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エンパイアウォー④~魔剣は幼竜を討つ

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 富士の裾野に広がるはかの有名な富士の樹海。鬱蒼と生い茂る緑の迷路は立ち入った者を惑わせ、時に生きて返さないこともある。そんな森の奥深くに石造りの祭壇がある、それはこの世には見当たらないものであり、けれどもその異質さが畏怖を感じさせる。
 祭壇と言うからにはその上には捧げものがある。何かといえば蛇だ、ただの蛇ではなく翼生えた蛇だ。これもまたこの地のものではない。ケツァルコアトルと呼ばれる異界の龍である。しかし、小さい。恐らくはまだ力を付けていない子供なのだろう。
「……本当に来るのか? こんな蛇一匹で」
 動きを封じられた幼竜の前で剣呑な空気を漂わせる女が一人。その瞳は冷たく幼竜を見るだけであった。
「……半刻したら殺そう、こんなところに来る物好きなぞおらぬ」
 無銘の剣鬼はそう呟いた。己の剣を磨くこと以外に望むものがない者は、時間すら惜しかった。


「エンパイア・ウォーが開始されました」
 自動・販売機(何の変哲もないただの自動販売機・f14256)が淡々と電子音声で解説する。
「織田信長が蜂起し、徳川幕府がこれを修めるために10万の派兵を行っています。そしての織田軍はこれを阻止するためのいくつかの作戦を立てています」
 自動販売機は背後の映像を切り替える、すると見事な山が映し出される。
「その内の作戦の一つで、サムライエンパイア最高峰の山、富士山を噴火させるべく活動しているオブリビオンがいます。噴火した場合、事後処理で兵士の人員が裂かれることとなるでしょう。そのロスを発生させないよう、オブリビオンの活動を妨害する必要があります」
 画面は切り替わり、富士樹海の俯瞰図が表示される。
「この樹海の未確認地帯に噴火のための儀式場と、活動及び防衛の為のオブリビオンが存在します。これの撃破が妨害の成功条件となります」
 樹海は暗く、深い。効率の良い探索手段が必要となるだろう。或いはここの守護者は好戦的なのでおびき寄せる手段も取れるかも知れない。
「それでは今日もよい一日を」
 斯くして猟兵達は緑の戦場へと送り出される。


西灰三
いつもお世話になっています。
西灰三です。
今回はエンパイア・ウォーの一幕をお送りさせていただきます。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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詳しい状況はオープニングの通りです。
それでは皆様のプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『剣鬼・無銘』

POW   :    魔剣・首刎
【敵の攻撃速度を上回る居合抜きで反撃し、】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    魔剣・千鳥
【極限まで殺意を研ぎ澄ませること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【一瞬で間合いに踏み込み、神速の一閃】で攻撃する。
WIZ   :    魔剣・無銘
【居合の構え】を向けた対象に、【敵の逃げ道を塞ぐように放たれた無数の斬撃】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:kuraba

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は蒼焔・赫煌です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

石上・麻琴
■心情
富士山の噴火とは……いやはや、やることなすこと派手ですねぇ織田軍は
まぁ、厄介なのでその作戦は潰しましょう

■探索
基本的に移動はユーベルコードで召喚した白虎の式神の背に乗って行います
敵にこちらの存在を知らせおびき寄せる為に、技能:属性攻撃を五行の一つ、火行として使用し、上空に派手な音のなる花火を打ち上げながら移動します

■戦闘
白虎と連携しながら、刀となぎなたを駆使し敵と戦闘を行います
技能:破魔の力を武器に宿して挑みはしますが……はてさて、どこまで通じるのやら
■その他
アドリブ等は大歓迎です


月殿山・鬼照
「噴火はもちろん大きな災害でござるが、富士山は人々の信仰の対象でもありまする。人々の心を守るためにも、この企みは何としても阻止せねば」

●情報収集
富士山には修験道の行者が大勢いるので、そちらの人脈を使う【コミュ力、世界知識】
目撃情報や、異常を感じているという情報を得たら、それを手がかりに探索。

●戦闘
「邪悪な儀式を完遂させるわけにはいかぬ!」
敵を倒すというよりは、儀式の中断を目標とする。
【無敵城塞】で生け贄の竜を守る。
その間に他の猟兵さんがやっつけてくれたらいいなと。
UC発動時は不動明王の真言を唱える。
「ノウマク サンマンダ バザラダン カン」

