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エンパイアウォー②～穢れた水晶を砕け～

作者：燕の巣

●屍の行軍
「な……なんだ、あのバケモノは……」
　それは突然の出来事だった。
　肩から水晶を生やした屍『水晶屍人』は指揮官に従い、奥羽の地を蹂躙する。
　村人の怒号と悲鳴が辺りに響くが、それもすぐに収まった。
　――かに見えたが、複数の咆哮が死の静寂を破る。
　それは死してなお、安寧を得られぬことへの嘆きか。
　この『水晶屍人』はそれほど強くはないのだが。
　噛みつかれた村人はその命の輝きを失い、自らも水晶屍人になってしまう。
　こうして数を増やしていくのだから、厄介である。
　屍の一団は、各地の砦や城、町を襲いながら、江戸を目指して南下してくる。

　その地獄図絵を現実にしない為に、笛吹篠は猟兵を集めた。

●勝利の礎とする為に
「皆さん、現在奥羽で猛威を振るう『水晶屍人』を食い止めてください」
　猟兵が詳細を求めると、篠は一呼吸置いてから答える。
「水晶屍人というのは、魔将『安倍晴明』が屍に術をかけて造り出したもの。言わば、生きる屍です。彼らは生あるものを見れば手当たり次第に噛みつき、その相手も水晶屍人としてしまいます。皆さんが水晶屍人になることはないようですが、この脅威を速やかに排除しなければ、江戸の防衛の為に幕府軍の人員を割くことになります。そうなれば、織田信長との決戦にも影響が出るでしょう。それは避けねばなりません」
　そこで一度言葉を切り、猟兵の表情を窺った。
「水晶屍人は知能が高くないので、指揮官さえ倒してしまえば、奥羽諸藩の武士でも駆除は可能、とのことです。数百、数千の水晶屍人の中から指揮官を見つけ出すのは骨が折れそうですが、皆さんならきっと、成し遂げることができると信じております。では…よろしくお願いします」
　篠は深々と頭を下げた。

第1章 ボス戦 『戸沢・三毛猫斎』

POW   :    きゃっ遁・大山猫変化の術 【巨大な山猫】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。 SPD   :    きゃっ遁・猫津波の術 戦闘力のない、レベル×1体の【かわいい子猫】を召喚する。応援や助言、技能「【誘惑】」を使った支援をしてくれる。 WIZ   :    ぐらび遁・でっぷり落としの術 【怪しい印を結んで重力装置を起動すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【でっぷりした猫を上空から落下させること】で攻撃する。 イラスト：華月拓 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　水晶屍人の群れが、猟兵に迫ってくる。
　猟兵はそれぞれの作戦を胸に、全力で迎え撃つ体勢だ。
　ここに戦の開始を告げる法螺貝はないが、いざ出陣！








　ニィ・ハンブルビー（怪力フェアリー・f04621）は包囲網を敷きながら、心底嫌そうな表情で水晶屍人を睨む。
「なんていうかさー、屍を利用するとか村人を死なせて軍勢を増やすとか…趣味悪いよね！ボクこの術嫌い！」
（安倍晴明がどんな奴かは知らないけど！絶対ぶっ飛ばす！）
　決意を固め、まずは目の前の軍勢に目を向ける。
「敵の大将を叩けばそれでいいって話だけど、ボクの得意分野は大雑把に敵を吹っ飛ばすことなんだよね！」
　ニィは【降り注ぐ災厄の魔法（ツルギノアメ）】で『金の精霊の贈り物』――４０ｍの剣を４０本複製した。
　それを３、４本軍勢の行く手を遮るように突き立てて足止めし、残りは敵陣にぶち込んで数を減らす。
　順当に頭数は減ったものの、そこに大将はいない様子で、どこからか『きゃっ遁・猫津波の術』による戦闘力のない可愛い猫の津波が押し寄せてきた。
　手勢を減らされ、焦った大将が顔を出せば良いが、後方（この場合は、包囲網の中心）に控えている場合は気付かないかもしれないし、『多少の犠牲は大事の前の小事である』と割り切って、わざわざ最前線にまで出て来ない可能性もある。
「出てきたら上空に残した一本でドスン！だよ！」

　包囲網の一人である鈴木・志乃（ブラック・f12101）は複数のUCを発動させる。
「さーてさてさて敵の思念を辿って行こう。どこにいるのかなぁっと」
　行く手を阻む屍人は破魔の力を籠めた一撃で斃して行く。
　屍人はどんどん斃さなければ。
　破魔、祈り、催眠術を籠め、歌唱の衝撃波で薙ぎ払い。
　敵の攻撃など、第六感で見切り、光の鎖で早業武器受けからのカウンター薙ぎ払いを見舞ってやる。
　オーラ防御は常時発動し、必要に応じて敵死体を念動力で巻き上げ、臨機応変に攻撃や防御に転用しつつ、時に嵐も巻き起こす。
「……あたし嫌いなんだよね。死体を操る技も生者を屍に変える技も。そーゆー呪いの類、全部ぶっ壊してやる……あたしはその為に生まれてきたんだから」
　その声は術者である魔将・安倍晴明への静かな怒りに満ち、呪詛――あるいは宣誓のように辺りに響いた。
　直後、ぐらび遁・でっぷり落としの術によって、でっぷりした猫が上空から落ちてきたが、志乃には当たらない。
　見た目によらず、しゅたっと華麗に着地して去って行った。

　その頃、別地点に布陣していた水晶屍人包囲網の一人、ラモート・レーパー（生きた概念・f03606）は、『あ！』と小さく叫び、頭上でピコーンと電球を光らせる。
「こうすれば敵の頭もすぐ見つかるじゃん！『この刻は我が領域にして狩の刻なり』」
　UC【夜の領域（ハンティングタイム）】を発動すると、ラモートは自分の存在を星の瞬く時間だけ、オブリビオンに書き換えた。
　そして、なんとか効果時間中に水晶屍人の支配権の略奪を試みる。
　これが功を奏し、ドミノ倒しのように、全ての水晶屍人がラモートに跪いた。
　この命令に唯一従わないもの――それこそがこの軍勢の指揮官だ。
　見つけてしまえば、あとは首を落とすのみ！
　ラモートは明らかに浮いている戸沢・三毛猫斎に狙いを定め、キツイ一撃を加えて直ぐに離脱する。
　それは後に続く猟兵の攻撃に巻き込まれない為。
　三毛猫斎の反撃・きゃっ遁・猫津波の術にも動じない。

　包囲網の最後の一角・デナイル・ヒステリカル（架空存在の電脳魔術士・f03357）は考える。
「いくら現地戦力での駆除が可能とは言え、これだけの集団を相手にするのは重労働でしょう。指揮官を探し出して殲滅するまで、この敵襲団を削げるだけ削ぐべきだと判断します」
　眼鏡をくいっとしつつ、デナイルは口角を吊り上げた。
「肝心の指揮官捜索方法ですが……ここは正攻法でいきますよ。別名、『あたまのわるい作戦』です」
　そう言うとUC『疲れ知らずの僚属たち（バーチャルレギオン）』を発動し、遠距離からの射撃によって一方的に敵襲団を倒し続ける。
　他の猟兵との連携で、三毛猫斎の炙り出しには成功している。
　デナイルは三毛猫斎に̠火線を集中し、撃破した。
　反撃のぐらび遁・でっぷり落としの術も、当たらなければどうということもないのである。
　ともあれ、これで安倍晴明に一矢報いることが出来ただろうか。
　勝って兜の緒を締めよの格言通り、まだ油断はできないが。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月04日 宿敵 『戸沢・三毛猫斎』 を撃破！