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エンパイアウォー③~軍神の御使

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「戦争です。」
 ヘンリエッタ・モリアーティ(犯罪王・f07026)は、いつも通り目立ちたがらない。
 真っ黒な洋装をたなびかせて、皆を集めたのはいいのだけれど。
 事態が事態であるために、顔はいつもより憂いに満ちて、それから険しいものだった。
「ウエスギ・ケンシンをご存知?私は――あまり歴史に詳しくないのだけれど。」
 ――強力なオブリビオン。
 彼女の中での認識はその程度であるが、その経歴は果敢なものであるそれを問うてみた。
 猟兵たちの反応はさまざまで、知っているものもいればそうでないものもいる。
 少しざわつき始めたところで、「ありがとう。」と声をかけてまた集中しあうことにした。
 小さく、円陣になる。

「今回は、上杉謙信の――配下たちと信州上田城で戦っていただきます。」
 すでに、この城は制圧されている。
 小さな城であるから配下たちをしまいきれていないのだけれど、それを好機と判断した悪徳なのだった。
「ここは山岳地帯に囲まれています。」
 己の――AI技術のある眼鏡でホログラムを展開してやる。
 地形を細かく再現できはしないが、猟兵たちに状況を伝えるには十分かと判断した。
「わざわざこの時代らしく名乗りを上げる必要もないでしょう。戦争なのだから――ああ、そういう時代もあったようですけれどね。」
 できれば、地形の利用。
 または、奇襲作戦が効果的かと思われる。
 悪徳教授がぐるぐると己のグリモアをまわしながら、猟兵たちの視線をひとつひとつ見た。
「望ましいのは、10~20体程度のオブリビオンの部隊を殲滅。状況が不利だと判断すれば上杉軍は撤退していくでしょう。」
 ただ。
「ただ――腐っても、彼らは軍神の配下。心して、どうか慎重に。」
 ようやく、そこで困り眉のまま笑って見せた。
 この言葉は――ここに集まった頼もしき猟兵たちには、無縁だったかもしれないのだ。

「さて、どうぞ乱世へ。猟兵(Jaeger)。――ご武運を!」
 真っ赤に染まったグリモアが、蜘蛛の巣を広げてみせて。未来の使途たちを包み込んだ!
 さあ、一切合切。戦火の幕開けである――!


さもえど

 好きな時代は飛鳥時代です。
 八度目まして、さもえどと申します。
 今回は戦争シナリオになります!
 皆さまと楽しく、そしてかっこよくできればと考えておりますのでよろしくお願いいたします。
 山岳地帯にいる上杉謙信配下のオブリビオンの軍勢を各々の方法で殲滅していただければと存じます。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 また、この度は大変タイトな執筆スケジュールになります。
 成功度達成次第でプレイングを締め切ってしまいますので、ご容赦くださいませ。
 それでは、ご活躍のほどよろしくお願いいたします!
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第1章 集団戦 『義勇兵の亡霊』

POW   :    我が信念、この体に有り。
自身の【味方】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    我が信念、この刃に有り。
自身に【敵に斃された仲間の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    我が信念、この矢に有り。
【弓】を向けた対象に、【上空から降り注ぐ無数の矢】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:シルエットさくら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

死之宮・謡
アドリブ&絡み歓迎

上杉謙信…上杉謙信…っと(UDCアースで購入した書籍を捲っている)…これか…強くないか…?どの程度盛っているかだが…これ程言われるレベルの実力者であることは間違えなさそうだな…愉しみだ…

【死を招く翼】展開…
エンパイアにはまだ制空権の概念は存在しないだろう?
途絶の「呪詛」で身を隠しながら上空から一方的に爆撃をしてやろう(全力魔法)…
仮に恐怖を感じてしまったら【翼】の効果が発揮されるがな?
相手の攻撃は自分に当たるものだけ「見切り」回避…
サイレントに騒々しく…

さぁさぁ…断末魔の悲鳴を聞かせて欲しい…それが私に癒しをくれる…





 恐ろしいほど、静かな夜に。
 月を背景にぽつりとひとつ、浮かぶ影があった。
 非常に高い場所にて一人、真っ黒な翼を生かして浮く彼女である。
「上杉謙信。上杉謙信――っと。これか。」
 ぱらり、ぺらりと好奇心に満ちた手つきで手にされる本を捲っていた。
 それは、UDCアースで手に入れられる「資料」である。日本の歴史とその偉人――というにはいささか限定的かつ熱量の在る本である。
 戦国武将のすべて、など謳われていたから手に取った程度のものではあるのだが。
「強くないか……?」
 どの程度盛っているのやら。伝説には背びれ尾びれが必須であった。
 ――生ける伝説のような女である。死之宮・謡(統合されし悪意→存在悪・f13193)。
 今日の彼女はおそらく「魔剣士」の彼女であろうが、やはり他の悪意どもと同じように彼女もまた、狂気と戦意のはざまにある存在である。
 そんな彼女に「強い」と言わしめた上杉謙信という存在とやらは。
 軍神、と呼ばれた存在である。
 UDCアース準拠で言えば、内乱続きであった自領土を統一し、度重なる出兵を繰り返した人物である。
 「敵に塩を送る」という故事成語のなりたちのひとでもあり、いわゆる――私利私欲の合戦を好まない人物であった。 
 道理をもって誰にでも力を貸す。
 戦いに興奮ではなく。どちらかというのなら義を問うような武将である。
 そんな情け深い「オブリビオン」であるのが、このサムライエンパイアでどう影響するのかを考えてから。
「なるほどな。」
 魔剣士は、己の足元――一群を囲っておくには小さすぎる城を見てから、周りの山岳一帯を見た。
 木々が生い茂り、この場に隠れているといわれるオブリビオンは「仲間を喪えば喪うほど強くなる」気質をしている。
 それは、――面白い。
 にぃいと嗤って見せた魔剣士である。このような手合いを使って今までも生き延びてきたのだろうなと、この世界における上杉謙信を考察し終えたところで書籍を亜空へとしまったのだった。
「愉しみだ。」
 まだ見ぬ強者との戦いを楽しみにしながら。
 彼女の背後から真っ黒な【翼】が生えるのだ。
 まるで――月に墨でもはねてしまったかのような、黒が。
 そして、たちまち姿を消した。己の身にまとう呪詛を活性化させて、光の屈折を利用して姿を消す魔剣士である。

 幸い、ほかの猟兵も最初の一撃に悩んでいるらしい。

 ならば、奇襲をしやすいよう、「奇襲」をしかけてやろうではないか。
「エンパイアにはまだ制空権の概念は存在しないだろう?」
 事実である。
 そもそも、飛べる種族はいたかもしれないが――いささか発展しすぎた発想にはまだついてこれていない。
 だからこそ、【死を招く翼(デスコール・アフレイド)】はきっとよく「効く」。
 そう踏んだのである。この魔剣士ができることといえば、蹂躙なのだ。

 ゆらりと体を前に倒して、空を舞う魔剣士は。
 落ちる。
 落ちながら――その羽を!!

「サイレントに騒々しく、だ。」
 ばらまいた。
 黒い翼の一部が、月の光に反射して赤黒い。それは、紛れもなく彼女の一部なのだ。
 赤黒の羽が、ぱちりぱちりと火種をちゃんと孕んでいるのを、首を横にすることで確認した彼女はゆっくりと目を瞑る。
「さぁさぁ。断末魔の悲鳴を聞かせて欲しい――それが私に癒しをくれる……ッ!」
 いっそ、最後の方は叫びに近かったやもしれない。

 こ れ は 、 空 爆 で あ る !

 人々の悲鳴は聞こえずとも、猛者どもの動揺と断末魔は聞こえてきた。
 真っ赤に染まり始める山々である。燃えるものが多いのだ、いくらでもその過激さは増すばかりで。
 地面に接すれば、その土を焼いた。
 木々にあたれば、木々をたちまち燃やした。
 猟兵たちにあてるようなへまはしない。むしろ――強者である彼らならば己で振り払えるのだろう。
 この場には、そういった兵しかいないはずなのだから。
 いたずらに舞った黒い羽根は、不可視の戦闘機となった魔剣士によって無造作に、それでいて無慈悲に爆撃を生み出す!

「はは――ははははははっ」

 踊 れ や 舞 え や 、 死 に 急 げ 。

 女の笑い声が響いても、その出どころなど誰にもわからぬ。
 ごうごうと、煌々と地上一帯を地獄絵図に変えてみせた漆黒の天使は滅ぼされた命の終わりを愉しむばかりだ。
 己の巻いた火種に当たらないよう、落ちるのをやめてまた飛び上がっては翼からの爆撃を繰り返す。
 弓を構えて矢を降らしたくとも、この女のことなど誰にも見つけられまい。
 ――まさに、鵺。
 不可視の化け物を穿つには、獅子の名をした刃もなければそれを振るう武人もおらぬ。
 弱きの集まりが脅威となった存在たちにとって、絶対強者のいたずらめいた地獄など『身に余る』のだ。

「おのれ、おのれッッ!!」

 人間らしい声で鳴いた過去どもに、トラツグミの鳴き声よりも気味の悪い女の声が響き渡った――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
◎★△

軍神上杉謙信の配下か、相手に不足は無いな
存分に此の力を奮うとしよう

目立たぬようクロークに身を包み、木陰に身を潜め襲撃の機を待つ
敵に隙が出来次第、奇襲を仕掛けよう

さあ、ショーを始めようか
召喚するのは電気纏った大剣
衝撃波で広範囲に電撃飛ばし攻撃するほか、電気纏う斬撃でマヒ攻撃
剣を振う際は怪力を込め全力で
剣技はお前達に劣るだろうが、力比べなら負けないさ

反撃の衝撃波は剣で武器受けするか
学習力活かして軌道を見切り回避したい
盾が必要な仲間がいれば此の身で庇う
損傷は激痛耐性で堪えよう

お前達を突き動かすのは信念か
然し此方にも譲れないモノはある
世界を、ヒトを護る為、胸に抱く勇気で
お前達の技を越えてみせよう





 剣の証である、紋章を背負っているのだ。
 機械仕掛けの彼が、このような熱さを諸共すまい。
 先の魔剣の女が撒いた火種で、あたりは大混乱に陥った。猟兵たち以外は誰もがこの焔の中を逃げ惑っている。
 機械兵器である彼の視界を表す黄金の明かりは揺らめいていた。暗闇に潜む真っ黒なボディの重厚感と、それでいて戦意がある。
「軍神上杉謙信の配下か、相手に不足は無いな。」
 ウォーマシン。
 内臓された己のスピーカーから放たれる思念を言語化した音にふさわしく。
 彼もまた、かつてはかの銀河帝国にてひとごろしの道具であったのだ。
 ジャック・スペード(J♠️・f16475)。今や『スペードのジャック』といえばヒーローズアースでは身を震わせるヴィランも多いだろう。
 人々のために闇に潜み、人々の笑顔をまっとうな理由でかつ、絶対に守ってきた「アイアン・ハート」を熱くする彼である。
「さあ、ショーを始めようか。」
 【ガジェットショータイム】。
 手にしたのは電気を纏う大剣であった!
 ばちばちと苛烈な稲妻を纏いながら、大きな体を跳ねさせて――突然の爆撃に戸惑う敵陣へと突き刺さる!

