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金平糖に願いを

#スペースシップワールド

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#スペースシップワールド


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●星と成らず
 そう、俺たちは勝ったのだ。
 多くの時間と犠牲を対価に、酷薄な『銀河帝国』を討滅した。肉体以外の何もかもを奪われてしまったが、機械人形も、黒きアイツも、光る巨体だって倒し終えた。窓から希望の星々が覗く宇宙船で、これから全てをやり直せばいい。
 かつて帝国軍と戦った仲間の中には、闘志を燃やし続けて第二の故郷となる惑星を日々探す者もいるようだが、歳も歳なので俺は諦めた。ここでの居住は発狂するほど苦ではないし、宇宙船での生活ってのは子供の頃──惑星にいた時に見たテレビアニメの影響で憧れていたのもあって、そこそこ楽しめている。
 それに、この世界での宝箱であるコアマシンがある限り、衣食住に困ることは無いのだから。
「何も起こらないのが、一番だよな」
 スリルなど要らない、安全安心安定こそ至高。
 世界中を冒険したいなんて思っていた頃の俺は若かったなァ、なんて回顧しながら贅沢品の煙草に火をつける。
 あの頃に比べて随分と老いてしまった自分の姿とともに窓に映る、不規則に泳ぐ煙が、何でもない今日を表して──。

『住民ヲ一名発見、発見シマシタ』

「──え?」
 息吹のない、無機質な音声。
 思わず煙草を落とした俺の背後には、いるはずのないロボットが立っていた。
「なんで……」
 扉に鍵はかけておいた。確かに倒したはずの帝国軍の船を見たやつもいるらしいが、この付近での出現情報は聞いていない。それに万が一見つかっても侵入されないように、セキュリティの準備や対帝国軍用のトラップも仕掛けたはず……。
 跳ね上がる心拍数と確認のタスクキルに比例して、あの時の恐怖が蘇る。
 お前らは、ただ死んでゆくだけの人生すらも、壊すというのか──。
 感情のない化け物は声にならない嘆きなどお構い無しに、鈍色の左手で俺の首を掴んだ。

『処置室ヘ連行、連行シマス』

 嗚呼、これが白昼夢なら良かったのに。
 船内に響く人の悲鳴は、機械の軋む音に変わるのであった。

●金平糖に願いを
「全部食べられたら良いのにネ!」
 猟兵たちの集まるグリモアベースには、時計の針が示す刻限とは噛み合わない満天の星空が広がっていた。ギラギラと痛いくらいに光り輝くそれは、大小の宝石が散りばめられたようで。
 そんな神秘的な美しさの雰囲気を台無しにじゅるりと涎を啜るのは、星が金平糖に見えて仕方ないグリモア猟兵のベガ・メッザノッテ(残夢紅華・f00439)である。

 今回彼女が視たのは、スペースシップワールド内での銀河帝国による、大逆無道な凶変だった。
 突如、宇宙に現れた一隻の帝国軍艦は近くのスペースシップに侵入後、そこに住む人間を片っ端から生け捕りにして軍艦へ連れ去っているという。そして、軍艦から帰ってきた者──否。帰ってきた『モノ』は、バトルドロイドとしてまた人を攫う、といった浪漫の欠片もないネズミ算が宙では繰り広げられているらしい。既に被害は広がりを見せており、一刻も早く駆けつけないと危険な状態であるとのこと。
 では、今回の依頼の内容は『バトルドロイド化した人間を救う』ことなのか。ここまでの話を聞いた猟兵の一人が問うと、ベガは首を横に振った。
「バトルドロイド化してしまった人間ハ、残念ながら元の姿には戻れないノ」
 捕虜の脳髄を基に作られたバトルドロイドは、不可逆の『元』人間そのもの。バトルドロイドを誅戮することは、元というラベルはつくものの人間の息の根を止めることに等しいと気づく猟兵は、僅かな抵抗が生まれる前に、我々が猟兵で、敵が『元』人間である限り、それは払拭せねばならないと心に刻む。

 ベガは集まった猟兵たちへオブリビオンの資料を配り、右手に浮かぶキューブ型のエネルギー体から軍艦内の様子を空中に浮かび上がらせ、依頼の説明を始めた。
「今回はバトルドロイドたちト、その上司みたいなヤツ一体をやっつけてもらうヨ!」
 テレポート場所は、軍艦の尾にあたる入口。狭いものの、そこを通り抜ければショッピングモールほどの空間があるが、多くのコンテナが積み上げられており、中は迷路状態。慎重に進む必要があることに加え、人間の脳が一部組み込まれたバトルドロイドたちは、その道を把握してる上に賢い。なお、軍艦内の最終目的地は迷路を通り抜けたところにあるため、道中出くわすバトルドロイドたちを一掃する必要がある。猟兵の単独行動は危険と言えるだろう。
 そしてそのバトルドロイドと人攫いの指揮をしているのは、かつて帝国軍の最高戦力と言われた帝国騎士。迷路を抜けて、入口とは真反対の船の頭にある制御室の中に、ヤツはいる。念動力による強化と巧みな剣さばきにより負け知らずのその身体は、一夜で宇宙船三隻を侵攻したという伝説を残したとか。
 彼らの目的は、復活した銀河帝国の戦力拡大並びにスペースシップ内にあるコアマシンの奪略、そして──人類の殲滅。今回の一件を見過ごすぐらいで直ぐに人類が滅びるなんてことにはならないが、放っておけば確実に帝国軍の夢へと近づいてしまう。それに、猟兵として罪のない人々の命が奪われることなど、なんとしても食い止めなければならない。
 また全ての戦闘が終わったあとには、スペースシップ内で星見と共に、立食パーティーが開かれるという。
「世界一……いヤ、宇宙一オイシイお菓子を用意して待ってるヨ!」


水蜜莉紅
 お世話になっております。水蜜莉紅と申します。宜しくお願いします。
 以下、纏めと補足になります。

●捕虜について
 既にバトルドロイド化しているため救出不可、猟兵たちがつく時には処置室に人間はいません。オブリビオンの掃討に集中していただいて結構です。

●敵(オブリビオン)について
 バトルドロイド……戦闘力は高くはありませんが、賢く数が多いです。
 帝国騎士……ドロイド掃討後(二章)に顕現します。帝国の最強戦力で、卓越した剣技と超能力を使いこなします。

●キャラの行動などについて
 「この人と一緒に行動する!」などありましたら、一言プレイングに記して下さい(詳細:作者ページ上から五つ目)。

●ベガについて
 グリモア猟兵の女の子です。
 戦闘には参加できませんが、パーティーにはお声がかかれば姿を現すそうです。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『バトルドロイド』

POW   :    バトルスイッチオン
【超戦闘モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    精密射撃
【狙撃用プログラム】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【熱線銃(ブラスター)】で攻撃する。
WIZ   :    シュートダウン
対象のユーベルコードに対し【正確にタイミングを合わせた射撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月隠・望月
元人間、なら、倒さないと。仲間同士で戦う、のはよくないことだから、ね。これ以上続けるのは、いけない。わたしが終わらせる

《無銘刀》で【剣刃一閃】を放って、攻撃
あのからくり人形にはヒトの頭の中身が入っている、と聞いた。なら、頭部が中枢、かも。できるだけ、頭部を狙って破壊する
相手はユーベルコードを無効化してくる、らしい。ので、<フェイント1>を交えて攻撃する。それと、わたしの攻撃が見切られにくくなるよう<残像1>ができるよう動く

敵のあの武器……銃、だったかな。は、強力な飛び道具だ、と記憶している。攻撃されたときのため、陰陽呪符を展開して<オーラ防御1>を張っておく。可能なら、攻撃を<見切り1>、躱す


フランチェスカ・メリジオ
なんとも……気が重い話じゃないか。
……救いは無いのだね。
だったら、せめてボクが苦しまないように壊してあげよう。

【アルケミック・ストライク】
船内図はベガくんが見せてくれたから頭に叩き込んだ。
バトルドロイドは見つけ次第、片っ端から壊していくよ。
キミ達をすぐにそんな姿から解放してあげよう!

