エンパイアウォー③~アウェー戦
「うッし、休憩終わりだ、次の獲物を発表するぜェ」
グリモア猟兵の我妻・惇は重たそうに腰を上げ、周囲の猟兵に呼びかけた。
「また見えたのは山ン中だ。どンだけ集めてンだよッてなァ?」
三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の『第六天魔軍将』達が、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきた。それに伴い幕府軍は、諸藩の援軍を含めて総勢十万の兵をもって、総力をあげて織田信長の元に向かい、撃破すべく動き出した。そのうちの本隊が東海道を、中山道方面軍が中山道を通り、畿内への玄関口である関ヶ原へと向かう予定になっている。
しかしその中山道方面の要衝『信州上田城』周辺が、すでに魔軍将の一人である軍神『上杉謙信』の軍勢により制圧されており、城の周辺には多くのオブリビオンが集まっている。そのまま進めば幕府軍との衝突は避けられず、多大なる被害を受けることになるだろう。
「今回見えたの敵は…まァなンつーか、絵に描いたみてェな山賊だな」
山野に潜み、集団で人を襲う、あの山賊のオブリビオンである。知性や協調性は低く、敵同士の連携はそう恐ろしい物ではないが、彼ら山賊にとって今回の戦場である上田城周辺の山中は、ホームグラウンドとも言える場所だ。それによってそれぞれの個体における戦闘力や生存能力は上昇しており、決して侮れるものではないだろう。
「しかも元々のヤツらの癖ッつーか、めンどくせェことに隠れるのが上手ェンだわ」
惇は憎々しげに眉を顰め、煩わしげに言葉を吐く。彼らは茂みや樹の陰に隠れ、猟兵たちの隙を見ては取り囲むように現れる。待ち伏せの対策をしていなければ、各個に分断されて窮地に立たされることは避けられないだろう。
「まァ…今度も簡単な相手じゃねェが、気ィつけて行ッてきてくれや、よろしく頼む」
小さく頭を下げると、彼は転送の準備を始めた。
相良飛蔓
お世話になっております。相良飛蔓と申します。お読みいただきありがとうございます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
基本は集団戦で、敵の主力となる強力な部隊の攻略を行います。猟兵の襲撃で戦力を失えば、不利を悟った上杉軍は撤退します。
オープニングでも触れた通り、待ち伏せへの対応を工夫していれば戦闘を有利に運ぶことができるかもしれません。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『山賊』
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POW : 山賊斬り
【近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
SPD : つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ : 下賤の笑い
【下卑た笑い声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
イラスト:たがみ千
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィリヤ・カヤラ
待ち伏せがいそうなんだね。
じゃあ、先手必勝!……できたら良いな!
木の影とか上も要注意かな?
いつでも攻撃できるように鋼糸の刻旋は用意して動くね。
あとはダークネスクロークの晦冥にも気を付けてもらって
敵がいたら教えて貰おうかな。
山に入ったら『全力魔法』の【四精儀】で
雷の突風を作って飛ばしてみるね。
足止めか少しくらいのダメージになってたら嬉しいけど、
ダメでも敵の場所が分かれば良いかな。
敵の場所が分かったら周囲の音に『聞き耳』をたてつつ、
『第六感』にも頼って奇襲には気を付けて
ダメージの大きそうな敵が近くにいたら優先して倒しにいくね。
敵の攻撃は出来るだけ『見切って』避けるか、
武器で防ぐように頑張ってみるよ
槙島・未幽
絡みOK
目的
山賊の発見と拘束
「取り敢えず、道を開けてくれ。この世界を滅ぼすわけにはいかないんだ」
遠距離攻撃主体
『影の追跡者の召喚』で山賊を探して、発見した山賊は『見えない射手』で徳川軍にぽんぽん送り出すか
