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エンパイアウォー②~士屍累々、いざ勝負

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「スモトリとオスモウしてほしいのよ」
 グリモア猟兵の白鐘・耀は、あまりに突飛な一言で話を切り出した。
 もともと若干セインでないケのある女だが、暑さでやられたのだろうか。
「いやいやいや、狂ったわけじゃなくて! ほら、アレよ、エンパイア・ウォーよ!」
 然り。此度のサムライエンパイアにおける大戦争、その只中での戦いに関する予知なのだ。
 詳しく聞いてみれば、耀が話しているのは『奥羽地方の水晶屍人』のことらしい。
 現在、奥羽地方では、水晶が体から生えた奇妙な屍人が大量発生し、諸藩を苦しめているのだ。
「その屍人と、屍人を率いてるオブリビオンが、力士なわけよ。スモトリなのよ」
 やっぱりセインでないセリフだが、事実である。
 江戸に向けて南下するこの『水晶屍人』の群れは、なぜかほとんどが巨大な体躯の力士で構成されているのだ!
「水晶屍人に噛まれるとその被害者も水晶屍人になっちゃうんだけど、気がつくと力士みたいな体型になってるみたいなのよね……。
 多分これは、頭目の『信長お抱え力士衆』のせいだと思うわ」
 江戸めがけて南下する、大量の水晶力士……もとい水晶屍人。脇にはちゃんこ、踏みしめる足音は四股踏み。
 ギャグみたいな光景だが、万が一江戸に到達されては大変なことになってしまう!

「指揮官の力士さえなんとかすれば事態は収まるはずよ。
 ただ、屍人の数が多いから、それをどうやって退けるかが重要ね……」
 耀はシリアスな顔で考え込む。
「水晶屍人を惹きつけられるような何かがあれば……くっ、手がかりは力士であることぐらいだわ!」
 マジな顔で言っている。
「とにかく! なんとしてでもこいつらを食い止めて、この先の戦争で有利に立ち回れるようにしていきましょう!
 それじゃあはっけよい……じゃないわ、行ってらっしゃい!」
 どこからか取り出した軍配をしまい、いつものように火打ち石を叩いて猟兵を送り出す耀だった。
 ごっつぁんす!


唐揚げ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 唐揚げです。そんなわけで以下まとめ。

●目的
『信長お抱え力士衆』の撃破。

●備考
 現地には数百〜数千の『水晶屍人』がおり、指揮官の力士衆はその中に身を潜めている。
 水晶屍人も、なぜかお相撲さんみたいな感じになっている。
 水晶屍人を蹴散らしたり、指揮官を引き出すアイデアがあるとプレイングボーナス。

 という具合です。ごっつぁんす。
 なお、戦争シナリオであること、また現在当方の執筆環境が変化していることにより、普段より採用数を絞る予定です。
 その点ご理解の上、よろしければご参加お待ちしております。
 では皆さん、見合って見合って……ノコッタ!!
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第1章 ボス戦 『信長お抱え力士衆』

POW   :    正々堂々、行くぞ!
予め【四股を踏む】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    小手先の技など通じぬわ!
【巨体に見合わぬ軽快な動きで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    体一つでかかってこんか!
【怒号】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。

イラスト:ヤマトイヌル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●奥羽地方某所
「ドッソイ!」
「ドッソイ!」
「ドッソイ!」
「ゴッツァンス!」
「ゴッツァンス!」
「ゴッツァンス!」
「ヒカエオラー!」
「ドッソイオラー!」
「ドッソイオラー!」
 小脇にちゃんこ、頭には髷、腰には立派な大まわし。
 四股を踏み、うっちゃりをしながらすり足するスモトリ屍人の群れ! 悪い夢だ!!
だがこの数が数千となるとさすがにまずい。ここで止めねばならぬ!
「ハッキヨホ!」
「ハッキヨホ!」
「ダマラッシェー!」
 ……さっきから妙なスラングが混ざってるのはひょっとして指揮官なんだろうか?


 プレイング期限は適当なところで締め切ります。お早めに。
夏目・晴夜
ニッキーくん、私の代わりに体ひとつでかかって下さい

取組開始して組み合う瞬間、『死の抱擁』で敵UCを封じます
これで「体一つでかかってこい」という宣告も封じられ、
つまりは妖刀で【串刺し】し放題ですね!
今回はマジで敵側が引く位に【殺気】を込めて刺しまくります

ほら、次の相手は誰ですか?
誰も来ないなら指揮官が選んだ一人に来て頂くしかないですね


コソコソ隠れているチキン指揮官を引き出すのは難しそうなので
数千の水晶屍人を利用して引き出させようと思います

串刺し祭で敵側に【恐怖を与え】て動揺させる事で
屍人どもの視線が一斉に指揮官へと注がれるように仕向けたく

つまり串刺し祭は作戦上仕方なくなので誤解しないでください



●殺人鬼・ヴァーサス・スモトリ
 いやからくり人形だ。どう見てもシリアルキラーだが、からくり人形なのだ。
 屍人の行進……ぶつかり稽古、いや行軍?……の前に敢然と立ちはだかる、あの巨躯!
 母親の過保護なヒステリーのせいでなんかこうヤバげなメンタルに育ったシリアルキラーみたいな見た目の怪物(からくり人形)!
 その名は優しく可愛いニッキーくん!
 みんなでもう一度! 優しく! 可愛い! ニッキーくん!!
 おっとニッキーくん、なにやら腰を落として身構えたぞ!? はちきれんばかりの筋肉だ!
 あれはまさか……相撲!? ニッキーくん、まさかスモトリ相手にオスモウをするというのか!?
「ドッソイ!!」
 目の前で取り組みの構えをされて、黙っていられる屍人どもではない。
 フゴフゴと荒い息の屍人がすり足で前に出て、ニッキーくんの前で腰を落とす! 睨み合う両者……!!
「…………」
「……ハッキヨホッ!!」
 無言不動(人形だからね!)を貫くニッキーくんに痺れを切らし、スモトリが土を蹴立てて突っ込んだ!
 まるでバッファロー殺戮鉄道だ! ニッキーくん、アブナイ!
「ニッキーくん、どうぞ全力で抱きしめてあげてください」
 その時、ニッキーくんの目(あるのか?)がぎらりと輝いた! コワイ!!
「ドッソアバーッ!?」
 ナムアミダブツ! ニッキーくんに捕まったスモトリ屍人はそのまま……ミンチよりもひでえ!
「フゴーッ!?」
「ドッソイ!?」
「ナンオラアバーッ!?」
 突然のゴア風景にドン引きする屍人たち!
 脇腹からさっくり突き出されている刀!
近くにいた屍人をゴアるニッキーくん!
 血みどろの阿鼻叫喚! やっぱスプラッター映画だこれ!
「いけませんねぇ、せっかくニッキーくんが愛を込めて抱擁してくれたというのに。
 まあ私は御免なので、とりあえず串刺しになってもらいますね」
 次々に屍人を串刺し絶命させる黒幕はこいつだ……夏目・晴夜!!
 ニッキーくんを囮……もとい身代わり……もとい矢面……とにかくスモトリどもの相手をさせ、その間に死角から刺して刺して刺しまくるという鬼畜プレイ!
 スモトリ屍人どもは慄いた……このシリアルキラーめいた人形の凄まじい怪力……そして晴夜のダーティプレイと殺意、その全てに……!!
「さあニッキーくん、まだまだ後がつかえていますよ。
 その惜しみない愛で、チキン野郎にいいように利用されてる雑魚ブタどもをゴアりましょうね」
 ごうーん。ニッキーくん(血まみれで)大喜び!
 逃げ惑う屍人! ベアバッグ! ゴア! 串刺し! ゴア!!

 数分後、そこはブラドツェペシュもかくやの串刺し祭りになっていたという。
 ……やっぱり殺人鬼ですよねこれ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰炭・炎火
おすもう! あーしやったことない! 女人禁制言うし!
だからー、やってみたかったんよー、大丈夫、空は飛ばへんしニャメも置いてくから!

さー、でてこいどすこい! はっけよい! 水晶力士をやっつけろ!

つっぱり!(暴力)
おしだし!(暴力)
張り手!(暴力)
そんでもって……背負い投げ!(暴力)

……つまらーん! もっとやる気のある、つよーい力士はおらへんの?
女の子にぼっこぼこにされて恥ずかしくないの? 横綱の誇りはどこ行ったー!



●ヤツは素手でやってくる
 神事として由緒正しい歴史を持つ相撲は、古来から女人禁制とされてきた。
 もちろん屍人にゃそんなことは関係ないし、それを倒しに来た猟兵ともなれば、なおさらどうでもいい話である。
 とはいえ心震えるものはあるらしい。おかげでヤツは乗り気になっていた!
 え? 誰のことかって? あそこをちまちま歩いてるフェアリーを見よ!
「おすもう出来るなんて、戦争って何があるかわからんねー!」
 と不穏なくらいニッコニコ顔のあの妖精、ヤツの名は灰炭・炎火。
 えっ? 身長30cmにも満たないフェアリーが、一体どうやって相撲を取るのか……と、普通なら不思議に思うだろう。
 無理もない。だが炎火のパワーは常識も倫理も、あと約束事と法律も何もかも乗り越える……!!

 ちなみに前科のある彼女を止める声は当然あった(というか止める声しかなかった)のだが、出発前の当人曰く、
『大丈夫、空は飛ばへんしニャメも置いてくから!』
とのことである。不安だ。不安しかない。
 宣言通り超重斧は持っていないようだが、そういう話ではないぞ炎火よ!
 それ置いたって君の装備はPOW特化ばっかりだぞ炎火よ!!
「さー、あーしとおすもうしよ! でてこいどすこい、はっけよーい!」
 などとはしゃぐ(見た目は)可愛らしい少女フェアリーに、水晶力士……もといスモトリ屍人……正しくは水晶屍人たちも困惑気味だ。
「あれあれ? 誰も来おへんの? ならあーしからいっくよー!」
 形だけは相撲の取り組みっぽく腰を落とす炎火。
 力を込めた瞬間、地面が耐えきれずメキメキと音を立ててひび割れる。軋む! そして砕ける!!(特撮ヒーローのおもちゃCM風)
 バゴッッッ!! 地面が噴火したかのように爆ぜた! 脚力で!!
「ドッソイ!?」
「フゴゴッ!?」
「そーれ、つっぱりー!」
「ハッキヨアバーッ!?」
 パシュンッ(水晶屍人のへそから上が消失した音)
「おしだしー!」
「ドッソイグワーッ!?」
 ゴシャンッ!!(超高速で吹っ飛ばされた水晶屍人が地平線のお山に突き刺さった音)
「張り手!!」
「ハッ(パスッ)」
 断末魔すらなくバラバラに爆ぜて、水晶屍人は無に還った。
 ノリノリの炎火! 振るわれる暴力! 次々に消し飛ぶか砕け散る水晶屍人!
 さっきまでスモトリだったものが辺り一面に散らばっている……Oh GOD……!!

