エンパイアウォー②~冥府魔道に霞む葬列
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――死者が、群れをなして歩いていく。
未明、奥羽地方で大量発生した『水晶屍人』の列が、朝霧の中を真っ直ぐに進んでいた。その群れの中心にいたのは、一人の剣鬼だ。霧がごとき鬼神の殺気を身にまとい、歩く姿はまさに鬼――あるいは、鬼へと堕ちたモノだった。
「――――」
剣鬼、霧冥の真紅の瞳はただ真っ直ぐに人里のある方向へと向いていた。冥府魔道に堕ちちた鬼神は、もはや悪を討つ刃にあらず。
ただ、生者に死を運ぶだけの亡霊であった……。
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「ついに、織田信長が動いたらしい」
ジョー・パブリック(名も無き断章・f17003)は紫煙を燻らせながら、そう切り出した。
「奥羽地方で大量の『水晶屍人』が発生、『魔軍将』の一人である陰陽師『安倍晴明』が屍に術をかけて造り出した存在だ」
この肩から奇妙な水晶を生やした動く屍は、戦闘能力自体は大した事はない――のだが。
「『水晶屍人』に噛まれた人間も新たな『水晶屍人』となる。ようは、雪だるま式に数が増える訳だ。サムライエンパイアの兵士も、数が多すぎては対処できない。戦いは数だとは良く言ったものだ」
この『水晶屍人』の群れは各地の砦や町、城を落としながら江戸に向かって南下していく。数が増えていけば、江戸も防衛に兵力を割かざるをえない――そうなれば、織田信長との決戦に数の上で不利になってしまうだろう。
「ただ、対処法はある。『水晶屍人』の知能は低い、これを指揮する『安倍晴明』配下のオブリビオンを倒せば自然と瓦解するだろう。そうなれば、後の処理は奥羽諸藩の兵力で十分こなせる」
なので、『水晶屍人』を蹴散らしオブリビオンの元へたどり着き、打倒するのが得策だ。今回、みんなに担当してほしいのは霧冥と呼ばれるオブリビオンだ。
「かなりの実力を持つオブリビオンだ、決して油断せずに当たってほしい」
戦場は奥羽地方の、山間部となる。森の中であり、その分『水晶屍人』達は動きが制限される――少数精鋭による奇襲と考えれば、絶好のシチュエーションだ。
「何にせよ、こんな連中の犠牲になっていい者などいない。被害が出る前に、対処を頼む」
波多野志郎
ついに、サムライエンパイアでの戦争タイムです! どうも波多野志郎です。
今回は奥羽の山間部で、『水晶屍人』を率いるオブリビオンを討ち倒していただきます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
雑魚の蹴散らしは戦場もあり、簡単です。いかにボス戦闘をうまくこなすか、プレイングを考えていただけれな幸いです。
それでは、冥府魔道の葬列にてお待ちいたしております。
第1章 ボス戦
『霧冥』
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POW : 抜刀術『獄彼岸』
【赤く燃える炎を纏った斬撃】が命中した対象を燃やす。放たれた【火の粉は赤い炎の花を形成していく。】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 剣舞『盞ノ時』
自身に【鬼神の殺気】をまとい、高速移動と【刀による無数の斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 抜刀術『空々捩々』
対象のユーベルコードに対し【その場の空間さえも断裂する斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:藤本キシノ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「月舘・夜彦」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒鋼・ひらり
ここじゃ流石に磁性体は少ないわね
…まあいいわ、取敢えずまずは水晶屍人よ
磁性体が碌に無くても自前の得物…斧槍や鎖鉄球、投剣で
ギミックシューズや鎖を利用して木々の間を駆け回り(ダッシュ、ジャンプ、ロープワーク、地形の利用、クライミング)屍人を翻弄しながら次々得物を転送、斧槍や投剣を磁力射出でぶち込んで(投擲、念動力)、直接斧槍や義手、鉄球を叩き込んで(怪力、鎧砕き)ぶっ潰す…大盤振る舞い、派手に武器を使い捨てにしていくわ
剣鬼は…刀使いなら磁力が使える…磁力反発での防御は有効よね(武器受け、吹き飛ばし)
機動力と磁力で捌きつつ好機にUC発動…屍人戦で派手にばらまいた武器による流星群で、ぶっ潰したげる!
メイスン・ドットハック
【SPD】
所謂剣豪という奴かのー
その所作、僕にも見切れるか見物じゃのー
水晶屍人は電脳魔術にて召喚した電脳戦車に乗り込んで蹴散らす
霧冥に対峙する前にユーベルコード「太陽神は全てを見通す」を発動し、【視力】【暗視】【情報収集】【第六感】を極限に高めることによって、見切り能力を発現させる
斬撃の放出は放つ前の軌道によって到着地点を予測、最小限の動きにて回避
高速移動は足運びによってどのタイミングで来るか見切り、絶妙なタイミングで電脳魔術による空間振動爆弾を設置して、ダメージと共に動きを止める
その間に電脳散弾銃によって、逃がす間もない範囲射撃でダメージを狙う
アドリブ絡みOK
雨咲・ケイ
奥羽ですか……。
UCDアースでいえば私の地元付近になりますね……。
そのような場所をゾンビに蹂躙させるわけにはいきません。
迅速に片づけましょう。
【WIZ】で行動します。
死者が向かうべきは黄泉……。
そちらではありませんよ?
