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エンパイアウォー②~褪せた群晶、朧ろげな僧衣。

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●サムライエンパイア
 町の四方から迫る物言わぬ軍勢。

 血の気もないのに動き回る、肩から奇妙な水晶を生やした薄気味悪い屍人に慄き、悲鳴を上げて逃げ惑う住人たちだったが、屍人は町を埋め尽くすほどの圧倒的な数だ。人々はやがて砂糖に群がる蟻のように屍人たちに飲み込まれ、屍人と同じものと化した。貧富の差も老若男女の区別も曖昧になり、ただ纏う襤褸の種類や凹凸が多少違うだけの、人を襲う怪物になり下がってしまう。

 怪物の名は水晶屍人。魔軍将の1人、安倍晴明によって作り出された動く屍だ。戦闘能力自体は高くないが、水晶屍人に噛まれた人間も新たな水晶屍人になる。雪だるま式に数を増やす、厄介な性質を持っていた。しかし、本能で動く水晶屍人だけならば、そこまで脅威ではない。

 知性のない屍人を統制し、1つの群れとして機能させているのは黒い僧衣の男だった。
 屍人に混じり民衆を追い立て、慈悲を乞う弱者を嘲りながら踏みにじる。そうして順調に水晶屍人の数を増やしていく。

「仕事と趣味を両立できるとは! 今回の主人は、中々に話の分かるお人だ」

 この調子ならば江戸を壊滅させることさえ容易い。
 ああ、どれだけの嘆きが聞けるだろう!

 愉悦に塗れた声で言う。相貌が凶悪に歪む。
 徐々に数を増す屍人を率い、僧衣の男は南下する。

●グリモアベース
「既に承知のことだとは思うが、オブリビオン・フォーミュラが現れた」

 真剣な表情で切り出したのはシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)だ。

「徳川幕府軍を1人でも多く魔空安土城へ届けるため、諸君に頼みたいのは水晶屍人を指揮するオブリビオンの討伐だ。町を襲い、数を増やす前に敵を叩け」

 予知で見えた指揮官は、黒幕の助言者を名乗る僧衣の男。
 無数の水晶屍人に守られ、街道沿いの宿場町や集落を蹂躙しながら手勢を増やし、着実に江戸へ進軍していた。
 今から向かえば、町に辿りつく手前で止められる。最低限の被害で済むだろう。

「このまま侵攻を許してしまえば、徳川幕府軍は江戸の防衛のための戦力を残さなければならなくなってしまう。それは避けたい」

 指揮官さえ倒してしまえば、知性のない水晶屍人は連携が取れなくなる。猟兵ではない武士たちでも対処が可能だ。

 ただし、と苦い顔でシェーラが続けた。

「すまないが……諸君には、水晶屍人の軍勢に守られた僧衣の男を探し出すところからやってもらわねばならないのだ」

 大勢の敵の中から、指揮官1人を見つけ出すのは骨の折れる作業になる。
 猟兵ならば噛まれても水晶屍人にならないが、噛み付き自体の負傷は防げない。どれだけ消耗を抑え、指揮官に仕掛けられるかが肝になりそうだ。

「1つの世界を守るためにも。そして、罪なき人々の安寧のためにも。どうか、頼む」


志崎キザシ
 お久しぶりです。もしくは、はじめまして。
 志崎キザシと申します。

=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

 此方のシナリオでは、水晶屍人の軍勢に対処しつつ、ボスを倒すのが目的です。
 水晶屍人を防ぐ、強行突破する、素早くボスを発見するなどあると思いますが、具体的な方法が書かれていれば判定に反映させていただきます。
 水晶屍人への具体的な対応がない場合でも、弱いんでどうにかやり過ごせます。

 それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『黒幕の助言者』

POW   :    死灰復然(しかいふくねん)
【Lv体の武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    含沙射影(がんしゃせきえい)
【無数の影の刃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    電光雷轟(でんこうらいごう)
【錫杖】を向けた対象に、【激しい雷光】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:かな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

片桐・公明
雰囲気:真面目、不機嫌ではないが何時もより冷ため

正面の軍勢を見据えつつ腰を落として軸をその場で固定
近づく敵を気にも留めず呼吸を整える

閉じていた瞼を開き
両の手の拳銃を正面に向けてUCを発動
赤壁の大火を模した業火は敵軍を壊滅できなくとも少なくない数を焼き滅ぼすだろう
「…まだ見当たらないわね。指揮官はもっと奥かしら」