※アドリブ連携ネタ大歓迎


リカルド・マスケラス
連携希望

「富士山を噴火させるわけにはいかないっすねー。まあ、探すのはみんなに任せるっす」
仮面を乗っけた宇宙バイクがそんなこと言ってます。探索は味方任せで、バイクに乗ってもらって脚代わりとか。
探索で詰んだなら上空に狼煙代わりにビーム砲放って挑発

戦闘では
「美人さんがそんな怖い顔しないでほしいっすねー。何事もラブアンドピース、愛と平和っすよー」
とかおちゃらけて【挑発】し、敵意や殺意を向けたのなら【視力】を込め【鏡魔眼の術】で自身に攻撃するように仕向ける
「自分からは攻撃しないっすよ。あと自分、お面なんで首ないんで、刎ねられるわけにはいかないっす」
不発なら鎖分銅で拘束したりして味方を支援




「富士山の噴火とは……いやはや、やることなすこと派手ですねぇ織田軍は」
「噴火はもちろん大きな災害でござるが、富士山は人々の信仰の対象でもありまする。人々の心を守るためにも、この企みは何としても阻止せねば」
 白虎の背に乗る石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)と月殿山・鬼照(不動明王の守護有れかし・f03371)は木々の合間に見える白冠を見やる、彼らは直様に探索に移るが視界も定まらぬ中、簡単には行きそうもない。
「……相手をおびき寄せたほうが早いですかね?」
「ああ、それは見つけてからでも遅くないっすよ」
 不意に二人が声の方を振り返れば機械の乗り物に張り付いた白狐の面があった。リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)それがヒーローマスクの猟兵である事を理解するのは若干の間を於いてから。
「ああ、そこの羅刹の兄さんも乗ってくださいな。早い方に足を揃えた方がいいっすよ」
 リカルドの言葉に慣れぬ様子で宇宙バイクに跨る鬼照である。
「しかし、先程の言葉の意味は……」
「いやさっき、殺る気満々の猟兵がそこにいたからそっちに誘った方が良いと思ってっすね」
「なるほど、では仮面殿。ここよりやや北の方へ向かって下さらぬか」
 鬼照の言葉にリカルドは答え進路をそちらへと寄せる。速度を上げ付いてくる麻琴が並走して問う。
「そこに何かあるのですか?」
「富士の付近にはいくつか点穴と呼べる場所があるという話を耳に挟んだことがある。何か事を起こすならばそこだろう、と」
「なるほど。……では龍と場所を確保してから、守護者を撃破するとしましょう」
 彼らは相談しながら点穴の場所へ近づいていくと、途中で枝が鋭く切れている箇所を見つける。速度を落とし、なるべく音を立てぬように進む猟兵達は、ついに木々の奥にある石造りの祭壇を見つける。無論そこには退屈そうにしていた剣鬼の姿もあった。
「あれっすね」
「ではここで二手に分かれましょう」
 牛頭のバイクから鬼照が降りると、麻琴とリカルドは祭壇とは別方向に向く。
「武運を」
 二人が一気にその場から立ち去り、離れたところで二条の火線が空へと飛んでいく。守っていた剣鬼もその音と光に気づいたのか嬉々として祭壇を離れていく。
「首尾良くいったか」
 残された鬼照はすかさず祭壇へと詰め寄り、台の上に縛られていた幼竜の縄を切る。
「無事な様だな」
 彼は一息付くと不動明王の真言を唱える。仏の加護は失っても明王の加護はまだあるらしい。
「ノウマク サンマンダ バザラダン カン」
 彼は幼竜を守るように抱き、その身を黒金の如く堅牢とする。あとは他の猟兵の戦いが上手くいくことを祈るだけだ。

 一方上空に花火を撃ちながら移動していた二人だが、割合早く追いつかれてしまう。彼らが遅いと言うよりは剣鬼が速いのだろう。
「もう追いついてくるとは……」
 麻琴が薙刀と刀を手にした状態で、背後から現れた剣鬼に慄く。破魔の力を武器に込めるがこれが通用するか否かも疑問である。オブリビオンだからといって全てが邪霊というわけでもなし。
「ビビっているわけにも行かないっすよ。富士山を噴火させるわけにはいかないすし」
「そうだ、こんな所にまで来て臆している訳でもあるまい?」
 心底嬉しそうに剣鬼は口を歪める、麻琴は意を決し武器を握る。
「……行きます」
 麻琴は白虎を走らせて突撃する、同時に剣鬼も動き互いにすれ違ったところで両方の動きが止まる。
「他愛の無い」
 剣鬼の方が早かった、白虎を真っ二つにされた麻琴は力を失いそのまま地に伏せる。不満げに剣鬼はリカルドの方を見る。
「お前は少しは手応えがあるんだろうな?」
「美人さんがそんな怖い顔しないでほしいっすねー。何事もラブアンドピース、愛と平和っすよー」
「その戯言が我が剣の冴えとなるのなら聞いてやらんこともない」
 ピシャリと剣鬼は返し、リカルドに視線を向ける。だがそれこそが彼の狙い。
「自分に攻撃は無駄っす。全て己自身に返るんすから」
 彼に向かって来た剣鬼の姿は何かに弾かれるように後ずさる。
「これは……」
「自分からは攻撃しないっすよ。あと自分、お面なんで首ないんで、刎ねられるわけにはいかないっす」
「……成程、これは面白い瞳術だ。自らと打ち合えるとは」
 剣鬼はリカルドの言葉を聞いていないようだ。どうも何かヤバイスイッチを入れた気がする。
「おい仮面、今のをもう一度やってみろ。自らの技を受けられるというのはまたとない機会だ」
 リカルドはこのまま行くと自らに向けられる感情が敵意ではなくなるかも知れない。そんな恐怖を感じながら鏡魔眼の術を打ち、他の猟兵の援軍が現れたら麻琴を連れて撤退するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神羅・アマミ
此度の敵は神速の居合使いか!
生憎妾はそのような素早さを持ち合わせておらぬ。
盾キャラじゃしな…盾キャラじゃしな!

なればコード『操演』にて呼び出したる蜘蛛型ドローン、オクタビアスくんを背負い手数で勝負を挑むぞ。
狙うべきは奴の「速さに対する絶対の自信」じゃろうな。
正面切って戦ってもジリ貧に追い込まれることは必至。
じゃが、ここぞという場面で逃げると思い込ませ、妾は敢えて回避せぬ。
『無銘』の一撃を受け切って見せる!
僅かにずれた一拍へ勝機を見出すぞ!

死合いの最中、こっそりパージしておいたオクタビアスくんに死角からの一撃を加えさせるのじゃ。
これが必ずや奴のファイティングコンピュータを狂わせる要因ともなろう!


上泉・祢々
死合たいのならお相手しましょうか
おびき寄せるためにそうですね……狼煙でもあげます
幸いここは樹海の中で燃やすモノには困りませんから
生贄の解放は他の親切な方に任せます
どうでもいいですし

では来てくださったらまずはご挨拶でも
後ろ回し蹴りで即頭部を狙います

防がれるのはわかっていますよ? だって挨拶ですから
居合の兆候を察知したら身体を空中に捻り上げ回避
振りの速さと間合いは一度見ればわかりますし多少の傷は必要経費です

体勢を立て直し本命といきましょう
首へ貫手を放ち先程測ったタイミングでそのカウンターの居合に合わせ後方宙返りをしながら太刀を避け相手の顎を砕く勢いで蹴りあげます

さぁ、まだまだ死合ましょうか


ヴィクティム・ウィンターミュート
なるほど、剣鬼の類か
だったら話は簡単だな?
自分の剣を磨くこと以外に興味ない奴なら…樹海を通った痕跡を消そうなんざ考えもしねえはずだ
その痕跡、バッチリ【追跡】させてもらうぜ?

【聞き耳】を立てながら【情報収集】し、位置を割り出す
発券次第【挑発】をかまして攻撃を誘いにかかる
「剣の腕にしか興味がない奴が、織田軍に従ってこそこそ工作かよ?口ばっかの鈍らかい?つまんねえなオイ」てな具合に

研ぎ澄まされ、突き刺さるような殺気を合図にUC起動、再起動タイマー設定
距離を詰めて来た瞬間、大脳サイバネを【ハッキング】、脳をシャットダウン
完全脱力で受ける
すぐさま再起動開始

掠め取った力を【カウンター】でぶちかます!!


アイリーン・ルプス
連携・アドリブ歓迎
とても愚直な求道者のようね。でも、此方は手段を選ばずに倒させてもらうわ。

【緑柱石の罪咎】を発動、不可視化させて樹海に放って【撮影】する事で【情報収集】し、『フレミング』で解析する事で居場所を割り出すわ。同行者がいれば、情報を共有。
到着後、【目立たない】ように立ち回りながら、機械蜂を【カウンター】気味に盾にして味方を守ったり、誰もいない所で【だまし討ち】の要領で派手に自爆させて気を逸らす事で味方を援護。
最後は生き残りを全機敵に張り付かせ、一斉に自爆。爆発によるダメージを狙うわ。

卑怯でごめんなさいね。でも、戦いで大切なのは、如何に相手を殺すかじゃない。如何に生き残るかなの。




「……とても愚直な求道者のようね」
 先行させた機械蜂……即ち正しい意味でのドローンから届けられる情報を移動しながら周りの猟兵に伝えるアイリーン・ルプス(ヒドゥン・レイディ・f02561)。彼女には既に状況が掴めている。花火の上がった方に向かうのが正しそうだ。
「なるほど、剣鬼の類か。だったら話は簡単だな?」
「はい、死合たいのならお相手しましょうか」
 彼女の報告を聞いて不敵な笑みを浮かべるヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)と上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)。彼らの表情にアイリーンは剣鬼と似たようなものを感じた。そしてぱっと見に於いて二人共ほぼ無手である。強いて言うのならヴィクティムがナイフを持っているくらいだが、とても白兵戦が得意なようには見えない。
「ハッ、信頼できないかい?」
「ええ。昔、貴方みたいな命知らずを見たことがあるわ」
「で、そいつは止めたかい?」
「いいえ?」
 彼らの会話を聞いていた神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)がうむうむと腕を組んで頷いていた。
「よくもここまで命知らずが集まったものじゃのう」
 なんかまとめ役のように話を聞いているが、彼女も武器を持っているようには見えない。背中にでかい蜘蛛のような機械を背負ってはいるが。
「此度の敵は神速の居合使い……じゃな?」
「ええ。今、交戦中のを見る限り」
「それは俺も『聞こえてる』……間違いないぜ」
 アイリーンとヴィクティムの情報から状況を再確認するアマミ。
「そこでじゃな、それぞれどう戦うかプランを聞かせて欲しい」
「そんな事必要ですか?」
「まあ聞け、大方考えてるのは皆似たことじゃろう?」
 祢々の言葉にアマミが言うと、それぞれの想定を口にする。全て聞いた時のアイリーンの言葉が次の通りである。
「スリルは嫌いじゃないけど……正気なの?」


 森の中から現れた祢々が回し蹴りを剣鬼の頭部に向かって放つ。
「新手か」
 剣鬼は首を傾けるだけでそれを回避し、祢々は反撃を受ける前に距離を取る。
「挨拶にしてはやや軽いな」
「ええ、そちらのほうが良いかと思いまして」
 剣鬼の言葉に祢々は返す。最も相手の剣はこちらが見えている限りが間合いのようだ。つまり何時斬られてもおかしくはない。
「では、行くぞ」
 言葉を置き去りに剣鬼が彼女の目の前へ一瞬で踏み込む。相手の白刃の光が目に入ったところで彼女は空中へ逃れるが、剣閃が直角に曲がり祢々を追う。それが加速する前に素足で剣の峰を蹴り更に相手の後方へと降りる。
「はっ!」
 気合とともに手刀を敵の後ろ首筋に向かわせるが、刀がその間を阻む。剣鬼は剣の位置をそのままに身を翻し両手に力を入れる。いくら祢々の身が刀の如くと言えども長くは保つまい。だが彼女はここで腕に力を入れ逆に刀を弾く。
「もらった!」
 足の甲が剣鬼の顎を捉える。感触はあった、だが。
「なるほど、良い武だ」
「さぁ、まだまだ死合ましょうか」
 浅かった、そしてぐらりと祢々の体が揺れる。見れば彼女の腕から止まらないほどの血が流れていた。
「ここまでか、では死ね」
 即座に剣を振りかざし止めを刺そうとする剣鬼、だがその横からアマミが剣鬼に飛び込んでくる。
「邪魔だ」
「……うおぉ! 盾キャラじゃなきゃ死んでたぞ!」
 背中の八本の足を相手に突きつけてアマミが怒鳴る。彼女の背後で祢々が転送される。剣鬼は舌打ちしながらもアマミを見る。
「その傘とからくりがお前の得物か」
「おう、そうじゃ!」
 自信満々に言うがアマミははっきり言ってこの類の高速で攻撃してくる相手は苦手だ。事実、片手に収まる程度の打ち合いで既に腕が痺れてきている。
「この程度か」
 落胆する剣鬼だがその刃の冴えは衰えない、仕掛けるのならばここが頃合いだと彼女は『逃げを打つ』。
「こりゃかなわん! 逃げるんじゃよ!」
「逃さん」
 バックステップをして距離を取ろうとするアマミを追い、無数の斬撃を放つ剣鬼。だかその顔に浮かぶのは驚きの表情だった。
「どうじゃ? オクタビアスくんの一撃は?」
 血を流しながら笑うアマミを気にせずに、剣鬼は背中に刺さった蜘蛛の足を引き抜く。直様に蜘蛛は消えアマミの姿もなくなっている。
「大分計算が狂っているようだが……やっぱり剣士相手じゃないと勝手が違うかい?」
 更に現れるのはヴィクティムの姿だ。……一般に戦力の逐次投入というのは悪手であると言われている。だが彼らのプランはむしろこれを重ねてカウンターを確実に行い相手の戦力を削るという『正気ではない』作戦であった。或いは狂気に抗するのならばこれが最適だったのかも知れない。
「大体剣の腕にしか興味がない奴が、織田軍に従ってこそこそ工作かよ? そんなつまんねえ事ばっかやってるから不覚を取るんだよ」
 ヴィクティムは先程までの二人とは違い、無防備だ。何の武術の心構えもないと言っていい。だが度重なる戦いの中で高揚している剣鬼はその違和感に気付け無い。
「死ね」
 これまで幾度も放たれた神速の抜き打ち、だからこそヴィクティムがプログラムを走らせる事に間に合った。自らの脳を強制的にシャットダウンし運動系を止める。まるで立ち藁のような状態になった彼に一刀が振り抜かれる。
「……なんだ、手応えが……!?」
 彼がシャットダウンの前に用意していたプログラム、『前に腕を向けろ』。彼が意識を戻すと同時に最後のコマンドが実行される。
「喰らいな、これが『竜殺しの剣』だ」
 斬撃のエネルギーが増幅され、その手から放たれる。自らの剣よりなお速いそれをまともに受け剣鬼の体は大きく切り裂かれる。
「どうだ……ぐっ……」
 ヴィクティムも膝をつく、強制的にシャットダウンする以上生命維持に関わるパーツも無傷とは言えない。これで倒せなければ次の彼の攻撃はない。
「まだ……だ……!」
 剣鬼は体中から血を流しながらなお立ち上がる。剣が折れない限り自らもまだ折れないと言っているかのようだ。だからその剣が爆ぜて砕けた時、力無くぐしゃりと地面に倒れた。
「――卑怯でごめんなさいね」
 カメラ越しにその様子を見ていたアイリーンがつぶやいた。無数のドローンを倒れた相手に張り付かせては自爆させていく。繰り返し、繰り返し。
「でも、戦いで大切なのは、如何に相手を殺すかじゃない。如何に生き残るかなの」
 猟兵達は深手を負った者は多いが、誰一人として命を落としてはいない。先陣を切った猟兵達の戦いは全てを無事に切り抜けるため。命を守るために命を賭けたのだ。
「じゃあね」
 何度目かの爆破の後、剣鬼が消滅したのを確認したアイリーンは現場にまで行く。うずくまっていたヴィクティムに肩を貸し、他の仲間が回収されているのを確認してから自身も転送を頼む。
 ここには最早価値はなく、残されたのは祭壇のみであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月08日


挿絵イラスト