「てッ――敵襲ッ!!」
「もう遅い。」
 
 喚くようにした彼らに、黄金の光が「目を合わせて」やれば。
 内臓モニターが彼らの居場所を「ロック」し、それぞれの攻撃数値や行動の予測演算をはじき出す!
 彼らを視認しただけで得た情報は猟兵のつどいである、グリモアベースや他報告書によって作成されたデータベースにあったものを参照していた。
 スキャン結果――。
 かつて――この彼らは。
 オブリビオン・フォーミュラである『織田信長』に抗った猛者どもの果てであるのを知った。
 スペードは、この因果を哀れに思う。守るために戦って散っていった彼らが――今や、魔王の手先になってしまったというのか。

「ッはぁああァアアアアあああっっ!!」
「ぬゥ――!!」

 恩讐の一撃である。
 振るわれた義勇のなぎなたを剣で受け止めて、発生する衝撃波を後ろ足をいささか押し出されることで耐え忍んだ!
 過激な一撃であった。見事な剣技である、だが――!

「 力 比 べ な ら 負 け な い さ 」

 その大剣を、蹴り上げる!
 どう、と土くれとともに蹴り上げられた鋼が、薙刀で接敵した勇猛をはじき出したのなら。
 すかさず――雷撃!
 四方八方に飛び散った稲妻が、彼の視認できる限りでの義勇を焼いた!
「あ゛ぁああああァアア―――ッッッ!!!!」
 しかし、それでもなお!
 仲間を喪った彼らは強化の施しを受けるのだ。どう、と土を蹴って駆けてくる刀の義勇にはジャックもありったけの剣で応ずる!
 刀と、剣が交錯する。

「お前達を突き動かすのは信念か。」
「如何にもッッ!!」

 ぎちり、とけん制し合う鉄同士がわなないた。
 そのすきにとジャックの周りには多数の義勇たちが集まりだす。
 この焔、稲妻に仲間を焼かれてなお――撤退はしない彼らに、もし、この場でなければ心強い味方をしてやれたのだろうと黒が「ひとのこころ」を学習していた。

「然し、――此方にも譲れないモノはある。」

 彼は。
 本来ならば、廃棄されるマシンだった。
 今では豪奢なつくりをしていて、誰もが彼を頼もしく思うような黒と軍服めいたつくりに落ち着いたものの。
 製造元の銀河帝国では戦闘中にお役御免となって、スペース・デブリになってしまっていた――筈の生き物だったのだ。
 しかし、何の因果だったのか――これがのちに、ジャック・スペードたるダークヒーローを生み出すきっかけになるのだが、彼はヒーローズアースに流れ着くこととなる。
 ――そこで、多くを学んだのだ。
「世界を、ヒトを護る為――」
 押し出した。雷撃の大剣でその義勇を断った。 
 仮面をした義勇たちはそのさまを見てたちまちジャックに襲い掛かる。

 ――人の「こころ」。人のやさしさ。

 怒号めいた叫び声とともに切りかかってくるのなら、甘んじてそれを受ける。
 痛覚機能は意図的にダウンしてある。ダメージは破損程度で、欠陥には至らない。
 アームパーツ。その屈強なメタリックに刃が肉薄してみせたところで、このつるぎは止まれないのだ。

 ――人の危うさ、人のおそろしさ。

 蹴りを一発叩き込んで。
 簡単にその体がひしゃげるのが見えた。しかし、心は痛まない。
 次に放たれた無数の矢は、さすがに受けきれないと踏んだが己のパーツを貫くばかりで「こころ」を穿ちやしないのだ!
 絶えぬ。この想いは、燃える「こころ」は。決して絶えぬ!
 ダメージソースを演算して、モニターとなる視界からは警告の二文字が出た。
 破損部位が多すぎる。――しかし、関節は動くのだ。
 再び放たれた矢の一波に、あえて正面から向き直ってやった!

 世 界 に 与 え ら れ た 己 の 「 こ こ ろ 」 が 叫 ん で い る の だ !
 世界への恩義に報いよと、使命に燃えて『欠陥品』は英雄となる!

「――越える。」
 越えて、みせる!

 放射状に散った雷撃が、すべての矢を燃やした。
 信念に燃える義勇たちの身までも炭にするほどの、彼の「想い」が込められた一撃が瞬く。
 爆風。絶えず、爆撃と爆風。
 それに煽られたトレンチコートは端を焦がして、それでもなおはためいている。彼の――勝利を、歓迎するかのように。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・理彦
◎★

軍神・上杉謙信の配下か…気は抜けないね。
先ずはある程度の距離からUC【狐火・穿ち曼珠沙華】で攻撃。これである程度負傷してもらえると助かるね。

【破魔】を乗せて墨染桜で【早業・なぎ払い】
【殺気】を纏い【部位破壊・武器落とし】を狙った攻撃を仕掛けつつ【だまし討ち】で致命傷を与える。

敵攻撃は【第六感】と【聞き耳】で【見切り】
【カウンター】も決められれば僥倖ってね。

攻撃を受けても【激痛耐性】で耐えるよ。
けど、俺の帰りを待つ人が心配するから出来るだけ傷は負いたくないねぇ…まっ、戦争だしそんなことも言ってられないんだけど。


ゼイル・パックルード
◎★△
侵略することなんとやら、ってそりゃ別のヤツだっけ?
ま、しっかり鍛えられた奴らだろうし、楽しませてもらうぜ

さて、周りの映像は見せてもらったし【地形の利用】...潜めるとこをまず探して、監視の薄いとこを探す。

敵が単騎でいたら、近づけたら刀で【暗殺】。無理そうなら、最も近い隠れられる場所で【風斬り】で首を狙う。

敵が多ければ、【風斬り】で一人仕留めた後、もう突っ込んじまってもいいかもな。
俺一人注目されれば他のヤツも奇襲なり不意打ちなりしやすいだろうし。

とはいえ、他の猟兵のタイミングもあるだろうし、それならそれで素直に突撃するぜ。

敵の攻撃に対しては、こっちも【ダッシュ 】で動いて、【風斬り】で対応




 とかく、強敵の配下である。
 その情報だけで心が躍るのだ。まるで――体の芯から闘争を求め続けている彼にとっては。
「侵略することなんとやら、ってそりゃ別のヤツだっけ?」
 ゼイル・パックルード(火裂・f02162)は、先ほど黒の教授に見せられた図形を思い返しながら歩みを進めていた。
 炎を扱う彼にとって、今この様――燃える山中というのは恐れるに足らない。
 むしろ、彼の火炎をより沸き立たせるものでもある。ありがたい援護だったなとも思いながら、派手な開幕に潜む彼であったのだ。
 監視が今やどこも手薄であろうが、せめて濃いといえば城程度であろうか。
 ならば――と、一番火の手が緩いところに彼は己の狩場を見つけた。
 火の手が緩い、ということは。今この場で持ち場を動揺ながら守っている獲物たちは紛れもなく「己たちが狙われている」意識は薄い。
 目の前で仲間は燃えていて、義に厚い彼らである。
「東が燃やされた!助けに行くべきか」
「いいや、今あちらに行けば確実に我らも無事ではおれぬ」
 ――案の定、味方の心配ばかりで頭がいっぱいなのだ。
 闇夜に溶け、木を背にその会話を聞いてたゼイルは笑い声を殺すのに精いっぱいだった。
 こいつら、――殺される意識が足りないねぇ。
 ここは、戦場なのだ。ゼイルにとってはすでに此処は殺し殺される場所である。
 彼だって己の不意を突かれぬように、常に警戒してこの場にいるように「いつでも殺される可能性」を考慮しながら相手を殺すのが常である。
 それを――この時代、そしてサムライどもはわかっちゃいないのだ。

 さて、敵の数は多い。
 攻め入り方を焦らずに考えてあるゼイルである。殺すならば各個撃破が確実かとは思うのだが――。
 どうやら、この場には彼以外も目星をつけてやってきた誰かもいたらしい。
 ――猟兵だ。
 こちらへの殺意は感じないのを、ゼイルも黄金の瞳であたりを見回しながら悟る。
 ならば、互いの仕事を邪魔する必要もあるまい。ゆらりと――あたりの熱気まじりの空気が、彼を中心としてうねりはじめていた。