業火に足止めを食らった敵軍に単身突撃する
「ま、適当に倒していれば見つかるか。」

敵軍中央でもUCを時折使う
「それっぽいのと威力が上がるから力溜めているだけで、別にこれくらいならノータイムで撃てるわよ?」

指揮官を見つけたら、武器を刀に持ち変えて、接近戦を仕掛ける
「もう逃がさないわ。」



●片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)
 町を背にして公明が立つ。
 正面に迫る水晶屍人の軍勢を見据え、腰を落として軸をその場に固定した。近付いてくる敵の集団を気にも留めず、目を閉じて呼吸を整える。

 だんだんと近付いてくる屍人たちの気配が、他人事のように遠い。
 意識が内に沈む。今、公明の内面は凪いだように静かだ。

 前触れもなく公明の瞼が開かれた。
 目前まで押し迫っていた敵軍の先頭、目玉のない眼孔を晒す屍人の鼻先に、2つの銃口を突きつける。

「──すべて焼き尽くす」

 普段よりも温度のない声音で囁かれた詠唱は、それでも十全に効果を発揮した。
 公明が父から受け継いだ両手の拳銃が吼える。業火のごときエネルギーの奔流が、公明に襲い掛からんとしていた水晶屍人を押し流し、なおも勢いを弱めずに後続を巻き込んで吹き飛ばす!
 赤壁の大火を模したという炎は、敵の軍勢の少なくない数を焼き滅ぼしていた。倒しそこなった屍人ですら、纏わりつく焔に動きを止めている。

「……指揮官はいないのね。もっと奥かしら」

 確認するように呟いた途端、飛んでくる殺気。
 公明がその場から弾かれたように飛び退くのと同時、激しい雷光が地面を穿った。雷に込められた威力を示して土が抉れ、砂礫が舞う。

「今ので仕留めるつもりだったのですが。うまくはいかないものですねぇ」

 進軍の止まった軍勢の中から、涼しい顔で男が姿を現した。周囲の屍人とは違い水晶を生やしておらず、僧衣だ。
 確認するまでもない。敵軍の指揮官、黒幕の助言者だった。

「ちょうどよかった。今からお伺いしようと思っていたの」

 2丁の拳銃を刀に持ち替え、公明が嘯く。間髪入れずに敵との距離を詰め、疾風のごとく斬りかかった!

「おやおや、あなたのような美しいお嬢さんに迫られるとは光栄だ。歓迎しますよ」

 対する僧衣の指揮官は余裕を崩さない。飄々とした態度のまま、手にした錫杖で刀を受け流す。男の顔が嘲笑に歪む。
 しかし、公明だって修羅場を潜り抜けた猟兵だ。返す手で続けざまに振るった一閃は、僧衣の下の皮膚に一筋の赤い線を走らせた。

「ッ、この、アマ……ッ!」

 黒幕の助言者の表情に、はじめて焦りが混じる。

「歓迎してくれるのよね? もう逃がさないわ」

 公明が、誘うように笑う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィヴィアン・ランナーウェイ
アドリブ・連携歓迎

ふむ、やることはひとつ。
最短で、最速で、一直線ですわ。
槍を構え、●ダッシュで敵陣を突っ切ります。
どうやら先程の方が派手に暴れたようなので、その方向へ走り抜ければ敵の親玉に会えるでしょう。
まあ、多少の怪我は●覚悟の上ですわ。

さて、敵の親玉と遭遇すれば即座に接近。
その杖を向けられる前に打ち倒す……、とまあそこまで上手く行きませんわよね?
攻撃をくらいそうになる前にUCを発動。
槍を放り投げつつ敵の背後へ転移。
背中が隙だらけですわよ?
転移先で槍を受け止め、背後から一撃を見舞います!

私から言わせれば、もう少し防御力あげた方がいいですわね!



●ヴィヴィアン・ランナーウェイ(走れ悪役令嬢・f19488)
 退けない戦場にあっても、ヴィヴィアンがやることはひとつだ。

「最短で、最速で、一直線ですわ!」

 先陣を切った猟兵によって開かれた、指揮官への道。
 いまだ熱の残滓が漂うその足跡を、ヴィヴィアンは槍を構えて一気に走り抜ける。多少の怪我は覚悟していたものの、水晶屍人が邪魔をしてくることはなかった。動きの遅い屍ごときが、女豹の脚に追いつけるはずもない。
 赤い颶風となって駆けるヴィヴィアンは、放たれた矢のように敵の親玉を強襲する!