 そんなわけで誰もが予想した通りの惨状を、誰もが予想した通りに生み出したわけだが、炎火本人は不満げな顔である。
「……つまらん」
 ぽつり。
 そして近くにいた水晶屍人を背負い投げ(掴まれた時点で骨が粉砕骨折している)して、炎火は叫んだ!
 背負い投げされた屍人は、地面にめり込み動かなくなった。
「つまらーん! もっとやる気のある、つよーい力士はおらんの?
 女の子にボッコボコにされて恥ずかしくあらへんの! 横綱の誇りはどこ行ったドロップキーック!」
「ドッソアバーッ!?」
 KRAAASH!! また一人屍人が死んだ、この人でなし!
「あーしに負けて悔しくないのかモンゴリアンチョーップ!!」
「アバーッ!?」
「もう少し力士の意地見せてよ延髄斬りー!!」
「フゴゴーッ!?」
 相撲とは一体。誰もが疑問に思ったろうが誰も疑問を挟めなかった。
 そう……暴力は全てを解決し凌駕するものだからだ……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルエ・ツバキ
「鬱陶しい。」

くまのキグルミを来た長身の女(36)が腕を組み仁王立ちしながら呟く。

なぜくまか。それは相撲が強いからだ。カッパも良かった、しかし、くまの方が迫力がある。そして女はくまが好きだ。
だからくまのキグルミを着てきた。しかもスモトリ仕様で腰に金と書いたマワシをつけている。これはもう最強である。疑いようも無い。

ちなみに攻撃方法は手に持ったナイフだ。
お気に入りのくまで、きもいスモトリと取っ組むなんてもっての外だ。

「卑怯とは言うな。これも戦略の一つだ。」
横綱とか大物は避け、ひたすら小物を狙う。
私一人ではないし、雑魚を減らせばあとは他がやってくれるだろ。

「ところでお前ら、そのちゃんこ置いてけよ。」



●きっとその格好にはやんごとない事情があるはず
 くまがいた。
 クマではない、熊でもない、くまだ。
 ひらがなであることが重要なのだ。だってそのほうが可愛いし。
 そんなわけで、くま……の着ぐるみ(しかも何故かボロボロ)を着た、170cmを超えるタッパの女が立っていた。
 なお、この女、実年齢は36歳である。
 36歳の、170cmを超えるタッパの女が、ナイフ片手に腕組みしている。
 じわじわ照りつける陽光。地面には暑気が陽炎めいて揺らいでいる。
 向こうに回すのは無数のスモトリ屍人。悪い夢のような光景である。
 どっちが? どっちもじゃないかな!
「……鬱陶しい」
 その女……アルエ・ツバキは、ぽつりと呟いた。
 このクソ暑い中、500も1000もの太っちょ(しかもゾンビだ)が、徒党を組んでちゃんこ片手に行進する。
 なるほど鬱陶しい。いや自分の格好はどうなんだ? という疑問は些事である。少なくともアルエにとっては。
 余談だがこの女、ジョブは殺人鬼である。ナイフ持ったボロボロの着ぐるみはたしかにシリアルキラーっぽい。

 さておき、アルエはここに戦いに来たのだ。あのスモトリどもをぶっちらばしに来たのである。
 なので、くまの着ぐるみも特別スモトリ仕様に改造して持ってきたらしい。
 具体的にいうと、金と書いたまわしを巻いている。くまがまわし。これはもう最強と言っていい。何もかも間違っている。
 そら、スモトリ屍人どももざわめいて困惑している。気圧されているのだ。
 いきなり目の前に現れた、ヤバげな着ぐるみ女(36歳)にヒいているわけでは、ない!!
「揃いも揃って、暑苦しい上にキモい屍人がぞろぞろと……」
 アルエは不機嫌そうに呟き、ぎらりとナイフを光らせた。
 は? 相撲? なぜそんなことをせねば?
 ……クマの着ぐるみとかまわしの意味は!? そもそもそれ金太郎では!?
 だが全ては些事である! ここは戦場なのだから!!(精一杯の戦場傭兵要素)
「全員くびり殺してやる、かかってこい」
 スモトリ屍人は目をそらした。はいバトル開始! アルエは風になった!!

 ……生き残るためならば、アルエはどんなことでもするだろう。
 泥をすすることも、土を食むことも、味方を裏切ることすら惜しむまい。
 そうでもしなければ生き延びることはできない、それが無慈悲で過酷な戦場なのだ。
 そしてここはいままさに、鉄火場。ほらもうあっちとかこっちでゴアってるし。
「卑怯とは言うな、これも戦略の一つだ」
 アルエはそう言いながら、スモトリ屍人をぐっさぐっさ刺し殺して斬り殺す。
 取り組みはしない。オキニの着ぐるみが汚れたら台無しだし、暑いし、相撲とかよくわからんし。
「はっけよいのこ るわけがないだろうバカめ」
「ドッソイーッ!?」
 まわしに騙されたスモトリの脇腹グサー!!
「フンフンフンフンッ!」
「足元がガラ空きだ。相撲の基本がなってないな」
 つっぱりで襲いかかってくる屍人の足をグサー!!
「アイエエエ!」
「戦場で背中を見せるなど愚か者め」
 この女やべえと思って逃げる屍人の背中をグサー!!
「だいたい、屍人がなぜ相撲土地の格好などする。理解不能だ」
 えっ、それはギャグですか!? みたいな台詞を、アルエは真顔で吐く。
 9倍の速度で振るわれるナイフの前には、わざわざ小物を選んでいるだけあって屍人どもも為すすべがない!
「所詮死に損ないではこの程度か」
 血を払い、アルエは呆れた様子で頭を振る。
 そして屍人の成れの果てに近づき……おお、一体何をするというのか……!?
「……これはいただいていく」
 むんず。ちゃんこ鍋を持ち上げるアルエ。
 ぎらり。生き残りに向けられる鋭い殺気……!!
「お前たちも……ちゃんこ置いてけよ。なあ、おい、ちゃんこ置いてけよ……!!」
 くまの着ぐるみの双眸が、食欲と殺意にギラギラ輝く。
 ……どっちが怪物かわかんねえなこれ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

古峨・小鉄
ユキちゃん(らいおん)、ここはヘン・シンッじゃ!(シャキーン☆と腕を構え
(すたこらさとユキちゃん(♂)と自分に褌(まわし)を締め、頭に髷カツラ被る
(ユキちゃんも被る
(2人とも耳は出す
(猛攻相撲取り「合体!」(騎乗しただけ
相撲の始祖・野見宿祢神その他いろいろ神々(←雑)の眷属・西の白虎神の如く(単に白いトラなだけ)
戦場を土俵と呼ぶなら、四股も踏むじゃ(ユキちゃんが
ふんす! いくどー!(ユキちゃんが

デカイ奴らの横からの速攻撃は躱し(以下略
縦一直線の障害は体当たりし他の人の為に道開くじゃ(略
「ホネハヒロッチャルケェ!」
むぅ。ちょい長いかの

指揮官のスラング、注意深く聞く
見つけたら皆に知らせたろ
あれじゃ


リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎

天下が騒乱、繚乱するなら、ボクらが平定の助けとならん!
ごっつあんです!
スモウレスラーが相手か! しかもヨコズナ!!

ボクに出来そうなのは、指揮官を誘い出すくらいかな!
UC【我は満たす、ダグザの大釜】使用!

取り出すのは…ちゃんこ。

エンパイア、薩摩黒豚の豚骨と尾張の鶏ガラでとったダシを使い、
仙台味噌で味付けした、味噌ベース。
ボクが集めた各地の新鮮な海老、白身魚、餅を追加投入。

「名付けて、エンパイアちゃんこ。沢山あるから遠慮しないで食べてって!」

水晶力士は、水晶を「部位破壊攻撃」で徹甲弾で射撃。

指揮官が誘い出せたら、「呪殺弾」「誘導弾」で
追尾弾射撃!

「留まっている内に攻撃だ!」


四葉原・栞
「このかすかに聞こえる独特な相撲弁… まさか頭目は奥羽益荒男猛衆…!?」
奥羽益荒男猛衆(おううますらおもうしゅう)
かつて奥羽地方を荒らしまわった伝説的武道家集団。
武器を持たず、鍛え上げられた巨躯とまわし一つで驚異的な強さを誇ったという。
奥羽地方に伝わるきりたんぽの形は、彼らのシンボルである丁髷からあやかったというのは有名な話。
「略されておすもうと呼ばれるようになったと言われてるっす!」
なんでこのきりたんぽ入りちゃんこ鍋があれば信長お抱え力士衆を誘導できるはず。絶対食いついてきます。
UC物の本によるとを使用。すごい世界知識!
急に出てきた知らない奴の解説を聞いてくれる人がいたら嬉しいっすね。



●天下騒乱、綾錦!
「ドッソイオラー!」
「ハッキヨホ!」
「ノコタノコータ!」
 ずしん、ずしん、ずしん!
 見ているだけで暑苦しくて嫌になってくるレベルの水晶屍人feat.スモトリ、その数は留まるところを知らない!
 すでにいくつもの村や砦を陥落させ、哀れな犠牲者たちを(スモトリの)屍人に変えてしまっているからだ……!
「天下が繚乱するとき、ボクら猟兵が平定の助けにならん!
 ……と、意気込んだはいいものの、これはものすごい数だなあ」
 転移を終えたばかりのバーチャルキャラクター、リア・ファルは、うんざりした様子で頭を振った。
 銀河戦艦『ティル・ナ・ノーグ』のヒューマンインタフェースである彼女は、一瞬にして多彩な演算を行い、次元を超えて干渉することが出来る。
 その気になればユーベルコードによって、本体であるティル・ナ・ノーグを一時的に召喚し、辺り一面吹っ飛ばすことも不可能ではない。
 では、なぜそうしないのか。正しくは、それでもキリがないほどに敵の数が膨れ上がっているから断念したのだ。
「それにしても、あのどっそいどっそい言ってるのはなんなんだろう……?」
「知らないんっすか!? 力士が扱う特殊な相撲弁、またの名をスモトリスラングを!!」
「うひゃあっ!?」
 突然大きな声をかけられて驚くリア。見れば、声の主は大きな丸メガネをかけた少女である。
 年頃はリアの(外見)年齢と、そう遠くなさそうだ。
「え、えっと……ごめん、相撲弁ってなんなのかな……?」
「読んで字のごとく、スモトリあるいは力士と呼ばれる存在が扱う特殊な言語のことっすよ!」
 若干ヒき気味のリアに、メガネの少女──四葉原・栞は、なぜかぐっと握り拳を作りつつ力説した。
 よく見れば、なにやら大きな書物を、まるでランドセルのように背負っている。手にはそれとはまた別の本。表紙には『よくわかるスモトリ』と書いてあった。どこで手に入れたんだ。
「そしておそらく、あの特徴的な相撲弁、もといスモトリスラングを使っているのが指揮官っす!」
「そ、そうなんだ? ボクにはいまいち区別がつかないけど……」
「けれどそうだとするとまさか……頭目は、あの奥羽益荒男猛衆!?」
「なんかまた新しい語彙が出てきたんだけど!?」
 なんもかんも、リアの聞いたことのないワードばかりである。スペースシップワールド出身だからなのか? そうなのか?
「なにぃ、奥羽益荒男猛衆じゃとぅ!?」
 するとそこへ、新たに髪の白い小さな男の子が割り込んできた。
 よく見ると、白虎めいた獣の耳と尻尾がひょこっと顔を覗かせている。どうやらキマイラのようだ。
「えっ、誰!? ていうか、知ってるの!?」
「いや、知らん! ちなみに俺は古峨・小鉄というもんじゃ!」
 少年……もとい小鉄は、リアの言葉にあっけらかんと答えた。
 いや知らないんかい! と思わずツッコミを入れたくなるリアだが、ここはぐっと我慢の子でこらえる。
 かたや自分より年下らしい眼鏡っ娘(実はヤドリガミ)と、明らかに低年齢の少年(言うまでもないが少々おばか)。
 どう見ても自分が最年長、かつしっかりしなければいけない常識人のポジションである。流されるな……!!

