エンパイアウォー⑤ ~碧いもみじに緋緋色映えるか~
「皆さんもご存じの通り、第六天魔王の出現により、サムライエンパイアはかつての戦禍に揺り戻されつつあります。
皆、戦には慣れたものとはいえ、戦をするには矛や鎧のみならず、兵糧や物資が不可欠となります」
グリモアベースはその一角、刹羅沢サクラはいつも通りの真面目な面持ちで話を始める。
農民や商人であっても、槍を手に取れば戦えるかもしれないが、飯が食えねば戦いはできない。
要するにまぁ、物資が不足しているのである。
その原因は第六天魔軍将図に記された魔軍将の一人、大悪災『日野富子』による買い占めであるという。
これにより、各種物資等の値段は高騰。満足な数を揃えられずにいるというわけである。
「いくら武勇を誇ったところで、金で殴り合う戦いでは無力と言わざるを得ません。より多くの資金が必要です」
そこで、と、サクラは一枚の地図を取り出す。
神君家康公が有事の為にと遺した『徳川埋蔵金』その場所を示す地図である。
しばしば噂にされるほど、いくつもの資産を隠したと言われるその一角を、この戦争の為に解放しようというのだ。
ただし、その埋蔵金は盗掘を避けるため、容易に解けないような謎を鍵として隠しているという。
ただ地図の通りの場所に向かうだけでは、その発掘はできそうにない。
「古文書によれば、地図の示す場所は、たくさんのイロハモミジを植えられた祠だそうです。霊的な守護があるようで、特定の言葉、パスワードを告げることで仕掛けを解くことができるそうです。
その言葉というのは、正確には記されてはいませんが、その助けとなるものが、地図に併記されているようですね」
そういうと、サクラは地図に記されている文字を指し示して見せる。
『壱七 弐七 陸伍 壱陸』
ただの数字にしか見えないが、これにより導き出される『意味ある言葉』が埋蔵金獲得に必要なもののようだ。
「あたしにはなんのことやらわかりませんが、どうか皆さんのお知恵をお貸しください」
最後に一言を添えるとサクラはぺこりと頭を下げるのだった。
みろりじ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
こんばんは、流浪の文章書きみろりじです。
今回は謎かけということで、無い頭を精いっぱい捻ってよくある感じの謎かけをやってみました。
解き方に見当がつけば、いくつか障害はあるかと思いますが、簡単に解けると思います。
ヒントはオープニングにいくつかあると思うので、大丈夫……なんじゃないかなぁ。
謎解きシナリオなので、プレイングには必ず解答を書いておいてください。
また、謎を解くに至ったRPや金塊を得たRPなども書いて頂ければ色々いいんじゃないでしょうか。
あんまりあれこれここで書くとホラ、プレイング講座みたいになっちゃわないかなぁ……。
シナリオの形式上、あんまりいっぱいのプレイング採用はできないかもしれません。
初めての試みなので色々と穴が見つかりそうなものですが、皆さんと一緒に楽しいリプレイが作れれば幸いです。
第1章 冒険
『神君家康公の謎かけ』
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POW : 総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。
SPD : 素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。
WIZ : 明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。
👑3
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雷田・水果
【POW】
「正直、自信はありませんが……」
●解説
「イロハモミジ」から、おそらく「いろは」に関係しているでしょう。
『壱七 弐七 陸伍 壱陸』をヒントに、7×7に並べます。
(※意味のありそうな言葉から強引に設定した配置です。)
漆陸伍肆参弐壱
いろはにほへと壱
ちりぬるをわか弐
よたれそつねな参
らむうゐのおく肆
やまけふこえて伍
あさきゆめみし陸
ゑひもせすん 漆
強引ですがこのように配置して、
壱七=い
弐七=ち
陸伍=き
壱陸=ろ
●回答
「いちきろ……これが答えでしょうか?」
水果は己が導き出した答えに自信はないが、威光は放っていた。
鬼灯原・孤檻
徳川埋蔵金…戦争の矢面に立たない戦い…
罪を裁かないでいるのは、自分の存在意義が揺らぎそうだが。
謎に罪はないから刀では切れない。ならば己が頭を回すしかない。
「…それにしても、この紅葉。見事だな…」
紅葉を見上げていると、ふと脳裏にいろは歌がよぎる。
「いろはにほへと、
ちりぬるを……… ああ、これは、」
壱を頭文字の行に、七をその行の七番目の文字に…
そうして文字を拾い上げていく。
「……あさやけ」
最後にその単語が口からこぼれ落ちる。
視界の端に、紅葉の葉がヒラリ。
<アドリブ連携歓迎>
笹鳴・硝子
【WIZ】
閃きました
というか、これは大学生の私向きの問題では?