 勿論、黒幕の助言者だって黙って見ているわけではなかった。
 ヴィヴィアンが詰め寄ってくるのを察知するや否や、それまで切り結んでいた相手を大きく弾き飛ばし、振るった錫杖の先端を赤髪の猟兵へ向ける。途端、空を裂いて凶悪な迅雷が飛んだ。
 
 雷の攻撃は一度見ている。杖を向けられる前に打ち倒す……のが最善だったが、そうでなくても来るとわかっていれば対処できる
 ヴィヴィアンは不敵な笑みを浮かべ、槍を放り投げて消えた。

「?!」

 折れ曲がった軌道を描く雷は、ヴィヴィアンを捉えきれなかった。雷光が数瞬前までヴィヴィアンのいた場所を叩き、僧衣の男が言葉を失う。男が我に返った時には槍が間近まで迫り、慌てた様子で身をひねって躱す。
 槍は黒幕の助言者に刺さることなく、男の後ろから伸びてきた女の手の中に収まった。
 ヴィヴィアンだ。彼女は僧衣の男の背後に転移していた。

「おーっほっほっほ! 背中が隙だらけですわよ?」

 場違いな高笑いがこだまする。
 譲れぬ思いを貫くための槍が使い手の意思に従う。
 気高き光に包まれた猟兵が、悪しきオブリビオンに一撃を見舞う!

「くッ、背後を取られるとはなんたる不覚……ッ!」

「私から言わせれば、もう少し防御力あげた方がいいですわね!」

 敵の腹に風穴を開けて、赤い猟兵は快活に笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
数を散らして接敵しろっつーなら、手数を増やすかね
餌時で黒豹を喚んで
一撃で散らされない程度の合体はしつつ、数を維持して突っ込ませる
半分は敵将の発見優先で特攻、残りは俺と壁の処理な
獲物は獣奏器。屍人連中は普通に殴って倒せるもんかね。物は試しだな
まぁこの際見つけられんでも敵の数減らせりゃ上等だろ

屍人も含め、敵からの攻撃はそこらへんの屍人を盾に防ぎたい
なるべく消耗は抑えたいし
黒豹を盾には絶対にしねぇ

上手く見つけられたら、残ってる黒豹合体させて強めのやつをぶつけてやる
でかいのに絡まれてる隙突いてぶん殴れりゃなお良いな。殴りてぇ
上等なご趣味を満喫してらっしゃるところ悪いけど
大人しく、餌になってやってくれや



●エンティ・シェア(欠片・f00526)
「数を散らして接敵しろっつーなら、手数を増やすかね」

 エンティの視線の先にいる水晶屍人は、当初より数を減らしていたもののまだ多く残っている。1人で捌くのは酷な話だと断じて、彼は猛獣の幼体を喚びだした。小さな体躯ながらも美しい毛皮を持つ黒豹が数十頭、エンティの傍に侍る。

「全力で、喰らってこい」

 合図と同時、黒豹たちが一斉に飛び出した。半分は敵将を見付けるために屍人の間を縫うように駆け、残りはエンティとともに敵に突っ込む。
 幼いとはいえ狩りをする獣だ。しなやかに跳躍して屍人に飛びかかり、喉元に食らいつき、水晶を噛み砕く。反撃する間を与えない、見事な急襲だった。
 エンティも負けじと杖型の獣奏器を振り回し、屍人を殴る。普通に殴打するだけで倒せるかは不安だったが、黒豹がやったように水晶を砕けば無力化できた。思ったよりも脆い感触が、杖を通して手に伝わる。
 これなら押し切れると、エンティがほくそ笑む。

「こりゃ、見つける前に全滅させちまえるかもな」

「それは困る。弱くとも安倍晴明様より預かった、大切な戦力なのでね」

 数匹の黒豹に追い立てられ、僧衣の男が姿を現した。口調とは裏腹に表情には余裕がなく、焦りすら見える。

「随分とみすぼらしい格好だな。あんたにゃ似合いだ」

 腹に風穴を開けた指揮官は苦々しい顔だ。しかし戦意は衰えていないようで、横一線にに錫杖を振り、無数の影の刃を放った。厚みのない刃が無差別に飛び、水晶屍人にすら突き刺さる。