「というわけで、そのおうう……なんとかは一体なんなんじゃ!?」
「奥羽益荒男猛衆(おううますらおもうしゅう)っす!
 それはかつて、奥羽地方を荒らしに荒らし回ったという、伝説的な武道家集団のことなんす!!」
「でんせつてきぶどうかしゅーだん……!!」
 男の子の琴線をくすぐるワードに、小鉄は目をキラッキラさせて尻尾を振る。
 だが栞はあくまでも真剣な表情である。持ってるのはコンビニで売ってそうな安っぽいトンデモ本だが!
「奥羽益荒男猛衆は武器一つ持たず、鍛え上げられた体躯にまわしひとつで脅威的な強さを誇ったというっす」
「ふんふん! それでそれで!?(鼻息荒く目を輝かせる小鉄)」
「奥羽地方に伝わるきりたんぽは、彼らのトレードマークである丁髷からあやかったというのは有名な話っす!
 そしてお相撲とは……奥羽益荒男猛衆が縮まった名前だったんすよ!!!!!」
「「な、なんだ(じゃ)ってー!?」」
 衝撃のスモトリ真実に、リアと小鉄はミステリーサーチな感じの顔で驚いた!
「ふっ、これもまた知られざる真実なんですよ……」
 なぜかドヤ顔でちゃきっとメガネをかけ直す栞。
「……で、それが今回の戦いにどう役立つのかな?」
「そうじゃな! 水晶屍人の弱点とかはわからんのか!?」
 リアと小鉄はきわめて妥当な質問をした。

 ……静寂。

「……一体何度私たちの前に立ちはだかるんすか、織田信長……!!」
「特に有用な情報はないんだね」
「役に立たんのじゃなー」
 ボッコボコであった。

 とかなんとか言っている間に、すり足でつっぱりをしながら屍人軍団がすぐそこまで迫っている!
「くっ、こうなったら迎え撃つしかないよ!」
「俺とユキちゃん(小鉄の相棒であるライオン)が頑張るのじゃ!」
「ま、待ってほしいっす! アイデア! アイデアちゃんとあるっすよ!!」
 完全に栞の存在をなかったことにして身構えるふたりは、やや呆れた顔で彼女を見た。
 栞は背負っていた四つ葉の書──彼女の本体であるしおりを媒介に、様々な書物の知識を蓄えるアイテム──を手に、ゴクリと唾を飲む。
「きりたんぽっす」
「「はあ」」
「きりたんぽのちゃんこを使えば指揮官をおびき出せるはずです!!!!」
「「…………」」
 リアと小鉄はしばし顔を見合わせる。
「仕方ない、ならやってみるとしようか!」
「うむ! 俺はどのみちユキちゃん(ライオン)と一緒に戦うのじゃ!」
 栞は許された。いやここで成果がなければ元の木阿弥だが。
 ひとまず小鉄は相棒のオスライオンを呼び出すと、なにやらヒーローっぽいポーズを取った!
「ヘン・シン! じゃっ!!」
 そしてせっせと(小鉄もライオンも)マゲを装備し、まわしを締める。
 ふたりしてスモトリルックになったユキちゃん(ライオン)の背に、颯爽とまたがる小鉄!
「合体! 猛虎相撲取り、出陣じゃー!!」
「「コスプレしただけだこれー!?」」
 大丈夫なのかこれと不安な表情になる女性陣をよそに、小鉄はふんすと気合十分!
 そんな小鉄を背に乗せ、ユキちゃん(ライオン)が器用に四股を踏む!
「相撲の始祖・野見宿祢神と、あとなんかいろんな神々……の眷属たる西の白虎神の加護がある俺とユキちゃんならば!」
「そんな力を持ってたんすか!?」
「どう見ても適当なこと言ってる上に色々雑だよこれ!」
「さあ行くどーユキちゃん! ここが俺たちの千秋楽じゃーっ!!」
「「しかも戦うのライオンのほうだこれ!?」」
 ずどどどど! ツッコミを背に小鉄(を背負ったユキちゃん)はスモトリ屍人に突き進む!
 野生・ヴァーサス・大銀杏……ここに異種格闘技の新たな一ページが……!!

「さて、肝心のちゃんこ鍋を準備しないとね!」
「実は私、こんなこともあろうかときりたんぽちゃんこ鍋を持参してるっす」
「あるんだ!? けどせっかくならもっと贅沢にしないとね!」
 パチン! とリアが指を鳴らすと、どこからともなくいい香りが。
 何を隠そう、彼女はECサイトを契約するビジネスワーカーでもあるのだ!
「エンパイアは薩摩黒豚と、尾張鶏ガラでとった濃厚なダシ!」
「さ、さらに仙台味噌まで追加するんすか!?」
「それだけじゃないよ、ボクが各地で集めた新鮮な海老、白身魚、お餅も大量投入さっ!」
「おおおおおお、こ、これは……っ!!」
 栞の持ってきたちゃんこ鍋が、神々しい光を放つ!
「名付けてエンパイアちゃんこ、フィーチャリングきりたんぽの完成だよ!」
「お、美味しそうっす! ちょっとだけ食べてもいいっすか? いやいいですか!?」
「もちろん大量準備済みさ、さあ屍人も猟兵もどんどんおいでー!」
 次々異空間から出てくるきりたんぽちゃんこ鍋の匂いに惹かれ、スモトリ屍人たちの軌道が変わった!
「!! 聞こえたのじゃ、あそこじゃぞー!」
 耳をそばだてていた小鉄が、まんまと誘い出されてきた指揮官を示す!
「かかったね、さあ総攻撃開始だよ! さあキミも!
「あ、私解説役が主なんで攻撃とか無理です」
「なんでここにきたんだいーっ!?」
 数多のビームが乱舞する中、リアの渾身のツッコミが響き渡った……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンディ・ワークス
門くん(f20963)と一緒だ。
自由に動かしてくれたまえ。

フォア・レッド・シューズで水晶屍人の動きを封じて道を開こう

スモートリと言うらしいね!私は始めてみたよ。
門くんも恰幅は良い方だが、相撲をとらないのかな?
成る程趣味に合わないと言うことかな。

みみっちくなどないさ、大切なことだ。

【早業】の【アート】で赤布を振り撒きながら駆けるよ。

お役に立てているなら何よりだ。さて、指揮官を探すのも言いが、来てもらうというのもありかな?
廻しでも織ってみようか?

おっと、君がそうかな?

指揮官にも同じく布【属性攻撃】。【盾受け】で【庇い】被害をそらしていくよ。


巫代居・門
アンディf17527、と同行。
転移の直前に初対面。

うん、うん。なるほどな?
いや……うるせえし、暑いわ……
はあ、他の場所に行けばよかったか?

UC禍羽牙で先に偵察。
【破魔】と【呪詛】を乗せた薙刀、忌縫爪に働いてもらって、変な言葉叫んでる奴に突き進む。
まあ殺到されると潰されちまうからあまり【目立たない】ように、だが。みみっちいが、潰れるよかマシだろ。

俺もあんたも戦闘苦手な部類だろ。拘束助かってるよ、これでもな。

受けた攻撃は【呪詛】で【カウンター】
ルールは、無視しなけりゃ進めねえなら【呪詛耐性】で無理やり突破してやる。

……なんだ、四股でも踏んでやれば良いってか?案外冗談好きなんだな、あんた

アドリブ歓迎



●テレビウム紳士と青年巫女、スモトリと相対す
「……うるせえし、暑い」
「なるほど、これがスモートリというものか! 私は初めて見たよ」
「いや、これを相撲取りだと思ってほしくねえな……」
「ふうむ、サムライエンパイアの文化とは実に不思議なものだね」
 やや素っ頓狂な会話をしつつ、新たに転移されてきたふたりの猟兵。
 かたやテレビウムだが、カバン型のガジェットを持ちそのふるまいは紳士めいている。
 一方の薙刀を持つ青年は、そんなテレビウムの言葉にやれやれといった様子だ。
 ふたりの名を、テレビウムのほうはアンディ・ワークス、青年は巫代居・門と言った。
 つい今しがた――つまり転移前のグリモアベースで――初めて顔合わせをして、偶然から同時に転移したのだ。
 が、この状況そのものに辟易としている門と、何もかもに興味津々のアンディは、ある意味で好対照で噛み合っている。
「ところで門くんも恰幅のいいほうだが、相撲はとらないのかね?」
「取るわけないだろ! そもそも、こんな奴らと一緒にされたくないんだが……」
「なるほど、つまり趣味に合わない……ということだね?」
「ああ、ああ、もうそれでいいよ。あんたが話を聞かないタイプなのはよくわかった」
 といった具合である。門は何度目かのため息をついた。
 こんなふざけた戦場だとは――多少覚悟したとはいえ完全に予想を上回っている――思わなかった。
 いっそ、今すぐにでも帰って、別の戦場に向かったほうがよほどマシではないのだろうか?
「「「ドッソイ!!」」」
 そうは問屋がおろさない。きりたんぽちゃんこ鍋に誘われた無数の水晶屍人がいるからだ!!

 え? きりたんぽちゃんこ鍋ってなんなのかって?
 それは、彼らが転移される前に、ある猟兵たちが施した大胆な策である。
 奥羽地方といえばきりたんぽ。
 スモトリといえばちゃんこ鍋。
 それが合わさった結果、見事に水晶屍人どもをおびき出すことに成功したのだ!
「頭目はあそこか? けど数が多すぎて近づけないな……」
 屍人たちの影をよく見れば、なにやら禍々しい小魚の群れが"影の中を"泳いでいる。
 それが、門の使役するUDC――"禍羽(かげわに)牙"のフォルムである。
 門が示す先には、なるほど確かに水晶の生えていないスモトリがいる。
 あれが屍人たちを指揮する、信長お抱え力士衆なのだ!
「こうなっては隠密行動とはいかないね、私の出番かな!」
 アンディはカバン型のガジェットから、なにやら赤い布や糸を生成する。
 それらは生き物のようにうねりながら戦場を縦横無尽に駆け巡り、張り巡らされ、そして水晶屍人の四肢に巻き付く!
「ドッソイ!?」
「フゴゴーッ!?」
 なんたる強靭さ! たかが糸、たかが布のはずなのに、スモトリ屍人の膂力ですらそれらは引きちぎれない!
 たちばち、門とアンディを包囲しようとしていた屍人たちは、身動き取れない蜘蛛の巣の獲物めいて動きを封じられた!
「これが私のユーベルコード、"フォア・レッド・シューズ"だ。なかなかお洒落だろう?」
「大したもんだ。俺は正直、戦闘が苦手なんでね。この数相手じゃ、いくら相手が雑魚でも押し潰されちまう」
「相手は重量級だしね。私ではサイズ的にも抗いようがない」
「そういう話じゃ……まあいいか。とにかく助かってるよ、これでも感謝してるさ!」
「お役に立ったならなによりだ。では、先へ進むとしよう」
 レッドカーペットめいて開かれた道を、アンディと門はさっそうと進む。
 必要以上に屍人の注意を惹くことのないように、あくまで息を潜めて迅速に、だ。
「みみっちいかもしれないが――」
「みみっちい? とんでもない、戦う上で重要なことだよ」
 門の何気ないつぶやきに、アンディは紳士的に言って、笑顔を画面に浮かべてみせる。
 門はふんと鼻を鳴らすだけで、彼の方を見はしなかった。どことなく、照れているようにも見える。
 出会ったばかりにしては、やはり凸凹で、しかし相性のいいふたりである!

『チェラッコラー!! 猟兵相手になるぞッコラー!!』
 コワイ! 好戦的なスモトリスラング(スモトリだけが使う特殊なスラング、またはそのさま)で威嚇する指揮官!
『体ひとつでかかってこいテメッコラー!! ワドルナッケンナグラー!!』
「……あれ、なんて言ってんだ?」
「さあ? サムライエンパイアの方言か何かなのでは?」
「そんなわけあるかよ……」
 UDCアース出身の門とて、これがなにかおかしいことはわかる。
 とにかくその訳のわからない物言いはさておき、相手が武器を捨ててかかってこい、とルールを課してきたのはわかる。
 とんでもない。武器なくして、不得手なこの身がオブリビオンに抗えるわけもない!
「忌縫爪、悪いが力を借りるぞ。呪いのたぐいならお前の得意分野だろ」
 手に持つ薙刀が、門の言葉に応えるかのように不穏にわなないた。
 そして門の尾てい骨のあたりから、のたうつトカゲの尾めいて異物が生える!
『ザッケンナ グワーッ!?』
 巨体に見合わぬ動きで薙刀の一撃を避けようとした指揮官がたたらを踏む!
 見よ、足元に絡みつく赤い布! アンディが抜け目なく放った拘束具だ!
「大銀杏をお望みならまわしでも織ってみせようか? 必要はなさそうだがね!」
「ふざけた野郎が、一発食らっとけ……!」
 呪いのダメージを怪異の再生で中和しながら、門の振るった薙刀が……力士の体を、切り裂いた!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宮入・マイ
のこったのこったっス!
前の屍人は痩せてたのに今回は太ってるっス~、面白いっス!

まずはこの力士達をなんとかしないとっスね~。
とりあえず【ロイコちゃん】一口プレゼントっス、味方が敵に見える幻覚を見せるっス!
こうすれば確か…ねずみダルマ式?に増えていくっス!
この前学んだっス!
そのうち増えた寄生力士達に喝をいれるやつが出てくるはずっス!
発見したら直行っス~?

さぁ正々堂々勝負っス!
相手の土俵の上で戦うっス!
え?土俵は女人禁制っス?
じゃあ土俵ぶっ壊すっス。
【友情の混合】で呼び出した強化【アーちゃん】を土俵にこっそり忍ばせて四股踏みしたら沈んじゃうようにするっス!
寄生虫のプール送りっス!