知性も柔軟な思考もありましたね、良かった
まずはここがイロハモミジが植えられているのは意図的ですから、ヒントなのでしょう
そして『壱七 弐七 陸伍 壱陸』
十を使わないのも意図を感じます
空白の入り方からして、答えは4文字
一文字に対して二つ数字が必要なら、段と行を示すと見るのがセオリーですね
(地面にいろは歌をかなで書き)
「ふむ。――『あさやけ』でいかがでしょうか」
※当たっていた場合
「これで兵糧が確保できると良いですね。買占められて空腹で負けるのはさすがに御免蒙りたいですから」
田丸・多摩
「ふむ……イロハモミジがヒントと考えるなら、この数字はいろは歌に対応するんでしょうかね?」
といって、いろは四十七文字しかないところに、六十五番目の字というのもおかしな話。ならば、行と列の数を示すと見ればどうか?
というわけで、色は匂へど/散りぬるを/我が世誰ぞ……と区切りつつ、仮名で書き出してみる。
一行目の七文字目は『ト』、二行目の七文字目……は、ない。とすれば、この数え方はハズレか。
では、一文字目のイから数えて七行目に来る文字は『ア』、二文字目から数えて七行目は『サ』、六文字目の五行目は『ヤ』、一文字目の六行目は『ケ』
「答えは、『ア・サ・ヤ・ケ』……朝焼け、でしょうか?」
徳川埋蔵金の在処が示されている地図の写しを頼りに、猟兵たちはとある山奥を進んだ。
もう数十年も人の出入りがなかったのだろう、日陰になりがちの山道にはひんやりとした風が流れ込み、辛うじて道しるべとなっている縁石にはびっしりと苔が生している。
夏の山は暑い。そんな常識を覆すようなゆったりとした山道に、一同は足取りも軽いが、仮にこれから埋蔵金を発掘して持ち出すことを考えると、ちょっとした手間になるのではないだろうか。
「あの……今更な質問なんですけど」
山道に入り始めてから早くも15分が経過した辺りで、最も若い猟兵の一人、雷田・水果(人派ドラゴニアンの鞭使い・f19347)がおずおずと口を開く。
水龍の革で作られたという、足場のコンディション次第で靴底の形状を変える特殊な靴を履いているためか、一人先を行く彼女からすれば、振り向いて話す形になる。
「今回は、その、謎解きですよね……」
「……そうだな」
水果の次を行く、小刀を銜えた嘴のような変わったマスクをつける鬼灯原・孤檻(刀振るう神・f18243)が、言葉少なに応じる。
喋りづらいというわけではなく、単純に口数が少ないらしい。
「武器、必要ですかね……?」
「……不要でもない。筈だ」
一瞬だけそういえば、というかのように目を見開いたようにも見えたが、特に表情が大きく変わることもなく、狐檻は景色を見回すような仕草を装って誤魔化す。
彼の腰には、いつも通り愛用している自身の半身ともいうべき霊刀が差してある。
「──私からも、一つ質問が」
さらにその後ろから挙手したのはサムライエンパイアの世界には異色な、都会的なミリタリールックに身を包んだ笹鳴・硝子(帰り花・f01239)であった。
その視線は一番前を行く水果ではなく、硝子の傍らを速度を合わせて並走する一台の小さなバイクへと注がれている。
具体的には、そのバイクに跨るスーツ姿の小さな人物こと、四人目の猟兵、田丸・多摩(謎の裏方お姐さん・f09034)に向いているのだが、
視線に気づいたらしい多摩は、超低速運転中ながら硝子を見上げる。
「お疲れでしたら、ご一緒しますか?」
「いえ、疲れてはいないのですが……だいたい、私が乗ったら走りづらいのでは?」
ドワーフである多摩は、他の種族に比べて体格が小さめであり、用いる道具も可愛らしいものをしている。
実際、彼女の乗っているバイクもミニバイクのようなものであり、ちょっと体格のいい男性なら軽々と肩に担げそうなものだ。
「可愛いバイクですよね。でも、その、なんで山にわざわざ……」
水果が場を盛り上げようと、精いっぱいの賛辞を贈る。
思えば、今回の調査で集まった猟兵は、いずれも口数の多いタイプとは言い難い。
元から無口であったり、仕事に無駄口は不要という仕事人気質が揃っている。人との距離をわきまえている、言うなれば大人が集まる中で、唯一の10代で人見知りのケがある水果は、別に不必要と思われようとも、なんとか話を盛り上げないと、という妙な使命感に駆られていた。
過ごしやすく開放的な自然の最中にあることが、彼女をそうさせているのかは不明だが、話を振られた堅実な仕事人である多摩も、仕事道具を褒められて悪い気はしていなかった。
「ふふふ、実は色々機能があるのですよ。牽引用のウィンチから運搬用リヤカーまで格納しているのです。金塊を見つけたら運び出さなきゃいけませんからね」
「なるほど……ちゃんと仕事の事を考えていたんですね」
「山の中と聞いていたので、一番取り回しの利くものを選びました。一度に運べる量は減りますが、先に成果を持って帰ったほうが、手伝ってくれる方々も、やる気が出るでしょう?」
縁の下の力持ちを自称するだけはあるらしいその先見性に、女性陣はホホーウと感心したような声を上げる。
一方で話に興味のなさそうな狐檻は、一人ゆったりとした足取りで先行しており、環境が変わったのを肌で感じていた。
「植生が変わったな……」
山道が終わりを迎えると、木々の様子が変わる。
道を最低限整える以外はたいして手を加えていなかったこれまでの雑然とした林とは違い、そこには一帯そのものに手を加えられた形跡がある。
山の中腹に隠れる様にぽこりと出現した台地のような小丘は、一帯を等間隔に紅葉が植え付けられ、それらは植物特有の有機的な彩を持ちながらも、規律を与えられたようなどこか整然とした美しさがあった。
年中、冬を除くすべての季節でも黄色から緋色に染まるその景観は、一同が思わず足を止めるほどだった。
「すごい、手が込んでいますね」
「きれい、ですけど……こんな華やかな場所に埋蔵金隠して大丈夫なのかな……」
感嘆に目を見開きつつも、どこか冷静な部分がそっけない言葉にしてしまう硝子と、至極もっともな疑問を口にする水果。
そんな二人を一緒にちゃっかり写真に収めつつ、バイクから降りて手で押しつつ、周囲を見回す多摩。
空間を広く見せるためだろうか。数百本もの紅葉が視界を埋めている筈なのに、密集しているわけではないためか、林の奥まで見渡せる。
「……あれか?」
「ああ、話にあった通りですね」
多摩に倣うようにして同じように周囲を見渡していた狐檻が、最初にそれを見つける。
幾つもの紅葉の落ち葉、それらに埋もれる様にして、その祠はぽつんと佇んでいた。
「思ったより、その……小さいですね」
祠の規模の小ささに、水果が思わず口に出してしまう。
まるで神社の本殿。ご神体を奉る小さな社のような佇まいは、大きく見積もっても4メートル四方の規模しかないように見える。
仮に金塊が詰まっているとしても、その量も大したものではないのではないだろうか。
視線を交わす一同に、暗い雲がたちこめ始めるが、とにかくここまで来たのだ。鼓動を起こさない事には何もわからない。
「ひとまず……中を確認してみなくてはな」
思考を切り替える様に、狐檻は祠の正面にある小さな扉を前にして、腰の刀に手をかける。
「……そんな、いきなり物騒な」
いきなり抜刀しようとする狐檻を、水果は思わず手で制する。その合間にするりと抜ける様に前に出た多摩が、あっさりと祠の扉の閂を外す。
「鍵、かかってませんね」
「無理に刀を使う必要は無いのでは?」
「む……罪を斬る必要のない戦いとは……慣れんな」
多摩や硝子に引き止められると、狐檻はようやく刀から手を放す。
鉄火場にて罪を裁くべく刀を振るう。そのような現象そのものが神となったような彼にとって、誰も裁かぬという今回の依頼は、ちょっと慣れないものがあるようである。
詫びるかのように頭を軽く掻くと、一人祠から数歩退いて紅葉林を眺め始める。
「どうやら、これが件の謎解きのようですね……不思議な木板です」
祠の中にご神体のように安置されていたのは、一枚の小さな木板だった。
多摩の小さな手に収まるほどのそれは、何十年も安置されていたにしては全くの劣化が見られず、うっすらとその周囲に墨で書かれた帯のような文字が球形に浮かんで見える。
「霊的守護を帯びている、というのはこの事でしょうね。うっかり破壊でもしたり、不用意な書き込みをしたときは、埋蔵金が手に入らないのかも……」
水果と共に掲げられた木板を覗き込む硝子が、顎に手をやりつつ考えを巡らせる。
さて、ここからが頭の使いどころである。今回は謎解きなのである。
別にピクニックをしに来たわけではないのだ。
たしか、宝の地図に併記されていた謎解きの文言は、
『壱七 弐七 陸伍 壱陸』
という文字だったはずだ。
これだけでは、何のことかよくわからない。ただの漢字表記の数字にしか思えない。
女性三人組がそれぞれあれこれと頭を捻りながら物思いにふける中で、狐檻は木板をちらりと一瞥したものの、その術式の本質を解く手段は力押し以外に思いつかなかった。
仕方がないのでもう一度周囲を囲む紅葉林に目を向ける。
「……それにしても、見事な紅葉だな。イロハモミジか……」
ぼんやりと思わず呟いた言葉に、心の中の何かが引っかかる。
そして彼の呟きを耳にしていた女性陣もピンとくるものがあったのか、一斉に狐檻の方を向く。
「いろはにほへと、
ちりぬるを……、
ああ、これは」
「ええ、私も閃きました。これは現役大学生の私向きじゃないですか?」
「大学、思い出しますね……あの頃は楽しかった……」
いろは歌を口ずさむ狐檻に、びっと指を立てて顔を明るくする硝子。そして約一名思い出に遠くを見始める多摩。
周囲に怪訝な視線を向けられ、多摩が失礼と佇まいを正すのを見届けると、まずはお互いの考えをすり合わせるべく、少しだけ興奮した様子で硝子が口を開く。
「まず、イロハモミジが植えられているのは、ヒントだったんですね」
「ふむ……イロハモミジがヒントと考えるなら、この数字はいろは歌に対応するんでしょうかね?