「これは確かにめんどくさい。めんどくさいなら、さっさと片付けるに限る」
「こいつら、徳川軍に放り投げておけばどうにかしてくれるだろう」
「そーら、山賊達ー飛んでけー。ばいばいきーん」
「待ち伏せがいそうなんだね。じゃあ、先手必勝!……できたら良いな!」
ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)が目標を宣言すると、そのそばで槙島・未幽(流星召喚(スターコール)・f20363)も同意を示す。
「これは確かにめんどくさい。めんどくさいなら、さっさと片付けるに限る」
未幽はユーベルコードを行使し、見えざる斥候を召喚する。それは使用者と五感を共有する、姿なき追跡者。音もなく山道を進み、油断なく周囲を確認する中で、薄笑いを浮かべた見るからに品のない男の姿を見つけた。さらに周囲を探索すれば、二人三人と似たような顔に行き当たる。どうやら広範に展開している物ではなく、密集して獲物を待ち受ける作戦であるのは間違いないようだ。未幽は同行者へと頷いて見せ、その場への先導を開始した。
案内に従いながら、ヴィリヤの索敵にも余念はない。同行者の注意力を疑うわけではもちろんないが、注意しすぎるということもないだろう。樹の陰、樹の上、隈なく見回し、些細な音にも聞き耳を立てる。意思持つダークネスクロークの晦冥にも要請し、監視の目をさらに増やし。
結果的には取り越し苦労であったと言うべきか、最初に未幽が敵を発見した地点の直前に至るまで、山賊たちに出会うことはなかった。
「一猟兵からの贈り物だ。ちょーーーっとばかし痛いかもしれないけど、ま、大丈夫さ」
敵に向けてか味方に向けてか、ややおどけたような様子で口にすると、猟兵はその手より不可視の力を潜む男に向けて放つ。今度は索敵のためではなく、彼女の言葉通り『ちょーーーっとばかし痛い』攻撃のための物である。
「な、なんだぁ!?」
突然のことに対応できぬまま、エネルギー束にて捕縛された山賊が一人、悲鳴を上げながら釣りあげられて道の真ん中へと転がった。それを合図に茂みから樹の陰から、次々と山賊が現れ出て来る。後ろ髪の引きつれるような感触にヴィリヤが振り返れば、晦冥が引っ張っていたらしい、その方向にも幾らかの敵が見え、丁寧に囲みを作っていた。しかし予定ではもっと深くに誘い込んでから包囲するつもりだったと見え、前方に比べその層は薄い。
「取り敢えず、道を開けてくれ。この世界を滅ぼすわけにはいかないんだ」
未幽は淡々と説得の言葉を投げかけるが、受け入れられるなどとは思っていないし、熱の籠ろうはずもなく。
「ウチの親分は滅びてもらわねえと困るんだとよ」
揶揄うように言葉を返し、他の山賊も同意を示して高らかにかつ下品に笑う。『だよねー』と言った風情の猟兵の脇で、その同行者のユーベルコードが発動した。というより炸裂した。
「この地を構成するモノよ、その力の一端を示せ」
全力をもって放たれたのは、山道を駆ける突風である。もちろんそれはただの風であるはずもない。
「なんだ、これ…シビれ…っ」
まともに風に吹かれた者は、思い思いの呻き声を上げながら、ばったばったと倒れ伏す。手足を動かすこともままならず、何が起きたかもわからぬままに、最後の自由はそれこそ、どんな呻き声を上げるか、だけ。雷電を纏う突風を吹かせたヴィリヤは、一つ大きく息を吐くと、すぐさま手近の山賊へと歩み寄る。未幽も歩き出し、痺れが抜けぬそのうちに、それぞれの持てる拘束具――あるいはサイキックエナジーで、あるいは鋼糸で、手際よく『処理』を行うのだった。
ヴィリヤの場合。オブリビオンの身体へと鋼糸・刻旋を巻き付けると、縛るにしては強い力で締め付けて…弾ける音を響かせて、その身が消えれば次へ向かい。
そして未幽の場合。
「そーら、山賊達ー飛んでけー。」
拘束しては背後へ投げて、身動きできぬそのままに、動ける仲間のいるかもしれないこの場から、ぽいぽいぽいと投げ捨てる。舌の回らぬ抗議の声も何のその、聴く耳持たずに投げ捨てる。
「ばいばいきーん」
小ばかにするように見送りの言葉を放り投げ、この場に倒れる山賊達を、それぞれの方法できれいに片付けてしまった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
天道・あや
よーし!今回の戦争も勝つためにもいっちょやりますか!
