことには…
「雑賀衆、っていうんだっけ?」
木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)はその隣にある妹へ問いかけながら鼻を動かし耳をそばだて、小さな気配を探し出そうとしている。見える痕跡がなければ、あとは獣の感覚が物を言う。かもしれない。
『ぎゃおーん?』
人の喉から発生可能なのかも怪しい、形容しがたい咆え声をあげ、再び耳を澄ませて返答を待つ。もしかしたら返事があるかもしれないし、それを手掛かりにすることができるかもしれないという試行であった。しかし警戒しているのかはたまた竜語の中でも言語圏が違うのか、その返事はなく、木々に反響した祭莉自身の声が返るだけであった。近道は難しいようだ、地道に進むしかないらしい。
肩を落とす人狼の少年を他所に、同様に鋭敏なその感覚によって探索を行うのは宮落・ライア(ノゾム者・f05053)である。ただし彼女のそれは獣の能力ではない。獣であれ人であれ、種として持つ者はまずあるまい。『悪意を嗅ぎ付ける嗅覚』。ヒーローになるを望む彼女にはもってこいの能力と言えようか。
少し嗅げば、彼女は眉を顰める。余人には知れようはずもないが、それはとても酷い臭いらしい。それこそ鼻の曲がるような、ドロドロと濁り澱んだような悪臭。ライアはその源に向かい、他の猟兵たちを先導して奥へと分け入っていく。もしかしたら、この嗅覚は持たざる者の方が幸せなのだろう。
皆はライアに、ライアは悪意に、それぞれ導かれながら進んでいけば、樹海深くに開けた儀式場が見つかった。外から見えにくいよう偽装された簡素なもの。その場に一体のオブリビオンと、一頭の仔竜がいる。見ればなるほど、頑強な轡のようなものを嵌められて、まともに鳴くことも出来ない様子である。
「あらら、見つかっちまったか」
手には小さな刃を持ち、今にも生贄の首に突き立てんとしていた。鈴木『孫一』重秀である。
「何かの犠牲で事を成すのね」
木元・杏(ぷろでゅーさー・あん・f16565)は怒りの色をその目に宿しながら、敵を見据えている。面倒そうな表情にも構わずに、少女は宣言する。
「ならわたしは、貴方を犠牲にあの子も世界も守る」
「アンちゃん。こういうのはね。落とし前つけてもらう、っていうんだよ!?」
明確な殺意の乗った妹の言葉を諫めるように、祭莉は速やかに言い換えて、笑いかける。杏もその言葉を顧みてはっとし、憎悪に支配されたその表情に少しの柔らかさが戻った。
「…少し怒って冷静さ失くしてた。ありがと、落とし前つける」
「お遊戯は終わったかな」
半眼で寒々しげに見つめる雑賀、少し高い声で揶揄うように言いながら、その手の匕首を抛り捨て、抱えた竜をも投げ捨てた。小さな呻き声。そうして示威のために刀を抜こうとするも――
「ねぇ、なんでそんな事するの」
まったくその刀は抜ける気配がない。まるで何者かによって柄頭を抑え込まれているかのような。『見えざる手』によって抜くことを妨げられているかのような。
「何でそんな小さい子を手にかけるの? 何でそんなに私の感情を逆撫でしてくるの?」
ライアの目には、先の双子のようなオブリビオンの犠牲すらも避ける、いわゆる慈悲心のようなものも浮かんでいない。純粋に、邪悪を厭う嫌悪の目である。
「しょうがないでしょ、仕事なんだから」
威圧されるを気取らせないようにか、なおも軽口を叩きつつ、抜くを諦めてその右手をホルスターへ。そして口から火を噴いた、人を傷害するために効率化された道具はしかし、その相手には特別の効果を持ちはしないらしい。単純な軌道、単純な挙動。理解するには易きに過ぎる。
それでもそうして作った隙は、孫一の退がる間を与え、距離を取っては構えた銃に、祭莉が素早く走り込む。
「行くよ、アンちゃん!」
「ん、目一杯暴れてきて?」
名手の銃口を前にして、少年には恐れも躊躇も一切ない。シングルアクションとは思えない程の間隔で放たれた銃弾は、その標的の肩口に食い込み血を噴かせ、その眉間を捉えんとして、白銀の光によって弾かれた。
「致命傷になんなきゃよし!」
妹による護りを絶対と信じればこその捨て身ならざる突撃は、祭莉の望みの通り、孫一の望みに反し、肉薄し触れ合う距離に。その瞬間に猟兵は煌びやかな着物姿へとその装いを変え、持ちたる舞扇を敵へとかざし、白炎燃やして目を塞ぐ。小さな呻きに効果をみとめ
「今だ、アンちゃん!!」
「射て」
転がり避けて射線を作れば、その後ろから指をさす杏。先は護りに使われた白光は、今度は必殺の銀箭へと。吸い込まれるようにして敵の胸を突き刺さって。
「…揃いも揃って物騒なお子さまたちでまぁ」
恨めしげに眇めた目元を隠すように帽子のつばを引きおろし、オブリビオンはなおも道化たような調子で言う。小さくはないダメージはしかし、僅かに狙いをずらされて、巧く軽減されてしまったようだ。
標的を仕留めるには多段に構え、弾数を増やすがオーソドックスに確度を引き上げる良策と言えよう。ユーベルコードとて例外ではなく、天から降った次なる一射によって、雑賀の身体が貫かれた。見渡せばほど近く、少年少女と戦ううちに、音無く寄ったヴィリヤ・カヤラ。