「大切な戦力じゃねぇのかよ!」

 屍人を盾にして攻撃をやりすごしながら、エンティが叫んだ。が、僧衣の男が気にした様子はない。エンティは舌打ちして獣奏器を鳴らし、獣たちに指示を出す。
 黒豹たちが静かに動き出す中、エンティが言う。

「ま、上等なご趣味を満喫してらっしゃるところ悪いけど」

 大人しく、餌になってやってくれや。

 主人の言葉を待っていたかのように、融合して一頭となった強大な黒豹が突撃する!
 その場にいた全ての獣が合体した黒い豹の力は絶大で、一撃一撃が必殺だ。凶暴さを増した獣の攻勢に、敵の指揮官は防戦一方となっていた。

「誰がッ、獣なぞに……ツ!」

 僧衣の男は錫杖で黒豹の重い前脚を受け止め、力の方向をずらして避けた。しかし体勢を崩し、大きな隙を晒す。
 エンティは好機を逃さず、獣の速さで敵に仕掛ける。獣奏器を振りかぶり、更なる致命を見舞う!

 鈍い音がした。僧衣の男の額が割れた音だ。

「────ッッッ!!!」

 獣のような咆哮が、僧衣の男の口から漏れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
水晶屍人は防ぐし指揮官も狙う
なに、大した問題じゃねぇさ
テメェが呼ぶ嘆きも此処で仕舞だ

◆行動
敵軍の前で【万の軍勢】使用
喚び出した軍勢のうち、弓兵やマスケット銃兵を城塞内に残し、更に近接歩兵を城塞両脇に配置して防衛線を形成。進軍する水晶屍人を抑えさせる

その上で、俺自身は重騎士と軽騎兵を率いて敵中突破し指揮官を探す
自分用の騎馬も城塞で調達

武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギア
防御や足止め等は《念動力》で補助
敵指揮官に対しては、邪魔にならない程度の数の重騎士と共に仕掛ける
他騎兵は退路断ちや水晶屍人制圧を行わせる

【死灰復然】対策
《破魔/属性攻撃/範囲攻撃》を込めた裁きの雷で霊体に対処



●ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)
 ガルディエが、どこかに潜む指揮官に宣戦布告するように敵を睥睨する。
 水晶屍人の軍勢は、大きく数を減じているものの未だ健在だ。けれど臆することなく、軽い調子で言い放った。

「なに、大した問題じゃねぇさ」

 水晶屍人は防ぐし指揮官も狙う。
 黒幕の助言者。テメェが呼ぶ嘆きも此処で仕舞だ。

 ガルディエの、いっそ不遜とも言える自信の根拠は、これから創り出すものにあった。
 負けるわけがないと知っていたのだ。

「勇将の元に弱卒無し──」

 鼓舞するように諳んじられた詠唱は、速やかに効果を発揮した。
 地響きと共に無敵の城塞が威容を現し、軍隊とはかくあるべしと示すような、規律正しい足音が土煙を舞い上げ響く。歩兵に軽騎兵、重騎士、マスケット銃兵。居並ぶのは、合わせて万の大軍だ。
 戦争でも始めようかという戦力。ガルディエの自信も当然だった。

 ガルディエは喚び出した軍勢に指示を出す。城塞内からでも攻撃できる兵は中に、更に歩兵は城塞両脇に配置して防衛線を形成した。水晶屍人への抑えを残し、ガルディエ自身は騎馬を駆って、重騎士と軽騎兵を率いて敵中突破を計る。
 数に勝るガルディエの兵が、水晶屍人を剣で斬り、槍で払い、銃や矢で射抜いて駆逐していく。戦闘力ですら劣る屍人は、武装した兵にとってただの戦果だ。

「やってくれましたねぇ……!」

 さすがに潜み続けていることができなかったのだろう、敵の指揮官が姿を現した。
 僧衣の男は減った水晶屍人の代わりにか、幾体もの武者の霊を召喚して使役する。手に手に刀や弓矢を持った怨霊が、ガルディエや兵たちに襲い掛かった!

