エンパイアウォー④~飢えし双刀
●エンパイアウォー開幕
寛永三方ヶ原の戦いに勝利した猟兵たちは、『第六天魔軍将図』を入手した。
そこに記されていた名前は、八つ。
三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の『第六天魔軍将』達が、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきたのだ。
徳川幕府はこの国難に立ち向かうため、諸藩からの援軍もあわせて、幕府軍十万を招集。幕府の総力を挙げて織田信長の元に進軍し、撃破すべく動き出した。
織田信長を撃破するためには、これら徳川の軍勢は是が非でも必要となる。
猟兵たちは、行軍する徳川幕府軍を信長軍の攻撃から守りつつ、行く手を阻む信長軍の魔軍将たちと戦うこととなる……。
●グリモアベース:ゲネ
「エンパイアウォー、信長軍との戦いが開戦だ! 我こそはと思う者はぜひ参戦してくれ!」
ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)はホロモニターにサムライエンパイアの光景を映し出した。
一つは霊峰富士の美しくも荘厳なシルエット、そしてもう一つは麓に広がる緑濃い樹海だ。
「魔軍将の一人、侵略渡来人『コルテス』。ヤツは太陽神ケツァルコアトルの力を使って、富士山を噴火させようとしている」
富士の樹海に隠された儀式場にて、コルテス配下のオブリビオンが富士山を噴火させる為の『太陽神の儀式』を執り行っている。
この儀式を阻止することで、富士山の噴火を阻止できるはずだ。
「諸君に赴いてもらいたいのは、複数ある儀式場の一つ、樹海奥深くに隠されていると推測される、洞窟内の儀式場だ」
過去の火山活動で形成された、自然の天然洞窟。その入り口は樹海の景色に溶け込み、容易には発見できないだろう。
しかし内部は迷いようもない大きながらんどうになっている。儀式用に火が焚かれ、罠も張られていない、単純明快な戦場である。一度発見してしまえば、あとは戦うだけだ。
「儀式を執り行っているのは妖怪『刀喰らい』。心を折り魂を喰らう戦場の妖怪に邪神の魂が憑依したもの、とされている」
いかにも血の気が多そうな妖怪だが、執り行われる儀式の内容もなかなかに血なまぐさい。儀式場の中心で小さな竜――ケツァルコアトルの子供を殺し、その血を聖杯に注いで祈る、というものらしい。
「諸君は儀式場を発見し、この刀喰らいを撃破してくれ。そうすれば儀式は阻止できる。そして、儀式阻止が規定数に到達すれば、富士山の噴火を食い止められるという寸法だ」
まかり間違って富士山が噴火してしまえば、東海・甲信越・関東地域は壊滅的な混乱状態となるのは必至。徳川幕府軍は全軍の二割以上の軍勢を、災害救助や復興支援に割かなければならなくなる。
「コトが天災レベルなだけに、被害の規模はとんでもないことになる。信長軍との戦いが不利になることももちろんだが、人々と国土を阿鼻叫喚の混乱に叩き込むこと自体、是が非でも食い止めなきゃならないよな」
ゲネは猟兵たちの瞳を力強く覗き込むように訴え、コンソールに指を走らせモニターに転送術式を展開した。
「というわけで、目標! 『富士噴火儀式絶対阻止』! ユーベルコードの準備が出来たら、血なまぐさい儀式の主をぶっ飛ばしに、出発だ!」
そらばる
こちらはエンパイアウォー④『霊峰富士鳴動』。
樹海に隠された儀式場を探し出し、富士山噴火の儀式を執り行うオブリビオンを撃破してください!
●概要
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●儀式場
樹海奥深くのどこかに存在します。
内部に大きな空洞を持つ洞窟です。
入り口は狭く、景色に溶け込んでいるので、探し出すには工夫がいるでしょう。
内部構造はシンプルで、光源あり、罠の類はありません。
●ボス戦:妖怪『刀喰らい』
(POW)召喚された巨大なカマキリの邪神が、全てを両断する真空波を任意の回数飛ばして攻撃します。
(SPD)非常に強化された双刀の必殺技を放ってきます。
(WIZ)妖刀『炎刃』と『善壊』の複製を多数作り出し、空中を飛ばしてきたり何本も使い分けたりしてアクロバティックに攻撃してきます。
心を折り魂を喰らう戦場の妖怪に、邪神の魂が憑依したとされる妖怪。
倒れた相手の刀剣を喰らい力と技と生命を奪い取ると言われます。
双刀を用いた数多の剣技と邪神の力で戦います。
執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にお使いください。
それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
第1章 ボス戦
『妖怪『刀喰らい』』
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POW : 烈刀王断
【戦い】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【邪神「第六の蟷螂」】から、高命中力の【全てを両断する真空波】を飛ばす。
SPD : 魁刀爛魔
技能名「【】内に力か撃か戦の文字が入る【戦闘系技能】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 万刀血災
自身が装備する【妖刀『炎刃』と『善壊』】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
イラスト:山本 流
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠喜羽・紗羅」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鳴猫・又三郎
「流れの黒猫……鳴き猫の又三郎。……一手ご教授願おうかにゃ」
こいつは相当やるやつにゃ
「食ってみるかにゃ?腹下すにゃよ?」
一撃必殺の攻撃手段、変幻自在の技巧、多勢を制圧する火力を持ってる
けどにゃあ
「猫にはお見通しにゃんだよにゃ」
【猫の知らせ】を頼りに嵐のごとき剣戟に飛び込むにゃ
どんにゃ恐ろしい攻撃も予め分かっているにゃらやりようはある
【野生の勘】で【見切り】
紙一重に躱して反撃に繋げる……風のように、そこに浮かんだ雲のように
「分かりやすいやつにゃ」
どれだけ早くても多くても剣は剣
敵の流れを読み、乗り、乗せて
「……斬る」
【早業】【二回攻撃】
二刃を持ってして深く斬る
「……ここらで一杯、酒が怖いにゃあ」
花盛・乙女
霊峰富士をこのような怪しげな事に…許せんな。
先ずは【黒椿】を舐め起こす。
聴覚と嗅覚を使わせ、洞穴を探させる。
洞窟特有の臭気、水気、残響音。手がかりはある。
あと活かすものは「第六感」か。
刀喰らいと相対すれば哀れなものだと思うだろう。
刀を手に持つ身ながら、己の芯を刀に出来ずくだらん儀式の為に小竜を切る。
それが貴様の望んだ刀の使い道なのか、と呆れもしよう。
そのような醜態を晒し良しとしてるならばなお許せん。
尋常にこの花盛乙女と立ち会ってもらうぞ。
「殺気」「挑発」「見切り」で初撃を誘い
二振りの刀の「2回攻撃」で「カウンター」、後の先をとる。
首をとれれば所詮なまくら、この程度かと刀についた血をはらおう。
龍泉寺・雷華
※アドリブ連携歓迎
儀式とか祈祷とか好きなんですけど、
生贄を使うとかこの儀式にはかっこよさと美しさが足りませんね!
ここは我が華麗に!阻止してみせましょう!
まずは儀式場の捜索でしたね
我が魔術で風を操り、その流れから周辺の地形を調査してみましょう
そこに空間がある限り、空気もまた存在する
如何に巧妙に隠そうと、全てを識る風から逃れる事は出来ませんよ!
儀式場を見つけたら、後は敵を殲滅するのみ!
折角です、戦闘でも風の力を見せてあげましょう
我が魔術で風の刃を創造し、四方八方から敵を切り刻みます!
敵は近接武器、距離を取って戦えば我に傷一つ付けることは出来ませんね!
……フラグ発言じゃないですよ
サンディ・ノックス
刀剣を喰らうという名の敵、小竜を殺す儀式
他にも嫌いになる要素が目につくな
俺は人々を救うなんて立派なことは言えないけど敵を潰す意欲は掻き立てられたよ
・探索
【地形の利用】の観点から人の目に留まりにくい場所や
【コミュ力】や【目立たない】を常日頃行っている経験から心理的に印象に残らない場所を中心に探す
・戦闘
「俺の武器も獲物と感じるのかな?」
問いかけ、胸鎧と一体化、全身鎧姿に変身
こう言うけど武器は奪うと言われるだけで腹が立つくらい大切なもの、くれてやる気は全くない
ユーベルコード【解放・星夜】で青い水晶製の小人を召喚
彼らに攻撃させ敵の挙動の癖を【見切り】、敵の剣を叩き落として接近、暗夜の剣で急所を狙い攻撃
黒暗九老・有麓落羅区
刀喰らいの使っている妖刀…ちょっと興味があるのう(ワクワク)
炎刃は斬られたら火傷するんじゃろうか?
天然洞窟か。きっと儀式をするために道具を運び込んだりと
周りには足跡などの痕跡やあやしい気配が漂っているじゃろう
「第六感」で気配を探り「情報収集」「視力」で場所を探す
戦闘中は
多分攻撃を全てかわすことは難しそうじゃし
「激痛耐性」とUC「ダーク・ヴェンジャンス」で強化しつつ
「おびき寄せ」「見切り」などでタイミングを計り
「早業」で「なぎ払い」「目潰し」で動きを止めたいのう
とどめは他の猟兵に任せるのじゃ
絡みアドリブ大歓迎
御剣・刀也
刀を食らうね
面白い。俺の相棒を食えるもんなら食ってみる
逆にてめぇの刀をへし折ってやる
烈刀王断は、戦いの感情はもう持っているので、蝙蝠が出てくる前提で第六感、見切り、残像を駆使して避けて、そのまま突っ込んでカウンターか捨て身の一撃で斬り捨てる
魁刀爛魔で、自分の技能を利用しようとしたら、利用できるものならしてみろと惜しむことなく自分の技を使用し、真っ向から斬り捨てる
万刀血災で刀を複製したら、邪魔なものは第六感、見切りで動きを予測して斬り砕きながら突っ込んで捨て身の一撃で斬り捨てる
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。どうしたクソガキ?そんなんじゃ俺の刀はくえねぇぞ。もっと気合い入れてこいや!!」
●樹海の奥に潜むもの
富士山麓に広がる、緑深い樹海。
時に呪わしき名所ともされるそこは、しかし実際に踏み入ればひどく静謐で、神秘を纏う、穏やかな森だった。
「霊峰富士をこのような怪しげな事に……許せんな」
苔むす地面を踏んで樹海に分け入った花盛・乙女(羅刹女・f00399)は、いずこかに潜む悪意を見透かすように目を細めた。
「儀式とか祈祷とか好きなんですけど、生贄を使うとかこの儀式にはかっこよさと美しさが足りませんね! ここは我が華麗に! 阻止してみせましょう!」
龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)はテンション高く奮起している。
「刀剣を喰らうという名の敵、小竜を殺す儀式……」
サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)は柔和な顔立ちに悲しげな影を落とした。
「他にも嫌いになる要素が目につくな。俺は人々を救うなんて立派なことは言えないけど、敵を潰す意欲は掻き立てられたよ」
そうして、各々が義憤を静かに燻らせる、一方。
「刀喰らいの使っている妖刀……ちょっと興味があるのう」
あからさまにワクワクしている神が約一柱。黒暗九老・有麓落羅区(戦闘狂の神・f16406)にとっては、大災害より個人的興味が何より優先される模様である。
「まずは儀式場の捜索でしたね。我が魔術で炙り出してやりましょう! そこに空間がある限り、空気もまた存在する。如何に巧妙に隠そうと、全てを識る風から逃れる事は出来ませんよ!」
雷華の操る風が、樹海一帯を吹き抜けた。風は小さな穴すら見逃さずに忍び込み、流動する空気の存在する空間を洗い出していく……。
「ええと、右に一つ、左に二つ、手前に一つ、奥にもいくつか……うわ、思ったより多いなぁ。これが溶岩洞窟ってやつですか」
「いや、儀式場に使える種の洞窟はそう多くはないはずだ。絞り込もう」
乙女は極悪刀【黒椿】を引き抜き、何気ない仕草で舐め起こした。
「仕事だ、働け」
『ヒヒ、相変ワラズ色気ノナイ奴ダ』
【黒椿】から立ち昇った煙の化生は、鋭敏な聴覚と嗅覚で樹海を探る。洞窟特有の臭気、水気、残響音。見ずとも、手に入る手がかりはある。