使用するのは強化術式を刻んだレンチさ、今回は攻撃を外すつもりはないよ。
心配いらないさ、ボクは【破壊工作】が得意だからね。
一撃で頭部を破壊してあげよう。

頼むから、人間らしいところは見せないでくれないか。
こうなる前に助けに来れなくてゴメン。

※ボクはアドリブ改変大歓迎だよ


京条・響
元人間……そうだよね。
猟兵やってるんだから、それぐらいの覚悟は、必要だよね。
せめて、犠牲者が増えないように。

あまり目立たないほうがいい、かな。
なるべく音をたてないように、ひとまずバイクは使わないで進もう。
一度に複数を相手するのは厳しそうだし、可能な限り1体ずつ相手をしたいな。
コンテナがたくさんあるようだから、その陰に隠れながら進もうか。
敵と遭遇したら、コンテナを駆使しつつ銃で戦うよ。
できればブラスターを撃ち落としたいところだね。
戦っている仲間を見つけたら、加勢するよ。
(目立たない1、地形の利用2、パフォーマンス4、クイックドロウ5、2回攻撃1、武器落とし3、援護射撃4、零距離射撃3、逃げ足1)


相澤・樟
サーチ&デストロイかな?シンプルでいいね
とは言え、こうも数が多いと下手すりゃじり貧だねぇ
あんまり打たれ強くはないから、基本回避しながらのヒット&アウェイで戦おうか

相棒の狐のぬいぐるみ(人形)×三匹に頑張って貰おうか
確実に一体ずつ行こう、各個撃破だ
周囲に味方がいるなら共闘できるかな
狐火で牽制して援護できればラッキーだ

何体倒したかな?なんて、最初から数えてないけどね

狐のぬいぐるみが可愛いからって油断大敵だよ?
この子たちの武器、それはもう硬くて痛いからねぇ

悪いね…救うためには屠るしかないなんてせんないことだけど…
罪悪感はあんまり感じないんだ
せめて、苦しまないように一撃で屠っちゃおうな


シラ・クロア
そう……帝国軍艦にさらわれたヒトは元には戻れないのね。
それなら私達のすることは、被害を増やさないために、ただバトルドロイドを壊すことだけ。彼らだって、自らの手で仲間を殺す未来など要らないでしょう。

単独行動が危険なら、どなたかと同行させてもらえたら。
積み上げられたコンテナの上あたりまでふわりと飛んで、俯瞰で迷路やバトルドロイドの状況を確認して皆に伝えるわ。ドロイドとの遭遇箇所が分かれば後れを取らないと思うから。
偵察中にドロイドにみつからないように気を付けるわね。第六感で危険を察知して避けられるといいのだけど。
戦闘時は【光の穿ち】で稲妻の刃を次々撃ち込むわ。ショートして動作停止しますように。



いち早く帝国軍艦の入口へ着いた月隠・望月(天賦の環・f04188)とフランチェスカ・メリジオ(ノイジィブライト・f05329)は、迷いなく船内へ立ち入った。
 グリモアベースでのブリーフィングの際、船内図をある程度頭に叩き込んでおいたフランチェスカは、実際の風景と記憶のそれを照らし合わせるようにまずは辺りを一望する。
 だだっ広い空間に積み上がるのは、海上用四十フィート型リーファーコンテナ。殆どが青や緑を基調とするもので隅にうっすらと苔を生やすものもあり、荷物主の会社のロゴなのだろうか、不思議な印がついているものもある。近くにある幾つかのコンテナを軽くノックしたところ、高い音を響かせるものもあれば拗ねるように返事をしてくれないものもあったが、どちらにせよ多少乱暴に扱っても壊れることはなさそうだ。コンテナ間も広く、窮屈には感じない。少し気になることと言えば、星の海しかないこの世界に海上用のコンテナであることと、その中身くらいか。
「メリジオ殿。その、宜しければ」
 薄茶の瞳を爛々とさせる彼女の一歩後ろで、望月は今朝方書いてきた兄とお揃いの陰陽呪符を発動させて、二人を囲う防御結界を貼る。
「チェスカで良いよ! これは……ジャパニーズチャームってやつだね、助かるよ!」
 望月はこくりと頷き返し、さらにコンテナの表面に呪符を貼り付けて目印とした。これで同じ道を辿ることを防げる上に、あとから来るであろう仲間に自分たちの進行方向を示すことが出来る。
 今のところ、出来ることはこれくらいか。深呼吸をし、肺の空気を全て入れ替えて覚悟を決めた二人は、誘われるがまま迷路へ進み出した。

 視界は良好。異音、悪臭なし。
 ゴールがあとどのくらいかはわからないが、入口から離れていくにつれて破損しているコンテナや、扉が開いたままのコンテナがちらほらと目立つようになってきた。どちらも中身は空っぽで、特に制御室への手がかりなどは見当たらなかったが、所々赤みを帯びた汚れが付着しているものや内部に何かが擦れあった傷があるものを確認した。
「にしても、本当に大きいなあ」
 貿易目的で使われている物なだけあって、軍艦内にあるコンテナは全て成人男性でも屈むことなく中へ入ることが出来てしまう。百六十センチメートルに満たないフランチェスカの身体では、背伸びをしても天井に手が届かなかった。
「……チェスカ殿」
 中に入ることが出来るコンテナを手当たり次第調べる彼女に、その入口で付近を偵察していた望月が何かを知らせる。フランチェスカはすぐにコンテナの壁に耳をあて、向こうの様子を探った。
『十四時三十分。コチラ第四部隊。只今ヨリプログラムニ従イ待機室ノ第一部隊ト合流後、九時方面ノ警備ヲ開始スル。異常、連絡ハアルカ』
『了解。コチラ第三部隊。異常、今ノトコロナシ。連絡、三点アリ。一ツ、プログラムエラーニヨリ第二部隊ニ一機欠員ガ……』
 この冷たい声、間違いない。
 直ぐに声の主を視認出来る場所へ周り、背中を壁につけて瞥見する。
 そこへ立っていたのは、やはり人の骸を模した丼鼠の機体──バトルドロイドだった。右手にブラスター銃を帯しながら人間でいう目元を赤く点滅させ、十字路での機械同士の乾いた報告が続く。
 数は、部隊と呼ばれるグループ毎に十体。つまり今ここだけで、二十体の同じ顔があることになる。
 二人だけで相手するのはやや厳しいか。自分たちの十倍の数のロボットと距離を置こうとした矢先、少女たちと同じように一つ奥の向かいのコンテナの影からこちらへ手を振るのは、京条・響(サウンドライダー・f00344)と相澤・樟(浮浪雲・f03036)だった。Black Princeを片手に、響が道を挟んでハンドサインを送る。
『こっちは僕と樟君の二人。いつでも動けるよ』
『オーケー。敵の会話が終わり次第、一気に攻めたいんだけど……』
 遅々ではあるが、連絡し合いつつ先へ進んでゆくバトルドロイドの声は自分たちからだんだんと遠のいて、動こうにも動けない。無闇矢鱈と特攻するのも手だが、数で劣るのもあり、さらに自分たちの攻撃を放つ前に相手の銃で撃ち抜かれる可能性もあって、リスクが大きすぎる。それに二つの部隊を相手にするのであれば、互いの部隊の意識が途切れて僅かに集中の途切れる、会話の終わった瞬間がベスト。出来ればそこを突いていきたい。
「では、私が適任かしら」
 陰陽呪符でなにか出来ないかと思案する望月の横へふわりと現れたのは、黒橡の翅──シラ・クロア(夜を纏う黒羽のフェアリー・f05958)だった。
「私が上から耳を欹てて、『光の穿ち』で合図しましょう。上手くいくと良いのだけれど」
 あとは皆様おわかりね。艶やかな黒絹の髪を揺らし、背中のそれでコンテナの上へと羽撃いて行った。
『……だそうだ。それに合わせて突入しよう!』
 フランチェスカのジェスチャーに、樟がニヒルな笑みと狐のぬいぐるみで返事をする。