きゃっきゃ。


アンコ・パッフェルベル
エンパイア相撲、夏場所は奥羽地方よりお送りしておりますです。
実況はわたくしアンコ。解説は地の文さん…とか言ってる場合ではないようで。
ユベコで金毛吼を呼び出し騎乗、紫金鈴も受領です。
準備が出来たら敵集団を遠巻きに私の自在鞭、吼の火炎放射で攻撃しながらスモトリ達の言葉を聴くです。
事前情報と照らし合わせれば指揮官はニンジャ達のスラングを用いるです。アイサツしていざ勝負っ。
しかしそのままでは攻撃が当たらずジリー・プアー。
【学習力】…赤光刃と盾で攻撃を捌きつつ回避動作を学び、わざと鞭を避けさせてから【早業】!
紫金鈴第三の鈴が放つのは砂塵!
目が潰れるか怯んだら第一の鈴と吼のダブル火炎放射をおみまいです。


九条・真昼
おおー、この光景B級ホラー映画っぽくね!?
俺嫌いじゃないよー、こういうの。

相手は力士だろ?
ならやっぱり欲するのは土俵だと思うんだよ、あと行司。
まず念動力で土盛って即席の土俵作成。
催眠と演技で行司の振りして屍人同士で相撲とらせてどんどん数減らせねーかなって。
調子乗って下っ端片してたら司令官も出てきそうじゃん?
そしたら俺も土俵入りしてやるよ。
相撲取りの作法に則って塵手水……素手で正々堂々やろうやってアピール。
ぶつかられる前にこっちから突っ込んで相手と接触したらサイキックブラスト。
「お望み通り体一つでお相手してやったが、満足かい?」
ニヤニヤ笑って相手を見下ろし。

B級ホラーらしく滑稽に終わらせようぜ。



●土俵の下には魔物が棲むの
 見渡す限り無数の(水晶が生えたスモトリの)ゾンビ!
 目指す先は江戸! このままでは阿鼻叫喚の地獄が待ち受けている!
 ゾンビどもは(ちゃんこ鍋を食べながら)飢えに突き動かされ生者を求める……!!
「おおー、この光景B級ホラー映画っぽ……いやぽいか?」
 ノリノリだった九条・真昼のテンションは、割と一瞬で乱高下した。
 だってスモトリ。しかも小脇に抱えているのはちゃんこ鍋である。
 B級ホラーというより、これでは和製の低予算トンデモビデオシネマではなかろうか。
「……いやでもチープって意味ではだいたい同じだよな! ならよし!」
 それはそれで嫌いじゃないらしい。真昼は割と物好きのようだ。
 ともあれゴシップ好きのサイキッカーは、なんやかやノリノリで屍人どもを蹴散らそうとする、のだが!
「そーれロイコちゃんを一口プレゼントっスー!」
「ゲェーッ!?」
 そこで視界に入ってきたのは、捕まえたスモトリ屍人の口の中におぞましい寄生虫を流し込む美女の姿であった! コワイ!
 ホラーはホラーでも完全にジャンルが違う! なんだあれ!? 新手のオブリビオンか!?
「あ、そこの人もいるッス? ロイコちゃん! 完全に合法で幻覚が見れるっスよ!」
「いやいらないよ! なんでナチュラルに寄生虫を危ないクスリみたいな感じで勧めてんの!?」
 ビシッとツッコミを入れつつ、真昼は思う。
 おかしい、自分はこんなツッコミを入れるようなキャラじゃないはず。なんなんだこの女。
「そっスかー、まあ仕方ないっスね! じゃあそのぶんをも一つ多めにスモトリにプレゼントっス」
「フゴゴゴーッ!?」
 ナムアミダブツ……バイオモンスターのパワーで拘束されるスモトリ屍人に逃れることはできない!
 ところで、そんな寄生虫レディ……もとい、自称キマイラの女の名は、宮入・マイという。
 見た目は麗しい、しかしややぶっ飛んだ女だ。そしてその実態はものすごくおぞましい。
「ちゃんこにスモトリに寄生虫が入り乱れるエンパイア相撲夏場所、奥羽地方よりお送りしておりますです。
 実況はわたくしアンコ・パッフェルベル。さっそくスモトリ屍人が悶え苦しんでいますですねー、阿鼻叫喚」
 存在しないはずのカメラをガン見しながら、虚空に向かって実況(?)をしているアンコ。
 そんな第三の猟兵を見て、真昼はまた思った。もしかすると自分、とんでもないタイミングに転移されたんじゃないかと。
「ところでそこのあなた、下がらないと危ないですよ」
「え? うおっ!?」
 アンコの言葉にぽかんとしていた真昼は、突然のスモトリ・アンブッシュにあわてて飛び退いた!
 油断ならぬ敵の攻撃か? 否、つっぱりチャージするスモトリの狙いは真昼ではない!
「ドッソイアバーッ!?」
「グワーッ!?」
「……なんで同時討ちしてんだ、あれ」
「さっきの寄生虫の効果だと思いますです。幻覚を見ているせいではないかと」
 冷静なアンコの推測は正しい。味方のはずの屍人に突進を仕掛けたのは、マイの体の一部であるロイコクロリディウム……もといロイコちゃんを寄生させられた個体だ。
 いまの寄生スモトリ屍人にとっては、敵が味方で味方が敵に見えているのだ。ナムアミダブツ!
「えげつねぇ~……あ、でも、なら同時討ちさせりゃ数を減らせるんじゃね?」
「あなたもなかなかえげつないと思いますです。まあ私は正々堂々と戦うとしますかね。吼来来!」
 きゃっきゃするマイをよそに、アンコはユーベルコードを使用し、獅子めいた獣を召喚する。
 この獣、名を金毛吼。古来より伝わる、恐るべき火吹きの霊獣そのものなのだ!
 獅子が口に銜えた鈴――これもまた中国に伝わる霊具、紫金鈴である――を受け取り、アンコはその背にまたがる。
 ひらりと空を飛び屍人の群れの頭上へ飛んでいった少女を見送り、真昼は思った。
「いや、やっぱこれ面白いタイミングに来れたな! ゴシップの種がどんどん増える!」
 なんやかや、彼もやっぱりネジの飛んだ猟兵だったのだ。

「……しかし、本当に数が多いのですね」
 空高く飛んだアンコは、眼下を見渡し改めて敵の数に言葉を失った。
 これほどの屍人が軍勢を構築するまでに、一体いくつの共同体が犠牲になったのか?
 犠牲者たちも浮かばれまい。その成れの果てがこのふざけたスモトリ屍人などでは……!
「ニンジャめいたスラングを使う指揮官は一体どこに……っと!」
「「「ドッソイドッソイドッソイ!!!」」」
 見よ! 空を舞うアンコを狙い、狡猾にもスモトリタワーを組んだ屍人が襲いかかる!
 スモトリタワーとは? スモトリの肩にスモトリが乗り、その肩にスモトリが乗ることで生み出される恐るべきタワーのことだ!
 組体操? そうとも言う! 屍人なので重みを感じず、その脅威度は実質百倍である!
「雑魚には用はないんですよ! イヤーッ!」
「「「グワーッ!!!」」」
 自在鞭トリックスターの一閃! タワーは総崩れし周囲のスモトリ屍人を巻き込んで崩落した!
 その瓦解を飲み込むように、味方のはずの屍人に襲いかかる……な、ナムアミダブツ! 目から触角をはやした屍人たち!
「うげえ……」
 さすがのアンコも閉口した。張本人である地上のマイはというともうノリノリだ!
「やったっス! 案の定ねずみダルマ式に増えたっスー!」
「それを言うならねずみ算か雪だるま式じゃん!? っと、はっけよい、構えて!」
 マイの隣でツッコミを入れる真昼も、なぜか相撲の行司めいたコスチュームに早変わりしている。
 寄生虫による幻覚と、味方が味方に襲いかかるという混乱、そして行司の掲げる軍配に本能的に従ってしまう屍人たち!
「見合って見合って~……ハッキヨホ!」
「「ドッソイーッ!!」」
 真昼の狙い通り、あちこちで屍人同士の取り組みが始まり、味方同士で潰し合ってしまっているのだ!
『テメッコラー!! ザッケンナコラー!!』
 浮足立つスモトリ屍人どもを張り手で一喝する力士! もしやあれが指揮官……!?
「お、さっそく出てきたな! よお大将、いっちょ俺と正々堂々やろうや!」
『ナンオラー? チェラッコラー!!』
 塵手水をしつつ挑発する真昼に、お抱え力士衆は青筋を浮かべながら相対する。
 ふたりが対峙するのは、真昼のサイキックによって生み出された即興の土俵……!
「生身ひとつでかかりゃあいいんだろう? さあ、はじめよう!」
『ドッソイオラー……ハッキヨホ!!』
 ドウッ! 地面を蹴り砕きながら突進を仕掛ける力士! 真昼の目が光る!
「いまがチャンスですかね……」
 それを上空から眺めていたアンコも、アンブッシュのチャンスにメガネを光らせた!
「おー、これがドヒョー・リングっスね! じゃ、ぶっ壊すっス」
「「ええええええええええ!?!?」」
 KRAAAAAASH!! マイの言葉とともに、即興の土俵が砕けて崩落した……!!

 一体何が起きたのか? 仕掛けはマイが忍ばせていた寄生虫による裏工作だ。
 彼女が"アーちゃん"と呼ぶ、物質をも溶解させる液状寄生虫が、土俵の真下に空洞を空けていたのだ!
「って俺も落ちるじゃんこれぇええええ!?」
「まったくシュラバ・インシデントとはこのことですね!」
 とっさにアンコは急降下し、落下しかけていた真昼をキャッチ!
 しぶとく自分たちを狙うスモトリ屍人どもを、紫金鈴から放つ砂塵の嵐で追い払った!
「っと、助かった! まったくとんでもないな、猟兵ってのは!」
「誰が敵だかわからないのですね……まあ、ともあれ」
 力士は落ちていく……寄生虫がうごめく地下のプールに!
『アイエエエエ!?』
「カラダニキヲツケテネ、ですよ」
「この雑な落下オチもB級ホラーっぽいな! ダメ押し食らっとけ!」
 落ちていく力士めがけ、獅子の火炎とサイキックブラストが、渦を巻いて襲いかかった――!
「楽しいっス楽しいっス! きゃっきゃ!」
 なお、当人のマイは子供めいて喜んでいた。恐ろしい子……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
えー……

噛まれたら力士になるってもうそれゾンビみたいなもんじゃないか
あんまり近寄りたくないな。壊鍵、過剰装填(秒も迷わずに設計限界を超えたオーバーロードを行う欠陥兵器)

力士が大量に南下する道のど真ん中に仁王立ち

……カセットコンロでちゃんこ炊いてる。
なめてんのかって? いや、誘引の策。

迫る敵の群れを視認するなり、右拳を引く
装填した『衝撃』を収斂、収束、加速
敵を相対距離五十メートルまで引きつけた後、秒間二十三発の激発サイクルで一斉解放

直線飛翔速度は音速を超え――さらに、時速二四〇kmでの旋回追尾能力を備えた『侵徹撃杭』――マーシレス・マグナム。その鈍重な身体で避けきれるか試してみるといい


鳴宮・匡
なんだろうなこの光景……
まあ、わざわざ相手の土俵で勝負してやることもない

遊んでる時間が惜しいんだ
この世界での戦に気負ってるやつもいるし
……あいつ、何を焦ってんのか知らないけど無茶しすぎなんだよ
終わったらきっちり言ってやらないと――

――まあ、それは全部終わってからだ
まずは前哨戦、手早く片付けるか

――全速だ
【落滴の音】でこちらの知覚域に踏み込んだやつから
感覚が捉えるに任せて攻撃
可能な限り近づかれる前に撃ち殺し
弾薬がすべて尽きたらナイフでの近接格闘に切り替える