「……儀式場として使える規模の洞窟は、東、北東、西南西に一つずつ。各々かなり距離があるようだ。あとは手分けをするべきか」
「いえ……待ってください」
控えめに押しとどめたのはサンディだった。その両眼は蒼く静まり返る樹海の地形をつぶさに見通している。
「……地形的に、西南西方向は街道に近いので明らかに人の目に留まりやすい。それに、これは俺の普段の経験からなんですが……心理的に印象に残らないようにしようと思うと、北東方向の雰囲気が一番適しているように思います」
「――うむ。ミーもそう思うのじゃ!」
有麓落羅区の声は少し離れたところから上がった。単身、すでに北東方向に踏み入っていたのだ。仲間たちを手招き、奥を示して見せる。
「見よ、いかにも何気ない景色と見せかけて、底に潜む妖しい気配よ。しかもこれこの通り」
指差された足元には、苔むした岩肌に残る新しい足跡。儀式のための道具を運び込むために、信長軍の下っ端あたりが残したものだろう。
猟兵たちは確信をもって頷きあい、北東方向へと歩を進めた。足跡だけを辿っていては痕跡の残りにくい土壌に苦心させられただろうが、猟兵たちは各々の得意な知覚や直感を働かせ、時をかけることなく目当ての洞窟の入り口を見いだした。
それは、植物が生長しにくいと言われる樹海の環境下でも、破格の巨体を誇る大樹の根本。
土に潜ることなく地表を這い、複雑に絡まり合った根の影にひっそりと隠されていた、溶岩の亀裂だった。
●刀は踊る
暗い閉鎖空間に、赤々とした火が躍る。
篝火を焚く炎が喰らっているのは、妖力か魔力か。少なくとも薪や油では成し得ぬその色相は、まるで血液のように紅い。
奥に据えられた天然の岩石を簡単に組んだ原初的な祭壇の前に、小竜の首を掴んでいる半裸の少年の後ろ姿が浮かび上がっている。
「――なんだ、テメェら」
少年の首が振り返る。紅い炎に照らし出される横顔。朱い白眼に浮かぶ金の瞳が、剣呑にすぼまる。
これが、妖怪『刀喰らい』。
「見つけましたよ、後は殲滅するのみ!」
声高らかに雷華が宣言すると、刀喰らいの横顔がニィィ……と凶悪な笑みを浮かべた。
「面白ぇ……」
刹那、数多の刃が剣閃を疾らせた。刀喰らいがこれまでに喰らってきたものであろう脇差や短刀の類が、檀上で複雑に組み上がり、武骨な鳥籠めいた形状を作り出す――
小竜はいつのまにか鳥籠の中。ぐったりとして動かないが、呼吸の浅い上下動は確認できる。
しかし、事態は一切の予断を許さない。
「流れの黒猫……鳴き猫の又三郎。……一手ご教授願おうかにゃ」
鳴猫・又三郎(流浪の黒猫・f06418)は、あえて誰よりも先に敵前へと歩み出た。
(「こいつは相当やるやつにゃ」)
一瞬で多数の刃を操り切った芸当から、敵の実力は明らかだった。
「へぇ、猫が生意気に刀持ってやがる。変わり種だなァ」
「食ってみるかにゃ? 腹下すにゃよ?」
「そう言われて喰うのをやめるように見えるか? ――テメェのイノチはどんな味だ?」
瞬時にして、刀喰らいの両手に二刀が生じた。刃に血液を滴らせる、妖刀『炎刃』と『善壊』。
「おお、あれが! 炎刃は斬られたら火傷するんじゃろうか?」
こんな時でもワクワク!と目を輝かせる有麓落羅区。
刀喰らいは、笑みを深くする。
次の瞬間、二刀の複製が洞窟内の空中を埋め尽くした!
「試してみな」
複製された刀が、一斉に宙を疾る――!
無軌道な剣閃が視界に数多の残像を描く。刃と刃が激しくこすれ合い火花を散らす。襲い来る刃の嵐に、防戦一方に追い込まれる猟兵たち。
(「一撃必殺の攻撃手段、変幻自在の技巧、多勢を制圧する火力を持ってる。……けどにゃあ」)
「猫にはお見通しにゃんだよにゃ」
ぴくく、と猫耳を動かして、又三郎は嵐のごとき剣戟の中に果敢に飛び込んだ!
数多襲い来る刃を、あらかじめわかっていたかのように次々躱していく又三郎。猫の知らせで得た予想が、野生の勘が、優れた視力が、神がかった回避を実現する。風のように、そこに浮かんだ雲のように。
輝く剣閃に紛れ、ちりりと耳の裏に触る殺気。猫目がすっと細まる。
「分かりやすいやつにゃ」
どれだけ早くても多くても剣は剣。
敵の流れを読み、乗り、乗せて――
「……斬る」
紙一重で鋭い剣閃を躱した瞬間、又三郎は瞬時に二刃を抜刀した。
背後で二刀を振りかぶる気配へと。
完全に背後をとっていた刀喰らいの両脇腹に、妖刀「鳴猫」、魔剣「怨返し」が深々とした傷を抉る――!
「ぐあぁぁ……っ」
鋭い悲鳴を上げながら退く刀喰らい。
「……ここらで一杯、酒が怖いにゃあ」
又三郎は粋に刀の血を払い、さらりと音を立てて納刀した。
主の負傷に、刀の嵐の勢いが若干鈍るも、未だ辺りは夥しい剣戟に溢れている。一度地に膝をついた刀喰らいの姿も、瞬く間に剣の嵐に紛れて消えた。
「おおっやはり火傷になったのじゃ! 善壊は不浄の力があるようじゃのう。ううむなかなかやりよる」
己が身を漆黒の粘膜で覆い尽くした有麓落羅区は、痛みなどなんのその、刃の嵐の中ではしゃいでいる。……いかにも狙ってくださいと言わんばかりに。
刀喰らいは刀を足場に縦横無尽に宙を駆け、猟兵たちへと牽制の刃を次々と投げつけながら、有麓落羅区へと斬りかかる――!
「おやおや、穏やかじゃないのう」
有麓落羅区は殺気を籠められた刃をのらりくらりと躱すと、敵の二刀による連撃が空を切ったわずかな隙に一気に間合いを詰めた! 素早く繰り出される薙ぎ払い。刀の切っ先が、刀喰らいの両眼表層を斬り裂く――!
轟く絶叫、舞う鮮血。目を覆い動きを鈍らせる刀喰らい。
その瞬間を捉えて、雷華の金色の瞳が輝く。
「――折角です、風の力を見せてあげましょう」
魔術で創造された風の刃は複製の刀を巻き込みながら宙を駆け、四方八方から刀喰らいの全身を斬り刻んだ!
「があああぁぁぁッッ!!」
咆哮にも近い叫びを迸らせ、刀喰らいは死に物狂いで風の刃から逃れ転げながらも複製の刀を投げつけてくる。しかし遠く距離を置いた雷華へ届く前に失速し、あっけなく躱される。
「く――そがァッ! テメェらのイノチとカタナ、寄越しやがれぇぇえぇッ!!」
飢餓の滲む苛立ちも露わに刀喰らいが叫ぶと、宙を飛びまわっていた複製の刀が、一斉に地面の一点を向いて殺到し始めた……!
突如戦線に構築されたのは、上下逆さの針山の如き名状しがたい刀の塊。構築された時と同様、唐突に罅が入ったかと思えば、内側から破裂するように砕け散り――
内部から姿を現したのは、邪神「第六の蟷螂」。
――ブオォォォォォ……ン
奇妙な唸り声を上げながら巨大カマキリが鎌をもたげ、素早く横薙ぎに振り払った。引き裂かれた空気の断層が真空波となって猟兵を襲う――!
「刀を食らう、ね」
不気味な巨大カマキリの顕現を最も警戒していた御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は、打ち付ける真空波を残像を描きながら回避し、身を翻したそのままに敵へと突っ込んだ!
「面白い。俺の相棒を食えるもんなら食ってみろ。――逆にてめぇの刀をへし折ってやる」
一閃! 刃が鋭く翻り、捨て身の一撃が巨大カマキリを瞬時にして斬り捨てた!
――その瞬間、深々と刀也の懐に踏み込む殺気。まるで鸚鵡返しのように刀喰らいが繰り出す渾身の捨て身の一撃が、刀也に振り下ろされる――!
「――ッ」
きわどいところで二刀を受け止める刀也。凄まじい膂力による鍔迫り合いを歯を食いしばって耐え抜き、渾身の力で打ち払った!
「……俺の技能を映しやがったのか。いいぜ、利用できるものならしてみろッ!」
刀也は惜しむことなく連続攻撃を繰り出した! 力・撃・戦の言霊を含む技もそうでない技も、何もかもを駆使して真っ向から敵の二刀に対抗する……!
「く……っ」
刀也の勢いと己の消耗に形成の不利を悟った刀喰らいは、躱しきれぬ斬撃で二の腕を裂かれながらも大きく後方へと退いた。だしぬけに二刀を空中に打ち上げるや否や、再び数多の複製が宙を埋め尽くした!
しかし刀也はもとより、我が身を顧みるつもりなど毛頭ない。
邪魔な偽物は研ぎ澄ませた直感と眼力で動きを予測し次々斬り砕きながら、一気呵成に刀喰らいの元へと突進する――!
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。どうしたクソガキ? そんなんじゃ俺の刀はくえねぇぞ。もっと気合い入れてこいや!!」
再びの捨て身の一撃が、刀喰らいの剥き出しの素肌を袈裟懸けに斬り裂いた――!
「――――ッッ」
刀喰らいは声を殺して激痛を耐え、背後に退いた。鮮血をまき散らし、激しく肩を憤らせながらも、刀の雨を弾幕のように張って猟兵たちを牽制する。
「俺の武器も獲物と感じるのかな?」
サンディは剣の嵐の向こうへと問いかけると、セピア色の胸鎧と一体化し、全身鎧姿へとその身を変えた。
「ああ……ああ! 寄越せ……寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ何もかも俺にヨコセッ!!!!!」
発狂したように飢餓を発露する刀喰らいが、サンディへと突撃する。しかしその行く手を青い水晶製の小人たちが阻み、刀喰らいの手足に纏いついた。
「っ、邪魔だッ!!」
一喝の元に小人たちをただの水晶の欠片へと砕き割っていく刀喰らい。
しかしその一連の動作に露出する敵の挙動の癖を、サンディはしかと見極めながら肉薄した。
「悪いけど、これは奪うと言われるだけでも腹が立つ、本当に大切なものなんだ。だから……」
主の接近に合わせ、最後までしぶとく残っていた小人が、二刀のうち一刀を叩き落とした。
「しまっ――」
「……くれてやる気は、毛頭ないよ」
暗夜の剣の漆黒の刀身が、刀喰らいの腹部を深々と貫く――
「ぐ……ぅっ、がぁ……ッ」
刀が引き抜かれると共に、よろめき、たたらを踏む刀喰らい。その足元に大量の血液が滴る。
その姿を目の当たりにして、乙女は思う。
「……哀れなものだ」
刀喰らいを見据える眼差しに宿るのは憐憫、そして、
「刀を手に持つ身ながら、己の芯を刀に出来ずくだらん儀式の為に小竜を斬る。それが貴様の望んだ刀の使い道なのか」
諦観にも似た呆れ。
「……煩ぇッ!!」
飛来する複製の刃。しかし当初の鋭さを欠くそれらを、乙女は容易く斬り捨て弾く。
「そのような醜態を晒し良しとしてるならばなお許せん。尋常にこの花盛乙女と立ち会ってもらうぞ」
「煩ぇっつってんだろうがッ!!」
挑発に乗った刀喰らいが突っ込んでくる。もはや複製なのか本体なのかも知れない二刀が、乙女の首を狙って左右から振り下ろされる――!
乙女はその剣閃を、最小の動作で背後に一歩退くことで、あっけなく躱した。空を切り、虚しく交差する『炎刃』と『善壊』。
対し、乙女の振るう刀もまた、二振り。
重く脆く醜い悪刀と、しつらえの良い小太刀が、静かに、吸い込まれるように、刀喰らいの首を掻く――
ひぅっ――
最後に甲高く喉を鳴らして、刀喰らいの頭部が宙を舞い、地面を転がった。
「首をとれれば所詮なまくら、この程度か」
乙女は刀の血をはらい、涼やかな音とともに刀身を鞘に納めた。
祭壇の上で、小刀によって組み上げられた小竜の鳥籠が、主の死と共に砕けて消えた。
富士樹海にて霊峰の噴火を企む儀式場の一つは、刀喰らいの死と共に潰えた。
しかしこれが儀式の全てではなく、信長軍との戦いは今なお各地で続いている。
勝利の余韻もそこそこ、新たな戦いに備えるため、猟兵たちはグリモアベースへと帰投するのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月06日
宿敵
『妖怪『刀喰らい』』
を撃破!
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