「決められたプログラムのわりに、お喋りがお好きなのね」
 やっと終わりそうな機械同士のやり取りは、植物の師管液を吸い散らかす蟻牧みたいで見苦しい。待ちくたびれたわとその様子を見下ろすシラは、長い睫毛を下ろして手を組むとともに、天へと祈りを捧げる。
「哀悼の光のあとに、安らぎのあらんことを……」
 やおら開かれた青き瞳は、宝石さながら。ようやく最後の了解を言い終えた自動人形二体をターゲットに捉え、華奢な身体からは想像のつかない禍々しい紫電が放たれた。
 一瞬の煌めきと、静寂。
 煤塵の中から現れたバトルドロイドは火花を吹き出しながら、遺言の代わりに安い金属の重音を残してその場へ倒れる。
「今だ!」
 響の号砲に連なり、猟兵たちは一斉に影から飛び出した。
『部外者、確認』
『排除、排除スル』
「それはボクのセリフだよ!」
 頼むから、人間らしいところは見せないでくれと願いつつ、工具ツールポーチから強化術式を組み込んだレンチを取り出す。樟の狐火で牽制された影響か、警告音を発する頭部目がけて思いきり腕を振り上げる。
「んふふ、避けてもいいんだよッ!」
 一瞬、ブラスター銃の砲口と対面するが、引き金に手をかけられる前に殴れば問題ない。
 苦しめないよう、一撃で仕留めてやる。
 弧を描いて叩きつけられたレンチはバトルドロイドの装甲をかち割り、衝撃で弾き飛ばされた頭部は勢いを落とすことなく、もう一体の背骨部分に当たり、それをも破壊した。
 この調子で──。ペースを崩さぬうちに、すぐ横にいる三体目を倒そうとするフランチェスカの背後には、別のバトルドロイドが回っていた。電子音を鳴らし、プログラムされた通り赤外線ポインターを彼女の左胸へと合わせる。
 それに気づいたフランチェスカも防御体制をすかさずとるが、攻撃を防ぐにはもう間に合わない。
 鳴り響くのは、銃声。
「ごめんね。どうか、安らかに」
 パン、クラッカーのように口元から破片は飛び散り、鋼の身体はその場に膝から崩れ落ちる。熱線が放たれる前に、バトルドロイドの後頭部には既に響の銃口が当てられていた。
 妙に生々しく倒れる機械の姿を見て、響は少し胸を痛める。しかしそんな彼に休む暇を与えることなく、銃声に反応した一体が照準を望月から彼に変えて、引き金が引かれる──が、銃を扱う響にとって、愚鈍な熱線を躱すことなど朝飯前にすぎない。
「女性ばかり狙うのは、関心しないな」
 コンテナを利用し回り込み、バトルドロイドへ一気に距離を詰める。
 右手の銃は、今自分を狙った機械の眉間にめり込ませて。左手に構えたSilver Knightは、その奥で戸惑うヤツを的として。
 響が走り抜けたあとには、剥がれた泥色の甲冑のみが残っていた。そのサングラスの奥はキラリと光り、続けてバトルドロイドを鮮やかに撃ち抜いてゆく、そこへ。
『コチラ、第一部隊。緊急信号ヲ受信シタ。待機室ヨリ加勢、加勢スル』
 突然奥のコンテナの扉が音を立てて開き、中からずらりとバトルドロイドが現れる。
「げ、そんなのありか!?」
 列の先頭のバトルドロイドは、挨拶がてら望月へ熱光線を放つ。案の定それは見切られるが、終着点にあるコンテナ壁を溶かした。そこに残る大きな穴が、熱線銃の威力を物語る。
『排除、制圧、滅却スル』
 波のない音を発しながら赤く点灯する目元は、心做しか笑っているように見える。百足のようにぞろぞろと前進し、余裕を見せる彼らは止まることを知らない──はずだったのだが。
 ふわり、ふわりと目の前を邪魔してくる何かによって、先頭が足を止める。後ろに連なるコピーが何が起きたのかと横へ逸れると、肩に柔らかな感触。
「狐のぬいぐるみがかわいいからって、油断大敵だよ?」
 いつの間にか樟の人形は、かごめかごめで遊ぶように彼らを取り囲んでいた。
 自分の横を通り過ぎたかと思えば、また別のぬいぐるみが通り過ぎてゆく。鬱陶しいと掴もうとするが、銃を握るだけのその手は空を切る。
「悪いね。お前さんたちを救うためには屠るしかないなんて、詮無いことだけど……」
 パチン。樟のフィンガースナップに共鳴して、狐火が閉じ込められたバトルドロイドたちを覆い尽くす。相変わらずの組み込まれた音声とは反対に、装甲が溶け落ち、慌てふためくその様子は、混沌そのものである。
「鰹節じゃないんだから、もっと華麗に踊れないの?」
 狐の輪舞から逃れるヤツは、追尾してでも燃やし尽くす。
 部隊の一斉壊滅などプログラムされていなかったオートマタは、エラー音を吐き出しながら少女の方へ飛び出した。
「月隠さん!」
 空から見守っていたシラの注意に呼応して、望月は刀に手をかけた。
 ヒトの脳を組み込む、継ぎ接ぎな金属製のからくり人形。その身体ですら無惨に扱われ、人に等しく与えられた死後すら自由を許されないなどという、残虐非道なこの行為。
「──わたしが、終わらせる」
 剣刃一閃──。望月の無銘刀は三日月を描き、機械人形の頭部を斬り落とした。

「はー疲れた。何体倒したかな」
 まあそんなの最初から数えてないけどと吐き捨て、樟は手の汚れを払い落とす。
 途中思いがけない乱入があったものの、凹んだコンテナの角に、地面に散らばる端材と帰した機械の姿は、猟兵たちの勝利を表していた。
 壊れてしまったバトルドロイドには元々生命など宿っていなかったはずなのに、動かなくなったそれは、どこか安らかに眠る様で。
「……こうなる前に、助けに来れなくてゴメンよ」
 響とフランチェスカは近くに咲いていた花を手向け、骸がその場から消えるまで黙祷を捧げる。
 ──今度こそ、星と成りますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『帝国騎士』

POW   :    インペリアルブレイド
【念動力を宿した「飛ぶ斬撃」】が命中した対象を爆破し、更に互いを【念動力の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    ダークフォースバリア
自身に【鮮血の如きオーラ】をまとい、高速移動と【赤黒い電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    インペリアルフラッグ
【念動力で形成した帝国の旗】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を『帝国の領土』であると見る者に認識させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月隠・望月
あの敵、強い、ね。でも倒す、よ。倒して被害を食い止める。そしてわたしは、より強い猟兵になる。負け、ない

【反術相殺】で敵のユーベルコードを打ち消す
《陰陽呪符》を使って正反対の術を放つ、よ。この世界には『さいきっくえなじー』という力がある、と聞いた。敵もそれを使う、なら『念動力などに干渉できる術』を使うのが有効、かも
特に、相手を継続的に強化するユーベルコードは無効化、したい。敵の動きを<見切り>、どんなユーベルコードを使うか予想、することで相殺の成功率を上げられる、かな

