エンパイアウォー②~奇怪列車を止めよ
●
噛む。増える。
暴れる。噛む。増える。
増える。増える。増える。
其れは水晶が伸びて枝を増やすように。
あるいは、一粒の雨が川をも脅かす豪雨になるように。
水晶屍人は増え続ける。
水晶屍人を載せて、奇怪列車はサムライエンパイアを走る。
「ウェヒヒ! ヒヒヒヒヒヒ! サイコー!」
がたんごとん。
がたんごとん。
次の駅は……お降りのお客様はどうぞお気を付けて……。
なお、終点は江戸……江戸となっております……。
●
「大変だー!! みんなー! 大変、大変だよー!」
メッティ・アンティカ(くろねこダンス・f09008)が声を張り上げて、おーい、とあなた達に手を振る。
話を聞いてくれるの!? ありがとう! と、焦った様子で持っていたノートをぺらぺらめくる。
「いま、サムライエンパイアが大変な事になってるのは知ってるよね。徳川将軍が直々に挙兵して、彼らは今、関ケ原を目指してる。んだけど……」
その途中途中を狙わない手はないだろう。織田信長に付き従う将軍や異能者――オブリビオン達が、兵の数を減らそうと、牙をむいて待ち構えているのは火を見るより明らか。
「君たちには、奥羽地方で起きてる水晶屍人の対処を御願いしたいんだ。屍人……まあ、ゾンビだね。彼らに噛まれると、普通の人は同じ水晶屍人になっちゃう。これには“安倍晴明”がかかわっているって話だけど……水晶屍人は仲間を増やしながら、江戸を目指しているみたいなんだ! このままじゃ江戸防衛に人を割かなきゃいけなくなって、徳川の軍の人数が減っちゃうんだよ!」
――徳川の奥の手“首塚の一族”。
彼らの持つ力を十二分に発揮し、織田信長を地に落とすには、随伴者が必要だ。それも出来れば多い方が良い。江戸防衛に人を割くという事は、即ち織田信長への攻撃が弱体化するという意味を持つのである。
メッティは「そんなの駄目だよね!」と、ぐっとこぶしを握る。
「幸い、屍人たちには知能はほとんどないから、操っているオブリビオンを倒せばいいんだけど……今回の敵はちょっと厄介なんだ。汽車の形をしていて、縦横無尽に動き回る奴だよ」
汽車故の素早さと運搬力を駆使し、当該オブリビオンは恐ろしい速さで南下しているという。なんとしても江戸に到着される前に足止めし、撃破しなければならない。
「僕のグリモアで、君たちをやつらの進路上に送るよ! 大丈夫、僕を信じて!」
だから、僕は君たちを信じる!
メッティの手にグリモアが灯る。其の先には奇怪列車と、乗客の屍人が待っている。
ただ一辺倒に戦うだけではうまくいかない相手だが――さて。
君たちはどう動く?
key
こんにちは、keyです。
ついにエンパイアウォーが始まりましたね。個人的に安倍晴明が悪ポジションという辺りに新しさを感じています。
●目的
「奇怪列車を撃破せよ」
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●補足
戦闘は【ボス戦】となります。
数百~数千の『水晶屍人』の軍勢の中に飛び込み、『水晶屍人』を蹴散らしつつ指揮官であるオブリビオンを探し出し、撃破しましょう。
幸いなことに猟兵は噛まれても『水晶屍人』にはなりませんが、攻撃自体は普通に受けます。
プレイングでは無数の『水晶屍人』を防ぐ、あるいは強行突破する方法、無数の『水晶屍人』の中から素早く指揮官を見つける方法などがあれば、プレイングボーナスを与えてあげてください。
●エネミー
「奇怪列車x1」
「水晶屍人xたくさん」
今回の敵は屍人の中を縦横無尽に動き回り、猟兵の手を逃れつつ、時には屍人を乗降させながら南下しようとします。
足止めする案がなければ、無限に下りてくる乗客(水晶屍人)の数に押され、じりじりと後退しながら戦う事になるでしょう。
●
アドリブが多くなる傾向にあります。
NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
では、健闘を祈ります。
第1章 ボス戦
『魔神兵鬼『ラセツ』』
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POW : 邪魔スルナラバ蹴散ラス!
【高速突進 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に線路を作り出し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 一ツ残ラズ、根コソギ奪エ!
【略奪の意思 】を向けた対象に、【武装を奪う、複数のロボットアーム】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 逃ゲロ、逃ゲロ!
【対象の視界を奪う、呪術による黒煙 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:荒雲ニンザ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠蒐集院・閉」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ごととん。ごととん。ごととん。
この度はセイメイ様発の列車にご乗車頂きありがとうございます。
この汽車は江戸逝き、江戸逝きでございます。
乗客の皆様にお知らせ申し上げます。次は猟兵前。猟兵前です。
降り口は両側、お足元に気を付けてお降りくださいますようお願い申し上げます――
アンノット・リアルハート
そう、そんなに走りたい?
ならば走っていなさい、貴方の罪に応じた裁きのレールを!
選択したユーベルコードを発動。展開した迷宮で屍人とオブリビオンを足止めし、同時に裁きを行います
屍人には正しき眠りを、それを増やす列車には体が水晶と化し動きにくくなる呪いを
この迷宮にいる限り、与える罰から逃れることはできないと思いなさい!
とは言えこれだけだとダメージが足りないわね、屍人が大人しくなった隙に【ベーゼン】を【操縦】してオブリビオンに【ダッシュ】で近づいたら【ノイギーア】で車輪を【串刺し】
動くための足をやられれば、しばらく動くことはできないでしょう
ソフィア・テレンティア
ふむ、また戦争でございますか……忙しない事です。ですが、やる事は常と変わるわけでもありませんね。
まずは敵指揮官の足を止めることに致しましょう。
UC【物質変換・ガジェット生成機構】起動……。
トリモチの様な強い粘着性を持つ身体を持つ飛行型ガジェットを多数生成。
敵指揮官が見つかるまでは捜索に当たらせ、発見次第その車体の車輪や車軸に向け突撃。
列車の身体を持つのであれば、車輪を止めてしまえば動きは鈍るでしょう。
また、効果がありそうなら車体の扉も固めて、水晶屍人の増援の出現を防ぎましょう。
黒煙については、ガジェットからの情報支援と【聞き耳】で対応いたします。視界を防げばどうにかなるとは思われませんように。
煌天宮・サリエス
お客様にお知らせです。
誠に申し訳ございませんが終点はこちらになります。
また、乗客のお客様も列車も本日で営業終了となりますことをお知らせします。
空を飛び、列車の下に飛び立ちます。
ユーベルコードを発動。『呪いの武器袋』に入っている黒のビー玉を触媒に闇の鎖を作り出し、乗客が出る扉や窓、外にいる水晶屍人ごと列車をぐるぐる巻きにして動きを封じます。
例え視界を奪われたとしても、大まかな場所さえわかれば物量で鎖をあてることができるでしょう。
水晶屍人も含む敵の攻撃は『時天使の秘盾』と【破魔】の光を纏う【オーラ防御】で耐え、列車から吸収する生命力で回復します。
アドリブ・連携歓迎
メンカル・プルモーサ
…列車を模したオブリビオンか……確かに自由に動き回られると厄介…
足止めというのであれば…まずは【支え能わぬ絆の手】を車輪に掛けることにより、車輪を空転させて足止めをするよ…
…そして水晶屍人が列車から出て来る前に箒に乗って上空へ避難…
…ロボットアームを箒に乗っての空中戦で回避しつつ…
…上から【空より降りたる静謐の魔剣】を列車の扉や車輪へとぶつけ、凍らせることで屍人達の昇降や奇怪列車の移動を妨害…時間を稼ぐよ……
…仲間達の攻撃で充分な隙が出来たら重奏強化術式【エコー】によって全力で強化した【精霊の騒乱】による雷の嵐で奇怪列車を屍人を巻き込んで殲滅する…
…元がただの人でも…容赦はしない…
「お客様にお知らせです。誠に申し訳ございませんが終点はこちらになります。また、乗客の皆様、この列車についても本日で営業終了となりますことをご了承下さい。……こんなところでしょうか」
「そうね。それでも走りたいというのなら……罪に応じた裁きのレールを走らせるまでよ」
煌天宮・サリエス(光と闇の狭間で揺蕩う天使・f00836)の遊ぶような言葉に、アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)が頷いて続く。
「それにしても、また戦争とは忙しない事ですね。もっとも――」
「……やることは、いつもと変わらない。敵を殲滅する……」
「ええ。まずは敵指揮官の足止めを致しましょう」
ソフィア・テレンティア(歌唱魔導蒸気機関搭載機・壱式・f02643)が呟いて、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が囁く。三人は頷き、それぞれに行動を開始する。
「ハッハー!!ヤッパ乗客ガイテコソノ汽車ッテモンダナァ!!」
列車は怒りの顔をしながら、笑い声交じりに奥羽の道を走る。動きののろい屍人を略奪するようにロボットアームで乗せ、最前列におろしながら、着実に歩を進める。
「そこまでよ!」
「オットォ。次ハ猟兵前~猟兵前~! 屍人チャン、頑張ッテ戦ッテネ!」
アンノットがラセツの前に立ちはだかる。愛用の長槍を天に掲げ、其の意思を汲むかのようにラセツと屍人へ向ける。
「これは裁きの夢、投獄する幻想! ――あなた達には、試練こそが慈悲なのだと知りなさい!」
空間が歪み、変容する。ぱりぱりと音を立てて組み上がったのは、巨大な迷路。壁は硬く、出口は一つ。
「キヤガッタナ! オマエラ、……アアン!?」
屍人を放てば一体くらいは敵の元へたどり着くだろう。物量に物を言わせようとしたラセツが見たものは、静かに水晶に侵食されゆく水晶屍人。体に生えた水晶が手足を拘束する枷となり、のろい彼らをさらに鈍重にさせ、ついには飲み込み、眠りのような静謐へと閉じ込める。水晶はそれだけでなく、列車にも伝播しようとしていた。あちこちにぴきぴきと音がするのを感じるラセツ。
「この迷宮にいる限り、与える罰からは逃れられないと思いなさい!」
「クッソ……! コノママヤラレルらせつ様ジャアナイゼ!」
ぽっぽっぽ。黒煙が広がる。
水晶に侵食されながらも走り出すラセツの頭部から、呪いの黒煙があふれ出す。其れは裁きの迷宮を汚し、風に流れて広がり、アンノット達の喉へと入り込む。
「っ……! げほっ、このまま逃げる気ね!」
「そうはさせません。ガジェット起動、まだ近くにいるはず。探してください」
「…私たちも」
「ええ、行きましょう」
ソフィア達が動いた。ソフィアの手元から小さな鳥に似た、飛行特化型ガジェットが飛び立つ。獲物を狙う鷹のように、死体に群がる烏のように、円を描くような軌道で標的を探す。
サリエスとメンカルもそれぞれの方法で其の場から飛び立つ。アンノットは其れを祈るように見送る。自分の役目は迷宮の維持。地の利はこちらにある――!
「……見つけた」
黒煙を吐き出しながら走る列車を最初に見つけたのはメンカルだった。いや、おそらく三人同時に見つけて――最初に動いたのがメンカルだと言った方が正しいかもしれない。
箒に乗ったまま、愛杖“シルバームーン”を振り翳す。汝は摺動、汝は潤滑。魔女が望むは寄る辺剥ぎ取る悪魔の手……!
きちり、きちり。
多重魔法陣が輝き、光をラセツに収束させる。其の魔法は、物理学に喧嘩を売るが如き魔法。寄る辺をはぎ取る悪魔の手が、ラセツの車輪から摩擦抵抗の一切を奪い去る!
――キャリリリリリリッ!
「ンナァ!?」
「発見した……全機、発射」
一斉に車輪が空転し、ラセツの動きが止まる。続けてソフィアのガジェットが、嘴から何かを車輪めがけて発射した。ぺたり、ぺちょりとくっつく其れは、トリモチに似ている。地面と車輪を縫い留めて、容易に離すことはない。
「チキショウ! 乗車! 降車! 乗車! 降車!」
ロボットアームで使い物にならない屍人を列車からかなぐりすて、使えそうな屍人を車体の上に乗せる。といっても、屍人は対空手段がある訳ではなく、ただの威嚇にすぎないのだが。
「哀れですね。もう後にも先にも行けない……いま楽にして差し上げましょう」
呪いの武器袋から取り出したそれらを、サリエスが宙にばらまく。其れは真っ黒なビー玉。其れは呪われたビー玉。しゃりり、と金属の擦れる音がして、黒鎖が生成され、ラセツにぐるりと巻き付く。周囲の屍人もついでに巻き込み、アンノットの迷宮効果を加速させる。
黒煙は上空に揺蕩い、サリエスとメンカルを巻き込むが、この程度でひるむ二人ではない。ソフィアのガジェットが耐え切れず落下してゆく。彼らは役目を果たした、悔いはない。
「いけますか?」
「…うん」
重奏強化術式【エコー】起動。出力を限界まで上昇、次術式を援護します。
――私が奏でるのは騒乱。いかづちとなって、神の火による裁きを下せ。
メンカルの杖が二度振り下ろされる。雷の嵐が降り注ぎ渦巻いて、屍人と列車を騒乱の渦へと巻きこむ。
屍人は声を上げる間もなく塵と化し――ラセツは。
「キィィィイイイ! マダダ! マダ乗客イルカラコッチノモン!」
「…あ」
「逃げた! そっち、行きましたよ!」
微かに見える出口らしき方向へ、トリモチと魔術を振りほどき走り始めた! ラセツが走り抜ける先、其処は――
大成功
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ユノ・ウィステリア
(ミア・ウィスタリアは双子の妹)
アーカイバのカタログスペックからすると、蒸気機関車の最高時速は平均で120km。
魔力的な数値で補正を入れたとしても追い付けない速度じゃないわ。
地上ではミアちゃんがストッパーを仕掛けてくれている筈。
UC発動、私達自身の本体を最大サイズで展開しましょう。
一度高度を上げ上空から奇怪列車の進路を監視。
屍人と奇怪列車の引き離しに成功したら、ミアちゃんの合図を待って急降下を開始。
列車の真横から体当たりを仕掛けます。
角度的に胴体着陸を用いたボディプレスになるでしょうかね。
今は数十mしかありませんが、元は全長1km、全重量3万tの宇宙船です。
頑丈さ、積載量で遅れは取りませんよ
ミア・ウィスタリア
(ユノ・ウィステリアは双子の姉)
※アドリブOKです。
へぇー、この世界汽車なんてあったのね。
仮にも同じ乗り物にルーツを持つものとしてシンパシーは感じないでもないけど....教えてあげるわ!
ローテクが出しゃばっても良い事ないってね!
予め奇怪列車の進路を塞ぐ様に塗料で可能な限り長く直線を引いて置くわ。
仕掛けたら屍人達を煽って白線を跨ぐ様に誘導するわね(誘惑+地形の利用)
列車が線を跨いだのを確認したらルール発動!
【立入禁止】
少なくともゾンビはこれで入ってこれないっしょ。
汽車は急には停まらないかもしれないけどスピードは落ちる筈!
今よユノ!やっちゃいなさい!
時間は少し遡る。
ミア・ウィスタリア(天上天下唯画独尊・f05179)とユノ・ウィステリア(怪異蒐集家・f05185)はそれぞれ行動を開始していた。
「この世界にも汽車とかあったのね。オブリビオンだから特別なのかしら?」
「さあ……でも最高時速を超えることはないと思う」
「それって?」
「大体120㎞」
「ふうん。まあいいわ。一応同じ乗り物にルーツをもつものとしてシンパシーは感じないでもないけど、死人を乗せるなんて悪趣味極まりないし、何より…」
――ローテクが出しゃばっても良い事ないって、教えてあげるわ!
そして今。
トリモチで車体を左右に揺らしながらも、迷路を抜けた列車ラセツ。まだだ、まだセイメイ様の命に背く訳にはいかない。使い物になる奴らを江戸まで運搬し、行軍を阻まねば……
「あーっはっはっは! 何そのザマ! ボロボロじゃない!」
「ナヌ!」
薄曇りの中、顔を向ければ胸の大きな少女が高笑いしているではないか。それにしても胸が大きい……大きいぞ……
「ちょっと何処見てるのよ! まあいいわ、本当なら絶対許さないんだけど、せめてもの冥途の土産にこのミア様を見ることを許してあげても良いわよ」
「オサワリハ?」
「駄目に決まってるでしょ!! 図々しいのよこのローテク!」
「誰ガろーてくダッテエ!? 俺様はセイメイ様直々に作ラレタはいぶりっどダッツーノ!!」
迷宮を抜ければ呪い――もとい裁きもないだろう。屍人をロボットアームで下ろし、ミアを見据えるラセツ。
「怖カッタラ逃ゲテモイインダゼ、オ嬢チャン」
「はん、逃げるもんですか。ローテクもローテク、頭まで二進法宜しく単純なようね!」
ラセツは激怒した。必ずこのロリ巨乳の高飛車お嬢様を除かねばならぬと決意した。
という訳で線路がミアに向かって伸び、高速で突進してくるラセツ。ミアは余裕の表情で、数歩横に避けて見せた。レールの上を走るのが列車なら、その上からどいてしまえば良い。
――そして。
「あーあ、越えちゃったわね。……ルール発動! その線から先は“立入禁止”よ!」
「ム!?」
激怒したラセツは気付かなかった。迷宮の出口にピンク色の塗料でまっすぐ線が引かれていた事に。だからラセツは気付いてしまった。のろまだが忠実な屍人が、彼に追従してこない事に!
「あんたの手下はこれで入ってこれないわ。……ユノ! 今よ!」
ミアとユノは双子の姉妹。同じシップから生まれた双子のヤドリガミである。
正式名称:深度外宇宙生命体探索船IKAROS-β。全長1㎞、総重量は3万tに昇る、大型のスペースシップだ。とはいえ……“其れを実体化させるには”、この世界は少し彼女らには狭すぎる。だから今は、おおよそ33mで我慢するとしようか。
使うのは砲台ではない。船底である。ユノはじっと待っていた。世界は薄曇りなどではない。曇っていたのは船のせい。超高度で待ち構えていた、ユノのユーベルコードによって具現したIKAROS-βのせい!
「ユノ! 今よ!」
双子の妹の声がする。艦首で鋭く切り込むように、ユノはIKAROS-βと共に急降下を開始。狙うはラセツの横っ腹、この弩級船の前では、まさしく汽車などローテクだ――!
「あなたの屍人を運ぶ戦法は面白いと思います。けれど、積載量と頑丈さでは、“私たち”は遅れを取りません」
「アーーーーーーッ!?」
ズッッッ、ゴン!!
それはまるで、だるま落としを真横に展開したかのような衝撃。車両を丸一つ吹っ飛ばされながら、ラセツの本体――先頭車両はごろごろと転がっていく。
2人は其れを追って視線を送り……すでに待ち構えている猟兵に、笑みを浮かべた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
無累・是空
チガヤ(f04538)と組むぞい!
汽車っちゅうのはレールの上を走るものと相場が決まっとった気がするんじゃがの!なに、自分でレールを設置しながら走る?ずるいじゃろ!!
『超神足通』で飛んで上から探すかの。チガヤの腰を抱えて一緒に飛ぶぞい。スピードは落ちそうじゃがわしの【念動力】なら飛べるじゃろ。
件の汽車を見つけたらチガヤを真上に投下するぞい!
わしも空対地攻撃じゃ!空中からフライパスしながら勢いつけて蹴って殴ってじゃ!
逃げられたらまたチガヤ捕まえて空から追いかけるぞい!
ひとりでならマッハ3.5で飛ぶわしより速いってことはあるまいよ!
チガヤ・シフレット
是空(f16461)と共に出撃だ
信長軍だか晴明の手下だか知らないが、ゾンビまき散らして行くのは、愉快すぎるんじゃないかぁ?
っま、遠慮する必要もないってのは良い。思いっきりぶっ飛ばしてやるとしよう!
是空に空中からいい感じの場所に落としてもらおう!
着地時にフルパワー全開してインパクト!!
ど派手に吹き飛ばしながら、戦闘開始だ
寄ってくるやつは【一斉発射】や【零距離射撃】で消し飛ばしつつ、黒幕を探すとしよう
是空と通信しながら陸と空から攻めていくぞ
妙に動き回ってるやつとか屍人の密集度が高い所とか狙って突っ込んで敵を探すさ
なぁに噛まれてもメタルアームだ
黒幕を発見したら是空と合わせて一気に攻撃を叩き込む!
「おいおい、ゾンビを撒き散らす愉快な列車がいるって聞いて来てみりゃあ、なんだこの有様は?」
「ありゃあすごいのう、でっかい船じゃあ」
突撃を待つ弩級シップを前に、無累・是空(アカシャ・f16461)と、彼に抱えられて飛ぶチガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)は感嘆の吐息を漏らす。
でかい船。其れ即ち、男のロマン。目を輝かせる是空に、落とされやしないかとじっとりした視線を向けるチガヤ。
「どうやら屍人と列車は分断されてるみたいだな。屍人がバラバラにいやがる」
「お、おお! そうか! じゃあ屍人から片付けていくか?」
「だな! この辺りで落としてくれ!」
サイボーグであるチガヤは、痛みという感覚に少し鈍い。其れは危うさでもあるが、このような状況の場合は強みにもなる。是空は承知した! と両手を離し、重力プラスアルファプラスアルファ…の速さで落下していくチガヤに手を振った。
「さて、わしもやるとするかのう!」
轟音と共に列車の先頭部分がチガヤの交戦地に滑り込んでくる。余りにもしぶとすぎるローテク相手の戦闘も、佳境。
「さーて、お掃除の開始と行くかァ!」
着地寸前、パワーをフルチャージ……からの、インパクト!
周囲を囲もうとした屍人を吹き飛ばしながら、チガヤは立ち上がる。
「ははは、脆い脆い! この分なら掃除はすぐに終わりそうだなァ? 是空」
「全くじゃ。まあ、掃除なんてもんはすぐに終わる方がええ」
「その通りだな。家事全般に通じる事だ」
試しに、とばかりに腕のガジェットを開放、ガトリングガンを放つチガヤ。屍人はあっけなくぱたりと倒れて、すうと灰になって消えてしまう。最も、これは本来の頑強さの比ではなく――猟兵の重なる力の賜物、と言えるのだが。
其れよりも特筆すべきは、すさまじい勢いで鉄の塊が滑り込んできたことだ。
「ギィィイイイイ!!! 一人デモ連レテッテヤルァアア!」
「お? やる気のあるやつが来たな」
「そうみたい、じゃ、の!」
轟音。
滑り込んでそのまま滑っていきそうだった鉄の塊に、上空から是空が蹴りを仕掛ける。マッハ3.5……余波は計算しないものとする……で滑り込んできた是空の蹴りは重く鉄を鳴らし、鉄の塊――ラセツの先頭車両部分を丁度チガヤの眼前で止めて見せた。
「チクショウ! チクショウ……! セイメイ様……!」
「ははは、こいつ悔しがってるぞ。何が悔しいんだ? もう負けそうなことか?」
「ウルセエーーーーッ! 武器(タマ)取ッタラァ!!」
幾つものロボットアームがチガヤに向かって伸びる。是空が先程の蹴りの要領で屍人を蹴散らしていく中、チガヤもにやりと笑い、武器を構えた。
「奪えるモンなら奪ってみろ。私は全身武器庫だぞ?」
――バッドランペイジ!
滑るように大地を駆けながら、列車……ラセツ目掛けて弾丸と砲弾の雨を降らせるチガヤ。空と地からの、連携が取れた攻撃に、屍人の数は確実に減っていく。ロボットアームが一つ、二つ、砕けて落ちて。残ったアームで横倒しになった体を戻し、ラセツは怒りの表情のまま、感情を露にする。
「オマエラハ黙ッテ死ンデリャイインダヨオ!! サッキカラ邪魔、邪魔、邪魔バカリ! セイメイ様ニ向ケル顔ガ ヘブッ」
「うるさい列車だな。其れはこっちのセリフだ、“黙って死んどけ”」
「全く持ってその通り。オブリビオンならば過去に帰るのが必定じゃて」
チガヤの体から蒸気がほとばしる。一斉発射を顔に命中させて、ちょっと得意げにするチガヤ。ぐっと親指を立てる是空。
「クッ……コンニャロオオオ!」
ぐい、とロボットアームが伸びた。其の先には屍人。一人だけ捕まえて其のまま線路を伸ばすと、高速突進の勢いで走っていくラセツ。
「あ、逃げたか? 追うか。連れてってくれ、是空」
「いや……あの先に誰ぞおる。もう年貢の納め時じゃろ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
戦であろうと、やることは変わらない。
もとより常在戦場。
――恐れず、迷わず、侮らず
――熱はすべて四肢に込め、心を水鏡に
事前に藩の地図を入手し地形を確認。
敵軍の進行ルート上で待ち伏せす。
呼吸を整え、無駄な力を抜き、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
敵の大まかな数と配置、周囲の地形を把握。
得物は素手喧嘩【グラップル】
防御回避は最小限。ダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】、【覚悟】を決めて最短距離を駆け【ダッシュ】敵将の前方に飛び込み、【捨て身】でUCを使用し進行上の地面を抉って足止め。
そのまま至近に張り付き、車輪を重点的に叩く。
線路を作りだしたらUCで破壊。
水晶屍人は無視。
上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は、待っていた。
――恐れず、迷わず、侮らず。
――四肢に熱を込め、水鏡の心もて。
自分の出るべき時を、待っていた。狙うのは屍人ではない。彼らの後ろにいるオブリビオンのみ。呼吸を整え、戦場を見渡せば――己の役割は自然と見えた。
味方は8人、相手は多数に見せかけた1人。
どう逃げようと、どう藻掻こうと、いま修介がいるこの地点を通らずに江戸には至れない事を、彼は把握していた。
拳を握る。武器はこれ一つで良い。
――ごととん、ごととん、ごととん……
目を閉じる。ゆっくりと開く。呼吸は急ぎすぎても、ゆっくりすぎてもいけない。
――ごととん、ごととん、ごととん……
勇気は持った。覚悟も決めた。痛みなど怖くはない、怖いのは相手を仕留め損ねる事だけだ。
――ごととん、ごととん、ごととん!
「ソコドケヤァァァァアアアア!!!!」
一人なら轢き倒せる。そう思ったのだろう。
ラセツはまさしく鬼の形相で、たった一人の配下を連れて、修介に突進する。だが、其れではいけなかった。相手は“勇気と覚悟すら技に昇華する”猟兵なのだから。
修介は吐息を一つ、思い切り相手に飛び込む。着地した足を始点に、呼吸を整え――
「ふんっ!」
“砕く”とのみ名付けられた其の技は、震脚に似ていた。
違ったのは、踏みつける個所が地面ではなくラセツの鼻っ面だった事だけ。列車と蹴り、其の威力の差を埋めたのは――確かな修介の実力と、覚悟と、勇気だった。
「……バカ、ナ……コンナ、トコロデ……ココマデ、キタノニ……」
ぴし、ぴし、ぴし。
ラセツの顔に亀裂が走り、其れは徐々に先頭車両全体に広がっていく。
「残念だったな。アンタの旅路は此処で終わりのようだ」
「セイメイ様……申し訳……」
ぴしり。
すべてのひびが一点に収束したその瞬間。ラセツは雲散霧消して、灰となり風に流れて行った。
猟兵前から猟兵前、経由してさらに猟兵前。
予定外の運行を重ねたラセツと水晶屍人たちは、結局江戸に辿り着くことなく、其の旅路を終えたのだった。
大成功
🔵🔵🔵