「この儀式が成功したら泣く子がいるから殺すね」
見知らぬ多勢のためよりも、より親しい一人のためか。ある種究極的にエゴイスティックに、淡々と殺意を告げながら更なる攻撃のために指を向け。
「いや無茶苦茶だねぇ、猟兵ってのは正義の味方じゃないのかね?」
呆れたように慌てたように、あるいは感心するように。声を上げつつ宙を飛び、少し後ろへと着地する。
「こういうことだって平気でするとはびっくりだよ」
眼前の、今ほど回避した鋼糸の罠を指でなぞって見せ、苦笑して見せる。多段の構えの一つは見破られてしまったらしい。ヴィリヤは肩を竦めて木の間に張った刻旋を引き揚げた。
「―――ひ、火縄銃じゃ無ェのかよッ!!!」
「は?」
上げられた声に、何ごとかと一瞬驚くオブリビオン、向けた視線の先には驚愕の表情の伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)。
「そりゃ、連発できない上に雨が降ったら使い物にならないライフリングもない火縄銃なんてオレも使いたくないけど…けど…!」
「詳しいね…」
造詣の深さより圧の強さにたじろぎながら、オブリビオンの注意は彼女へと向かう。しかし熱い弁舌は止まる気配もない。
「火縄銃には火縄銃の良さ、ロマンがあった筈だろ…! それを忘れちまったのかよ――雑賀さん…!」
すでに呑まれていることに、気付いているのかいないのか。銃口を向けたまま、応答してしまう孫一。
「悪いけどね、俺も仕事でやってるんだ、そんなロマンなんて…」
「あ、そう?ボクも興味ないけど」
その話法が、多重人格ゆえか本人の話術に起因するものかは分からない。ともあれこのガンマン、驚くほどの温度差で虚を突かれ、そうして生まれた意識の間隙を突かれ、無防備な状態での猛攻を受けることとなった。ユーベルコードで二つの人格を二つの身に分け、それぞれが手に火器を持ち、ショットガンとアサルトライフルのフルオート・クロスファイア。先述の通り、弾数を増やせば対象を捉えるのは容易くなるのだ。
「拳銃には負けないぞ?」
『そりゃそうでしょ』
などと口に出す余裕もないようで、深手を避けつつ慌てて退き岩陰へ。ようやく一息ついた所に――
「ははは。銃か。面白い。俺の剣術は銃弾なんぞに負けん!!勝負だ!!」
「八丁念仏ですか! いい刀ですねぇ折り応えがあります!」
御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)と上泉・祢々、息をつかせぬテンションの二人の剣豪がやってきた。今度は抜ける刀を構え、うんざりしながらも踏み込んで。
「この切っ先に一擲をなして――」
上段に構えた刀也の太刀が襲うより先に擦り抜けて、その背後にて涼しげに言い放つ。
「もう斬ってるよ」
その刀、八丁念仏の刃を振れば、土へと血の飛沫が掛かる。同じく猟兵の腹からも、少なくはない血飛沫が落ちる。
「兄さん、ちょっとナメすぎじゃないかね。 …そっちのお嬢さんも」
斬られた剣豪を後ろに、あろうことか丸腰で向かって来た少女へ切っ先を向ける。飄々とした口調ながらも、その視線は鋭い。あるいは余裕を失っているのか。その捉えどころのない態度のように流麗な太刀筋は、易々とはそれと見切らせない。武器を持たぬ彼女は、それを受け流し、躱し、時にはその身を裂かれながら、次第に巧く合わせるようになり。
「筋は良いんだろうけど、その細っこい腕だけでは勝てないんじゃないの?」
「この手、この足が私の刀です」
嘲る言葉と共に振るわれた一撃は、流すでもなく、ついに受け止められた。目を見開いて驚いて見せる孫一は、さすがに焦りを露わにする。手数も多くなり、力も強くなり。しかしそれらはことごとく、手刀で、拳で、弾かれる。そして…
「所詮は過去の存在、口ほどにもなかったですね」
鋭く澄んだ音を立て、名刀は中ほどから叩き折られた。宣言通り、その刀自体の破壊をなした彼女は、眼を疑う敵を相手に、興味を失ったように言い放つ。
「私の勝ちです」
そして、オブリビオンには反論も許されなかった。
「――一擲をなして乾坤を賭せん!!」
先ほど斬り倒したはずの男が、孫一を縦真っ二つに斬り捨てた。確かに間違いなく、その身体からは血が流れだしている。それでも平然とした顔で、男はそこに立っている。
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。てめぇは確かにいい腕をしてるが、だからこそ読みやすい。撃つ瞬間の気配を消せるようになったら俺と対等だ。また相手をしてやる」
傲然と見下ろす男に向けて、消え際に言葉を投げ返し、オブリビオン・鈴木『孫一』重秀は消滅した。とかく儀式は阻止されて、小さな命と多くの命は守られたらしい。
「嫌なこった。こんな『化物』どもの相手、願い下げだね」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