敵は刀を持っている、から刀で斬りかかられたら《無銘刀》で受けて防御、する。いざというときのため、<オーラ防御>も張っておこう


フランチェスカ・メリジオ
過去の亡霊が今を生きている人に迷惑かけるもんじゃあないよ。
ボク達がキミを元の場所へ送り返してあげよう。

【アルケミック・ストライク】
引き続き、レンチでの格闘を行っていくよ
ただボクの体術じゃ悔しいけど帝国騎士には及ばないだろうね
だからなるべく仲間と連携をして隙をついてぶん殴っていくとしよう

あとはそうだね、もし相手がインペリアルフラッグで地形を書き換えたなら、ボクもレンチを地面に叩きつけるよ
相手の地形をボクの広域強化術式で上書きしてやるんだ
ついでに術式展開後なら、帝国騎士相手に体術でも渡り合えるかもしれないね

※いつもどおりアドリブ改変歓迎だよ


相澤・樟
迷路か、道を知り尽くした敵からの不意討ち警戒しながらだと、厳しいねぇ
偵察ならうちの子たちに頑張って貰おう
狐のぬいぐるみ1号から何体出せば良いかは仲間との連携を考慮して決める

制御室まで攻撃力の高い仲間はなるべく体力温存してくれるかい?
道中は出来るだけ俺や露払いしてくれる仲間が切り開くから
基本は固まって進む方向で、状況によっては2、3人で先行して道順確認をする

前回と同じ戦い方で牽制、援護、撹乱をメインに仲間と共闘
相手が情報共有してたら対応されてしまうかねぇ?
その場合は捨て身で敵軍撹乱しようか

うちの子(ぬいぐるみ)、有能だろう?メンテ大変なのが玉に瑕だけどね
さあ、後顧の憂いを燃やし尽くしてしまおう


シラ・クロア
……ベガさん曰くの「バトルドロイドの上司みたいなヤツ」、ね。彼を討てばドロイドにされた人達の弔いをしたことになるのかしら……。
これまで帝国騎士に縁無く生きてきたから――お逢いするのはこれが「はじめまして」よ。初見のご挨拶には【光の穿ち】で様々な角度から折れ釘の如く走る閃光の刃を。鎧の継ぎ目や視覚、武器や攻撃を放つ箇所を狙えればいいけれど……そもそも弱点らしきところってどこかしら。対峙する中で見えてくることを願うわ。気付いたことは皆と共有。
他の皆の攻撃時にも騎士の様子をよく観察して、知識や第六感を総動員して有効な一撃を見出したいわ。
私は基本的には位置を変えて舞い飛びながら戦うことになりそう。


京条・響
さて……ここからは弔い合戦だ!
バトルドロイドに変えられてしまった人たちのためにも、これから犠牲を出さないためにも、負けるわけにはいかないね。

さっきは目立たないように銃だけだったけど、ここまできたら関係ないよね。
エニー(バイク)も使っていくよ!
隠密より、派手にやるほうが得意なんだよね!
(パフォーマンス5、騎乗3、追跡2、地形の利用3、踏みつけ1、クイックドロウ5、2回攻撃1、武器落とし3、援護射撃4、零距離射撃3、視力1)



「迷路って言っても、こんなに広いもんかね?」
 機械の丸焼きなんて誰得なんだか、と退屈そうに大きな欠伸をする樟は、未だ潜伏しているであろうバトルドロイドの不意打ちに備え、狐のぬいぐるみに偵察をさせる。
 三部隊の掃討後、猟兵たちは発見次第敵を薙ぎ払いながら入り組む道を進んでいた。しかし制御室へは辿り着けず、硬い壁が視界に入り続けること約三十分。到着時は綺麗と感じた青色に、うんざりし始めていた。
「空から見てみたのだれど、やはり制御室への入口らしきところは見つからなかったわ」
「こっちも行き止まりだったよ、手がかりもナシ」
 望月の呪符を貼り続けているということは、同じルートは二度と通ってないはずなのに。
 小さく苦境の溜息をついて、シラが貨物と貨物の隙間から出てきた響の肩へ舞い降りる。
「ん〜、この奥にあるはずなんだけど」
 船内図を覚え違えたか。……いや、天才のボクにそんなことはありえない。フランチェスカの目にした輪切り軍艦の絵は、確かにこの壁の先にメインディッシュがあることを示していた。
 新たな発掘もなく、グリモアのデータが誤っていたとは考えにくい。ならば必ず、今までの何処かで答えが出ているはず。桜色の唇に手をあてながら、フランチェスカは思案の海に沈潜する。
 ──そういえば。探索中に出会した鍵の開いていたコンテナの床にあった傷は、先程の戦闘により地面とバトルドロイドの足が擦れあったものと思われる。
 彼女の勘考をなぞるように、望月がポツリと呟いた。
「さっき、金属のからくりたちは──あのコンテナのことを、待機『室』って、言ってた」
 傷の臆説と彼らの口述が正しいのなら、やはり幾つかのコンテナを部屋としているのかもしれない。
 もし、それが処置室にも当てはまるのであれば……床に付着した赤い汚れは、染み付いた人間の血液だったのか。一瞬脳裏にちらついた惨憺な光景と、張り付く頭痛を振り払う。
「あんなところを部屋扱いするとか、メカの冗談はキツイねぇ」
 俺なら耐えらんない。お前さんもそうだよな? なんて狐のぬいぐるみに話しかけながら樟はその場にしゃがみ込んだ。
「冗談だったら、良いんだけど」
 己の推測に確証を得るため、フランチェスカはサウンドソルジャーの響にギターの演奏を依頼した。
 未だ姿を見せぬ制御室。空、地上にはないとしたら──このどこかのコンテナこそが、ヤツの潜む場所に繋がるに違いない。
 そうと決まれば簡単なこと。部屋へ繋がり空間が広くなっているはずのコンテナは、音のはね返しが相対的に少し遅くなるので、響のギターにより割り出せるはずだ。
「じゃあ、音量大きめでかき鳴らせば良いんだね?」
「うん。そしてシラくんは、耳をすませてこの辺りを飛んでもらえるかな?」
 自然豊かな森で、遠くの小鳥の囀りを聞いて育った彼女であれば、どんなに小さな音のズレでも聞き逃さないだろう。
「任せて頂戴」
 ギターをアンプ内蔵スピーカーに接続し、響は張り詰められた琴線をキラリと輝かせて、小さなオーケストラを奏で始める。鉄の壁に肩を預ける樟の隣に望月は正座し、異国の音楽に耳を傾けた。
 情熱の篭った、身体の芯を震わす旋律。それに連なるシラの、背中にある二つの黒扇で貨物間を泳ぐ姿は、ほうき星を導くようで。
 ひらり、ゆらり、きらり。その優しい光の流れは、樟と望月の斜め後ろにある萌葱色のコンテナで止まる。
「このコンテナ、他のよりもエコーが大きいわ」
 指差す先には、手の平サイズの南京錠のかけられた扉。それを望月が無銘刀で叩き斬ろうとするのを、樟が止める。
「何でもかんでも直ぐに斬るのは良くないぜ。体力は温存させときな、お嬢ちゃん」
 パチン。本日二度目の指鳴らしに喚ばれた狐のぬいぐるみは、錠のフックを噛みちぎった。
 重い扉に手をかけてゆっくりとそれを手前に引くと、樟の足元には地下へと続く階段が敷かれていた。
「本当に、あった……」
 見えない底から吹く重い風が、猟兵たちの髪を揺らす。一段一段が描くグラデーションは、この先に軍艦の親玉がいることを示していた。恐怖を誘うそこへ、シラが先頭を切る。
「さあ、進みましょう。足元にお気をつけて」

