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エンパイアウォー⑤~仄暗き蔵に刻まれし言の葉

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #謎解き

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●徳川埋蔵金を求めて
「困りましたのじゃ、腹が減っては戦ができなくなってしまいますのじゃー」
 ――グリモアベースの一角。
 ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)は、何事かと集まった猟兵たちに気が付くと、慌ててぺこりと頭を下げる。
 そして、少しだけおさらいに入りますのじゃと、軽く咳を払った。
「サムライエンパイアでは第六天魔王『織田信長』討伐に向けて、徳川幕府軍が10万の大軍をもって行軍中なのは、既にご存知の方も多いかと思いますのじゃが……」
 徳川幕府は軍勢を集結させると同時に、全国の商人から兵糧を初めとした補給物資を購入しようとしたものの、その値段が全て高騰しており、行軍に十分な量を揃えることができない状況に陥ってしまっていると、ユーゴは告げる。
「調べたところ、これは、個人資産が徳川幕府の全資産を凌駕する魔軍将の一人――大悪災『日野富子』による買い占めによるものだと、判明しましたのじゃ」
 このまま買い占めが続けば、幕府軍の戦力が大幅に減少してしまうだろう。
 一刻の猶予も無い状況に、徳川家はある判断を下す。
 徳川家の切り札。神君家康公が有事の為に遺したという『徳川埋蔵金』を資金源にあてるべく、猟兵たちに埋蔵金の捜索願いを出したのだ。
「これは徳川家から借り受けた『徳川埋蔵金の地図』の1枚なのですじゃ。これさえあれば、埋蔵金の場所を特定することは、そう難しくないのですじゃが……」
 埋蔵金を得るためには、この地図に描かれている場所に赴き、神君家康公が盗掘を防ぐために残したという『謎』を解かなければならないと、ユーゴは続ける。
「地図の場所で埋蔵金を手に入れようとすると『謎』が提示されますのじゃ。そこで『正しい答え」を応えることで、初めて埋蔵金を手にすることができますのじゃー」
 ユーゴはもう一度頭を下げると、手のひらに琥珀色のグリモアを浮かべて。
 そして、彼の地に猟兵たちを導くのだった。

●仄暗き蔵に刻まれし言の葉
 猟兵たちが転送された先は、薄っすらと埃が積もった頑丈な蔵の中。
 人の気配はない。おそらく、長い間ずっと使われていなかったのだろう……。
 前方から薄っすらと洩れている光を頼りに進むと、石垣のような壁にぶつかる。
 その少し下には小さな石板が立て掛けられており、鮮明に文字が刻まれていた。

 =================
 この謎を解読せし者に、埋蔵金への道は開かれん。
 但し、間違いは一度まで、二度目は無いと心得よ。

 ○壱の問い
 かきくけね →こがね
 たちつみと →てがみ
 砥石(とき)→????

 ◇弐の問い
 この石板に書かれている丸の数

 □最後の問い
「壱」よ開けと「弐」回、唱えよ
 =================

 これが、神君家康公の『謎』なのは、間違いない。
 さてさて、この試しにどう挑もうか、謎解きの始まり始まり――。


御剣鋼
 謎解きをお届けします、御剣鋼(ミツルギ コウ)と申します。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 プレイングには『謎の答え』を必ず明記してください。
 余裕がありましたら上記に加えて、謎を推理したり正解を思いついた時の行動、
 埋蔵金を発見した時の反応など、字数が許す限り寄せて頂けますと、嬉しいです。

●リプレイ採用人数につきまして
 1)一番最初に正解を当てた1名様(※確定)
 2)ユニークな解答、もしくは良い感じで推理して下さった方。
 自分のキャパ次第では増えるかもですが、3名様くらいを予定しております。

 正解が集まらない場合は、ヒントを導入しますのでご安心ください。
 皆様の解答、心よりお待ちしております!
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第1章 冒険 『神君家康公の謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。

SPD   :    素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。

WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。

👑3
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

花宵・稀星
【WIZ】

埋蔵金ですか。
私は金銀財宝への興味より、謎への知的好奇心が勝つですが。
もしこれで埋蔵金を見つけたら、まあその光景に見とれはするかもしれないですが。

さて、肝心の謎解きですが。

壱:「といし→とき」と「いし」が「き」と読み仮名が置き換わってるです。

弐:箇条書きの頭として丸が1個、文末の句点として丸が2個、合計3個の丸が石板に存在するです。

よって、最後の問いの答えとして、『「いしがき」よ開け』と「3」回唱えるです。


ヴィクトル・サリヴァン
お金の方で攻めて来るなんてねえ。
対抗手段があったのは幸いだけどそれだけ埋蔵金埋めてるなんて神君家康公、かなりやり手?
頭捻る系だけど上手く解けたらいいね。