 ゼイルの攻撃準備を目にしながら、まず安心したのは。
「助かるね――有能な仲間が一緒だ。」
 出来るだけ傷は負いたくない。
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は、己の考えが甘いことは分かっていた。
 今は戦争である。そしてこの依頼は戦争のそれである。だからこそ、警戒は怠らなかった。
 ましてやあの軍神・上杉謙信の配下どもである。絶対の緊張感でこの作戦には臨まねばならない。負傷覚悟、という勢いの者もいただろう。
 だけれど――彼は。
 帰りを待つ、大切な存在があるのだ。
 淡く、真白の彼が――いる。この世界に、そしてともに未来を歩む存在が、己の怪我や負傷を見て悲哀に満ちるのも、あきれさせてしまうのも落ち着かない。
 一人で挑むのは、いくら警戒の薄いエリアであろうと無謀だとは踏んでいた。
 できれば戦いにこなれた猟兵が居て、さらにそれがより強い存在であればいいと願ってはいたのだが。
「まさに、渡りに船かね。」
 いささか――荒波のようではあるが。
 場の空気を操りだしたゼイルの姿を、木々越しに視界に入れてから理彦もまた己の炎の準備を始める。
 風向きが変わるのだ。
 ゼイルを中心に風が吹く。時計回りであることを確認してから、物音を立てないように慎重を極めて歩み始めた。

「――おかしく、ないか。」

 義勇の誰かがそう言ったのを、狐耳で拾う。
 ――気づいたか。
「風の流れが、急に。」
「……備えよ。猟兵どもの仕業やもしれぬ。」
 場の空気が張り詰めだした。だけれどまだ、誰も――己らのことを悟れてはいない。
 ゼイルに至っては動いていないし、理彦は小枝を踏み潰すことなく慎重に動いている。
 のそり、ゆらり。
 緩やかながら確実な一歩で、緊張もさとらせない。
 そして――ゼイルと真反対の位置にたどり着いたころに。

「 さ あ 、満 開 と い こ う か 。 」
 これで、ある程度削られてくれるとよいのだが――。
 穏やかな彼の声を合図として、そちらを多数が振り向いた!
「敵襲ッッ!!」
 ――もう遅い!!

 【狐火・穿ち曼珠沙華(キツネビ・ウガチマンジュシャゲ)】。
 火炎の恩恵を授かった曼珠沙華はたちまち咲き誇る。
 それは、この場を燃やすにはあまりにも美しすぎて。そして、義勇たちの虚をついてから――風に巻き上げられて勢いを増す!

「うぁああァアアッッ!!?」

 即 ち 、 満 開 で あ っ た !

 赤々とした世界が広がる。その中心で、微笑む理彦がある。
 この紅蓮どもは――彼を燃やしたりはしない。
 悠々とした手つきで、彼もまた薙刀を構えたのだ。銘を、――『墨染桜』という。

「いいねェ、やるじゃねえの。」

 そしてその騒ぎに乗じて、風の主が殺戮を始めたのだ!
 【風斬り(カザキリ)】。
 それは、かまいたちを起こすほどの真空状態を生み出して相手を斬りつける一撃である。
 もちろんまともに喰らっては――この義勇のように、上半身と下半身を切り離されることになる破壊力があるのだ。
「――ァ」
 絶命したことすら、わからないまま。彼らは黒灰となって消えゆくばかりである!
「くそッッッ!!」
「お口が悪いぜ。」
 なんとか、刀を折りながらでゼイルの一撃を躱した義勇が、仮面越しに舌打ちしたのを咎めながら。
 ゼイルはその胴体に蹴りを叩き込む!
「ッはァ゛――!!」
 血痰を吐きながら、呼吸器の壊滅を思い知らされる義勇にさらに確実である一撃として――その仮面ごと頭に刀を突き立ててやったのだ。
 他愛ない。
 ――こ の 火 烈 の 前 で は 、他 愛 な い !
 また、駆け出す。
 煌々と燃え盛る紅蓮を、風圧でまき散らしながら曼殊沙華をより勢いづかせてゼイルは嗤うのだ。
 派手に動き回るゼイルに皆が注視をするならば、その首を薙刀がさらっていく。

「おっと――させないよ。」

 ゼイルの方向に矢を向けた一体の首を斬り払って、理彦も嗤うのだ。
 返り血が――着物にどんどん付着する。
 彼が怪我をしているわけではないのに、真っ赤が彼を彩っていく。
 この汚れ、怒られるだろうか。――なんて面白おかしく考えながら、早業を展開してゆくのだ。
 ゼイルを狙う弓は後方から穂先で斬り倒し、そのまま薙刀の遠心力で弓手ごとたたき伏せる。
 舞い上がる曼珠沙華の火花が新たに誰かを燃やすのを確認したら、そちらに薙刀の持ち手で別の義勇を押し込んでやる。
 仲間同士、絶叫を上げながら燃えていく過去のそれらに。
「お熱いことで。」
 笑顔で、引導を渡す。
 そして――その首を確実に仕留めんと真空が理彦のそばを駆けていって、穿った。
 戦場で繰り広げられる、人々の情念と戦うために必死である義勇のなんと美しいことか。
 だから、確実に屠ってやるゼイルなのだ。
 彼にとってこれは殺戮ではない、戦争でありながら、闘争である。
「まだやるぜ。俺はな。――あんたは。」
「もう少し働くよ。一緒に居たら仕事が楽に済みそうだ。」
 炎属性どうし、彼らの戦い方は――相性が良い。
 非常に効率的であるから、今後のことも考えて余計なダメージを負わぬ戦い方ができるのはお互いにとって利益でしかなかった。

 片や、己の自己満足のために。
 片や、己と己の愛の行く先のために。

 信念は真逆であるからこそ、割り切った仕事ができるというものである。
 どちらから声をかけるというのもなく。
 当たり前に、同じ方向へ。歩みを進めていくのだ。
 苛烈に燃える曼珠沙華を足跡代わりに広げていきながら――火種どもは、強襲の手を止めない!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
◎★△

わたしは常日頃は変態と呼ばれる男。たしかに普段は多少おちゃらけているかもしれないが、曲がりなりにもサムライエンパイアの出。
今回はネタ一切抜きで行くのだ。

さて今回の敵は味方のために不利な行動をすると身体能力が上がると。ならば味方がいない状況にすればよいのだ。武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて候という奴なのだ。
幸いにも舞台は山岳地帯。身を隠す場所には事欠く事なし。敵の様子を伺い、誰かひとりが群れから離れた所で一気に近づき、刀と脇差(と呼ぶには大きすぎる剣)で斬る!
剣刃一閃!二刀流で二閃!2回攻撃で四閃!あとはたくさん!!
援軍が来る前にカタをつけて、1人倒したら逃げる!





 彼こそ変態、彼こそ奇人――であり、鬼神どもの長であると。
 どこかの誰かがうそぶいたのか、果たしてそれは本当なのか。
 ある種、生ける伝説である彼もまた、この静かでありながら混乱をもたらた戦場に潜んでいた。
「あッついのだ……。」
 実際、暑い。
 大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)はサムライでありながら剣豪である。
 奇々怪々を操るような技能は持ち合わせていないし、ましてや炎に対する術をなにか手にしていたわけではない。
 燃え盛る紅蓮どもは――焼き討ちを得意とした先鋒の猟兵たちの作戦ではあるのだが。
 麗刃にとっては、おそらく義勇どもと同じほどの威力があった。
 しかし、この作戦は大いに成功度を上げているのを知っている。だからこそ――彼はいつも笑顔絶やさぬ顔を張り詰めさせ、この蒸し暑さと命を焼く熱さに耐えているのだ。

 麗刃は、大豪傑家の次期当主である。
 代々当主どもがみな「奇人」を突き抜けて「変態」であったものだから。
 彼もまたそうならぬようにと願ってつけられた名前であった。
 麗しの刃――などとあてがわれたそれには従わなかったのだけれど。
 だがしかし、サムライエンパイアに根差した一族の男である。
 常日頃はおちゃらけて、しまりのない彼かもしれない。だけれど、この場は――「いくさ」の状況である。
 武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて候。
「――そういう、奴なのだ。」
 彼もまた、そうであるように。
 この地獄を体現した空間で、鋭利な歯をみせて静かに、そして汗を顔面から吹き出しながらも笑って見せたのは――彼が「変態」だからに違いないのだろう。

 むやみに攻め入るのはよろしいと思えない。
 麗刃は武者であるから、忍びの心得などはないのだ。
 派手な大立ち回りをしてやる気にもならない。どんどん仲間を燃やされ殺され――義勇たちの熱もあがりきりだろう。
「此処を任せた、我は彼奴らの助力へ廻る!」
 ――そうなるだろうな。
 とは、踏んでいたのだ。
 義勇に満ちた彼らである。掃討すべきオブリビオンではあるが、もとはといえば反逆のために結束した存在たちだ。
 未来に愛想を尽かせ絶望しきったのだろうが、お互いへの信頼と絆、そして忠義は厚い。
 ましてや、あの上杉の配下どもだというのだ。
 ――そうでないはずがあるまい。
 まずひとり、持ち場から離れて仲間のところへはせ参じようとする彼がいた。
 得物は刀である。弓ではなかったのだ!
「ちぇええええええええええええぃイイあァッッ!!」
 ならば!
 麗刃の獲物にもなりえる!
 抜き放ったのは、いつもの刀とそれから「脇差」と銘打たれたにしては刀身のあるそれである!
 【剣刃一閃】。

 されど、持つ刀は二つであるから――二 刀 流 で 二 閃 ! 

「ぬわッッ!?」
 驚きと同じくして戦意を沸かせた義勇がその一撃を刀で食い止める!
 鉄の刃同士が火花をあげて、この燃える戦場を彩った。
「――猟兵かッ!」
「いかにもなのだ。だが――補足するなら!!」
 そのまま、受け止められた刃を少し太刀筋ごと手首をひねる。
 ぎいいい、と悲鳴を上げて火花を散らしてみせながら、熱された刀身同士が紅蓮に染まっていた。
 当たれば死ぬ、当たれば負ける。
 だから――だからこそ、この「変態」は燃え上がる!