何十でも何百でも構わないぜ、幾らでも来たらいい
こちらにかかずらってる分、指揮官の周囲が手薄になるだろう
そちらへ向かう猟兵への助けになれば十分だ



●どうしてこんなトンチキな戦場に来てしまったんですか?
「…………なんだろうな、この光景」
 鳴宮・匡は頭を抱えたくなる衝動と必死に戦っていた。最近こんなのが多い気がする。
 だいたいどこへ行ってもまとめ役、さもなければ介護役になる常識人(語弊あり)にとって、このトンチキにトンチキをかけて百倍の戦場はさぞ気が重いことだろう。
 だが匡が理解に苦しんでいたのは、何も向こうに回した無数のスモトリ屍人だけではない!
「もしかして、食いたかったりする? 悪いけどまだ出来てないんだ」
「いや、そうじゃなくて。なんで道のど真ん中でカセットコンロ使って、ちゃんこ炊いてんだよ」
 そう……目の前にしゃがみこんでコンロの火加減を調節する、壥・灰色の奇行が最大の原因だったのだ!
 ツッコみたい。いやツッコみたくはない。だってツッコミ入れたら面倒なことになるし。
 しかしそこで無視しきれないのが匡という男であり、彼をどこぞの連中の介護役たらしめている苦労性の証左だった。
「噛まれたら力士になるっていうから、近寄りたくないし」
「それ、道のど真ん中でちゃんこ作る理由になるか……?」
 きょとんとした顔の灰色。理解し難い状況に、はぁー、と重々しいため息をつく匡。
 灰色とは、特別親交が深いわけではない。が、猟兵としては何度も顔を合わせてきた者同士だ。
 常に無表情で強敵に挑み、唾棄すべき邪悪の所行には怒りを見せる青年が、ちゃんこを炊いている。
 しかも道のど真ん中、あっちからずどどどどとスモトリ屍人どもが来ているこの戦場で。ナンデ!?
「誘引の策だよ。あいつらちゃんこ抱えてるから、ひっかかるはずだ」
「そんな簡単でわかりやすすぎる手にひっかかるわけが……」
「「「ドッソイオラー!!!」」」
「ほら」
「…………」
 匡はもう何度目かもわからないため息をついた。心底帰りたいなと思いながら。

 そんなわけでふたりのもとには、数百以上のスモトリ屍人が猛然と迫っていた!
 寄生虫の群れだの、きりたんぽちゃんこ鍋からのビーム乱射だのなんだの、大概な攻撃を受けているが軍勢はまだ健在!
「正直、遊んでる時間が惜しいんだよな」
「それはおれも同意見だよ」
 灰色の相槌に、ほんとか??? みたいな訝しげな視線を向ける匡。
 だが立ち上がった灰色から、尋常ならざる魔力の圧力を感じれば、怪訝は即座に消えた。
 なんやかや、彼はやるときはやる男だ。そうでなければ困る、色々と。
(……あいつ、何を焦ってんのか知らないけど、無茶しすぎなんだよ)
 脳裏によぎるのは、戦友でありチームメイトであるハッカーの少年のこと。
 らしからぬオーバーワーク。己は鋼だから問題ないとでも言わんばかりの前のめり。
 もともと己の身を顧みないきらいはあったが、今回の戦争ではそれが度を超えている気がする。
「……終わったら、きっちり言ってやらないとな」
 知らずうちにこぼれていた言葉に、灰色はちらりと目を向けつつ黙殺する。
 もっぱら送り出す側として彼の背中を見届けている灰色だが、それでもわかる。
 猟兵には、それぞれの信念と、事情と、信ずるに足る仲間がいるのだ。
 その絆に不用意に立ち入ることは、両者にとっての無礼となる。なによりも――。
「前哨戦だ、さっさと片付けよう」
 右拳を引きつつ、灰色はただそれだけ言った。匡はちらりと彼をみやり、うなずく。
「全速でな」
「ああ、全力でだ」
 一時の迷いで鈍るほど、傍らに立つ男は半端なヤツじゃないと知っている!

 スモトリ屍人の数は、数百を超えていた。圧倒的な軍勢だ。
 この数、一体一体が驚異的なタフネスを誇る屍人を一撃で屠り去るのは、生半なことではない。
 いや、いかにユーベルコードが物理法則を超越する奇跡の力だとしても。
 相手もまたオブリビオンのはしくれであるゆえに、不可能だと言ってもいい。

 "だから彼らは、一撃ではなく無数の攻撃で不可能を可能にした"。

 BLAMBLAMBLAM!! BRATATATATATATATA!!
 BRATATATATATATATATA……BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
 耳をつんざくどころか、鼓膜を引っ張り出して引きちぎらんばかりのマズルフラッシュ。
 消音機能を追加しているとはいえ、この速度でのファニングとフルオート射撃には焼け石に水だ。
 匡の連射は、もはや発狂した兵士の悪あがきめいた乱射といってよかった。
 だが見よ。その弾丸は、たとえ一発たりとも、盲滅法に撃ち放ったものではない。
 アサルトライフルを始め、ありとあらゆる携行火器を用いた、文字通りの弾幕。
 それらは同時に、そのことごとくが、屍人どもの物理的急所を狙った精密なスナイプなのだ!
 落滴の音(ティアーズ・レイン)すら、研ぎ澄まされた男の聴覚は逃しはしない。
 だが銃声の嵐のなかでは、屍人どもは苦悶の断末魔をこぼすことすら許されないのである。
 倒れ伏し、土嚢めいて積み重なる屍を乗り越え、さらに水晶屍人が来る。来る。来る。
 ではどうする。降り注ぐのは弾丸だけではない。ここにはもう一振りの魔剣がいる。
 壊鍵、過剰装填。灰色は、この戦場に降り立った瞬間から、秒も迷わずにそれを終えている。
 兵器としては明らかに欠陥的である。己というボディを省みぬ、設計限界を嘲笑うようなオーバーロード。
 だが灰色は、ためらいもなくそれをする。なぜならば、彼は錬鉄の造物主すら滅ぼす魔剣なれば。
 相対距離50メートル。装填衝撃収斂、収束、加速――!
「すでに死んでいようが、おれには関係ない。砕いて滅ぼす。死を殺す死すら、破壊する」
 壊鍵『鏖殺式』。時速240km、直線飛翔速度においてはマッハすらも突き抜ける死の撃力。
 秒間23発。リロードの代わりに筋肉と骨を破壊し、超速再生し、そしてまた破壊して放たれる巨人の槌。
 なるほど水晶屍人は、たしかに無限めいて増え続ける無敵の軍勢なのだろう。
 だが相手はそれすら殺す。死をくぐり抜けるような愚か者を見逃すことはない射手と、死をごまかすことを許さぬ巨人がそこにいた。
「遅いんだよ」
「脆すぎる」
 BRATATATATATATA――KKKKKKRRRRRRAAAAASSSSSSHHHHHH!!
 弾丸と拳撃。降り注ぐは無数、打ち砕くは屍人。何人たりとも、ふたりを超えて先に進むことは能わず――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

わぁ……これは圧巻
圧迫されそうだよ、櫻
君はこんなに細くて綺麗なのだから
近寄らないほうが……え?相撲取りに??
え、嘘だぁ
やだよ、あんな格好しないで
君の帯はこんな所で解かせない

その言葉は大変君らしい
けれど僕も守られてるばかりではない
か細い櫻が手おられないように衝撃和らげ守る水泡のオーラ防御を周囲に展開
歌唱の鼓舞をこめ歌うのは君のための「凱旋の歌」で力を昂らせスモトリに負けないように応援する
物騒のオンパレードだけど
僕の櫻は一番綺麗なんだ
誘惑込めて歌う、「魅惑の歌」
動きを止める
君のやりたいようにするといい
叶わなかった夢、ならば

櫻宵は……か弱いといいつつ
全くか弱くないよね


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

きゃあ!お相撲さん!
屍になっても立派
首を並べたらきっと壮観!
幼い頃に相撲取りにも憧れたのよ
父(じじい)に陰陽師は相撲はとらないと止められたの
ここで憧れを叶えちゃう!
リィが言うならまわしはつけないわ…

リィが潰れたら困るから近寄らないで頂戴
皆なぎ払って殺しまくれば指揮官もでてくるんじゃないかしら
か弱いあたしも今日はグラップルがんばるわ!
リルの歌を口遊ながら踊るように怪力込めた「重華」ひらり屍人を武器に掴んでぶん回してなぎ払い叩きつけ2回攻撃
壊れても次がいる
攻撃を見切り躱して咄嗟の一撃
殴り蹴り首を四肢をへし折って
綺麗に捥がせてよ

でも
指揮官は斬首がいい
立派な首を頂戴な



●か弱い(POW217、グラップル100)
 撃とうが、叩こうが、寄生虫を植え付けようが、叩き落とそうが、燃やそうが、斬ろうが、まだまだ出てくる出てくるスモトリ屍人の群れ。
 この酷暑のなか、汗をたらしながら(ちゃんこ鍋を小脇に抱えて)行軍する姿は、もうそれ自体が視覚に対する拷問だ。
「わあ……これは、圧巻……」
 さすがのリル・ルリも、ヒき気味にそう漏らすのが精一杯であった。
 暑苦しい。水の中で暮らす人魚にとっては、なんかもう見てるだけで干からびそうだ。
 でもどうせ干からびるなら櫻のそばのほうが……とか言いそうなので話を進めよう。
「圧迫されそうだよ、櫻。君はこんなに細くて綺麗なんだから、近づかないようが」
「きゃあ、お相撲さん! 屍人になっても立派だわぁ……え、何? リィ、なんで呆れた顔してるの???」
 ぽかんとしているリルの顔をまじまじ見て、はてなマークをいくつも浮かべる誘名・櫻宵。
 自分のその素っ頓狂な発言が原因だということは、たぶん10分考え込んでもわからないだろう。
 そもそも可能性すら思いつくまい。だって彼は……自分をか弱いと思っているから……。
「首を並べたらきっと壮観ね。子供の頃は、あたし、相撲取りにも憧れたのよ」
「え? 相撲取りに??? え、嘘だぁ」
「ホントよ? わんぱく相撲に出たら全国間違いなしって言われてたし」
「ええ……」
 頭の中で(今の櫻宵の姿で)土俵入りする姿を想像してしまうリル。
 トントトン、トントン。ひがーしー、櫻乃龍ー。
『ごっつぁんス! リィ、見てるー? どっそい☆』
「いやいや、ないないない。ないから」
「リィまでそういうの? ちょっと残念ね……あの頃もそう言われたのよ」
 櫻宵の脳裏によぎる過去の風景。父(じじい)がカンカンに怒っている風景。
 陰陽師は相撲はとらないとかなんとか、めちゃめちゃキレていたあのじじい。
 結局まわしを締めることは叶わなかったが、いや物事には巡りというのがあるらしい。
「ここは憧れを叶えちゃうチャンスね!」
「だめ」
「えっ」
「やだから。あんな格好する櫻は見たくない」
「で、でも」
「ダメ! 君の帯はこんなところで解かせない!」
 恋人の強い語気(とイヤンな言葉)に、ポッと頬を赤らめて照れる櫻宵。
 話が進みませんね! スモトリ屍人の皆さんに来てもらいましょう!

「「「ドッソイオラー!!」」」
「まあ汗臭い。リィが潰れたら困っちゃうわ、近寄らないで頂戴」
 憧れは憧れ。目の前にいるのはスモトリではなく、スモトリめいた屍人だ。
 なによりいまの自分は、か弱い陰陽師(攻撃方法は主に拳と刀)なのである。
 いまでもちょっと相撲はとってみたいし、塩とかバーやってみたいし、四股とか踏みたい。
 けどまあ、リルがああ言ってたからね! 代わりに首を取ろうね!
「その言葉は櫻らしいね。けど、僕だって守られてるわけじゃ」
「そういうわけだからみんな薙ぎ払って殺しまくるわ! か弱いあたし頑張っちゃう!!」
「ええ……」
 ノリノリで挑みかかる櫻宵。哀れ、最前列のスモトリはぶった切られてミンチよりひでえことになった。
 気を取り直し、人魚は歌を歌う。それこそが自分の役目、恋人を守るために。
 スモトリ屍人のつっぱりすらもはねのける水泡を櫻宵の周囲に生み出して、高らかに凱歌を歌う!
「素敵よリィ! 見てリィ、あたし頑張ってるわよー!」
 ぶんぶん。か弱い細腕(怪力31)でスモトリ屍人を持ち上げ、ぶん回す櫻宵。
 リルは思った。か弱いってなんだ? ていうかこれ、凱歌いらないんじゃ? とか。
 まあそれはそれ。恋する彼のために歌うことはいまのリルの存在理由でもある。
 目の前では物騒のオンパレードなゴア&バイオレンス風景が繰り広げられているが、それはそれ!
「その汗臭い目で、僕の櫻を見るなよ――一番綺麗だけれど、でも、ダメだ」
 歌声は、凱歌から魅惑のそれへ。スモトリ屍人の視線と意識は自然、人魚へとさらわれる。
 そこへ飛びかかる暴力(陰陽師)! へし折れる四肢! 砕ける頚椎! 飛び散る血!
「ねえ、ほら! お相撲さんなんでしょう? もっともっともがせて頂戴!」
「ドッソイグワーッ!?」
「壊れちゃったの? じゃあ次ね!」
「ハッキヨアバーッ!?」
 相撲、相撲ってなんだ。少なくとも首とか手足はへし折らない格闘技さ。
 阿鼻叫喚の地獄を見ながら、リルは困った様子でつぶやいた。
「……櫻はか弱いっていうけれど、全然か弱くないよね」
「え? なぁにリィ? もしかしてこれ(もいだ手)欲しいのかしらー!?」
「いらないよ!!!!」
 とっぴんぱらりのぷう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
【Magia】
やることはアレだけど、
目的はあくまで南下阻止と親玉の撃破だからね
失敗は許されないよ

持ち込んできた電池式マイクを取り出して
相撲甚句をうたう
のびやかに、そう、力士になりきって……!
屍人の気を一体でも多く引かせなきゃ
アルジャンテの合いの手、タイミングばっちり
機械人形って正確なんだなぁ

ちゃんこ鍋のにおいに食欲がそそられるけど我慢
ヨハン、織愛、私の分もとっておいて!と目配せだけは忘れない

引き付けに成功して敵の群れが乱れたら
空中から親玉を探す
織愛とヨハンはあいつを狙うんだったね
織愛、私達の双槍でさっさと倒しちゃおう!

