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エンパイアウォー④～大山鳴動して

作者：虎河豚天

●大山鳴動して
　富士山が鳴動する。
　大山鳴動して鼠一匹。
　今回はそうはいかない。
　それは深い、深い所で揺れ続ける。
　真紅の熱量が今、滅びをもたらそうとしていた。
　黒煙が立ち上り、滅びが訪れようと。

●と言うことで。
「富士山噴火阻止作戦です」
　アリシエル・フィフスガーディ（五天の守護機・f09139）は猟兵たちに視線を向けた。
　まーたなんかとんでもない事言い始めたぞ。
「魔軍将の一人、コルテスが富士山を噴火させようとしてします」
　何でも太陽神ケツァルコアトルの力を借りるのだとか。
　儀式場でオブリビオンたちが噴火させる為の太陽神の儀式を行っている。
　この儀式を止めなければ東海・甲信越・関東地域は間違いなく大混乱に陥る。
　怒涛の大災害が発生し、幕府軍はその助力に戦力を残さねばならなくなる。
　そうなれば、決戦に向かう戦力が減ってしまうのだ。
「これをどうにかして阻止しなければなりません」
　銀糸の少女はグリモアを浮かせ、転送の準備に入る。
　ゲートが展開され、猟兵たちをいざなう。
「儀式は儀式場の中で生贄の竜を捧げると言う古式豊かな生贄の儀式です。これを阻止し、敵オブリビオンを速やかに撃破してください」
　紫紺の眼差しが無機質、無感情に猟兵たちを見つめる。
「イェーガーたちならば問題なくこの予知の打破を完遂出来ると信じています。健闘と武運を祈ります」
　紫紺の眼差しも、その無機質な口調も。
　いつもと変わらず。たとえ世界の戦であっても、いつも通りの仕事をすれば勝てるのだと。
　確信をこめた信頼がそこにあった。

第1章 ボス戦 『細川ガラシャ』

POW   :    花も花なれ、人も人なれ 【自らの周囲に吹き荒れる白百合の花びら】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 SPD   :    怒れる慈愛 自身の装備武器に【ガトリング砲】を搭載し、破壊力を増加する。 WIZ   :    鬼の女房に相応しい蛇の女 自身が【困難に立ち向かう心の強さ】を感じると、レベル×1体の【自身と共に殉死した侍女の霊】が召喚される。自身と共に殉死した侍女の霊は困難に立ち向かう心の強さを与えた対象を追跡し、攻撃する。 イラスト：梅キチ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●鋼の空
「火山噴火って人を殺すのはともかく、生態系に影響が出過ぎじゃないかなッ！？」
　リズ・ルシーズ（Re-Z・f11009）はその真紅の鎧を光学迷彩して隠れながら近づく。
　疑似刻印を周囲に浮かべながら、他の猟兵たちに通信を送る。
「そっちは大丈夫？」
「いつでもいけます」
「任せとけ」
　その声に応じたのは全世界サイボーグ連盟の仲間たち。
　草野・千秋（断罪戦士ダムナーティオー・f01504）こと断罪戦士ダムナーティオー。
　そして、アーサー・ツヴァイク（ドーンブレイカー・f03446）こと暁の戦士ドーンブレイカーである。
「真正面からぶっちぎるぜッ！！」
　ドーンブレイカーが空からフルスピードでぶっ飛ばす。
　儀式場にいた細川・ガラシャがその強襲に気づき、自らの武装にガトリングを積み、迎撃する。
「痛みに耐えて笑うのもまたヒーロー……ッ！！」
　されど、ダムナーティオーがその攻撃を防ぎ、ドーンブレイカーの道を切り開く。
　ドーンブレイカーが自らのウェポンボックスから無数の武装を射出する。
「行くぜ、これが俺の必殺技の一つッ！！」
　【Select……CYCLONE ACTIO！！】
　無数の武装が爆発物となり、儀式場に飛来する。
　その飛来する武装爆発物にガトリングの弾丸が降り注ぎ、虚空で爆発する。
「まだまだいくぜッ！！」
　空を舞いながらさながら戦闘機の如く、されど爆撃機のように。
　ドーンブレイカーが武装を次々と発射していく。
　されど、ガトリングの弾幕でそれは射ち墜とされる。
「いくらやったところで……！！」
「そりゃあやらせるようにしてるからなッ！！」
「？！」
　そう、それはあえて隙を生み出すように放たれていた。
　ダムナーティオーが小竜を滑り込んで救出すると同時。
「限定解除、放熱板展開……ッ！！」
　光学迷彩が解除され、疑似刻印から無数の光が照射されると同時。
　ミサイルランチャーとライフル、無数の一斉射撃。
「全武装、再構築ッ！！」
　再び見よと、其れは謳う。
　撃ち尽くしたはずのライフルや、ミサイルランチャー。
　それがまるで逆再生したかのように弾が再装填される。
　真紅の軌跡を空に刻みながら、上空から無数に降り注ぐは鋼の咆哮。
「おまけも持っていけッ！！」
　さらにドーンブレイカーが射出するウェポンズ・ボム。
　それらが細川・ガラシャに降り注ぎ、爆発し、儀式場を崩壊させていく。
「おのれぇ……だが、生贄は貴様らでも……ッ！？」
　爆炎と黒煙が立ち上る最中、細川・ガラシャが叫びをあげる。
　それと同時、黒煙を切り裂き、ダムナーティオーが拳を振り上げる。
「細川・ガラシャッ！！　覚悟ぉぉぉぉぉぉッ！！」
　振りかざした拳が、鋼の唸りをあげて、叩きつけられる。
　拳で放ったとは思えない轟音が樹海の空に響き渡った。
　大身槍がそれを受け止めるがその破壊力を受け止めきれず、その身が吹き飛ぶ。
「おの……れぇぇぇぇッ！！」
　細川・ガラシャが恐るべき声をあげて叫ぶ。
　だが、まだこの女の執念は刈り取れず。
　戦いはいまだ続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●猫と怠惰
「戦乱の世に散った武将もその妻も、民の繁栄と太平の世を目指していたのではなかったか？」
　二天堂・たま（神速の料理人・f14723）がその肉球を振りかざし、問いかける。
　それは、戦乱の世にて多くの人間が目指したもの。
　語りかける言霊は何よりも強く、されど。
「分かるまい、貴様たちのように恵まれた時代に生きるものにはぁッ！！」
　それは届かず。
　放たれたガトリングの弾丸がたまを襲う。
　二度、三度と虚空を蹴り、その弾幕を避ける。
　時折当たりそうなのは、こう、てしっ、とぺもっ、と弾く。
　猫の肉球は不思議なのだ。
「日の本に混乱を招くのはキミたちの本意ではあるまい」
　いや――――この言葉も届かぬのだろうな、とたまは思った。
　最早彼女は骸の海に沈み、そして帰ってきた亡者なのだから。
　理も、情も、最早彼女を慰撫するには届かない。
　なれば出来る事など。
「この肉球しかあるまいよ」
　ボビンケースが投げられ、そのガトリングを絡め取る。
　動きを封じた所に放たれる猫の肉球、それはケットシーの肉球。
　柔らかい、ぷにぷにの感触が細川・ガラシャを打ち据える。
　負の感情が浄化され、その存在に干渉する。
　鈍い音をあげて細川・ガラシャが吹き飛ぶ。
「はい、いらっしゃ～い」
　吹き飛んだ先ではモルテマリア・ベルフェゴール（サクラメント・アップル・f17390）がおっとりと待ち構えていた。
　竜の生贄の味に思いを馳せていたのである。食べないで。
「火山噴火計画、ヒーローズアースの数あるヴィランも試した由緒正しき大悪行……そんなことはよくないですッ！！」
　自分はその時も協力したのかよく覚えてないですけど。忘れましたけど。
　頼まれると嫌って言いにくいから仕方ないんですよ。
　きっとケルァルなんとかも一緒な気分なんです。
　そんな風な自己弁護しながら、影からナニカが溢れ出る。
「溢れて、零れて……」
　虚数元素で構成されたナニカ、虚数元素で構成された無数の使い魔。
　それが溢れて、零れては、細川・ガラシャに絡みつき、群がる。
　ミシミシ、と触手が肉体を締め上げ、虚数で犯して解体（バラ）して。
　影の使い魔たちがそれを突き刺しては、啄んでは、噛み付いては。
「そんなえらいこっちゃはさせませんよ～！」
　ミシミシミシミシッ、と軋む音が激しくなり。
　やがて、細木がへし折れるような音が響く。
　だらん、と腕が垂れ下がり、槍が落ちる。
　それでも。嗚呼、それでも。
「私は……儀式を……」
　ごぽり、と血を口から吐き出しても。
　彼女の妄執、壊せず。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●眠りへの誘い
「富士山噴火は……流石にスケール大きすぎるやろ……」
　メルノ・ネッケル（火器狐・f09332）はやらかすことに対するスケールにドン引きしている。
　実際噴火したら関東圏は壊滅するだろうし、その周囲もまた火山灰で大規模な被害が発生するのは間違いない。
「止める、必ず止めなあかんッ！！」
　だから、ここで眠れ細川・ガラシャ。
　血反吐を吐き捨てるその身に目掛け、構えるはＲ＆Ｂ。
　真紅のラインが煌めくと同時、真紅の奔流が解き放たれる。
「ッ！！」
　それに反応するも、傷ついた体の反応は遅い。
　最早全身の骨が砕かれ、生きているのも不思議な骸。
　熱に焼かれ、左腕が炭化する。
「流石に、その身やともう武器もろくに持てへんやろ……ッ！！」
　接近するにも、武器を振るうにも、最早ろくな力も無いであろう。
　リロード、トリガー、灼熱がまた彼女の身を焼いていく。
「まだ……だ……ぁッ！！」
　残った右腕が大身槍を投げつける。
　空気を切り裂き、それがメルノに襲いかかる。
「させん……」
　死之宮・謡（統合されし悪意→存在悪・f13193）の槍がそれを打ち払った。
　呪詛の雷光を纏い、滅びをもたらす呪詛の刃を振るった。
「おおきにな！！」
「……前に出る」
　謡が雷光を迸らせ、疾駆する。
　それを防ごうと細川・ガラシャは白百合の花びらを散らす。
　されど、それはメルノが熱線のクイックドロウで焼き払う。
「貴様等の怒りも憎悪も……私を満たしてくれる……ッ！！　さあ、愉しませろッ！！」
　真紅の斬撃が圧力となってガラシャの身を押しつぶす。
　ぐしゃり、と言う音をあげて、足が潰れた。
　黒き呪詛の雷光がその右腕も焼き払う。
　崩壊する呪詛が彼女の全身に回っていく。
「――――女が余り戦場に出るモノではないだろう？」
　振るった大槍は、誰が為のものか。
　その一撃は彼女の妄執を切り払うが如く。
「最早決着は決した――――眠れ」
　朱きユメを切り払う、緋色の斬撃。
　それが細川・ガラシャと言う女の首を薙いだ。
　軽い音をあげ、その首が飛び、そして、地に墜ちる。
　どさり、と言う音と共に女武者は儀式場に倒れ伏す。
　そして、さらさらとした黒灰に変わっていく。
　――――妄執はここに絶たれ、女は骸の海にへと帰した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年08月05日