「わたしは、麗刃。――大 豪 傑 麗 刃 ! い ざ 、推 し て 参 る ッ ッ ! ! 」

 ぎゃりりと悲鳴を上げた三つの刀が、一度外れて!
 麗刃はそのまま、退くことなく足を踏み込んだ。いざ、この時こそ攻め時である!
 一撃目で二閃の攻撃を受け止めたならば、次の二撃は四閃目になる!
「うらァアアアあああッッッ!!!」
 咆哮、ともに斬撃!
「――ちィイッ!!」
 防戦一方の義勇こそ、たった一人であるが。
 彼は――この場にして斃れた仲間たちの分だけ強化されているのだ。
 一人一人を、確実に仕留める。そしてその一つに、全力を注ぐ!

 命 を 、 ま こ と に 削 り 合 う の だ !

「愉しいのだ。――そうだろう!?」
 それが、愉しい!
 麗刃がその表情をてらてらと火に輝かされながら、汗まみれの顔面で笑うのだ。
 刃が頬をかすめても、血が噴き出していても。
 ――大豪傑は、倒れない!
「気狂いめ!!」
「気狂いで結構!」
 狂わねば、戦えぬ!「変態」でなければ彼は彼にあらず!

 ただただ刀を振るって――最後に立っていたのは、大豪傑の彼なのだ。
 血まみれである。己の血でもあれば、強敵であった義勇のそれもある。
 では、次はどうするか。
 刀をしまって、――騒ぎを聞きつけた誰かの声を、風越しに聞いた。

「逃げる!!」

 宣言。そして、脱兎!
 急斜面である山岳を駆け下りながら、炎に呻きつつも逃げおおせる一人の奇人であり、鬼人であり、鬼神がごとく剣豪が。そこに居たはずだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
さて、中々厄介な相手のようですが上手く立ち回りましょう

【忍び足】で静かに移動しつつ【地形の利用】【罠使い】で木々の間に【毒付与】した糸などを張り巡らせます

「準備は整いました、狩りの時間と参りましょう」
UC【颯影一旋】でイタチの颯を呼び寄せ、五感を共有、敵を追跡
「彗も援護をお願いしますね」
[飛星流克]による彗(鷹)の【援護射撃】と合わせて罠を張り巡らせている方へと追い込んで行きましょう
うまく罠に仕掛けられたなら一気に仕留めるよう[操花術具:鬼灯薙刀]に【属性攻撃:炎】【なぎ払い】で燃える斬撃で斬りはらいます


ヌル・リリファ
◎★△
簡単な言葉は平仮名、難しめのものは漢字でお願いします

わたしのやることはかわらない。オブリビオンを殺す。それだけ。

まず、みつけた部隊がわたしにきづくように、堂々と正面からめだつように接近する。

……ようにみせかけるよ。

人形は正々堂々とかきにしないから。
相手のめにつくようにいくのは魔力でつくった幻影。ただの偽物だよ。

幻影は、ある程度敵をひきつけたら閃光をともなう爆破で視界をうばいつつダメージをあたえさせる。

あとは、そのすきに奇襲。
いきのこった敵をルーンソードで殺していく。
多少身体能力があがっても視界がダメになってれば有利だろうし。
わたしはマスターの最高傑作だから。まけるきはないよ。





 仲間の死を知るたびに、義勇の御使いどもは苛烈になるばかりだった。 
「おのれ!おのれ――!」
「猟兵ども、何処に居る!!」
 そのさまを、木々の頂上から見下ろす彼女がいる。
 ごうごうと燃え広がる地上の火の海で戦う気はさらさらない。
「さて――、うまく立ち回りましょうか。」
 薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)は、己の愛鷹を右肩に乗せてその頭を撫でてやった。
 短く好意的に唸った相棒は、今にも千夜子の合図を楽しみにしている。目をきらきらとさせて――ともに、戦況を見た。
 地獄というにはあまりにも人為的すぎるのだが。
 千夜子が夜空の恩恵を受けて、木々の頂上から義勇どもを見下ろしていても悟られない。
 彼女の影が落ちないほど、地面が真っ赤に照らされているのを確認して、風に乗って立ち上る火の粉にアイデアを探る。
 どのように立ち回るのが――効率的だろうか。
 正々堂々と行くのもいいが、今回は殲滅が目的である。ひとりたりとも、生きて返すな。
 そういうことなのだ。ならば、短時間でよりよく「狩り」を行わねばなるまい。
 鷹とともに生き、鷹とともに狩る彼女である。しばし、考える時間を取ることにした時だった。
「あ、あれ――。」

 目の前の集団から感じるのは、紛れもない殺意。
 仲間を殺されて怒っているのは、シンプルな理由でありながら奥深いものではある。
 ――この集団を、彩るのは炎の赤だけではない。
 怒りの赤が、そこにあったのだ。されども。
「わたしのやることはかわらない。オブリビオンを殺す。それだけ。」
 彼女が動く理由だって、とてもシンプルである。
 ヌル・リリファ(出来損ないの魔造人形・f05378)。
 彼女こそ記憶なき少女人形であり、その記憶が眠る前に何があったのやらも知らぬ純粋な存在である。
 普段は無邪気で、彼女なりに活発にうごきまわる少女らしいボディに適した振る舞いをするのだが。
 ――一度、意識を戦場に切り替えたのなら。
「殺す。」
 無垢なのだ。ヌルは、無垢であるから――。
 マ ス タ ー
 製造者の最高傑作として、その殺意を切り離せないのだ。
 彼女こそ、忠義の生き物である。この過去たちが未来を否定したように、まったく同じ感情でヌルも彼らを切り捨てる。
 堂々と――戦意と炎に燃えるヌルが前へ前へと進んでくるのが、おそろしい。
 しかし彼らもそこから退かない。
「こちらと――どうやら志は同じらしいな、少女よ。」
「ならば斬り伏せる。それがお互いのためになろう!」
「構えい、構え――!」
 それぞれの武器が構えられる。刀、槍、薙刀、それから弓。
 しかし、臆する様子もなく――そして子供ながらの純粋な殺意でたたき伏せんと魔力を纏うヌルを見ていた千夜子である。
 止めないと。
 だけれど、やはり違和感があるのだ。
 普段の千夜子ならこの状況で、考えるよりも先に飛び出していただろう。
 即興の作戦で――成功度は落としてしまっても、きっと勝利を収めることは約束できる。
 だけれど――踏み入るには少し早すぎる気がして、まだ相棒とともに此処にいたのだ。
 予感がする。
「『駆けて、颯』」
 【颯影一旋(ソウショウイッセン)】で呼び出された愛らしい鼬が、とろりと体を潜ませていく。
 頂上にいた千夜子の木から枝葉をかきわけするすると降りて――風と共に飼い主の要望に応ずることにした。
 この場に、もしかしたら今目の前にあるヌル以外がいるやもしれない。
 それはほぼ、狩人の勘でありながらなによりも頼れる情報だった。
 走る鼬の視界を――脳裏にながす。
 低い地面を走って、炎をかき分ける彼が少し後方で見つけた人影があった。

 ヌルだ。

 こちらのヌルは、ルーンソードを持っていた。
 周囲の炎を吸い上げて、攻撃準備を完了しきっているようである。
 明らかに――これは、彼女の作戦だった。
 それを理解した千夜子である!と、と身軽に木の頂上から別の木へと飛び移った。
 己の手にはしかりと鋼糸のようなものを手にして――毒を塗り込んでいるこれでありながら布陣を敷いてゆく。
 
 そして――すべての準備が整ったところで、後方で閃光があった!
 それからたちまち、轟音――爆発!
 地面の揺れを感じて、「わ」とふらついたもののすぐに態勢を整えた彼女である。

「ッ、準備は整いました、……狩りの時間と参りましょう!」

 彼女の直勘は、やはり正しい!
 爆発したのは、「ヌルのかたちをした人形」である。
 【虚水鏡(ウツロミカガミ)】は此処に成功し、役目を果たした!

「ッぅうう――!」

 スタン・グレネードに近い効果があった。 
 まともに彼女を敵視していた義勇の彼らは、たちまち目を焼かれて悶絶する!
 何度も仮面の下で瞬きを繰り返していても、仮面の上から――「見るためにあけてある穴」からの集中した光を浴びてしまったのだ。
 しばらくは視界が真っ白で、何も見えていない。
 この隙に――。

「めを、欺き。欺かれたきぶんは、どう?」
 
 冷淡で、それでいて確信の在る声が響いたとたんに。
 炎を纏いながら「本当の」ヌルが一人の義勇に接敵!
 大きく薙ぎ払った炎のルーンを宿す大剣が、その体をとらえて――派手に吹き飛ばした!
 むやみやたらに吹き飛ばしたのではない。この先に、仲間がいるのを彼女の足元にある鼬が教えていたのだ。
 ――まだ見ぬ味方の、狩場へと導く!
「あっちだよ!」
 そのまま、続けて交互に足を踏み出して――また火だるまにして吹き飛ばす!
 ヌルがとどめをさすのではないのだ。
 彼女はそのきっかけであり、トリガーであるにすぎない。こういう役回りを――彼女の知り合いは「端役」と言っていたのだっけ。
 そんなことが脳裏をかすめて、なんだか楽しくなってきたのだ。
 無邪気に、そして仲間とともに敵を屠る!
 その一撃を、ヌルはまた放つ!

 次々と、蜘蛛の巣のように張り巡らせた糸たちがった。
 そこには毒が塗られ、燃え盛りながらもなお忠義を叫ぶ彼らをとらえていく。

「おのれ、おの゛れェ゛エエ゛エ!!!」
「けんし゛ん゛、さま、謙信さ゛ま゛――ッッッ!!」

 ごうごうと燃えながら、すべてが相棒と巻いた鋼糸にからめとられていく。
 手首を縛られ、燃えながらも首を絞められ、そして足首から吊り下げられる火の玉どもがあった。
 その状況でまだ――叫ぶのは。いっそのこと、狂気的でもある。
 だから、早々に屠ってやろう。
 千夜子が己の――薙刀を握りしめた。
 一気に、屠るべきである。周囲の炎を吸い上げ、操花術具:鬼灯薙刀と名付けられたそのからくりめいた薙刀には彼女の想いも宿る。
 美しい、忠義だったはずだ。

 ――過去でなければ!