 肉の身体にとらわれない軌道を描く攻撃は厄介だ。ガルディエは重騎士を前に立て壁にすると、裁きの雷を広範囲に放った。破魔の力に痺れたように動きを止める怨霊どもを数人の兵に抑えさせ、自身は残りの騎士と共に指揮官に仕掛ける。魔槍斧ジレイザの呪われた刃が、疾駆する騎馬の勢いを乗せて閃く!
 電撃的な一撃だ。僧衣の男に躱す術はなく、腕の一本を断ち切った。斬り飛ばされた腕が血を零しながら地面に落ち、赤黒い断面を晒す。

 黒幕の助言者が、血走った眼でガルディエを睨んだ。

「この、猟兵風情がッ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

神羽・リオン
高鳴不比等と参加
呼称:高鳴さん
UCは攻撃力重視

すごい数ね……ゾンビ映画でも観ているみたいだわ。
KBN-Avaritiaを双剣に変形させ、水晶屍人の軍勢を対処。
この武器の実践データも欲しいのよ。
高鳴さんと息を合わせて身軽に動き回るわ。

ちょっと待ってー!ストップ!ストップ!!
噛まれそうな時は高鳴さんが助けてくれるはず!
(『これ』って、私!?)
高鳴さんの言葉に赤面&一瞬ぼーっとして──いる場合じゃなかった。
痛……ッ!離せー!!傷が付いたらどうしてくれるのよッ!!

先を越されたみたいね?
指揮官とやりあう猟兵達に気付けば其方へ向かい
黒幕をおびき寄せ、挑発しながら攻撃を。
こちらも構ってくれないかしら?


高鳴・不比等
神羽リオンと参加
呼称はお嬢

本当ですねぇ、B級映画もかくやな光景。

オレは大人数を相手取るのは得意じゃないんですけどねぇ、んー…お嬢その銃で掃射出来たりしません?

ま、できることをボチボチやってきましょうかね。
お嬢とコンビネーション攻撃
坊さんを発見する手間が省けてラッキー☆

お嬢が危ない時は積極的に庇ったり、回避させてカウンターを決める

あぶねーぜお嬢!
生憎とこれの血も肉もオレのものなんでね、てめぇにはやらねぇよ。
これでも食らってな!

仕事と趣味は分けた方が良いって話もあるようですよ旦那。
こんなんじゃ三文芝居にすらなりませんぜ?そろそろ映画も終幕だ。

残像、見切りを多用し回避しつつ死角からのカウンター狙い



●神羽・リオン(OLIM・f02043)、高鳴・不比等(鬼人剣・f02226)
 貪欲という名の武器を双剣に変形させ、リオンは水晶屍人の軍勢と対峙した。

「すごい数ね……ゾンビ映画でも観ているみたいだわ」

「本当ですねぇ、B級映画もかくやな光景」

 リオンの傍らに立つ不比等は「大人数を相手取るのは得意じゃないんですけどねぇ」なんて軽口を叩きながら、己の主人の腰のものを見て進言する。

「んー……お嬢、その銃で掃射出来たりしません?」

「魅力的な提案なのだけど、この武器の実践データも欲しいのよ」

 リオンは手にした双剣を掲げて見せた。兵器開発会社の社長令嬢でもある彼女にとっては、自社製品のデータ収集も仕事のうちだ。これだけ敵がいれば捗るだろう。

 不比等がそれなら仕方ないと肩をすくめる。お嬢がそう言うなら従うだけだ。

「ま、できることをボチボチやってきましょうかね」

 自らの得物を手の中で弄びながら、不比等はいつもの笑みを浮かべて無造作に踏み出した。リオンと2人、息を合わせて水晶屍人の群れに突入し、玩具のようなナイフで敵を切り捨てていく。

 不比等とリオンは、戦場に生じた旋風のように屍人を切り伏せ、なぎ倒し、圧倒していった。お互いの意を汲んで行われるそれはさながら舞いだ。軽やかにステップを踏んで、流れるように武器を振り、相方の隙を補う。絶妙なコンビネーションだ。

 しかし、やはり数の差はいかんともしがたい。
 無尽とすら思えるような屍人の軍勢に体力を削られ、リオンが屍人に力負けしてしまった。仰向けに倒れ込み、剣を取り落とす。

「ちょっと待ってー! ストップ! ストップ!!」

 慌てて叫ぶが、動き回るとはいえ屍に理解できるはずもなかった。屍人は無防備にさらされた白い首筋に牙を突き立てんと、不揃いな歯を大きく剥く。ぬらぬらと光る生臭い液体が糸を引いた。いち早く芳醇な血肉を味わおうとする飢えた獣のように、数多の屍人が倒れた猟兵に殺到する!

