3
エンパイアウォー④~竜血は贄に、竜魂は鏡に

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0




 エンパイアウォー開戦より数日――現状は10万の幕府軍が、8月下旬に島原の『魔空安土城』に到着した時、その兵力が1万人以上残っていなければ敗北は免れない。
 まず予知された5つの苦難の成就は、8月10日。猟兵達はその阻止に奔走する。
「今回、皆に行って貰いたいんは、富士山麓の樹海。魔軍将の1人、侵略渡来人『コルテス』が、太陽神ケツァルコアトルの力を使って富士山を噴火させようとしとるんや」
 プリズムボールのようなグリモアを手に、各務・瞳子(七彩の聴き手・f02599)は猟兵達を見回す。
「富士の樹海に隠された儀式場で、コルテス配下のオブリビオンが富士山を強制噴火させる『太陽神の儀式』を行っとる」
 富士山が噴火すれば、東海・甲信越・関東地域は壊滅的な混乱状態に陥る。徳川幕府軍2割以上の軍勢を、災害救助や復興支援に割かなければならなくなるのだ。
「皆には、『富士の樹海を探索、儀式場を発見し、太陽神の儀式を執り行うオブリビオンを撃破』して欲しいんよ」
 儀式を任されたオブリビオンは「『無邪気な封魂鬼鏡』鏡輝」。命を蝕む瞳と魂を捕らえる手鏡を己が力とする鬼の子だ。
「捕まえた魂は『お友達』として手鏡に封じるそうや。で、今回の『お友達』は、儀式の生贄にされとる『ケツァルコアトルの子供』って訳や」
 オブリビオンは、樹海の儀式場の中心で小さな竜――ケツァルコアトルの子供の血を聖杯に注ぎ、儀式の成就まで祈り続けている。
 血潮は贄に、魂は鏡に――総てを蹂躙される命が、あまりに不憫だ。
「的確に樹海を捜索して、儀式場を見付け出せれば、生贄の命が尽きる前に間に合うかもしれん。樹海に入る前に、怪しいと思う処とか目星付けておいた方がええやろな」
 『無邪気な封魂鬼鏡』鏡輝の見た目は稚い少女だが、直截、生命力を奪う力は油断ならない。
「けど、儀式中の敵は一心に祈り続けとるさかい、上手くやれば奇襲も行ける筈や。富士山噴火の儀式、絶対に阻止したってな!」


柊透胡
 こんにちは、柊透胡です。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 エンパイアウォー2作目。今回は「④霊峰富士鳴動」です。富士山噴火を目論む侵略渡来人『コルテス』の儀式を1つ、阻止してください。
 儀式を司る敵は「『無邪気な封魂鬼鏡』鏡輝」。一見、稚い少女ですが、直截、生命力を奪う力は油断なりません。
 速やかに儀式場を発見できるように樹海の探索と、上手く奇襲を掛けられるように作戦を練って下さいね。
 それでは、猟兵の皆さんの熱いプレイングをお待ちしています。
82




第1章 ボス戦 『『無邪気な封魂鬼鏡』鏡輝』

POW   :    暴力は、いけないんだよ!
【生命力を奪う双眸からの純粋な視線】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    もっとあたしとお話ししようよ!
【敵である事を疑う程の無邪気な言動と共に】【照らした者の生命力を強力に奪う手鏡の光と】【捉えた者の生命力を奪う双眸からの視線】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ずうっと鏡輝と「お友達」でいましょ?
小さな【手鏡へ、一気に生命力を奪う鏡から放つ妖光】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【既に魂の「お友達」を幽閉する一面鏡の部屋】で、いつでも外に出られる。

イラスト:るひの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は渡辺・紅牙です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天御鏡・百々
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
●本体である神鏡へのダメージ描写NG

富士山が噴火すれば、いったいどれほどの被害が出るか
絶対に阻止せねばならぬ

更には我が同族(手鏡)を用いて
魂を捕らえるなど許し難いな
我が討伐してくれようぞ!

まずはこの樹海より敵を見つけねばならぬか
着物で通れる道は限られるはず
それで絞り込んでから情報収集15で足跡などの痕跡を探そう

我が『鏡渡り』の力にて
鏡輝の手鏡よりつながる空間へ侵入し
捕らわれし竜の魂の解放は叶わぬだろうか?

戦闘では念動力10で操作した鏡を敵の死角に飛ばし
鏡渡りにて奇襲を仕掛けるぞ
我が真朱神楽(武器:薙刀)にて成敗してくれる(破魔69)


紫谷・康行
何を止めればいいか
ケツァルコアトルの子供を助ければいいわけだね
相手の目的もそこに集約される
見つけるなら、隠れている鬼の子よりも探しやすいだろう
間に合えばの話だけどね
もしそれでダメなら、鬼の子を探すことにしよう

【グラッハルゥの眼】を使いケツァルコアトルの子供を探させる
臭いや鳴き声とか、手がかりになるものはあるだろうからね
相手の位置を早く掴めるなら、こちらが有利になるだろう
見つけたら、儀式の始まる瞬間など、向こうに隙ができる瞬間を狙って奇襲すればいい
俺はタイミングを計って指示を出すことにしようか
状況を探らせていれば気付くことも多いだろうからね

自分が戦うときは炎を呼び出すか剣で戦う


イフェイオン・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

少し臭いますがブラックドラゴンを召喚し、空から儀式場を探してみましょう。
不自然に空いた空き地や不審な建物があれば分かりやすくて良いのですが……。
無事に件の敵を見つけたらお空から強襲です。ブラックドラゴンの巨体で潰したら少しは効果はあるかな?
敵とはいえ女の子。優しく心遣いのできる毒殺とか圧殺とかで苦しまないよう善処します。
ルールで縛られようともブラックドラゴンは既に死体。痛くても傷が開いても男の子なら我慢して戦って下さい。
ブラックドラゴンが戦い、私が応援する必殺コンボで片が付くのなら良いのですが、もし難しそうなら私も前へ。
ブラックホープでテンション上げていけば、それなりに戦えるかな。


ヨナルデ・パズトーリ
『動物使い』で呼んだ『動物と話す』事で情報を集め敵の痕跡を『野生の
勘』により『見切り』『追跡』

敵発見後、UC発動

攻撃の直前までは『目立たない』様『迷彩』で気配を消しつつ 『怪力』の
『鎧無視攻撃』による『先制攻撃』
子竜と分断し 『救助活動』

即座に『高速詠唱』で『呪詛』の籠った『全力魔法』を叩き込み更に『怪力』
による『なぎ払い』を叩き込む

妖光は『残像』で避け当ったら『呪詛耐性』を込めた『オーラ防御』で防ぐ

友じゃと?
貴様の様な輩が友を名乗るな!

我が友、我が好敵手、我が伴侶たるケツァルコアトルと同じ名を持つ者
其の子の命を侮辱する者が友を名乗る等・・・此れ以上妾を怒らせるなよ?

疾く滅びよ下郎がっ!


マレーク・グランシャール
【泉照焔】の失せ物探しと見切り、【黒華外套】の追跡の効果を頼りに樹海を探索
いち早く儀式の場に辿りつき、奪われようとしている竜の命を救いたい
竜の魂は死して大いなる自然へと還るもの
命を奪われるだけではなく、魂を封じ込めようとするのは魂の冒涜だ

発見したら狙いはただ一つ
その手の内にある手鏡だ
それが敵の力の源ならば破壊し、すかさず竜を奪取しよう

敵の向ける邪悪な視線は【金月藤門】のフェイクと残像、迷彩で囮となる偽の姿を作り出して躱す
視線を躱したら【黒華外套】の忍び足、【黒華軍靴】のダッシュで悟られずに急接近
槍を当てたらそれを初撃として【流星蒼槍】で双頭竜を召喚して手鏡を完全に破壊
竜を奪い離脱する


シズホ・トヒソズマ
※アドリブ・連携OK
【SPD】

ヒーローとしてそういう歪んだ友達作りは放ってはおけませんね

UCでユングフラウ、シュヴァルツヴィアイス、デザイアキメラの3体のからくり人形を自動化し、樹海を探索【情報収集】させ、手がかりを発見し次第連絡させる
足跡や木の折れたりしたりした痕跡、儀式をするからには広い場所と踏み探索

見つけたら、【迷彩・忍び足】でできるだけ接近し、キメラに乗っての高速移動で一気に【ダッシュ】接近、【早業・操縦】で手動操作に切り替えたユングフラウで【先制攻撃】します
生命力を奪う技は人形らに防御して貰い、その隙に自動化した2体と自身のユングフラウで同時攻撃します
『生憎、人形に生命力は無いので』



 霊峰富士の麓に広がる樹海――山の怒りを噴出させんと、各地で儀式を行うオブリビオンらさえも呑み込み、沈黙を貫く。
(「竜の魂は死して大いなる自然へと還るもの……命を奪うだけではなく、魂をも封じ込めようとするのは冒涜だ」)
 敵へ憤りを覚えると同時に、竜の命を救いたいと思う――その為にも、逸早く儀式の場に辿り着かねば。
 消えぬ炎宿る小さな水晶を握り、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)
は黒いトレンチコートを翻して樹海を往く。
「さて、生贄の竜は『失せ物』と言えようか……?」
 ちょっと苦しい気もする……単身の捜索なら危うかったかもしれぬが、幸い、儀式阻止に駆け付けた同胞は複数在る。
(「富士山が噴火すれば、いったいどれほどの被害が出るか……絶対に阻止せねばならぬ」)
 天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、樹海の奥を透かし見るように赤い眼を眇める。
「更には、我が同族を用いて魂を捕らえるなど、許し難いな。我が討伐してくれようぞ!」
 神鏡のヤドリガミである百々とって、オブリビオンの鏡の悪用は到底見過ごせない。
 だが、引導を渡すにも、まずはこの樹海より敵を見付けなければならぬ。
(「敵の姿は……着物姿の童女であったな」)
 そんな装いなら、通れる道も限られる筈。大凡の目星をつけ、百々は足跡等の痕跡がないか、探し始める。
「うむ、よう来たのじゃ」
 人を拒むような樹海だが、野鳥以外にも様々な動物が生息している。木立の間に認めた野兎を、ヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)は差し招く。
『この辺りで、何か異変は無かったかの?』
 野兎は小首を傾げるような仕草。ヨナルデのように、動物と意思疎通する術を持つ猟兵は少なからず。だが、猟兵が求めるような有意義且つ詳細な情報が得られるかどうかは、動物の知能や気質次第だ。
(「ふむ……怖い気配、か」)
 それでも、野兎は最近、怖くて近寄れなくなった場所があると教えてくれた。その方角を参考に、ヨナルデは敵の痕跡を探していく。
「地獄の門の上を飛び咎を見通すもの、3つの赤い眼を持つ灰色の大鴉グラッハルゥよ――」
 言葉を惜しまず、紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)が喚ばうのは灰色の大鴉。
(「何を止めればいいか……結局、ケツァルコアトルの子供を助ければいいわけだね」)
 生贄の血が富士の噴火を強要するならば、相手の目的もそこに集約される。寧ろ、鬼の子――オブリビオンより探し易いと考える康行。
「まあ、間に合えばの話だけどね……盟約により命じる、かの者の業を白き光の下に現せ」
 「グラッハルゥの眼」を通して、康行は幼き竜を探す。灰色鴉とは五感を共有する。臭いや鳴き声等、手がかりになるものはある筈だ。
「ユングフラウ、シュヴァルツヴィアイス、デザイアキメラ……貴方達に意識と力を授けます」
 人形は操られるのみならず! ――シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)が声高らかな宣言するや、3体のからくり人形は自立して動き出す。命は樹海探索。
「足跡や木の折れたりしたりした痕跡を探しなさい。儀式をするからには、広い場所が必要な筈」
 手がかりを発見次第、報せるようにと。
「……っ」
 3度、息吹を吹き込めば、その反動も相当なもの。身動き出来ぬ状態で、ほたりほたりと零れ落ちる血潮。毒の痛みに歯を食い縛る。その実、シズホはヒーローマスクであり、ダメージ自体はマスク本体で被っているとか。
「我が手に隷属の鎖引かれし朽ちし竜よ。代償を糧に、今一度力の顕現を願わん」
 そして、ブラックドラゴンを召喚したのはイフェイオン・ウォーグレイヴ(濡鴉の死霊術士・f19683)。死霊術士の名に違わず、1度は彼岸を越えた黒竜だ。真夏でなくとも、些か死臭が鼻につく。
「では、空から儀式場を探してみましょう」
 他の猟兵達に気を遣った風でもないが、イフェイオンは大空に飛び立つ。
「不自然に空いた空き地や、不審な建物があれば分かりやすくて良いのですが……」
 見下ろす光景は、まるで緑の絨毯のよう。イフェイオンは半ば身を乗り出し、謂わば絨毯の『穴』を探した。

 それぞれのやり方で、儀式場を探す事暫し――やはり、木々生い茂る樹海を上空から俯瞰出来た強みから、最初に儀式場の目星を付けたのはイフェイオン。
 ぽっかりと開けた空き地を遠目に、薄紅色の着物を着た少女の姿を認める。
(「敵とはいえ女の子。優しい心遣いで善処したい所です」)
 例えば、苦しまないよう毒殺とか圧殺とか。
「ルールで縛られようとも、あなたは既に死体。痛かろうが傷が開こうが、男の子なら我慢して戦って下さい……え? 嫌?」
 黒竜落とし、というか。空からの強襲が手っ取り早いだろうが……単身特攻は流石に危険。
 首を巡らせたイフェイオンは、眼下にアイアンメイデンを認めると、急ぎ黒竜を近くに下ろす。
「儀式場、発見しました……そう、ご主人さんに」
 そう言えば、他の猟兵との連携を考慮した者はいたが、情報の共有に関して気にした者は皆無。故に、儀式場への急行は速やかに成せたとは言えず。
 フフ、ウフフフ――。
 猟兵6名が儀式場に辿り着いた時、少女――『無邪気な封魂鬼鏡』鏡輝は手鏡を抱えてうれしそうにはしゃいでいた。
「かわいいかわいい、りゅうの『お友達』ができたの。ずうっと鏡輝と『お友達』でいましょ?」
(「な……!?」)
 百々の目の前で、妖光を浴びた小さな竜の体躯が、手鏡に吸い込まれる。残されたのは、聖杯に充たされた血潮。
「さあさあ、『お友達』とあそぶのはあとにしましょ。このぎしきがかんせいしたら、もっとりゅうの『お友達』がもらえるかしら?」
「友じゃと? 貴様の様な輩が友を名乗るな!」
 怒れる叫びが響き渡る。迷彩を解くと同時に飛び出したヨナルデは、少女の細腕に違う膂力を以て黒曜石の戦斧を振う。
「我が真朱神楽にて成敗してくれる」
 鏡輝の背後に鏡を飛ばした百々は、鏡渡りのユーベルコードで鏡面世界を繋ぎ、一足飛びに接近。朱色の薙刀で破魔の斬撃を振う。
(「相手の位置を早く掴めたら、もっと有利に運べたんだろうけど」)
 内心で、溜息を吐く康行。タイミングを計り、敵に隙が出来る瞬間まで待つ事も出来ただろう。だが、思い入れの程も猟兵それぞれならば、生贄の竜の魂が捕われるのを目の当たりにして、更に堪えよというのも酷な話。ならば、精々嫌がらせをと、康行は闇払う剣を構える。
「……っ」
 臨戦態勢の猟兵達を前に、手鏡を握り締めるオブリビオンは、怯えたように眼を揺らせた。
「暴力は、いけないんだよ!」
 その眼差しは純粋無垢――だが、マレークは左手の甲に刻まれた月と藤の意匠紋で、その視線を寸前で遮る。
(「『あれ』こそが敵の力の源ならば」)
 すぐさま一気に接近するや、碧玉も優美な長槍を振り被る!
(「これで、完全に――」)
「待て! 鏡を壊すでない!」
 マレークの狙いに気付いた百々が咄嗟に声を張る。
「手鏡と共に、魂が壊れたら何とする!」
「……っ」
 ガキィッ!
 辛うじて、マレークの槍は手鏡を掠め、儀式台を抉った。
「我が『鏡渡り』の力にて、鏡輝の手鏡につながる空間へ侵入する」
 ならば、幽閉された「お友達」の、竜の魂を解放出来るのでは……命は間に合わなかったからこそ、せめてその魂だけは。
「……なぁに? 鏡輝だけなかまはずれとか、ずるいの」
 もっとあたしとお話ししようよ!――あんまりに無邪気な言葉に、手鏡から迸る妖光、そして、真っ向から覗き込む視線を、尽く遮ったのは、シズホの騎士人形。
「生憎、人形に生命力は無いので」
 未だ呪縛されたままの身を、デザイア・キメラに乗せてやって来たシズホは、何処か得意げににんまりと。
「……あ、あれ?」
 だが、シズホを苛む毒の痛みが消えると同時、シュヴァルツヴィアイスは自立機能を喪い、カクリと停まった。確かに、元から無い生命力は奪われようも無かったが、ユーベルコードを封じられては。
「仕方ないですね」
 切り替え早く、シズホは残り2体の人形を迎撃に回す。
 フフ、ウフフフ――。
 猟兵達の猛攻にも、オブリビオンは笑みを絶やさぬまま。気儘に迸る手鏡の妖光が、無垢を装う視線が、猟兵の生命力を削っていく。
「まだか!?」
「そう急かすな!」
 マレークに怒鳴り返した百々だが、流石に手鏡を抱え込まれていては。
 ――この暗黒の中で、私の飢えと空虚さを満たしてくれる希望を……。
 戦いもブラックドラゴン任せだったイフェイオンは、いよいよ空間の裂け目より這い出た触手を受け入れ、何処か愉悦交じりに唇を歪める。
「暴力は、いけないんだよ!」
 純粋な視線が少年を射抜く前に、淑女たるナイフを握り飛び掛かる。斬が奔った。
(「嗚呼……渇く……」)
 その驚異的な速度の為に己が命を削りながら、脳から溢れる愉悦がイフェイオンを満たす事のない矛盾。
「……っ! きゃぁっ!!」
 だが、確実に斬撃がオブリビオンを追い詰めていく。ほんの刹那、手鏡が鏡輝の手から離れた瞬間。
「よし!」
 何と、鏡を渡って手鏡から飛びび出てきた百々が抱えるのは、小さな竜の霊体。
「!!」
 瞠目して手を伸ばす鏡輝を、康行が放った炎が牽制した。
「だめ! あたしの『お友達』、かえして!」
「まだ言うか! 我が友、我が好敵手、我が伴侶たるケツァルコアトルと同じ名を持つ者、其の子の命を侮辱する者が友を名乗る等……此れ以上、妾を怒らせるなよ?」
 もう既に怒髪天を突く形相で、ヨナルデは鏡輝に呪詛を全力で叩き込む。
「疾く滅びよ、下郎がっ!」
 更には、戦斧で力一杯薙ぎ払い、小柄はくの字に折れて吹っ飛ばされる。
「あ……あ……」
 それでも尚、手を伸ばそうとする鏡輝の目の前で、マレークが放つ流星蒼槍が完膚なきまでに、手鏡を破壊する。
「いやぁぁっ!」
「ヒーローとして、そういう歪んだ友達作りは放ってはおけませんからね」
 絹裂くような悲鳴に、何処かとぼけた呟きが重なる。
 シズホの意のままに、胸襟を開いたユングフラウ――アイアンメイデンは、抱き締めるように引導を渡した。

 ――斯くて、霊峰富士噴火の儀式が1つ、潰える。
 生贄の竜の命こそ救えなかったものの……助けられた霊体――幼き竜の魂は、礼を言うように猟兵達の間を飛び回り、光の粒子と化して消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月08日


挿絵イラスト