「 成 敗 ――ッ ッ ッ ! ! 」

 火柱が、山中に立ち上る。
 潰えるはずだったかつての義勇を焼きながら、その悲鳴も呑み込んで。
 大きな火焔が――きっと、軍神の目にも届いただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
先ずは敵の力を削ぐのが効率良さそうネ
樹々に紛れ近付きましょ
斬り込んでく猟兵とは別方向から行動起こせば攪乱にもなるかしらネ
『だまし討ち』も立派な作戦だもの

さぁ、たーくさんつかまえておいで
足元、連なる樹々の影から【黒嵐】で仔狐喚び出し
その旋風に『マヒ攻撃』乗せ敵陣へ撃ち込むヨ
倒すより多くの敵の技を封じるのが目的
『スナイパー』でしっかり狙い
『2回攻撃』で避けられた範囲をカバーしてくネ

未だ見ぬ先の命を使うのに躊躇いなどないケド、安売りしたい訳じゃナイ
コッチへの攻撃は『見切り』躱して『オーラ防御』
右目に仕込んだ「氷泪」で『傷口をえぐる』よう雷奔らせ『生命力吸収』
喰らうコトだって手抜きしてあげない


リア・ファル
WIZ
アドリブ・共闘歓迎

OK、機動戦艦の戦略、とくと味わってもらおう!
「今を生きる人々の明日の為に。行こうか、イルダーナ!」

できる限り地形を利用、情報収集をして、
上空視界の悪そうな山岳・森林辺りで奇襲を掛けよう

UC【召喚詠唱・楽園の守護者たち】を使用して、
迷彩を施して潜ませ放っておく

イルダーナに乗ったボク自身を囮にして、
上空へを意識を向けさせよう

「さあさあ、ボクはこっちだ、よく狙えってね!」
高速で移動し続けて、出来るだけ的を絞らせないようにしよう

充分に引きつけたら、アニマロイド達の出番さ、
小型の利を活かして、一気に攻勢に出よう

「その信念、ちゃんとこの身に刻んだよ。だから骸の海へお帰りよ」





 戦闘スタイルとして、この二人は特に正反対であるから。
「ふン、フン、フン――♪」
 楽し気に、木々をかき分けて鼻歌なんて歌えてしまうのは、ほかの猟兵たちが騒がしくしてくれているからである。
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)は派手な立ち回りを得意としない。
 どちらかというのならば、目立つような火力の在る猟兵の一撃で逃げ惑う獲物たちをかく乱させてやるのが好きだ。
 妖狐らしい――いや、「あの人」にそれがなかったから。
 狐耳も尻尾も、本来の色も隠してしまっているのだけれど。はてさてどうして、「だまし討ち」作戦が上手な彼である。
「ウンウン、みんな派手にやってるねェ。」
 その分だけ、この狐は戦いやすくなっていく。
 彼は――その寿命を削るのにためらいはない。
 しかし、それを安売りしたいわけではないのだ。ライゼは、決して自暴自棄な生き物ではない。
 失った誰かのことを悲しみながら、その皮を被って生きていくほどにはこの世に未練だって希望だってある。
 いついかなる戦況でも。彼は己とその未来が生き抜くのを第一に動いている。
 ――だから、遠くで轟音がした時には思わず微笑んでしまうのだった。

 轟音の主である。
「――今を生きる人々の明日の為に。行こうか、イルダーナ!」
 正しくは、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が跨る制宙高速戦闘機『イルダーナ』の嘶きである!
 彼女の二輪を模したそれは、宙を支配するものであるから。
 ふわりと浮いた彼女は――わざと相棒の咆哮をしらしめてやったのだ。
 誰もが彼女を見上げた。それは、遠くにいたライゼすらもそうであったように!
「やはり猟兵ぞ!構えィ――!!」
 義勇たちが弓を構えて、彼女に放つ!
 しかしその動きはリアの手中である!その反応を待っていたのだ。
 上空に向いた意識があるのなら――下で隠密をはかる猟兵たちも動きやすいと踏んでいる。
 もちろん、それはリアの恩恵を授かった彼らも「そう」なのだった!
「さあさあ、ボクはこっちだ、よく狙えってね!」
 作戦を悟られるわけにはいかない。派手に目立った今だからこそ、リアは高速でかく乱するように動き回る!
 急降下。――そして、超低空飛行、のち超急上昇でけん制を行いながらも、義勇たちの注目を集め続けようとした!
 この動きは、ポテンシャルが高く常日頃、マルチタスクも真っ青なほど活動量の多い彼女だからこそ追いつけ、そして実行できる作戦である。

「――ッぎ、!?」

 リアが上空で身軽に、そして派手にイルダーナと共に無数の矢を躱しているころ。
 懸命に弓を放ちながらも機動戦艦――リアとイルダーナの高速に追いつけない義勇の首を、狼が喰らいついていた。
「狼!?」
「なぜ――この山中に!」
 動揺、ご尤も。
 悲鳴とどよめきを聞いて、リアが満足そうに笑う。
 獣は、本来野生であればあるほど山火事には敏感であり、この焔の海から遠ざかるのが普通なのだ。
 しかし――先ほどの義勇の喉笛をかみちぎって、真っ赤に口を塗ったのは狼ではない。

 【召喚詠唱・楽園の守護者たち(ファンクションコール・アニマロイズ・ファンタズム)】!!

 ここまで、すべてデコイ作戦だった――。
                            ケ モ ノ 
 それを知った義勇どもが、仮面の下を真っ青にする背中にアニマロイドたちがとびかかる!
「うぉ、おおおおお!!!」
「放せ――はなせッッ!!!」
「我らが忠義、畜生などには屠らせぬッッッ!!!」
 もがく、まだあがく!アニマロイドを弾き飛ばして、仲間を目の前で喰らわれてもなおまだ立ち上がる。
 いいや、――義憤。
 憤りを力に変えて、彼らの攻撃は果敢を増した!

「 斬 る ! ! ! 」

 その彼らを――、撫でるような、黒があった。

「さぁ、たーくさんつかまえておいで。」

 まるで、甘い煙のような声がある。
 漂うような男の声は、宙で嘶く二輪のそれで目立たないはずなのに――義勇たちの視線を引き付けたのだった。

 【黒嵐(アラシ)】。

 木々の根元から這い出た真っ黒な狐どもが、彼の儀式を彩っていく。
 ライゼが、ゆらりと陰に溶けながらも義勇たちの前に姿を現した。
 ぞるると現れた仔狐どもが、義勇の顔を撫でていって――仮面を破砕する。

 そして、巻き起こるのは!!

 真 っ 黒 な 疾 風 ! 

「うぅ、う、う、うううおおおおおお――――ッッ!!!!!!」

 巻き上げられながらも義勇たちは、風圧で仮面越しに目を使い物にならなくしていく!
 目を、開けていられないのだ。
 だから――この風圧に乗ってライゼは己のうすいアオを乗せる。
 氷泪と、名付けられたそれが。ライゼの流れぬ涙をかたどって――雷が走る!!
 ラ イ ゼ は 、 喰 ら う こ と に 手 抜 き を し な い 。
 ばちばちとひどく空気をはじいてから、あたりの義勇たちをしびれさせていけば!
 これを好機として、上空に潜んだリアの獣たちが帯電したままうつろになる彼らの喉を、胸を、腕をかみ砕いていく!

 がひゅ、と最後――。

 その場で最後まで抗った義勇の口の端から、血泡がこぼれた。
「その信念、ちゃんとこの身に刻んだよ。だから骸の海へお帰りよ」

 最後まで、立っていたその忠義だけは。
 敵でありながらも、歪んでいながらも見事なものであったことをリアも認めた。
 そして、ライゼも――そのさまを、その信念を――生命力として、喰らう。
「お疲れサマ。」
 その一言は、果たして隣に降りたリア宛てだったのか。
 この――名もなき義勇宛てだったのか。

「け、っ――けんしん、さま。」

 だれも狐の真意をわからぬままに。義勇は黒煙となって立ち昇っていったのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァン・ロワ

木があるなら使わない方が損だよね~
地形を利用して少し離れた場所に蜘蛛の糸を張り巡らせる
目立たない様に暗がりに
止まれない様に下り坂に

罠ができたらあとは追い込まないとね
【影渡り】で黙視した
部隊の後方その影へ
渡った瞬間間近にあるその足にたっぷりと毒を塗った牙、峨嵋刺を突き立てて直ぐに移動
一撃で死ななくても気にしない
動けない獲物ならあとで狩ればいいしね~
何人か攻撃したら闇に紛れて叫ぼうか
敵襲だ~ってね!
目に見えない襲撃の恐怖があれば
多少判断力も鈍るでしょ
蜘蛛の糸の方へ逃げてくれるなら最高だけど
逃げないようなら逃げる姿を見せて追って貰おうか
さぁ何人かかるかな?
糸を切るような悪い子は
直接攻撃さようなら~





 お誂え向きだな、と思う。
 燃える視界と、それから砕ける音と、悲鳴と。
 ――義勇の終わりが刻一刻と迫っているのを、愉し気に耳をはためかせてやりながらヴァン・ロワ(わんわん・f18317)が聞き届ける。
 さて、ヴァンの目でこの戦場を今一度見てみる。
 燃え盛る炎は、「あらかじめあったものではない」にせよ利用できそうだなと思いつつ、顎に滴る汗を拳で拭った。
 ヴァンは。
 その出自が奇妙であった。
「木があるなら、使わない方が損だよね~。」
 ゆる軽い声色でけらけらとこの状況で笑って見せる彼である。
 実際、彼にとっては今この場は狩場に適しすぎていた。
 ヴァンは、――殺した相手の子供を、殺し屋として育成することで根を広げていた組織の出である。
 その在り方に、その正義に疑問を早いうちに抱いてから、壊滅まで追いやった人狼病の感染者だ。
 ――長く生きられないがゆえに、命というものには敏感なのやもしれない。
 足を進める彼に迷いは全くない。
 まるで、初めからそうしようと思っていたかのように、そして――さきほどのホログラムでの地形を完全に暗記している殺人特化の脳を働かせてやりながら歩んでいくのだ。
 木がある、暗がりである、そして――山道である。
 山道であるのならば、ここには下り坂があって当然だ。
「いけないねぇ、真っすぐな子たちにはこういうとこ、辛いでしょ。」
 活かしきるのが。
 けらりけらりと嗤いながら、彼は――彼の、巣をあっという間に作って見せたのだ。
 これは、彼にとっては狩りである。
 狼は獲物を集団で追うものではあるが、生憎今この場には狼が彼だけだ。
 猟兵たちが混乱を巻き起こしているから、彼だけの行動でも過敏すぎるほどに反応するだろう。
 ――真面目ちゃんたちだし。
 笑いをかみ殺しながら、ゆるりとヴァンは己のコードを組んだ。

「ええい、どうなっておる!」
「向こうの部隊もせめられておるのだ!」
「助けに行かねばならんぞ、どうする!」
「何処から向かうべきか――!」

 動揺。
 そして、恐怖と忠義がせめぎ合っている彼らを、すべての木々とその影が見ていた。
 ――ああ、いけない。いけないなぁ。
 こんな場所で。殺意渦巻くこの場所で、固まって己らの顔だけを見ているなんて。

「ぎ、ッ!?」

 反射的に腕を押さえた義勇が突然悲鳴をあげたのを、ほかの義勇が勢いよく肩を跳ねさせていた。
「どうしたっ!?」
「うで、が――!」
 喚くそれが刀を取りこぼす。握っていられないほどの傷ではないのに、と本人も喚くのを、隣の義勇がその傷口を見た。
 じくじくとあふれる赤のほかに、真っ赤に腫れてから変色――いいや、もはや腐食を始めたそれである。
「毒だ。」
 ぞ、っと集団に悪寒が走って。

「敵襲だ――――!!」

 何処かの影から放たれた吠えがあったのだ。
 わぁ、と逃げ出そうとする彼らに、追撃の浅い攻撃が入っていく。
 ここで仕留めてやる気はないのだ。
 太腿を斬って、転倒させる。それを起こそうとした獲物の背中を斬る。
 我先にと逃げ出そうとする義勇の生きぎたなさに、少し賞賛を覚えながらもまた腕を斬る。
 目に見えない――その恐怖というのは。
 この「サムライエンパイア」という世界において。

「お、お、おのれッッッ!!魑魅魍魎が!!」

 オブリビオンの仕業であると――想われがちなのだ。
 同士討ちをされている、間引かれていると解釈した彼らである。
 絶望、悲壮、動揺、恐怖。
 思ったよりも――刺さったらしい。
「あは、ははははは―――ッッッ」
 高らかに笑ってやれば、より恐怖も増すだろうとわざとヴァンは大声で喉を震わせてやった。
 これは、【影渡り(ハイ・アンド・シーク)】。
 今この場、闇夜においてはすべてが影となる。すなわち、すべてがヴァンの足場となるのだ!
 てらてらと燃える地面にさえ気を付けていれば、どの影からも彼の手は伸びる。 
 「蜘蛛の巣」まで案内するのに、そう時間は要るまいと――追撃をやめない!
 腐食が始まって、体の一部が黒煙に変わっていっても義勇の彼らが逃げようとするのは、やはり忠義の生き物だからだろうか。
 それとも。
「人間らしいなぁ」
 人間だった、からだろうか。

 先鋒にいた義勇が足を踏み外して、急斜面を転がっていくのを影で見る。
 彼の後を追っていた後続のそれらも同じように転がって、無数の糸を木々に結った蜘蛛の巣に飛び込んでいった。
 糸が頑丈で柔らかなそれならよかったのだろうが、――そうでない。

「さようなら~。」

 やんわりとした笑顔で、それからゆっくりと手を振って。
 鋼糸で編まれたそれらに細切れにされていく義勇を、小さな彼らがもっと小さくなったのを確認して。
 人狼は、月を背後に嗤うのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
◎★△

事前に分かっているのだもの。
地形や周辺の情報は確り頭に叩き込んでいくわ。

ちゃんとした兵であるなら、余り近寄れはしないかしら。
近場に背の高い樹々があれば鋼糸を伝ってその上へ。
なければ、踏み込んで刃の届くギリギリの位置に潜みましょう。

奇襲が効果的、とは言われたけれど。
隠密してとは言われていないのよ。
初撃が気取られなければ、……否。
気取られても、それより先に刃が届けば事足りる。

《ヤクモ》、出力全開。最大加速。
――反応なんてさせてあげない。
これは嚆矢。
死角から最高速で踏み込んで、刃の触れるすべてを斬り果たしましょう。

ほら、こっちを見て頂戴。
他の皆の目眩ましになるよう、せいぜい派手に征くとするわ。


リーオ・ヘクスマキナ
えーっと、ウエスギ……さん? なんかスッゴク強いみたいだねぇ
本人も強くて、指揮官としても高名……厄介だなぁ

部下が相手とはいえ、油断は禁物
……ゲリラ戦の真似事でもしてみようか


山間の一角、城や敵部隊を目視できる地点からの狙撃戦闘
(狙撃開始前、事前に少しだけ狙撃ポイントに使えそうな場所の確認を行う)
ただし、最初だけはド派手な一発で
壊すと後々戻ってきた住民が困るような施設は避けつつ、敵が程々に固まっている地点を狙ってユーベルコードを使用
弾丸に込めるため、自身の体を通っていく大量の魔力には痛みと吐き気を堪えつつ

その後は数射毎にポイントを変更しつつ、程々の所で撤退



ちょっとやり過ぎた……ぎぼちわるい……





 事前にわかっていることは多い。
 奇襲のほうがうまく刺さることも知っている。だけれど、その他は任された猟兵たちの好きなようにやってよいと聞いていた。
「――隠密してとは言われていないのよ。ね。」
 しゅるりと鋼糸を手繰って、たくましい樹の上方へ登っていくのは花剣・耀子(Tempest・f12822)である。
 義勇の兵どもはしかりと訓練を受けているだろうし、彼らが没した理由は戦死であったはずだ。
 だから、あまり近寄るのを薦められなかったのだろうなと燿子は先の説明を思い返す。
 猟兵も超常の存在であるが、オブリビオンもそうに違いないのだ。
 油断は作戦の失敗と死を招く。だから、自分の一番得意な方法で出るとして――場所を選んだ。
「えーっと、ウエスギ……さん?なんか、スッゴイ強いみたいだねぇ。」
「ええ、厄介だわ。斬り伏せれば同じだけれどね。」
 ひょいひょいと身軽に木に登る耀子のようには、彼は動かない。しかし、木に背を預けて引き続き資料を眺めている。
 リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)が手にしているのは、彼用にと用意されたアナログな紙の資料だった。
「本人も強くて、指揮官としても高名……厄介だなぁ。」
 記憶がないながらに、――理解できるものがある。
「どういう意味の厄介かしら。」
 それを察するよりも、尋ねたほうがはやいのが耀子だ。
 耀子は、斬ることに長けてはいるが軍略や戦略には非常に疎い。尋ねられたリーオのほうが、「傭兵」としてのあれやそれやが染みついている。
「ええっと――有能な指揮官で、この人は義に厚い人だったでしょ?ぶっちゃけ、この人の部下だからって油断できないことが多すぎるんだよ。」
 リーオが言うには。
 おそらく、命を顧みないのではなくて「生き残る」という手段をとるから面倒なのだという。
 頭の良い上司の下には、頭の良い部下が自然と育つものだ。
 適材適所、そして瞬発力や判断力も優れているのではないかと彼は考える。
「仲間を殺されたら殺されるほど強くなっちゃうんだ、たぶん――僕らが嫌がることをするのが上手だよ。」
「へえ。それは困るわ。で、対抗策は?」
 耀子が真っ青な目をぎらぎらとさせてリーオを見下ろす。リーオは、真っ赤な瞳でそれを見上げて、受けてから、燃え盛る山を見た。
 彼らがいるのは、――山間の一角だ。
 スナイプにちょうどいいかと思ってリーオが此処を陣取った、そして攻撃力の特化である耀子を招く。
 最強の布陣のはずである。だからこそ、効率よく友好的にお互いを使いたいのだ。
「――こっちも、適材適所で行くべきだ。」
 それも、アドリブ多めの。
 リーオが月を見上げて、己の武器を展開するのを見下ろす耀子が微笑んだ。
「得意分野だわ。」

 こちらに走ってくる部隊がある。数は一〇人程度だろうか。
 ぜえぜえと息を切らして、しかし己らの回復を見込んで山角にやってきた。
 ここに、まだ火の手は来ていない。もとい――リーオと耀子の狩場であるから、「避けられている」というのもある。
 九死に一生、藁にも縋る思いで走ってきた義勇たちが、息を整えるために立ち止まった。
「あと何人いる!?」
「――わからぬ。てんで、此処に来るまでに誰も見ておらん」
「バカな、ああ、くそ。謙信さま!!」
 仮面をはずさぬまま、頭を掻きむしる彼などは絶望に心を蝕まれ始めているのだろう。
 哀れなものだ――と、スコープ越しに見つめたリーオがいた。

 【赤■の魔■の加護・「化身のサン:魔法の終わる時」(パラサイトアヴァターラ・オークロックベル)】。

 これが、開戦の合図となる!
 着弾点はきちんと考慮した。
 リーオは後々のことを考慮する策士でもある。
 戻ってきた住民が困るような施設は避け、そして今彼らが立ち止まっている場所には――開けた山道だ、何もない。
 それを事前に木々に飛び移った耀子が知らせてくれているから、安心して。

 ぶ ち か ま し て や っ た ! 