まずは水晶屍人を相手にしましょう。
【シールドバッシュ】による【2回攻撃】で積極的に
攻めて、霧冥戦に影響が出ない程度に数を減らします。
霧冥に対しては【地形の利用】で樹木を活用し、
死角から【スナイパー】で盾を【投擲】して
【目潰し】で隙を作り【サイキックブラスト】を
撃ち込みます。
敵からの攻撃は【盾受け】と【オーラ防御】を
併用して凌ぎましょう。
アドリブ・共闘歓迎です。
セゲル・スヴェアボルグ
数が多いのであれば、一気に水に流してしまうとしようか。
無理に倒す必要はない。将の首に届く距離に至れ絵rば問題なかろう。
それに、奴の高速移動は空間跳躍ではない。
障害があれば、いやでもその速度は落ちるだろうよ。
斬撃も波で吸収ないし軽減できれば僥倖だ。
隙さえできれば、あとは近づいて叩くのみ。
たとえ近づけなくとも投擲すれば問題なかろう。
外れても地面に刺されば、そこが新たな水源となる。
再び動きを鈍らせ、当たるまで槍でも斧でも叩きつけるのみだ。
殺気など見飽きた。そんなものは気合と根性で何とかなるということを見せてやろう。
羅賀・乙来
夜彦(f01521)と参加
やれやれ、この世界でも戦争か
オブリビオンが居る限りは、どの世界も避けられないのだろうね
雑魚は双鬼招来
大焦熱の炎鬼よ、摩訶鉢特摩の氷鬼よ
獄の門より出で、悪しき者に裁きを下せ
前はよろしく、夜彦
問題はこれを率いていた相手
剥き出しの殺気に、纏う禍々しい気が遠くでも分かる
そして夜彦、君からも何かを感じる
同じ簪の同族か将又……先は言わないでおこう
破魔を付与した手裏剣と霊符を念動力で飛ばして2回攻撃
前には出ず、攻撃はオーラ防御にて凌ごう
どんな時でも涼やかな君が動揺するのは珍しいね
君と彼が同じであっても、君には戦う信念がある
彼は、如何だろうか
……僕達がするべきは、彼を解放する事だ
月舘・夜彦
乙来殿(f01863)と参加
オブリビオンとの戦は避けられぬもの
猟兵である我々がするべき事は戦うのみ
屍人は2回攻撃となぎ払いにて一掃
前衛に立ち、乙来殿を援護
奴を見れば、浅からぬ縁がある事は気付いておりました
何よりも手に持っている刀も、その腹の簪も……私と同じ
戦い続けた末に鬼神と堕ちた私なのでしょう
戦い続ければ何れと思っていましたが……記憶さえ、無いとは
基本は2回攻撃の手数勝負
炎の斬撃は残像・見切りより躱して火華咲鬼剣舞にてカウンター
無数の斬撃は視力より位置を見切り、武器受けで耐える
戦いに身を投じる事に迷いはございません
ですが記憶無く、彷徨い戦う事
私は、それを望んではいなかった
……終わらせましょう
アテナ・アイリス
相手も剣の使い手であれば、全力でぶつかってみたいわね。
UC「ラグナロク・ワルキューレ」を使って楯の乙女に変身し、攻撃力を極限まで高める。
最短距離で、霧冥に近づいていくわよ。
「アーパスブレード」と「クラウ・ソラス」の二刀流で攻撃し続けて、【2回攻撃】を使った連撃技で攻撃する。
小細工なしで、自分の全力を出し切るわ。炎は転がって消して、抜刀術は「武器受け」で回避する。
「あら、強そうね。戦いがいがある相手みたいね。」
「じゃまよ、どいてちょうだい!」
「さあ、わたしと戦いましょうよ。全力で行くわよ。」
「その攻撃、受けきって見せるわ。」
アドリブ・連携好きです。
西条・霧華
「この身が鬻ぐは、所詮殺しの為の技巧です。ならばこそ例え相手が死者であろうと殺してみせましょう…」
【残像】を纏って眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
敵の攻撃は【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
天道に背きしを左道と言い
そこに踏む込む者を外道と言い
そこに住まう者を鬼と言う
敵は剣の鬼と化した剣客、私が鬻ぐのは所詮殺す為の業…
それでも其で誰かを救えるのなら…
例え彼我にどれ程の差があろうと、私は守護者の【覚悟】を以てあなたの前に立ちます
地獄の主・閻羅法皇が司る死者裁定の焔には及ばなくとも…
私の宿す地獄の炎にて今一度冥府魔道に送り帰すのみです
逢坂・理彦
水晶屍人を率いているのはかなり腕のあるオブリビオンらしいね。
それならこんな手はどうかな…。
UC【狐火・穿ち曼珠沙華】で曼珠沙華を水晶屍人の群れに一気に撃ち込むよ〜。
手練れだと言うのならその群れの中にきっと倒れることなく立っているだろうからね。
その人物に墨染桜で【早業・なぎ払い】で切り込む。【だまし討ち】を交えつつ【第六感・戦闘知識】で敵攻撃を【見切り】
あわよくば【カウンター】も食らわせたいね。
敵が炎のUCを使った場合は【火炎耐性】【激痛耐性】耐える。
アドリブ連携歓迎。
無累・是空
わはは!指揮官は余程の手練れらしいの!