 杳として先のわからぬ道を駆け抜けて。闇夜に等しい通路は、猟兵たちの平衡感覚と時間感覚を狂わせる。今、立ち止まった先にある金属製の扉も、シラの第六感がなければぶつかっていた。手を翳すと自動で開くその先に広がるのは、夕方ほどの明るさの部屋。普段ならどうということないその光も暗がりの中では刺激となり、猟兵たちの瞼の裏に星が煌めく。
 数回の瞬きの後、視線の先に君臨するのは、紅き炎を纏いし黒騎士。濡羽色のマントを靡かせて、人工物の軀幹をこちらへ向ける。
『愚カナ生命体ノ分際デ、ココマデ来ルトハ。敵ナガラ、アッパレ、アッパレ』
「あの敵、強い、ね」
 鎧の影に光る赤い瞳は殺気を放ち、一目で幾何級数的な戦力を持つことがわかった。
 戦績、経験両方とも相手の方が上回り、一瞬の油断が命取りになることは間違いないだろう。
「彼を倒して、ドロイドたちへのせめてもの弔いになればいいのだけれど」
 その前にご挨拶ね。初めましての代わりにシラは光の穿ちを放つ──が、硝子に走る割れ目の如き雷火は、スパークを散らしながら右手の大剣で弾かれた。
『ソノ技、見切ッテイルゾ』
 脳を揺らすその声に反応し、騎士の背面の壁に埋め尽くされるモニターに先程の戦闘の様子が一面に映し出される。
 そう、ここは制御室。帝国軍艦の管理の都であり司令塔では、バトルドロイドに搭載された小型カメラから送られた映像を用いて、船内全ての様子をコントロールパネルで映し出すことが出来るのである。つまり、既に披露されたユーベルコードを翻すことなど、かつての最凶騎士の身体能力をもってすれば朝飯前のこと。
「そんなチートありかよ。流石、騎士サマは一味違うねぇ」
 樟は巧みな話術で騎士を誘惑しつつ背後からぬいぐるみにのせた狐火で襲うも、やはりそれは切り裂かれた。舌打ちを残して一歩下がる彼に、黒騎士が仕掛ける。
『ソノ首、弾イテミセヨウ』
 剣の火炎は勢いを増し、振り下ろすことにより空気を歪曲させて斬撃を生み出す。朱の覇気を漂わせながらそれは、狐の少年へ一直線に食らいつく──。
「そうは、させない」
 望月は襲い来るインペリアルブレイドの前へ立ちはだかり、反術相殺(リバース・コラプス)──陰陽呪符により召された大蝦蟇は、人をも丸呑みする大きな口で斬波ごと飲み込み、無効化した。安堵の溜息をつく彼女の額から、大粒の汗が流れ落ちる。
 彼奴の操る妖術……『さいきっくえなじー』というものだろうか。躱したり、今のように無効化出来れば良いが、真面に喰らってはたったの一撃で身体が吹き飛ぶことは間違いなさそうだ。
 その様子を見ていた帝国騎士は、阻められた自らの剣技に戸惑うことなく、すかさず念動力で旗を左手に掲げる。
『コノ私ノ剣を防ゴウトハ、何トモ面白イ』
 しかし旗ならばどうか。弓形にそれを扇ぎ、足元にかつて帝国の紋章を刻み込んだ。炯々爛々とするそれは、新たな銀河帝国の歴史の根を張るように見える。
 ──マズい。ただでさえマトモな攻撃を当てられていないのに、これ以上の身体強化は、敗北に等しい。しかし狐火は見切られて意味をなさず、騎士は勝利を確信したのか、ゆっくりと紋章へ足を進める。
 このまま、黙って見ていることしかできないのか。
 奥歯を噛む樟の前に、光芒──フランチェスカの手元から金属塊が投げ込まれる。
「甘いよ!」
 技の見切りだけで、猪口才な。映し出された映像を見る限り、自分の姿はバトルドロイドを『レンチで殴るところ』しか見られていない。ならば攻撃手段としては使えないが、アルケミック・ストライクによる刻印破壊は見切れまい。術式を組み込んだレンチで紋章を叩き割り、広域強化術式で上書きする。あとは──。
 術式を右足で思いきり踏みつけ、素殴り。硬い兜を黒騎士の頭から、鈍い音が軋めいた。
「たまには物理も良いもんだね」
『貴様……!』
 まさか錬金術師の少女から拳が飛んでくるとは思わなかったのか、油断していたのもありブローをもろに喰らい、騎士は剣を杖にして顔を覆った。
 そこへ、バイクのエンジン音が轟く。
「さあ、トバして行こうか!」
 愛鉄馬・エニーにのって虹を描きながら天球を滑空し、響は俯く騎士の額を強制的にバイクの前輪で轢き天へと向かせる。体制を崩し呻吟する騎士の両目へ、間をおかずに鉛玉を二発プレゼントした。
「見切られるなら、見えないようにすれば良いよね」
 愛銃から生じる硝煙を吹き消し、ライブの女の子のハートを撃ち抜く笑顔を、ウインク付きで惜しみなく苦しむ豪傑に送る。
 騎士の世界は鎧色に染まり、太陽は二度と昇らない。四肢に傷はないものの、刃を振るうにはあまりにも力を失い過ぎた。
 しかし騎士たる者、ここで膝を着くわけにはいかぬ。
『銀河帝国ノ、名ニカケテ……』
 反駁に塗れるその身体に浮かび上がるのは、ヒトのみに巡る生命の源を想起させる霊力波──ヒトならざる彼が何故それを、彼が纏うのか。背水の陣としてのダークフォースバリアを繰り出す彼の頬には、流れるはずのない血涙が見えた。
 接続先不明のスイッチだらけの空冥に、生命のない獣の咆哮。
 彼の魂と連動しているのか、脈を打ちながら膨大してゆく蘇芳のエネルギー弾を、剣を落とした右手に溜める──。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

フランチェスカ・メリジオ
うわっ、何それ強いすぎないかい?
これは不味そうだね……
あんまり使いたくないんだけど、そうも言ってられないよね

【真の姿を使用】
オラトリオの特徴が出てきます
赤丸1個なので、髪にサボテンの花が一輪咲くだけで
ほとんど見た目は変わりません

【アルケミック・ストライク】
んっふふ、術式刻んだ工具は一本だけじゃあないんだよね
いくよ、刻印モンキースパナ!
くっ、あんまりカッコよくないなコレ。締まらないや
いや、勝利の為だ。多少のカッコ悪さは目をつむろう!

地面に刻んだ術式と真の力で強化された今のボクの動きなら
キミと渡り合えるんじゃないかな!

※アドリブ改変歓迎、ダメージ描写も大丈夫です


相澤・樟
戦闘後に被害状況を確認し、仲間の無事と周囲の安全をしっかりたしかめる

いやーぁ、厳しい戦いだったなぁ
いやいや、のほほんとしているように見えるけど、必死だったよ?
なんにせよ、ゆっくりお茶でも飲みながら皆の検討を讃えようかな

戦闘以外でもうちのコの有能さを見るといよ!

狐のぬいぐるみ1号のイッコかわお盆に飲み物をのせて配り、2号のニコがお菓子の取り皿を配り、3号のサンコがコミカルなダンスでおもてなし

ナッツ系のお菓子があれば嬉しいなぁ

今度は、ちゃんと人助けしたいなぁ……


フィロメーラ・アステール
「導かれし星が到着したぞー!」
【スーパー流れ星キック】を発動して勝負をかけるぜ!

【ダッシュ】の勢いに任せて【ジャンプ】して光の【属性攻撃】【全力魔法】エネルギーをチャージ!
そこから空中を【スライディング】することで【残像】を発する勢いで相手を【踏みつけ】てやる!
【気合い】を込めた【破魔】の一撃で闇のエネルギーは吹き飛ばすぞー!

って完全に物理攻撃のノリだけど、この攻撃の本体はあたしが纏っている魔力のほうだからな!
こいつをぶつけた衝撃で動きを止めるのが最大のポイントだぜ!
敵は自己強化が得意みたいだからな、その前に動きを封じて一気に畳み掛けるのがよさそうだぞ!
本格的なトドメはみんなに任せたー!