敵が待ち伏せしているなら…こっちは堂々と突っ込む!【歌唱】で鍛えた大声で山賊を【挑発】して【存在感】を出す!「へいへい!ビビってるのー!?男なら堂々とかかってこい!」
それで相手が仕掛けて来たら焦ったり油断したように演技(パフォーマンス)する!そして相手の攻撃を避けたり受けたりして【見切り、激痛耐性】相手を油断や慢心させて他に潜んでる奴も【誘き寄せる】!そして集まってきた所でUC【あたしの歌と想い!世界に響け!!】【属性攻撃、雷】を発動!を発動!山賊をまとめて一気に倒す!
スタートダッシュ!この調子でどんどんいくぞー!
「よーし!今回の戦争も勝つためにいっちょやりますか!」
天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)は元気いっぱいに山道を駆けていた。
「スタートダッシュ!」
何故か知らないが道の途中に佇む二人の女性猟兵を追い抜いて、一番槍を志し、ダッシュダッシュ。もうちょっとだけ走り抜け、ぴたりと止まると大きく息を吸い込んで――
「へいへい!ビビッてるのー!?男なら堂々とかかってこい!」
ここぞとばかりに煽ってみせた。アイドル志向のあやの喉は、歌で鍛えた特別性。磨きあげたそのオーラも、強烈な存在感を醸し出す。力あるその言葉に、山賊達は抗うこともなく。
「ガキが調子に乗ってんじゃねえぞ」
「すぐにお前の方がビビることになるぜえ」
覚悟していたよりも少ない山賊の包囲に、猟兵はやや肩透かしを喰らうが。
「あ、あれ?思ったよりいっぱい…」
そんな様子は見せることなく、見事な演技でたじろげば、囲んだ敵は気分よさげに、怯える少女に悦に入る。
「おいおい、さっきの威勢はどうしたよ?」
にやにや顔で剣を振るい、かすめる様に斬りつければ、悲鳴を上げた猟兵が退ってみせる。下がった先でも盗賊が、揶揄うように小突いてみたり、剣を振って脅して見せたり。囲みは徐々に狭くなり、そのたびごとにあやの焦りも強くなり。段々と増える彼らに対し、震えるようなその声で
「ええ、まだ増えるの…?」
絶望的なその声に、揃って大笑いする男たちのその一人が、ついと口を滑らせて
「へへ、安心しな、もう増えねえよ」
「そっか、じゃあ」
途端にけろっとした顔の少女。繰り返すが、彼女の態度は演技であった。にっと笑い、構えて見せるはスタンドマイク。
「いっくよーー!!」
大きく息を吸い込んで、本日再びの大音声、そこに乗せるは強い想い。そして、強い、雷撃。パンチでロックなその声は、山賊どもを揺さぶった。ただし、音楽のジャンルとしてはその限りではない。
「な、なんだぁ!?」
少し前、少し下でも聞こえたような、独創性のない叫びを上げながら、山賊たちは消滅したり逃げ出したりで戦線を離脱していった。走る敵の背を見送りながら、歌い手はどんなもんだと笑って見せた。
「この調子でどんどんいくぞー!」
成功
🔵🔵🔴
唯・刀
「戦ね……戦、戦」
この身体に成って初めての戦だ
不安や戸惑いや……嬉しいって気持ちとかがあるもんかとも思ったけど
「……やっぱなんともないな」
戦なんて当然過ぎて、戦なんて日常過ぎて、帰ってきたとすら思わない……地続きだ
「唯の刀……冗談みたいだろうが一応、名乗りだ……覚えなくていいし、怯えなくていい」
駆け寄る
石を投げられようが斬りつけられようが関係ないね
俺は刀で刀とは俺のこと……
「右手」という「刃」を振りかぶって、振り下ろす
「……剣刃一閃」
斬る
斬る
斬って斬って斬る
斬り易いところを選んで斬る
回復するならその度に斬る
斬って殺すことだけが
「……刀だもんな」
よかった
たとえ形を変えようと俺は俺
「……唯の刀だ」
槙島・未幽
目的
待ち伏せする山賊の発見と捕縛
『影の追跡者の召喚』で山賊を捜索し、『見えない射手』で捕縛して味方に投げることを続けよう
「山賊は根こそぎとっ捕まえとかなきゃな。山賊の親玉も引っ張り出さないといけないしね」
「あ、ぽーい。あ、ぽーい。それそれそれそれ」
「いやー、頭の中身が軽ぅございますので、よく飛びますわー」
ふざけているわけではなく、挑発するために軽い調子こいてるんだぜ?知性は低い上に協調性もないらしいから、そういう奴は、こんな感じのやつが一番カチンと来る。
虎熊・月霞
わーい山賊だー、山賊はねぇ人権が無いから殺されても、財産奪われても文句言えないんだよぉ!
――まぁ冗談はさておき、こそこそ隠れてるのを引っ張り出してお仕置きしちゃえばいいんだよねぇ?
【POW】
ひとまず散らばって隠れてても面倒だしぃ、一箇所に集めたいねぇ。【忍び足】で【目立たない】様に動きつつ、【見切り】や【野生の勘】、【第六感】で隠れてる場所を見つけて、【殺気】や【だまし討ち】で誘導しながら【地形の利用】しやすい位置に集めちゃおー。
山賊さん大集合したら、UCの『鳴神円月』で一掃すればいいよねぇ?
オブリビオンだし、どーせ悪い事してるんだから――とりあえずその首置いて行こうか?
アレンジ、共闘可
「あ、ぽーい。あ、ぽーい。それそれそれそれ」
槙島・未幽は引き続き、周辺の探索に余念がない。山賊どもを見つけ出しては拘束し、拘束しては投げ飛ばす。
「いやー、頭の中身が軽ぅございますので、よく飛びますわー」
軽い調子で言葉を紡ぎ続けているが、決してふざけているわけではない。知性が低く、協調性もない山賊たちに対し、難しい煽りや高尚な挑発よりは、こんな感じのやつが一番効くだろう、という判断のもとに行われている物である。それはともかくその煽り文句、仔細は省くがボキャブラリーがとても豊富である。近場の2カ所において幾人もの仲間を失ったにしては疎らに警戒心なく現れてくるのも、平易かつ巧みな挑発の賜物であろう。そうして怒りに任せてまた現れた一体に、猟兵がまたすかさず
「あ、ぽーいっと」
「くっそこのやろぉぉぉぉぉ…!」
まったくもって容赦がない。
「あの女ども、ふざけやがってぇぇ…」
地点を移せば、投げ捨てられてごろごろと、倒れて転がる山賊の山。その中で何の手違いか、立ち上がる者があった。幕府軍の到着より先に拘束が解けてしまったようだ。自由になった関節各部を回しながら周囲を見回し、転がる仲間の拘束を端から解除していく。見えざるエネルギーによるものであるため無効化に手間取るのは確かであるが、それでも確実に一人ずつ、自由になっては立ち上がる。
「くそっ、ぼろくそ言ってやがったぞ」
「見てろよ、今から追いかけりゃ後ろから回り込んで…」
「おいおい…ぶっ殺す前にだな、ほら、良い女だったじゃねえか、だから…な?」
それぞれが口々に言い、最後の一人の言葉を合図に、全ての山賊が下品に笑った。そんな不純な情熱により、力を戻した一団は、元気に山道を行こうとして――
「戦ね……戦、戦」
うわ言のように呟きながら歩み来る青年と
「わーい山賊だー、山賊はねぇ人権が無いから殺されても、財産奪われても文句言えないんだよぉ!」
眩しい笑顔でうきうきと話す少女の姿。
「おっとまた上玉…じゃなくてまたお仲間かよ、次から次へと…」
「――まぁ冗談はさておき、お仕置きしちゃえばいいんだよねぇ?」
すっと、笑顔と一緒に緩い雰囲気は何処かへ消え、すっと、虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)の背からその野太刀が刃を覗かせた。その脇でも、右手の刃を閃かせ、唯・刀(ヤドリガミの剣豪・f21238)が言葉を掛ける。
「唯の刀……冗談みたいだろうが一応、名乗りだ……覚えなくていいし、怯えなくていい」
言い終わるのと駆け出したのと、どちらが早かっただろうか。相手の動きも言葉も、一切合切を意に介さずに、
「……剣刃一閃」
一番近くの敵へと詰め寄り、その手の刃を振り下ろした。そうして倒れた敵を見下ろして、また彼は呟くように。
「……やっぱなんともないな」