壱の問いの方は…本来ことてがあるはずの位置が其々ねとみ。
「こ」が「ね」、「て」が「み」
それでといしなのにときなら「いし」が「き」、石垣だね
問題は弐の問い。
石板全体で見るなら句点と壱の問いの前の〇で三つなんだけど…ねとかみとか平仮名にも丸っぽい部分が含まれてるのがなあ。
全部入れるなら二十二回?どこまで丸に含まれるのかが微妙なライン。
だけどまあ、一回なら間違いありだから両方試してみればいいかな。

いしがきよ開けと三回唱えようか。

※アドリブ絡み等お任せ


パルピ・ペルポル
これだけたくさんの埋蔵金残すのも凄いけれど、それだけの分の謎を考えるのも大変よね。
相当頭の良い人だったのね。

まずは壱の問いだけど。
かきくけねは「こ」が「ね」になってて。
たちつみとは「て」が「み」になってるのね。

そうすると砥石(とき)は「石」が「き」…『いしがき』…『石垣』ね。

弐の問いの丸の数は、「○壱の問い」ってあるからまずこれでひとつ。
他は…石版の最初の2行は最後に読点ついてるからこれも足したら3個になるわね。

つまり「石垣」よ開けと「3」回、唱えばいいってことかしらね?


埋蔵金見つけたら雨紡ぎの風糸と火事場のなんとやらで運ぶわよ。
見た目だけで判断しないでねっ。


火狸・さつま
(謎、解き…俺にも、出来る、かな?)
内心ドキドキ
けれど石板見ればスグに
…といし、だから…いしがき
丸、まるの、かず?
えと……
まぁるく囲まれてるのを、いーち、にー、と数え
3、個???
それ、とも…「丸」も含んで、4……
あ。平仮名、の、くるんってしてるのも、数える…の、かな???
ん、ん、でも、そ、すると、凄い回数になる、から…
やぱ、3か、4、かな

俺、の、解答、は…
「いしがき」よ開けと「3」回、唱える!

でも、間違い、1度きり、だから
皆の意見ちゃんと聞いて
全員で話し合って決めよ!

わわ、みんな、すごい、ね!
そか、なるほど…!
尻尾ゆらゆら、お耳ぴこぴこ



あっ!開いた…!!!やった、ね!!
早く、届けてあげなきゃ!


菱川・彌三八
なんでェ、将軍様がお困りとあらぁ、直接聞きゃあエエだろうに
…マ、野暮だったナ
どれ

…あー…俺ァ考えんなァ苦手な性分だ、あんま期待ァ出来ねぇぜ
…紙に色々書いてみるか

んー…
ひとつめァ「いしがき」、こんくれぇは分かるゼ
まる、まる、ひぃふぅ…「みっつ」、かな
最後が問題だな…いちをにかい
…そもそもだが、その前に応えたやつァどこで使うんで
…あ(思いついたが、まぁ、同意がえられりゃやる価値ァあるだろう)
いしがきよひらけ(三回)

ドウデ、俺にしちゃあ頭回ってる方だ
これで駄目なら他に任せら
なぞかけ本でも描いて待たせてもらうぜ

こねェな大金あったがどうで、俺にゃ荷だが
…いち枚くれぇバレやしねェかな
いや、なんでもねェよ


鵜飼・章
●壱の問い
かきくけねは『こ』が『ね』
たちつみとは『て』が『み』になっているんだね
なら砥石(といし)の読み仮名が(とき)になっているのは『いし』が『き』
つまり答えは【石垣】だ

●弐の問い
素直に考えれば句点が2つ+壱の問いの頭の○で【3つ】かな
『は、ね、み、よ、る』等の文字に含まれる歪な○を数に数えるのかが気掛りだけど
これはクイズ番組の見すぎかもしれない…
僕の事だしうっかり数え間違いもするかも