「まずいな……。あんなのもろに喰らったら、回復が追いつかない」
 樟の視界に警告灯として映る鮮紅雷電。破裂寸前のイチイのようなそれに比例して、猟兵たちの軫憂も膨れ上がる。
 視覚を奪ったからヤツは高速移動出来ない上、あのエネルギー弾に全力を注いでるので他のユーベルコードは使えない。一秒でいい、こちらから襲撃を仕掛けるチャンスは、ないのか。
 しかし樟は攻撃の隙に邂逅する前に、騎士の様子がおかしいことに気がつく。
 赤黒いプラズマの球体はどす黒さを増幅させながら騎士の右手を越え、肘、腕、肩、顔……そして甲冑までも覆い尽す。バチリバチリと音をたてるそれは、奴の身体を消化するように閃光を畝らせた。
「……まさかアイツ、自滅覚悟で全てを呑み込む気か!?」
『姿ガ見エヌノナラバ、コウスルノミヨ』
 いつの間にか左手の旗は朽ち、肩周辺を回る装甲の勢いを落としつつ、騎士は漸増する雷炎に包まれながら淡々と述べた。
『出力、攻撃範囲共ニ予測不能。……エラーコード505、身体耐久値ヲ越エル可能性アリ。……火力制御データ、破棄。動作、続行、続行』
 パネル上のメーターは振り切り、ウォーニングランプと警告音が叫び渡って辺りは赤に染め上がる。猟兵たちの掻き立てられる恐怖とは対照的に、制御室のスピーカーから発せられた抑揚に乏しいそのアナウンスは、先刻のバトルドロイドたちを連想させた。
 電火暗紅、抜山蓋世。
 破壊された瞳の赤を黒へ帰す騎士は覚悟を決めたのか、詠唱に沿って右手を掲げた。
『雷咆、発射』
 深紅の焜燿と、唸り。
 自身をも穿つ霆を、猟兵たちめがけ振り下ろす──。

「導かれし星が到着したぞー!」
 涸轍鮒魚である機械空間に響き渡ったのは、快哉の漲るビビッドなソプラノ。
 敵の球電が霹靂となる直前に金銀の光の尾を引いて現れたのは、綺羅星の妖精──フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)だった。
「あたしが直々に光を灯してやる!」
 突如こちらへ向かってきた猟兵に気がついた帝国騎士は、足元に倒れた剣を蹴って少女の行く手を阻もうとする──一瞬、樟とフランチェスカから顔を逸らした。
「後方から援護するよ」
 この時を待っていた。樟は控えさせていた三匹の狐のぬいぐるみを喚び出す。戦況を直ぐに把握した彼らは、尻尾を揺らしながら相分かったと構えをとった。
「射出用意……イグニッション!」
 樟の声に、相棒たちが即応する。十三分の一秒で輻射されたレーザーは、鋭い音をたてながら剣を弾き返した。
 敵への道を切り開く狐の燐火に続いて、フィロメーラは疾駆の流れのまま地を蹴り上げる。
「スーパー!」
 跳躍の勢いに身を任せ、宙で逆さになる身体を三日月に反らせて体制を整える。
「流れ星!!」
 剣が届かなかったことを音により確認して焦る黒騎士を澄んだ瞳で捉え、右足の指尖に聖なる光を集束。さらに脚の軸を空に辷らせることにより勢いが加速し、墨鎧へ爪先の導く光芒は煌めきを増す。
「キーーーック!!!」
 高らかな呼号で繰り出された衝撃は、大地さえ揺るがす──しかし太陽のように暖かい光は騎士の朱闇を包み込み、凌駕した。
 雷電は散り散りに。一条の流れ星に悶え苦しむ騎士の前に降り立つフィロメーラは、向かいの猟兵へ手を振る。
「トドメは任せたー!」
「ああ、任された!」
 あまり見せたくはないのだけど、今はそうも言ってられない。星の妖精からバトンを受け取るフランチェスカの髪には、オラトリオとして本気を示す妍麗な覇王樹の花が一輪咲いていた。
「レンチだけだと思わないでよね!」
 ブライトケープを靡かせる彼女の手に握られていたのは、強化術式組み込み済のモンキースパナ。見切られたレンチと違い、先端が開放された金属棒を一発御見舞してやれば、どんなに硬い鎧を纏ったとしても右手に宿していた稲妻のように痛みが走るに違いない。
 騎士の帯する紅の凶刃のように格好良くはないけれど。締まらなくたって、関係ない。コイツに勝つためなら、なんだってやってやる。だってボクは──。
「天才なんだから!」
 耳を刺す音と、残響。
 香染の瞳の少女の一振りは、頭部と胴体を繋ぐ骨髄を打ち砕いた。

 凹んだ床に瓦礫は散らばり、壁に取り付けられたボタンやレバーからは威勢のない煙が吹き出す。
 戦場としての役目を終えたコントロールルームを見渡し、樟がオブリビオンの死を確認した。
「いやーぁ、厳しい戦いだったなあ」
 大きな伸びをする彼の周りを狐のぬいぐるみたちが飛び回り、勝利の喜びを示す。
「汗ひとつかいてない癖にぃ〜」
「いやいや、結構必死だったよ?」
 パーティ会場にナッツのスイーツでもあれば良いんだけどと付け加える彼に、フランチェスカが食べ過ぎると太るよと注意する。
 制御室を照らす光は雷電からLEDライトに戻り、黒曜の鎧は剥がれ落ちた。鈍い音をたてて倒伏した騎士の巨体は、サラサラと砂のように星へ帰る。
 部屋に残る黒は、制御室の印刷字のみ。
 それをも吹き飛ばすように、フィロメーラは白い歯を見せた。
「闇には光をってね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『楽しくパーティー』

POW   :    思い切り騒ぐ!

SPD   :    会場運営を手伝う!

WIZ   :    皆を盛り上げる!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィロメーラ・アステール
「そうかー、星見か……!」
星を見るパーティーということは、今回の主役は外のお星様ということになるよなー!?
ここにあたしが出張るというのは、あれだな……お花見の席にオモチャの踊る花を持ち込むような感じの……!

まあいいか!
あんなに楽しげにキラキラされたら我慢できないぜ!

【星の遊び場】で光の波を増幅して、もっとよく星が見えるようにするぞ!
制御の難しい技だけど、あるべき自然現象を膨らませるだけなら、わりと安定するはず!
これで舞台を整えて、踊り明かすぞー!

「宇宙で一番輝いてるヤツは誰だー!」
星の光と一緒に踊れば、みんなが主役ってことでもいいんじゃないかな!
ベガちゃんも踊るか? いや食べる方がメインかな!


月隠・望月
終わった、ね。大将は強かった、けど、倒せて、よかった。しばらく被害は防げる、よね
またオブリビオンは現れるかもしれない、けど、今はひとまず、お疲れ、様
それから、バトルドロイドにされてしまった人たちは、おやすみなさい

今回の戦いは終わった、ので、宴会……ぱーてー? を、楽しみたい
どんな食べ物がある、かな。戦った、からおなか空いた
この世界のお菓子、食べてみたい。グリモア猟兵のメッザノッテ殿が、言っていた「宇宙一オイシイお菓子を用意して待ってる」と。ので、わたしはとても、期待、している。メッザノッテ殿におすすめのお菓子を訊いてみよう、かな
家だとおやつをたくさん食べると叱られる、けど、ここなら大丈夫、だね


シラ・クロア
宇宙船の中からの星見。……なんだか新鮮。綺麗。
バトルドロイドにされた人々も、この窓から星々を眺めていたのかしら。毎日。
失われた彼らの生命もまた過去に流されてゆく。そうして――また明日が来る。
今はきっとその狭間。だから……そうね、唄を歌いましょう。子守唄がいいわ。どうか彼らに優しい夢を。

そういえば、ベガさんのことは別の場所のお茶会でも見かけたわ。秘密のお茶会。
あのときも色々とお茶の準備をしてくれていたわね。今日もありがとう。よかったらスペースシップならではの美味しいお茶とお菓子の組合せを教えてもらえないかしら。あまり詳しくないの。


フランチェスカ・メリジオ
いやはや……今回は大変だったなぁ
でも。解決したから良しとしよう
終わりよければすべて良しさ

犠牲になった人達も、どうか安らかに眠っておくれよ

【POWで行動】
これを待ってたんだ、宇宙一のお菓子食べ放題!
えっ、食べ放題じゃなくて立食パーティー?
同じようなものだろう?

何度だって言うけど、今回はすごく疲れたからね!
きっとカロリー消費もすごかったはずだ!
だからこれはいくら食べても差し引きゼロカロリーなんだ!

ベガくんも早く来て食べなよ、遠慮せず食べなきゃ勿体ないよ!
あれ、キミが用意してくれたんだっけ?
よく食べずに我慢してたね、ほんとに我慢できたのかい?

※アドリブ改変歓迎さ!


相澤・樟
んー、皆盛り上がってるかなー?
俺?
俺も楽しんでるよ
美味しいお菓子も沢山食べたし

うちの店の駄菓子もいいけど、こういうちゃんとしたお菓子もいいねぇ

さて、お腹もふくれたし忙しそうなところを手伝おうかな?
イッコ、ニコ、サンコの出番だね


人形を操って片付けやお菓子の運搬を手伝う
割れた皿や食べこぼしの掃除もバッチリの有能なぬいぐるみだからね
余興が欲しいなら、扇子でも持たせてぬいぐるみの舞い踊りも披露するよ

うちのぬいぐるみ有能だろう?
メンテナンス頑張ってるからね

さぁ、次の戦いはもっとスマートにいきたいねぇ


ルベル・ノウフィル
アレンジ・アドリブ・連携歓迎
WIZ 星守の杯

戦いにこっそり参加していたのか、それともちゃっかりパーティーだけ顔を出したのかはさておき(お邪魔します)
「そーれ、お祝いの金平糖レインでございますぅ」
杯を逆さにすれば、天から降るは甘やかな星屑の雨
食すれば甘く、ただ触れるだけでも傷が癒されるのでございます

ベガ殿にもお声をかけまして、ともにお菓子を楽しみましょう

珍しいお菓子を見つければ好奇心をあらわに尻尾をぱたぱた、試食します
「こういうパーティは良いものでございますね」

会場内の人々の晴れやかな表情や楽しそうなやりとりにニコニコ。
もし金平糖に願うなら
「よき思い出とともに、人々が今後も笑顔でいられますよう」



 時は夜半過ぎ、人々が寝静まる頃。昼には煌々としていた船の灯りも眠り、空の主役は星々となった。
 上弦に満たない月は、ほんの少し肩をちらりと見せるだけ。星を肴にするのには最適な今宵、帝国軍艦の討滅に対する御礼として、宇宙船の住民たちが一隻のスペースシップを貸切にしてくれたとのこと。
「そうかー、星見か……!」
「しかも立食パーティー付き、なんとも良い響きで。それとは対照的に……いやぁ、今日はなかなかハードでございましたね」
 帝国騎士を倒した猟兵たちは、その消滅を確認したのちに来た道を戻った。道中第二部隊と思われるバトルドロイドの群れと闘うルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)と合流し、掃討。無事に任務完了の報告を終え、パーティー会場へ案内された猟兵たちは甘い匂いに導かれるがまま、フィロメーラを先頭に指定された部屋の入口をくぐり抜けた。船に取り付けられたドーム状の巨大天窓と立派な舷窓の向こうの景色は、猟兵たちを歓迎するようで。
「宇宙船からの星見なんて、なんだか斬新ね」
 手の届く距離に輝く空のそれがあるのは、他の世界では味わえない究極の贅沢。森から見るのも好きだけれど、星に包まれるのも素敵ね、とシラは微笑む。
 絶景パノラマに夢中な猟兵たちの前に、奥からデザートワゴンを運んできたベガが出迎えた。
「オカエリ!」
 彼女の押す台に乗るのは、今夜のメイン──ケーキの王様であるショートケーキや艶めく宝石の乗ったフルーツタルト、外はさっくり中はしっとりとしたガトーショコラ……。甘いものが苦手な人やひと味違うケーキを食べたい人のために温製のベイクドと湯煎焼きのスフレ、冷製のレアの三種のチーズケーキや、サンドイッチをケーキに模したスモーガストルタまで用意されている。
 さらに和菓子は勿論、キャラメルやフォーチュンクッキーなどの気軽につまめるもの、そしてそれぞれのケーキに合うお茶も用意してあると彼女は付け加えた。
「これを待ってたんだ!」
 宙の次に目に飛び込んできたスイーツは、フランチェスカの瞳を星にさせた。直ぐにベガから皿を受け取り、一番乗りでケーキを次々に乗せてゆく。
「お茶会で会うのは、これで二回目ね」
 以前、とある依頼の後に開かれた薔薇のお茶会にベガとシラは招かれたことがあった。一目で直ぐに「あの時の」とお互いを認識した二人は、スカートの両端を軽く摘み、ふわりと丁寧にカーテシーを一回。
「また会えて嬉しいヨ!」
 秘密の花園で奏でられたシラのノクターンは、多くの人々を虜にした。お茶をしながら近くで聞いていたベガも、何を隠そう、その音色に魅了された一人である。是非またフルートを聞かせて欲しいと、彼女と握手を交わした。
 ワゴン上段にある硝子杯に積み上げられた苺のギモーヴは、食べるまでは薄桃のスポンジにしか見えない。初めて見るお菓子に尻尾をぱたぱたと振って好奇心を示すルベルの口に試食として一欠片を投じると、尾の振幅と速さが高まるとともに自然と顔が柔らかくなる。その様子を見たベガはまだまだ面白いお菓子があるノと告げて、せっせと追加のワゴンを運ぶ──その両手の横に、樟の狐のぬいぐるみが付き添い、運転を代わる。
「まだ運ぶものって、残ってたりする? あればうちのコたちも手伝うよ」
「わたしも、運ぶ」
「助かるヨ〜、アリガト!」
 五台のワゴンと五十を越える茶菓子、さらにテーブルの数と同じだけのケーキスタンドを並べて、ああそれからトッピング用のチョコレートスプレーも……。樟のイッコ、ニコ、サンコと名づけられたお狐様と望月のお陰で、ものの数分で会場はメルヘンに彩られた。

 各々に一巡目のケーキを取り終えた猟兵たちは中央の大テーブルへ集まり、互いの健闘を讃え合った。そして少しの談笑のあと、一瞬の静寂に併せてに金銀で埋まる上天を見つめる。
 星河一天、脣星落落。
 汚れ一つなく堂々と宙を照らす星は涙が出るほど綺麗に埋め尽くされているのに、猟兵たちの心にはぽっかりと穴が開いてしまったのか──何処か寂しさを感じさせた。
「……バトルドロイドにされてしまった人々も、この窓から星々を眺めていたのかしら」
 零れそうな青の瞳に星を映しながら、シラが呟く。
 今回は猟兵たちの活躍によりこれ以上の被害は食い止められたが、もしも、もう少し早く現場に着くことが出来れば、今もいつも通りの生活を送れていただろうし──バトルドロイドの製造だって阻止出来たかもしれない。
 そんな後悔もドロイドの生命も、いずれは過去へ流されてゆくことを、窓の外は物語る。貴様らを置いて時計の針は止まることを知らずに、明日は来る、と──。猟兵たちは勿論、その事を知っていてこの場に立つ。
 しかし、今は──今だけは、きっとその狭間。
「おやすみなさい」
 亡くなった人々、そして機械人形たちへ合掌し、望月は黙祷を捧げる。
「……願わくは在天の霊、安らかにあれ」
 その勇姿、燦然と輝く星として遺るだろうと、シラは子守唄を贈る。猟兵たちはその音にのせて瞳を閉じ、亡きヒトを追悼した。

「さあ、いつまでも悲しんでいられないぞー!」
 腹が減ってはなんとやら。未来を切り開いてゆく猟兵として、このまま悲嘆に暮れて留まる訳にはいかない。終わったことは終わったこと、切り替えて行こう。辛苦を吹き飛ばす太陽のような笑顔で、フィロメーラが皆へフォークを配る。
「その通り。次の戦いはもっとスマートにいきたいねぇ」
 今度こそボスごと丸焦げにしちゃおうかと謳う樟のぬいぐるみたちからは、一人ひとりへティーセットのお届け。これで全ての準備は整った。
 手と手を合わせて、この場と食材に感謝を。
「いただきます」
 時を紡ぎ進む星舟に、猟兵たちの元気な声が響き渡る。
「今回はすごく疲れたからね。どんなに食べても、差し引きゼロカロリーなんだ!」
「あらあら……。くれぐれも、お腹は壊さないようにね」
 シラはザッハトルテに舌鼓を打つフランチェスカの前へひらひらと降り立ち、口元についたチョコをハンカチで拭ってやる。
「お家だと、こんなに沢山、叱られてしまう。けど……」
 ここは船の中。叱る人すらいないお菓子のぱーてーとやらであれば、多少の我儘くらいお星様が許してくれるだろう。フランチェスカに続いて、ぱくりとフォークを口に運ぶ望月の顔には、優しい表情が浮かぶ。
「うちの店の駄菓子も良いけど、こういうちゃんとしたお菓子も良いね」
「エッ、お店で駄菓子を売ってるノ!?」
 ウォールナッツケーキを食べている樟の、さらりと述べる『駄菓子』のキーワードを聞き逃さなかったベガはまたまた垂れる涎を飲み込んで、今度絶対に買いに行くからと彼に宜しく念を押した。ぬいぐるみたちはケーキを食べない分、次々に猟兵たちのお皿にお菓子を添えてゆく。
「にしても、よく食べずに我慢出来たね。ボクたちが来る前に、つまみ食いとかしてない?」
 これだけの数のケーキがあれば、ちょっとくらい減ってもわからない。
 ニコから受け取ったアイシングクッキーを一枚口にしながら、今の一連を見ていたフランチェスカはお菓子好きのベガへニヤリと疑いの目を向ける。
「何回かお菓子に手が伸びたけド……メッチャ我慢しタ!」
 何でも雑念が頭に過ぎる度に、ひたすら生クリームをかき混ぜて気を紛らわせたのだという。そのため、ホイップクリームの追加サービスの準備もバッチリとのこと。
 それを聞いたフィロメーラは、手元のパウンドケーキに生クリームをスプーン一杯分のせた。重力に負けて、スポンジの壁を伝うクリームを見たルベルが、獣の本能なのか、皿に垂れるまで見つめる。
「……食べるか?」
「!」
 フィロメーラの声で自分がケーキを見続けていたことに気づく彼は少し照れながらも、最終的には誘惑に負けて自分のお皿に一口分けてもらった。
「メッザノッテ殿。おすすめのお菓子を、教えて欲しい、な」
「私もよろしければ。スペースシップならではの一品をいただこうかしら」
 早速ひと皿目をぺろりと空けた望月とシラが、こだわりが現れる二巡目へとまわる。
「任せテ! 良いのがあるんだヨ〜」
 ベガは宝物を取り出すように、ワゴンの下段から一つのホールケーキを取り出す。
「チョコレートスポンジとマロンクリームで縞模様の惑星を模したケーキだヨ!」
 周りの環はアラザンとキャンディで表し、スポンジと表面のキャラメリゼがパリパリとふわふわの絶妙なハーモニーを奏でる。……と、ここまででも充分にケーキとして楽しめるのだが、やはり良いものは良い食べ方で。
 見て美味しい、食べて美味しいこの一品と一緒にいただくレモンティーに、ベガが魔法をかける。
「金平糖がひと〜つ、金平糖がふた〜つ……!」
 こちらが気になり駆け寄ってきたルベルは、ベガの魔法をそのまま伝える──彼の手の中のティーカップに生まれる波紋の中心には、星屑を象る南蛮菓子が浮かんでいた。
「願いを込めながら飲めバ、叶っちゃうかもしれないヨ〜」
「おおー、ティーカップに星が落ちてきたみたいだな!」
 よし、あたしもバリバリっと魔法を披露しちゃうぞ。その様子を見ていたフィロメーラは、SSR級として負けじと星の遊び場(トリッキー・スター・ファンダム)で頭上に流星群を瞬かせる。
「この場に相応しい星空にしてみたぞ!」
「きらきら、綺麗、だね」
 君の故郷では珍しい飲み物だとフランチェスカから勧められた『もか・らて』を片手に温まる望月は、素直な感想を口から漏らす。
「なら私は……フルートでも奏でようかしら」
 目と鼻と舌は、今夜は既に予約済ゆえ、耳で夢を見させるのみ。この時間は眠るはずの小鳥の囀りは、空一面にオーロラを広げる。
「こういうパーティーは、良いものでございますね。……ではでは僕も!」
 光と音のデュエットの次には、金平糖と流れ星のアンサンブルを。
「そーれ、お祝いの金平糖レインでございますぅ」
 赤い双瞳を爛々とさせて星守の杯を逆さに、甘やかなる露は天から降り注ぐ。ルベルのきらきら、ひらひらと舞い落ちるそれは猟兵たちの依頼で負った傷にじんわりと溶け込み、癒して──癒されすぎて。
 ルベルの星の雨により、漲るパワー。
 自分の本能を刺激する、宙。
 そこに一際目立って煌めく、あたし。
 ……踊りたい。
 しかし、壁一枚向こうにあるのはホンモノの星々。宇宙船内で星の踊り子など、ただの宴会でのギャグになってしまうのではないか。
 明るさ一転、重い唸り声付きで葛藤するフィロメーラが、出した結論は。
「……まあいいか! パーティーだからな!」
 こんなに楽しそうに輝かれてしまっては、踊らずにはいられない。
 それに、あたしこそが流れ星・フィロ。ホンモノよりもホンモノらしく煌然と佇まえば、オールオッケー。星の光を纏えば、誰だってこの場の主役になれるのだから。
 たった数秒間頭を抱えたあと、それすらもなかったかのように宙を駆ける星に合わせてステップを踏みだす。
「ベガちゃんも踊るか?」
「踊ルー!」
 フィロメーラの誘いに笑顔で頷き返し、彼女の伸ばす手へ自分の手を重ねる。
「うちの狐たちも踊らせてやって」
 戦闘、配膳から余興もお任せあれ。
 開いた金扇子を口に携え、猟兵たちの顱頂でひらひらはらりと神舞を披露するぬいぐるみたちは、神降ろしの儀式をする巫女にも見える。
「あの狐たち、ボクより踊るの上手だね!」
「そりゃあ、メンテナンス頑張ってるからね」

 夢の悦楽に比例して、藍は深まる。
 やはり、既知の通り時刻は明日へ踏み込んだ。空の景色は刻一刻と変わり続け、それを止める為す術もないまま新たな陽が射すのは間違いなさそうだ。ならば、その時が来るまで。
 踊り明かす猟兵たちを照らす星は、彼らの願い事への返事の代わりか──。ひとつ、キラリと光り輝くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月10日


挿絵イラスト