彼が心を得、ヤドリガミとして現界したのは、遠い過去ではない。そして今日が人型を得て初めての戦となる。戦場に振るわれる刀であった彼は、ここで自らの得る感情に、どこか期待していたようだ。不安や戸惑いや、もしかしたら歓喜であるかもしれない。しかし結局、得たのはその期待の念だけであった。
(戦なんて当然過ぎて、戦なんて日常過ぎて、帰ってきたとすら思わない……地続きだ)
「……刀だもんな……唯の刀だ」
呟きながら、思いながら、斬って斬って斬り続ける。もう一つだけ得た感情は、落胆――否。
「よかった」
安堵であった。
月霞もまた、刃を振るって数多い敵を迎え撃つ。得意とする紫電の攻撃を放たずに、その野太刀のみで牽制し、攻撃し、多勢を相手に器用に立ち回って見せる。攻めあぐねて遠巻きに、しかし包囲を崩さずに、円陣を組む山賊たちは長きを待たずに膠着し。
「雷鳴去りて月を見よ――」
「あぁん!?何言ってんだてめぇ!」
そう大きくない声を、先の様子から再び揶揄う言葉だとでも思ったか、大きな声で吼え立てる山賊へ、月霞はへらっと笑って見せる。
「うん、この内側は僕の間合いなんだよぉ」
その白刃が紫電を纏う。見せずにおいた雷霆は、油断を誘う隠し玉。何が来るかと警戒し、下がろうとても
「――とりあえずその首、置いて行こうか?」
もう遅い。神鳴る轟音響かせて、眩い雷刃弧を描き、その端が合えば円となり、空に輝く円月のごと。周到に用意されて丁寧に集められた山賊の一団は、置いて行くべき首すらも、残すことなく焼き焦がされて、塵も残さず霞と消えた。
成功
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シリン・カービン
【WIZ】
猟師とは、山野に潜む獲物を狩り出す者。
賊が山中で力を発揮するとしても、
「獲物は、必ず見つけ出す」
私は山賊の潜む場所を探し出します。
上田城周辺の地形図から待ち伏せに適した場所を推定後、
現地に赴き足跡、木々の傷、繁みの歪み等を辿って賊を追跡します。
単独行動になるため戦闘は極力回避。
危険時には【スプライト・ハイド】で姿を消したり、
瞬間的な発動で残像の分身を生み出し敵を翻弄して脱出。
慎重かつ迅速に偵察を行い、次々と賊の潜伏場所を特定後、
仲間や幕府軍に情報を伝えます。
戦闘が始まったら味方後方から気配を隠して援護狙撃。
…耳障りな笑い声は風の精霊に消してもらいましょうか。
アドリブ・連携可。
黒羽・鴉
戦の常とは言え、犠牲はない方が良いに決まってますよね。
微力ながら頑張ります。
【黒羽】
ま、事前に待ち伏せされているのが分かってて無策でノコノコ行くわけないですよねー。
八咫烏を先行させ隠れている山賊達の位置をある程度把握出来たら
【鴉】
……俺の出番だな。
潜んでいる山賊を《先制攻撃》で金烏を突っ込ませて炙り出す。
敵が出てきたら突撃し《吹き飛ばし、凪ぎ払い、見切り》織り混ぜ剣刃一閃など近接攻撃。
山賊斬りやつぶて投げに対しては《カウンター》でブレイズフレイム。
山火事を起こす気はないので燃え広がらないように使用した火は随時消していく。
道を外れた残党は、再び潜もうと茂みに屈み、音を立てぬよう注意を払う。その様子にはもはや、怯えすら見えた。追われる手負いの獣のような様子。そしてそれを追跡する者は
「獲物は、必ず見つけ出す」
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)、エルフの精霊術士であり、そしてまた、森から糧を得るハンター――猟師である。山中で力を発揮するのは、なにも山賊だけではないのだ。
「私は山賊の潜む場所を探し出します」
呼びかけてから周辺の地形図に目を落とし、潜むに適した場所をピックアップしていく。それぞれに印をつけて見せると、答えて黒羽・鴉(両面宿儺・f09138)が顔を上げ、ユーベルコードで三本脚の烏を召喚する。
「行け。」
指示を受けた八咫烏は、一つ羽搏いて空へと飛び上がった。『黒羽』は目を閉じ、その視界を八咫烏と共有して山賊の姿を注意深く林の中へ求める。足跡、木々の傷、茂みの歪み。見るべき痕跡は山ほどある。シリンは探索方法を、黒羽は視覚情報をそれぞれに供出して細かく情報交換し、いくらかの空振りを経ながらもいよいよその敵の背へと辿り着くことに成功した。
「ま、事前に待ち伏せされているのが分かってて無策でノコノコ行くわけないですよねー」
声に少しの笑みを篭め、黒羽は地形図を指さした。シリンの目した候補の中のその一点を示してやると、互いに顔を見合わせて一つ頷き動き出す。
「……俺の出番だな」
しばらく歩いて進んで行けば、程なく目指す獲物の元へ。気付かれ得ないぎりぎりの距離でシリンが黒羽を制してやると、その存在は置き換わった。ヒーローマスクの黒羽・鴉は、それぞれの人格が共存している。先ほどまでは宿主である黒羽が表層にあったが、戦闘が近づいた今、それをより得意とするマスクの人格『鴉』へと移行したのだ。ユーベルコードの金烏を呼び出し、森の内へと紛れ込ませ、追い立てるように茂みの中を翔けさせれば、不意に襲った炎熱に驚き標的たちが転び出た。
「くそっ、なんだこれ…」
悪態をつく彼らが態勢を立て直すより早く、鴉はその手に刀を構えて飛び出した。躱して再び隠れようにも、戻るべき茂みは熱すぎる。そうこうする間に詰め寄られ、刀の錆と消え失せる。
「くそ、くそっ!」
一人目にならなかった彼らには、それぞれに立ち上がるだけの猶予が与えられた。思い思いに得物を構え、決死の思いで斬り付けてやると、その傷口から噴き出した血は、炎となってまた襲う。先に炎熱により追い詰められて、今また炎熱による攻撃を受け、その脅威に、竦む。
彼らに、注意を向ける余裕があれば、より良く周囲を見られていれば、妖精の助力を手放して虚空より姿を現した、シリンの一瞬の姿に気付けたかもしれない。より良く耳を澄ませていれば、装弾音にも気付けたかもしれない。知恵や冷静さは、人の持つ武器である。それを放棄してはもはやただの獲物…そうとも呼べない、狩りやすい獲物に他ならない。気配を隠し息を潜めた狩人は、その照準を丁寧に合わせると、まごつく標的たちの頭の中心を、正確に迅速に、次々と撃ち抜いた。
逃げるし隠れる敵の性格上、これが全てかは分からない。それでも多くを討伐したし、撃退には充分だろう。近くに遠くに追い詰めて、見事に潰走させたあと、シリンと合流した鴉は冷ややかな視線に気付く。その先を追いかけてみれば、茂みに宿る小さな火。森と共に生きる彼女にしてみれば、思う所があるらしい。山火事を起こす気はもちろん鴉にもないので、速やかにその延焼を消去した。息をついたシリンに、鴉が肩を竦めた。
かくしてまた上杉軍の一部を撃退し、後続の幕府軍と、ついでに山の自然の命も守られたのである。
大成功
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