 だが、窮地にあってもリオンの顔に怯えた色はなかった。気丈にも眼前の脅威を鋭く睨みつけ、弱った姿を見せない。
 だって、信じているから。

 彼は期待を裏切らなかった。

「あぶねーぜお嬢!」

 叫んだ不比等が 今まさにリオンを食らおうとしていた屍人に身体ごとぶつかって弾き飛ばす。そのままリオンと敵勢との間に割り込み、姫を護る騎士のように立ち塞がった。

「生憎とこれの血も肉もオレのものなんでね、てめぇらにはやらねぇよ」

 これでも食らってな!

 裂帛の気合と共に突き出されたナイフが、屍人に無数の穴を開ける。動きの鈍った骸を再び殺し、滅ぼし、葬っていった。残り少ない敵がさらに数を減らしていく。

 リオンは不比等の言葉に頬を染め、一瞬呆けてしまって──すぐに、そんな場合ではないと我に返った。敵は1体だけではないし、なにより指揮官だっている。これだけ配下の数が少なくなれば、黙ってはいられないはずだ。
 素早く立ち上がって剣を握り直し、戦場に目を走らせる。
 やはり、いた。

 満身創痍の黒幕の助言者が、肩を震わせ此方を睨んでいる。

「折角の……折角の軍勢を! 主人からいただいた、弱きものを嬲る力をッ! 貴様ら、何をしたかわかっているのかッ!?」

「仕事と趣味は分けた方が良いって話もあるようですよ、旦那」

 僧衣の男の言葉に答えたのは不比等だ。

「こんなんじゃ三文芝居にすらなりませんぜ? そろそろ映画も終幕だ」

 悪役が潔く退場するのも、いい映画のお約束じゃねぇですかい?

 飄々と言って、不比等はすっと駆け出した。
 身を屈めて上体を倒し、姿勢を低くして戦場を疾走する。

 対して僧衣の男は、死者の魂を呼び寄せた。
 無数の武者の怨霊が男の周囲を漂い、不比等を迎え撃つ。
 鎧武者が突撃し、幾本もの矢が飛んだ。猟兵を死の淵に引きずり込もうと、総力を挙げて暴威を振るう。

 不比等は悪霊の猛攻を見切り、残像を囮に身を翻して躱していく。息つく間もなく降りかかる刃も矢も、不比等を捉えることはできない。紙一重で免れてなお、へらりとした笑みが変わらず浮かんでいる。

「こちらも構ってくれないかしら?」

 暇を持て余した淑女のようにリオンが言った。口だけでなく、自ら斬り込んでいく。
 魔力で強化された双剣が、武者の霊を容易く両断する。霊体に肉はないが、魔力を纏った刃ならば溶かすように切れた。怨霊共が戸惑っているのがわかる。
 貴重なデータが取れそうね、なんて呟いて、けれどリオンの瞳は武者ではなく、敵の指揮官を見ていた。

 あれを叩かねば終わらない。

 一瞬、リオンと不比等の視線が交差した。
 お互いの意図を把握して、先に動いたのはリオンだ。

「手駒はこの通り、役に立たないみたいね。この程度なら、あなたの力量もたかが知れたものだわ」

 武者をまとめて斬り払いながら、黒幕の助言者に暴言を吐く。にっこりと笑って見せる余裕さえあった。

 リオンの笑顔に神経を逆撫でされたのか、僧衣の男の顔が赤く染まる。
 自身の手で天誅を降さんとするように、錫杖を手にリオンとの距離を詰めた。男の目には、目の前の女しか映っていない。錫杖が大きく振りかぶられ──

 勿論、ボディーガードは自らの責務を果たした。

 主人の肩を引き、入れ替わるようにして不比等が前に出る。
 不比等は振り下ろされる錫杖の柄を押して力の流れを逸らし、勢いにつられてたたらを踏んだ僧衣の男の、隙だらけな腹に刃を叩き込む!
 同時に放たれた無数の斬撃は、敵の肉体と命脈を断った。声も出せぬまま指揮官の身体が崩れ落ち、そのまま他の屍と同じように動かなくなる。黒幕の助言者に呼び出されていた武者の霊が霧散し、指示する者を失った水晶屍人が進軍を止めた。

 不比等が息を吐き、肩をすくめる。

「所詮はB級だったねぇ」

「映画じゃなくて現実だもの。こんなものでしょ」

 と、リオンは武器をしまって踵を返した。

「さ、帰りましょ。データを解析しなくちゃならないわ」

 エンパイアウォーはいまだ終わらず、倒すべき敵はこの世界に蔓延っている。
 けれども、1つの脅威は去ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト