エンパイアウォー④~猛暑をますますアツくするヤツ
●富士樹海某所
『高まってきた、高まってきたよ~!』
昼なお暗く、うっそうと木々が繁る樹海の奥地。石組みでピラミッドの周りに、注連縄を張り巡らした、何だか色々折衷している怪しげな儀式場で、腰をふりふりテンション高く踊る奇妙な物体……山がいた。
山といっても、軽トラックくらいの大きさではあるのだが。
しかしその山、小さいながら頂上と中腹に噴煙を噴き上げ、山肌はあちらこちらが赤くひび割れている。つまり今にも噴火しそう。
実はこの山、こう見えても、神話の時代に国一つを焼き尽くしたと伝わる火山の化身オブリビオンである。古の呪術師に封じられて骸の海に沈んでいたのだが、このたび侵略渡来人『コルテス』により目覚めさせられてしまった。
『ひゃっふう、煮えてきた煮えてきた~! せっかくコルテス様が起こして下さったんだからね、オレっち頑張っちゃうよ~!!』
火山の化身は、山頂のぐつぐつ煮えたぎっているマグマの中に、かねて用意の、鹿や猪などの野生動物を放り込みはじめた。そして最後に、まだぴくぴくと動いている、小さな竜のように見える奇妙な動物をひっつかんだ。もう片手には鋭いナイフ。
『太陽神よ! 我、荒霊マガツヤマツミに、今こそ富士の山を噴火させる力を与え給え~!』
小さな竜の首を切りおとした荒霊マガツヤマツミは、その血を浴び、その肉をマグマに放り込み、歓喜の表情を浮かべ、踊り狂うのであった。
●グリモアベース
魔軍将の一人である侵略渡来人『コルテス』は、太陽神ケツァルコアトルの力を使って、富士山を噴火させようとしている。
そのために、富士の樹海に隠された儀式場で、コルテス配下のオブリビオンが富士山を噴火させる為の『太陽神の儀式』を行っているのだ。
儀式を阻止、オブリビオンを撃破しなければ、東海・甲信越・関東地域は壊滅的な混乱状態となり、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を災害救助や復興支援の為に残さなければならなくなる。
「皆様に撃破して頂きたいのは『荒霊マガツヤマツミ』というオブリビオンでござる」
月殿山・鬼照(不動明王の守護有れかし・f03371)は集った猟兵たちの前に、樹海の地図を広げた。この樹海のどこかでマガツヤマツミが儀式を行っているので、それを急襲し、倒して欲しいという。
「残念ながら、この広大な樹海のどこでマガツヤマツミが儀式を行っているかまでは予知できませぬ……ですが、これだけ熱を発してるのですから、それを頼りにすれば探索は容易いかと思われます」
猛暑の中ではあるが、樹海に入ったら更に暑い方に近づいていけば、ターゲットを発見できるだろう。
「暑い中、誠に申し訳ござらぬが、富士の山が噴火しては大惨事となりまする。どうか速やかにマガツヤマツミを発見し、撃破の程、お願い申し上げる」
頭を下げた鬼照の掌の中で、小さな護摩……グリモアが燃え上がった。
あつい。
小鳥遊ちどり
お暑い中、大変あつくるしいシナリオで恐縮です。
●このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●優れた捜索プレイングや、隠れて儀式を行うオブリビオンを奇襲する作戦などがあれば、プレイングボーナスがつく可能性がありますので、頑張ってください。
第1章 ボス戦
『荒霊マガツヤマツミ』
|
POW : 天焦神火
【周囲一帯を巻き込む大噴火】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 業炎地獄
【火口から放たれる溶岩弾】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を焼き尽くして溶岩地帯へと変化させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 熔熱変生
自身の肉体を【超高熱で流動するマグマの塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
イラスト:烏鷺山
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ツェリスカ・ディートリッヒ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、って待て待て待て
富士山の前にこいつが噴火寸前じゃねーか思わずテンプレの前にツッコミ入れちゃったわこんなん
とりあえずスゲー熱量なのは分かったから【フルスピード・スカイドライブ】で上空に飛び立ち、熱源を探そう。姿は隠せても…こいつ自身の噴煙はごまかせないだろうからな。煙が出ている所を見つけたら、そこに向かってマッハ4で突っ込んでぶっ飛ばしてやるぜ! 俺自身も無傷とはいかないだろうが【火炎耐性】【激痛耐性】、そして【気合い】でカバーしてやるぜ!