 轟音、破砕、爆発!
「うぉおおおおおッッ!!!!???」
 たまらず叫んだ義勇どもである。すぐに己らの得物を構えてみせたが――。
「遅い。」
 ぎゃうううんと竜だか蛇だかの唸り声が聞こえたのち――爆速の一撃が深々と義勇の腹を貫いた!!
 誰もが、取り残されただろう。
 きっと、初撃を放ったリーオだって彼女の速さには驚いたはずだ。
「――反応なんてさせてあげない。」
 蒼が反射していっそ美しく、月夜に余韻の風圧で舞う黒髪があったのだ。

 ――【 《 花 嵐 》 ( ラ イ ト ス ピ ー ド ) 】 ! !

 唸り声をあげた「ヤクモ」と名付けられたチェンソー・ソードとともに嵐のような乱入者として暴れるのが、この耀子である!
 最高速の踏み込みと、それから最大出力の攻撃力は!
 あたりの木々を足場にして体を跳ねさせて、ランダムに――かつ乱暴に駆け巡っては義勇と接敵する!
「くっ――そ!」
 そして、これで仕留め切ろうとは思っていないのだ。
 回転する刃を弓矢のつるで受け止めたところで、ばづんとそれを両断してから追撃の刀をひらりと交わし、また木々へとうつる。
 そして、足場にしてから――蹴って跳躍!
 月光を浴びながら、挑戦的に笑った彼女は、言うのだ。

「ほら、こっちを見て頂戴。」

 ――なぜ?
 わざわざ、どうして注目を集めたのか。
 狂人か?いいや、そうでない。
 そう、――義勇たちが判断するタイム・ラグが!

「そ、――そのまま。」

 長 す ぎ た ! 
 連射される魔弾は、確実に彼らの心臓を貫く!
 耀子が空中を舞っている間に、勢いよくいのちの弾が降り注いでいったのだ!
 この弾を――生成して放つリーオの体には、大きな負担がかかる。だからこの瞬間にすべてを掃討したい!
 湧き上がる吐き気は大量の魔力によって胃がひっくりかえされ、神経を侵されているからである。
 だけれど!
「うぅう、ああああ――――ッッッ!!!」

 こ の 好 機 を 逃 せ な い !

 どう、どう、どう、と激しく音を立てて穿たれた鉄の弾たちが、ようやく音をしずめたころに。
 耀子も地に足をつけて、対象どもの絶命を確認した。
 ぎゃるると鳴いたヤクモはやはり、物足りないようではあったが――弄ぶように殺すのは彼女のスタイルでない。

「……大丈夫?」
「ちょっとやり過ぎた……ぎぼちわるい……。」
 ぐるぐると目をまわして横たわっている白の彼をしゃがみこんで覗いてやりながら。
 計画的かつ、実用的だった彼らの狩場は――大成功をおさめるのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

輝夜・星灯
【崩壁】◎△
さて、心強いなんて言葉では済まないほど頼りがいのある先達を得た
ならばこれは、胸を借りて全力を出すしかあるまいよ
かける負担の分くらいは仕事をするさ

人垣の土台には触らないようにしないとね
……こういう遊びがあった気がするけど、そんな気軽なものではないな
漏れのないよう切り崩していこうか
〝月詠の冥府川渡〟
黒曜刀を複製して、こちらへ来てしまう敵のカバーと端からの攻撃を重点する
自分へ来た諸々は見切りと激痛耐性で受け、
味方への攻撃は、出来ればかばいたいけれど――
飛び道具なら、融解の毒で蕩かしてしまおう
星をも喰らうのだから、木端武器くらいなら、ね

さあ、あとは思う存分やっちゃって。


鎧坂・灯理
【崩壁】
死んでまで働くとは見上げた忠の士だな。
敬意を持って殲滅しよう。

舞台の整備はお任せを。
『玄武』からカメラ・ドローンを大量に飛ばし、『麒麟』越しに敵を視認
高速並行思考を使用して、視認した敵を片っ端から転移させていく
一番下は土台として地面に半身を埋め、その上にどんどん積み上げていく
貴様らの怨敵も「人は石垣」と言っていたろう?

さて、「人垣」の向こうにはターミネーター……失礼、優秀な傭兵殿が。
こちらには可憐な非女神と夢見がちな星見少女が居る。
ベルリンの壁よろしく、崩して差し上げようか。
何分持つかな?


穂結・神楽耶
【崩壁】◎△
鎧坂様/f14037、鳴宮様/f01612、輝夜様/f07903

シンプルな作戦で勝利を掴めるのが最上ですからね。
汎用的な能力とはいえ、鎧坂様にはご負担をかけてしまいますが…
いえ、ありがとうございます。
こちらはこちらの仕事を致しますね。

【神遊銀朱】《なぎ払い》
土台には手出ししないよう気を付けながらどんどん切り払っていきましょう。
敵の反撃、また万が一の流れ弾は《武器受け》あるいは《オーラ防御》にて庇います。
味方が安心して戦えるようにするのも務めのひとつにあれば。
数えられるほど持たせてたまるものですか。
さあ──勝ちましょう。


鳴宮・匡
【崩壁】◎△


さて、それじゃ作戦開始だな
オーダーは「殲滅」か
今回の戦争での雇い先はシンプルでいい

……しかし、何でもありだな念動力ってのは
まあいいさ、サポーターが優秀な分には
こちらも楽に仕事ができるからな

向こう側の三人へ射線が通らないよう
こちら側と向こうとの間、視界が途切れた瞬間にUC起動
【涯の腥嵐】、片っ端から崩していくぜ
特に優先するのは態勢を立て直しつつある敵
どうせ全て殺す予定だけど、余計な負傷はしないに限るからな

狙いは基本、頭部だな
柔い眼窩や、十分に貫通するなら眉間でもいい
少ない弾数で効率的に処理していくさ

ターミネーター、ねえ
……別に不死身じゃないんだぜ
言葉の原義的には、間違っちゃないけどさ


ヴィクティム・ウィンターミュート
◎★△

──さーて
アイツらが行ったんだから大丈夫だとは思うが…
勝率が1%でも上がるんなら、俺もちょちょいと噛ませてもらうさ…端っこでな

…ハッ!信念、信念か
いいじゃねえか、戦う理由としちゃ上等だ
──だが
志だけで俺に勝てると、本気で思ってるのか?

撃ってこい、何万本でも
『Reflect』アクティベート
反射障壁展開、繋げて広域化
角度調整──

あぁ、矢の雨は勿論怖いさ
俺だってただの人間…矢で貫かれりゃ死ぬ生き物なんだしよ
でもそれはお前らだって同じ、そうは思わないかい?

つーわけで──「反射」だ
悪いね、飛び道具は全て跳ね返すんだ
そして弾道の計算も済んでいる──
お前達の信念とやら──確かに返したぜ?





 山の中を逃げ惑う義勇たちからの応答はない。
 いよいよもって、城にてこの喧騒を見ていた義勇たちも――戦場に赴かねばならぬ事態になったのだ。
「これは、これは――!」
「おお、なんと!」

 地獄絵図といってもよい。

 まるで今から打ち首でも行われるかのように、下半身を埋められた義勇たちがずらりと並んでいた。
「逃げよ!」
「逃げよ、我が同胞ども!貴様らは逃げよ!」
「謙信さまに!謙信さまにこのことを伝えよ――!」
 わあわあと叫ぶ彼らが、何に恐怖しているのかは見当もつかぬ。
 いったい、武器を装備して根城から出てくるまでに何があったというのか。
 この仕業は、猟兵どもの――仕業なのか!?

 余計な時間は許さない。考えつくよりも先に、実証がなされるのだ。
「敬意を持って殲滅しよう。――ようこそ、歓迎しますよ。」
 低い、声だった。
 しかしどこか、これからの作業を愉しんでいるような女の声だったのだ。
 まるで這うように、それからひとつひとつの足元を掬っていくように。

「な――!?」

 義勇たちの体が、舞う。
 攻撃を受けたのではない、まるで、「体とはそうあるべくだ。」と言いたげに浮かされる。
 シャボン玉のように、風に乗せられているかのように。上半分しか自由のない仲間たちが地面を叩いて何かに叫んでいた。
「やめろ!!やめろこの――外道が!!」
「外道?おやおや、誉め言葉をどうも。」
 外道上等である。
「我々の目的は殲滅と申しましたよ。貴方たちに敬意をもって、――その忠義に応えるのみです。」
 にやりと笑って、宙を舞う彼らを操るのは鎧坂・灯理(不退転・f14037)だ!
 浮きながら初めて、己らの今の状態を悟ろうと必死になる義勇たちの周りを旋回するのが四次元鞄『玄武』より連れられたカメラ・ドローンである!
 城の門すら飛び越えて、超次元の脳を持った灯理に「視認」させることができれば。
 銀の指輪である『青龍』が彼女の能力を増幅させて――処理させる!