といって、いろはは四十七文字しかないところに、六十五番目の字というのもおかしな話……」
顎に手を這わせて思索に耽る多摩は、年若いように見えて機知を思わせる目元は、やはり大人びたものがある。
「十を使わないのも意図を感じますね」
「ならば、行と列の数を示すと見ればどうでしょう?」
「なるほどな。つまり……」
考えの一致を見る三人の答えは、同じものへとたどり着きつつあった。
そんな中、一人だけ話に加わることもなく、黙々とメモ帳を手に格闘していた水果が顔を上げる。
「できました。問題をヒントにいろは歌を7×7に詰めて表にしてみました」
「うん?」
謎の威光をぺかーっと放ちつつ、自作の表を作り上げた水果に、誰ともなく疑問符が浮かぶ。
考えは途中まで同じだが、ちょっと考えが深すぎる。
「あとは、この数字の通りに文字を当てはめていけば……」
無表情ながら、心なしわくわくしたような威光を放ちつついそいそと文字を当てはめていく水果の、その嬉しそうな雰囲気のためか、一同の誰もが声をかけるのに躊躇われるものがあった。
「……いちきろ?」
彼女の纏う威光は徐々に勢いを失いつつあった。
「あの、サムライエンパイアの単位もキロなんでしょうか……?」
「渡来人もいるみたいですし、無くはないかも……?」
「いえ、それよりもですね」
おずおずと訊く水果の言葉は消え去りそうなもので、その答えの自信の無さが浮き彫りになっていた。
それをどう扱ったものか迷いながら眉根を寄せる硝子と、メモ帳に手を加えていろは歌を文節ごとに書き加えていく多摩。
「おそらく、詰める必要は無いんですよ。字数は気にせず、一節ごとに改行して考えてみましょう」
そういいつつメモ帳に書き加えられた文章を改めて見て、水果も思い至ったらしい。
壱を頭文字の行に、七をその行の七番目の文字に……という具合に、
そうして文字を拾い上げていく。
「あさやけ……意味のある言葉に、なりました」
どこか拍子抜けしたような様子で読み上げる水果は、表情が薄いながら、耳をちょっとだけ赤くしていた。
いたたまれない空気が漂い始める中、そんなものは特に気にしない狐檻が、震える彼女の肩にやさしく手を置く。
「お前はまだ若い。もう少しアホに考えてもいいんだ。……肩肘を張らずにな」
「……なんだか、悔しいです」
フォローなのかそうでないのか。ともかく、難しく考え過ぎるなという旨は伝わったらしい。ともあれ、人の死なない依頼での経験は、彼女を少なからず前進させるものとなる事だろう。
そうして一同は、仲良く4人で木板に文字を書き込む。仮にこれが間違いであっても、4人それぞれが責任を負うためという律義なものだったが……。
果たして、パスワードは正解だったようで、書き込んだ木板は一瞬で塵と消え、開け放たれた祠の奥底から何かが振動する音が響いた。
「さて、埋蔵金がどのような形で出てくるのか、見物ですね」
「ええ、祠を調べた限り、木板を奉られていたところに小さなスリットくらいしか……」
多摩が私見を披露するよりも前に、祠から輝きを帯びる小判が飛び出し、その足元に転がった。
拾い上げると、それは紛れもなく純金製と思われる重みがあり、その形状は祠を調べた時に見つけたスリットに酷似していた。
「なるほど……順次、排出される仕組みのようですね」
拾い上げた小判を他に渡しつつ、いそいそとキャリアーの準備をする。
その間にも祠の中からは小判が溢れ始めて、周囲をきらきらと染め上げつつあった。
「これで兵糧が確保できると良いですね。買占められて空腹で負けるのはさすがに御免蒙りたいですから」
その様子をぼんやりと眺めつつ、硝子は当初の目的を思い出す。
資金の調達は急務である。そのはずだが、こんなにのんびりしていてもいいのか。
と、気ばかり焦ったところで、小判の排出はどう急かそうにも一定間隔である。
既にかなりの量が排出されているようだが、それは一向に止みそうな気配を見せない。
「……あの、これ、いつまで出続けるんでしょうか」
小判が作り出す小山の威容に、早くも自身の威光が気圧されるのを感じつつ、恐る恐る仲間たちに問いかける。
既に一同の胸中には、嫌な予感が芽生え始めていた。
何しろ、この封を解いた答えがそれを物語っているようなものだったのである。
「……朝焼け、か。まさかな」
呟く狐檻の頬を撫でる様に、はらりと朝焼けを思わせる紅葉が一枚。
大成功
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