悪いけどテメェらには容赦しねぇぜ? お前らの親分が、どうにも旅団の仲間の逆鱗に触れちゃう奴みたいでな…悪く思うなよ!
草野・千秋
アドリブ連携歓迎
ま、またけったいな山ですね!?
このまま噴火したら大変な事に……
(あわあわ)(するものの、すぐに取り直して戦闘モードに)
僕達がコルテスによる火山の噴火を防いでみせる!
エンパイアに平和を取り戻すんだ!
変身!断罪戦士ダムナーティオー推参!
戦闘は2回攻撃とスナイパーと範囲攻撃を主軸に戦う
アサルトウエポンでよく狙って
着実にダメージを与えていく
敵体力が削れて弱ってきたら
接近戦に切り替え怪力パンチをお見舞いする
正義の鉄拳喰らえ!
敵からの攻撃は激痛耐性、盾受け、武器受けで耐え凌ぎ
仲間が攻撃されそうならかばう
なんのこれしきですよ
決め場となればUC
喜びの島ではない……骸の海へッ!
ニコ・ベルクシュタイン
様々な世界で酷暑が続く中、また暑苦しい輩が現れたな
しかも、為したる事が惨たらしいと来た
此れは捨て置けぬな、疾く成敗せねば
持ち合わせる「世界知識」で予め予知された土地の「情報収集」を行い
明らかに異変が起きている箇所を調査
精霊銃に宿る炎の精霊も動員して熱源に迫れれば僥倖
相手が炎の使い手ならば此方は氷で攻めようか
「属性攻撃」全開で力を強めた【精霊狂想曲】は
降り注ぐ氷の雨、いや氷柱となって襲い掛かる
生半可な力では溶かされてしまうだろう
此方も「全力魔法」で出し惜しみは無しだ
敵が身体を伸ばして攻撃してきたら基本は氷柱で迎撃するが
受け切れぬならば双剣に「オーラ防御」の力を通して受け流したい
※アドリブ歓迎です
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
※アドリブ・連携歓迎
ただでさえ暑いのに、これ以上暑くされたらたまらないよ。
さっさと骸の海に帰ってもらおう。
さて、目標は熱い所にいるんだよね。
熱は横よりも上に広がりやすい、つまり地上で熱気を感じ取れるほどなら、上空にはかなりの熱気が漂っているはず。
あたしの目は片方が蛇のもので熱を見ることが出来るから、空を飛んで樹海の上から熱気が漂っている場所を探せば、そこがたぶん儀式場。
オブリビオンを見つけたら、【万喰熱線】を発動してそのまま上から落下。
周囲の熱気を吸収しながら相手に激突して、直接激突したダメージと熱を吸収して奪うことによるダメージを狙うよ。
熱線は上に向けて放出して、他の猟兵への目印にしようか。
ヨナルデ・パズトーリ
『動物使い』で呼んだ『動物と話す』事で熱くて近付きにくい場所がないか
情報を集め敵の痕跡を『野生の勘』により『見切り』『追跡』
敵発見後樹海という地形を活かし『暗殺』技能を活かし『目立たない』様に
気配を消し潜み隙を伺いUC発動
『怪力』の『鎧無視攻撃』で『先制攻撃』
子竜と分断
即座に『高速詠唱』で『呪詛』のこもる『全力魔法』をぶち込み更に『怪力』の
『鎧無視攻撃』
マグマは権能の一つの嵐の『属性攻撃』を『高速詠唱』で放ち威力を弱め
『オーラ防御』で防ぎ『火炎耐性』と『激痛耐性』で耐える
妾の前で妾の好敵手、妾の兄、妾の伴侶たるケツァルコアトルと同じ名を持つ
者の子に手を出したのじゃ
女神の怒りを受け疾く滅びよ下郎
本城・やぐら
霊峰富士山を噴火なんてとんでもない!
富士山は名だたる絵師が描いてきた大切なこの国の宝とも言うべき山です。
その富士山をこの国の壊滅に使おうとするなんて言語道断!
こちらの使命感の方がその儀式とやらよりももっと熱く燃え盛るってものです!
私はこれからもいろんな絵師が描く富士山を観たいし私も描きたいのです!
まずは【風神雷神】を描いて熱量のある所を探索して貰います!
見付けたらそっと近付いて儀式に重要そうな小さな竜さんを風神サマに掴んで逃げて貰います。
敵の気を逸らす為に雷神サマには違う方向から攻撃して頂きます。
風神サマはその後もひたすら儀式阻止の為に小さい竜さんをなるべく遠ざける様に飛んで行って頂きます!
シン・バントライン
…暑苦しい敵ですね。
ここは素直に温度計さんの出番です。
分かりやすく気温が高い方に進みましょう。
敵を見つけたら隠れながらUC発動。蛇竜と騎士を呼び出す。
蛇竜を儀式に使われる生贄竜とこっそり入れ替え、ダミーとして近付ける。
敵が蛇竜を掴もうとした時に攻撃開始。
騎士もそれを合図に突っ込ませる。
自分は隠れながら指示を出すのに専念。
マグマの塊は自らも含め第六感と野生の勘で回避。
熱には火炎耐性で対応。
もしUCが消されたら自らの剣で戦う。
届かないようなら敵に向けて剣を投擲。
暑苦しくどこか呑気そうな敵ですが、火山が噴火などしたら大惨事です。
ここは何としても食い止めねばなりません。
それに富士は…美しい山ですね。
「よっしゃーーー、やったるでーーー! ……って待て待て待て」
張り切って招集に応じたアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)であったが、ターゲットの様子を聞いて些か顔色が変わった。
「富士山の前に、そいつが噴火寸前じゃねーか! 思わずテンプレの前にツッコミ入れちゃったわ、そんなん!!」
テンプレとは何のことだろう。まあいい。
「とりあえず、俺が【フルスピード・スカイドライブ】で片っ端から探してやるぜ!」
宇宙バイクで飛び、上空から探そうというのである。
「張り切るのはいいが、少し待て」
ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が、逸る仲間を冷静に押しとどめた。
「様々な世界で酷暑が続く中、現れた暑苦しい輩だ。しかも、為したる事が惨たらしいと来た。此れは捨て置けぬ、疾く成敗せねば」
「だから空から」
「だからこそ、調査できる点は調査し、効率よく探すべきだと言って居る」
ニコは持ち合わせている【世界知識】で、予め樹海の【情報収集】を行ってきた。
「樹海には風穴がそこかしこに在るので、温度が低いスポットは点在しているが、極端に温度の高い場所というのは地質的には存在しないはず」
「しかし温度計さんは、あちらの方角が温度が高いと指し示しています」
素直に温度計を使って周囲の気温を計っているのはシン・バントライン(逆光の愛・f04752)。この暑いのに、しかも更に暑い方に向かうというのに、ヴェールまでついた黒っぽい官服をきっちりと着込んでいる。
「暑いのは――あちら」
彼が指したのは、美しい夏富士の方向。
「この方向が、極端に暑いです」
「ふむ、ということはあちらにターゲットがいる確率が高いと云う事だ」
「よっしゃ、あっちだな!」
とりあえずスゲー熱量が発されている方向を教わったアーサーは、宇宙バイクにまたがると、ユーベルコード【フルスピード・スカイドライブ】を発動した。
「上空から探すなら、あたしも後ろからついていくよ」
そう申し出たのは、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)。
「バイクほど速く飛べるわけじゃないけどね、あたしの目は片方が蛇のもので熱を見ることが出来るから、樹海の上から熱気が漂っている場所を探す手助けにはなる。それに、見つけたターゲットの位置を、地上から向かう仲間に知らせる役目も必要だろう?」
確かに翼で飛べる彼女ならば小回りもきくし、また知らせる方法についても、何らかの手だてを考えているようだ。
何はともあれ、探索開始だ。
まずはアーサーが、
「【Select……FLYING ACTION!!】行くぜ、ライドラン! 大空でも宇宙でも、どこまでも飛んで行くぜえええ!!」
愛機と共に勢いよく樹海の上空へと駆け上がった。その姿は【ライドラン】から発せられる蒸気に覆われ、高速で飛ぶ雲のようだ。その後ろを、
「じゃ、あたしもいくよ。うまくやろうねぇ」
ペトニアロトゥシカも、バサリと、どの鳥のものかも知れない大きな翼を広げて飛びたった。
「姿は森に隠せても、そいつ自身の噴煙はごまかせないだろうからな」
先頭を行くアーサーの眼下は一面の夏の濃い緑の森。だが、アーマーに包まれた身体にもじわじわと伝わってくる熱は、確実に強くなってきている。最高時速は500km/hだが、今は速ければいいというものではない。確実にターゲットを見つけなければ。
「指示された方向から外れちゃあいないはずだからな……む……煙だ!」
前方に、吹き上がる噴煙を見つけた。そこを目指し、スピードを上げて近づいていく。
「ここらへんのはずだ」
熱さを堪え、噴煙の真上から森の中を見下ろすと、煙と木々の隙間から赤く光る物体が見えた。
「あれは……マグマ! 間違いない、荒霊マガツヤマツミはこの下にいるッ!」
アーサーが静止していることにより、ターゲットの在処を、後をついてきているペトニアロトゥシカに示すことができているだろう……だが、地上を来る仲間の到着を待っている暇はなさそうだ。マガツヤマツミの熱が、儀式上周囲の木々を乾燥させはじめているのだ。待っているうちに山火事になってしまうかもしれない。
「先に儀式だけでも止めなければ……!」
アーサーは捨て身の作戦を決意した。彼自身も無傷とはいかないだろうが、技能と気合でカバーしてみせようではないか!
「悪いけどテメェらには容赦しねぇぜ? お前らの親分が、どうにも旅団の仲間の逆鱗に触れちゃう奴みたいでな……悪く思うなよ!」
ドゥルン!
宇宙バイクのエンジンが唸り、アーサーはマッハ4のスピードで、ターゲットめがけて突っ込んでいく。
「――!」
アーサーが猛烈なスピードでターゲットめがけて突っ込んでいったのを、ペトニアロトゥシカは少し後方を飛びながら目撃し、次の瞬間強烈な激突音を聞いた。
「すごい勢いだったよ、大丈夫かね?」
あの勢いではアーサーも無事ではあるまいと、急いで現場上空へ向かい、高度を下げる。蛇の目が、確実にその場所を教えてくれる。
木々の隙間から現場が窺える高さまで下りると、マガツヤマツミらしき奇妙な山は、アーサーのバイクにふっとばされたのだろう、台座から落ちてひっくり返っている。だが、噴煙はまだもくもくと噴き上がっているし、頭からマグマもでろでろ流れ出ている。ダメージは受けているようだが、さすがに一発でトドメというわけにはいかなかったようだ。
そして案の定、儀式上の反対側には、宇宙バイクとアーサーが倒れていた。気合と技能で意識は保っているようだが、すぐに戦える状態ではなさそうだ。
「よし……あたしも」
ペトニアロトゥシカはひとつ頷くと、バサリとひとつ大きく翼をはためかせ、木々の間に突っ込んだ。
目指すはもちろん、起き上がろうともがいている、山っぽい奇妙な物体である。急降下しながら発動したユーベルコードは【万喰熱線】。
――ドンッ!
勢いよく体当たりしたペトニアロトゥシカは、そのまま燃える山体にしがみついた。そのままの姿勢で彼女は動けなくなるが、全身から火山のエネルギーを吸収することができるのだ。
「全部まとめて、お返しだよ!」
全身を通り抜けていく火山エネルギーは、彼女を焼き尽くしてしまいそうなほど熱い。しかしペトニアロトゥシカは、その吸い込んだエネルギーを熱線として照射することができるのだ。
熱線が照射されたのは……徒歩でターゲットを目指している仲間たちがいるはずの方向。
一方、温度変化を頼りに地上からターゲットへと向かっている猟兵たちは。
「霊峰富士山を噴火なんてとんでもない! 富士山は名だたる絵師が描いてきた大切なこの国の宝とも言うべき山です。その富士山をこの国の壊滅に使おうとするなんて言語道断! こちらの使命感の方がその儀式とやらよりももっと熱く燃え盛るってものです! 私はこれからもいろんな絵師が描く富士山を観たいし私も描きたいのです!」
本城・やぐら(ゆるりんぱ絵師・f06242)は先を急ぎつつも、絵師としての憤りを募らせていたが、
「あっ、あれはペトニアロトゥシカの熱線ですね、やっぱりあっちですよ!」
いち早く仲間が放った命がけの合図に気づいた。彼女のユーベルコード【風神雷神図】で顕現した風神と雷神が、行く手の茂みや低木をなぎ倒し倒木をどかしてくれるので、道ゆきは捗っている。目標地点までもう少しのはずだ。
「さっき通りかかったリスによると、その方角にとても暑くて妙な姿のモノがいて、そこに更によくわからないものが降ってきて、大変なことになっているらしいとのことじゃ」
動物と接する技能を使い、逃げる途中のリスと話していたヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)も、仲間たちに新たな情報を告げた。いつも通りの無表情かつ冷静な表情ではあるが、眼光はいつにも増して鋭い。
更によくわからないものとは、空から先行した2人のことだろうか? と当然猟兵たちは思ったが、動物たちも突然現れた災厄から逃げるのに必死で、これ以上詳しい情報は得られそうにない。とにかく先を急ぐしかないようだ。
木の根が露出して歩きにくい森の中を行くことしばし。暑さは相変わらず厳しいが、ペトニアロトゥシカが吸い取ってくれているせいだろうか、耐えられないほどではない……と。
「――!!」
地上隊の猟兵たちは、驚きの声を堪えながら、木々の陰に身を潜めた。
神秘の森に似合っているとも言えなくもない、石造りのピラミッドが忽然と現れたのだ。しかしその周りには和風なしめ縄が張り巡らされていて、折衷&即席感満載である。
彼らが驚いたのはそれだけではなかった。
――確かに、これは大変なことだ。
『くっ……こいつら猟兵なの? 大事な儀式の邪魔をしてくれるとか~!』
真っ赤に昂っている軽トラサイズの火山が、それに必死にしがみついているペトニアロトゥシカを引きはがして放り投げたところだったからだ。ずっと合図の熱線を送ってくれていたが、いよいよ力尽きてしまったようだ。彼女が放り出されたところには、アーサーと彼の愛機もひっくり返っている。
猟兵たちはぐっと暑さが増したのを感じた。やはりペトニアロトゥシカが吸い取ってくれていた分、かなり暑さがやわらいでいたらしい。
「ま、またけったいな山ですね!? このまま噴火したら大変な事に……」
草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は、まず仲間を助けにいくべきか、敵に攻撃をしかけるべきか判断しかねてあわあわしている。
「落ち着いて、まずは儀式の邪魔をしなくちゃ」
「そうです。あの竜が重要な生贄ですが、幸いまだ屠られてはいないようですから」
やぐらとシンが素早く打ち合わせをしているうちに、マガツヤマツミは、せっかくいいところだったのによぅ、とかブツクサ言いながら、祭壇のあるピラミッドを登り始めた。その動きがもっさりしているのは、空からの先行隊が、命がけの急襲を仕掛けてくれたおかげだろう。
「風神招来! 雷神招来!」
そこへ、まずはやぐらの風神雷神が飛び出していく。
『むっ、なに者! アンタも神?』
雷神がマガツヤマツミの視界を塞いでひきつけているうちに、風神が文字通り風のようにピラミッドの上の祭壇に忍び寄り、仮死状態の小さな竜のような生贄……実はケツァルコアトルの子供をかっさらって、そのまま遠くへと連れ去っていった。
「風神サマ、なるべく遠ざけてあげてくださいね!」
飛び去る姿をやぐらが見送った。
祭壇の上には、間髪入れず、シンが、
「リザレクト・オブリビオン」
ユーベルコードによって召喚した【死霊蛇竜】をダミーとしてスタンバイする。
『そこをどけ~!』
マガツヤマツミは頭の噴火口から溶岩弾をボコボコ打ち出し、行く手を塞ぐ雷神を狙い撃ちにした。雷神は溶岩弾の熱で蒸発するように消えてしまったが、その時にはすでに竜のすり替えは済んでいる。
『ふん、邪魔者は片っ端から消すだけのことさっ』
マガツヤマツミは、またのったりとピラミッドを上り、祭壇に達し、生贄ぶりっこしておとなしく横たわっているシンの蛇竜に手を伸ばした――その時。
ガブリ!
生贄の竜が、その手に噛みついた。
『いてーーーッ!』
同時に、待機していた【死霊騎士】も、シンの指示によりピラミッドを駆け上がり斬りかかった。
シン自身は祭壇から離れた木の陰に隠れ、冷静に召喚した死霊たちに指示を出している。
「暑苦しくどこか呑気そうな敵ですが、火山が噴火などしたら大惨事です。ここは何としても食い止めねばなりません。それに富士は……美しい山ですね」
もちろん他の猟兵たちも一斉に攻撃に移っている。
到着時はあわあわしてしまった千秋も、すぐに気を取り直し、
「僕達がコルテスによる火山の噴火を防いでみせる! エンパイアに平和を取り戻すんだ! 変身! 断罪戦士ダムナーティオー推参!」
アーマーを装備して戦場へと飛び出した。彼はまず倒れている先行した2人の元へと走り、庇える位置へと立ちはだかった。
「……すまねぇな」
どうにか動けるようになったアーサーがペトニアロトゥシカを介抱しながら礼を言うと、千秋はキラッと白い歯を見せて微笑み、
「なんのこれしきですよ!」
爽やかに答え、アサルトウェポン・ordinis tabesでターゲットを狙い撃ちし始めた。幸い的は無駄に大きいので、命中させ放題だ。
仲間の急襲にマガツヤマツミがおたおたしている隙に、ニコはユーベルコード【精霊狂想曲】を発動しようとしていた。
「相手が炎の使い手ならば此方は氷で攻めよう……生半可な力では溶かされてしまうだろう。此方も【全力魔法】で出し惜しみは無しだ」
全ての魔力を注ぎ込むからには、失敗は許されない。集中し、丁寧に、心を込めて――。
今しも技を発動しようとしたその時、
『くっそお、どこからこんなに大勢猟兵が沸いてきたんだよ~! こうなったら天焦神火だ、一気に焼き尽くしてやるぞ~!』
ゴゴゴゴゴゴ……と、マガツヤマツミの全身が震え始めた。大噴火の予兆だ。
だが、ニコは集中を切らせることなく、祝詞を唱えた。
「荒れ狂え精霊よ、汝らは今こそ解き放たれん!」
ニコのユーベルコードの発動より一瞬早く、マガツヤマツミの火口から爆発的な噴煙と溶岩弾が噴出し、マグマがでろりと流れ出した。
だが、その大爆発をしのぐ勢いで、氷の雨……いや、氷の柱が降り注いだ。
『ギャー、なんだこれは~!?』
氷の柱は、噴煙や溶岩弾、マグマを冷やし、火口を凍り付かせてゆく。
マガツヤマツミのユーベルコードが封じられた瞬間を狙い、
「――今だ」
ザッ、と木の枝から飛び立ったものがいた。
「我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者! 民と共に在った嘗ての妾の猛き力、目に焼き付けるが良い!」
ユーベルコード【第一之太陽再臨】を発動したヨナルデだ。暗殺の技能を生かし、いつでもターゲットに飛びかかれる場所に忍び寄っていたのだ。
必殺技を発動したヨナルデに合わせるように、千秋も飛び出していた。
「喜びの島ではない……骸の海へッ!」
後方の仲間たちの長距離攻撃による援護を受けて、敵に肉薄した千秋は、
「正義の鉄拳をくらえ、ダムナーティオーパンチ! そして ダムナーティオーキックだ!」
足元……というか、山の麓に2発の強烈な攻撃を加えた。
『うひっ!?』
足元を攻撃されたマガツヤマツミは、凍った地面に滑ってバランスを崩し、すってんころりん!
「妾の前で妾の好敵手、妾の兄、妾の伴侶たるケツァルコアトルと同じ名を持つ者の子に手を出したのじゃ。女神の怒りを受け疾く滅びよ下郎!」
そこに頭上から突入してきたのは、血と骨の翼をもち、ジャガーを模した黒曜石の鎧に身を包み、黒曜石の斧を振り上げた女神。まさにその姿は、女神による天罰。
黒き刃はざっくりと、山をまるでケーキのように真っ二つに割り裂いた。
……ちゅっどーーーーーーん!
「!!?」
地を揺るがすような大噴火がヨナルデを飲み込んだ!? と思いきや、それは一瞬。
――後には、焼け焦げた戦場と、猟兵たちと、何事もなかったかのように静かに青い富士の山だけが残っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