「――『サイキックの神髄をご覧に入れよう』」

 【念動奇術・参ノ型『風精散歩』(サイマジックオースリー・シルフィード)】!!
 城の中で奇々怪々な様子を見守っていたものどもを、どれもこれも根こそぎ上空へと展開してから。
「ふむ、これで城の中は全員ですか。では――」
 重畳重畳、と頷いてから並列して行っていた処理を一つにする。
 ゆっくりと右手人差し指を伸ばして、無数の義勇が浮かぶ夜空に掲げてから。

「 貴 様 ら の 怨 敵 も 「 人 は 石 垣 」 と 言 っ て い た ろ う ? 」

 どどう!と勢いよく地面にたたきつけられるそれらである!
 乗せ方はめちゃくちゃだ、だけれどどれも「まだ殺してはいない」!
 げえ、とか、ぐえ、だとか。蛙の悲鳴のようだと灯理も思う。だけれど――彼らは人間だ。

 人 間 ら し く 、 き ち ん と 殺 し て や ら ね ば な る ま い 。

 だから、その灯理が築き上げるのは「ベルリンの壁」なのだ。
 崩壊する壁ではあるが、すべて人の体で編みこんだものなのである。
 身動き一つとれぬ、長い壁だ。出来栄えに満足そうに微笑んでから、後続の猟兵たちに道を譲る灯理である。
 殺すのは、灯理ではない。

「さて、何分持つかな?」

 普段は武器を召喚する腕時計で――殲滅の時間を測ることにした。

「人垣の土台には触らないようにしないとね。」
「ええ、土台がなければ雪崩れてしまいますから――鎧坂様にはご負担をかけてしまいました。」
 お気になさらず、と返事をする灯理に、申し訳なさそうな顔をしたのが穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)である。
 そして、その壁の大きさに圧倒されながらもわくわくと瞳を輝かせるのが輝夜・星灯(迷子の星宙・f07903)であった。
 こふこふと興奮する呼吸をガスマスクでおさえながら、星灯は「こういう遊び」を思い出す。
 柄がそろったところから崩壊していく、パズルゲームのような。
 これは遊びではないけれど、切り崩す指標にしても好いだろう。
「せっかく整えてもらったんだ、胸を借りて全力を出すしかあるまいよ。」
 己の働きを、仲間たちに見せてやらねば。
 わくわくとしだした星見水晶のそれに焦る必要はないと微笑んでやりながら、非・女神は己の熱量を上げる。
 ――確かに、義勇は美しいものだ。
 だけれど、もうすでに「呪われている」義勇である。
「それは、忠義とは言いません。わがままですよ――。」
 滅ぶはずのいにしえどもが、未来を創るひとのこの時間を、そして希望を、――世界を奪うというのなら!
「容赦いたしません。――勝ちましょう!」
 
 【 神 遊 銀 朱 ( シ ン ユ ウ ギ ン シ ュ ) 】! !

 宣言とともに抜き放った神楽耶の背から無数の刃が飛び出す。
 背後を浮遊し、狙うべく過去の仮面どもに向けられるそれである。今か今かと開戦の合図を待ちながら――隣の銀河が生み出す魔導も同じものであった。

 【 月 詠 の 冥 府 川 渡 ( ア ル カ イ ド ・ ス テ ュ ク ス  ) 】。
 
「うん――勝ちに行こう。」
 電脳探偵が積み上げた壁など、壊すなら壊しきってやらねばならぬ。
 星灯が展開した黒曜刀の複製品どもが、面の色と形がそろったものを斬り伏せてやろうと彼女の美しい蒼の瞳で標的とされる。
 さて、ヤドリガミふたりの戦闘準備が整ったのだが。
 この壁は分厚い。人間をなにせ土台にしてその上にまだ人間を積み上げ続けているのだ。

「――オーダーは「殲滅」か。今回の戦争での雇い先はシンプルでいい。」

 女神たちと探偵がいた側とは、反対側に。
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)はなんでもなく、当たり前のように己の武装を手にしていた。
 今回の作戦も、彼の相棒もとてもシンプルなものだ。シンプルなものは、いい――余計なことを考えなくていいからだ。
 なんでもありのトンでも探偵が生み出した壁を見上げて、己の仕事を実感する。
「楽に仕事ができそうだな。」
 命を――奪うことになど。
 今更、この匡に罪悪感などはないし、ましてや積み上げられたのはオブリビオンである。
 すでに死んでいるはずの命を縛られて、なお苦しめられ続けるくらいならばいっそ早いとこ、殺してやったほうがいい。
 匡が己の弾倉の数を確認して、また銃へとセットをし直す。

 準備は整った。

「さて、では――。」

 ドローンでそのさまを追っていた灯理である。女神二人の後ろに立って、合図役とした。

「――皆殺しと、参りましょうか。」
「──ええ、勝利を。」
「――オーダー、承った。それでは宜しく、親愛なるヒトビト。」
「――Copy that. それじゃ、宜しく頼むぜ。」

 始まったのは、虐殺――いいや、皆殺しだ!
「やめ、ッ――!!!!!!!!!!」
 星灯が誰よりも早く、仮面どもの並びにまず刀を突き刺した!
 親愛なる人間のガワはしているのだ、余計な苦痛は与えまい。
 そのまま、人差し指でまるで、なぞるように壁をたどってやれば――指先に合わせて一閃!
 あふれた血潮を許さぬままに、貫いていくのは神楽耶の刀であった!
 ぞぶりぞぶりと突き刺されたそれが、次々体中の汚れをはらって義勇どもを黒煙に変えてやる。
 救いの一手であり、一撃で終わらせたのはきっと――非・「女神」の気質だろう。
 まるで憑かれた恨みを払ってやるように、もとの義勇がいとしいものへ還るように願われたそれだ。
 続いて放たれるのは【涯の腥嵐(カーム・カーニッジ)】で遠慮なく放たれた匡の鉛球どもである!
 ただ、でたらめにはうっていないのだ。
 片っ端から崩しつつ、この状況でなお壁であることをやめようと藻掻く彼らの――眉間を、柔い眼窩を。
「効率的ですね、不死身のアンドロイドのよう。」
「――おいおい、別に不死身じゃないんだぜ。」
 二人がきっと想起したのは、同じものであろう。的確でそして効率的、無駄のない射撃である!
 頭蓋を割り、体を薙ぎ、過去へと還していく。
 崩壊まで至る――攻撃の連鎖は止まらない!止まらないのだ!
 お互いの攻撃が刺さりそうであれば、そこは灯理が念動力で捻じ曲げてやる。
 余計なダメージも治るからといって必要ない。この作業の監督者が灯理である限りは無駄な怪我を許せない。

 そして。

 無数の攻撃が止まった。
 わずかながらに残っていた生命反応が消えたのも、灯理はきっと不思議に思っていただろう。

 ほぼ同時刻で。
「──さーて、アイツらが行ったんだから大丈夫だとは思うが。」
 端っこで、彼らの勝率――成功度を上げるために暗躍していたのがヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)である!
「どけ!貴様ァ!」
「おっと」
 猟兵とみるやいなやとびかかってしまうのが、オブリビオンの常であるとはいえ。
 激情に任せてヴィクティムにとびかかった刀使いは足払いをかけて転がしてやる。
「怒りすぎだぜ、ワックドだ。ちょっと落ち着け」
 「敵に塩を送る」ことが好きである主のまねをしてやって、余計にその怒りを煽る彼である。
「なんでそんな必死になるんだ。もう、終わったようなもンじゃねえか。」
「――信 念 だ ! ! 」
 切りかかったそれが、態勢を立て直して立ち上がるのを見た。
「我々には、信念がある。忠義がある!」
 敗北を前にしてなお、彼らは――彼らは、まだ未来に立ち向かう。
 いっそ悲劇的だと、ヴィクティムは哀れに思った。

「それしか、ないのだ――。」

 過去である、彼らには。
 進化の一歩がない。システムのように、書き換えられることはあってもアップデートは行われない。
「……ハッ!信念、信念か」
 笑ってやったのは、失礼だったかもしれない。頷きながら口もとを掌で隠した。
「いいじゃねえか、戦う理由としちゃ上等だ。」
 ──だが。それだけだ。

「 志 だ け で 俺 に 勝 て る と 、 本 気 で 思 っ て る の か ? 」

    ホントウノジゴク
 ――こ の 冬 寂 を、知っているか?

 問う、ヴィクティムの真っ青な瞳がぎらぎらと狂気めいた戦意に満ちたのを、死の宣告と悟った彼らである。
「撃てェエエエエーーーーーッッッ!!!!」
 敗北が待っているとしても、それでも!
 ――それではその地獄を見せてみよと。
 無数の矢は放たれる。
 矢の雨は、もちろん恐ろしい。ヴィクティムだって改造してあるとはいえ、もとは「ただの人間」だ。 
 貫かればいくら彼でもひとたまりなく、そしてあっけなく死ぬだろう。
 だが――。
 それは、「人間だった」彼らにも同じことだ。

「『Reflect』アクティベート。」

 【Create Program『Reflect』(ダンドウノシハイシャ)】。

 無機質な彼の声とともに現れた、無数で絶対の反射鏡である!
 ポリゴンのように、タイル状で出来たそれが重なり合って――ヴィクティムを守る絶対の殻となった。
 放たれた矢は、間違いなくそれにぶちあたる。
 弾道の計算もすべて済ませてある、このたった一瞬で!
 広域化、そして角度調整をラグなく行ってやれば――。

「悪いね、飛び道具は全て跳ね返すんだ。」

 ふ、と息を吐いた彼の顔は。
 果たして、勝利に満足していたのか。それとも、その――美しすぎるがゆえにいっそ狂気的だった忠義に、憂いたのか。

 跳弾。

 放たれた矢はすべて反射され、彼らの元へと帰っていく!
 最初こそすべて撃ち落としてやろうと彼らも抵抗したが、もう、長くはもたなかった。
 何も、残っていない。
 電脳探偵のドローンが、そのさまを見ているのを知っていた。カメラに向かって、ヴィクティムが手を振る。

「お前達の信念とやら──確かに返したぜ?」

 一から十まで、耳をそろえて。

 届くがいい。この猟兵たちの猛追が。
 あの軍神の記憶に刻んでやれ。

 ――敵 を 舐 め て い る と 、 痛 い 目 を 見 る ぞ 、 と 。

 煌々と燃え盛る山が鎮まるころ――ああ、乱世の世界に朝日が巡る。
 新たな未来を、そして現実を。歓迎しよう、猟兵(Jaeger)!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月04日


挿絵イラスト