回避されないように【早業】【2回攻撃】
敵の攻撃を【見切り】後に【カウンター】


アルジャンテ・レラ
【Magia】

はい。今ならまだ止められます。
協力していきましょう。手筈通りに。

オルハさんにお付き合いを。
彼女の指導の下、数度練習を重ねましたので。
その通りに合いの手を入れるまでです。
本来ならば歌う力士を数人で囲むようですが、
今回ばかりは私一人でご容赦いただきましょう。

織愛さんもヨハンさんも料理がお得意なのでしょうか。
……惹かれる気持ちはわからないでもありませんが、
集中してください。オルハさん。

御二方がお抱え力士衆を攻める最中、
屍人の対処に当たりましょう。
援護射撃はお任せください。
背を気にせず二本の槍が振るわれるよう尽力します。
負傷度合の低い敵には銀朱火矢を放ちます。


三咲・織愛
【Magia】
江戸に大量に水晶力士……もとい水晶屍人が向かっているのですね
人が集まる場所であればどんどん被害が大きくなってしまいそう
ここでしっかり止めてみせましょうね!

先ずはヨハンくんと一緒にちゃんこ鍋を作ります
お任せください! 私、特徴:家庭的なんです!
鶏ちゃんこを作りますね。むんずと捕まえた鶏をそのまま……
いえいえ冗談ですよ。ちゃんと作りますとも

美味しい匂いをいっぱい振り撒きます!
行司さんの軍配を持って、のこったのこった~と踊りますね!

ふぅ
たくさん惹き付けられたらノクティスを手に
【覚悟】による殺気を放ち<範囲攻撃>で薙いでいきましょう
オルハさん、共に槍を振るえるなんて頼もしいです!


ヨハン・グレイン
【Magia】

異様な光景ですよね……何故力士
暑苦しくて仕方ないんですが
まぁこれ以上増えるのは御免です
蹴散らしましょう

惹き付けるための準備として、織愛さんと料理をします
ちゃんこ鍋というのは初めてですね……
料理はそれなりに出来る方なので別に作る事に不満はないですけど
待った。何故鶏をそのまま入れようと……?
冗談でもやめてくださいよ

歌も合いの手も器用なものだ
一人は踊っているし
俺は何故ここにいるのだろう?

さて、一先ず集まった屍人を蹴散らそう
出し惜しみはしない【蠢く混沌】で一息に叩く
頭目までの道を開く事に尽力しよう
<呪詛>と<全力魔法>で闇を這わせ水晶を狙っていく
足止めだけでもいい、頭目がいれば視てやろう



●この暑い中鍋を作ることを厭わぬ若者たち
 混迷とスモトリとちゃんこの匂い極まる戦場に、新たに参陣した四名の若者あり!
「……いまさらですが、改めて見ると異様な光景ですね。なぜ力士……?」
 一人目である黒衣の少年、ヨハン・グレインは心底暑苦しそうに顔をしかめた。
 この少年、生来真面目な気質であり、この手のトンチキオブリビオンが大の不得手である。
 本人はいまでもそうだと思っているが、哀れなるかな、いや僥倖か、だいぶ慣れているのも事実であった。
 だってほら、隣に立つそこのキマイラ少女にあっちこっち引っ張り回されてるし。
「やることはアレだけど、目的はあくまで南下の阻止と親玉の撃破だよ!
 ヨハン、いつもみたいに呆れてやる気を失くしたりしないように。わかった?」
 と、さも自分はしっかり者でまとめ役でございみたいな面をして、オルハ・オランシュが云う。
 いやまあ、実際この状況に彼女なりにシリアスに発奮しているのはたしかだ。それはいいことだ。
 が、ヨハンを様々なトンチキ戦場に連れ込み、そのたびに呆れさせてきた当人が言えるセリフだろうか!?
「水晶力士、もとい水晶屍人……江戸に到達したら被害の拡大は止められませんよね。
 オルハさんの言う通りですっ、ここでしっかり、私たちが止めてみせましょう。ね!」
 ぐっと握り拳(これが彼女の武器の一つでありとても怖い)を作り、三咲・織愛が意気込む。
 彼女も彼女で相当にぶっとんだ猟兵なのだが、それを記していくと紙幅が足りないのでさておくとしよう。
 ……このメンツ、女性陣がどちらもネジ外れてないだろうか? 家族と話はしてるだろうか?
「はい。今ならまだ止められます。手はず通り、私たちで協力して対処しましょう」
 四人目の少年、アルジャンテ・レラは至極真面目くさった表情でうなずいた。
 もっぱらトンチキ戦場ではツッコミに回りがちな彼だが、今回は大丈夫だろうか。
 ヨハンが向けてくる(同じ苦労役を見るような)眼差しに、アルジャンテは首を傾げている。
 落ち込むなヨハン少年! 君とアルジャンテでツッコミを分担すれば心労は1/2だ!!

 ……ところでこの四人、実はなかなか珍しい、というか下手をすると揃い踏みするのは初めての顔ぶれである。
 なぜか妙に同じグリモア猟兵の依頼に赴くことの多い一同だが、こうして肩を並べるのは初だろうか。
 ともあれもともと親交はあったらしく、どうやら今回の戦場にもとっておきの作戦を持ち込んでいるらしい。
「ヨハンくん、早速私たちの作業を始めましょう!」
「あ、はい。まあ別に、調理するだけなんですが」
 ノリノリの織愛に対し、ヨハンはかなりダウナー(というか呆れ気味)の反応だ。
 彼らふたりの担当は、ずばり……スモトリ屍人たちを惹き付けるためのちゃんこ鍋作り!!
 え? いくらスモトリだからってちゃんこで惹きつけられんの? と侮るなかれ。
 なにせすでに、その作戦は効果があることが二度実証されている。
 これは三度目! ということはこれまでの猟兵の工作との相乗効果をあわせて効果は百倍!
 わかるかこの算数が、エエッ? だが重要なのはちゃんこの出来である!
「……やけに手際が良いですね」
「もちろんです! だって私、家庭的ですから!」
 エプロンに三角巾を巻いた完璧な料理フォームで、織愛はにっこり微笑む。
 特徴にも書いてあるから間違いない。携帯料理用具を並べる姿は実に様になっている。
 ……なっているのだが、どこぞの世界のどこぞのカフェではゲテモノスイーツを作った織愛だ。
 そのことを知らないヨハンだが、なんとなく本能的に(この人大丈夫か?)という不安がよぎった。
 あれこれとアシスタント役をこなしつつ、じっと藍色の瞳で織愛の手際を監視……もとい、観察する。
「今回は鶏ちゃんこを作りましょうね!」
「待ってください、その手に持っているバタバタもがいている鶏は」
「え? これをですね、このまま鍋に投入して」
「やめろ(神速)」
「えへへ。冗談ですよ、冗談っ!」
 ぽいっと首根っこを離された鶏が、コケーっ! と慌てて逃げ出していく。
 てへぺろ☆って感じのプリティな舌出し笑顔をしている織愛を見つつ、ヨハンは思った。
(やっぱりこの人は大丈夫ではないのでは?)
 ヨハン少年、大正解! その自炊スキルでなんとか頑張ってほしい!!

 一方その頃、オルハとアルジャンテは!?
「富士ぃいい~~~~~のぉ~~~~お、ヤ~~~アァアアア~~~~」
「ドスコイ、ドスコイ(抑揚/Zero)」
 歌っていた。わざわざ用意した電池式携帯マイクを手に、オルハが渾身の熱唱を披露していた!
 そしてその隣で、アルジャンテは無表情で合いの手と手拍子を入れていた!
 これは一体!? 突然のコブシ利きまくりの歌唱に面食らった方も多いだろう。
 これは相撲甚句! 相撲場所の取り組み前に歌われる、由緒正しい囃子唄なのだ!
「まわぁああ~~~~~あ~ぁあああ~~しぃ~~~のぉ~~~、模様~~~~ぅうう、は~~あぁぁああ」
「ドスコイ、ドスコイ(抑揚/Zero)」
 しかも前唄から本歌にまで入っている。どんだけ気合を入れて臨んでいるのだろうか。
(この日のために、アルジャンテと一緒に練習してきたんだから……っ!)
(本来ならば歌う力士を数人で囲むようですが、今回ばかりは私ひとりでこなすしかありません)
 汗を散らしながら歌うオルハ、それを見つめるアルジャンテの視線が交錯する。
 真面目である。ふたりはド真面目にことに臨んでいた。なんだこの状況。
「ドッソイ……?」
「ドッソイ!」
「ドッソイドッソイ!!」
 しかも効いてる! 徐々にスモトリ屍人どもが集まってきた!
 即座に襲いかからないのは、これが取り組み前の囃子唄だからであろうか?
 あるいは魂を込め、じわじわお天道様が照らす中で熱唱するオルハの想いに打たれたか……!
 もしくはややセインでない行動に出た若者たちに本能的にビビっているかのどれかである!
「かすぅ~~~かぁ~~~~に~~~ぃい(ちらっ)
 見え~~~~るぅううう~~~~~は~~~あぁぁあ(ちらっ)
 富士ぃいいいい~~~(ちらっ)の~~~(ちらっ)は~なぁあああ(ちらっ)」
(オルハさん、集中してください。ちゃんこ鍋の匂いに惹かれる気持ちはわかりませんが。
 だからあちらを見ないで、集中してください。私は合いの手を入れているので指摘できませんが。
 私のぶんもとっておいて! とまばたきでモールス信号を送らないでください。オルハさん)
 どんどん気もそぞろになるオルハ。目線で注意しようとするアルジャンテ。
 あたりに立ち込めるちゃんこ鍋のいい香り。歌う若者たち。なんだこの状況!?

「ドッソイ!」
「ハッキヨホ!」
「フゴゴーッ!」
 しかしまあ恐るべきことに、四人の作戦は見事に功を奏した。
 周囲には、ちゃんこ鍋の香りと相撲甚句に誘われた虫……もといスモトリ屍人の人垣が!
「よし! これだけ誘えれば十分だね!」
 オルハはマイクを持ったまま(なけなしのお小遣いで自腹を切ったから)空へ!
 この中に指揮官がいるのは確実。空から捜索するのだ! ……相撲甚句を歌いながら!
「のこった~のこった~! ちゃんこはこちらですよ~!」
 一方、織愛は持参した軍配に行司コスチュームで、なぜか踊っていた。
 行司の仕事はそういうのだっただろうか? まあスモトリ屍人が惹きつけられているので結果オーライだ。
「…………」
 ヨハンは真顔で考え込んだ。ちゃんと三角巾にエプロンで、ミトンをつけて鍋を持ちながら。
 なぜ自分はここにいるんだろう。歌うオルハ。合いの手を入れるアルジャンテ。踊る織愛……踊る織愛?
 そして鍋を持つ自分。並ぶスモトリ屍人にちゃんこをよそう自分。次の材料を煮込む自分。
(俺はこんなキャラだっただろうか……?)
 ヨハン少年、17歳の夏。これからの未来に不安を抱くには絶好のタイミングである。
『チャルワレッケオラー!! ちゃんこよこせッコラー!!』
「! 見ぃいい~~~つけぇえ~~~たぁ~~~あああ~~~あぁぁあ」
「報告まで甚句にしないでもいいのでは……?」
 さておき、オルハの指揮官発見報告は三人にとって光明となった!
 鍋、軍配、スピーカーを捨て、三人はそれぞれの武器を構える!
「まずこちらで敵を抑えます。その間に織愛さんとオルハさんは攻撃を」
 アルジャンテは冷静なまま矢をつがえ、銀朱火矢を射撃!
 燃え上がる火矢が、ほこほこ鶏ちゃんこを楽しんでいたスモトリ屍人に降り注ぐ!
「「「ドッソイグワーッ!?」」」
「もう本当にさっさと帰りたいので、さっさと沈んでくれませんかね」
 うんざりした顔のヨハンも三角巾を懐にしまいつつ、蠢く混沌を解き放つ。
 あちらこちらのスモトリ屍人の影から黒闇が触手めいて飛び出し、太った足を絡め取る!
 ああっもったいない! こぼれ落ちるちゃんこ!
「こらっ、ヨハンくん! もったいないじゃないですかっ!」
「そんなことを言っている場合ではないのでは……???」
「はっ、それもそうでした! 行こう、ノクティス!」
 我に返った織愛はちゃんこをつまんでいた相棒の龍をつまんで槍に変え、疾走!
 ちゃんこ不足で苛立っていた力士の張り手をかいくぐり、剛槍一閃!
『ザッケンナグワーッ!?』
「それで終わりなんて、思わないでくれるっ!?」
 さらにオルハの強襲! 鷹めいた急降下からのウェイカトリアイナの刺突である!
 いくら力士が見た目にそぐわぬ高速機動で避けられるとて、ふたりの槍手の前には止まっているも同然!
「オルハさんっ、一緒に槍をふるえるなんて頼もしいですっ!」
「こっちこそだよ。私たちの双槍で、さっさと倒しちゃおう!」
(さすがはおふたりです。私としても支援しがいがありますね)
(早く倒してくれませんかね、もう本当に帰りたいんですが……)
 挑みかかる女性陣、後方支援者面で見守る(帰りたがる)男子たち。
 この戦場、トンチキはさらに加速していく――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
間抜けなようで力強い行軍……
まあ、敵なら全部薙ぎ倒せばいいだけね
光景が嫌にシュールとか、気にするのは……下策かな

雑魚は壊狼【流星】を発動しつつ突進の要領で蹴散らすとして……
見知った顔が居るなら連れ立って私が先陣を切ってもいい
敵の首魁をおびき出す方法は掛け声かな
誰かの話で確か……「ドーモ=オブリビオンサン。ルーナ=デス」って仕合前に挨拶をするって聞いた……ような
試してみる価値はあるよね、多分
ないかな

戦い方自体は至ってシンプルに……最速最短でそのデカい図体の両断を狙うよ
懐に入り込んで、ユーベルコードを伴った最高速で斬る
倒し損ねたとしても、敵の注意が私に向いたのなら、それは誰かがこいつを殺す隙になる


虎熊・月霞
スモトリだ、スモトリが群れを成してる……いや、そもそも群れを成すって表現であってるのかなぁ?たぶん違う気がする。

指揮してる力士を誘い出すなら答えは一つしかないね……土俵入りだぁ!!
土俵入りするには番付が低い順からと決まってるしぃ、だったら最後に出て来るのが間違いなく一番上って事だよねぇ。
もしこれを無視したんだったら、そいつは力士にあらず!ってねぇ。

という訳でぇ見つけ次第斬り飛ばさせてもらうよぉ、髷をね!
確か力士って髷を斬り落としたら引退なんだっけねぇ?だったら狙ってみるのもありかもねぇ。
最速速攻の一太刀を入れてあげるよぉ。


マルコ・トリガー
アドリブ連携歓迎

フーン、大量の水晶力士……って、なにそれ
指揮官を探すにはまず屍人を蹴散らせか

さすがにぶつかり稽古は無理だね
ボク、接近戦に向いてないから
遠くから座布団を投げるように射撃するのが関の山さ

なんで脇にちゃんこ持ってるのさ
というか、屍人のちゃんこって不味そうだな…

【部位破壊】で鍋を狙撃されても知らないよ?
食べ物の恨みは怖いって言うからね
ましてや力士は大食らいだ
【竜飛鳳舞】で高く跳んで上から集団の真ん中辺りのちゃんこを狙おう
君のちゃんこを【破壊工作】したのはボクだよー
ほら、こっちこっちー
空を跳んで誘導するよ

一部の力士がちゃんこの怒りで暴走して将棋倒しになってくれたらラッキーなんだけど



●スモトリゾンビ・ヴァーサス・シンボルクラッシャーズ
 スモトリが。群れをなして行進している。
 いや、そもそもスモトリって"群れ"とか表現するものだったか?
 まあそれはいい。だってここにいるのはスモトリではない。
 水晶を生やした屍人のスモトリ、すなわち水晶スモトリ屍人なのだから……!
「……安倍晴明も、なんでこんなのを生み出したんだろうねぇ」
 羅刹の剣豪、虎熊・月霞は、やや数を減らしつつあるスモトリ軍勢を見下ろしてつぶやいた。
 これまでの猟兵の攻撃(一部トンチキ行動)は功を奏し、敵軍を大きく減じつつある。
 だが、指揮官は健在。スモトリだけにタフネスは一級品なのだ。スモトリだけに。
「やっぱり頭を叩かないとダメだねぇ、となると答えはひとつ――」
 ……土俵入り。スモトリであれば必ず、相撲の法則に従うはず!
 実際、月霞の推測は正しい。ついでにいうと、あいつらはちゃんこにも弱い。
「土俵入りするには番付が低い順から。だったら最後に出てくるのが一番上。
 うん、間違いないねぇ。よぉし、じゃあさっそく作戦開始といこうかぁ」
 ふわり。高みから降り立った月霞。目の前にずんずんと迫りくる屍人!
「ドッソイ!」
「ドッソイ!」
「ドッソイ!」
「イヤーッ!」
「「「ドッソイーッ!?」」」
 ハヤイ! 月霞の剣は迅速だとか瞬速という語彙で片付けられる速度ではない。
 それはまさに稲妻。光のごとき雷速の剣。はたして童子切・鬼血が切り裂いたのは、スモトリ屍人の肉体……では、ない?
「ドッソイ?」
「ドッソ……ドッソイソイ!?」
「ドッソー!?」
 おのれらが無事であることに首を傾げていた屍人たちは、互いを見て驚きと恐怖に震えた!
「ふっふっふ、どうだぁい? キミたちにとっては、"それ"は命より大事なものだろう?」
 不敵に笑う月霞。その手には……おお、なんたることか……ま、髷だ!
 スモトリ屍人の頭部から斬り落とした髷がある! はらりとこぼれ落ちるスモトリ屍人たちの(無駄に手入れのされた)黒髪!
「「「ド、ドッソ……!!」」」
「そう、キミたちは引退だよぉ。残念だったねぇ」
 がくりと崩れ落ちるスモトリ屍人たちを残し、月霞は哄笑しながら次の獲物へと突き進む。
 髷を結えなくなったら潮時という言葉もあるように、スモトリにとって髷は大事なシンボル!
 それを狙った雷撃の一閃、おお、なんたる無慈悲さか……!!

「……えっ、あれでいいの?」
 そんな様子を遠巻きから見ていたルーナ・ユーディコットは、思わず呟いた。
 いやだって、屍人ですよ? 知性がない、生きた存在を同族に引き込む敵ですよ?
 なのに髷切り落とされて、なんかしくしく泣きながら崩れ落ちてるんだけど。
 あ、引退式らしいことをセルフで始めたやつもいる。なんだこの光景。
「……いやいや、気にしたらいけない。間抜けだけど敵はまだいるんだし。
 無力化してるならいい的か……うん、心が痛む気がするけど忘れよう」
 シリアス、大事。というか放っておく理由は特にはない。
 ルーナは気を取り直し、青い炎を纏いながら一陣の風となって走る!
「というわけで、現世から引退してくれるかな!!」
「「「アバーッ!?」」」
 ナムアミダブツ! 哀れ、髷を切り落とされた元スモトリ屍人たちは焼死!
 忘れろ、無抵抗の敵を焼いてるとかなんか無駄に無惨な捉え方はするな……!
 だってあいつら屍人だぞ……! トンチキに取り込まれたら終わりなんだ……!!
(見知った顔も近くにいそうだし、ここは切り込み役として働こう。うん)
 下手に後手に回ると、なんだか気分もよくない。最速速攻、大事である。
 かくてルーナはシュールな光景を努めて見ないようにしつつ、走る。走る!
「イヤーッ!」
「ドッソアバーッ!?」
「イヤーッ!」
「ハッキヨグワーッ!?」
 なんたる色付きの風めいた時速666kmのバッファロー殺戮ストレート疾走か!
 この割と狂った戦場をさっさと片付けるべく、走れ! ルーナ、走れ!!

 ……ところで、そんなふたりの猛進を、実はもうひとりの少年が見物していた。
「やっぱり接近戦は、向いてる人に任せるのが一番みたいだね」
 マルコ・トリガーはうんうんと頷いて納得すると、銃を構え……思った。
「……髷を切り落とすと効果がある。ということは」
 ちらり。マルコが注目するのは、スモトリ屍人軍勢が小脇に抱える、鍋。
 すなわちちゃんこ。スモトリにとっては命であり、滋養であるアイテム……!
「いやそもそもなんでちゃんこ持ってるんだ……?」
 思わず『スモトリだから』で納得しかけたが、よくよく考えると何もかもおかしい。
 だいたい屍人のちゃんこ鍋って何が入ってるんだ。絶対お腹を壊すに違いない。
 下手するとちゃんこも腐っている可能性がある。ほら、いま夏だし。汗とか入ってそうだし。
「よし、あれを壊そう。髷で戦意喪失するなら、ちゃんこでもいけるはず!」
 そんな結論に至ってしまうあたり、マルコもかなりこの空気に毒されているのではないか!
 だが見よ! 高く空を舞ったマルコの銃口が、スモトリ屍人集団のちゃんこを……BLAM!
「ドッソイ!?」
「ドッ……ソイーッ!?」
「ドドドドドー!?」
 浮足立っている(多分)……の、か? とりあえず効果はあった!
 割れた鍋と、地面にこぼれ落ちたちゃんこらしき残骸を前に、崩れ落ちる屍人たち!
「食べ物の恨みは怖いっていうし、力士は大食らいなんだ。ほら、こっちだよ!
 そのちゃんこを壊したのはボクだよー、悔しかったらかかってきなよ!」
 軽やかに空を跳躍飛翔しながら、精密無比な射撃でちゃんこ鍋を破壊するマルコ。
 戦意喪失していたスモトリたちは、空を舞う射手を恐るべき憤怒の形相で睨みつける!

「! なんだかわからないけど足並みが乱れた! いまなら!」
 軍勢をジグザグに駆け抜けていたルーナも、このチャンスを逃さない!
 最短最速で軍勢を横断し、衝撃波でスモトリ屍人を吹き飛ばし、中央部に着弾!
 KRAAAAASH!! 放射状にはぜた青火が、ちゃんこ残骸もろともゾンビどもを吹き飛ばす!
「「「ドッソイグワーッ!?」」」
「ドーモ、オブリビオン=サン。ルーナです」
 たなびくルーナのマフラーに、『相』『殺』の文字が浮かび……上がらないが、それはさておき!
「イアイ!」
「「「ドッソイーッ!?」」」
 注意がルーナに向いた瞬間、横合いから月霞が駆け抜け、紫電閃刃を放つ!
 なんたるハヤイか! パラパラと切り落とされて風に流れていく髷!
「ほらほらぁ、油断大敵だよぉ? 僕を捉えられるかなぁ? イヤーッ!」
「「「ハッキヨホーッ!?」」」
 その軌跡、速度、まさに迅雷! 斬って捨てているのは髷だが!
 最速速攻の一太刀は、屍人どもでは捉えられはしない! 斬っているのは髷だが!
「うーん、作戦成功……で、いいのかな? ま、いいか」
 瓦解する軍勢と奮戦する見知った顔を見下ろしつつ、マルコはふと考え込んだ。
 が、やめた。考えると負けだ。とりあえず敵を倒せば間違いないしやることをやろう!
「いいかげん暑苦しいから、お掃除しないとね!」
 BLAMBLAMBLAM! ちゃんこを打ち砕く弾丸!
 SLASH!! 髷を切り落とす迅雷の刃!
「…………やっぱりこれ、戦いとしてなにかおかしくない……?」
 ルーナよ、冷静になってはいけない! 今はただ戦うのみである!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
うん、まぁ、わかるよ?
相撲を取れってことだよね?
僕の戦闘スタイルとは合わないのです。
気乗りはしないけど仕方ないね
<隠忍の見えざる手>を発動。
素早く印を組み土遁で土俵を作り出す。
これで指揮官を誘い出すのです。
着物をはだけて不知火型で土俵入り。
これで土俵入りは挑発として十分じゃない?
スモトリとの対格差は歴然。
だが羅刹の強力なら対抗できる!
それに僕にはこれがある。
念動手を四肢に重ねて力を倍加。
後は真面目に相撲を取るっぽい!
といっても忍の持ち味は生かさないとね。
忍ならではの体捌きで翻弄。
決まり手は首投げとかになるかな?
まぁ、投げられたしなんでもいいか。
相撲はここまで。
立ち上がる前に頭を踏み砕くっぽい!


黒金・菖蒲
噂に聞く、極東の最強の兵、スモトリ……。
まあ、紛い物か。
揃ってくるだけ、まだいいか。

さて、始めようか。
我ら共に在り、軍影。
往け、闇奔。

軍影の「家族」達は私を中心に散開。
銃弾砲弾の弾幕を張って時間を少しでも稼げ。

闇奔は私と互いが見える程度に散らばり、目となれ。
仲間と敵の位置を見よ。

私は――唯、斬るのみ。
数が多いのならば、一切合切全方位、纏めて両断するまでよ。

この体(ひとがた)と私(やいば)を混濁させ、一体化。
用意が出来次第、居合の構えを取り、集中。


我が一刀、万象を両断す――

――終世


無限に変化する我が剣閃は、狙った場所だけ「斬らない」のも可能。
討ち漏らしは多少あるが、仲間まで斬る心算は無いのだよ。


薬袋・布静
ああ゛ー煩わしいっ!!!
暑苦しい中、暑苦しい掛け声、暑苦しい肉饅頭供
ええ加減にせェーよ!

近所でやんややんやと…
ちゃんこ鍋抱え四股を踏むやないわ
食うか四股踏むかどっちかにしい

んっとに……
こんなんが彷徨いてたら景気が悪いったらありゃしねぇ…
【潮煙】を片手に青煙を吹かし、燃えカスを棄てるように
カンっと響かせ新たに葉(毒使い)を詰め火を付けた
立ち込める青煙から“白鯨”を呼ぶのと同時に【蛟竜毒蛇】展開
ご挨拶がてら周りの水晶屍人を数人呑み込む白鯨
アオミノウミウシが猛毒が喰み捕食する様は
恐怖を与えるだろう

そないに相撲取りたいんやらな!コイツと取ってみーや
指揮官の力士衆に白鯨を指差し言いくるめるように誘惑した



●士屍累々、いざ勝負
 トントトン、トントトントントン。
 トントトン、トントトントントン。
 どこからともなく寄せ太鼓が鳴り響く。いや誰が鳴らしてるんだ?
 まあさておき、なぜか平野の中央には立派な土俵が出来上がっていた。
 いや誰が作ったんだ? ……それはすぐに明らかになるのでさておこう。
『スッゾコラー!!』
 ひがーしー、信長お抱え力士ー衆ー。
 恐るべきヤクザスラングとともに塩を払い、頭目の力士が土俵に上がる!
 怒り猛った頭目が見据える西側から、不知火型で土俵入りするあの偉丈夫は!?
「まあ僕の戦闘スタイルとは合わないけど、今回は合わせてやるっぽい!」
 彼の名は露木・鬼燈! 着物をはだけて見事な堂に入った入場だ!
 ……屠龍の化身忍者が、なんでそんな完璧な不知火型の土俵入りできるん?
 だとか、
 セリフと違って実は割とノリノリじゃない?
 とか、そういうセリフは言ってはいけない。
 なにげにこの立派な土俵をユーベルコードで生み出したのも彼だが、これは仕方なくなのだ。
 全てはあの敵……指揮官の力士を誘い出すための、仕方のない策!
 ズシン! 四股踏みも完璧だが、本人はあくまで嫌々やっている!
「いやー、修行の合間に鉄砲を打っていた甲斐があるっぽい!」
 忍者とは一体。割と概念が迷子になりつつあるがさておこう。
『チャルワレッケオラー!!』
 見よ! 口汚くスラングを放つ力士の体が一回り、いや二回りもパンプアップ!
 KRAAAASH……踏みしめた四股は、大地を揺るがし粉塵を巻き上げるほどに力強い!
(思ったとおり、体格差は歴戦。相撲の腕前も、まあ向こうが上っぽいです。けど)
 鬼燈の口元には不敵な笑み。なぜならば彼には"隠忍の見えざる手"がある。
 属性攻撃を強化するおよそ四本のこの念動手の用法は多岐にわたる。
 鬼燈はこの遠隔操作念動手を、己に重ねることで、羅刹としての強力を倍加!
 KRAAAASH!! 再び踏みしめた四股と柏手は負けず劣らず力強い!
「さあ、正面から相手になってやるっぽい。文句はないでしょ?」
『ヒカエオラー……!!』
 竜呼相打つ。見合う両者、中間の大気がぐにゃりと陽炎めいて歪んだ……!

「…………いや。いやいやいや」
 至極シリアスに進む取り組みを、観客席(!)からないわって感じでストップを入れる男あり。
 薬袋・布静である。普段の鼻から下を覆う口布を外した、チャラい水着スタイルでの参戦だ!
 え、なんでって? だってほら、夏じゃん。暑いし。んで来てみたらこれだよ!
「おかしさしかないっすわ! なんで普通に取り組み進んでんですかねぇ!?」
「是非も無し。まがい物とて極東最強の兵ならば、決着は斯様につけるべきであろう」
「うーん一理あるわぁ、ってアンタ誰や!?」
 ん? なぜそんなことを聞く? みたいな意外そうな顔で、黒金・菖蒲が顔を上げた。
 その背丈、およそ190cmに近いほどの偉丈夫。腰に佩くは京反り大切先の漆黒剣である。
 ただならざる殺気と鋭い眼差しは、彼が剣豪であることをまざまざと知らしめている。
 そんなめちゃめちゃエンパイア~って感じの方が、腕組して静かに取り組みを見守っていたのだ。
「……何か、おかしかったか?」
「おかしさしかないっすわ! このセリフ二度目ですがねぇ!?」
 ふうむ、と、菖蒲は真面目くさった表情で顎に手を当て、考える。
「まあ、若者よ。君の言いたいことは、私とてわからんでもない」
「アッハイ」
「ひとまず見守ろうではないか。ここで茶々を入れて身を隠されては癪だろう?」
「このクソあっついなか相撲観戦しなきゃならないのがもうすでに癪っすわ……」
 とはいえ、ようやく軍勢を一通り蹴散らし、指揮官を対決の場に引きずり出したのだ。
 おとなしくしてこの状況が終わるならば、と、布静もおとなしく腰を落とす。
 トントトン、トントトントントン。
 トントトン、トントトントントン。
「……この寄せ太鼓鳴らしてんの誰なんですかね?」
「わからん」
「やっぱおかしさしかないっすわ!!!!」
 残念、ツッコミ役は彼一人なのであった!

 さておき。土俵上では、いよいよ両雄が身構えていた。
 そして――ドウッ!! 前触れもなく、両者が同時に土を蹴立て突進した!
『イヤーッ!!』
「と見せかけて、っぽーい!」
 ハヤワザ! 鬼燈は忍らしい軽やかさで敵の出掛かりを回避!
 素早く側面に回り、手っ取り早く力士を土俵から弾き出そうとする!
『ドッ……ソイ!!』
「おおっとぉ!?」
 だが力士もさすが! これを受け止め、がっぷりと組み合う形だ!
 両者の肩の筋肉が隆起し、土俵際が耐えきれずに軋む……なんたる神話的拮抗……!
「これは……わからんな」
 菖蒲は極めてシリアスな顔つきで状況を見守る。じりじりと照りつく陽光。
「…………」
「力量ではまがい物の力士が上。だが技量ではあの羅刹の青年のほうが上、か。
 若者よ、君はどう見る? この戦い、どちらが勝ってもおかしくは――」
「……ああ゛ーっ!! 煩わしい!!!!!!」
 ぶちり。布静、(主にこの照りつける暑さに)キレた!!
「暑苦しいなか、暑苦しい掛け声に暑苦しい肉饅頭ども!! ええかげんにせェーよ!!」
 びしぃ! 布静は、対面の観客席に並ぶスモトリ屍人どもを指差す!
「ちゃんこ鍋抱えて観戦すんなや! 食うか戦うかどっちかにしい!!」
「土俵上では頭目が戦っているではないか」
「そもそもそこがおかしいんすわぁ!!!!」
 菖蒲の極めてまともなツッコミに吠えつつ、布静は土俵上に叫ぶ!
「もういい加減、そいつ投げ飛ばして終わらしてくれませんかねぇ!?」
「はいほい、だったらひとつ決めてやるっぽい!」
『フゴゴーッ!?』
 見よ! 鬼燈の見事な首投げが炸裂! 指揮官力士が頭から……KRAAAAASH!!
「はい勝ちー! 屠龍の忍者に不可能はないっぽーい!」
「見事! 座布団を投げたいところだが」
「もう相撲はええから! さっさと!! 倒しましょうや!!!」
 布静はうんざりしていた。多分参加した猟兵みんなそう思ってるんじゃないでしょうか!

『……ッケンナ、コラーッ!!』
 そして力士も同様! 彼奴は力士だがその前にオブリビオンなのだ!
 ネックスプリングで跳ね起き、残存屍人に攻撃命令を出す!
「「「ドッソイ!」」」
「所詮はまがい物か。見苦しい」
 ゆらり。菖蒲は立ち上がり……おお、見よ。その影から現れる無数の霊体!
「我が"家族"たちよ、我らは常に共にあり。敵が群れで来るならばこれに仇なすべし。
 ――征け、闇奔。紛い物に、真の道を極めし武というものを教授してやるとしよう」
 黒い影の分身、そして召喚された"家族"たちは各々が銃を構え、一斉砲火!
 BRATATATATATATA!! 有象無象のスモトリ屍人どもを一気に穴だらけにしていく!
「最初っからそうすりゃいいんすよそう――ったく、景気が悪いんだか、いいんだか!」
 ふう――布静もまた、手に持つ煙管から青煙をひとつ。そして灰を落とし、葉を詰める。
 立ち上る煙が……おお、おお! 見上げるほどの巨大な白鯨へと変じていく!
「「「ドッソイアバーッ!?」」」
 バクン……逃げ場もなく、弾雨を逃れた屍人が、鯨の大口に呑まれる。
「そらどうした、まだ相撲取りたいんか? あ? ならコイツと取ってみぃや!」
 親指で示された白鯨、もごもごと口を動かし咀嚼しながら力士を見下ろす!
 さらに現れるは、猛毒を持ちし蛟竜毒蛇――すなわちアオミノウミウシ!
『ド、ドッソ――』
「最期をわきまえずなおもあがくか。醜いこと敵わぬ。ならば」
 うっそりと言い、菖蒲が漆黒剣の柄に手をかける。
 いまやその身は人であり刃である。このとき、黒金の男は本質を混濁させる。
 刃の化身たるヤドリガミだからこそできる技。境界を揺るがし、構えし居合は凄絶の一語――!
「……我が一刀、万象を両断す。さあ、覚悟を決めよ」
 近を薙ぎ無限を断つ刃。これぞ!
「――終世(ついのよ)」
 納刀。毒に悶え苦しむ者も、銃火に晒された者も、皆、両断されて倒れた。
『ゴボ……ッ!?』
 そして斬撃痕! 力士衆をばっさりと断ち切る不可逆の刃が滂沱の血を流す!
「最期に流儀に付き合ってあげたんだから、満足っぽい? もう馬鹿騒ぎもこれで終わりなのです!」
 なおも現世にしがみつこうとする力士に、化身忍者が言った。
 断末魔があがることはない。その頭蓋を、仁王の如き踏みつけが砕き割ったからである。

「……あーあ、暑気払いにもなりゃしないっすわ」
「所詮は死にぞこないの群れ、か。だがあの首投げは見事」
「褒められると照れるっぽい~! いやー、これにて……一件、落着ぅ!」
 かん! どこからともなく、カンカン照りに拍子木の音が木霊したとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月09日


挿絵イラスト