放っておけば文字通りの屍山血河をつくりかねん。ここで仕留めておかねばならんな!
ここの人間はどうにかこうにか上手いこと繁栄しとるんじゃ。横槍は許さんぞ!
【範囲攻撃】【誘導弾】『虹霓弓』で雑兵を蹴散らすぞい。件の剣鬼も同様の立ち回りじゃな。
彼奴は虹すら斬りそうじゃが、わしの手数も中々じゃ!全部斬り伏せられるかの?
【火炎耐性】【オーラ防御】場合によっては【地形の利用】も使えるか
「ホォォォミングゥ!!レェェィザァァァッ!!」
「美事!それゆえに惜しいの!その身が人であったなら!」
「くはは!わしのビームに注意を向け過ぎじゃあ!今じゃ!」
イヴ・クロノサージュ
アドリブ◎
――
●前準備
宇宙戦艦《クロノトロン=ユニット》に搭乗し(アイテム枠)
上空を飛行
敵をサーチしながら、『霧冥』を発見したら
戦艦から飛び降り、降下強襲します
――
●戦闘(上空から降下)
『―――。』
(言葉はいりません。ただ、己が刃を突きつけるのみです。)
空中で落ちながらUCを発動する
攻撃は聖属性や浄化能力(破魔)を持つ
まずは聖槍を取り出し、聖なる光による光線を広範囲に放射
『水晶屍人』『霧冥』に向けて纏めて地上に放つ(範囲攻撃)
『霧冥』と対峙
地面に着地する前に連続突き攻撃を放ち
強力な一撃を放つ(全力魔法)
着地は翼を巧みに扱いふわりと華麗に降りる(空中浮遊)
――
亡くなった屍達に祈り
次の戦場へ向かう
織銀・有士郎
剣鬼ねぇ……自分の中の何かが呼び起こされるのは気のせいだろうか。
何か余り良い感じがしないので、早めに終わらせたい所だが……。
「雑魚の掃討となりゃコイツに限る。ゆくぞ、一斉抜刀!」
まずは『水晶屍人』の群れに向けて45本の複製したサムライブレイドを一斉掃射。
撃ち漏らしは何体か出てくるだろうが、二撃三撃、もしくは他の猟兵たちと連携すれば問題なく倒せるはず。
後は『霧冥』だな。
基本的に中距離から三千世界で攻撃、もしくはフォローが必要な猟兵がいれば援護攻撃するか。
向こうも遠距離可能だから油断はできない。
敵の攻撃は挙動を【見切って】回避するか、無理そうなら【武器で受けて】対処しよう。
ヴィクティム・ウィンターミュート
なるほど、指揮官は達人の類か…まったく面倒だな
ま、とりあえずは雑魚の殲滅からだな…なに、簡単だ
森の中だろ?木の上を【ダッシュ】【ジャンプ】【早業】でパルクールによる高速機動しながら飛び回り、敵を一人ずつ【先制攻撃】で処理
雑魚を処理しながら指揮官に接敵、こっからが本番だ
俺の役目はアイツを倒しきる大役じゃあない…チャンスを作ることだ
UCを右腕にサイレントでスタンバイ、ナイフは左手で持つ
これ見よがしにナイフに意識を集中させて、接近
首めがけてナイフの突き…これを回避するか?それともカウンターで腕を落とすか?
どっちでも関係ねえ、どうせ義手だ
ナイフはブラフ、本命は零距離のUC!
お前の力、封印してやるぜ
御剣・刀也
くくく、剣の腕に自信がありそうだな
こいよ。俺とお前、どっちが上か勝負だ
獄彼岸は第六感、見切り、残像で避けてカウンターか、避けた後の隙をついて捨て身の一撃で斬り捨てる
盞ノ時で高速移動と斬撃を放って来たら、第六感、と見切りで避けつつ、第六感で移動先に先回りして、捨て身の一撃で斬り捨てる
空々捩々で相殺されたら、その勢いのまま獅子吼から手を放し、グラップルで素手の零距離戦を仕掛ける
相手の攻撃に対して小細工せず、堂々と正面から打ち破り、踏み越えようとする
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。やっぱり強い奴との戦いは、楽しいぜ」
煌燥・瑠菜
さてと……世界平和のため、ってガラでもないんですけど……たまにはそんなノリで頑張りましょうかね!
まずは水晶ゾンビを片付けます!
近くにいるのは怪力を込めた杖で殴ってぶっ飛ばして、離れたところのはUCで草木を伝い炎を走らせ燃やしますよ!
水晶でゾンビなら割れやすくて燃えやすいですよね?あっ、ちゃんと山火事にならないように注意もします!
敵の親玉を見つけたら、すぐには近づかず炎で奇襲をかけて……ワザと外し敵の周囲を火の海にします。
そう、私の狙いは燃えそうな物を事前に消して、敵の炎を封じること!その上私の炎は敵のすぐそばです!そのまま炎を纏わりつかせて一気に攻め立てますよ!
炎の扱いで、負けはしません!
備傘・剱
霧冥、か…
何が楽しくてこんな事やってるか知らないが、これ以上、好き勝手にやらせる気はないな
地形を利用して、隠れて水晶屍人共に呪殺弾、誘導弾、衝撃波で蹴散らし、戦場をかく乱する
周りは森だ、事態把握の為、視線を彼方此方に彷徨わせるだろう
そうしたら、霧冥に暗殺を仕掛ける
が、そんなもんが通じるほど、甘い奴でもあるまい
全身にオーラ防御を張り巡らして、霧冥の攻撃を迎え撃ち、黒魔弾を発動
相手に叩き込む
これを消された時は、切られていない方の拳で、鎧砕きと鎧無視攻撃を載せた本命の一撃を打ち込む
戦いにおいて、相手の力量を見誤れば…
待っているのは死、だからな
…この被害者達には悪いが、利用させてもらう
アドリブ、歓迎だ
ティル・レーヴェ
銀之介殿(f02575)と
水晶屍人……彼奴等に噛まれた者はまた
同じく水晶屍人となる、か
今此処に相対するははたして……
いや、これ以上増やさぬ様
妾たちの為すべきを為さねば
銀之介殿にも思う所はあろう
此方こそ、初の共闘よろしく頼むのじゃ!
被害を抑える為哀しき兵を増やさぬ為
出来るだけ早う頭を叩いてしまわねば
【破魔】の力を歌に込め
媒体『朝告げの囀』を介して攻撃を
【空中戦】を駆使して攻撃し乍
上空より屍人の群れの先にいる霧冥の居場所を探る
見つけたらば最短距離を銀之介殿に伝え
共に駆けようぞ
UCは霧冥の相殺を避ける為
遭遇迄は出来る限り使用せぬ様助言しつつ
妾は回復に努めよう
疲労など二の次三の次
この光で皆を支えようぞ
相楽・銀之介
ティル(f07995)
水晶屍人とは如何なる存在だろうか
ティルと共に戦うのは初めてだな。
よろしく頼むよ。
必ずここで倒さなくては。
力なき人々を傷つける訳にはいかないからな。
護符揃え『八頭一式』は八頭の大犬神として顕現し、それぞれが全力魔法相当の動きで共に戦うよ
俺自身は【破魔】の力が宿る護符による五芒星型の結界を使おう
広範囲を閉じ込めた敵にダメージもしくは味方を守る結界となる
霧冥の居場所を聞いたなら駆けつけよう
ありがとうティル
さぁここからが正念場だ
UC錬成ヤドリガミで増やした護符
敵からの攻撃は護符の結界で弾きつつ
動きを封じたり攻撃に転用したりと攻守一体
回復はティルに委ね、俺は大犬神達と死力を尽くすよ
●死の河がごとく
死者が行く――『水晶屍人』の列が、朝霧の中を真っ直ぐに。それはまさに、死の河だ。触れるモノを押し流す、圧倒的物量。その中心で、霧冥が呟く。
「――来たか」
その最初の兆しは、大地を揺るがす振動だった。その揺れの切っ先に立って、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が豪快に言い放った。
「数が多いのであれば、一気に水に流してしまうとしようか――!」
セゲルが地面に突き立てた応龍槍【ギュールグルド】が現れる奔流、溟海ヲ征ク水師(トルカ・ホーブストローム)の大波が死の河と激突した。木々を押し流す大波は、水晶屍人も押し流していく――だが、死の河はそれだけでは砕けない。自然すら受け止めるそれをメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は電脳魔術で召喚した電脳戦車に乗り込みながら見た。
「電脳の目と接続完了――これで見えんものはないのー」
太陽神は全てを見通す(ホルアクティ・ハルマキス)は、メイスンにあやゆる視力と第六感を強化する。その情報を元に、メイスンは電脳戦車を走らせた。
「相乗りは歓迎じゃー」
「その言葉、甘えさせてもらおう」
電脳戦車の上に着地したのは、逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)だ。その隣に、同じく織銀・有士郎(織りなす銀の一振り・f17872)も降り立った。
「雑魚の掃討となりゃコイツに限る。ゆくぞ、一斉抜刀!」
「一面を曼珠沙華の花で彩ろうか?」
有士郎の涼鳴が、理彦の曼珠沙華を模した杭が周囲に展開していく。三千世界の太刀(サンゼンセカイ)と狐火・穿ち曼珠沙華(キツネビ・ウガチマンジュシャゲ)――刃と炎が、同時に散開。水晶屍人達へと叩き込まれていった。
その舞い踊る刃と炎の中を、メイスンは電脳戦車で突っ切っていく。足場は最悪だ、しかし、その視力は戦車の踏破性と相まって荒れた戦場を苦もなく駆けて行った。
しかし、水晶屍人は怯まない。本能のまま、襲撃者達を迎え撃つのみだ。
(「水晶屍人……彼奴等に噛まれた者はまた、同じく水晶屍人となる、か。今此処に相対するははたして……いや、これ以上増やさぬ様、妾たちの為すべきを為さねば」)
ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は、自身に生じた迷いを振り切る。あの水晶屍人達もまた被害者だとしても、決して犠牲を増やしては――。
「ティルと共に戦うのは初めてだな。よろしく頼むよ」
そんなティルの思考を引き戻したのは、相楽・銀之介(八頭一神・f02575)だ。ティルは呼吸を整え、銀之介を振り返った。
「此方こそ、初の共闘よろしく頼むのじゃ!」
銀之介は、それにうなずきを返す。銀之介殿にも思う所はあろう――ティルの内心を読み取って、銀之介は自身の本体である八頭一式を放った。
「必ずここで倒さなくては。力なき人々を傷つける訳にはいかないからな」
顕現するのは、八頭の大犬神。群がる屍をその牙と爪で、真っ向から粉砕していく。ティルもまた、破魔の力を歌に込めて朝告げの囀を掲げた。
――猟兵と水晶屍人の軍勢が、激突する。
それは上から見れば、河が岩にぶつかり二手に分かれるような光景に見えた。しかし、戦場を知る者はそれが意志を持たぬ河とは違う事をすぐに悟っている。
「なるほど、指揮官は達人の類か……まったく面倒だな」
大木の枝から見下ろし、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)が言い捨てる。水の流れと違うのは、水晶屍人が自由に動けるという事だ。一部、猟兵を無視して散ろうとしている――この場で時間を稼ぎ、他の場所で数を増やしてから合流する……策としては、そんなとろこか。
「思い切りが良すぎる。放置はできんな」
そして、ヴィクティムはこれが陽動の一種であると理解もしていた。木々を蹴り、高速起動ですれ違う水晶屍人をナイフを振るって切り飛ばす。指揮官へ向かい、速攻で勝負を決めるべきだ。それを理解しながら、させてくれない……剣の術理は、戦にも通用するのだ。
そして、不幸中の幸いヴィクティムのように霧冥の意図に気付いた者は他にもいた。
「わはは! 指揮官は余程の手練れらしいの! 放っておけば文字通りの屍山血河をつくりかねん。ここで仕留めておかねばならんな! ここの人間はどうにかこうにか上手いこと繁栄しとるんじゃ。横槍は許さんぞ!」
腕を組んで仁王立ちした無累・是空(アカシャ・f16461)は呵々大笑しつつ、レッドテイルをひるがえす。ヒュガガガガガガガガガガガガガ! とその背後へ、虹霓弓(アルカンシェル)の虹色の輝きを背負って――叫ぶ!
「ホォォォミングゥ!! レェェィザァァァッ!!」
降り注ぐ七色のレーザーが、水晶屍人を薙ぎ払っていく。森の木々が宙を舞い、地面が穿たれる――その中を、仲間を盾に一体の水晶屍人が駆け抜けた。
だが、その前へ回り込む人影があった。アリエルを構えた、雨咲・ケイ(人間のクレリック・f00882)だ。ケイはアリエルに闘氣を込め、輝かせながら真横に振り抜いた。バキン! とすんだ水晶の破砕音を響かせ、ケイのシールドバッシュが水晶屍人を砕く。
「奥羽はUCDアースでいえば、私の地元付近になります。そのような場所をゾンビに蹂躙させるわけにはいきません」
水晶屍人達は、迫ってくる。ケイはそれを前に、凛と言ってのけた。そして、その声が頭上から降ってくる。
「まったくだ。何が楽しくてこんな事やってるか知らないが、これ以上、好き勝手にやらせる気はないな」
ドン! と水晶屍人の胸部に大穴を開けたのは、備傘・剱(絶路・f01759)の呪殺弾だ。木の上、頭上という死角を利用した狙撃が、次々に水晶屍人達を撃ち抜いていった。
「水晶でゾンビなら割れやすくて燃えやすいですよね?」
不意の狙撃に足並みが乱れた水晶屍人達を、煌燥・瑠菜(続き綴る御噺の欠片・f02583)がブレイズフレイムで包んだディープブルーロッドによって殴りつけていく! 野球のバッターよろしく、怪力による渾身のフルスイングが燃やし、砕いていった。
「守りに回れば、こっちが不利だ。霧冥を一気に叩くぞ」
「なら、問題になりそうな水晶屍人だけを見切って潰していく必要があるな」
剱の判斷に、事もなげにヴィクティムは言ってのける。それは砂場に紛れた硝子を探すような、細心の注意が必要な芸当だ――だが、出来ないと言う者はいない。
「よし! わしが道を切り開く――」
「フォローは私が」
面白い、と笑う是空に、ケイはアリエルを手に言う。一人では出来ない事も、仲間がいれば不可能ではない――力を合わせて戦える、それこそが猟兵の最大の強味なのだから。 瑠菜は周囲の木々を燃やしながら、ディープブルーロッドを振りかぶって言った。
「さてと……世界平和のため、ってガラでもないんですけど……たまにはそんなノリで頑張りましょうかね!」
●鬼神の元へ
「――やりおるな」
霧冥は、小さくこぼす。水晶屍人は、霧冥の思い通りに動いている。だが、圧し切れないのならばただ戦力で拮抗しているのではない、戦術にも通じている相手という事だ。
霧冥にとって不利な条件は、水晶屍人達が融通のきかない存在という点だ。柔軟に自らの思考で対応できない、しかし相手にはそれがある……戦術という点で、この差は致命的と言ってもいい。
「――――」
不意に、周囲が暗くなった。その気配に霧冥は空を見上げ――目を細める。
「そう来るか、猟兵」
そこにあったのは宇宙戦艦《クロノトロン=ユニット》だった。全長275mの空飛ぶ戦艦――イヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)は、霧冥を発見した瞬間にその宇宙戦艦で一気に強襲したのだ。
「―――」
言葉はいらない。ただ、己が刃を突きつけるのみ――イヴは即座に《クロノトロン=ユニット》が飛び降りた。宇宙空間にはない風が、イヴィを包む。重力は刹那の迷いもなくイヴを捕まえると、大地へと誘導した。
イヴが構えた白銀の聖槍《プリズム・セイントランス》が、破魔の力を宿した光を撃ち放つ! ドォ!! と地面を穿ったイヴの《神速槍撃》プリズム・セイントランスの一撃が――真っ二つに、断ち切られた。
「―――」
イヴは、見た。下段から振り上げられた霧冥の斬撃、抜刀術『空々捩々』による空間の切断が自らの一撃を断ち切ったのだ、と。
地響きを立てて、爆発が巻き起こる。巻き込まれた木々と数体の水晶屍人が、吹き飛ばされた。
「あら、強そうね。戦いがいがある相手みたいね」
たが、その一撃は霧冥がどこにいるか告げる『狼煙』となる――ラグナロク・ワルキューレによって楯の乙女に変身したアテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)が最短距離で霧冥と迫った。
「じゃまよ、どいてちょうだい!」
二体の水晶屍人が、霧冥の盾となってアテナの道を遮る。薙ぎ払うアーパスブレードで横に、振り下ろすクラウ・ソラスで縦に、アテナは水晶屍人を両断した。
「――ッ!」
刹那、アテナは頭ではなく体で反応していた。踏みこんだ霧冥が放つ、鬼神の殺気をまとった連続攻撃を両の手に握る剣で弾き、受け止め、紙一重で防いでいく。霧冥の怒涛の剣舞『盞ノ時』が、アテナの首筋を捉える――それを許さなかったのは、上空から落下した巨大鉄球【グレートコメット】だった。
ガゴン! と地面を砕いて、無骨な巨大鉄球が叩きつけられる。それに繋がった鎖を足場に疾走していたのは、黒鋼・ひらり(鐵の彗星・f18062)だ。
「磁性体が碌に無くても、自前の得物があるのよ」
そして、襲いかかろうと包囲してくる水晶屍人達にひらりは次々と得物を転送、斧槍や投剣を周囲に浮かべた。ジジ……! とその武具の群れが磁力を帯びた次の瞬間、磁力射出で水晶屍人達を薙ぎ払っていった。
「――散れ」
霧冥の指示は、簡潔だ。猟兵の狙いが自分にあるとわかれば、逆に自らが囮になろうというのだ。水晶屍人達はその命令に、周囲へと散っていこうとする。だが、その一角が不意に切り開かれた。
「この身が鬻ぐは、所詮殺しの為の技巧です。ならばこそ例え相手が死者であろうと殺してみせましょう……」
籠釣瓶妙法村正を薙ぎ払い、水晶屍人達を斬り伏せて西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)が告げる。その動きは、一陣の風が吹き抜けたようにしか見えない――幻想華(リナリア)による、縮地法に勁力の瞬発を乗せた変幻自在の疾走が可能とした居合抜刀術だ。
「ぞくぞくと来おったな」
霧冥は自然体のまま、そう言い捨てる。だが、その構えに隙はない。無造作に打ち込めば、次の瞬間刃に断ち切られているのは自分だ――その事を敏感に察して、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が喉を鳴らした。
「くくく、剣の腕に自信がありそうだな。こいよ。俺とお前、どっちが上か勝負だ」
獅子のように笑う刀也に、霧冥は答えない。ただ弓を引き絞るように、その剣気を高めるのみだった。
「大焦熱の炎鬼よ、摩訶鉢特摩の氷鬼よ。獄の門より出で、悪しき者に裁きを下せ――前はよろしく、夜彦」
霧冥の姿を少し離れた位置から見て、羅賀・乙来(天ノ雲・f01863)が呟く。
「剥き出しの殺気に、纏う禍々しい気が遠くでも分かる」
乙来が視線を眼前から外せるのは、双鬼招来によって召喚された炎を纏った赤鬼と氷で形成した青鬼が水晶屍人達を粉砕しているからだ。そして、その前で月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が夜禱を振るって屍人を斬り伏せていた。
「夜彦、君からも何かを感じるね。同じ簪の同族か将又……」
乙来の指摘は、それ以上はない。夜彦は振り返らず、言葉で返した。
「奴を見れば、浅からぬ縁がある事は気付いておりました。何よりも手に持っている刀も、その腹の簪も……私と同じ」
理屈ではない、夜彦は感じたままを語った。
「――戦い続けた末に鬼神と堕ちた私なのでしょう。戦い続ければ何れと思っていましたが……記憶さえ、無いとは」
――不意に、霧冥と視線があった。距離は、まだあるはずだ。しかし、似ても似つかない鏡合わせの視線が交わり、悟ってしまう。己の感じたそれが、正解なのだ、と。
「どんな時でも涼やかな君が動揺するのは珍しいね。君と彼が同じであっても、君には戦う信念がある」
正しきことをなすための剣、乙来が夜彦に見るのはそんな信念だ。だからこそ、確かめなくてはならない――乙来は、静かに告げた。
「彼は、如何だろうか……僕達がするべきは、彼を解放する事だ」
●鬼神に堕ちたる果てに――
死の河が、砕けていく。
力を合わせた猟兵の突破力は、数さえものともしない。おびただしい死の果てにいる鬼神を討たんと、四方八方から包囲を縮めていった。
「向こうじゃ、共に駆けようぞ」
「ありがとうティル。さぁ、ここからが正念場だ」
ティルと銀之介が、強引に水晶屍人の群れを突破していく。無傷でなど通れるはずもない、それをティルは生まれながらの光が癒やした。
「疲労など二の次三の次。この光で皆を支え――」
ようぞ、と続くはずだったティルの言葉が途切れる。十数メートルあったはずの霧冥との距離、それが刹那で埋められたのだ。
「――逝ね」
赤く燃える炎を纏った斬撃が、ティルへ迫る! それを強引に防いだのは、銀之介だ。「ぐ……!」
「銀之介殿!」
腹部を切り裂かれながら、銀之介の護符が霧冥を捉える。ティルという信頼できる回復役がいたからこそ選択できた力技だ。霧冥が護符に対処する一瞬、あるかないかの――だが、明確な隙がここに生まれた。
「炎の扱いで、負けはしません!」
そこへ上から舞い降りたのは、瑠菜だ。獄炎に包まれたディープブルーロッドの一撃が繰り出され、霧冥を炎が飲み込んだ。
「――ッ」
霧冥が後方へ跳ぶ。その間隙を埋めるように、四体の水晶屍人が回り込むが銀之介の大犬神がそれを噛み砕いた。
「美事! それゆえに惜しいの! その身が人であったなら!」
是空が跳ぶ。霧冥の頭上、その死角から放たれる七色の乱舞が降り注いだ。霧冥はその光線の一本一本を刃で切り飛ばし――!
「くはは! わしのビームに注意を向け過ぎじゃあ! 今じゃ!」
そこに突っ込んだのは、メイスンの電脳戦車だ。霧冥は即座に連続の斬撃を繰り出し、電脳戦車を粉微塵に斬り飛ばした。
だが、そこにメイスンの姿はない――木陰へ身を隠していたメイスンは、即座に『起爆』した。
「ふふふ、しかけておったのじゃあ!」
電脳魔術によって設置していた、空間振動爆弾の爆発だ。霧冥を誘い込み、電脳戦車に気を引きつけての起爆――この爆発に、霧冥は巻き込まれた。
「――あの手この手と、やりおるな」
だが、爆発は霧冥の手前で止まっていた。水晶屍人達が壁となって、爆発を受け止めたのだ。
「ならば、これはどうだ」
そこへ、セゲルが応龍槍【ギュールグルド】を投擲した。セゲルの溟海ヲ征ク水師(トルカ・ホーブストローム)が地面に突き刺さり、水晶屍人達の壁ごと霧冥を押し流した。
「いかに達人と言えど、水は切れまい」
メイスンの空間振動爆弾を防ぐための壁、それが霧冥の反応を遅らせた。それでも濁流から素早く飛び上がった霧冥だが――その背後を、ヴィクティムと取った。
(「首めがけてナイフの突き……これを回避するか? それともカウンターで腕を落とすか?」)
左腕のナイフが繰り出すヴィクティムの一撃、霧冥は切り上げて返した。ヴィクティムの左腕が、肘から切り飛ばされる――だが、それこそがヴィクティムの狙いだった。
「どっちでも関係ねえ、どうせ義手だ――お前の力、封印してやるぜ」
零距離で放たれたAttack Program『SealFire』(データゴトハイニナレ)を受けて、ユーベルコードを封印するプログラムの炎が霧冥に叩き込まれていく。霧冥は返す刃でヴィクティムの首を断とうと振り上げた。
「させません!」
だが、ケイの投擲したアリエルが、その刀の軌道を火花を散らして強引に変える! ヴィクティムは切り落とされた義手を蹴り飛ばし、霧冥と間合いをあけた。
「諸共纏めて……ブッ飛ばしてやるわよ!!!」
そして、空中の霧冥にひらりが水晶屍人達を破壊するために放っていた武具が次々と射出された。ひらりの磁界流星群(マグネット・メテオストーム)を、霧冥は斬撃で迎撃していくが――間に合わない!
「ぐ――!」
だからこそ、切り落とす武具を選んだ。激突した衝撃で霧冥は吹き飛ばされ、強引に包囲から脱出した。
着地する霧冥に、霧華が立ち塞がる。
「天道に背きしを左道と言い、そこに踏む込む者を外道と言い、そこに住まう者を鬼と言う」
霧冥は、霧華の言葉に反応しない。ただ、否定だけはしなかった。
「あなたは剣の鬼と化した剣客、私が鬻ぐのは所詮殺す為の業……それでも其で誰かを救えるのなら……例え彼我にどれ程の差があろうと、私は守護者の【覚悟】を以てあなたの前に立ちます。地獄の主・閻羅法皇が司る死者裁定の焔には及ばなくとも……私の宿す地獄の炎にて今一度冥府魔道に送り帰すのみです」
「――来い」
ガキン! と霧冥と霧華の刃が激突する。言葉なく、しかし刃は雄弁に語った。散る火花は、段々と霧華の方へ――そこに、刀也が加わった。
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。やっぱり強い奴との戦いは、楽しいぜ」
放たれるのは雲耀の太刀、刀也の渾身の斬撃に霧冥は抜刀術『空々捩々』で応える。だが、刀也は勢いそのままに獅子吼から手を離し、素手で霧冥を掴んだ。
正確には、その鞘を――だ。
「抜刀術には、鞘は不可欠だろう?」
その瞬間、イヴが機械天使の翼《エンジェリィア》を展開。地面に着地する前に連続突き攻撃を放ち、《神速槍撃》プリズム・セイントランスの一撃で霧冥を吹き飛ばした。
「―――」
ふわり、とイヴはゆっくりと着地する。手応えはあった――だが、霧冥は強引に着地に成功する。
「………」
イヴは、気づく。しかし、言わない。今、霧冥が庇ったのが『何か』を。
「我が太刀が織りなすは三千世界……ゆくぞ、一斉抜刀」
着地した霧冥に、有士郎の三千世界の太刀が降り注ぐ。突き刺さり、穿たれ、それでも霧冥は止まることを選ばず、駆け出した。
「さあ、わたしと戦いましょうよ。全力で行くわよ」
その前へ回り込み、アテナが霧冥と切り結ぶ。圧されようと、構わない――動きを止める事こそ、アテナの目的なのだから。
「お願い!」
「任された」
その一言と共に、理彦の妖刀・朱月丸の一撃が放たれた。不意打ち気味の一撃、後ろから放たれた一撃を――霧冥は、避けずに受けた。
「が、は……!」
「戦いにおいて、相手の力量を見誤れば……待っているのは死、だからな……悪いが、『利用』させてもらう」
剱の黒魔弾(ルイン)を弾くために、理彦の一撃を受けたのだ。剱もまた、気付いていたのだ。霧冥が、庇った『何か』に――。
「夜彦」
乙来の護符が、霧冥の動きを封じる。そこへ踏みこんだのは、夜彦だ。夜彦と霧冥の夜禱が、交差する。紙一重、先に届いたのは夜彦の切っ先だった。
「戦いに身を投じる事に迷いはございません。ですが記憶無く、彷徨い戦う事。私は、それを望んではいなかった……終わらせましょう」
ゆっくりと、夜彦が夜禱を引き抜く。夜彦もまた、気付いていた。血みどろの霧冥でありながら――腰に刺した、竜胆の簪だけが血に濡れていなかった事を。
霧冥が、膝を折る。その場に崩れ落ちた鬼神に、一抹の想いが残っていたのかどうか……知る者は、もはやこの世のどこにもいなかった。
「――――」
イヴは黙祷を捧げ、空へと飛び上がった。宇宙戦艦《クロノトロン=ユニット》へと、戦場に散った者へ祈りながら、次の戦場へと向かった。
――ここに、死の河が散っていく。指揮官を失えば、もはや脅威ではない。やがて、土に吸い込まれ水が消えるように……屍人も、討たれ朽ちていくだけだった……。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月06日
宿敵
『霧冥』
を撃破!
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