●回答
【『石垣よ開け』と『3回』唱える】
失敗したら文字に含まれる○も数に入れて
回数を変えてみよう

埋蔵金あった?
あっ鴉達が持っていこうとしてる
連れてこなければよかった…
駄目だよ、それはすごく大事な物だから
だーめっ


ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動
兵站がなければ、戦はできぬ。世知辛いものだな

壱は、それぞれあるべき文字が入れ替わっている形か
か行の「こ」が「ね」に入れ替わっているから「こがね」、
た行の「て」が「み」だから「てがみ」
問は――砥石で「とき」?
五十音から何かが入れ替わっているというわけではなし……。
ああ、本来の読みの「といし」が「とき」になっている。つまり「いし」が「き」、「いしがき」か

そして弐については、文末の「。」と壱の前の「〇」で合わせて3つ

最後の問いに当てはめよう
「石垣よ開けと三回唱えよ」
では実際に唱えてみるか

埋蔵金発見後
「これだけの財宝はなかなか壮観だな。――家康公はこの状況を予想して残したのだろうか?」



●言の葉の試し
「埋蔵金ですか」
 薄暗く埃が舞う蔵の中、つばが広い帽子を被った少女がぽつりと零す。
 蔵の奥に積まれた石垣に設置された石板に、横花宵・稀星(置き去り人形・f07013)が小さく首を傾げると、少し遅れて到達した猟兵たちも足を止め、好奇心に似た灯火を強く瞳に宿し、石板に刻まれた文字を追い掛ける。
「兵站がなければ、戦はできぬ。世知辛いものだな」
 一通り石板に目を通したのだろう。ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)が顔を上げると、全身を覆うローブの端が静かに揺れる。
 フードから垣間見える紅き瞳は、冷静沈着。
 けれど、その奥には知恵を尊び、真実を追い求めようとする、飽くなき探求心で、爛々と輝いていて。
「対抗手段があったのは幸いだけど、それだけ埋蔵金を埋めてるなんて、神君家康公、かなりやり手?」
「埋めた分の謎を考えるのも大変よね、相当頭の良い人だったかも」
 お金の方で攻めて来た日野富子もだけど、神君家康公も中々の策士かもしれない。
 縦にも横にも広いシャチのキマイラの、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)にとっては、蔵の中は少しだけ窮屈そう……。
 それでも、 柔和な眼差しを浮かべるヴィクトルに、石板の周りに滞空していたパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)も、楽しげに相槌を打つ。
「…あー…俺ァ考えんなァ苦手な性分だ、あんま期待ァ出来ねぇぜ」
 対称的な大きさの2人の話に耳を傾けていた菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、独り言に似た呟きを薄闇に流す。
 そして、只でさえ細い瞳を更に細めると、どれ、と石板を凝視する。

 =================
 この謎を解読せし者に、埋蔵金への道は開かれん。
 但し、間違いは一度まで、二度目は無いと心得よ。

 ○壱の問い
 かきくけね →こがね
 たちつみと →てがみ
 砥石(とき)→????

 ◇弐の問い
 この石板に書かれている丸の数

 □最後の問い
「壱」よ開けと「弐」回、唱えよ
 =================

「んー…紙に色々書いてみるか」
 懐から和紙と毛筆を取り出した彌三八は、石板の文字を書き写していく。
 浮世絵師らしく繊細な文字が、ふわりと和紙に染み出すように記される様は、まるで芸術のよう。
 その様子を青色の瞳でぼんやり追っていた火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、楽しそうに尻尾を揺らしたまま、口元を緩めた。
(「謎、解き…俺にも、出来る、かな?」)
 内心ドキドキしている胸の内と呼応するように、フードから飛び出したお耳も、ぴこぴこ動いてしまっていて。
 そんなさつまをちらりと見た鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は温和な笑みを浮かべ、半歩前に歩み出る。
「僕が思う限り、壱の問いに関しては揃って答えが一致してそうだね。なるべく意見を擦り合わせながら進めて行きたいけど、どうかな?」
 ――間違いは一度まで、二度目は無いと心得よ。
 石板の2行目に刻まれた言の葉は記憶に新しい。さつまはハッとするように耳をぴんと立てると、少しだけ眼差しに力を込め、こくりと頷いてみせて。
「間違い、1度きり、だから、全員でちゃんと、話し合って決めよ!」

●壱の問いの導き
「さて、壱の問いですが、皆さんはどう思うですか?」
 稀星が振り向くと、少し遅れてウェーブが掛かった黒髪の先端が、ふわりと揺れる。
 白色のドレスの随所に施された金の刺繍飾りが薄闇に煌く中、身体を大きく見せるように手をぶんぶんと振ったのは、パルピだった。 
「まずは、かきくけねは『こ』が『ね』になってて、たちつみとは『て』が『み』になってるのね」
「そうだね、五十音に当てはめると、本来は『かきくけこ』『たちつてと』と表記されるはず……僕もパルピさんと同じ意見だよ」
 ――かきくけ『こ』が、かきくけ『ね』
 ――たちつ『て』とが、たちつ『み』と
 意図的に入れ替えられているのではと続けるパルピに、章も淡々と優しげに笑む。
 何処かマイペースに進める2人に習うように、ディスターブも粛々と言葉を紡いだ。
「つまり、それぞれあるべき文字が、入れ替わっている形か」
 ディスターブは石板の文字を指差すと、文字をなぞるように、滑らせる。
 ――か行の『こ』が『ね』に入れ替わっているから、こがね。
 ――た行の『て』が『み』だから、てがみ。
 ――ならば、問いにもなっている――砥石(とき)は?
「五十音から何かが入れ替わっている、というわけではなし……」
 ディスターブの指先が『とき』の上に止まると、ヴィクトルがゆるりと口を開く。
「砥石は『といし』と読むはずなのに、『とき』になっているのも、気になるね」
 ――本来『こ』と『て』があるべき場所に『ね』と『み』がある。
 ――同じように、『といし』と『とき』も、文字が入れ替わっていると、解釈すると。
「と『いし』なのに、と『き』……『いし』が『き』と読み仮名が置き換わってるです」
「ちょっくら紙の方にも纏めてみるかァ」
 早くも答えに達したのだろう。謎解きの1つ1つを噛みしめるように稀星が頷くと、記録に徹していた彌三八は、即座に毛筆を奔らせた。

『かきくけこ』が『かきくけね』 →『こ』が『ね』  →こがね
『たちつてと』が『たちつみと』 →『て』が『み』  →てがみ
『といし』が『とき』      →『いし』が『き』 →????

「…といし、だから…いしがき?」
「ああ、間違いないだろう」
「『いしがき』というのは…きっと、石垣のことね!」
 ほぼ直感で答えに到達したのは、さつま。その答えに肉付けするように、ディスターブとパルピが道筋を重ねていく。
「満場一致だね。そう、答えは【石垣】だ」
 章が昂ぶることなく物静かに告げると、全員の視線がすぐ側の石垣に注がれる。
 この壱の問いの答え――石垣は、埋蔵金に至る道筋のヒントになるのかもしれない。
「んー…ひとつめァこれで決定だな、こんくれぇは俺でも分かるゼ」
 確信を含んだ章の応えに「否」と返す者はなく、彌三八は紙に書き写した石板の文字の横に、力強く毛筆を滑らせる。
 壱の問いの答えは、石垣【いしがき】である、と――。

●弐の問いの応えは
 満場一致で壱の答えを導き出したものの、問題は次の弐の問いだった。
 ――否。問題が悪かっただけですッ、大変申し訳ございませんでしたッ!!
「弐の問いは『この石板に書かれている丸の数』だね」
「『○壱の問い』ってあるから、まずこれで1つかしらね?」
 石板をじっくり観察するヴィクトルの大きな背中に向けてパルピが答えると、打てば響くように、ディスターブと稀星が、ほぼ同時に言の葉を紡いでいく。
「他にも、冒頭の文末にある『。』で合わせて3つ」
「つまり、箇条書きの頭として丸が1個、文末の句点として丸が2個、合計3個の丸が石板に存在するです」
「文末の『。』も『○』として数えるのよね」
 金糸の髪を靡かせてマイペースに飛び回るパルピ。それを視線だけでのんびり追い掛けていたさつまが口を開くと、彌三八も一瞬だけ筆を止めた。
「えと……まぁるく囲まれてるのを、いーち、にー、3、個???」
「まる、まる、ひぃふぅ…確かに「みっつ」、だな。これで駄目なら謎かけ本でも描いて待たせてもらうぜ」
 彌三八は石板の文字を全て写した和紙を広げると、『〇』だと思われる箇所を一目で判別できるように、朱色の墨を付けた毛筆で、ちょんちょんと区切っていく。

 =================
 この謎を解読せし者に、埋蔵金への道は開かれん【。】
 但し、間違いは一度まで、二度目は無いと心得よ【。】

【〇】壱の問い
 かきくけね →こがね
 たちつみと →てがみ
 砥石(とき)→????

 ◇弐の問い
 この石板に書かれている丸の数

 □最後の問い
「壱」よ開けと「弐」回、唱えよ
 =================

 一見すると開始早々、弐の問いの答えを導き出したようなもの……。
 けれど、もう少し話し合ってから決めたいと手を挙げたのは、ヴィクトルだった。
「石板全体で見るなら3つなんだけど……ねとかみとか平仮名にも丸っぽい部分が含まれてるのがなあ」
「あ。平仮名、の、くるんってしてるのも、数える…の、かな??? それ、とも…『丸』も含んで、4……」
 温厚で紳士的に見えるヴィクトルが、少しだけ困ったように眉間を寄せると、さつまも「俺、も、気になってた、から」と、ニコッと八重歯をみせて。
「素直に考えれば3つだけど、文字に含まれる歪な○を数に数えるか、ここで足並みを揃えた方が良さそうだね」
 ――ここまでくると、クイズ番組の見すぎかもしれない。
 そう、穏やかに口元を緩めた章が「僕もうっかり数え間違いするかも」と続けると、彼の周囲を取り巻く鴉たちが意味ありげに「クワッ」と一鳴きだけ。
 どちらかというと、冷静というよりもマイペースな理屈屋。
 けして気取っている訳ではなく、根っから浮世を離れているだけなのかもしれない。
「ん、ん、でも、そ、すると、凄い回数になる、から…やぱ、3か、4、かな」
「全部入れるなら22回? どこまで丸に含まれるのかが微妙なラインだね」
 現実的に捉えると、数はそんなに多くはならないはず。
 直感で最後の問いに至ったさつまに、ヴィクトルもまた「流石に22回は現実ではないね」と頷いて。
 2人の会話に耳を傾けながら、一瞬だけ思案に耽っていた章は、稀星、ディスターブ、パルピ、彌三八に視線を止めると、淡々と柔らかく告げる。
「何となくだけど、最後の問いに関しては皆答えが揃ってそうだね。最初は『3』で試してみて、失敗したら文字に含まれる○も数に入れてみるのはどうかな?」
 章の提案は4人にとっても万が一に失敗した際には、可能性が広がるもの。
 稀星とディスターブが問題ないと首を縦に動かすと、パルピもまた「大丈夫よ」と、くるりと飛び回って見せて。
 彌三八は再び毛筆をとると、先程の和紙の下に文字を付け加えていく。

 弐の問いの答えは【三】または【三足す歪な○】である、と――。

●最後の試し
「最後の問題はそのままだと…いちをにかい」
 ――「壱」よ開けと「弐」回、唱えよ。
 その通り読むと『1よ開けと2回唱えよ』になるけれど、曲がりなりにも最後の問いかけ。そうは問屋もとい神君家康公は許しちゃくれねェよなと、彌三八は苦笑する。
「…そもそもだが、その前に応えたやつァどこで使うんで ……あ」
 脳内にビリッと電撃が奔った彌三八が毛筆を取ると、自然とその手がすらすらと動く。
 壱を『壱の問いの答え』、弐を『弐の問いの答え』に、置き換えると――。

 ――「いしがき」よ開けと「三」回、唱えよ。

「ドウデ、俺にしちゃあ頭回ってる方だ」
 これで駄目なら後はなるようになるまで!
 パシッと毛筆を置いた彌三八が恐る恐る顔を上げると、揃って「正解!」と応えるような、仲間の笑みがあった。
「わわ、みんな、すごい、ね! そか、なるほど…!」
 終始、打てば響くような対話に驚きの連続だったさつまは、何度も瞳を瞬いていて。
 ふんわり尻尾は更に楽しそうに揺れ、フードから飛び出した耳も好奇心の赴くまま忙しなく動く様子に、ディスターブが「少しは落ち着いたらどうだ」と肩を竦め、ヴィクトルが「緊張がほぐれるよ」と、穏やかに漆黒の瞳を緩めて。
「では、実際に唱えてみるか」
「一回だけなら間違いありだから、間違っても両方試してみればいいかな」
  ――吉と出るか凶と出るか。
 ディスターブが二匹の蛇の意匠が施された杖を掲げると、ヴィクトルも頑丈で重量のある金属製の三又銛を隙なく構える。
「この石垣の前で「石垣よ開けと3回唱える」ってことかしらね?」
「私は金銀財宝への興味より、謎への知的好奇心が勝つですが」
 パルピが石垣の前にひらりと降りたつと、稀星は少しだけ名残惜しそうに言葉を洩らし、白地に金色の装飾が煌めく衣装を靡かせながら、石垣の前に立つ。
 一見すると只の蔵の壁か行き止まりのようにも見える石垣が、目と鼻の先にあった。
「準備はいいかな? せーの!」
 章の合図と同時に一行は空気を目一杯吸い込んで。そして、一気に吐き出す。

「「「石垣よ開け!」」」
「「「石垣よ開け!」」」
「「「石垣よ開け!」」」
 
 3回唱えて口を閉ざすと、しんとした静寂が辺りを包み込み――そして。

 ゴゴゴゴゴゴゴ。

 石垣が滑るように横に動き、中から溢れた輝きは――眩しいまでの黄金だった。

●仄暗き蔵に隠された埋蔵金
「あっ! 開いた…!!! やった、ね!!」
「埋蔵金あった?」
 謎解きは、大正解!
 昂る好奇心を抑え切れず、さつまが真っ先に光の元へ駆け寄ると、その細身ながらも頑強な背を追い掛けた章も、彼の背中越しからひょいっと顔を覗かせる。
 扉の奥は豪華な隠し書斎になっており、眩しいまでの黄金と輝きで満たされていて。
 大量の小判で溢れた壺に金塊の入った箱、白銀などなどが、所狭しに積まれている。
 どれもがひとめ見るだけで価値の高いものと判別できる豪華さで、自然と感嘆に似た溜息だけが漏れていく……。
「すごいです」
「ああ、上手く解けて本当によかった」
 目も眩むような美しくて綺麗な光景が、すぐ眼前にある。
 一瞬でありながらも稀星は赤茶色の瞳を瞬き、ヴィクトルの声にも喜色が滲む。
「これだけの財宝はなかなか壮観だな。――家康公はこの状況を予想して残したのだろうか?」
 この1箇所だけでも十分過ぎるくらいなのに、これを無数に隠したという神君家康公は、如何なる人物だったのだろう。
 彼も稀星と同様、黄金よりも知識欲。
 ディスターブの知恵と真実を追い求める謎解きは、まだまだ飽く様子はなく。
「こねェな大金あったがどうで、俺にゃ荷だが」
 ――小判いち枚くれぇバレやしねェかな。
 書斎から少しだけ離れた所で、彌三八がボソッと呟いたところ……。
「どうしたのですか?」
「い、いや、なんでもねェよ」
 不意打ちに似た稀星の気配を背に感じた彌三八が、一瞬だけビクっと肩を震わせたのは、言うまでもなく♪
「駄目だよ、それはすごく大事な物だから、だーめっ」
 一方、章を取り巻く鴉たちにとっても、キラキラと輝く埋蔵金は夢のよう!
 鴉にとって光モノは大好物。隙あらば持って行こうする鴉たちに、強制的に運搬を中断された形になってしまった章は、書斎の前で手足を広げていますどうします?
 鴉たちを防ぐと同時に、連れてこなければ良かった…と1人反省する、忙しさであーる。
「早く、届けてあげなきゃ!」
 そんな仲間の勇姿(?)に、のんびり省エネモードに入っていたさつまのスイッチが、一瞬だけピンっと切り替わる。
 逸る心を抑えつつ、さつまが大量の小判が入った大きな壺を運ぼうとした時だった。
「ここはわたしにまかせて」
 魅力的な緑の瞳をパチンとウィンクさせたパルピは、輝く黄金の中を飛翔する。
 そして、壺やら箱やらを蜘蛛の糸より細く、柔軟性と強度を兼ね備えた透明な糸でぐるっと一纏めにすると、糸の端を掴んでみせて――。
「見た目だけで判断しないでねっ」
 何処か慣れたような手つきで、パルピは火事場のなんとやらを発動!
 糸で一塊りにされた埋蔵金がぐわんっと持ち上がるや否や、割れんばかりの拍手が仄暗き蔵の中に響き渡った。

 埋蔵金を手にした猟兵たちは、弾む足取りで帰路に着く。
 徳川埋蔵金探索紀行、仄暗き蔵の言の葉編。
 これにて、一件落着らくちゃーく――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト