エンパイアウォー④~死せる森で嗤う鬼
●樹海にて
あの森には入らんほうがええ。入ったが最後、生きて帰っては来られねぇ。
――あそこには、鬼が出るんだよ。
霊峰富士山のふもとに広がる樹海。鬱々と木々が広がる森の奥。其処は一度踏み込めば帰る事叶わぬ魔の森と伝えられていた。獲物を追った猟師が、遊び迷い込んだ童が、そして戦に追われた行き場ない民が踏み込み、二度と出て来る事が無かったが故に。ある者はその森から亡者の声が聞こえるといい、またある者はしゃれこうべが此方をじっと見つめてきたという。
いつしかその森には人を食べる鬼が棲むと言い伝えられるようになった。
「まぁったく、迷惑だこと。人を食べるだなんてそんな……」
昼間だというのに薄暗い森の中、一人の女が傍らの白い人影に笑いかける。
「魂も魄も余さずわたしのモノ……無為に散らすなんてもったいないこと。」
くすくすと笑う女の頭には朱に染まった二本の角。傍らに立つのはすでに白骨と化している人。
「せめて愉しく潰さないと……ねぇ?」
森を満たすような死者の群れの中、足元に広がる幼き竜の肉を踏み潰して血を搾りながら鬼は艶然と嗤った。
●グリモアベースにて
「皆さん、富士山を噴火させる儀式を行っているオブリビオンを予知しました。」
グリモアベースを行き交う猟兵たちにアルトリンデ・エーデルシュタインが声をかける。
「もしも富士山が噴火するような事があれば広範囲に被害がでます。いかにエンパイアウォーの最中といえども住民の避難や救援に少なくない兵を割かざるを得なくなります。」
そうなれば最終的に信長の住む『魔空安土城』に辿り着ける軍勢の数にも大きく影響する事になるだろう。その為、富士山を噴火させる儀式を行っているオブリビオンを倒し、儀式を阻止する必要がある。
「問題は、儀式の場所が富士の樹海の中である事です。皆さんを転送できる場所の付近には居ないようですので、オブリビオンを探さなくてはなりません。」
予知されたオブリビオンは『椿』という名のネクロマンシーを操る鬼だ。森の中には椿のネクロマンシーによって支配下に置かれている亡者が数多く彷徨っているという。この辺り一帯の樹海は入ったら迷って出られぬほど深い森であり、昔から多くの人が出れずに死んでいる故にネクロマンシーを使うに事欠かない場所というのも大きい。
「森に入り、亡者に見つかった場合、即座に椿にも感知される事になります。ですが、それは亡者と椿に魔術的なつながりがあるという事。可能ならば、そこから椿の位置を割り出せるかもしれません。
また、操られている亡者をネクロマンシーから解き放つ事ができれば椿までの道を示してくれるかもしれません。彼らも亡者としてこの地に縛られているのは不本意のようですから……」
おそらく、樹海を闇雲に探すより相手のネクロマンシーを逆手に取ったほうが早いだろう。無論、椿に近くなるほど術は強くなる。鬼の近くにいる亡者を解き放つのは難しいと思われる。
「椿は儀式そのものを楽しんでいるフシがあり、急げば儀式の準備が終わる前に辿り着けます。」
儀式は『築かれた儀式場の中心で小さな竜(ケツァルコアトルの子供)を殺し、その血を聖杯に注ぎ、祈る』と言った物だが、椿はまだ聖杯に血を注いではいない。その為、今ならまだ止める事ができるのだ。
「この戦争を勝つ為、何より無辜の人々を富士山の噴火という大災厄から護るために。皆さんの力をお貸しください。」
そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。
こげとら
しばらくぶりです、こげとらです。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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今回は樹海の中で儀式をしているオブリビオン『椿』を探し出して倒す、という流れになります。
椿は亡者を通じて森の状況を把握しており、自分は儀式場に居ながらネクロマンシーで操る亡者で猟兵に攻撃を仕掛けてきます。これらに対処しながら、逆に利用して椿まで辿り着いてください。
探索と戦闘、両方が必要となりますが、探索は亡者を倒して解放するようなざっくりした物でも構いません。もちろんしっかりした対処があれば判定にボーナスが付きます。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしております!
第1章 ボス戦
『椿』
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POW : 傀儡の骸
自身の身長の2倍の【骸骨の巨人】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : コンバートゴースト
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【ゾンビやスケルトン】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : ネクロマンス
【レベル×1体の武将】の霊を召喚する。これは【槍】や【剣】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:えな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠暁・碧」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セルマ・エンフィールド
……どの世界にもこういった輩は尽きませんね。
『忍び足』で樹海を進み、単身で行動している亡者を見つけたら敢えて発見された後で「フィンブルヴェト」で撃ち倒します。
亡者がこちらを発見したということは椿もこちらを発見したということ。森の奥からの僅かな『殺気』を『第六感』で感じ取り、そちらへ向かいます。
椿を発見したなら【絶対氷域】を発動、周囲の亡者もろとも凍り付かせます。
骨だけになっても操ることができるようですし、多少死体が損壊してもネクロマンシーは可能なのでしょうが……凍り付き、物理的に動けなくなればどうしようもないでしょう。
凍り付き、動けなくなったところで「フィンブルヴェト」で椿を撃ち抜きます。
月代・十六夜
【韋駄天足】の【ジャンプ】で木々を足場に跳躍を繰り返すことで高速移動。これで邪魔もクソもねぇな、飛び道具が足りないぜ!
相手の配置を【視力】で【情報収集】すれば、儀式場の位置も逆算できるだろ。目指すは一番乗りってな。
見つけたら浄化の結晶を投げて周囲への牽制にしながら【ルアーリング】の要領でゾンビの頭の上に着地。
あとは相手の動きを【視力】で、周囲の状況やこっちに飛んでくる攻撃を【聞き耳】【野生の勘】で【見切っ】て【時間稼ぎ】に徹する。
巨人も相手の動きをトレースしてるだけだしな。
こっちから注意を外すようならその機を逃さず【鍵のかかった箱チェック】で仔竜は奪わせてもらうぜ、油断大敵ってな。
「……どの世界にもこういった輩は尽きませんね。」
昼なお暗く翳る森の中、セルマ・エンフィールドは足音を殺して進みながら独り言ちた。森に立ち入ればすぐに分かる死臭、探さずとも木々の間に見える亡者の群れ。死してなお現世に繋ぎ止められている亡者の1体を視界に捉え、セルマは周囲を確認する。
「近くに他の亡者は居ないようですね。」
少なくとも、すぐに囲まれる事はないだろう。そう判断し、セルマは隠れていた茂みからその亡者の前に出る。音に反応したように亡者が顔を向けた時には、セルマは愛用の銃、フィンブルヴェトを構えていた。一拍の間、亡者の視線の奥から異質な意識が絡みつくのを感じ、セルマはフィンブルヴェトで亡者を撃った。見つかった以上は他の亡者も集まってくるだろう。亡者を通して自分を捉えただろう視線はまだ感じている。
「殺気、とは少し違いますか……」
戦って勝つというよりは弄んで狩るという趣か。亡者に囲まれる前に、自分に向けられる視線を辿るようにセルマは駆けだした。
同じ頃、月代・十六夜もまた樹海を疾駆していた。セルマが身を隠しながら茂みを移動していたのに対し、十六夜は樹の枝から枝へと【韋駄天足(イダテンソク)】による跳躍を繰り返し高速で移動をしている。下には多数の亡者が蠢いているが、十六夜の動きには付いて行けていない。
「これで邪魔もクソもねぇな、飛び道具が足りないぜ!」
十六夜の駆ける高さまで届く攻撃手段は亡者は持っていないようで、時折樹の上から降ってくる亡者に気を付けていれば他に障害はない。さりとて広い樹海の中、ただ闇雲に走り回ったとて鬼を見つける事は難しいだろうとは十六夜自身も分かっていた。
「この群れようだと……こっちか。」
故に相手の配置を逆手に取り、儀式場の位置を逆算していた。実際には守る為の布陣などしていなかった為、亡者の密度や反応を見てネクロマンシーをかけている術者の位置を特定する事になったが。ただ亡者を徘徊させ、見つけた獲物に群がる様子には数で圧す以外の戦術は見えない。数を頼むしかないのか、遊んでいるのか……どちらにせよ、亡者の群れの集まり具合を見るに目指す場所は近くだろう。
「目指すは一番乗りってな。」
何度目かの跳躍、十六夜の視界が開けた。樹海に埋まるように広がる儀式場。太陽神に由来する祭壇と思われる様式であるにもかかわらず、陽光は天蓋の如く伸びて絡まる木々に阻まれている。何物かの巨大な骨が柱のように並び立つその儀式の場の中央に、ソレは居た。
「ふふ……そんな急かなくてもいいでしょうに。」
朱に染まる角持つ鬼の足元には、絨毯のように赤いモノが広がっている。血を滴らせ、未だ痙攣を繰り返すそれは翼の生えた爬虫類に見える。尤も、首元から尾の先まで開かれ、骨も肉も潰し広げられた姿では元の姿など想像するしかないが。
「悪趣味な事しやがる!」
十六夜は椿が行動を起こすより早く、浄化の結晶を投げて周囲に群れている亡者をけん制する。飛び掛かると見せかけて、動きの鈍ったゾンビの頭の上に着地。【ルアーリング】の要領でゾンビの動きを止めてまた跳躍した。
「面白い子ね。遊び甲斐があるわ。」
笑みを浮かべた椿が傍らのゾンビを掴み、十六夜へ投げつけた。迫るゾンビは十六夜に喰らい付かんと両腕を広げ――――横合いから放たれた冷気に巻き込まれて氷付き、落とされる。
「骨だけになっても操ることができるようですし、多少死体が損壊してもネクロマンシーは可能なのでしょうが……」
儀式場に到達したセルマは【絶対氷域(ゼッタイヒョウイキ)】を放ちながらゾンビやスケルトンを見る。中には元の欠損がひどい者も多く、それでも這ってでも迫る様子に改めて椿を視界に収めた。
「凍り付き、物理的に動けなくなればどうしようもないでしょう。」
再び放たれる【絶対氷域】を身を投げて阻む亡者。氷漬けの亡者を蹴倒しながら、十六夜は機会を伺っていた。今は亡者を通して全体を俯瞰している椿の意識がセルマの攻撃に向けば……その為には椿まであの冷気を届かせるのが良いか。ならば、と十六夜は周囲の亡者を蹴るように飛び回り、その十六夜を追おうと亡者の一角が開ける。
「今だ!」
「この領域では全てが凍り、停止する……逃がしません。」
セルマを中心に半径にして50mほど、一面が白く凍り付く。その凍てる絶対零度の冷気は今度は阻まれる事なく椿を捕えていた。その機を逃さず、セルマの構えるフィンブルヴェトが凍り付いた椿を撃ち抜く。砕かれた氷片の舞う中、吹き飛ばされた椿の口から血が吐き出された。
「あぁ、いたいいたい。ふふ……」
弾丸は確かに、椿の心臓を捉えていた。だというのに、この鬼はいまだ倒れずに嗤っている。その目に映るのは、セルマの姿。椿の意識がセルマに絞られた刹那、十六夜は伏したる仔竜へ手を延ばす。
「仔竜は奪わせてもらうぜ、油断大敵ってな。」
その手に握られた【鍵のかかった箱チェック】に触れた仔竜が吸い込まれ、消えた。そのまま跳躍して距離を取る十六夜を、困ったように見る椿。
「あら……また貰ってこないといけないわ。」
儀式の要を奪われ、自らも決して浅くない傷を負った椿はそれでもなお。艶然とした笑みを浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ゲンジロウ・ヨハンソン
○野良連携&アドリブ歓迎
目標は椿って亡者使いを倒せばいいんだよな?
…人海戦術といこうかのぅ。
○探索
亡者を見つけたら片っ端から、【選択したUC】で斉藤・カケルをぶつけて爆破して周り、
吹き飛び無力化するならそれでよし、もし生き残るなら一時的に友達になってくれると願おう。
お友達亡者には椿の捜索に回って貰うかね。
○椿戦
【傀儡の骸】や【コンバートゴースト】のソンビやらは難しそうじゃが、
武将の霊なら友達になれるかのぅ?【ネクロマンス】の発動を確認したら、
【クイックドロウ】で再び【選択したUC】を発射。
武将と友情結べたら打倒椿の旗のもと、よってたかって椿を殴る!
わしも装備したスコップ手に【怪力】で参戦じゃ。
月山・カムイ
探索、となるとまずは最低限度の当たりを付けてから、が好ましいでしょうね
この場合はまずは……追跡者を遣うとしますか
影の追跡者を召喚して、樹海の探索を行う
まずは自身は動かず追跡者の見つかり難いという性質を利用
亡者達の動きを観察させて、数が多い方向を確認していく
椿の姿を確認したら、逆方向へ移動させてそちらで追跡者による撹乱を行いながら、亡者の手薄な部分を一気に進んで椿に戦いを挑む
この時、他の猟兵とも情報共有を行う
椿と対峙した場合、戦闘目的として聖杯を狙う
儀式の内容から考えるに、聖杯さえ壊してしまえば儀式は止められるはず
椿に対して肉薄して、繰り出してくる下僕達の攻撃を掻い潜り
捨て身の一撃を叩き込む
亡者の気配がそこかしこからする樹海。ただでさえ来た道すら見失いそうになる樹の海に、無数の怨嗟が立ち込めている。そんな森へ踏み込み、ゲンジロウ・ヨハンソンは改めて為すべき事を口にした。
「目標は椿って亡者使いを倒せばいいんだよな? ……人海戦術といこうかのぅ。」
こう広くては一人では手が足りない。ならば、手伝う者を増やせばいい。単純な話ではあるが、亡者溢れる森の中で増やせる伝手など普通は在りはしない。そう、普通ならば。
「これだけ居りゃあ、見つけるのに手間はかからねぇな。」
探したりせずとも亡者や亡霊などその辺に居る。手近な亡者に向かい、ゲンジロウから何かが飛び出した。
三┌(┌( 'ω')┐ウヒョー!
その名は【忌わしき過去の盟約に喚ばれしモノ【斉藤・かける】(ウヒョーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)】。それは亡者にぶつかると諸共に爆散した。後に残るはネクロマンシーの呪縛を砕かれた魂。もはやこの地に留まる力も持たない存在が、その胸に理不尽に芽生えた熱き友情の絆が起こす衝動のままに森の奥をゲンジロウに指し示す。己を使役していた亡者使いとの繋がり、その源へと。
「椿は向こうかね。」
見える亡者亡霊に次々と呼び出した斉藤で爆破しながら、行く先を示してもらい進むゲンジロウ。その歩みは着実に、椿へと近付いていった。
一方で月山・カムイはまずは情報を集めようとしていた。
「探索、となるとまずは最低限度の当たりを付けてから、が好ましいでしょうね。」
カムイも無策に進むべきではないと判断し、亡者から身を隠すように目立たない場所へと身をひそめる。
「この場合はまずは……追跡者を遣うとしますか。」
カムイは【影の追跡者の召喚】により召喚した影の追跡者(シャドウチェイサー)を放つ。影から影へと渡るように移動する追跡者は、森に溢れるほどいる亡者の目にも止まる事無く、亡者の動き、配置の密度をつぶさに観察し、使役者の居場所を暴いていった。
「見つけましたか。あの位置ならば……」
ほどなくして追跡者と五感を共有しているカムイの目に鬼の姿が映る。後はそこまでのルートを作り、一気に突き進むだけだ。自分と椿を結ぶルートから亡者を移動させるべく、離れた場所で追跡者を亡者の前に飛び出させる。すぐに姿を隠す追跡者を探すべく亡者が移動していくのを確認し、カムイは作ったルートを他の猟兵に示すべく印をつけておく。見る者が見れば分かるだろう。特に、他の世界を知る者ならば。
「亡者の層が思ったより薄いですね。」
他にも、誰か来ているのかもしれない。森を駆けるカムイの耳に、遠くからの爆発音が聞こえてきていた。
その頃、ゲンジロウは亡者やら亡霊やらを爆破しながら進み、ついに椿へと辿り着いていた。使役している椿が近い影響からか、この近辺では爆破したら何も残らない事も多くなっている。
「あら、いらっしゃい。賑やかな人ね。」
招かれざる客人を迎えるように、椿は両の腕を広げた。その腹から溢れる血が着物を濡らしている。
「さすが亡者使いの近くじゃと数が多いのぅ。」
ゲンジロウの前を塞ぐように立ち上がる武将の霊。その只中へ斉藤が再び突っ込んでいった。
「また勝手に出てきおって! しゃぁねえ、斉藤! 好きに暴れろ!!」
爆発が収まった後、それでも残る霊にはたしかに友情の絆は結ばれていた。だがその意志ごと椿のネクロマンシーが縛っている。動きが鈍っただけでも良しとするか、そうゲンジロウが思い直してスコップを手に殴りかかろうとしたその時。森の間からカムイが椿目掛けて斬り込んだ。正確には、その後ろに置かれている聖杯を目掛けて。ゲンジロウへ注意を向けていた椿が反応するより早く、カムイの振った小太刀が聖杯を両断した。
「これで儀式は続けられないでしょう。」
カムイは駆け抜けて距離を取り、次は椿へと意識の切先を向ける。
「ええ、困ったわねぇ……他人のモノを壊すなんて。」
軽い口調で笑みと共に呟きをこぼした椿にカムイが走る。ゲンジロウもスコップで打ちかかるべく間合いを詰めた。挟撃されて尚、椿から笑みは消えない。椿の片腕がすぅと持ち上がると突如、地響きが鳴った。地面を突き破るように突き出されるのは巨大な白き腕。その骸骨の巨人の腕でゲンジロウの一撃を止め、カムイを武将の霊が迎え撃たんとする。
「あら……?」
その霊がネクロマンシーの呪縛に抗い、椿に向かい打ち掛かった。驚きに動きの止まる椿にゲンジロウのスコップが力任せに打ち付けられ、カムイの捨て身の一撃が椿の身体を深々と穿った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
加賀・琴
富士山の噴火、それが成されてしまえば大きな被害が出てしまいます
それに巫女として死者を弄ぶ相手は放置出来ません
この2つで彼女を祓い討つのに十分過ぎる理由になります
森で亡者に出会ったら大幣と神楽扇を持って【神楽舞・荒魂鎮め】で祈りを込めて祓い清めて解放し浄化します
その際、可能なら亡者を縛る呪詛から椿の位置を辿るか、昇天する魂に導いて貰います
椿を見つけた際に儀式の途中ならば矢を射って聖杯を弾き飛ばすか、あるいは椿の腕を狙うなどで儀式の邪魔をします
椿が従えてる霊や亡者達には【破魔幻想の矢】で180になる破魔の矢を放ち
骸骨の巨人に対して【破魔清浄の矢】を放ち、素早く次の矢を番えて2射目で椿本人を狙います
ヨナルデ・パズトーリ
『動物使い』で呼んだ『動物と話す』事で亡者の声や人間の骨等の目撃情報を集め敵の痕跡を『野生の勘』により『見切り』『追跡』
敵発見後は樹海という地理を活かし樹上で『暗殺』技能を活かし『目立たない』様に『迷彩』で気配を消し潜み隙を伺う
UC発動後すぐ空を駆け敵に肉薄
『怪力』の『なぎ払い』で白骨達に『先制攻撃』
子竜と分断し『救助活動』
『高速詠唱』での『呪詛』のこもった『全力魔法』を『範囲攻撃』で配下共にぶち込み道を開きつつ首魁に『怪力』の『鎧無視攻撃』
囲まれたら『呪詛』を込めた斧の『なぎ払い』
魂魄も命も、この童の物
貴様等にはやらぬ!
妾の前でケツァルコアトルと同じ名を持つ者を侮辱したのだ
消えよ跡形もなく!
樹海の奥へと踏み込むほどに濃くなる死の気配を感じ取り、加賀・琴はこの原因となっている鬼の居るだろう奥へと視線を飛ばす。
「富士山の噴火、それが成されてしまえば大きな被害が出てしまいます。
それに巫女として死者を弄ぶ相手は放置出来ません。」
見過ごせぬ事が2つ、琴が件の鬼『椿』を祓い討つのに十分過ぎる理由がある。大幣と神楽扇を手に、琴は亡者蔓延る森を進む。
そこからさほど離れていない樹の上で、ヨナルデ・パズトーリは気配を断って身を潜めていた。
「なるほど。先に行った者が道を付けている、か。」
ヨナルデが森の動物から聞いた情報を元に眼下へ視線を投げる。下を行く巫女姿の猟兵も辿る道は同じと見える。速やかに儀式場を目指すつもりのヨナルデは此処で合流する事も無いかと決め、枝を蹴った。
琴は頭上の気配が先へと跳んでいったのを感じ、意識を彷徨う亡者へと戻した。何度目かの【神楽舞・荒魂鎮め】で亡者をネクロマンシーから解き放つ。椿までの道中で遭遇する亡者もしっかりと解放し浄化しながら進んでいた琴がふと足を止めた。
「亡者の動きが鈍りましたね……」
それは先行した猟兵二人の攻撃を椿が受けたタイミングだった。ネクロマンシーの効力も弱まった今ならば。琴が大きく大幣と神楽扇を振り、祈りをのせた浄化の力を広げる。清浄なる気が吹き抜け、一帯の亡者を祓い清めて解放していった。次々と昇天してゆく魂に導かれるように、琴は先を急いだ。
亡者の勢いが弱まった事はヨナルデも感じ取っていた。ならば、今が好機か。暗殺を狙う時のように音も無く樹上を駆ける事しばし。ヨナルデの目に飛び込んできたのは胴を大きく裂かれた鬼。そして儀式場と思しき場に散らばる夥しい血と肉体の欠片。子竜は救い出された後だろう、だがこの場の惨状を見れば如何な仕打ちがされたかはヨナルデの目には一目瞭然だった。
「力を貸して貰うぞ! 妾と対なす者、戦友にして好敵手にして兄妹だった者!」
ヨナルデが【今は亡き対なす神の残り香(ナワールケツァルコアトル)】により姿を変えてゆく。鬼が手傷を負い、こちらに意識を向けていないならば躊躇う必要はない。
「神である事に囚われ壊れ妾が過去へと送った伴侶! 翼ある蛇よ!」
何より、鬼が子竜へした仕打ちを看過できようか。紡がれた呪文が終わり、ヨナルデの身体が鱗に覆われた。高速飛行形態へと姿を変え、翼を広げたヨナルデは空を翔けて椿に肉薄する。
「魂魄も命も、この童の物。貴様等にはやらぬ!」
行く手を阻む有象無象を呪詛を込めた魔法を叩き込んで纏めて吹き飛ばし、椿に黒曜石の戦斧を振う。自らの膂力の限りを乗せ、いかな防護をも断つその一撃は椿の肉を深々と裂いた。だが裂かれてゆく己になどかまわず、椿が振るった貫手をヨナルデが増加している反応速度をもって躱す。そのわずかな間に無理やり引き寄せるように椿の前に壁を為した亡者を斧でなぎ払い、ヨナルデは次の一撃を放つべく空に舞った。見る間に増えゆく亡者の群れ。いまだ笑みを崩さない椿も追い込まれているのか、あるいは全力で楽しむと決めたのか。ヨナルデが再び亡者をなぎ払おうと加速してゆくその眼前で、数多の矢が驟雨の如く降り注いだ。
「幾人の亡者を使役しようとも、すべて祓い清めましょう。」
椿を守るように群れる亡者を見た時、琴はすぐさま【破魔幻想の矢】を放った。ほぼすべてを一射で浄化し、昇天させた琴は続てけ矢をつがえる。守りがなくなった機を逃さず空を切り突き進むヨルデナに、椿は笑みを深くしながら大きく腕を振った。
「ふふ……さあ、存分に。すべて、すべて平らげましょう。」
儀式場を囲うように屹立していた巨大な骨が鳴動する。突き出ていた白骨の巨大な腕が地を掻くように振るわれる。土がもたげてもうもうと舞う中、起き上がったのは巨大な骸骨。血の珠を散らして舞う椿の動きそのままに、傀儡の骸はその巨躯でもってヨルナデを潰さんと襲い掛かった。その背後に琴が破魔の矢を放つ。
「如何な浄化の矢とて、この地すべての妄念を練り上げた骸には敵いますまい。」
骨に刺さったものの砕くまではいかないその矢に、椿が嗤った。だが、曙光の如き浄化の光がその視界を染める。
「遠つ御祖の神、御照覧ましませ。」
琴の放った【破魔清浄の矢(ハマセイジョウノヤ)】の破魔の光が収まらぬうちに、琴が次の矢をつがえる。清浄な力を受け悶える骸を斧の一振りで砕いたヨルデナが再び、椿へと肉薄した。
「妾の前でケツァルコアトルと同じ名を持つ者を侮辱したのだ。」
黒曜石の戦斧が呪詛の魔力を帯びて揺らめく。ヨルデナは己が猛りのままに斧を椿に叩きつけた。正面からヨルデナの斧を受け、背からは琴の【破魔清浄の矢】が放たれている。浄化と呪詛、異なる力に鬼の身体が砕けてゆく。
「消えよ跡形もなく!」
存在の根幹から砕かれ、その身を骸の海へと解かれながらも椿はなお笑っていた。
「ああ、残念。折角集めたのに……」
その言葉すら骸の海へと叩き返すようにヨルデナの斧が振り抜かれる。吹き荒れた力が収まった頃には、亡者の蔓延っていた樹海には死の気配は無く、儀式の場は完全に破壊されその機能を失っていた。
儀式を行っていた鬼『椿』を倒した事により、猟兵たちは霊峰富士の噴火を起こす儀式の一つを阻止したのだった。
大成功
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